――太平洋戦争もたけなわになる最中の束の間の休息中のこと。夢原のぞみは21世紀での戸籍上は野比コージと結婚した都合で野比性になっていた。また、ことはと姻戚関係になっている(関係はことはが義理の叔母にあたる)。それはプリキュアでも話題になっていた。――
「生まれ変わったココが人間になってて、しかも、サムライトルーパー?ホント、どーなってんの?」
デザリアム戦役での記憶喪失から回復した夏木りんはのぞみが生まれ変わることで想い人と籍を入れるに至った事を祝福しつつ、その想い人のココ(小々田コージ)が生前の人間形態とは別の容姿で生まれ変わった後に『サムライトルーパー』という戦士の力に覚醒していたと知らされた。最初はりんも素っ頓狂な声を上げたものの、コージが生前に願っていた事を叶えたとも解釈できる事から、好意的に見ている。
「あたしらの親が学生の頃に流行ってたアニメじゃない。ほんと、何が起こるか…」
「りんちゃん、知ってたんだ」
「ウチの母さんが若い頃に好きだったのよ。そっちじゃ違うと思うけどね」
のぞみとりんはお互いに異なる平行世界の出身であるため、辿った道で差異がある。りんの世界では『プリキュアオールスターズ最後の決戦』の際にのぞみは片腕を失い、教師の道を諦めざるを得なかったり、ミルキィローズが壮絶な戦死を遂げていた。その戦いの記憶が完全に蘇ったためもあり、太平洋戦争の時点では主に裏方でサポートしていた。
「あたしの世界じゃ……あんたは片腕を失って、ミルクは死んじゃったから、負い目があるのよ」
「だから、裏方に?」
「あんたの帰る場所を守るのも立派な仕事よ?」
りんはデザリアム戦役で記憶喪失を経た後は主に裏方の仕事をしていた。その戦いの記憶がそうさせている事を肯定しつつ、以前ほどは前に出なくはなくなっても、プリキュアの責務は果たすとも言う。
「でも、あんたも難儀な立場じゃない。事実上は魔法つかいプリキュアじゃない?」
「その気になれば、みらいちゃん達の魔法が使えるようになったからね。めぐみちゃんからも技を教わったし、多分、かれんさん達の世界にいるあたしより数段強いはずだよ」
「それよ。はーちゃんが言ってたけれど、難儀してるのよ?この間、RXさんが助けに行った時も不貞腐れてたじゃないの」
「それねぇ。はーちゃんには苦労かけてると思ってるよ」
と、会話をする二人。二人がつけている野比家のTVでは、扶桑軍の予算を協議する評議会の様子が中継されていた。ようやく国産空母の建造が認められ、大喜びする海軍の担当者、対照的に戦車の生産数が絞られて、うなだれてあからさまにがっくりする陸軍担当者の様子が映る。
「やっと新造かぁ。大鳳や瑞鶴じゃ、ジェット戦闘機は大して載せらんないからなぁ」
「向こうの海軍、どうして空母を作りたがってんのよ」
「第二次世界大戦の日本の空母じゃ、ジェット戦闘機の運用は想定外だからだよ。それに、呉が使えなくされた仕返しを戦艦でするのを望んだ、向こうの人たちがねぇ」
のぞみも語るように、超大和型戦艦はその怨念が計画を蘇らせたと言っていい。紀伊の悲劇的最期は巡り巡って、世界線によっては自らの後継ぎと目されたであろう超大和型戦艦を蘇らせ、扶桑国民の建艦運動が戦艦部隊の世代交代を促した。その分、空母が割を食ったので、世代交代は停滞していたが、件の『瑞龍型空母』により進むことが期待されていた。(ちなみに、超大和型戦艦にしても、当初案の『大和型戦艦の船体サイズに51cm砲を連装で六門ほど載せる』案が『51cm砲の反動を大和型戦艦のサイズでは吸収しきれない』という現実問題の前に潰えたため、開き直って大型化したのが播磨以降の新戦艦である)とは言え、サイズが計画より拡大されたため、出揃うのは最短で1953年の春か夏と見込まれている。それまでをどう凌ぐかが課題と言えた。
「戦艦ねぇ」
「21世紀以降の技術で鉄壁の防空力を得た戦艦は値段がどんどん上がる飛行機で攻撃するのが馬鹿らしくなるくらいさ。おまけに潜水艦は21世紀の海自のノウハウで封殺状態。これで敵が選んだのが、戦艦と空母を量産してタコ殴り作戦さ。核兵器の研究も原爆で表向きは止まったしね、ウィッチ世界は」
