――キュアハートとキュアドリームはキュアソードを迎えに行ったのだが、問題が発生した。上海付近に他のウィッチ部隊がいなかったので、道中、陸軍から『火消し』を頼まれ、引き受けるしかなかったのだ。これにムカついた二人は八つ当たりに近いものの、敵を倒していった――
「友達との再会を邪魔する奴はぁぁぁぁ……馬に蹴られて、地獄へ落ちろぉぉぉぉ!!」
パルテノンモードのキュアハートは強烈なムカつきを敵にぶつけていた。これは逸見エリカの気質が多少なりとも残った面で、ドリームも苦笑しつつも、手を貸す。
「サンダーブレェ――クッ!!」
ドリームも、エターニティドリームの状態でサンダーブレークを薙ぎ払うように放ち、敵の戦闘機隊をまとめて叩き落とす。
「ハート、手っ取り早く片付けるよ!!ブレストバーン!!」
ZEROとの融合の恩恵で得た力をフル活用し、ドリームはマジンガー系の技を放つ。コスチュームにマジンカイザーと共通するデザインの箇所があったのもあり、グレートマジンガーやマジンカイザー、マジンエンペラーGの技が使いやすいという。こうして、陸と空で戦う二人だが、さすがに一瞬で終わるはずはなかった。
「チィィ……後から後から!ゴキブリかってーの!!」
笑いのプリキュアとも渾名されるキュアハートだが、この時ばかりは数年来、願っていた友との再会を思わぬところで邪魔されたためか、半ば癇癪を起こしていた。相手はこの時期には配備が進んでいたM46戦車。乗員の練度は相変わらずのようで、キュアハートが陣形の懐に飛び込むと、同士討ちを恐れ、何もできなくなる。キュアハートはその隙を突いて、おもむろに、転生で自身が得た『空中元素固定能力』で超合金ニューZ製のバットを造り、ムカつきをぶつける勢いでM46戦車をかっ飛ばした。
「この大陸のバックスクリーンまでぇぇ……飛んでけぇ―――ッ!!」
パルテノンモードのパワーでバットを振るったため、44tの戦車も野球ボールさながらに吹っ飛んでいく。当然ながら、鋼鉄の数千倍とも言える強度の超合金ニューZ(グレートマジンガーとマジンガーZの二号機の装甲)製のバットには傷一つつかない。普通に鈍器としても強力なので、戦車のあらゆる箇所の装甲を一発でへしゃげさせられる。天蓋ハッチを歪ませ、乗員を脱出不能にしてからかっ飛ばすという『エグい手段』も講じる。普段はやらないが、今回ばかりはリベリオン本国軍はキュアハートの逆鱗に触れてしまったため、仕方がないと言えよう。
「ハート、相当にきてるなぁ。んじゃ、あたしも……カイザーブレェェドッ!」
胸の蝶形リボンの中央部にある宝玉からカイザーブレードを具現化させる。これは空中元素固定ではなく、マジンガーと融合したことで得た力だ。
「さーて、ダイ・アナザー・デイでのうっぷんを晴らすかっ!おっとっと、フェイトちゃんに一応、連絡いれとこ」
戦闘中だが、一応、タブレットでフェイトに『遅くなる』旨の連絡を入れるドリーム。カイザーブレードは黒江と智子が多用する『ショルダースライサー』以上の切れ味を持つ『マジンカイザーの剣』。全体的に大ぶりなので、鉄也より剣戟の経験がない甲児はマジンカイザーと互角に戦える相手でないと使わないという。ドリームは甲児よりは剣戟の心得があるのと、肉体を錦から引き継いだ事で示現流を会得したため、扱える自信はあった。敵編隊には、四発爆撃機の長距離援護機か、プロペラ双発戦闘機としては究極と言える『F7Fタイガーキャット』が確認されていた。ドリームはそのF7Fの猛烈な弾のシャワーを潜り抜け、巴戦に持ち込んだ後、敵が見失った一瞬で敵の直上を取り、そこからカイザーブレードを振り下ろしながら、急降下。敵は胴体を真っ二つにされて墜落する。黒江も得意とする戦法で、ダイ・アナザー・デイ時にハルトマンが特訓させていたマニューバーの一つだ。だが、双発機ながら、F7F編隊はこの後、思わぬ奮戦を見せた。
