――扶桑皇国は昭和期には軍事強国のカールスラントに傾倒する一派が主流となり始めていたが、それが日本の手で解体され、代わりに英米派が復権していった。カールスラントへの苛烈とも言える措置がなされたり、人材を引き抜いていったのは、ダイ・アナザー・デイからの五年間に相当する。陸軍のドクトリンがドイツ式から戦後アメリカ式へ近代化され、空軍も米空軍/航空自衛隊式で整えられ、海軍も扶桑国民の嘆願で連合艦隊という形は維持されたが、ドクトリンは戦後海自式へと変わっていき、しばらくは主力艦艇よりも支援艦艇の整備と港湾整備と近代化に予算が注ぎ込まれる。この扶桑の施策の大転換を以て、カールスラントが軍事的に覇を唱えられた時代は終焉を迎えたとされる。また、軍事的に日米の影響力が強まったため、航空隊から集団主義的風潮が駆逐され、エースパイロットの存在を誇示する(とはいえ、前線で戦うことを尊ぶ武士的倫理観は残った)風潮が生まれたが、それを良しとしない派閥とGウィッチの暗闘はしばらく続く――
――64Fをダイ・アナザー・デイで支援しなかった扶桑系部隊は事後に懲罰的に解体された。これが64Fの組織拡大の要因である。人材の一点集中には批判が多かったが、教導部隊の縮小とテスト部隊の解体が続き、戦線の主体が太平洋へと移ったため、日本側も精鋭部隊の必要を認めていたためにその動きを容認していた。後のジオン軍やエゥーゴ/ティターンズ時代以降の地球連邦軍のドクトリンの歴史的起源はここにあった。それを背景に、機動兵器の配備も進み、RGM-89の配備が行われるに至った。その上位機種や後継機、ガンダムタイプは64Fを始めとするエース部隊に優先配備された――
「うじゅ……。しゅごい……ロボットだらけ」
開示された64Fの秘密。そこにはMS、CB、VF、SPT、スーパーロボットが所狭しと並んでいた。ルッキーニ、芳佳、リーネといった者でも容易に分かる技術力の差がそこにはあった。
「人型ロボットを兵器として使う世界から、こんなに輸入してるとはね……。この世界でよく整備ができるものだね」
「ええ。……。私達の常識を超越した代物ばかりだし、怪異を圧倒する兵器だらけというのも分かるわ」
リガズィ・カスタム、Zプルトニウス、クスィーガンダムなど、未来世界でも当代最高とされる機体がMSだけでも揃えられている。スーパーロボットも搬入されたばかりのGカイザーやゲッターノワールなどが整備を受けている。なお、クスィーガンダムは俗に言う『悪役キャラ』然としたフェイスデザインの頭部も用意されていたが、『連邦軍が使うんだし、もっとヒロイックにすべし』とのことで、トリコロールカラーと従来のガンダムタイプ的フェイスが採用されている。(実際に姉妹機はそのデザインで存在するが、第五世代MSはそもそも実験機であるため、連邦軍の意向で日の目を見なかったという)
「こんなものを非合法ルートで揃え、なおかつ人材を独占している。いくら他部隊の支援が受けられなかったからといっても…」
「最前線で支援無しで放り出されてみろ。生き延びるためには藁にもすがる思いだぞ」
超兵器を持つ様に、ミーナBは眉をひそめる。非合法ルートで機材を揃えるばかりでなく、人材を独占しているからだが、実際、64Fは孤軍奮闘でダイ・アナザー・デイの中心にいたため、あらゆる敵と戦う必要があった。ダイ・アナザー・デイでは他部隊の殆どがまともに支援せずじまいだったので、64Fは生き延びるためにあらゆる方策を講じた。ヒーロー達やゴルゴ13の支援もそのためである。
「旧52JGの名誉回復のためとはいえ、こんなに集めたのですか?」
「自分たちでやってきたと言うべきだな。本国でリストラされそうだってんで、ウチで身柄を引き受けた」
「何故ですか」
「疎まれてんだよ、戦前、もしくは大戦初期からの職業軍人は」
カールスラントはドイツによる介入で多くの有能な人材が扶桑に流れてしまうこととなった。特に空軍は顕著であり、大戦初期からの撃墜王達の多くは64Fに流れ、そこで教官になる者、引き続き前線任務につく者に二極化した。グンドュラ・ラルも高官になっていながら、帰国不能を言い訳に戦っていたりする。
