――1949年の時点では連合艦隊でまともに動ける艦隊は第二艦隊と第三艦隊(空母機動部隊)のみであった。駆逐艦などのの世代交代が始まっているが、いきなり戦後型駆逐艦へ乗せるわけにもいかないため、教育が必要であるからである。戦艦は優先的に世代交代されたが、空母の世代交代が遅れたため、その他艦艇の世代交代が相対的に遅れる悪循環になっていた。これはウィッチ世界では重装甲艦艇ほど生き残れるという実情によるものだ。また、上層部に受けが良かったISもその有用性は評価されたものの、機体がサイズを個人専用に調整する機能はともかくも、自己進化する特性が怪異を連想させたか、ウィッチに忌避されてしまい、既に使用実績のある64F以外の部隊からは納入をキャンセルされてしまった。それまでは軽んじていた第二世代理論にウィッチ閥が傾倒しだした理由はそこにある――
――第二世代理論は本来、吾郎技師いわく『第三世代とのストップギャップのための理論であり、所詮は過渡期の理論でしかない』とのことだが、第三世代に必要な技術の成熟に数十年はかかるため、数十年は主力であり続ける。手っ取り早いと思われたISの普及が失敗したための代替策であった。第三世代理論はSPTやナイトメアフレームの稼働データを基礎にして構築されていくが、IS式のパワードスーツ状に変革していくには、1945年から数十年もの月日を必要としたため、第一世代理論の延長線上にあるという意味での最終進化である第二世代理論はしばしの間、ストライカーユニットの設計理論の主流となる。ただし、実際にはISからのフィードバックが含まれている。それを知っているのは吾郎技師とその妻の芳佳だけだ。そんなストライカーユニット開発に一定の方向性が示された頃、黒江は波紋の修行をしていた――
「のぞみの奴、のび太相手に身の上話か。ま、あいつはあいつで不幸な過去生だったからな」
黒江は予備知識がある状態で柱登りにチャレンジしていたが、ジョセフ・ジョースターとシーザー・ツェペリが三日ほどかかったものなので、彼女に彼らクラスの才覚があろうと、波紋の呼吸を行いつつ登るという方法なので、そう簡単ではない。
「……本当に波紋の呼吸の修行始めたんだ」
「あ、サンシャイン。きたんだ」
「ガイアにいるえりかとゆりさんに連絡取れたから、報告に来たんだけど、本当に波紋の修行してるんだ」
キュアサンシャイン/明堂院いつき(素体はステラ・ルーシェだが、人格は明堂院いつきである)がキュアドリームに報告しにきた。変身後の姿で仕事をしている。階級は中尉だ。
「そうなんだ。先輩、物好きなんだよ」
「いや、真面目に尊敬するよ。強さカンストしたような状態でまだ鍛えてるんだから。前世で空手道場継ごうと思ってたからさ、私」
キュアサンシャインは実兄が病気がちな体質だったので、実家の空手道場を継ぐつもりであった。ボーイッシュな服装と振る舞いであった理由でもある。兄の病気が寛解してからはやめたが、その名残りは残った。転生後においての口調はその中間くらいで、素体のステラ・ルーシェが幼い精神年齢であった都合も含まれていた。
「正式に軍に入るまではどこで暮らしてたの?」
「記憶が覚醒してからは、シンからの仕送りでアパート暮らしをしてたよ。お互いに平行世界から来たから、どう接していいかわからなかったし、気まずいからね」
「それで、のび太君とこに?」
「はーちゃんと会ったのがきっかけだね。それで誘われて、みらいと一緒にガンダムのテストしてたわけ。みらいがストライクルージュだったのはツッコミ多かったよ」
「みらいちゃん、なんか…ロボアニメオタクになってるんだけど」
「僕が置いてたコレクションの多くはロボアニメだったからね。暇つぶしに見てたら…」
「……あれ?ストライクルージュって事は肩のエンブレムは変えた?」
「その暇が無くてね。テストが決まったのは急だったし、PS装甲にエンブレム貼るのって手間かかってるし、一時的だってんでそのまま」
