――のび太は当初は趣味で始めた機動兵器製造を連邦政府からの委託を受けるようになって以降は次男(養子)のコージを交渉の代理人として送り込むことも常態化した。ダイ・アナザー・デイ前後は扶桑皇室海軍航空隊の航空行政担当者らが『技術音痴』のレッテルを貼られ、日本側にとかく罵倒されるため、航空技術開発に多大な混乱が生じていたからで、のび太の仲介がなければ、軍部の担当者らがサボタージュを起こしたともされる。紫電改/陣風、烈風のターボプロップ化はのび太のアイデアで生まれたと言っても過言ではない。ダイ・アナザー・デイ後半時点の最高馬力のレシプロ戦闘機用エンジン『ハ43特』(ダイ・アナザー・デイ後半に3000馬力級として生産)は史実ハ44の要素をハ43に加えた日本系航空レシプロエンジンの究極形態だが、R-4360に比べ、発展余裕がないと見なされた事もあり、日本側は早期にジェットエンジンへの切り替えを企図した。だが、ダイ・アナザー・デイで大量にレシプロ戦闘機が余っていた上、ジェット機の訓練を必要とする人数の多さから、ジェット機の本格配備に1946年時点で『4、5年はかかる』と見込まれたため、ターボプロップエンジンが脚光を浴びた。のび太は次男を使者として遣わし、『場繋ぎ』という名目で日本側の当局を説得。ターボプロップ戦闘機が場繋ぎで一定数が使用されるに至った。大量に余った大戦後期型レシプロ機の延命処置としての側面もあり、初期ジェット機でしかないメッサーシュミットme262は頼みの速度面でも陳腐化したと言える――
――ジェット機の生産工場はレシプロ機のノウハウをほとんど流用できない事もあり、生産工場稼働、教育には扶桑の想定より手間がかかった。元々、『特殊攻撃機』との分類で低率生産から始めるつもりだったが、その分類が日本主導で廃止されてしまった(特攻機と勘違いされ、担当者が罵倒された)ため、現場のほうが混乱してしまった扶桑海軍。ミサイル装備やレーザー装備の普及でレシプロ爆撃・攻撃機が単発機から順に消え始めた時代、予算や訓練上の『お情け』で存続した海軍航空隊は冬の時代を迎えていた。とはいえ、この時期の辛苦が海軍航空隊から特権意識を払拭させたのも事実である。海軍航空隊独自の風習や過酷な懲罰を課す風土も空軍が航空分野の主導権を握るに従い、消えていく。撃墜王の存在の誇示を部内だけに留める風習も昭和天皇直々の勅命で取りやめられたのもこの頃である。ダイ・アナザー・デイからの四年でカールスラント撃墜王たちの撃墜王たちの名誉がもろ他の要因で地に落ちてしまい、連合軍統合参謀本部がその代わりを残された航空大国の扶桑に求めたからである。昭和天皇はそれを嫌がる現場(特に海軍)を説得するため、各航空隊を視察するとも言ったが、海軍甲事件の事例を鑑み、玉音放送に変更された。撃墜王ランキングを参謀本部が発表するようになった空軍は問題なかったが、海軍航空隊はクーデターとサボタージュの中心と世間に見做されていたため、風当たりは最悪。昭和天皇が動いたとあれば、現場は大混乱であった。陸軍の航空審査部がそうであったように、国家元首による懲罰的な組織解体を恐れた海軍航空隊だが、そうではない。要は組織風土が問題になったのだ。また、個人撃墜数の記録が坂本の世代が最盛期を終える1943年以降のものはなかったので、代替わりしていた海軍航空本部長は複数の前任者の施策ミスを押し付けられる形で政府閣僚らに怒鳴られる羽目となった。(これは旧・軍令部が諸悪の根源だったが……)日本は個人申告を信用しない傾向だったため、当初は個人的に他国にコネがある統合戦闘航空団在籍経験者らしかスコアを認められなかった。だが、ダイ・アナザー・デイで士気が崩壊寸前になったために体面を保てる程度には個人申告も認めるようになった。これは部隊単位のサボタージュがダイ・アナザー・デイで頻発したためである――
