――デザリアム戦役が終わった後、のぞみは前々からことはが接触を繰り返した『プリキュア5の世界』に自分も何度か足を運び、時たま助力した。その世界の自分に嫉妬されるというアクシデントは発生したものの、シャドームーンと対等に戦える戦闘力を得ている点は羨望された。とは言え、それでも倒すには至らないため、シャドームーンという存在の強大さが際立った――
「当面の問題は静夏がうちにいる理由の説明だって、坂本先輩が頭抱えてるっけ。芳佳との接線も薄いし」
その帰りの道中、アルカディア号で与えられた個室でのぞみはそう考えた。服部静夏は史実と異なり、芳佳との接線は薄く、思い入れもさほど無い。これは芳佳の性格が史実と異なり、1945年からは飄々としたものであるが故に、生真面目な静夏はシンパシーを感じなかったため、1946年の留学の護衛の際も形式的な触れ合いに留まったからだ。とは言え、面倒見が良いことで、史実より遅めに交流は始まってはいる。が、アニメで『501の坂本の後釜』とされたので、坂本はその説明に四苦八苦している。静夏を引き抜いたのは、単に『招来の有望株を育てておきたい』とする坂本の要望が通っただけだからだ。
「あたしもあたしで、自分自身と揉めてるし、似たようなもんだよなー」
「のぞみちゃん。あたしだけど、入っていい?」
「ラブちゃん?いいよー」
ラブがやってきた。ことはと共に一連の出来事での功労者の一人であり、かれんとこまちを連れて行く承諾を強引にでも取るため、シャイニングフィンガーも使った彼女。デザリアム戦役終結後はプリキュアコミュニティのNo.3となっており、階級も少佐である。
「あの子には参ったよ。駄々こねるもんだから、シャイニングフィンガー撃っちゃったよ。緊急事態だったから、ね」
「構わないよ。はーちゃんはストナーサンシャイン撃つつもりだったみたいから、それよりは穏便だよ」
「は、はは…」
「ん?坂本先輩からだ。交流で日本に行くことになったけど、映画撮影に戦艦大和使いたいって打診があったんだって」
「上部構造物が宇宙戦艦ヤマトだか、超時空戦艦まほろばになってるんだけどなぁ、大和」
「合成でどうにかするんじゃない?」
のぞみのタブレットに入った坂本からのメールで言及された映画撮影とは、日本の映画会社が『日本版バトルシップを撮りたい』と打診し、扶桑海軍がOKしたことを指す。これは日本は太平洋戦争の敗戦で戦艦を失い、21世紀には第二次世界大戦型は現存していないが、扶桑は現役で戦艦を運用中という点を映画会社が考慮したからだ。坂本はその最終的な契約締結も仕事に入ると言ってきている。戦艦大和が指名されたのは、戦後日本で一番有名な軍艦だからとの事。
「でも、日本にいる姉妹艦じゃないのはなんでだろう?」
「大和が有名だからだよ、たぶん」
映画会社がなぜ、2020年に駐留する艦隊の旗艦である同型艦でなく、大和を指名してきたのか?詳しくはわからないが、大体の見当はつけた二人。実際は『任務中の同型艦は撮影の時間が取れないかも知れないから、手空きである大和なら…』という理由もあった。扶桑海軍は志願数低下に悩んでいたので、こうした広報活動に積極的であり、主力艦艇も映画撮影に使わせる。とは言え、近代化改修のために、その艦影は宇宙戦艦ヤマト、もしくは超時空戦艦まほろばに近くなっているのだが、ある程度は合成で誤魔化すのだろうと坂本も推測している。広報活動は64Fも積極的に行っており、この日は日本でキュアミューズが日本で無観客ライブを行っており、自分のチームの(スイートプリキュア)主題歌を熱唱中であったりする。(もっとも、アストルフォの身長は165cm前後なので、キュアミューズの『最年少プリキュアの一人』という現役時代の魅力は多少ながら薄れているが)
