ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第百六十一話「~行間 プリキュア、そしてとある世界の記録~2」

――結局、ウィッチ兵科は40年代末の時点で風前の灯火と化していた。特に空戦ウィッチはダイ・アナザー・デイでのサボタージュで政治的発言力を落としており、強襲揚陸艦に装備が搭載されるだけでも儲けものであった。フェイトがもたらした『波紋法』と『スタンド』の情報のうち、敷居が比較的に低いと思われる波紋法を特訓する事を選んだ黒江のように、常に新情報を柄み次第、その異能をモノにしようとする意欲が空戦ウィッチにはないと見做されたのも政治的発言力の喪失の理由だった――

 

 

 

 

 

――黒江が何故、波紋法を特訓しだしたのか?それはグレートマジンカイザーの搭乗に必要な肉体の強さ、精神力を得るためであった。黒江のように、求道的に力の研鑽を続ける者はウィッチ全体で見れば異端であった。その求道ぶりは所属した大半の部隊で疎まれる理由になったが、64Fではその姿勢が模範とされた。プリキュア達はそれに巻き込まれる形で技能の研鑽を義務付けられたが、敵の戦闘レベルがそれぞれの現役時代を遥かに上回るため、プリキュア達にも自然と受け入れられていった――

 

 

――ザンスカール残党の襲撃から5日ほど前――

 

 

「エースはなんで、日本刀を?」

 

「キュアエースになるよりも遥か以前の『生』の記憶の名残りでしょうね。あるいは同位体の要素かも知れませんわ」

 

キュアエースには自身にもおぼろげにしかわからない事柄があった。それは『トランプ王国のアン王女』としてのものよりも遥かに以前の生か、あるいは同位体が持っていた要素が取り込まれたのかは不明である。智子の転生後の固有魔法によく似ているが、根本は違うもの。プリキュアの力ではないが、『炎を操り、日本刀に炎の熱エネルギーを上乗せできる』というものはキュアエースの現役時代の力とは別ベクトルの力である。黒江とのぞみは芳佳が個人的趣味で持っていたライトノベル『灼眼のシャナ』のヒロイン『シャナ』が持っていた力にそれが該当するため、『キュアエースから更に転生したことで、偶発的にその力がプリキュアの力と併存する形で蘇ったか、宿ったのでは?』と推測を立てていた。

 

「だいたいの見当は芳佳がつけたよ。灼眼のシャナのアレだって。ほら、あたしたちの現役時代に流行ってた……」

 

「……属性盛り過ぎと言われないでしょうか」

 

「もーさ。『うるさいうるさいうるさい』とメロンパンの時点で大方は察せられてるよ、芳佳には」

 

「あの方は転生で変わりましたわね」

 

「飄々とした振る舞いだしね。現役時代のみゆきちゃんとは別の人格って感じで接するべきだよ」

 

宮藤芳佳は45年以降はキュアハッピーには戻ったものの、人格は星空みゆきというよりは角谷杏のそれが主体であるために飄々として、大人びた振る舞いが多くなった。それでいて、大人の世界の厳しさも理解している。以前の芳佳とは良くも悪くも別人である。64Fの情報通の称号は今や彼女のものだ。

 

「あなたも現役時代とは変わりましたわよ、のぞみ」

 

「この数年で色々なことがあったからね。それに……精神的に子供じゃいられないしね、立場上」

 

キュアドリームとキュアエースはお互いに自分がかつてと変わるしかない状況だった事に苦笑しつつも談笑していた。先輩のキュアブルームにリーダーのポジションを譲った(黒江から、サブリーダーとしての仕事は続けろと言いつけられているが)キュアドリームは肩の荷が下りたものの、軍隊階級が高い都合上、業務そのものは多忙である。ZEROとの融合で戦闘力そのものは美墨なぎさ/キュアブラックをも凌駕したが、それは単純な数値の上での事だ。

 

「まさか、軍隊生活を送るとは思いませんでしたわ」

 

