――扶桑皇国は結局、手綱を握ろうとした日本への反感はあるものの、リベリオンと戦うため、それを押さえ、日本の反扶桑派の切り崩しを行いつつ、64Fに最高の装備を与えることで乗り切る選択を取るしかなかった。軍装備の更新の遅延は大戦では致命的だが、あまりに技術が高度化しすぎ、今度は悪いと、21世紀での小学校レベルの学業しか修めていないことが多い前線の兵士では扱いきれないという問題があった。そのため、自衛隊は扶桑へ教官を多数送り込み、近代兵器の扱いを教育した。そして、日本は扶桑向けの兵器を売りさばきたいが、扶桑は有事であった都合で大量生産がすぐに可能な米国製兵器のライセンス生産を急ぐ。戦車や小銃で日本が取引を急いだのは、少しでも扶桑の市場を得るためであった――
――地球連邦軍の兵器も多くは旧・米国や自衛隊系兵器の子孫であることを考えれば、扶桑が双方から兵器を得るのは当然の流れであった。MSはジェガンやリゼルが供与され、コンバットアーマーも生産され始め、扶桑の軍需産業は活気を呈していた。カールスラント系の技術者からは『ずるい』、『チートだ』と文句が出たが、チート的な物量に敗れた記憶がある日本からすれば『知っちゃこったない!』な戯言だ。そのため、ジェガンやリゼルでは満足しない部隊向けに、Z系の供与も検討されている。64Fはその中でも『特別』であり、連邦軍でも最新装備とされるモノを多数有している。これは黒江達が地球連邦軍にも籍があり、実際にロンド・ベルに属しているためだ――
――模擬戦の第二ラウンドは同じ土俵で行われたものの、ストライカーでも百戦錬磨の黒江の心理トリックも用いた戦闘に圧倒されていた。一対多であろうと、黒江は一対多が当たり前の戦場のほうが長いため、個々の分断などはお手の物だった――
「この人、ハンナ並に度胸ある!」
「悪いな、俺に同じ手を使うのは凡策なんだよ!」
黒江はハルトマンBの模擬弾を避けつつ、ストライカーを狙う。射撃は『中の上』としているが、実際は世界水準では一流に属している腕前。のび太やゴルゴのような超精密照準はできないが、戦闘機パイロットとしては充分に一流の照準精度である。更に接近戦では扶桑歴代トップ5に入ると自負するため、バルクホルンBを更に上回るパワーを見せる。
「ば、馬鹿な……!私が力負けしているだと…!?」
「お前の考えは把握している。ステゴロで勝とうなんざ、10年早いぜ!」
これは黒江がグレートカイザーに乗るために肉体を素で鍛えていた事もあるが、オーラパワーの制御も心得ていたが、聖闘士になるために格闘を極めた事もあり、黒江と同等のメニューで肉体を更に鍛えたバルクホルンAには当然ながら負けるが、史実と同程度の鍛え方のBよりは上のパワーは発揮する。そのため、Bは力で負けてしまい。組み合いで圧される始末であった。もっとも、黒江はパワーで制するタイプではないが。
「お前には悪いが、金縛りに遭ってもらうぞ、バルクホルン。リストリクション!!」
黒江はリストリクションをかける。すると、バルクホルンは体の自由が効かなくなる。魔法は使えるが、その場から動けなくなる。
「なんだこれは!?魔力を強めているのに動けんだと!?」
バルクホルンBは魔力を強めることで振りほどこうとするが、体を超常の力で金縛りにされているため、いくら身体強化魔法を使おうと無意味である。そして、エーリカにはサイコキネシスで動きを止める。エーリカBは魔導エンジンを吹かすが、推進力を得られず、呪符が虚しく輝くのみだ。
「金縛りを解くから、バルクホルンをお姫様抱っこしてやれ。」
「へ、なんで?逆じゃ?」
「いいから」
金縛りが解けると、とりあえず言うとおりにする。すると。
「ほんじゃ、二人とも。ベット行きだ。スターダストレボリューション!!」
黒江はスターダストレボリューションを撃ち、二人を気絶させ、撃墜判定を得る。聖闘士の闘技は光速だが、威力の加減は効くので、この時は気絶させる程度にして放った。これを準備動作の段階で避けられるかが超人と普通の人間の差になる。(のび太とゴルゴは余裕で可能)
「いぃ!?なんだ今の!?」
「さしづめ、超能力だな。お前はどこでも似た感じだな、シャーリー?」