「そうだ」
「グンドュラ?あなた、その階級章は……」
「大将になった。人材流出への対応でな。政治判断だよ」
グンドュラAは大将になっていた。次々と撃墜王が抜けたための緊急措置である。そして傍らにいるのは……。
「なんじゃ、雁首揃えおって」
「この世界の先生?」
「そうじゃ。色々あってのぉ」
エディータ・ロスマン。A世界では『紫電改のマキの世界』へ療養に行っていたため、帰還後もスケバン喋りが定着している。(父親と揉めたためもある)また、その世界でかぶっていた学帽をかぶっていたり、背丈も伸びている。
「扶桑暮らしも長くなってのぉ。おかげでこんな風に」
「軍には?」
「特務士官になった。曹長のままでいることで親父と揉めてな……。その仲裁に入った皇帝陛下の裁量で制度が新設されたわけじゃ」
カールスラントは下士官が増えすぎたため、経験豊富な者で、士官学校に行かない者を扶桑に倣い、『特務士官』という名目で士官扱いにした。ロスマンはその第一号になったのだ。
「扶桑でも、軍令承行令が廃止された上、特務士官枠も廃止されたからのぉ。パニックじゃぞ」
「馬鹿な、あれを無くしたら指揮の序列が…」
「階級が全てになったそうじゃ。兵科の区別なく。だから、芳佳は少佐じゃ」
「なんですと!?」
A世界では軍令承行令が日本主導で廃止され、特務士官枠も差別の温床とされて無くなったため、その時点で軍医中尉だった芳佳はそのまま兵科将校と同じ扱いになったが、人事部が書類の書き換えなどで大泣きになる羽目になったため、空中勤務者は原則として少尉以上にするという規定が設けられた。また、統合戦闘航空団が独自に階級を上下させる事もミーナとサーシャの一件をきっかけに廃止されたため、A世界では勤続年数が『現場での偉さの指標』となった。黒江たちが方針決定の際に先輩の赤松と若松にお伺いを立てているのもそれが理由だ。
「軍医少佐になったのだから、当然じゃ」
「貴官は兵科の違いで差別するのかね?坂本少佐?」
「ルーデル大佐!?この世界では現役を続けて!?」
「辞める道理などないからな。足を拭き飛ばされた以上は」
ニヤリと微笑うルーデル。A世界ではウォーモンガーであるのと、なおかつ片足が義足になっているのと、Gウィッチであるので現役である。B世界では孤児院を運営するために引退していたらしく、そこが最大の違いであった。
「四年前の戦いで被弾した時に吹き飛んでな。それもあって現役を続けている。ハッハッハ…」
「この世界は世代交代が停滞したと聞いておりますが、あなたもまだ現役とは…」
「新人が入らなくなった以上は仕方ないことだ、中佐」
「そうだ。私が大将に祭り上げられるほどだからな。この世界では、入隊の最低年齢が15歳に引き上げられた。任官の頃には19歳。寿命をコントロールする術が確立されたが、普通は入ろうとは思わんよ」
例として、この時期の扶桑の新人ウィッチは集団就職で送られてきたウィッチが主だが、嫌々送り込まれたので、戦後は軍に残らないだろうと見込まれていた。軍に残ってくれる志願ウィッチを欲しがった軍部だが、最低年齢引き上げが農村部からの敬遠を生み、この時期には世代交代は停滞している。黒江達の世代が未だに戦力の中核である時点で『お察し』である
「話に聞く、クーデターとサボタージュですか」
「そうだ。黒江くんから話は聞いていよう。」
ルーデルはそこでGウィッチが直面していた問題を話す。魔力の減衰が起きなくなったが故に味わった辛苦を。
――立花響はキュアグレース/花寺のどかとしての記憶と変身能力に目覚めた。とはいえ、立花響としての自我は保たれたため、シンフォギア装者である事には変わりなかった。沖田総司の人格のことはこの頃には割り切れていたので、双方で上手くやっていた。プリキュアへの覚醒で『プリキュアコミュニティ』へ加入し、その末席に加わったわけだが、プリキュアの力へ羨望を抱いたことがあった自分がそれに目覚めたことには苦笑いものだった。とはいえ、シンフォギア装者であるためか、単独で変身が可能かつ、戦闘でヒーリングステッキを必要としない。これはキュアアースとも共通する。また、覚醒に伴い、自己意志で花寺のどかの姿になれるようになったため、プリキュア間の会議などではその姿を取っている――