「お互い様さ。元は全然違う商売してたんだし。それに、現実問題として、真面目に戦闘を合法にできる商売は軍隊だけなのは事実さ。警察なんか、あたしらの戦闘行為の合法性の担保とか合法性で、仮面ライダー知ってる世代とそうでない世代で論争になってんだから」

 

「70年代のヒーロー華やかりき頃を知る者とそうでない世代の差ですわね」

 

「それで軍隊があたしらを抱え込んだから、日本のフェミニスト達が騒いだり……。と、まぁ、そんな感じ。日本のフェミニストは外国から嫌われてるけどね」

 

 

のぞみは予備士官へ退き、教職につけるはずであったが、日本の教育関係部署が予備士官を教職につけるなと圧力をかけ、市民活動家もデモを行ったので、結局は軍部も規則変更を余儀なくされ、自身も転職を断念したため、市民活動家やフェミニスト嫌いになっていた。その後、若松に首根っこ掴まれたり、キ99と共に『衝撃降下』した台場大尉の弔いで教官にはなるが、彼女がプリキュアであったために教育関係機関は猛抗議をされる羽目になったのは言うまでもない。

 

「溜まってますわね」

 

「姉貴に無理言って、転職の話までつけてもらってたのに、パーにされたからね。姉貴が怒鳴り込んだけど、文部省の決定ですので…と言い訳されたとか」

 

中島家長子の中島小鷹は末妹の疾風と違い、のぞみの事を知っている上で妹として接しており、予備士官に退いた後の就職先も探すほどに可愛がっている。(10歳は離れていたため)。のぞみも小鷹のことは『姉貴』と呼んでおり、そこは引き継いでいる。彼女がプリキュアであると知らされた文科省は青ざめ、『大学の講師にでもなればいい』と言ったが、中高のいずれかの教諭を目指していたのぞみにとっては侮辱に等しかったため、小鷹を通して抗議した。交渉は決裂し、のぞみは結局、正規軍人のままで太平洋戦争を戦うことになった。彼女が大尉としての勤務日数が数年以内の内に少佐になったのは、その埋め合わせ(軍部が転職を約束していたため、軍部も文科省に抗議したが、文科省は軍部には強気に出た)の意味もあった。その後の時代(日本では2020年代半ば)に防衛大学の実技講師として勤務し、文科省へ当てつけをしたという。

 

 

 

――一連のウィッチの社会的地位の低下を招いた一因は日本のフェミニスト達や市民運動家らの活動である。軍隊での雇用が減る一方、怪異への対抗はどうしても必要である事は理解された。また、ウィッチの力は永続でないのが多数派である事に慌てた彼らは中学校や新制高校の部活という形で『怪異のハンティング』を認め、ウィッチの『保護』をせざるを得なくなった。『プリキュアを含めたGウィッチは突然変異で現れた者』であり、実は少数派である事が突きつけられた日本のフェミニストや左派政治家はオラーシャの魔女狩りでの亡命者の待遇改善やクーデター後の左遷や解雇への抗議デモの要求を容認するしかなく、新規志願数が減った分は義勇兵で補うのが方針となった。この頃には日本主導の下、軍都の民需転換政策で軍と銃後の距離が精神的に開きつつあり、軍人はクーデターの影響で肩身が狭くなっていた。64Fの本拠となった基地も本来は戦略爆撃機『飛天』(富嶽の後継機)の拠点として整備された。1942年頃の『軍都整備計画』の一環だった。本来は軍需工場とその従業員らの住宅街が周囲に建てられるはずで、軍事上の必要があったとは言え、住民のための路線も開通済みだったが、日本主導で軍都整備計画が破棄されたために予定地の空き地が何十キロという広大な領域で宙に浮いてしまった。日本は補償として、空き地を『責任を持って』開発する事を約束。その代わりに軍需工場は空襲対策で地下工場に集約させる事とされた。その宙に浮いていた軍都の中心となるはずだった基地を近代化して、64Fに充てがったのが真相である。