――カールスラントは日本連邦によって課せられた賠償金と違約金で首が回らなくなりかけた。更にドイツ連邦が戦前からのカールスラント軍人を『邪魔者』と見なし、大量リストラを行ったため、軍隊の規律とモラルは瞬く間に崩壊してしまった。更にロシア連邦の嫌がせでカールスラント撃墜王の名誉は地に堕ちた。自分たちを擁護しない祖国に愛想を尽かしたカールスラント軍将校達は次々と部隊ごと南洋島へ集結。日本連邦の戦争へ加担した。日本連邦が撃墜王を国家ぐるみで奨励しだしたのは、ウィッチ・クーデターの事後処理後の1946年晩秋以降のことだ。この施策に反対運動をしたのが扶桑海軍や一部の昔気質な陸軍系航空部隊だったのだが、時代の流れと外聞上の都合でそれを受け入れざるを得なかった。海軍では個人戦果を『統合戦闘航空団への派遣者のみが対外的な誇示を許される』という不文律があったが、統合戦闘航空団の時代が事実上終わってしまった上、内にリベリオン軍を抱え、彼らに大きい顔をさせないために、空中勤務者の個人戦果を誇示するしかなくなった。そこが扶桑海軍航空隊が味わった精神的辛苦であった――
――扶桑空軍の現場で主導権を握ったのは、七勇士の過半数が属する陸軍航空部隊であった。これは源田実と井上成美が取り立てられる一方で、空軍ができれば、高官の最右翼と目されていた大西瀧治郎が日本側の要請で中枢から排除された(後に海軍系部隊の嘆願で取り立てられたが、意図的に最前線送りにされた)こと、クーデターやサボタージュの中心と見做されたために海軍航空隊の求心力が低下していたからであった。航空自衛隊の気風が持ち込まれたために、総じて自由な風土が生まれており、旧海軍のしきたりや風土が時代遅れと見做されたのも空軍に海軍色が殆ど無い理由だった。64Fには海軍出身の撃墜王も多く在籍しているが、全員が新たな風土のもとで過ごしている。それも海軍航空部隊の立場の悪化の理由であった――
――レシプロ攻撃機と爆撃機が次々と姿を消していく1948年から1949年。ダイ・アナザー・デイを支えた爆撃機『連山』が退役した。戦略爆撃機としての後継である『飛天』(B-52が範)、『浅間』(Tu-95が範のターボプロップ機)が就役したためだ。なぜ、二本柱になったかというと、富嶽後継の飛天からはウィッチ運搬能力が運用上の理由で削られ、ハイローミックスのローである浅間では多くのウィッチ部隊の要請で能力を備えたためだ。(とはいえ、太平洋戦争では、怪異戦ほどにウィッチ運用のメリットがないため、裏で儀礼用の装備と言われている)64Fは浅間ではなく、宇宙戦艦でそれを行う。また、MSの撃破も可能な装備を有する関係で、戦線での休暇はかわりばんこで行っていた。他部隊が装備のやりくりに苦労している中、宇宙艦隊すら自前で運用可能に至ったほどの組織の肥大化は他部隊から苦情が出ていたのも事実だった。――
――他部隊からの苦情は主に旧海軍系部隊で占められていた。人材の独占が主な苦情だが、当時の扶桑軍は分散配置で各個撃破されるよりも一点集中で突破口を見出すドクトリンを確立させた時期であるのと、航空審査部での黒江へのいじめを鑑み、『使える人材は前線で使い倒す』という戦術が浸透したからだ。また、怪異へはゲッターエネルギーと光子力、陽子エネルギーが有効と判明したこともあり、それを制御できる者、あるいはそれを動力とするスーパーロボットが最も怪異へは有効とされた(魔導殺し戦術が敵に浸透し、ティターンズに夜間でもウィッチを狙撃可能な者がいることがわかり、死傷率がダイ・アナザー・デイで跳ね上がったためでもある)こと、それと関係なしに倒せるスーパーヒーローやスーパーヒロインの登場でウィッチ兵科はその軍事的価値を大きく減じた。ダイ・アナザー・デイ後期の時点で旧来的な意味でのウィッチ兵科の命運は尽きていたのだ――