「今の現役プリキュアと言われてもなー…。実感ないよぉ」
「仕方ありませんよ。あなたは2020年のプリキュアなんですから」
「初期の人たちと世代離れてるって認識すると、すっごく自分が青二才な気がするよぉ、はーちゃん」
「あなたはオールスターズの経験がありませんからね。私達が最後ですし」
「あれ?昔、はなちゃんはあるって…?」
「あれをカウントしていいものかと。同じ場所で混合チームで戦ったわけじゃないですから」
『共闘』という意味で本当に他チームと共に戦ったプリキュアは『魔法つかい』が最後である。野乃はなが現役中に共に戦ったのぞみとラブはこの場にいる彼女たちではなく、別の平行世界の存在であるらしく、その時に共闘したアラモードのメンバーも、そのことを指摘している。
「でもさ、素でシンフォギアやプリキュアと戦える人がいるのは驚きだよ。私の師匠(風鳴弦十郎)がそうだけど、その人以外にもいるなんて」
「世の中には、素で超高層ビルを蹴りで打ち上げられる人たちもいますからね。それを考えれば、不思議じゃないですよ」
のどか(響)はガンダムファイターの存在をこの時にことはから初めて教えられた。不思議そうだったが、彼女も現在進行形でシンフォギア装者であるが故か、既にスペック面で現役時を上回るのだ。
「はーちゃんはどうやって、現役時代より強く?」
「ある時に光子力とゲッター線を制御したからですよ。神、マザー・ラパパの後継者としての力はZEROのせいで失いましたけど、それを補って余りあるモノを手に入れました。」
ことはは大地母神では無くなったが、光子力とゲッター線を制御し、別の意味で『プリキュアの壁』を超えた最初のプリキュアとなった。それにドリーム、ピーチ、メロディが続いた形になる。
「ストナーサンシャインが得意技になったから、色々とツッコまれますけどね」
「ストナーサンシャインって、たしか……真ゲッターロボの…」
「ええ。のび太のところで暮らし始めて、半年経った辺りで会得したんです。魔法が通じない敵がいるなら、この方向を極めるしかないって思って」
「ラブちゃんは何の力を?」
「平成ライダーの力です。仮面ライダーアギト。その力に覚醒めていたようです」
「昔、子供の頃に見たことあるけど、あれってさ、誰でも素質があるような」
「ええ。人の持つ力ですから。『彼』はそれが明確に覚醒めた例です」
「チートじゃない?」
「ドリームはマジンガーの魂と融合したのですよ?それのほうがチートですって」
ことはは精神的成長をしたため、変身前でもフェリーチェの時のような口調を使うようになった。多少は砕けてはいるが、概ねは敬語であるため、現役当時より大人びた印象を与える。
「初めて、マジンガーを見た時は怖くなってね。現在科学の延長線上の存在が先史文明時代の異端技術を圧倒したから。自分の居場所が無くなるんじゃないかって思ってね。ただの杞憂だったけれど、結果的には大恥かいてね…。」
「わかります。常識が通じない何かが介入すれば」
「アテナの化身の城戸沙織さんに謝罪させたから、一時、周りと気まずくなってね。オリンポス十二神を謝罪させたのは前代未聞の珍事だって。あの時は私のガングニールなら、キャロルちゃんを助けられたんじゃって思ったから。だけど、別の世界の神々にはガングニールの力は絶対じゃない。それが真理だって認めるのが怖かったんだ」
のどか(響)はプリキュアには戻ったが、シンフォギア装者である事は捨てていない。これは平行世界の立花響が『小日向未来を守れなかったから』という理由でシンフォギアを捨てて『エレクライト』という道具を選んだのとは対照的で、ガングニールの力にプリキュアの力を重ねることで絶大なパワーを発揮する。彼女の信念の影響か、ヒーリングステッキを使わなくとも徒手空拳で戦える。