 

「貴方もここ数年は大変でしたわね」

 

「エースだって、スローネドライのテストしてたでしょ?」

 

「色々言われましたわ。クロさんには微妙な顔されましたけど」

 

「あー……」

 

のぞみはスローネドライを撃墜したルイス・ハレヴィの『声帯の妖精さん』で合点がいったようだ。クロが微妙な顔になったのは、同位体が達磨にしたガンダムだったからだ。

 

「貴方だって、サーフボードに乗ってる奴の…」

 

「そうだよ。シャーリーなんかは直近の過去生で紅蓮に乗ってた。だから、シャーリーと美遊とはその頃から、ね」

 

「なんだか、すごくあれですわね…」

 

「のび太くんが結婚式で主題歌歌ってくれたよ。とは言え、向こうのルッキーニが絡んできてるんだ。多分、見た限りはシャーリーとつるんでる事が多いからだと思うけど」

 

 

「なるほど。それで、私のこの要素は…つまり『灼眼のシャナ』だと?」

 

「産休中の芳佳に連絡入れたら、そう推理してきた。剣を使う時は炎髪灼眼になってるじゃん?元から赤髪、赤い瞳だからわかりにくいけどさ、エースは」

 

キュアエースは元から赤髪なので、その要素が顕現しているかは見分けにくいが、髪の彩度がさらにあがり、炎が燃えているかのような様相になっている事、大太刀を使うかどうかがポイントである。

 

「なのはには属性盛りすぎって言われましたわ」

 

「シェルブリットで、方向性がアストロ球団張りに狂ったのにはいわれたかぁないっしょ?」

 

「あなた、妙に変な例えを……。」

 

「元の流れからして、なのはは魔砲使いだからね。平行世界のあの子は純真で可愛かったんだけどなぁ。こっちのは今や飲んだくれで、良くも悪くも無鉄砲になったしね」

 

「それと、向こうのバルクホルンが聞いてきて、答えられなかったのですけど…。ドイツ軍のラーテって完成してますの、この世界?」

 

「ラーテ?あのシャルンホルスト級戦艦の主砲積んだトンデモ戦車ぁ!?」

 

「ええ。向こうではベルリン攻略のために生産中だとか」

 

「うーん……」

 

と、考え込んでいると。

 

「この世界だと計画中止だよ」

 

「あ、先輩」

 

黒江がやってきた。口元に波紋使いが修行に使う専用のマスクをつけており、本当に波紋の修行中なのが分かる。

 

「先輩、ガチで波紋を…?」

 

「Gカイザーを操るには精神も鍛えんとだめだからな。皇帝を操るってのは精神の戦いでもあるからな」

 

黒江は特訓のため、波紋の修行を行う選択を取り、聖闘士でありながら、太陽のエネルギーと同じ波長を持つ『波紋』を身につけようとしていた。修行の密度が濃いのは後天的に波紋使いとなる者にはつきもの(生まれつき可能な者もいる。ジョナサン・ジョースターの孫であったジョセフ・ジョースターがそれだ)である。

 

「あなた、なぜ次々と異能に?」

 

「転生してからというものの、強くなってはぶちのめされる事を何回も味わったからな。一つの技能にこだわるのが馬鹿らしくなったんだ」

 

黒江は技能を極めたと思ったら、もっと強い相手にぶちのめされるという経験を何回もしたため、技能を限界まで極めるのは変わりないが、引き出しを多くするため、新情報の収集に余念がない。波紋もその一つである。新しいものを知ると限界まで知りたがるという黒江の凝り性な気質を知る者にはお馴染みの光景だ。とは言え、波紋使いの仮想敵である柱の男も吸血鬼のいない世界で覚えるメリットがあるのだろうかと思う者も多い。

 

「先輩、吸血鬼も柱の男もいないのに、波紋覚えて、その…」

 

「万一のときに役に立つかもしれんだろ?」

 