のぞみのいうように、大和型戦艦とモンタナ級戦艦の存在で戦艦の高性能化が加速されると、果てしない戦艦の高性能化に呆れ、保有目的そのものを他国への儀仗に転用する国が増加しつつある。とはいえ、結局は空母の大型化・高額化が戦艦すら凌ぐほどのものになったため、空母の保有そのものを断念する国が生じた。ロマーニャもアクイラの整備を断念し、カールスラントは鹵獲艦の再整備という形でしか保有しない。日本はブリタニア/イギリスに空母機動部隊の保有を押し付けたかったのだが、キングス・ユニオンは双方が財政難に陥っており、原子力潜水艦で戦艦を置き換えたいイギリスと経験上、戦艦を必要にするブリタニアとで揉めているので、空母機動部隊どころではない。その都合で日本連邦は空母機動部隊を対抗上、どうしても保有しなければならなかったのだ。なお、空母航空隊の空軍の管轄化が志向されたが、予算、訓練、哨戒機を持つ海自などの事情で海軍航空隊が結局は存続したため、色々と不都合が発生した。旧601空の所属も、内部事情が知れ渡ると問題のもとになった。場当たり的に『旧600番台航空隊は旧任務に専従せよ』と通達されたが、自主的に既存装備から艦載装備を外した部隊が多く、主導した幹部が弁解を許されずに謹慎・減俸処分にされる事態に陥った。64Fが大規模化した理由はその混乱を誤魔化す意図が大いに含まれる。(とは言え、1949年の頃には旧・600番台海軍航空隊の旧任務専従も現場に浸透し、海軍航空隊そのものの立て直しも始まっていた。空軍に移籍させられつつ、旧任務を言いつけられた旧600番台海軍航空隊は政治に振り回されたと言えよう。表向きはジェット機への機種変更での改編とされたが)
「あんた、あの世界に姉妹いるんしょ?」
「うん。姉貴と妹がね。妹は任官が四年延びて、愚痴ってた。家のことは姉貴に任せてあるんだ。人格が変わっちゃった以上、あんま関わるのも悪いから、のび太くんのこの家に厄介になってんだ」
「あんたの実家、どういうとこだったの?」
「中島飛行機相当のメーカー『長島飛行機』と古い付き合いがある名家。だから、メーカーとの癒着が疑われてね。中島飛行機ってのは、日本の後年の大手自動車メーカーの前身なんだけど、大戦中は粗製乱造気味でね…」
東洋最大の生産能力は中島飛行機相当の長島飛行機(1944年までは『飛行脚』だったが、ストライカー事業の縮小ということで改名)が有していた。しかし、日本側は史実の経緯から、同社の品質管理体制を疑問視しており、宮菱重工業のテコ入れを重視し、同社には航空事業の縮小を促そうとした(自動車産業進出も含む)が、予想以上に生産能力に差があることから、長島飛行機は富嶽/連山系の大型航空機の製造を重視するように指令し、戦闘機製造は宮菱重工業が主力になっていく。(実際には長島はライン製造能力が史実よりずっと高かったため、泥縄式にドラケンの製造を指令するが)
「で、長島も日本に抗議したから、揉めに揉めて、妥協して迎撃戦闘機の製造をさせたわけ」
「アメリカの機体は三菱相当のとこにさせて、それ以外のものをSUBARUにねぇ」
「他のメーカーは川崎相当以外は需要を満たせる能力がない上、資本が脆弱だから、統廃合進んでるよ」
1949年になると、扶桑の航空産業は統廃合が進み、震電の権利も宮菱重工業に移管されていた。結局、航空機開発費の高騰がメーカーの統廃合を促したわけだ。既存ストライカーの減産が決められたため、ダイ・アナザー・デイで64Fもレシプロストライカーの部品のやりくりに苦労する羽目になったが。
「エンジンもジェット主体になるから、パニックだよ。ラインは自動車産業に転用させる事にはなったんだけど、完成品がまだ余ってるしね」
「なんか大変ねぇ」
「新しい技術が古い技術に取って代わる時はそんなもんさ。レシプロ戦闘機も需要がまだ残ってるし、ジェットは大食いとか言って、嫌われてるしね」