「だけど、それを受け入れて、のぞみちゃんたちが私のことも認めてくれた上で、他人の誇りや信念を尊重するべきだって教えてくれた。だから、私はプリキュアになれた。正確には、戻ったって言うべきかな」
「ですね。信念は人それぞれ。のぞみさんとはなさんが前世で世代間闘争みたいなことを起こしたように、あなたも調と揉めていたでしょう?つまりはそういうことです」
のどか(響)は穏便な形で自分と調の仲を取り持ってくれたのぞみやのび太を慕うようになっていた。特に、どこかの世界で共闘した記憶があるという、のぞみの事を姉のように慕うようになっていた。のび太とのぞみは『人たらし』という共通点があるが、この場合は経緯上、相容れなさそうな調との仲を取り持ってくれ、自分の思いを正確に伝えてくれたからだろう。(のぞみも錦の気質が入ったおかげで、後輩への面倒見の良さに磨きがかかっている)
「でも、シンフォギアへの適合率を上げた要因が第六感を超えることって、どういうこと?」
「常人のポテンシャルを超えた時点でシンフォギアの負荷は無きに等しくなります。調は綾香と感応することで、セブンセンシズに覚醒めた。その時点でシンフォギアを常に纏っていても負荷はかからなくなり、高出力のシンフォギアを恒常的に纏える。あなたが調と出会った時に見た低出力型のギアで無くなっていたのはそれが理由です」
「だからって、日常生活で使っていいのかぁ」
「他の世界には規制する法律はありませんし、体を慣らすという意味では、いい修行です。形状も多少変わっていますけどね」
「マフラーを巻いてるのは誰の影響なの?」
「多分、昔にのび太が巻いてあげた事があるのと、仮面ライダー達の影響でしょう」
「それと、電撃と剣を使うのは?」
「それはいろんな方の影響でしょうね」
苦笑することは。調は黒江達の英才教育もあり、ダイ・アナザー・デイ以降はオールラウンダーになっている。シュルシャガナ本来の姿である炎剣を覚醒めさせたため、以前とファイトスタイルも変わっている。また、古代ベルカの10年の経験と黒江の技能を受け継いだため、接近戦ではマリアと翼にも引けを取らなくなっている。
「翼さんが膨れてたよ?異世界に10年いただけで強くなれるのかって」
「戦乱があった世界に行ってましたからね、あの子は。そこで生きるために戦った結果ですよ」
風鳴翼はアリシアとフェイトの姉妹という自分と声が酷似する存在を知ったばかりか、10年も鍛錬したはずの自分の剣技に調があっさり並んでしまった事に複雑な思いがあるようだが、黒江の剣技を引き継いで転移し、それを開花させたと考えれば合点がいく。
「それと、綾香の素質を引き継いだからでしょうね。それが徐々に開花したのなら」
「なるほど~」
「あなたは装者であり、プリキュアでもある。複雑な立場に置かれてる事はご理解お願いしますよ?それと、別人格の沖田総司はコピーロボットの改良型を素体に分離出来ないか模索中だそうです」
「ありがとう、はーちゃん。」
「お互いに苦労は多いですからね」
二人はこれ以後、名字に『花』の文字がつく三人のプリキュアの一人である事や、接触の機会が多い事から交流を深めていく。ことはは以後、花寺のぞかとしての記憶に覚醒めつつも、立花響としての自分を捨てずに生きていく立花響の助けになっていく。そして、正式にプリキュアコミュニティに加入した彼女を先輩として導いていくのだった。みらいとリコからは『はーちゃん、お姉さんぶっちゃって』と微笑ましく見られていたという。
――扶桑海軍は空母の刷新に苦労しつつも、戦艦については更新に成功し、第一戦隊、第二戦隊の構成艦を56cm砲艦へ飛躍させた。日本からは『行き過ぎた大艦巨砲主義』と揶揄されているが、史実大和型戦艦に匹敵する能力の戦艦がアイオワ級戦艦に取って代わろうとしている上、他国は戦艦戦力の維持という項目に財政難を理由に興味を失い始めていたため、『連合国の要請』で扶桑は戦艦保有数を二桁で維持する必要に迫られる事になった。必然的に大和型戦艦を超える火力が必要となったのは言うまでもない。ブリタニア連邦の衰退で同国戦艦部隊がアテに出来なくなった(新鋭の七隻さえ維持費の観点から反対論が大きかった)からだ。そのせいで空母の予算が遅れたと空母閥は愚痴ったが、欧州系の戦艦の平均能力ではアイオワ級戦艦にも対抗が困難である事から、扶桑は連合国全体の財政援助を受けつつ、戦艦部隊の定数維持に一定の国力を費やす事になった――