「あ、アコちゃん、ノリノリで歌ってるみたいだよ」
「そりゃ良かった。あ、また先輩からだ。日本のミリタリー雑誌のインタビュー受ける羽目になったから、大和型がウィッチ世界でどういう経緯で造られたか教えてくれって。……先輩、海軍でしょうに」
のぞみにも呆れられるが、坂本は海軍でも航空閥であったのと、勉強を始めたのはここ数年のことであるので、造船そのものは門外漢であり、黒江に『勉強しとけ!』と怒られている。ウィッチが評判を落とした原因も自分の専門外の分野にはほぼ無知である事であるからだ。(それと対照的にあらゆる方面に専門家並に詳しい黒江達が業務への口出しを嫌がっていたミーナに疎んじられたのは当然であるが、今度はウィッチの一芸特化ぶりが問題にされたために、逆にミーナの評価が落ちる顛末となる皮肉であったが)
「どう返事するの?」
「坂本先輩、航空閥だからなぁ。とりあえず、黒江先輩から聞いた事を整理してっと……」
メモを走り書きし、坂本への返事を考えるのぞみ。坂本も相当に困っており、黒江に送ればいいヘルプをのぞみへ送るあたり、切羽詰まっている様子が分かる。黒江が以前に言っていたが、ウィッチ世界の大和型戦艦は連合艦隊司令部を前線に置き、士気高揚のためと移動シェルター的役目を期待され、重戦艦の名目で設計されたが、用兵上の都合で46cm砲艦として具現化した。その目的故に連合艦隊旗艦とその予備としてしか考えられていなかった。だが、艦娘大和の出現が運命を変え、モンタナ級戦艦の存在が1940年には伝わったために量産が考えられたが、井上成美の反対で計画が縮小され、四番艦までが予算承認された。1941年の事だ。更にウィッチ閥の要請で空母への改装が考えられたため、建造作業は延び延びになっていた。だが、44年の地球連邦軍との接触で作業が急速に進展。呉の壊滅と建造進捗率があまりに進みすぎたこと(史実の伊吹がそうであったように、無用の長物になることが危惧された)が契機となり、結局は信濃と甲斐は戦艦のままで完成、M動乱で予備代わりに三河が新造された。その割を食ったのが空母で、大鳳以降の空母計画が白紙に戻され、ようやく瑞龍型が85000トン級として認められたのが1948年。建艦は1949年からと遅延しまくっている。これはウィッチ母艦としての役目が求められなくなり、純粋に航空母艦としての機能強化が求められたのにウィッチ閥が必死に抵抗したためだが、サボタージュとクーデターで国民に決定的に不信を買った以上は無駄な努力であった。
「これでよしっと…。これだから、周りの軍人に疎まれるんだよな、空戦ウィッチ」
のぞみがそういうのも無理ないが、ウィッチは他兵科にあまりに無知であったため、この時代には航空ウィッチは特にお荷物扱いされていた。陸戦ウィッチと比して、対人戦では運用メリットが少なすぎるからだ。
「大変だねぇ」
「先輩は古い世代のウィッチだから。なんでも知ってる黒江先輩が異端児なんだよ」
坂本は転生でだいぶマシになったが、それでも海軍の他兵科には無知なところが残るため、後輩に知識を聞きかじる事も多い。のぞみも代々が陸軍の一族に転生していたので、海軍の事は本当は門外漢に近い。この四年で黒江たちから、ある程度の知識を叩き込まれていたので、どうにか知っている程度だ。黒江たちが『異端児』と言われたのは、通常航空機の操縦技能も持つ上に、整備兵に手厚く接する点である。ミーナは501の整備兵の不満を把握していなかったのも減点の理由付けである。ミーナの本来の人格が黒江達を疎んじた理由は『年齢が20を超えているのに、やたら先輩風を吹かせてるから』でもあったが、その神通力が尚も健在であったのと、スーパーロボットと同様の闘技を普通に使えるという項目を把握していなかったため、懲戒処分の程度が危うく、とんでもなく重くなるところだった。(個人として、『あまりに強いこと』も疎んじられた理由だが、ミーナ自身も200機撃墜済みの撃墜王であるのが人事査定に響いた)