――A世界では、素で魔力を発動したウィッチを逆にねじ伏せられる格闘技の超人が現れ、次々とウィッチを返り討ちにした事がティターンズによって誇示された事もウィッチの権勢が崩壊した要因だった。特にアレクセイ自身が南斗鳳凰拳の当代伝承者であり、プリキュア達すら返り討ちにした事もプロパガンダされたのが、ウィッチの立場がますます悪くなった原因であった。素が普通の少女でしかない多くのウィッチは、極限まで鍛えた人間が更に限界を超えた場合には無力なのが示された結果、軍事的価値を事実上失ってしまったのだ――
「この世界は魔導殺し戦術や超科学、超人がウィッチをねじ伏せた……。それに対抗できるだけの力は私達にはない……」
ミーナBはダイ・アナザー・デイの映像を閲覧することで、A世界の凄惨な戦闘を把握した。ウィッチをねじ伏せる超人、敵の魔導殺し戦術。それを知り、武子がなぜ、出撃を禁止させていたかを理解した。そして、それに対抗するためには『ウィッチを超える』しかなかったことも。そして、早期にそれを達成した者たちを弾圧した報いがダイ・アナザー・デイ中後期の凄惨な消耗率だと。
「信じられん……あの力は我々を遥かに……」
バルクホルンBは瞠目する。見ているのは、A世界の黒江がサンダーボルトブレーカーを放つ一瞬を捉えた映像である。64Fはその軍事的特異性と現場での疎まれ具合から、連合軍全構成国の他部隊からの支援は殆どなかった故、一騎当千が何よりも求められた。(とはいえ、他のルートで支援はいくらでも受けられ、ヒーロー達の助力もあった)以前は嫉妬の対象だったGウィッチの持つ一騎当千ぶりが逆に範とされたきっかけでもあるのがダイ・アナザー・デイの戦闘である。Gウィッチがシンフォギアやプリキュア、仮面ライダー、スーパー戦隊、宇宙刑事と肩を並べて戦える事で、ウィッチが軍に残る権利を結果的に守ったという事実はGウィッチが世に認められるきっかけであり、同時にそれまでの彼女たちへの弾圧が白日の下に晒されたことでもある。ミーナAは分かりやすい『人身御供』とされたわけだ。
「人身御供という言葉が扶桑にはあるけれど、まさか、私がこのような愚行を犯すなんて…」
ダイ・アナザー・デイ終了後、『大尉』として叙勲される自分の姿に複雑であるミーナB。書類上、人事処分として『戦時階級の剥奪』が課され、ミーナは大尉として、ダイ・アナザー・デイの叙勲を受けている。また、指揮資格の一時停止と数ヶ月の飛行禁止処分も受けたため、タンクジャケット姿であること、指揮権を実質的に武子へ移譲し、後半は一士官として戦った事も映像で示される。
「坂本少佐への想いが一線を超えたのだろう。閣下らは私らの更に上の世代だ。少佐が頼るのは当たり前だ。さらに言えば、事変を潜り抜けた扶桑の黄金世代だ。ウィッチとしての経験は私達の更に上を行く。とはいえ、この世界は異常だがな」
「そして、ウィッチを超える異能……」
映像はダイ・アナザー・デイ後期、ストライカーの燃料が残り少ない三人がストライカーを投棄し、そのままプリキュアの上位形態に変身する様子に移る。錦、芳佳、シャーリーの三人がそのまま、プリキュアに変身して戦闘を続ける様子だ。気合を入れる形で変身し、当時のストライカーではできない急加速で一気に加速し、高速戦闘に入る。それは史実での1945年後期以降に現れる新型怪異をも上回るほどのものだ。
「ヒロインに変身して戦闘を継続、か……。なんという…。それに、この加速……。こちらのシャーリーをも圧倒的に上回るではないか」
「ええ。まるで天使ね……。それでいて、素で怪異を粉砕できるパワーを与える……。ヒロインの面目躍如ね」
「天使の羽をつければ速くなるというものでもないだろうが……これは……」
「それに、この世界では怪異を剣で倒すのがトレンドなのか?」
「扶桑海七勇士の内の過半数が剣使いだった影響らしいわ。もっとも、扶桑でも1940年代に入る頃には『時代遅れ』と見られていたけれど、超重爆対策で一部のウィッチが先祖伝来の刀剣を持ち出して以降は防空部隊中心に量産品が出回ってるとあるわ」
「我々は怪異専門に特化しすぎたからな。人の持つ兵器相手は想定しておらん。道義的にも反発するウィッチが多かったのは納得がいく」