かつてのミーナが嫌がったように、ジェット戦闘機は燃料を大食いするという特徴があるので、1945年当時から嫌われ者だったが、高性能を発揮できるのには変わりないため、性能限界が明らかになったレシプロ機に取って代わりつつある。米国系ジェット戦闘機が各国産レシプロ機を駆逐し始めたこの時代は航空技術で世界最先端を自負していたはずのカールスラントにとっては屈辱の時代と言える。特に自分達が試行錯誤中の技術の完成型を持ち込まれ、大っぴらに使われるという事実は彼らを打ちのめした。後退翼、可変翼、デルタ翼…。オグメンダー(リヒート/アフターバーナー)などはカールスラントで研究途上だったはずの技術だ。
「大食い?」
「レシプロより燃料食うんだ。黎明期のメッサーシュミットなんて、増槽つけまくっても、一時間飛べればいいほうでさ。今と違って、技術が未熟だったし」
「燃費ねぇ…。今の車みたいな話」
「戦争中の部隊じゃ燃費は死活問題だから、揉めた事あるんだ。あたしは賛成だったけどね」
ミーナは人格変化前の最末期、ジェット機/ストライカーの使用に反対だった。この時はハルトマンが史実と違い、賛成に回ったために(レシプロストライカーユニットの部品供給縮小もあって押し切った)一応の許可が出たが、燃費を気にしていた。熱核タービン装備をさせたのはそれを躱すためだ。のぞみはミーナ本来の人格とは一、二度しか会話を交わしていないが、自分はジェットに賛成したと明言した。
「ま、そういうわけ。昔みたいに、いつでも気楽でいられるわけでもなくなったからなぁ。軍人一家の宿命だね、こりゃ」
「昔は教職を目指してたあんたが職業軍人ねぇ」
「扶桑じゃ、正規軍人のほうが通じるけどね」
扶桑では職業軍人という言葉は蔑称に近かったが、徴兵が1946年に停止され、兵役が志願制主体になったことで意味合いが戦後日本のそれへ変化したが、扶桑の古い軍人達は正規軍人と自称している。クーデター以降はウィッチになる=栄達と花嫁修業の両立の認識が潰えたため、志願数そのものの低下を招いた。少なくとも、1954年までは回復基調にもならないだろうという悲観的予測も出ていた。そのために在籍中のエースパイロットの優遇措置が扶桑で定着した面もある。(教導部隊が縮小され、人員が前線送りにされた理由でもある)
「給料と危険手当で稼げる代わりに、最前線送りは割に合わない仕事ではあるよ。子供達が避けるのも無理ないね。あたしは教職に幻滅してたから、今のほうが気楽といえば、気楽さ」
のぞみ自身はプリキュアとしての宿命もあって、正規軍人のままでいる事は割り切っている。前世での後半生が悲惨だった事もあり、教職に幻滅していた事も大きかった。教職についている時間軸以降に『理想と現実の差』に苦しんだためだろう。
「向こうのあんた自身が怒るはずだわ」
「教職も教職で疲れるよ?部活やら色々で忙しいし、子供をちゃんと構えなかったから、上の子にはグレられた。その時期だったかな、はなちゃんと揉めて、オールスターズを割っちゃう世代闘争みたいな事になったの」
のぞみは第1世代のプリキュアであるがため、前世での成人後に第3世代のプリキュアである野乃はなと『あること』で揉めてしまい、世代闘争じみた事にまで発展してしまった事をりんに話す。のぞみが断片的にしか語らないので、その詳細はこの時点でも不明だが、少なくとも、愛乃めぐみはのぞみ側についていたとのことだが、彼女も多くは語っていない。派閥抗争じみているため、負の記憶の一つとしているのが窺える。
「それ、あんたが何歳の頃?」
「あたしらは30近くになってたかな?はなちゃんが現役を離れて5年以内の話だったから」
少なくとも、それが2019年から2024年までの間に起こった出来事であることがここで判明した。映画では、総じて一枚板であるプリキュアオールスターズも実際はジェネレーションギャップからの対立があったのだ。
「子どもたちの夢を壊すから、あたしもめぐみちゃんも言わないできたんだ、これ」
「なんで揉めたの?」
「後から考えれば些細な理由さ。敵を倒しきるか、そうでないかの、ね」