「くっ……この……双発機だってのに…!」
ドリームは態勢を立て直したF7F編隊に思わぬ苦戦を強いられる。双発機であるため、レシプロ機としては最高レベルの上昇率を持つ同機のポテンシャルを生かした連携は見事で、サッチウィーブも知っているようだった。空戦経験が百戦錬磨の黒江達に比すれば絶対的に劣るため、罠にハマった事を自覚した。
「しくじった…!こりゃ、ケイ先輩にしごかれるな…」
独白しつつ、なんとか連携を崩そうとするが……。
「た、タイニー・ティム……!?嘘、対空用のロケット弾じゃないは…!?」
F7Fの一機が対艦ミサイルの始祖と言えるロケット弾を空中目標に用いる。用途外だが、ドリームを爆風に捉え、ダメージを与える用途のために使われた。ドリームは大慌て。とっさにブレードで数基は叩き斬れたものの、残った一基の爆発に巻き込まれる。
「しまっ……!」
落ちはしないが、かなりのダメージを負ってしまう。
「この姿で……苦戦するなんて…!」
たかが、レシプロ双発戦闘機と侮っていた事を後悔するドリーム。
「プリキュア・ラブハートアロー!!」
空戦に気づいたキュアハートが技で援護する。F7F編隊はこれで態勢を崩す。
「ごめん、気づくの遅れた!援護するよ!」
ラブハートアローを召喚したキュアハートは飛び立つと、ラブハートアローからエネルギーの矢を連射し、射抜く。
「遅いよ~!」
「ごめんごめん~♪」
膨れるドリームとスッキリした顔のハート。ハートは逸見エリカの技能を継いだために優秀な射撃技能がある。アローを放ち、F7Fを次々と撃墜し、撃退する。
「ドリーム、本命の四発爆撃機が来るよ!」
「B-29?」
「いや、B-17かな」
「ホッ。それなら雑魚だよ。さーて、お返しだ!」
ドリームは篭手を形成し、大型の刃を両刃で展開する。四発機相手であれば、避けられる心配はない。
「いっけぇ!!アイアンカッター!!」
アイアンカッターである。使い勝手がいいので、ドリームが多用する武器だ。ドリームは篭手を勢いよく撃ち出す。B-17は刃によって見事に真っ二つにされていく。
「わーお……」
「B公でも、29じゃ編隊で来られると厄介だしね。17はいい機体だけど、やりやすいよ。29よりは低空飛ぶから」
プリキュアといえど、高度10000m以上での戦闘は意外に苦労がある。最強フォームであれば、宇宙でも戦えるが、問題は高度10000mを超えた空域での立ち回りである。もちろん、高度6000を超えると空気が薄いので、スタミナを予想以上に消費するのだ。これはスカイライダーが協力して調べてくれた実測のデータに基づく。飛行能力を得ても、衛星軌道まで進出した例は少ないため、高高度戦闘を長時間行う体力がないのである。(最強フォームは全ての点で能力を引き上げるが、殆どのプリキュアは衛星軌道以上の宇宙空間、あるいは超高高度での戦闘の経験はない)これは64Fの課題の一つであり、ドリームもZEROとの融合までは、長時間での生身での超高高度戦闘及び宇宙戦闘を避けていた。(ひみつ道具のブーストをかける必要があったためもある)
「あ、後続のB-24が…」
「ああ、もう!面倒くさいったら!!ゴッドサンダー!!」
ゴッドサンダーを広域放射し、後続の編隊ごと残りを破壊する。ゴッドマジンガーのそれであるので、両腕を広げ、雷を起こす単純なものだが、威力はサンダーブレークを超える。その他にも『トールハンマーブレーカー』、『サンダーボルトブレーカー』もあるが、一番手軽なのがゴッドサンダーである。雷を直接落とすからだ。
「単純だね」
「ま、光子力エネルギーと陽子エネルギーで雷を起こすだけの割には、サンダーブレークより威力あるからね、これ」
「ふう。なんとか、コスチュームに煤がついただけで良かったよ。だけど、タイガーキャットの連中は脱出したみたい。あれぞ戦闘機乗りの鏡だよ」
「あいつら、双発の割には動き良かったよね?」