「いや、ここのあたしほど振り切れてねーって。なんだよ。ヒロインしてる癖にブチ切れやすいって」
「ガサツになってんだよ、お前。速度記録も半世紀は塗り替えられない新記録出した後はもっぱら忙しいから。ヒロインってのは疲れるんだとよ」
「その癖、なんで歌が上手いんだよぉ!?」
「退役後でも食えるようにってトレーニングさせたからな。お前、意外に才能あるぜ?」
シャーリーは意外に音楽の才能がある。それは北条響としての前世とは関係なしであるらしく、黒江も関心するほどの素質であり、美雲・ギンヌメールの影武者としての仕事をケイオスから公式に依頼されるほどだ。
「ほ、本当かよ」
「引退したら、レーサーをやるついでにのど自慢でも出たらどうだ?」
「考えておくよ」
この時の会話でシャーリーBは歌手の道も考えるようになり、元の世界への帰還後、ウィッチを引退後の後世の記録によると、子を儲けた後は親戚の薦めで歌手をレーサーの副業で始め、自身の知名度もあり、売れっ子になったとのこと。(戦い続ける宿命を背負ったAと対照的だが、Bの辿った運命こそ、シャーリーという人物本来の人生に近いと思われる)
――模擬戦の観覧席――
「閣下、黒江閣下はあれで実力の半分も出していないとは?」
「カールスラントが世界最高峰という君の世界と違い、この世界では、我が国が真の意味での世界最高峰の戦闘ウィッチを要しているのだ」
小沢治三郎はミーナBにそう言う。A世界では扶桑海事変当時の黄金世代が時局の都合で大量に扶桑軍に呼び戻され、復帰した都合、ベテランから中堅の士官の予備役編入が大量に起こったカールスラント空軍を質で逆転。この時代にはカールスラント空軍から義勇兵に転じた者達の教導もあり、扶桑空軍は急速に勃興しつつあったからだ。
「この世界はどうなっているのです?」
「一言で言うなら、特異体質者が急激に世界各地で増え、その体質になった者に共通する点が転生者だったという点だ。その者達が偶然にエースウィッチだったのでね。そのことに我々が気がついたのは四年前の事だ。我が国ではその処遇で内乱にまでなった。その影響で『ウィッチ兵科の招来における発展的解消』の方向でまとまったのだ」
小沢はGウィッチの有用性に国が気がつく以前から、黒江達の後援者だった。山本五十六の紹介によるもので、黒江達が海軍側に『陸助のくせに生意気な!!山本の子飼いめ!』と認識されていたのは、山本五十六が事変時から後援していた関係である。黒江が記憶封印期にいじめで鬱病になりかけた際、小沢は山本の使いとして陸軍航空総監を脅し、山本とともに黒江を欧州に送り込む手引きを裏で行った。多数派は『いくら英雄とは言え、盛りをすぎようとしている年齢のウィッチに肩入れするな』と反発したが、黒江は記憶が封印されていても普通に欧州で戦果を挙げた。そして、先に封印が解けた圭子、智子が相次いで神通力を復活させ、黒江にもその予兆が表れた段階で呼び戻す手はずだったが、グレーテ・M・ゴロプの裏切りで記憶が覚醒。そのまま未来世界で戦った後にウィッチ世界に戻り、501に着任したのが大まかな経緯だ。
「君には言い難いが、この世界の君は事変について、あまりに無知すぎた。それが45年からの混沌の根本原因なのだ」
「私が…ですか、閣下」
「坂本くんから概要は聞いていよう?君のした事で国際問題になりかけ、整備兵の不満も密告にまで至った。カールスラントは責任を取り、501の運営権を我が国に譲渡した。大事にしない代わりに、巨額の賠償金も支払ってな」
「ば、賠償金!?」
「天皇陛下は外務省に国際連盟(実際には国際連合に移行していたが)の国際司法裁判所に提訴を命じていた。我が国最高の英雄を君等の国はぞんざいに扱った。大臣の制止がなければ、カールスラント軍の名誉は地に落ちていたよ」
カールスラントがミーナAの査問と処分を急いだ背景には、国際司法裁判所に提訴されることでカールスラントへの国際的反発が強まり、副次的に国際社会の居場所を無くすことへの恐怖、人種差別の軍隊とレッテルを貼られ、政治家の手で戦後になった途端に懲罰的に軍隊が解体されることへの懸念があった。ミーナAは自分の無知が国際問題になっている事へのショック、自分より年上のウィッチが昔年の神通力を未だ維持していることでの混乱で錯乱し、人格の変容を引き起こした。ミーナはこの錯乱を以て、『精神的な意味での死を迎えた』とされる。残された肉体は西住まほの意思が手中に収め、その器となった。変容後のほうが高評価であるのは、温和なように装っていても、実際にはヒステリックで精神不安定なところがふとした拍子に出るのを整備兵などのスタッフに裏で詰られていたり、陰口を叩かれていたためであろう。