「それですまなくなったのがこの世界ってことね…。閣下が我々にホテル暮らしをさせている理由はこれね…」
A世界の状況はもはや、東洋の龍と西洋の虎がぶつかりあう血みどろの時代を迎えている。映像での黒江のエクスカリバーと斬艦刀、調のシュルシャガナ、智子のショルダースライサー…。それが花形とされ、芳佳でさえ、二刀流で戦う事があったという。Bと違い、侵略者には情け容赦しない思考であるのがわかる。ウィッチの新規任用年齢が制限され、更に『新陳代謝』が鈍らせられた時勢では、実戦経験豊富なウィッチは前線で酷使されるのである。更に対人戦ではウィッチは戦闘機には対抗できても、高高度を飛ぶ戦略爆撃機に立ち向かうには困難がつきまとう。特に震電やP-51でも飛行不能な高度を悠々と飛行するジェットやターボプロップ戦略爆撃機の脅威はB世界のウィッチたちには衝撃だったが、怪異が『人類兵器を作られる時間軸関係なしに模倣している』事実も知らされたB世界のウィッチ達は高性能ジェット戦闘機を模倣される危険性を認識し、震え上がった。(史実では、SU-47を模倣した怪異がハルトマンを撃墜している)また、黒江が腕試しと評して、VF-19Aを使って模擬戦をやったところ、バルクホルンとエーリカでも、同機の『最強』とも評された運動性能の前に敗退したため、A世界のウィッチの戦闘レベルはB世界より格段に上だと判定された。また、ウィッチとプリキュアを両立している者はウィッチとしての燃料と弾薬が無くなろうとも、プリキュアとして戦闘を継続可能である。そのメリットは大きかった。その表れである。
「この世界だと、護衛空母は退役させられたみてぇだな」
「艦載機の大型化で用を成さなくなったかららしい。扶桑では問答無用で退役だそうだ。この世界では、10万トン近い船体がなければ正規空母とは見做されんそうだ」
「そこまででかくして、どうすんだよ」
「そうでないと、ジェット戦闘機が60機乗らんそうだ」
坂本Bもそこは気になるようだ。B世界の信濃は空母だからで、大和型戦艦の船体でさえ、ジェット戦闘機空母としては『中型』に入ってしまうのかと驚く。
「あんたの言う信濃って?」
「大和型戦艦三番艦をウィッチの提言で空母化した改造空母だが……この世界では存在しない。色々と理由をつけて、戦艦のままで完成したらしい」
B世界では史実通りに空母化したが、A世界では姉妹艦共々、戦艦として生まれた信濃。『空母化しても高性能にならない』というのを理由にされているというが、レシプロ機やウィッチを載せるなら充分すぎる大きさのはずである。ジェット戦闘機にはそれ専用の新造艦を宛てがえばいいのだから。ところが、ジェット戦闘機を問題なく大量に運用するには300mを超える巨体が必須条件であり、運用経費も1945年時点の比ではないと突きつけられ、坂本Bは複雑な心境であった。敬愛する大西瀧治郎中将もこの世界では失脚しているからだ。
「この世界では、戦艦同士の撃ち合いも当たり前だからな。大和型戦艦が最強なのは嬉しいが……」
A世界と違い、B世界での戦艦は浮き砲台扱いなので、A世界のような艨艟対決は夢想の産物とされている。ところが、A世界では現実に起き、それが主用途へ変遷している。紀伊型戦艦が早期に陳腐化し、移動司令部扱いの大和型が量産されたのは複雑なようだが、それはA世界の扶桑海軍艦政本部もである。扶桑海軍は大和型戦艦を艦隊用戦艦とは考えていなかったが、モンタナ級がポストユトランドタイプを陳腐化させたため、以後の戦艦のスタンダードが大和型戦艦と化す事態になり、上位の戦艦を設計せねばならなかった。しかし、艦政本部にはその力はなかった。(大和型戦艦の時点で艦政本部の持てる最高技術をつぎ込んだため、それ以上に強くて大きい戦艦などは1944年時点でも、机上の空論に近かった)播磨型以降が扶桑が建造施設を提供しての外注になったのは、当時の扶桑には10万トン級の船を作れる土地はあっても、その技術がなかったからである。