黒江のこの考えの正しさは後日に証明される。黒江は波紋の資質も持っていたのだ。大決戦当時にその片鱗らしきものは垣間見えており、パンチの打撃音にそれらしき音が混ざり、波紋が相手に流れる際に発生する電撃らしきものが見えていたため、のび太は感づいていたが。

 

「そう言えば、貴方。あの時。気づかれた要因の一つは…」

 

「たぶんな。それと俺、コイツと違って、口八丁で立ち回るタイプだし」

 

「先輩、それで疎んじられた嫌いがあるから」

 

「否定はせんよ。若い頃から『知恵がありすぎる』って疎んじられてきたからな。とは言え、あるに越したこたぁねーよ」

 

黒江を扱いきれなかった部隊の者は後日に左遷させられ、出世コースから外れる場合が多かったのがここで示唆される。旧・1Fとその後身の旧64Fの出身者は例外なく疎んじられてきた。若くして戦功を挙げたからだ。特に20をすぎても研鑽を続けた黒江は異端視されたのだが、結局、一度退役していた(半年ほど)事はGウィッチ化の時に『無かった事』として処理され、書類上は一貫して現役である。黒江は聖闘士になっても自分を鍛え続けているが、赤松の言いつけを守っているからだ。

 

「んじゃな。修行の続きしてくる」

 

「先輩、物好きって言われません?」

 

「よく言われるよ」

 

とは言え、自分たちもいずれは波紋に手を出さねばならぬことは自覚するキュアドリームとキュアエースの二人。日本は大戦の敗北の記憶から、一騎当千の強者だけで固めた特殊部隊を好む節がある。武子が64F隊長の地位を断ろうとしたのは『精鋭は育ててた上で得るもの』と考えていたからだが、皇室を誹謗中傷から守るために現在の仕事を引き受けたと言っている。武子は少尉時代に皇室の一存でウィッチ部隊の司令官を務めた経験があるのだが、皇室が軍の指揮系統を無視し、権限を傘にして『お気に入りを司令官に添えた』と非難されたのだ。有事の緊急避難的な措置ということだが、武子がその後に露骨に冷遇された(とは言え、大尉にはなっている)ことで参謀本部で『粛清の嵐』が何回かに渡って吹き荒れたため、この時期になると、組織の運営の円滑化の名目で統合参謀本部の幕僚の過半数は自衛隊の統合幕僚監部付けの幕僚で占められている。いずれも黒江の息がかかっている者だ。

 

「ウチは何が何でも戦果が求められるからな。お前らも鍛えとけよ。あ、ラーテは製造が六台分で中止。博物館行きだ。確保されてた資材は全てレオパルト2戦車やその他の兵器に回された。兵器開発関係者は泣いてたがな」

 

「ありがとうございます」

 

 

去り際にそう言い残す黒江。64Fは最精鋭部隊として『戦果が求められる』。それは武子も苦笑交じりに『期待しすぎよ』とぼやいているが、かつての500番台部隊(要は統合戦闘航空団)の代替物扱いである以上は仕方がない点だった。ついでに陸上巡洋艦とも、陸上戦艦とも評され。反攻作戦の際の移動司令部としても期待された巨大戦車『ラーテ』はベルリン攻略作戦に伴う投入計画が破棄されたため、量産配備も無駄なガラクタと判断した独側の判断で全てが中止になった事が伝えられる(子供じみた玩具を使って、ベルリンの道路と橋を全て壊す気かと独側がせせら笑ったため、配備を推進してきたカールスラント側が激昂し、双方の政治家や軍人とで派手な殴り合いになったために日本連邦による仲裁が緊急でなされ、日本連邦が脅す形でドイツ連邦共和国最新の主力戦車である『レオパルト2戦車』の生産権の供与とレオパルト1の設計図供与が代価として決められ、それで手打ちとなった)。ドイツはこうして、カールスラントの軍事的権威や軍事大国としての地位の衰退を強く促進させたので、戦前の南リベリオン大陸への苦しいエクソダスを見てきた世代の古株の職業軍人(ウィッチを含む1945年当時の中尉以上の将校と古参の下士官。1949年では最先任級の古株の下士官)らからは大いに嫌われていくのである。