「ん?電話だ。……坂本先輩?わざわざ電話で確認ですか?」
「すまんすまん。とっさに思い浮かんだのがお前だったんでな。あと一時間で件のインタビューなんだ」
「なんで引き受けたんです?」
「インタビューに箔をつけたいんだと。私は501の在籍経験者だからな」
「なるほど」
坂本は日本での自分の知名度に苦笑しつつも、悪い気はしないとも言う。
「とは言え、ミーナさんの評判落ちそうですよ?」
「仕方あるまい、あいつの無知が招いたことだ。一応、私が雑誌向けに擁護はしてるし、本人も公に謝罪しとる。過ぎたことだよ」
ミーナの評判は黒江達の一件で大きく下落したのは否めないが、非を認めれば素直に謝罪すると言う点で『誠意がある』とされ、マスメディアに叩かれる事はどうにか避けた。ミーナ(まほ)はその後は一士官として黒江達に仕えていく事になる。
「日本は叩く口実ができると、すぐ社会的抹殺一歩手前まで叩くからな。カールスラントの高官連中など、戦々恐々だ」
「カールスラントがびびってましたからね。お上が抗議するって噂一つで」
「実際にはその直前で制止が入ったらしい。マンネルヘイム元帥やモントゴメリー中将の謝罪文が上奏されて、ロンメル元帥の直接の謝罪があってな」
坂本も言うように、カールスラントやスオムスは日本連邦による経済制裁や部隊引き上げを恐れ、高官、もしくは国家元首自らの謝罪を慌てて行った。日本連邦の世論の激昂を恐れたためだ。特にミーナのミスはよりによって『伝説の七勇士の筆頭格』を冷遇したことであり、パットンが357マグナムを振りかざしながら、査問で強く叱責するほどの大事となった。その際にパットンを諌めた秘書官こそが、黒江が潜り込ませている内偵でもあるユニ(キュアコスモ)である。ミーナは『幾重にもお詫びいたします!!』と涙ながらに叫んだ。パットンは懇意のケイが冷遇された怒りで、頭から湯気が出る勢いで愛銃を振り回し、怒鳴りまくった。それを諌めたのだ。
『閣下、お戯れはそこまでニャ』
と、キュアコスモの姿でパットンを諌めた。ミーナ本来の人格がプリキュアを目にした最初で最後の機会であった。そこで圭子がタイミングよく現れ、『そこまでにしとけ、パットン。ガキがブルってんだろ』と微笑う。粗野な口調、それに見合う低音ボイスをこの時に公の場で初披露したわけだ。圭子は猫かぶりの時は黒川エレンに似た高めの声を使うが、素の時は粗野な口調とやさぐれな雰囲気の低音ボイスである。その低音ボイスを初めてアフリカで使った時はマルセイユとマイルズ、フレデリカに正気を疑われていたりする。
「パットンの親父よぉ、玩
圭子がホットパンツとタンクトップ姿に軍服を羽織った姿で現れたので、ミーナは何が何だか分からず、混乱。黒江と智子は笑いそうなのを必死に堪える。ロンメルは事を知っているので、『血まみれの処刑人のご到着かね』と、モントゴメリーは『扶桑陸軍の狂気のご登場かね』と笑う。圭子はミーナに見せていた温和そうな顔ではなく、狂気と正気スレスレを逝く
「コスモ、任務ご苦労」
「あーい。こんなもんで良かったにゃ?」
「上出来だ。上手く潜り込んだな?」
「元・怪盗だから、このくらいは簡単ニャ」