「でもよ、弾薬の融通が効かねぇんじゃ?大和型戦艦って46cm砲だろ?それより大きい弾なんて……」
「いくら自前で製造すると言っても、欧州では補給の心配がある。ましてや、欧州では46cm砲弾など…」
B世界で懸念されていたのが大和型戦艦の砲の特異性だが、A世界では珍しくもなくなり、扶桑は上位艦に50cm砲を積んでいる。A世界での大艦巨砲主義に嘆息の坂本Bだが、敵も比例して巨大になったための現実的な選択である事はわかる。そこは複雑なようだ。
「なんだか、複雑です。私達も一歩間違えば…」
「宮藤。怪異が駆逐された場合、私達の世界もこうなる可能性はある。目を背けるな。あり得る可能性なんだ、この世界は」
「でも……」
「この世界の私も言っとるだろう?目を背けるな、と」
坂本Bは年齢故に現実主義なところを見せる。A世界の経緯はティターンズという外敵を抜きにしても、『ありえる』からだ。その一方で『英雄部隊』が求められるのも理解しているが、ストライクウィッチーズという名が構成員の出身部隊を示すための単語となってしまったことには寂しさがあるらしい。
「その一方で、彼女たちが私達に代わる『象徴』にされたのか」
「正確には、黒江たちから世代交代していたのが、彼女たちにまた移ったというべきだろうな」
プリキュアがGウィッチ枠にされた(ウィッチ世界での都合によるもの)都合で、世間には『特別な力を得たウィッチで、七勇士の後継ぎ』と認識されている。その中心格がキュアドリームと見做されたため、のぞみはウィッチ世界で一躍、英雄とされた。(ウィッチ世界向けには中島錦と同一人物扱いとされているが、実質的には別人である。)また、行動を共にする後輩達と合わせて『プリキュア七人衆』とも言われているが、これはダイ・アナザー・デイで獅子奮迅の活躍をした『栄光の七人ライダー』に準えての形容で、それ以上の意味はない。坂本Bは自分達が時代時代で世代交代する宿命を背負っていることを理解しているため、A世界ではミーナの失態で扶桑の最精鋭部隊に取り込まれた『統合戦闘航空団』の枠組みそのものへ寂しさを見せた。経緯上、ミーナは人事記録に残るほどの失態を演じ、部隊の独立性を維持できなくしたというが、黒江たちが『かつての神通力を維持していた』ことがイレギュラーすぎたのだ。現に、ミーナの処分は表向き、戦時階級(中佐)の剥奪のみである。現場の混乱の抑制が優先されたのだと黒江は言ったが、ウィッチの戦時階級の剥奪だけでも充分に混乱は生じているのも事実だ。坂本Bはそれを考慮して『人身御供』や『生贄』という表現を用いたのだろう…。
――この時期、日本連邦は海軍航空隊の再建には興味がなかったが、空自にはその訓練が困難であるということで、予算対策で組織は存続させた。だが、実際には601空が空軍に移籍させられた影響で空母航空団が有名無実化してしまったため、彼ら『600番台の海軍航空系の部隊』に旧任務を引き続き行わせるしか選択肢はなかったが、艦上機の世代交代を矢継ぎ早に行ったため、全く訓練が追いつかないという問題が発生した上、加速度的に艦上機が大型化した影響で翔鶴型(翔鶴、瑞鶴、大鳳)では搭載機数が激減してしまうという問題がのしかかり、日本も新造を認めた。また、退役予定の蒼龍と飛龍が翔鶴型と同等の船体規模であることが判明し、退役が取りやめられて、四年前から改装中だが、クーデターのゴタゴタで工事が停滞した上、破壊工作で修理の手間ができてしまい、未だに再戦力化はできていない。(これはウィッチ世界では、蒼龍型は史実での翔鶴型の規模があったため)そのため、プロメテウス数隻と翔鶴型で空母機動部隊を維持しているという有様。しかも、雲龍型の大半が戦時急造を理由に他用途へ転用され、ライセンス生産していたボーグ級護衛空母の全艦が有無を言わさずに退役させられた影響で空母機動部隊の規模は大きく縮小していた。それを補うため、扶桑軍は64Fに宇宙戦艦を持たせたのである――