野乃はなは両者の中間世代である愛乃めぐみをして『優しすぎた』と評される人間である。それ故にのぞみの前世では先輩達と対立したらしい。それが後年に至るしこりとして残り、対立軸の片方であったのぞみの人生にも大きな影響をもたらした事が窺える。その負の記憶もあり、のぞみは教師時代のことは語らないのだ。
「教師時代のことは言いたくないんだ。正直、夢破れた大人の惨めな生き様って感じの人生だし、愚痴愚痴言うような、子供にもグレられたあたしの失敗談になっちゃうから。つぼみちゃんは分かってくれたけどね」
花咲つぼみ(アリシア・テスタロッサ)はのぞみの精神を安定させるためにカウンセリングの勉強をし、カウンセラーの資格をデザリアム戦役中に取っている。そのため、のぞみの前世を否定しなかった。同世代だからできることだと、つぼみは言う。
「あんたの失敗はなんだと思う?」
「自分一人で抱え込んじゃったからだと思うね。25を過ぎると、どうしても世間体を気にしちゃうんだよな……」
笑い話の体裁とはいえ、よく考えると、のぞみの過去の重い失敗談でもある。その経緯を知る者ほど、キュアエール/野乃はなを快く思っていない。キュアマーチ/緑川なお(ラウラ・ボーデヴィッヒ)がその最たる例だ。
「なおちゃんには悪いことしちゃってね。あたしの老後の看護押し付けちゃったし、あたしも前世の死に様は心臓病で……」
「心臓?元気の見本みたいなあんたが?」
「60になる頃から悪くしてね。40すぎまでプリキュアになってた反動がきたって思ってる。プリキュア化は歳を食いすぎると、変身の維持だけで負担がかかるって、つぼみちゃんから聞いたんだ」
これはつぼみの祖母だった『花咲薫子』が壮年期を過ぎた後にキュアフラワーに変身した時の話で、つぼみは転生後、のぞみに『私達の力は壮年を過ぎると、変身の維持だけでも、体に負担を強いるんです』と教えているが、自分の敬愛する祖母が自身の先代であり、前世代で最強を誇っていたと知った故のことだろう。つぼみは転生で自分たちが若い肉体を保てる事に安堵していたのは、祖母や前世ののぞみの例を鑑みての事だ。
「あんたの経験でいいけど、どの辺までが絶頂期のポテンシャルを維持できてたの?」
「普段鍛えてなかったから、30くらいまでかなぁ。35すぎると、技の威力が落ち始めて、40くらいだと撃つだけで疲労するようになった。引退考えたの、40くらいだね」
「野球選手くらいの寿命ね?」
「衰え始めた体を無理に若返らすようなものだもの。つぼみちゃんのおばあさんは無理を押して、67でプリキュアになったけど、技は撃てなかったって言うし」
「だから、人を超えた今のあんたの状態をつぼみが喜んだのね」
「はーちゃんも元・神だから、歳食わないけど、あたしは融合で人を超えたから。ま、普通の体なら、あたしはボロボロになるまで戦っちゃうって言ってたから、つぼみちゃん」
のぞみはこの時点では、人としての姿こそ保っているが、存在としては神域に達している。プリキュアとしては二例目である。黒江達同様、『神の領域に達した人間』になったのだ。肉体の老いや死から実質的に開放されたのもあり、『この世での実体を持った神』とも取れる。マジンガーZEROが既に機械神というべき存在だった故の結果だ。
「その記憶があったから、ZEROと一緒に変わる事を選んだんだ。みらいちゃんとやりあったのは、あの子が納得するための儀式だよ」
「昔のヤンキーみたいな事したわね?」
「拳で語り合えば…って奴さ。武道家がよくするじゃん?」
「野比君はそれを選ぶ事を予期していたから、君たちの助けをするために、レイズナーを造らせたかも知れないな」
「あ、出木杉さん」
「ワイフからのお歳暮を届けに来てね」
出木杉英才はのび太の依頼で、レイズナーの管制OS『レイ』、『フォロン』の調整を担当したが、プログラミングに予想より時間がかかり、大決戦には間に合わなかった。デザリアム戦役にはレイズナーマークⅡが間に合わなかったので、出木杉の頭脳と技能でも、SPTの管制OSのプログラミングは相当な難儀だったのが窺える。