現役時代は怪盗ブルーキャットとしての顔も持っていたキュアコスモ。圭子はその彼女を使い、上層部との取引材料を入手し、交渉を優位に運んでいた。
「そうか、ケイ。この子はお前の差し金か」
「損はさせてねぇだろ?」
「うむ…」
圭子が上層部と懇意である事を知り、更にこの後、モントゴメリーから『七勇士の筆頭格の三人』が目の前にいる事を改めて公に知らされたミーナはあまりのショックで卒倒し、坂本を困らせた。のぞみの覚醒の前後で起こったこの出来事はカールスラントの権威没落の序曲として後世に記録されている。
「――あの時、ミーナが卒倒した後、一旦起きたんだが、私が味方しなかったショックなのか、酷く錯乱してな。ハルトマンが取り押さえたんだが、ヒステリックに喚いていてな…。正気ではなかったよ」
坂本の回想によれば、その際の錯乱は銃を自分(坂本)に向け、『どうして、私をかばってくれなかったのよ!!』と喚き散らすというヒステリックで見苦しいもので、この時にエーリカの人心を本来の人格は失っている。エーリカが気絶させ、その隙に医務室の奥に隔離。ロンメルの権限で指揮権が武子に委ねられ、正式に統合の運びとなった。のぞみの覚醒が伝わったのはこの後のことだ。
「でも、よく銃を取り上げる事が出来ましたね」
「ケイが真ゲッター張りの動きでぶんどってな。その後にエーリカがぶち込んだ。おそらく、本来の人格をあそこで見限ったんだと思う。柄打ちで鳩尾を打つにしても、えらくぶっ飛ばしてたからな」
「それで隔離ですか?」
「お前たちの覚醒が私の耳に入ったのは、宮藤とシャーリーも変身した後だった。何分、その処理と箝口令でえらく時間かかったからな」
「そう言えば、トワちゃんの時はどうだったんです?」
「その時は目の前で変身されたからな。流石に驚いたよ。人格も変わっているからな。ペリーヌは何故、プリキュアの力を覚醒めさせてまで、私を?」
「先輩を崇拝してましたからね、ペリーヌ」
「見くびられたものだ。七勇士の端くれだぞ、私は」
「いいじゃないですか。ペリーヌにとっては先輩が守るべき対象だったんですよ」
ペリーヌが自身に眠る二つ目の人格『紅城トワ』を覚醒めさせた出来事は以下の通り。坂本が逃げ遅れた整備兵をかばい、足を負傷したのを目の当たりにしたペリーヌがその身を投げ出し、坂本を守ろうとした瞬間にトワの人格が炎と共に覚醒、炎を背にキュアスカーレットに変身していたというものだ。キュアスカーレットはキュアマーメイドに次ぐ二人目のプリンセスプリキュアであり、その出現にキュアマーメイドに覚醒済みの竹井は大いに腰を抜かしたという。彼女も例外なく、初戦闘後はしばらく変身を解除できず、困惑する羽目になったが、キュアマーメイドとの再会は成った。彼女もそうなったため、その後に『転生してプリキュアに戻ると、プリキュア因子の定着に時間を要するため、最低でも数日はそのままでいるしかない』という結論が出た。これはキュアダイヤモンド、キュアロゼッタ、ミルキィローズ、キュアエース、キュアサンシャインも通った道である。特にキュアロゼッタは秋山優花里に『ヒャッホォォ!!最高だぜぇ!!』と狂喜乱舞されるわ、ミルキィローズはその姿で三突の指揮を取る羽目になるなど、羞恥心との戦いとなった。なお、キュアエースはその姿で実家(バニングス家の家業)の経営する企業の会議に出る羽目となり、キュアサンシャインはシン・アスカへの説明に困り、ジャンヌ・ダルクのスキルに頼る羽目になるなど、ギャグ漫画のような事態になったプリキュアのほうが多数だ。なお、ルッキーニはクロエになってもおっぱい星人ぶりは健在であったため、プリキュアの胸を揉むという暴挙に出ては、その戦闘スキルで毎回逃げおおせている。(なお、シャーリーに関しては『縮んだ?』と言ったので、ブチギレたシャーリーに眠っていたメルトダウナーを覚醒めさせてしまったので、流石に叱られたと言う)