「面と向かっては言いたくないが、この世界の君は現在の人格のほうが評判がいいのだよ」
「……」
ミーナBは別の自分の顛末に顔を曇らせる。Aから大まかには聞いていたが、精神的に死んだとしか言いようがないほど追い詰められた経緯は自分でも同情できないが、そもそも、A世界の自分はなぜそこまで『無知だった』のか?それを問う。
「閣下、この世界の私は何故、そこまで無知だったのです…?」
「ロンメル元帥が秘書官に調べさせたが、君はこの世界では座学を省略されたままで前線勤務についている。オストマルクが落ちた後、緊急で補充要員にされたのだろう。それが6~7年後に君自身を追い詰めたのだ。人事書類のチェックを怠っていなければ、この世界の君はガランド中将の後継にもなり得たろうに」
小沢の言う通り、ミーナAは黒江達を上手く扱えていれば、今頃はカールスラント空軍総監にもなれていただろうと惜しまれている。坂本が頼りにすることに嫉妬心が芽生えたことで出世を棒に振るどころか、降格された事はミーナの軍人としてのキャリアに傷を残す結果になり、ガランド後継の空軍総監もグンドュラ・ラルが選ばれることで、完全に出世コースから外れたとされる。当の当人(まほ)は『現場指揮のほうが気が楽でいい』とし、陸戦ウィッチ資格も取得し、半ば『戦車乗り』に転向済みだ。
「もっとも、君が『正気』でいたとしても、プリキュアを扱いきれたかどうか」
「……」
小沢はそこは冷徹だ。プリキュアを指揮するには、更にそれを超える強さを持つ者が必要であった。それが七勇士の聖闘士組だったのである。ウィッチとしても、古参のエースである者が次々とプリキュアに覚醒していった上、プリキュアとしても歴戦の勇士であるからである。ミーナ自身も一時はシャイニールミナス/九条ひかりの転生を目されたが、そうでは無かったためだ。だが、まほの指揮能力とカリスマは本物であり、現在では武子の信頼を勝ち得ている。それを考えると、のぞみが『ウィッチとして古参の名うてで、プリキュアでも屈指の勇士』という二重属性を得ていることが如何に反則だったかが分かる。
――そののぞみはというと、ススキヶ原での休暇が終わる数日前、同地に現れた複数の怪異をカールスラントコンビ、フェイト(腹痛から回復)と共に迎撃していた。ただし、フェイトはデバイスがオーバーホール中であった上、聖衣も聖闘士世界で修復中であるので、別の手段を行使した――
「フェイトちゃん、聖衣もデバイスもないんでしょ?どうやって」
「なーに。プリキュアは姉さんの仕事だが、コイツを持っている。翼には悪いが、使わせてもらう。Imyuteus amenohabakiri tron……」
「えーーー!?」
のぞみも唖然とするが、黒江がコピーしていた天羽々斬をフェイトが保有していた上、普通にシンフォギアを起動させられたからだ。しかも、のぞみの知るB世界での翼のギアと同型の高出力型で。
「翼は私の同位体の一人なのだろう。小宇宙を使わなくとも、普通に出来たからな」
フェイトは不思議と風鳴翼と縁があるのか、天羽々斬を普通に使えると明言した。また、過去形で『できた』という事は、前に使った事があることを示している。アームドギアも翼同様に太刀であり、フェイトの金髪と一本結びの髪形を見ないで、声だけ聞くと翼と間違える。(青年期フェイトの声色は風鳴翼にそっくりであるため)調も腰を抜かして驚いたと言い、風鳴翼を知る者ほど驚くという。
「じゃ、あたしも!プリキュア・メタモルフォーゼ!!」
ブレスで変身するのぞみ。この時は本当は現役時代のように、キュアモで変身したいが、破損の危険を懸念した黒江が預かっているために、ブレスで変身しているわけだ。
「街の人達は退避したな?」
「ええ」