――扶桑皇国 統合参謀本部――
「山本、欧州は戦艦の縮小に移った。なのに、なぜ戦艦を維持するのだ?航空閥のお前らしくもない」
「仕方あるまい。俺としても本意ではないが、欧州系の戦艦はアイオワ級戦艦にも対抗は困難だし、ガリアがあらゆる意味で死に体となり、戦艦どころではなくなった。カールスラントは二度と一次大戦の威容は取り戻せん。ロマーニャも財政難だ。これは連合国の意思なのだ、古賀」
山本五十六と古賀峯一は密談していた。内容は欧州の建艦状況である。欧州はミサイル艦に傾倒しだしたが、ミサイルは怪異には必ずしも有効な兵器ではないことが判明した事から、慌てて戦艦の建造を再開したものの、財政難から、昔年のような大量建造は不可能だった。欧州にはブリタニアにしか46cm砲の製造能力はない上、ブリタニアは機密扱いしており、やっとロマーニャに提供されたばかり。とてもリベリオンへの抑止力にはなりえない。
「連合国の意思、か。俺は戦艦派だが、扶桑一国に負担を押し付ける気か?」
「仕方あるまい。連合国といっても、内実はブリタニアと扶桑が主力化している。他の国はもはや宛にできんよ、古賀」
山本は愚痴る古賀を宥める。お互いに連合艦隊司令長官の経験がある大将であり、旧来の元帥位を持っていた最後の海軍軍人である。それ故に扶桑戦艦部隊に連合国が仕事を押し付けていく事に、なんとも言えない気持ちがある。
「ガリアはペリーヌ・クロステルマン議員の提言で戦艦建造は当面の間、見送り。ロマーニャがやっと一隻、ブリタニアは維持費で揉めている。カールスラントは鹵獲艦の再整備に五年。アテにならん。列強と言われた国々もこうなると張子の虎だな、山本」
皮肉る古賀。1943年時の連合艦隊司令長官だった彼、 リバウ撤退戦で大和型戦艦を初お披露目した際、他国から散々に嫌味を言われたからか、今の状況はちょっぴり嬉しいのだろう。
「時代の流れさ。我々はたいていの世界におけるアメリカ合衆国の運命を背負うことになったと言っていい。そうなった以上、存分に連合艦隊の名を世界に轟かせようではないか」
日本側の思惑とは裏腹に、連合艦隊はウィッチ世界最大の海軍主力を指す単語に変質し始める。一旦は任務部隊制になることが内定していたが、センセーショナル的に扶桑で報じられてからは反対運動が物凄く、頓挫せざるを得なかった。代替で第三艦隊を空母機動部隊に固定化することは決議され、第一航空艦隊は『第一機動艦隊』への改称が内定している。連合艦隊はこうして存続し、指揮専用艦が旗艦になる事はあまりなく、生存力の都合で戦艦か空母が旗艦になる事が続けられていく。司令部そのものは横須賀市船越、予備が日吉、呉、大神に建設されたが、旧日本軍義勇兵から『引きこもり』との批判があった兼ね合いで、戦艦か空母に旗艦設備を設ける事は続けられる。これも日本連邦特有の現象であり、艦隊司令部が指揮専用艦に移転し始めていた時期においては奇異ですらあった。
「お前の子飼いの子らだが、彼女らに反対した連中を飛ばしてよかったのか?」
「構わん。サボタージュした者は、理由をつけて同じことを考えるに決まっとる。アリューシャンで冷や飯を食うか、最前線で名誉の戦死をするか。どちらかを選ばせたほうがいいだろう。お上に逆らったのだ。それ以上の理由はいらんよ」
収監中の反G派の処遇も内密に決める二人。国家元首の命に逆らったということで、書類に残さない懲罰部隊に回して合法的に死なせるか、アリューシャンなどの後方勤務で終えさせるか。そのどちらかにするか選ばせると。中々エグいが、扶桑社会最大のタブーを犯した者に情けは無用。それが扶桑軍の最高首脳らの選んだ選択だった。
――キュアドリームとキュアミントはノビスケを迎えに行く途中、再開発の進む駅前の様子に不思議な感覚を覚えた――