 

「あの方の言うとおりですわ、ドリーム。強くならないと」

 

「単純なパワーじゃ、なぎささんを超えてるんだけどなぁ」

 

「私も現役時代より強くなってる自覚はありますわ。ですが、次元世界に強敵がわんさかいる以上は」

 

「うん。」

 

黒江が言うように、吸血鬼や柱の男達と戦闘の機会があるやもしれないかは不明だが、現役時代を上回るためのトレーニングは必須である。次元世界には強敵が多いのだから。仮面ライダー達のようにあらゆる敵と戦う覚悟がいるのだということだろう。

 

 

 

 

 

――連合艦隊は敵海軍の繰り出す打撃艦隊と時たま遭遇、数回に及ぶ艦隊戦で刃を交えていた。連合艦隊はこの頃、予てから日本側に呉襲撃事件や旧式化で失った金剛型戦艦の代替として調達していた『超甲巡』の有用性を疑問視されており、戦争にしか使えない性能で、戦艦としても何もかも中途半端な超甲巡よりも、デモイン級に対応できる能力を持つ従来サイズの巡洋艦を普通に調達すべしだ!!』という声が強く推されており、連合艦隊はその声に押され気味であった。とは言え、件のデモイン級もその船体のサイズは既に新造時の長門以上の体躯であり、的外れであった。日本側は『備砲の貧弱さ』を論れ、アイオワ級戦艦(艦の性格は巡洋戦艦に近く、自分の砲に耐えられない)への対策として、紀伊型戦艦までの備砲である41cm砲を速射砲として改めて開発し、日露戦争の主力艦の備砲と同等の口径しかない31cm砲に代えて装備するべきだという論調が強かった。とは言え、連合艦隊は投射重量などは金剛型の旧型35cm砲に匹敵するから、新式31cm砲を敢えて積んだのであり、『巡洋艦としては費用対効果に劣る』とされてはたまったものではない。失敗作であるアラスカ級と一緒にされては困るというのが連合艦隊の見解だった。連合艦隊はその批判に、31cm砲を速射砲化して強化することで応えた。その効果により、敵水雷戦隊は接近する以前の問題で次々と撃沈、もしくは落伍していった――

 

 

「なんだ、あの艦は!?」

 

「フソウの新型艦です!」

 

「馬鹿な、アラスカ級相当の船を水雷戦隊の旗艦として…!?」

 

敵護衛艦隊は超甲巡が戦艦の護衛としてだけではなく、水雷戦隊の指揮艦として使われ、殴り込んでくるとは夢にも思わなかった。

 

「敵弾、来ます!!」

 

「早すぎる!?」

 

とあるボルチモア級重巡洋艦の艦長は一昔前の戦艦サイズの備砲を持つはずの超甲巡が馬鹿のように早い装填速度で撃ってくる事に驚愕する。そして、彼らの後方を航行していた僚艦が中央部を境に分断され、沈没する。これが扶桑に提供された地球連邦軍製徹甲弾(地球連邦軍のサラミス級なら一撃で粉砕可能)の威力だった。

 

「なんだと……一撃で轟沈だというのか!?」

 

「艦長!」

 

「全速で接近しろ!主砲の射程に入らんと手も足も出んだろ!」

 

敵艦隊は知らないが、この時期に現れた連合艦隊の新鋭艦は何万宇宙キロもの遠距離の敵艦を想定した地球連邦軍製の射撃指揮装置や宇宙戦艦式の砲塔を備え、作動速度や命中精度は1945年当時の各国艦の比ではない。超甲巡もそれである。

 

「敵ロケット、来ます!!」

 

「何ぃ!?」

 