ストライクルージュは元はカガリ・ユラ・アスハの搭乗を前提にした機体だったが、地球連邦軍製の機体はオーブからの返却後は送られる宛も見つかるか微妙だったので、しばらくの間は朝日奈みらいの『体』として使われた。その際に使われたストライカーパックはオオトリとエールストライカーであり、みらいが動かしている都合上、その装備で箒にまたがるシュールな姿も見せている。いつきがガイアをテストしたのもその時期であり、その姿で二人は学園都市製パワードスーツを使ったゴロツキの起こした騒動を鎮圧したこともある。
「なるほど。で、その姿でウチの親父たちに挨拶を?」
「慌てたよ。はーちゃんに手製のおにぎり届けに来たとか、あなたのお母様達が来た時…。しょうがないから、この姿で応対したよ」
テストを終えた後は待機命令が出ていた都合、みらいはキュアミラクルの姿を、いつきはキュアサンシャインの姿を維持する必要があったので、のび太の両親を応対した時が一番冷や汗をかいたという。とは言え、ノビスケの小学校に迎えに行く時は生徒たちに人気(2020年時点では、二人の現役時代からは最低でも五年は経過していたが)であり、悪い気はしなかった)であったが、若い教諭から黄色い悲鳴が飛んだのは言うまでもない。(特にミラクルは古き良き魔女っ子の系譜も間接的に継いだプリキュアだったので、壮年以上の教諭にも受けが良かった)
「みらいは比較的に元の原型から変化してないけど、あたしは色的に誤解されたことがね…」
「もしかして、うちのおふくろかい?」
「うん。カレー好きなのはうららだっつーの!嫌いじゃないけど…」
黄色=カレーのイメージはプリキュアにも当てはめられて見られているのか、玉子からカレーを差し入れされた時が一番堪えたらしい。これはスーパー戦隊の初代たる秘密戦隊ゴレンジャーの時代に根付いたイメージだが、当のスーパー戦隊でもカレー好きのイエローは数人しかいない。プリキュアで明確にカレー好きなのはプリキュア5のキュアレモネード/春日野うららのみ。いつきは『嫌いではないが、好き好んで食べるほどのこだわりはない』。むしろ空手家の前世だったので、カツ丼が好きなのだ。
「私は空手家だったから…」
「なるほど。ジャイアン系だね。おふくろに注意しとくよ。おふくろは玉夫おじさんの影響強いからなぁ。おじさん、子供の頃に秘密戦隊ゴレンジャーとか見てた世代だし」
片岡玉夫。のび太の母方の叔父で、玉子の歳の離れた弟である。2020年では既婚者で、自動車会社のディーラーになっていた。のび太が11歳当時にサラリーマンから転職したばかりだったが、この当時には店長にまで出世している。なお、のび太は滅多に会っていないが、片岡家を継いだ玉子の長兄(のび太の叔父)もおり、こちらは引退後は隠居生活だという。
「そう言えば、ピーチ。バルイーグルさんの紹介でファイブレッドさんと会えたみたいだよ」
「よかったじゃん!ピーチ、子供の頃からファイブマンに憧れてたっていうし」
「天に登る心地だったって」
キュアサンシャインの口から、キュアピーチが地球戦隊ファイブマンのファイブレッドに会えた事が語られる。地球戦隊ファイブマンは全員が小学校の教諭であるためか、ダイ・アナザー・デイの召集を断ったものの、キュアピーチが自分たちに憧れている事をビックワンから聞き、彼女と会ったらしい。バルイーグルがその仲介をしたという。キュアピーチとキュアピースには『子供の頃に憧れたヒーローがいて、長じた後に自分がヒロインになった』という共通点があるため、意外に仲がよく、キュアピースがカチューシャに転生した後は同じく、ノンナに転生したキュアコスモが色々と手引をしている。
「そういえば、聞いたかい?」
「うん。キュアグレースのことだね。ドリーム、貴方は会った記憶はあるんでしょ」
「ほんの一、二回だけね。あの子の代になると、あたしらの世代は殆どお呼びかかんなくなったから」
キュアグレースの属するヒーリングっどの時代になると、プリキュアオールスターズも自然消滅に近い形になっていたため、ドリームも数回しか会った記憶がない。
「キュアエールとは抗争した記憶があるんだけど、その後のグレースとはねぇ…。殆ど記憶がないんだ」
「咲さんが憤慨してるようなもの?」
「咲さん達はある意味、第1世代で一番ぱっとしないからねぇ」