「まさか、この世界にも現れるとはな。我々を追ってきたわけでもないだろうが…とにかく、殲滅あるのみ!お前らはまず陸戦型を叩け!自衛隊に通報が行ったとしても、来るかどうかわからんからな、日本だと!」
バルクホルンとハルトマンAは持ち運びの効くF-86ストライカーで飛び、空戦に入る。ドリームとフェイトは陸戦型と戦う。
「翼、お前の技を借りるぞ。……月よ煌けッ!!」
焔を纏ったアームドギアでの一閃『風輪火斬・月煌』だが、フェイトは翼と違い、二刀流でX文字に切り裂く。これは青年期以降は二刀流を好む故の独自性である。蒼い炎が怪異をコアごと焼き尽くし、刃が斬り裂く。その際の速度はフェイトのほうが翼を上回る。そこから高速戦闘に移行する様子は手慣れたものだ。(元からフェイトは高速戦闘を得意としていたため、そこについては翼を元より上回る)
「やるなぁ。あたしもやるとしますか。ショルダースライサー!!」
こちらはマジンガーの力を使っての召喚である。同じ剣でも、属性が被らないようにするのは大変であることの表れだ。徒手格闘をしないのは『格闘で吹き飛ばすことでの街の被害を考えてのこと』でもある。
「現役時代と違ってね、こちとら、剣使いなんじゃーーーッ!!」
プリキュアとしては邪道とされるが、転生後は積極的に剣戟を行うキュアドリーム。素体となった錦が好んでいた影響もあるだろう。怪異を剣で両断するのは、ダイ・アナザー・デイ以降は特段に珍しくもなくなったが、以前は『好事的なウィッチの曲芸』扱いだった。だが、ダイ・アナザー・デイ以降はその使い手たちが戦線を支えたことで逆に羨望の的になったが、剣技を持つウィッチはGウィッチを含めても、けして多くはない。のぞみはダイ・アナザー・デイでフルーレなどを積極的に用いていたが、『邪道』とクレームがついたのに鬱憤が溜まっており、先程の叫びは心からの叫びである。フェイトは『お前なぁ…』と呆れ顔だ。とは言え、剣術はきちんとしており、そこはキュアラブリーから教わっていたらしい。
「先輩たちの影に隠れてるけど、あたしも剣使いなんだからねっ」
ダイ・アナザー・デイ後に褒章を受ける際、連合軍内の『ソードダンサー』の称号の選考から漏れた事が悔しいらしいが、プリキュアは徒手格闘が正統派と見做されるため、ドリームはそちらで褒章を受けている。(なお、シンフォギア勢はウィッチ世界側からの勲章と褒章の受け取りに色々な理由で難色を示したが、ウィッチ世界からの戦闘参加への誠意でもあるので、受け取ることにした。時空管理局が年金などは送金する。ちなみに時空管理局は派遣された人員が現地での勲章や褒章を軽視したりしたので、M動乱では同情されずに管理世界からの援軍が得られなかった)
「わかった、わかった」
呆れつつも、二刀流で戦うフェイト。時空管理局がM動乱後の改革で三権分立がなされた後も能力が惜しまれ、例外的に『刑事官』としての新規資格が与えられ、引き続き旧・任務を続けている。所属は警察機構だが、本人が軍人に近い気質なのと、旧任務が軍人寄りだったので、殆ど駐在武官や観戦武官のようなポジションであり、他国軍隊では佐官待遇である。(元々、自分が犯罪者である自覚はあるので、分割されて成立した警察機構にいるつもりはなく、プレシア・テスタロッサの娘であるため、警察機構での出世の見込みもないため、軍事部門に転じるつもりだった。だが、執務官としての能力や、名誉などの保全などについての義母と義兄の説得もあり、籍だけは警察機構に残すことになった)
「フェイトちゃんはどうして、警察機構に残ったの?」
「私も軍へ移籍するつもりだったよ。実の母が犯罪者である事には変わりないし、出自的にも組織には好ましくないだろう?はやてもその自覚があるからな。だが、今の管理局は有名無実化が進んでいるから、犯罪歴があろうと高官にしないと、人材がいないという…」
「それで、はやてちゃんが少将に?」
「ああ。異論はあるが、今のはやてなら務まるからな」
「あかいあくまだもんね」
「本人聞いたら怒るぞ?」
「いや、今じゃ有名だよ?」