超甲巡は第二期建艦分からは旧来の魚雷装備の代わりに近代的なVLS式のミサイル装備が備えられた設計に改訂されており、搭載スペースの確保の兼ね合いで全長と全幅が拡大され、完全に一昔前の超弩級戦艦サイズに達した。外観は大和型戦艦のそれと完全に共通化され、欺瞞作戦にも使える。これは大和型と阿賀野型の折衷である『本来の設計』が水上偵察機の陳腐化で否決され、大和型戦艦とより外観上の規格統一がされた実際の姿となり、更にミサイル装備とヘリコプター搭載可能な設計に改訂された。そのデータは歴史的にはチベ級重巡洋艦、地球連邦軍のクラップ級巡洋艦などの設計思想の大元になったという。地球連邦軍の宇宙時代の戦術が伝授された扶桑軍はこの時点では文字通りに最高の戦術を駆使していたと言える。

 

――超甲巡のCIC――

 

「見事に当たったな」

 

「ええ。怪異相手では有効とは言えませんが、対人では有効打になりますな、ミサイルという奴は」

 

「ああ。次の目標を決め給え。」

 

「ハッ」

 

超甲巡はその存在意義からして、大いに疑問視されていたが、この時の戦闘でその隠されし有効性が明らかになったため、戦後の軍縮の際にも生き残る事になる。これは設計が戦艦準拠の構造であるため、単に『大きい巡洋艦』でしかないアラスカ級より遥かに用兵上の使い勝手が良かったからだ。(後期艦は当初から外観が完成時の大和型戦艦準拠であるため、改装で外観に変化が出た大和型戦艦より映画撮影の需要があったのも理由の一つ。とは言え、高雄型重巡洋艦以前の巡洋艦が根こそぎ旧式化したため、それはそれで連合艦隊は苦労したが)

 

「艦長、残るは戦艦だけです」

 

「我々の仕事はここまでだ。あとは戦艦に任せよう」

 

水雷戦隊は護衛艦を蹴散らすと、戦艦に後を任せて離脱する。お互いの戦艦の性能が他の艦艇を寄せ付けないほどに高性能化したためでもある。文字通りに戦艦同士の激戦が未来の技術を使うことで再来した(近代戦艦という意味ではM動乱以来。ウィッチ世界ではナポレオン三世時代以来である)のである。

 

 

 

 

――その戦いの様子が気になりつつも、エースと別れたドリームは黒江の様子を見に、トレーニングルームに行ったのだが――

 

「ふ、ふぇ!?こ、これって確か……第二部で修行に使われた柱じゃん!?」

 

「本物図鑑で出した。綾香さんが修行中だよ」

 

「あ、本当だ」

 

のび太がほんもの図鑑でトレーニングルームに置いた『地獄昇柱』。黒江は律儀にその修行を行っていた。黒江は『天才』と言われているが、実際は相応に努力して技能を習得しているわけだ。既に不死身の肉体を得ていながらも、それに慢心せずに常に新しい何かを求める姿勢はGウィッチの範とされている。

 

「いずれは君もやることになるかもよ。プリキュアやZEROの力も万能ではないからね」

 

「うーん」

 

苦笑いのドリームだが、ダイ・アナザー・デイでの敗北は相当に屈辱だった上、後でブルームに謝る羽目になったので、新フォームに慢心しないためにも、波紋の修行自体はする事を示唆する。

 

「先輩が終わったらね。なんか、はなちゃんと揉めそうだけどね」

 

「その子も分かってくれるさ。優しさよりも烈しさが必要な時があるものだからね」

 

「優しさよりも烈しさ……か」

 