「2000馬力のワスプエンジンを二基も積みゃね。日本も史実で似たことはしたけど、艦上機じゃない。あれを艦上機でしちゃうのがアメリカ的なんだよ」
タイガーキャットは双発の艦上機であるので、そこが似た用途の機体を史実で試作した日本との差であろう。双発機で艦上機になった唯一無二の機体なので、キュアドリームとドッグファイトを戦えたわけである。夜戦として双発戦闘機を作ったメッサーシュミットが聞いたら泣くだろう。
「エアレースでも飛ばすのいるって、先輩が言ってた。メッサーシュミットが聞いたら泣くね」
「双発で成功したの少ないよね」
「月光だって、斜銃ありきだもん。屠龍も対重爆専門だし。だから、アレが究極って言われるんだよ」
錦として月光と屠龍は使ったり、乗った記憶があるため、それがカスに見える運動性能を誇るタイガーキャットは双発のレシプロ戦闘機としては最高の戦闘機。ドリームはそれを教えつつ、付近の陸軍部隊からの感謝の無電に返事をしながら、本来の行程に戻った。
――新京駅――
新京駅。大陸横断鉄道の中央ターミナル駅であり、かの辰野金吾が東京駅などに続いて設計した風情ある駅舎である。東京駅の線図を流用したため、姿はほぼ東京駅だが、土地が広い分、駅舎はこちらのほうが大きい。この時期は大陸横断鉄道の電化が始まり、新幹線車両の試験も行われているが、大勢はまだまだ蒸気機関車である。フェイトとキュアソード(剣崎真琴)が乗ってきた列車は当時の扶桑では贅沢なあじあ号だ。
「地球の昔の記録で見たあじあ号……。この世界だと、南洋で?」
「中国が怪異に征服されたので、南洋に生存圏を求めた織田幕府が見つけたのがこの大陸だそうだ。経費で乗車賃が落ちたから、あれに乗れた」
意外に細かいフェイト。とはいえ、坂本の義兄(姉の夫)が大陸横断鉄道の役員であるので、彼の計らいで安く乗れた。坂本の姉は大陸横断鉄道の重役の家に嫁いでいるため、その夫は重役の椅子が約束されている役員である。七勇士の坂本が役員の縁戚というのはいい宣伝材料であるため、坂本の戦友には会社側による気づかい的サービスがなされる。フェイトは黒江の弟子という点を利用しつつ、時空管理局の経費で落としたので、意外にケチとも取れるが、世知辛い公務員の悲哀も感じさせる。亜細亜号は戦争が終わり次第、日本の豪華列車に置き換えられる計画であり、数編成は日本に寄贈される予定である。二人が乗ったのはソードが転移してきた地である港湾都市『上海』からで、新京駅までの乗車時間はかなり長い。
「私が見た記録だと、中国の北を走ってるけれど、ここでは南を走ってるなんて」
「大陸の代替物のような地だからな。私達の知る地球でのこの座標は海洋だが、ここでは扶桑最大の都市の一つだ」
新京は五輪や万博後も再開発が続き、中心市街地は摩天楼へ変貌しつつあるが、明治末期から大正期のレンガ造りも多く残す。平成以降の摩天楼と大正期のレンガ造りが地区によって入り交じるため、都市計画の実験場にされていると言える。
「なんだか、チグハグな感じですね。レンガ造りがあると思ったら、高層ビル街がある」
「テコ入れが始まって、まだ四年しか経ってないからな。インフラ整備などもある分、中心市街地を高層ビル街に変えるのもコトだ。日本と違い、建築制限はないからな」
高層ビル街は中心市街地から整備が始まっているが、日本の建築業者が我先に飛びついたのもあり、区画整理はかなり混沌としている。扶桑はドラえもんに重要な機能がある行政区や軍用地区を地下へ移転させていたので、地上はショールームと割り切っている。それもあり、わざと混沌としている町並みにしているが、街区単位では自主規制されているので、旧市街と新市街の境界線ははっきりしている。1980年代後半以降の東京のような摩天楼はまだ構築されていないが、それなりに真新しい高層ビルが建ち並ぶ高層ビル街は扶桑の東京の再開発のモデル地区の役目もある。また、TV放映のための電波塔も東京タワーを模したものであるなど、日本の意向も入っている。