「とは言え、お前らの力だが、どうして、初変身からしばらくは変身の解除が効かんのだ?」
「アリシアちゃんが調べてくれたんですけど、現役時代は妖精の皆、あるいはそれに類する不思議なパワーをソースにして変身してたのを、転生した後に得た魔力を代替パワーソースにして、魂に刻まれてるプリキュアの力をそれに繋げるのに個人差があるんですけど、時間がかかるそうです」
最大ではキュアフェリーチェ(彼女は因果律操作での存在の改変もなされたためだが)の数ヶ月、最短はキュアロゼッタの二日半と幅が大きい。平均で三日から一週間。任意の解除が可能になっても、修行の一環でそのまま変身していることも多くなったのは言うまでもないが、逆に変身していることでマスコミの追跡を逃れられるというメリットも発見されたので、サンシャインとミラクルはガンダムのテストが一段落ついても、プリキュアの姿は保っている。ブルームとイーグレットは現役時代からの転移組だが、大決戦時に小宇宙を感じ、なおかつゲッター線を浴びていたため、単独での変身と維持が可能になっており、元のシステムから独立した。(初期プリキュアは共通のパワーソースを持っており、そこに手を出されると、戦闘能力が下がるという弱点があった)
「なるほどな」
「あ、大和型についてはメール送ります。それと、向こうのルッキーニ。どうやって、こっちのセキュリティを突破したんですかね…」
「うーむ。あいつは視力が良い。暗証番号の入力順を覚えていたとしか」
ルッキーニBがセキュリティを突破した事件は『ザル整備』と謗られる要因になったが、ドアの暗証番号は複雑なもののはずで、ルッキーニでは手に負えないはずである。
「あるいはデタラメに押したが、運で開いたとしか……」
「そんな、まさか」
「あいつは一億円当てるくらいに運がいいんだ。ありえる」
「あ?ルッキーニにカギなんて意味無いぞ?適当に針金突っ込んだり、セキュリティキーを複雑にしても、適当に番号合わせて開けちまうからな」
「し、シャーリー」
「オッス。電話代ってくれ。そのことで伝える事がある」
「分かった。シャーリーが伝えたいとかで、代わります」
のぞみはシャーリーにタブレットを渡す。
「大変だね」
「ラブちゃんこそ、アギトの力持ってんしょ?美希ちゃんやせつなちゃんにどう説明したの」
「実際に紋章浮かべて、廃棄するマチルダⅡをキックでぶち抜いてね」
「わーお…」
キュアピーチは前世での最後の戦闘でアギトの力に目覚めていた。それが引き継がれたため、その力をプリキュアの姿で行使できるというハイブリッドな存在となった。これにはディケイドもびっくりである。そのため、『プリキュア5の世界』のキュアドリームと何度か戦う際に、津上翔一と同じような変身ポーズでプリキュアになることもあった。この場にいるのぞみは仮面ライダー555と同じやり方で変身した事があるので、転生後はプリキュアブレスの存在もあり、変身ポーズは割に自由になっている。相田マナはRXとしての南光太郎のポーズで変身していたりしたため、仮面ライダーの存在を現役時代から知っている者は変身ポーズに遊びを取り入れているのが分かる。
「フェリーチェがゲッタートマホーク出した時なんか、向こうのローズが抗議してさー。あたしもフレイムセイバーとかストームハルバード使ったこともあるから、人のこと言えないけどね」