咲は仕事の上ではのぞみの仕事の多くを引き継いだが、自衛官になぎさのコンパチと言われた時には大いに憤慨している。これはのぞみに比して客演の機会が少なかったためだ。
「デフォで空飛べるんだけどねぇ、あの二人」
「ぼくもあの時期はちょうど受験で見てないからなぁ。それを言ったら、あの子に泣かれてさ…」
咲はのび太のファンだったので、そののび太の大学受験が自分たちの現役時代と重なり、リアルタイムでは視聴できていない事にショックを受けている。とは言え、体育会系であるので、来訪後はガイちゃんの誘いでジャイアンズの草試合にプリキュアの姿で参戦したりと意外に満喫している。
「咲さんらしいなぁ」
「あ、でも、この前の休暇でジャイアンズの草試合にブライトの姿で参加してたよ」
「咲さん、ソフトボール部主将だよ?それで?なにそれー!?」
日向咲は現役時代は弱小だった母校のソフトボール部の主将になり、リーグ戦を勝ち抜いている豪腕投手としての顔を持つ。それをプリキュアの姿で野球させたら…。ドリームはあらぬ想像をしてしまうが。
「大丈夫、かなり手加減したって」
と、のび太はいう。とは言え、小学生に打てるような球は投げなかったと咲本人は言っており、小学生に打たれちゃ、夕凪中学校ソフトボール部主将の沽券に関わるとの事。
「咲さん、ソフトボール部を優勝させた経験持ちだからね。加減はかなり苦労したみたい」
「そりゃそ~だよ!」
「言うならば、今のリトルリーグのチームがV9時代のジャイ○ンツと試合するようなものだしね、実力差」
咲はスポーツ経験があるため、運動神経は歴代でも上位である。キュアブライトに覚醒した後にすぐに空中戦のコツを掴むなど、素の運動神経では歴代屈指を誇り、空中戦センスは501統合戦闘航空団出身者からも一目置かれている。その割に、初代(なぎさ)とプリキュア5(のぞみ)に挟まれた立場な故か、メディア露出も少なく、単独客演もいまだかつてないという不遇ぶりも有名である。後輩たちにこうして話の種にされているのがその証だ。
「そういえば、その咲ちゃんは?」
「今の時間だったら……会議中だね」
「咲さんと舞さんが今は実質的に仕切ってるからね。今日はグレースと手合わせしてみるらしいけど」
「あの子も覚醒間もないから、戸惑ってるようだよ?なにせ、シンフォギアよりプリキュアの力が優先される形で変身しちゃったから」
立花響はキュアグレース/花寺のどかとしての自分を思い出しつつあるが、シンフォギア装者であることと両立したいという本音もあり、心中は複雑であった。とはいえ、プリキュアとしての自分も否定できないのも事実。『ヒーリングステッキ』無しで戦えるようになったのは、彼女の強い想いがプリキュアの能力を変質させたためではないか?と推測されている。(本来、ヒーリングっどプリキュアの初期メンバーにはヒーリングステッキが必須アイテムのはずである)とはいえ、元々、風鳴弦十郎の下で術を高レベルで身につけた彼女がプリキュアに覚醒した以上はかなりのパワーファイターであるのは間違いない。
「あの子、かなりのパワーファイターだけど、咲さん、大丈夫かなぁ。パワータイプじゃないし」
「咲さんは『二代目』よ?ぽっと出の若い子に負けるほど耄碌はしてないわ」
キュアサンシャインは断言する。ちょっと表現がズレているのはお愛嬌だ。とはいえ、咲はのぞみよりも一年は長くプリキュアをしている古参である。経験と実績はなぎさに次ぐし、テクニック面ではなぎさより上ではないか?と評する者もいる。(なぎさは喧嘩殺法であり、後輩たちに比べると戦法は洗練されていないが、パワーでは最強を誇っていた)先輩と後輩に挟まれつつも『単体のヒロインとして見ると、攻防速の三拍子揃った万能タイプであろう』とバダンにも分析されているなど、彼女らを調べた敵勢力や彼女らと近い世代の後輩たちはその力を高く評価している。自身が空手家だった経歴持ちのキュアサンシャインをして、そう言わしめるほどの信頼。苦楽を共にした世代の先輩後輩ならばの絆をのび太に感じさせた。