「野比くんはコンピュータグラフィックス映画のせいで悪評が出たから、それもあって、僕にSPTの開発を急がせたのさ。もっとも、ガワよりOSの作業が遅延してね。モビルスーツより遥かに鋭敏な機動を制御するOSの調整は難しくてね。レイは普通のAIテンプレートでプログラム出来たけどフォロンは柔軟性を何処まで持たせるかで手を焼いてね。テストでドラえもんと対話させてルーチンテストしたら、二人でブチ切れた後に仲良くなっていて驚かされたよ、ハハハ」
のび太はスタンド・バイ・ミードラえもんシリーズの出来には言及はしないものの、見終えた後に不機嫌になったと、ことはと調は証言している。しずかとの結婚でマリッジブルーを起こしたように描かれた事で、本人が不快感を表したのも伝える。
「野比君、今年のコンピュータグラフィックの映画の試写に招かれたんだが、僕への侮辱だって、えらく不機嫌になって出てきてね」
実際ののび太はことはと調の二人が羨むほどにカッコよく結婚に臨み、しずかが投げたブーケをジャイ子が受け止めた一幕もあるほどに順風満帆に式を終えているため、映画での露骨な描き方には憤慨を顕にした。
「野比君も可哀想ではあるよ。映画の関係者に話を聞いたら、伝わる人物像に基づいたのに…って困惑しててね。映画的誇張が過ぎるとアドバイスしておいたよ、先方に」
ジャイアンが宥めたとのことだが、のび太は酒に酔うほど憤慨しており、さすがのジャイアンものび太の悪酔いに手を焼いたという。当時、既にJAXAの宇宙飛行士になっていた出木杉が映画会社にそれとなく苦言を呈し、映画会社ものび太に慰謝料を申し出るなど、それなりに大変だったという。
「しずかくんが野比性になった事も叩かれてるようだが、それは本人の自由だというのにね」
「え、そんなことまでフェミニストに叩かれてるんですか?」
「21世紀になったら、別姓を選ぶべきだと、フェミニストが喚いてるのさ。良いじゃないか、本人の選択なんだから」
出木杉は公の立場で二人の意思を代弁し、映画の公開を期に叩かれている二人の結婚生活を擁護している。彼は子供の頃からジェンダーについては先進的な考えだが、友人の家庭を壊そうとする世間に怒る気概を見せている。のび太当人もジャイ子に『同じ家で暮らしていく決意として同じ苗字を名乗るのも許されないとかその方がフェミニズムに反してないかい?』と漏らしており、妻が自分の家の名字を名乗った事を世間が面白おかしく批判するのに怒りを見せている。
「とにかくそれっぽい事を言って誰かを攻撃するのがフェミニズムと言うなら、僕はそんなフェミニズムはいらないよ。ガキの頃にカミさんの裸を見まくったことまで批判されちゃねぇ…と愚痴ってるんだ。武くんとぼくとで宥めてるよ。僕だって、しずかくんのお風呂は見たいと思うことあったからね」
のび太は人間性の否定までされるようになった風潮に反発し、悪酔いする事が増えてしまった。ことはもこれには激怒し、写真週刊誌の記者に『ふざけた事を言うと、貴方を御社の壁に磔にして、共々に真シャインスパークで消しますよ?』と笑顔(目は笑ってない)と公言している。調も『のび太をこれ以上侮辱するなら、シュルシャガナで細切れに切り刻みますよ?』と記者に脅しを入れる一幕があり、ネット掲示板でその事が大盛りあがりになっていたのである。
――なんてことだ いったい……。なにがなんだってんだ!!ウォオオオオ!!ゲッター!!ゲッターロボ!! きさまはいったい!なにを考えてる!!ゲッターロボ!!きさまはいったいプリキュアとシンフォギア装者になにをやらせる気なんだぁ!!――
この文章のテンプレートが定着したのは、ことはが写真週刊誌の記者相手に脅し文句で、ストナーサンシャインやら真シャインスパークに言及したからである。ことはが脅したのはこのケースで二度目だが、ネット掲示板では『黒化はーちゃんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』やら、『アカン、フェリーチェが虚無っとる……』、『早乙女博士、プリキュアにゲッター線を浴びせたというのか』など、変なコメントが続出していた。