はやての前世が『遠坂凛』であったことはこの時期には有名である。その要素が強く出始めた現在は『清楚を装っている腹黒』と冗談めかして語られている。『イリヤやクロとは前世か同位体の縁だろう』とは本人の談。はやて本来の温和な性格では軍事指揮で後手後手に回ることが多かったが、遠坂凛の激しさを得た現在では『腹黒い以外はほぼ完璧』(遠坂凛としてのメカ音痴がないため)と評される。
「やれやれ」
「そっちこそ、翼ちゃんが聞いたら驚くよ?」
「箒がアガートラームを使える時点で、だいたいは察していると思うが」
「あの時はあの子達、話に聞いてても驚いたもんね」
マリアは元々が適合率が最低レベルだったため、ギアについてのこだわりはない。アガートラームも妹の遺産を受け継いだにすぎないことを自覚している。翼も愛着はあれど、史実の経緯を知った後は『父が多くの世界線で祖父の凶弾に斃れる事を知ってしまった』ため、自身の力に疑問を持つようになり、同時に不倶戴天の敵であるフィーネ(間接的に天羽奏を殺したとも言える)が複数回の転生を経て、キュアスカーレットになっていたと知った時には、感情的になって声を荒げているなど、『揺るぎない力』を求める傾向が強くなっている。(聖闘士や神の存在を知ったためもある)そのため、フェイトの魔法の力を欲するなど、過去のトラウマと別世界での父の死が複合した恐怖を抱いているとも言える。
「まぁ、我々は変身に時間制限もリスクもないからな。箒も聖闘士になることで成し得たが、あの子達にしてみればチートだろう」
「あたしも手数なら、完全になぎささんを超えちゃった自覚あるからね。今じゃカイザーノヴァ撃てるし」
「本当か、おい」
「ZEROの力じゃないけど、正統なマジンガーの到達点になる大技だからね」
「姉さんが愚痴るはずだ」
「そりゃ、つぼみちゃんは戦闘面のスペックが良いプリキュアじゃないしね」
会話を交わしつつ、怪異を倒す二人。ドリームはこの時に魔神皇帝の力を行使できることを明言する。同時に『キュアブロッサムは戦闘面ではけして強くはない』とも認めてしまった。それがアリシア・テスタロッサ(花咲つぼみ)へ伝わり、猛抗議される羽目となるのだが、それは些か先のこと。
――ススキヶ原に怪異!!――
このニュースは日本政府も把握したものの、日本国内での軍事行動に野党が抗議することが目に見えていた事、『予算の無駄遣い』との批判を恐れた事により、政府は自衛隊に出動命令を出せなかった。黒江はそれを読んでいたために、電話で自分の権限を使い、百里にこの時期に移駐して間もない第三飛行隊(F-2装備)を偵察の名目で出動させた。黒江の息がかかる部隊であったので、こっそりと対空/対地フル装備で出動し、図らずしも、空戦中のバルクホルンとハルトマンを援護する形になった。
「お、ミサイルだ!」
二人と空戦中の小怪異の集団にミサイルが命中し、小型怪異は消滅する。ややあって、洋上迷彩に彩られたF-2戦闘機が飛来する。
「バルクホルン少佐とハルトマン大尉ですね?こちらは航空自衛隊の第七航空団/第三飛行隊であります。統括官よりあなた方の援護を申し付けられ、参りました」
「そうか、すまない。貴隊には対地支援と、私達の露払いをお願いする」
「了解しました、
F-2部隊は二手に分かれ、対地攻撃と制空支援で戦闘を開始。緊急時とはいえ、これが戦後初の『日の丸戦闘機の本土での実戦』であった。同時に『変えが効かない』ということでダイ・アナザー・デイでも使われなかったF-2初の実戦であった。(2035年には退役開始の見込みだったため、キャリアの後半に差し掛かる頃に初実戦ということになる)空自は戦後の時代では、世界的に見ても有力な防空軍であるため、戦中に世界最高峰と自負していた旧・ドイツ空軍のエースとの共演はある意味で夢の共演である。また、F-2は怪異の攻撃を機敏に避けられる世代の戦闘機なので、その世代の戦闘機の存在がウィッチの存在意義を揺るがした面もある。SFではやられ役と言われる現代兵器だが、一般人が思うよりは太刀打ちできる。
「別のあたし、これ見たら、どういう顔するかな?」
「私の一件でジェット嫌いだしな、向こうのお前。閣下がVF-19を持ち出したようだが、ちょっとオーバーな気がする」
「オーバーだよ。あーやなら、F-2くらいでもさ、十分にウィッチと戦えるよ?」
「お前に有無を言わせないつもりだろうな。あれの性能なら、私の背後を取れる」