「トマホークって、どのタイプ」
「真のあのタイプ」
「向こうのあたしが泣くね、それ…」
「うん。猛抗議してたよ。ルージュもだけど」
「あ、やっぱり」
フェリーチェは切羽詰まっていたこともあり、真ゲッターのハルバードタイプを手に、脅しに近い形で交渉を行った。のび太が「ほら!斧しまって!気当たりだけで腰抜けてるから!落ち着いて、ね?」と諌めたものの、ド迫力すぎて、その世界のドリームを泣かせたという。ピーチのシャイニングフィンガーが決め手になったが、その世界ののぞみが対価を求めたので、ラブはマナとめぐみ、ことはをしばらく滞在させることで手打ちにさせた。とは言え、その後にシャドームーンがやってきたため、自分とコージがRXと共に援軍として戦い、撃退した。この時はその帰りだ。
「向こうのあたしにこの薬指見せたら、卒倒されたよ」
「ま、向こうの世界じゃ出来ないことだしね、その指輪は」
のぞみAは1949年の時点で既婚者であるので、当然ながら結婚指輪をしている。コージが生まれ変わったことで成し得た奇跡だが、B世界では不可能なことなので、大いに泣かれたのは言うまでもない。
「向こうのあたしはまだ青二才だからなぁ」
「とは言え、フェイトちゃんが無限書庫から持ってきた資料になんで『波紋法』や『スタンド』の事があったんだろう」
「話聞くと、地球の派生世界の一つがその世界らしいんだ」
「うぇ……本当?」
「うん。前に、調ちゃんと一緒にヴィヴィオの付添で無限書庫に行った時にフェイトちゃんが見つけて来たんだ。腰抜かしたよ、その時は」
「つまり、あの一族きってのトッポイ男が究極生物を追放したり、吸血鬼をブチ切れで倒したその孫が次元世界のどこかに!?」
「うん。なるべくなら行きたくないって苦笑いしてたよ。とは言え、波紋法には興味持ってたよ」
「え、あたしたちにアレ必要?」
「ま、覚えておくに値する力だって言ってた」
「すると何?波紋の呼吸でもして、吸血鬼や柱の男とでも戦うつもり…!?じょうだ……」
「なぎささん達がどこにいるかわからないからね。もしかして、そこで戦ってるのかも……」
のぞみはその可能性に触れる。ラブはその世界を漫画として知っている上に愛読書だったらしく、いきなり専門用語の羅列かつ、オーバーリアクションの連続だ。
「うわ~~!おっそろしい…」
「黒江先輩、グレートカイザー乗る特訓に波紋の修行を取り入れてたよ」
「だから、なんでぇ!?」
「肉体をもっと鍛えるためだって。カイザー系は相当に強い精神力がないと制御出来ないから、波紋覚えて、肉体と精神をもっと鍛えるとか…」
「あたしたちに波紋は今更、意味がないような…?」
「肉体的な外見の効果はね」
――波紋法とは、その平行世界に伝わっているという『生命エネルギーを特殊な呼吸で活性化させる方法』である。その副次効果として、個人差があるが、肉体の老化が鈍化する。75歳の老人が50代の壮年程度の外見だったり、生命エネルギーが強ければ、50歳でも、23歳前後の妙齢の外見だったりする。黒江はその副次効果よりもむしろ、その修行で培われる精神力の鍛錬の効果を期待していると、のぞみは言う。フェイトがひょんなことから見つけたという、その世界の資料に色々とツッコみたいラブ。それと対照的になぎさとほのか、ひかりを探すには、その世界に足を踏み入れる覚悟も必要だと考えるのぞみ。その資料に記されていた仙道『波紋法』に調とヴィヴィオが興味を示していたことも大きかった。とはいえ、気になったラブはこの後すぐにフェイトに連絡を入れ、その世界にまつわる管理局の記録をコピーし、ファイルにまとめて自分の私邸に送るように頼むのだった――