「高層ビル街はいくつかあるが、ショッピング街はここから近い。ドリームたちが来たら、行ってみるか?」
「ええ。だけど、新鮮です。あたし、元の世界だと……」
「目的があるにせよ、アイドルしてたのだろう?」
「知ってるんですか?」
「マナが耳がタコになるほど語ってな…」
「あの子ったら…!」
めちゃくちゃに恥ずかしいキュアソード。キュアハートはキュアソードが地球で暮らすために妖精と共に芸能界に身を置いていた時の熱狂的ファンであった。ファンクラブにも早いうちから入会していたと豪語するほどに熱狂的であり、探すのを依頼される時に嫌というほどその手の話を聞かされたからか、前歴は把握している。のび太いわく、『僕やドラえもんも昔はアイドルに熱を上げてたから、気持ちは分かるよ』とのこと。
「私は本当は地球とは別の世界の出身です。そこの戦士だったんです。キュアハート……マナに聞いたのなら、知ってますね?」
「ああ。トランプ王国が壊滅させられた時に王女に逃され、気がついたら地球にいたのだろう?」
「はい…。それである時にみんなと一緒に戦っていたはずが…」
「この世界へ飛ばされたわけか」
「はい。どうして、変身が解けないんでしょうか」
「転移してきたプリキュアによくある現象だ。直に治る」
プリキュアは異世界に飛ばされたり、転生者である場合、初回時にかぎるが、変身の解除に支障が生ずる事が多い。これは芳佳とシャーリー、ペリーヌも味わった現象だ。個人差も大きく、最長はフェリーチェの数ヶ月だが、平均は三日程度で機能が復旧する。因みに、芳佳とシャーリーのケースは緊急時に記憶と自我が覚醒め、緊急に変身したため、変身解除不能時間は比較的に長めであった。シャーリーはおそらく、ピンクプリキュアでは最もその際に苦労したと言える。
「キュアメロディはおそらく、一番苦労したほうだろうな。初回の変身の時」
「どうしてですか?」
「それはな」
フェイトの語る話はダイ・アナザー・デイの初週のある日の事。その日、黒江はGフォース結成のために駆けずり回っており、不在。智子もいらん子中隊の残務処理で不在であった。怪異の出現サイクルからも外れており、圭子も自室でグータラしているなど、平和そのものだった。その頃はクロエ・フォン・アインツベルンになっていないルッキーニ、バルクホルン、坂本が定期パトロールに出動しようとした時のこと。ルッキーニが滑走中の際に空挺型怪異の不意打ちを受け、格納庫にビームが当たった際の爆風で吹き飛ばされ、ストライカーから投げ出されてしまった。バルクホルンと坂本は空中にいる母機の相手で手一杯であり、格納庫をやられたため、ストライカーを出すことを封じられてしまった。
「ルッキーニ!!…やめろ…やめろぉぉぉ――ッ!」
子機が気絶し、無防備の状態のルッキーニにビームを撃とうとしていた。それを目の当たりにしたシャーリーは自然と駆け出していた。手を伸ばし、ルッキーニを守らんと必死に走った。殆ど無我夢中で。その時だった。シャーリーの脳裏に何かが走馬灯のように駆け巡り、シャーリーの瞳に『ピンク色のツインテールをした誰かが微笑む』のが映った瞬間、シャーリーの手に何かが出現した。それはスイートプリキュアの『キュアモジューレ』と『フェアリートーン』だった。シャーリーは無意識の内にこう叫んだ上でアイテムを使用した。まるで昔から使い慣れていたかのように。
「ここで決めなきゃぁぁぁ……女がすたる!!」
そう叫んだ後にアイテムを起動させる。その『スイッチ』となる動作と共に。
『レッツプレイ!!プリキュア・モジュレーション!!』