――その宇宙艦隊の規模は1949年時点で、地球連邦宇宙軍の外周機動艦隊に匹敵するものに膨れ上がり、轟天の量産品が極秘裏に建造され、譲渡されたアンドロメダ級、ラー・カイラム級、ドレッドノート級の再整備も終わり、戦艦は1949年で建造中を含めて15隻、巡洋艦は30隻、駆逐艦は100隻を数えるほどの規模であった。地球連邦軍の『余剰艦』が主だが、地球連邦軍が政治的に持てなくなった『訳ありの艦』も含まれていた。アンドロメダ級戦略指揮戦艦がそれだ。扶桑が早期から宇宙進出を志向していたのは、鉱物資源の枯渇への恐怖と、恒星間航行艦を有したがためである。敵の戦略爆撃機が比較的に低高度からの侵入へと戦術を変更したのは、高高度爆撃が日本の対弾道ミサイル用装備の爆撃機迎撃への転用と宇宙戦艦からの攻撃で意味を成さなくなったからである。ダイ・アナザー・デイで使用されたB-17やB-29が退役していったのは、日本連邦の迎撃網があまりに急速に近代化したため、もはや数の暴力でしか対抗できなかったからだ。とはいえ、連合軍の既存レシプロ戦闘機の多くを寄せ付けない高高度性能には変わりはなかったので、重武装かつ航続性能に優れる大戦後期型(連合軍各国に取っては新型)のレシプロ戦闘機が迎撃に使われまくったのも事実だった――
――日本連邦、とりわけ義勇兵の見せた敢闘精神は連合軍内では『狂戦士』と評され、体当たりすら躊躇しないで行う姿勢は味方すら恐れさせた。彼らの見せた『特攻』は敵の多くを戦争神経症に追いやり、副次効果で敵味方を問わずのウィッチがダイ・アナザー・デイ後に退役していった理由ともされた。ウィッチ達はあまりに軽く失われる命と向き合わなくてはならず、多くが凄惨さに耐えられずに精神を病み、中途退役していった。とはいえ、軍以外に食い扶持を知らない者も多いためか、士官以上からはあまり退役者は出なかった。そこも世代交代の停滞の一因である。坂本もその部類に入る――
「坂本さんはこの世界だと引退したんですよね?」
「軍には残っているそうだ。私は事変の時に小学校も出ない内に志願した世代だからな。軍以外に食い扶持を知らん。黒江や穴拭のように、平時に女優やモデルをやれるほどの器量の良さもないからな」
「あの人たち、そんなことも?」
「昔、私も再現映画に何本か出た事はあるが、脇役でな。それに柄じゃないんだ」
黒江と智子は平和な時期には、広報部に依頼されての広報活動のほうが主な仕事である。だが、坂本はそうした活動に興味がなく、後々に教導部隊の教諭をすぐに辞した(後任はのぞみだったとのこと)後はキャリアの大半を前線で過ごした。これは坂本の昔気質な気質が原因で、広報活動に精を出したことで同期から批判を受けたことがある黒江と智子と異なり、同期受けは良かったという。とはいえ、1940年代後半は日本連邦体制の構築期でもあり、戦時体制を構築しようとした扶桑を日本の左派が妨害しまくり、特に研究分野での妨害は物凄く、扶桑側が抗議声明を出すに至った事例もあった。扶桑では怪異からの生存権確保のための軍事研究は必須項目なためで、日本政府は扶桑側を宥めるため、先進技術をどんどん扶桑へ流すようになっていく。(ダイ・アナザー・デイ前、扶桑が軍需省を設けようとしたら、日本左派が個人攻撃にまで行うに至ったため、設立が断念された経緯から)その代わりに21世紀以降の生産ライン技術が流入したことで生産効率と品質が大きく向上。この頃は軍事用に限られていたとはいえ、21世紀水準の通信機器や情報機器が出回るに至った。これは1945年当時にウィッチ達による友軍ステルス機の誤認事件が多く発生したためでもあり、情報共有の必要があったためだ。
「少佐は広報活動に反対ですの?」
「そういうことではないよ。広報活動をしたけりゃ勝手にしてくれていいが、あまり顔出しをするのはな」
坂本は広報宣伝は容認していても、智子のような顔出しでの宣伝を『天狗になる』ということで嫌っていた。A世界での転生前もそうだった。