デザリアム戦役でフェリーチェ、ドリーム、ピーチの三人が真シャインスパークを放つ時のゲッターシャインの閃光を発する時のポーズの写真はこの時、既に21世紀世界にも出回っているため、『歴代プリキュアはゲッター線に魅入られている』として知られている。また、ZEROを巡ってのドリームとミラクルの対決でグワンバン級をかち割って轟沈させた時の一枚も出回っているため、『プリキュアのパンチはジオン軍の超弩級戦艦をも沈める』とセンセーショナルに報じられている。23世紀世界の様子は公には超文明として報道されており、お互いの繋がりは隠されているが、既に公然の秘密である。むしろ、ドラえもん時代の技術復興を考える地球連邦にジオン残党が『怠惰の象徴』として反発し、月を爆破しようと目論んだ事は21世紀世界からも非難されている。
「ムーンクライシス事件の責任を問う連邦議会の様子が中継されてるよ」
「え、良いんですか、それ?」
「タイムマシンは発明済みだから、日本政府も分かってて配信してるんだ。もっとも、ジオン好きは青ざめてるけどね」
「そう言えば、出木杉さん。ハインライン計画ってジオンのどこの軍閥が…」
「ギレン派だよ。ギレン・ザビが構想をエギーユ・デラーズに話し、その計画をタウ・リンに使われたのさ。スウィートウォーターとサイド3は責任逃れで言い訳しまくってるよ」
ジオン共和国はネオ・ジオンと公国残党が起こそうとした事の責任を追求され、外務大臣が言い訳を繰り返す醜態ぶりだった。サイド1のスウィートウォーター行政府長官も言い訳がましく、保身に走っている。逆に喝采を浴びたのがシャア・アズナブルである。彼は『私の監督が行き渡らぬばかりに旧ザビ派、トト派が暴走したことを心よりお詫びいたしますと共に、彼らの国への憂情は否定なされぬようにお願い申し上げます。我がネオ・ジオンは解体致しますが…』と、かつての日本陸軍の下村陸軍大臣のような演説でネオ・ジオンを総括してみせた。彼にはクワトロ・バジーナとしての償いが残っているが、ネオ・ジオンの兵士や生き残った将校を慮っての演説でもある。公国系のエースパイロットたちは大半がデザリアム戦役で壮烈な死に様を見せて散っていった。のぞみも彼らの死に様を思い浮かべたのか、目を閉じて黙祷する。特に、アナベル・ガトーは最後はコロニーをデザリアム帝国から守るために特攻していったのだから。
――これで私も死に場所を見いだせた…。デラーズ閣下、今、お側に……。ジーク・ジオン!!――
ガトーと因縁があったのもあり、のぞみは敬礼しながらその死に様を見届けた。ガトーはネオ・ジオンも敗れた後、デザリアムがサイド3に侵攻せんとするのを目の当たりにし、そこに死に場所を見出し、最後は『サイド3を守るために』壮烈な戦死を遂げ、シャアもナイチンゲール越しに敬礼をし、ガトーの遺志に応えた。その際のガトーの乗機はサザビーの一般指揮官仕様(サイコミュシステムとファンネルを省いた設計のもの)だったという。なお、ガトーが道連れにしたデザリアムの戦艦はデザリアム最大最強のプレアデス級(宇宙戦艦ヤマトの砲撃すら物ともしない化け物)であり、その際の死に様は立ち合ったすべての者が敬礼せずにはいられぬ壮絶な死に様であり、コウ・ウラキへ『ウラキ、貴様とは違う形で出会いたかった…』と本心を吐露し、コウ・ウラキを絶叫させている。彼は『テロリスト』から『ジオンの武人』へ立ち戻りたかったのだろうとシャアは述べているが、シーマ・ガラハウのことを否定しながら、自分が彼女と似た道を辿った皮肉は彼が死に場所を求める理由だったのだろうと推測している。シャアはこれを『死に場所を失った軍人が祖国を守るために選んだ道だ……。敬意を払うに値するものだよ』と評し、サイド3へアナベル・ガトーの大佐への特進を依頼している。サイド3もガトーがデラーズ紛争でテロリストと認定されていたのに恩赦を下し、ジオンの誇りある将校として記録された。死後、ジオン十字章、連邦議会勲章が追贈され、アナベル・ガトーの名は歴史に英雄として刻まれたのである。ジオン軍人への恩給もこのおかげで認められ、その運動を主導していたジョニー・ライデン元・中佐は往時のルックスに衰えを見せぬイケメンぶりで式典に出席。本人曰く、『エデンでデブリ回収のバイトしてたから』とのこと。(戸籍年齢上は既に40代間近だが、肉体年齢は20代後半のまま)なお、生存が確認されたジョニー・ライデンは連邦軍の委託で太平洋戦争に教官として参加。1949年では扶桑本土でMS教官をしていたりする。