シャーリーの茶髪のロングヘアーが縦にロールした長いツインテールに変わり、色もピンク色へ変貌する。マゼンタ色のリボンがついたカチューシャが頭につき、瞳の色も鮮やかなブルーアイズに変貌、白いラインが入ったオーバーニーソックスに、編み上げの入ったショートブーツ、ハイウエストのスカート(かなりフリフリ)に服装が変化、耳にはマゼンダピンクのハートイヤリングが出現する。変身が完了すると、彼女は仮面ライダー達がそうであるように名乗りを上げる。それはシャーリーも中島錦と同様の過去生の持ち主である証だった。
『爪弾くは荒ぶる調べ!!キュアメロディ!!』
――この時がシャーリーが自身の過去生を思い出し、キュアメロディへの変身能力を『取り戻した』瞬間であった。名乗りを上げた直後のビームを素手で弾いた後、ドスの効いた声で『てめぇだけは……絶対許さねぇ!!』と叫び、怪異をしこたまぶちのめした。芳佳の覚醒もその翌日であった。黒江が事の次第を知ったのは、その更に数日後の事――
「その日が、あいつが力を取り戻した日になる。ドリーム、マーメイド、ハッピーとほぼ同時期だ。ただし、お前の知るメロディと比べればガサツだ」
「なんでですか?」
「転生後のパーソナリティの反映だな」
歩きながら公園に行く二人。軽食を食べながら待っていると……。
「お、お待たせ~……」
ドリームとハートが到着する。陸軍にたらい回しにされたようで、疲労困憊であった。
「お前ら……どうした?」
「は、ハハ……。陸軍にたらい回しにこき使われてね……。火消し役をさせられまくったってヤツ…」
最強フォームの二人が疲労困憊になるほど、陸軍は兵力に余裕がなかった表れではあるが、彼らに『都合のいい火消し役』に使われた節もある。
「まこぴー……あ、あたし、もうだめ~……」
「ちょっと!その姿でバテるの!?」
キュアハートもこの有様であった。慌てて、二人に軽食を買ってやるフェイト。
「ケイさんから連絡が入った。ノワールGとGカイザーで撃退すると」
「派手にやってるみたいだね……」
「相手が相手だからな」
「ねぇ、ドリーム。あなたのその姿…、シャイニングドリームに似てるけれど……違う。新しいフォーム?」
「覚醒めたんだ。エターニティドリームって名付けたよ。シャイニング以上の攻防速を得られるフォームでね」
苦笑しつつも答えるドリーム。キュアハートが完全にグロッキーなのに対し、肉体の基礎体力の差か、受け答えできるくらいの体力は残っていた。
「自前で上位フォームに変身できるようになったんだけど、みんなに羨ましがられちゃって」
「まぁ、あたし達はミラクルライトやアイテムがないと上位フォームに変身できないもの」
キュアソードも頷く。プリキュアの上位フォームへの変身条件は意外に厳しいからだ。しかし、それを以てしても苦戦を強いられるのが南斗聖拳や元斗皇拳などの人外級の格闘家である。
「平行世界は広いよ。普段のフォームじゃ手も足も出ないヤツがごまんといたもの」
「嘘……でしょ」
「どころがどっこい、けっこういてね。あたし達、職にありついたはいいけれど、戦闘でボコボコにされる事も多くて」
プリキュア達はダイ・アナザー・デイ以降、便宜的に日本連邦空軍軍人の身分を持つ。のび太達と関わり合い(のぞみにとっては、夫のコージの義父であり、ことはと並んで関係が深い)を持ったため、バダンを始めとする暗黒結社とも敵対することになったが、改造人間である昭和ライダーほどの破壊力がないために苦戦も多く、ドリームは草薙流古武術、流派東方不敗を極めている最中でもある。
「ん、プロペラ機?」
「お、紫電改だ。部隊によっては、まだ現役だからなー」
ウィッチ世界は急速に兵器が発展しているが、最新兵器が精鋭部隊と防空に優先配備される傾向が加速されているため、一般部隊はレシプロ機がまだ現役の座にある。最終バージョンの陣風はダイ・アナザー・デイ参加部隊や空母機動部隊に回されていた都合、一般部隊はあまり保有してなく、紫電改が実質的な一般部隊での海軍系レシプロ戦闘機の最終型であった。紫電改はそもそもが山西(21世紀世界でいう旧・川西航空機)航空機が水上戦闘機から改造しまくった末にたどり着いた局地戦闘機であるため、宮菱重工業(21世紀世界での三菱重工業)びいきの坂本は複雑な思いを抱いていたりする。前世ではそれで後年まで揉め事を起こしたが、今回においては烈風が一定数使用され、一定の戦功を残し、自身も最後の華ということで、ストライカーを使用する機会があったので、そのネガは潰している。