――つぼみやはなは本来なら戦闘向きの気質ではない。つぼみはまだ割り切れていたが、はなはそうではない。ソードをロッドに変えるほどに優しすぎるが故に、のぞみの記憶する『前世』ではプリキュアの世代間抗争を招いた。その抗争がどうなったのかは不明だが、少なくとも、のぞみが壮年期あたりまで戦い続けたことから、その後で何らかの悪影響があったのは容易に想像がつくが、のび太たちはそれを追求する気はない。のぞみと同じ世界線からの転生である愛乃めぐみの願いでもあるからだ。のぞみは教師生活のやり直しを願う一方で前世で壮年期まで戦い続けたために染み付いた『戦士としての生き方』は変えられないことも自覚しているなど、転生後は天真爛漫と評されたという現役時代と比較して遥かに複雑な人間性を持つ。また、自身とはなの対立が世代間抗争を招いたことへの反省から、ZEROとの融合での『和解』を考えた事を明かしている。また、前世ではその身に降り掛かった不幸の連続で次第に周囲への『優しさ』を失った事も示唆しているなど、英霊になれるほどの偉業を若い頃に成し遂げた一方で後半生は薄幸だった事が良くも悪くも彼女を変えた事がわかる――

 

「君は前世を引きずってるね」

 

「なんでそれを」

 

「なんとなく、ね。転生した人たちは多かれ少なかれ、前世の悔恨を引きずるんだ。だけど、それは乗り越えるべきものでもある。今生きてる『生』でね」

 

「分かってるよ、分かってるんだ。だけど……」

 

「今の君は一人じゃないさ。だから、前を向くんだ。君を見てると、昔の僕を見てるようでね」

 

仕事は優秀だが、普段の生活は現役時代より多少はマシ程度で、ドジっぷりが残るのぞみは結婚後は『義父』にあたるのび太からすれば、『少年期の自分を見ているようだ』ということで気にかけられており、のぞみ自身も自身がプリキュアになる以前はのび太によく似た人生を送っていた(ただし、元々の素質はあるので、私立には入学できた)ので似た者同士と言える。

 

「うん……。思い出した。あたしも前世でのび太くんの事を漫画として見てた。だから、他人には思えなかった。部活は何やっても駄目で、すぐに追い出されて…。だから、戦うことで皆が認めてくれるようになったのは嬉しかった。だけど、現役を引退してだいぶ経ってからは歯車が……」

 

「狂い出したんだね?」

 

のぞみの前世での人生の歯車が狂い出したのはいつ頃なのか?また、彼女自身の抱えていた闇が彼女自身の運命を暗転させ、前世での長子の反逆に繋がり、自分の意思を継いだ次子とが敵味方に分かれて殺し合うという『親』としては望まぬ結末になってしまった事が悔恨になった事を語る。黒江の修行を確認するつもりが、のび太相手の身の上話にズレてしまったキュアドリーム。そんな彼女を尻目に、黒江は波紋の修行を真面目にしており、のび太が『ほんもの図鑑』で出してくれた『地獄昇柱』を波紋を使いつつも登り始めている。

 

「やれやれ、のび太の『人たらし』がまた始まったな…。おっと、俺はこの柱を登った上で波紋を極めなきゃ……な」

 

漫画である程度の予備知識がある黒江だが、それでも自分で練る波紋で登るのは中々の大仕事。覚えたてだが、波紋を練り、指先からの一点集中の波紋を使い、少しづつ登り始めるのだった。

 

 

 

 

――黒江はこうした、飽くなき挑戦精神を持つが、そのウィッチの枠に囚われない挑戦精神は周囲から却って疎んじられるのがウィッチ界隈だ。(枠内なら認められるという欺瞞も存在した)若かりし頃(10代)は『ガキがいらない知恵を』、20代以降は『年寄りの冷水』扱いで。ミーナが見せしめ的に処分されようとしたのは、黒江のウィッチの枠に囚われないチャレンジ精神を見習うように取り計らうどころか、逆に『自分が数年かけて作った空気を乱されてはたまらない』という幼稚な理由で疎んじたからで、それが黒江たちの過去の栄光への無知からの『誤解』である事は坂本のルートで理解した上層部だが、誰かが司令部内の不満を代弁しなければならぬのが組織の辛いところで、パットンは図らずしも、その悪者の役目を担ったと言える――

 

 

 

 

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