「あまり若い内に顔出しすると、本人が天狗になるからな。こちらでの若い頃の穴拭がそうだった」
ペリーヌBへ語る坂本B。写真程度ならいいが、智子のように出しゃばるのは良くないと考えているのだ。とはいえ、世代交代での弊害がモロに出てしまったA世界の経緯には同情しており、『上層部の怠慢』と考えている。(とはいえ、上層部の指令を無視する傾向が強い501の盲点が表れてしまったとも言える)
「この世界のミーナは分かりやすい生贄にされたのだろう。まさか、私より古い世代のウィッチが絶頂期の神通力を維持しているなど考えもしないからな。この世界の黒江達は宮藤と同じ体質なのだろうが、あれも特異な体質だからな……」
正確にはそれとも違う体質であるのだが、魔力が衰えない点は共通している。
「そして、カールスラントの衰退、戦艦大和の量産化、あれと互角に戦える戦艦の時代の招来……。この世界は特異的だ……」
大和型と同規模になる戦艦など考えもしなかったのが窺える坂本B。大和型がウィッチ世界では特別なポジションにいたことの表れだが、A世界では艦隊戦の要としての存在意義が見いだされた。そして大艦巨砲主義の再来ともいうべきモンタナ級戦艦の量産化、46cm砲がスタンダードと化する時代。51cm砲がそれに取って代わる時代。大艦巨砲主義の原則なら当たり前だが、B世界では怪異の進化に合わせての進歩なため、割に緩やかである。A世界の加速具合が異常に見えるのも仕方ないところだった。
――休暇も後半に入ったキュアドリーム。日本で入った広報活動も終わり、のび太が先にウィッチ世界へ赴き、しずかも反日本連邦組織への潜入捜査で不在になったので、当時はまだ小学校低学年であったノビスケの面倒を見る必要があったので、休暇の後半はそれに費した。共働きで両親が不在というのは、のび太成人後以降の野比家では当たり前の光景で、後々のノビスケ自身、その子孫のノビカズ(23世紀におけるのび太の転生体であるノビタダの父で、セワシの孫)に至る代々の野比家は共働きである。ノビスケが歪まずに育ったのは、周囲の環境が良かった事もあるが、野比家代々の『お人好しで優しい』面を受け継いだからに他ならない。
「でも不思議ね。思うような就職でない職業で生計を立ててるなんて」
「戦うのを合法にするためには、『これ』しかなかったんですよ。生まれ変わった先で軍人だったんで、ちょうど良かったといえば、良かったんですけど」
「かれんが腰を抜かしてたわよ、盛大に」
「大尉までだったら、士官学校さえ出れれば、簡単になれますよ。問題は少佐からですよ。戦功挙げても、容易にはなれませんからね」
武子がそうであったように、佐官以降は高度な幕僚教育を必要とするため、そう簡単になれない階級であった。のぞみもデザリアム戦役の功でようやくといったところである。なお、姿はキュアドリームもキュアミントもお互いに変身済みだが、戦っているわけではないため、普段の関係そのままの会話である。
「それで、貴方はどうするつもりなの?平和になったら」
「教導部隊にでも出向しますよ。転職に制限がかかったのなら、それしかないですからね」
シニカルに微笑うドリーム。台場大尉の最期を目の当たりにしたためか、戦後の自分の身の振り方について考えたようだ。これは実際に叶う。元々、予備士官になっての教職への転職を希望していたが、日本側の横槍で予備士官の教職への転職が事実上潰されたため、その代替策が『教導部隊に携わる事』だった。日本側も扶桑軍人たちの思わぬ抗議に狼狽え、『講師にはなれる』と声明を発した。扶桑軍人が教員免許を日本で取る事は規制しないとも。これは軍事忌避の日本教育界と他国の状況の乖離の表れでもあった。(そもそも、扶桑は師範学校からの転換期であった)
「大学は入るの?」
「軍学校自体が短大扱いのようなものですからね。戦後に子供産んで、暇が出来たら考えます」