「シャア・アズナブルは表向きにはこれで裁かれるけれど、この後の処遇は決まってるの?」
「アムロさんの話だと、グリプス戦役の頃の偽名のクワトロ・バジーナを名乗らせて当面はこき使うそうな。アムロさんと互角に戦えるのは彼くらいだし」
「良いの?」
「MSのパイロットとしては最高レベルだし、死なせるのは惜しいんだよ。それとジオン・ダイクンの実子だしね、彼」
出木杉も連邦がシャアに当面はクワトロ・バジーナに戻って働けと言うのは明白だと見抜いている。シャアはMSのパイロットとしてはサナリィがモーションの参考にするほど攻撃的であり、F90のC.Aコンピュータは彼を模している。
「でも、アニメで描かれた未来が訪れる事にどうして、そんなに貴方たちは落ち着いてるんですか?」
りんが出木杉に聞く。20世紀にアニメとして存在していることが数百年以内に現実になる事に落ち着いていられるのは何故、と。出木杉は落ち着き払った態度で答える。
「僕たちは未来を知ってしまった者だからね。子供の頃は喜んだけれど、戦乱の時代になるのは分かってたさ。日本連邦の力は反発を呼ぶ。それがやがて、世界大戦、一年戦争などを起こすとしても、そこにはそれなりの未来がある。否定は出来ないさ」
出木杉はあくまで、想像した世界が本当になったとしても、世界がそう選んだのだからと考え、統合戦争やそれ以後の戦乱を引っくるめて認めている。
「それに、君たちが守った世界でもあるからね、この世界は」
「そうだよ、りんちゃん。なぎささんとほのかさんがいなくても、あたしたちは立派に世界を守れたんだよ?それは誇っていいと思う」
のぞみは現れてからというものの、常に偉大な先達である美墨なぎさと雪城ほのかと比較される日々を送ってきた。ダイ・アナザー・デイで捕虜になった時など、非難轟々であったが、二人とて精神操作で操られた経験がないわけではないし、敗れた経験がないわけではない。それは同世代のプリキュアである自分が一番知っている。二人の志を直接受け継いだ世代だからこそ分かるモノがある。それがのぞみの持論だ。
「未来と繋がっても、その未来に必ず辿り着くとは限らないからね。全ては僕達次第さ。君たちも、まだ再会できていない後輩に顔向けできるように…。」
「ええ。映画の声の出演が決まったヒーリングっどや他のみんなのためにも、あたしたちはなぎささんとほのかさんの残したモノを伝えていきますよ。仮面ライダー達が大自然の使者として存在が言い伝えられたように…」
のぞみは昭和ライダーの生き様に憧れたようである。のび太が『普通に生きて、普通に死ぬために』戦う事に感謝しつつ、昭和ライダーの崇高な生き方に習いたいところが多い事を滲ませる。のぞみは自分とことはに帰る場所を与えてくれたのび太を慕いつつ、昭和ライダーのヒーローっぷりに憧れる。そこにある笑顔は彼女のありのままの笑顔である。りんはのぞみを『不死になったとしても、家族として受け入れてくれた』のび太に感謝しており、のぞみの幼馴染として、これまでと違い、一歩下がった立場から見守る決意を固めていたのだった。
――男は優しくなければ生きる資格がない――
ドラえもんがのび太に常々言い聞かせたこの言葉。のび太のおばあちゃんも似た趣旨の言葉を教え、のび太は亡き祖母とドラえもんの二人から教わったモノを胸に生きた。のぞみはのび太の亡き祖母の事は知っており、デザリアム戦役で立ち直る過程でことはが彼女の存命中の時代に連れていき、『のびちゃんをお願いしますね』と頼まれたことで奮起している。のび太の祖母はのび太の人間性を形作ったが、自身の死後における孫を想い、愛する孫の未来をことはたちに託した。これがことはが野比家に居着いた理由でもあり、野比家を自らが守るようになった原因なのだ。