「あなた、この世界で軍人してるの?」
「転生先がこの世界で、覚醒する前は普通に軍のウィッチだったから。覚醒した後も軍人してるから、将校だよ」
「ドリームやメロディがこの世界の人間になっていた都合と、平行世界を行き交う時の法的都合だ。軍人であると、平行世界に行った時に戦闘行為の違法性が解消されるからな」
フェイトも肯定するように、覚醒、もしくは来訪してきたプリキュア達は21世紀世界などでの戦闘行為の合法性を得るためと、法的庇護を受けるため、ウィッチ世界で空軍に入隊したという扱いを受けている。実はかつての仮面ライダー達がそうであるように、『ヒーロー/ヒロインの戦闘行為についてはおこぼれする』という慣習の適応への期待が黒江やのび太、フェイトになかったわけではないが、平成後期にもなると、警察組織もその時代に現役であった者との世代交代が進み、『ヒーロー/ヒロインにもきちんと法を適応すべき』という理論が警察組織/政府関係者に生じ、それが警察組織の深刻な世代間対立に繋がってしまったため、一向に結論が出ないのに焦ったプリキュア達の要請もあり、その時点での主要人物であったのぞみ(錦)、シャーリー、芳佳、ペリーヌ、竹井、北郷が『職業軍人』であるのを活用し、連合軍(実質は扶桑軍)で抱え込んだという経緯がある。『空軍軍人』である都合上、医官以外は他部隊への外聞の都合で機動兵器の操縦技能は必須であるのは仕方がないところで、何人かは実際にその技能がある。プリキュアの能力値は歴代でムラがあるが、昭和ライダーには当然ながら及ばないが、かなりのパワーを持つのは確定している。
「世の中、法律の壁が思ったより厚いってことさ、ソード」
「あなた……なんだか、垢抜けたわね…」
「この世界で軍人してればね」
ドリームは転生前に大人の世界の闇を散々に味わったが、転生後の錦としての軍人生活を入れると、大人の世界というものが見えてくる。ハートがぐったりしているのと対照的に会話をこなす体力は残っている。伊達に職業軍人ではない。
「ところで、お前ら。予定よりずいぶん遅れたな?陸軍にどれだけこき使われた?」
「あそこは機甲戦力の更新も上手く行かない上に、野戦対空装備も不足しているからね。気持ちはわからないでもないんだけど」
敵はこの頃にはパットンシリーズが(おそらく別名で)、配備されているが、扶桑側は74式戦車の配備にも手間取る有様である。日本側が時代相応の装備よりも先進装備を優先した弊害である。数合わせという概念があまりに希薄なのだ。とはいえ、1945年当時の新鋭装備の多くのラインが閉じられていた1949年には、『一騎当千の個が集団を支える』という光景が当たり前であった。これは42年からの『自分達にできる事』を重視する集団戦重視の風潮と相反する光景であり、B世界側からは苦言を呈されたが、A世界ではジュネーブ条約などとの兼ね合いで、ウィッチの摂理を変えなくては科学の飛躍的発展で『社会的な居場所が無くなりかねない』状況なのだ。プリキュアが一律でウィッチ扱いにされた理由は『プリキュアの威光でウィッチの雇用を世界的に守る』政治的目的もあるのだ。その状況を招いたのは、ウィッチたちが『期限』をいいことに、他兵科に高圧的に振る舞ったり、自分たちの力を信奉し、それを自分たちの好き勝手に動くための錦の御旗として振りかざしたことであり、前世の坂本が信奉していた『ウィッチに不可能はない』という言葉が悪い意味でウィッチ達に伸し掛かっていた。全体から見れば、ごく少数の『摂理を超えた』Gウィッチが特権を持つことが許容されたのは、一にも二にも『21世紀にウィッチの有用性を理解させる』事、『閉鎖的とも思えるウィッチのコミュニティを壊してでも、ウィッチの新時代を切り開く』ためであった。第二世代宮藤理論はそのための理論なのだ。