戦後の時代、一定以上の教育を受けた経験があるGウィッチは大学で学位を取っていく。引退後のキャリアのためでもあるが、もう一つは若いうちにウィッチになった故、学歴が小学校卒になる者も多かったからで、高校と大学に行き直すGウィッチはかなりの数に登る。坂本はその動きにも関わりは持たず、一貫して前線勤務を貫いたため、『徒弟制で長じた最後のウィッチの一人』という渾名を後世に与えられる事になる。
「45年からデザリアム戦役までにかけて、あたしの同期もかなり『地上に降りた』。あたしは『心の翼』に嘘をつきたくないんですよ。パイロット気質っていうのかな、こういうの」
のぞみは転生で心に『翼』を持った。転生前にはなかった『そうである事への誇り、充実感』。飛行機乗りになった事は、のぞみに前世で得られなかった何かを与えた。転生後にそのまま軍人であり続けている要因はそこにあると睨むこまち。
「貴方、自家用機に何を買おうとしたの?」
「払い下げになるレシプロ戦闘機ですよ。ゼロ戦や隼、鍾馗、飛燕は払い下げになったんですよ」
「改良の余地がないから?」
「ジェット機に切り替えるのと、疾風と紫電改とかの改良の予算確保のためですよ。本当はこの世界じゃ、ゼロ戦もまだ完全には普及してなかったんですよ。そこをいきなり、根本から違うジェット機に切り替えるのは無茶ですよ」
のぞみの言う通り、ダイ・アナザー・デイ前は大戦前中期型レシプロ機が最新鋭機扱いだった。それが後期型レシプロ機になり、ひいてはジェット機へ切り替えが始まった。とは言え、余った機体は博物館の肥やしになるか、廃棄になるか、払い下げで個人が買い取るかの三つが道になる。のぞみは飛燕をそれで買い取ろうとしたが、飛燕は貴重なので、大半が博物館に買い取られてしまうと聞き、落胆していた。とは言え、姉妹機の五式戦であれば大丈夫だったので、五式戦を買い取り、自家用機にしている。B世界の水無月邸にそれで飛来した時は向こう側を驚かせたものだ。
「こまちさんとかれんさんの世界の水無月邸にキ100で乗り付けた時は腰抜かされましたよ」
「あなたが完全武装の日本軍のレシプロ戦闘機で乗り付ければ、ねぇ」
「普段着で操縦してたのもアレだったかな」
「貴方自身が泣きそうな顔してたって、りんさんが言ってたわ」
「アハ、ハハ……」
のぞみはディケイドのいう『プリキュア5の世界』へ足を運ぶ時に、買ってから間もなく、整備も終わったばかりの五式戦で赴き、水無月邸の庭に乗り付けた。武装もそのままであるので、20ミリ砲と12.7ミリ銃を備えている。のぞみBはそれを目撃したのだが、『プロペラ機を別の自分が動かしていた』事にショックを受けていたと、りんBからこまちに報告が行っている。
「武装は外さなかったの?」
「バランス取りの重し代わりに残してたんですよ。いざという時に備えて、弾丸も装填済みにしてあります。ま、日本で飛ぶ時は外見だけって言い繕いますよ」
20ミリ砲と12.7ミリ銃の組み合わせは大戦末期の日本陸軍機の武装としては、ごくありふれたものだ。F6FやF4Uを落とせる火力は充分にある。ダイ・アナザー・デイが最初で最後の華だったものの、日本では得られなかったペットネームも与えられ(百舌鳥なので、日本の研究者などからは不評だったが)、隼の真の後継者としての地位を確立させた。この五式戦闘機こそ、ジェット機に取って代わられる前のレシプロ戦闘機の最後の光芒であったと後世に評価され、史実のP-51のようなポジションに半分は収まったという。
「ん、そろそろ、ノビスケ君を迎えに行きましょうか」
「二時になるし、行きましょう」
二人は駅前からなら近いところにある、のび太の母校へ向かう。マンションを出て、再開発の進む駅前から学校の裏山の近くの通りを歩いていく。なお、ノビスケが女子にモテる要因の一つは『本物のプリキュアと会える』からであったりする。キュアミント(秋元こまち)もそれを楽しんでいる節があるため、どことなくご機嫌だった。