「不思議ね。私達は本当なら、この時代には20代の半ばに差し掛かってるはずなのよ?」
「それは自覚してますよ。かれんさんも去年(2019年)のコミケで似たような事言ってましたし、町を歩くとありますよ?親子連れの親に『子供の頃に見てました~』とか言われるの。来ますよ、結構」
「確かにね。13年経つと、色々と変わるのね」
「パソコンもSSDが狩猟になりつつある時代ですからねぇ。今の子供には『巻戻し』は通じませんし」
「えーーーー!?」
「ほら、ラジカセもビデオも衰退してますし」
「うぅ。ジェネレーションギャップ感じるわ…」
「仕方ないですよ。はるかちゃんの代以降は2000年代生まれですから」
「嘘ぉ……」
「あの子達は本当なら、あたしたちよりずいぶん下なんですよ、こまちさん。後で分かったんですけどね」
第一世代プリキュアは90年代生まれだが、第三世代プリキュア(プリンセスプリキュア以降のプリキュアを指す)は2000年以降の生まれ。前世でのぞみと対立した野乃はなに至っては2005年生まれ。なぎさとほのかが現役の時代に赤ん坊だった計算である。そのため、普通に行くと、第一世代は第三世代プリキュアとは若いうちには出会わない計算になる。そのため、ジェネレーションギャップはかなり大きいといえる。
「なんだか、歳取った感覚がするわ…」
「それもまた不思議なところですよ。来年(2021年)の映画のことは?」
「りんさんから聞いたわ。私とかれんも出てみようかしら、声の出演……」
「こんな事もあろうかと、スネ夫君の広告代理店に予め、声の出演の打診はしときました。このご時勢ですから、先方も了承すると思いますよ。ヒーリングっどをメタ的にも救うためにピックアップされたんだろうし、あたしたち」
メタ的な発言だが、のぞみ(キュアドリーム)は21世紀も20年を迎え、自分たちの現役時代からも15年近くになる時期に、自分たちがピックアップされたのか。その理由に気づいていた。その上で話題作りのため、自分、こまち、かれんの声の出演をスネ夫の広告代理店を通して打診しておいたというのぞみ。軍人になったためか、そこは用意周到になったらしい。
「うららさんには?」
「打診はしときました。スケジュール次第ですね、うららは忙しいですから」
春日野うららの出演は返事次第ともいうのぞみ。うららは元々、女優志向のアイドルだったので、この種の仕事はしたがるだろうと読んでいた。前世から入れると、もう腐れ縁だからだろう。
「そう言えば、あなた。現役時代にうららさんのマネージャーに間違えられた事があったわね?」
「ああ、あの時の事ですか。懐かしいなぁ、あたしにとってはずいぶん昔の事だけど、楽しかったですよ」
「生まれ変わったのを機会だと思って、バイトしてみればどうかしら?」
「そうですね。今度の休暇はうららの広報任務を手伝うとするかな。こまちさんもハニーさんの戦いをサポートしてみたら、どうですか?」
「お姉ちゃん、神出鬼没だから。でも、まさか……お姉ちゃんの魂がアンドロイドのボディに宿って、キューティーハニーに生まれ変わってるなんて、思ってもみなかったわ。無鉄砲なところは昔と変わってなかったから、ハラハラ……」
「ハニーさんはヒロインの位置づけ的にはあたしらの大先輩ですからね。参考にしたいとこ多いですよ、あたし」
「お姉ちゃん、空中元素固定装置持ってるから、変装は自由自在。戦えば、私達より多彩な技とトリッキーな動きで相手を翻弄する。かれんが腰抜かすの分かるわ」
「私達の技は昔のを入れても、二つか三つですからね。ハニーさんはフルーレとブーメランの名手。憧れますよ」
「あの格好は目のやり場に困るけれどね」
「仕方ないですよ、メタ的に言えば、ハニーさんはダイナ○ックプロの作品の主人公ですから。『ドワォ』ですよ、『ドワォ』」
「あ、あはは……」
のぞみもだいぶゲッター的擬音を理解してきたようだ。こまち(キュアミント)は自身の姉がキューティーハニーになっていた事に戸惑いついつも、この頃には受け入れているようであった。