――戦場――
ミーナBは1945年の段階であがりが見えていた年齢なため、A世界で突然変異的に生まれた『Gウィッチ』が当初に迫害された理由を悟っていた。通常は20歳という生物学的に少女期と別れを告げる年齢になることが『10代以前に見られる万能感の喪失』ともつながるため、それを成人に至る通過儀礼、儀式と捉えていた社会にとって、10代半ばから後半程度で加齢が止まり、『神に愛された』ように強大な力を持つ彼女達は『怪異への進化の始まりか』と危惧した者達が扇動し、迫害された。だが、だが、実際には『人々の嘆きの声に差し出せる腕を、誰かを救える力があるのを願った』事で『ヒトという存在を超えた』だけであると判明すると、人は信仰と信奉を集めると『神の座に到れる』し、人である事を捨てないからこそ神殺しに到れる事も同時に示した。仮面ライダーの多くのように『その身を機械に置き換えられたとしても』、黒江たちのように『不死身の肉体を得たとしても』、歴代プリキュアのように『世界を守るために人々の望む姿であり続ける』事が望まれるようになったとしても、『ヒトはヒトである』。
「なんだ、仮眠を取らんのか?」
「トゥルーデ、教えて。この世界の貴方は……」
「私はお前の知る私と違い、神に愛されたがために、このまま戦い続ける道を辿る。お前から見れば、バーサーカーに近いかもしれん。だが、この世界のウィッチは科学の飛躍的発展の前に社会的な居場所を奪われそうになっているのだ。近代兵器と比較しても遜色ない戦果を出し、有用性を示すことでしか、生き残る道はない。そうしなければ、ウィッチは魔女狩りという蛮行の餌食にされる。この世界のオラーシャでは実際に起こってしまったからな。扶桑でさえ、ウィッチ兵科は廃止の方向だ。だがな。今でも10代の時に抱いた夢は追い続けている。まだ忘れたわけではないさ」
「そう。この世界はお前から見れば、最悪の可能性の一つかもしれんが、だが、私達は心の鐘を鳴らし続けている。私達はここにいるとな。私達はヒトを超えたが、それはいずれは『同世代の大事な誰かを常に見送る事になる』ことでもある。だが、今ある『当たり前』を守りたい気持ちは変わらん。そして、大切な誰かの夢や未来を守りたいからこそ、私達は戦えるんだ」
「グンドュラ……」
「弱さを誰かに打ち明ける事も強さだ。同時にそれは愛だ。心に愛がなければ、ヒトは世界を滅ぼすことも躊躇なく行う。ここのお前は歪んだ愛が肥大化した挙句に自業自得のような形で破滅しかけた。愛はある一線を超越すれば、憎しみへ変わってしまうというが、お前はその典型に近い」
「美緒への好意が……?」
「ああ。お前も知っていると思うが、そういうことだ。だが、あの方(のび太)も言っていたろう?大切な友を助けるのに理屈はいらない。通りすがりの正義の味方というヤツをするのは意外に楽しめるぞ?」
ミーナBは覚醒寸前の時期のAを反面教師に、元の世界に戻ったら、遅かれ早かれ、起こるであろう『あがり』を迎えるための心の準備をし始める。彼女は考えられる限りで最悪の展開を迎えているA世界でもそれなりに生きる理由を見出す者たちに精神的救いを求めていた。A世界で自分たちなりに戦う理由を見出したグンドュラ・ラルとバルクホルンは『宿命を背負うなりの生き方』を実践している。その後の『同世代の大半を若い姿で見送る』事になるであろう未来を達観しているようでも、どことなく茶目っ気を感じさせるA世界での二人の生き様は人同士の殺戮の常態化した平行世界の姿に失望し、落胆していたミーナBには『暗闇に差し込んだ朝焼けの光』に思えた。