「さて、どうなるかな?」
「わからんよ。メールで報告が黒田少佐からあっただけだからな」
二人はそれを話しつつ、自衛隊という21世紀では最高レベルの護衛とともに空戦を続ける。もう一つの小隊は陸戦怪異へ対地ミサイルを放ち、爆弾を投下し、地上支援を行う。ドリームとフェイトはそれを見て安堵する。
「先輩、空自を動かしたようだね」
「綾香さんは空自の高官でもあるからな。陸自が叩かれるだろうな、これ」
「政治屋ってのは…。与党も野党も保身しか考えてないんだから」
「政治屋ってのは普段は偉そうにするが、いざ有事になると、てんで頼りにならん者が多いということだ。長いものには巻かれろというがな」
フェイトはM動乱でミッドチルダ政府が自己保身しか考えていないため、管理世界への求心力が失われ、再建の際には、実質的に23世紀地球の傘下に収まる様を見てきたため、政治家、特にいざという時に自己保身しか考えない者が嫌いであるらしい。日本も日本連邦としての責務を果たそうとする者、扶桑に攻撃用の軍備を放棄させた後に現地の要請という形で自衛隊を現地で作ればいいと思っている者などに派閥が分かれており、一枚板ではないため、ウィッチ世界の太平洋戦争が短期決戦から持久戦になってしまうのだ。そのために『英雄』が重視されていくのは、Gウィッチへされた迫害を考えると、何よりの皮肉であった。
「これからどうなると思う?」
「わからんが…、戦争でも我々のような突出した個人が尊ばれるだろうな。23世紀でそうなる以上は」
ウィッチ世界も戦争の様相が変化するに従い、そうなっていった。集団戦の重要度がM粒子で低下し、かつては疎んじた『突出した個人を英雄と尊ぶ』風潮が定着していく。ちなみに武子も元来は集団戦を重視していたため、それと正反対の練度の部隊を率いることは辞退しようとしたが、事変で皇室の名代になった自分の経歴が皇室に迷惑をかけていることに悩んだ末、前世の記憶の覚醒を期に引き受けた経緯がある。(武子は元来、人を育てることで練度を高める事に定評があり、精鋭部隊の長に収めるのには反対があった。とはいえ、転生者になっていた以上、通常部隊に行かせられなくなったという事情もあった事、転生者は迫害されやすいため、一箇所にまとめる必要もあったという人事面の都合も大きい)フェイトも肯定するように、これからは英雄像が重視されていく時代だと。なのはがダイ・アナザー・デイで懲戒処分を受けた後も教導隊に残れた理由もそこにある。
「やれやれ。中学時代は気が楽だったな、それを考えると」
「仕方あるまい。こうして、社会に出た以上は政治も詳しくないと、青二才と老人に小馬鹿にされるからな。私も子供の頃、執務官としての駆け出し時代にはままあった事だ。お前も記憶の覚醒前にはよく言われてたろ?」
「確かに。心当たりある。ホント、大人の世界は汚いんだから」
「子供の頃のようなピュアさは必ずしも保てんよ。それが『成長』だ。なのはや俺も、のび太もある種の大人としての汚さは持ってしまったからな」
のび太も暗殺などの際に、人のいいところを利用して標的を油断させることもあるので、それを指して『大人の汚さ』と評した。フェイトも子供の頃の純真無垢さを無くした自覚があるからだろう。
「なのはだって、あの失態があってから、管理局でも散々な言われようだ。高慢ちきだの、人を育てる資格がない女だの言われてな。あれ以来、酒を飲むようになった。世間は勝手なものだよ、のぞみ」
「教職時代に似たような経験あるから、その気持ちわかるなぁ…」
「日本人ほど、熱し易く冷め易い気質の民族も中々いない。1945年8月15日を境に明治以来の富国強兵を捨て去ったように、日本人はある意味では卑しい国民性を持つと言えるな。強きをけなし、弱きを嘲笑う。戦争に負けた後は特にそうだ」
「ほんと、そういう話聞くと、守るのも馬鹿らしくなるよ」
「ま、子供達の笑顔は守らんといかんのがつらいところでもあり、やりがいだ。執務官なんて仕事を10年以上してると、特にそう思う」
シニカルな会話だが、職業柄、人の闇に向き合ってきたフェイト、前世で教職の闇を散々に味わったのぞみ。のぞみもだんだんと時空管理局の業界用語に詳しくなるが、それはフェイトの影響だった。