――プリキュア達が変身姿のままで仕事をしている事にシンフォギア装者達も触発させたが、シンフォギア装者達は調と切歌以外は所属世界の法規に縛られている事もあり、難しい注文だった。そこへ響がプリキュアに覚醒したという知らせが舞い込んだので、響は次元震で現れた平行世界の自分と出くわすのを考慮し、キュアグレースの姿を当面は維持する事になってしまった――
「うぅ。まさか別のあたしと出くわして戦闘になるのを避けるためだって言っても、この姿で当面は過ごせかぁ」
「大変だな……」
同情する風鳴翼。
「綾香さんやのび太さんの言うように、別々の世界の自分同士で戦い合っちゃう事も考えられるから、当分はプリキュアでいろって。う~…」
「仕方ないですよ。最悪の事態を避けるためですから。響さんはとある世界線では別々の自分同士で戦い合う事になりますし」
「調ちゃんもそれでギア姿なの?」
「ええ。魔法と使い分けていきますけど、向こうの私とはギアの形状に微妙に差異があるし、武器も違いますから。割に楽です」
調は仮に『D』と呼ぶべき同位体とはギア形状はほぼ同じだが、実際の戦闘スタイルは聖闘士になっている事も併せ、かなり正統派のスタイルである。更に黒江から引き継いだ各種戦闘術のおかげで、単独では戦力と見なされないのが普通になっている彼女という存在の中では異彩を放っている。体質の変化などの要因でギア装着の時間制限もないため、ギア装着姿でいるほうが当たり前になってもいる。それでいて魔導師としての力も持つので、戦闘力はDとは比較にならないほど高い。武器も鋸とヨーヨーは選択肢の一つでしかなく、主に剣を用いる。また、仮面ライダーのようにマフラーをしている事も合わせ、見分けは簡単だ。
「ギアの装着に制限が無くなってる事は必ず言われますよ。LINKERは所詮は薬品。体に耐性がつけば、効果は薄れる。私は人を超えることでその枷を超えたけど、イレギュラーですから」
「切歌ちゃんがそれで?」
「ええ。それが戦力的に劣る私達に示された最良の道ですから」
聖闘士になる事でしか、『主人公補正』が強い響と並びだつ手段はなかったと切歌が言うように、セットで扱われる事に嫌気が差した二人は『聖闘士になる』ことでそれまでの自分を超えたのである。響は自覚していなかったが、自分が強運の持ち主であったことで家庭が崩壊したため、それを疎んじたことすらあるので、自分にプリキュアの素質があった事の判明は『遅すぎた』とさえ思っている。もっと早くに分かれば、天羽奏やキャロル・マールス・ディーンハイムを助けられたかもしれないのに……と考えていたからだが、花寺のどかとしての記憶を否定できないのも事実だ。そこも彼女がキュアグレースとしての能力に複雑である理由だ。
「今日は咲さんと手合わせですよ?」
「あの子のこと知ってるの?」
「ええ。のぞみさんの一期先輩の古参です」
「私も師匠(風鳴弦十郎)に鍛えられてきたんだよ?」
「聞きましたよ?綾香さんには手も足も出なかったって」
「あれは反則だよぉ」
「私もできるんで、似たことになりますよ」
「嘘ぉ……」
落ち込むキュアグレース(立花響)。シンフォギア世界では、聖闘士相手には風鳴弦十郎でも無い限りは手も足も出ない。彼がシンフォギア世界最高の人間である事は揺るがない。黒江の滞在中に、黒江とまともに拳を交えられたのは彼のみだ。
「でも、まさか……自分があの子達の後輩だったなんて思ってもみなかったよ。それも一番下っ端……」
「仕方ないですよ。私達も本当は2040年代に生きてるのが当たり前。2010年代にいるほうが異端なんです。それに、あなたは令和時代のプリキュアなんですから、平成中期からいるプリキュアの中じゃ下っ端なのは当たり前でしょう?」
「なんか、体育会系風だなぁ…」
「世の中、なんだかんだで縦社会ですからね。」
調は軍隊生活でそういう縦社会の空気に慣れたらしい。響は帰宅部(シンフォギア装者である都合もある)なので、日本のヒーロー(ヒロイン)社会の縦社会(緩さは別として)ぶりに触れ、ため息だ。
「その姿と能力に慣れるしかないですよ。それに、あなたの強い思いで元からの変質が起こってるようですしね」
「了子さんがそんな事言ってたっけ…」
「彼女はもう、『櫻井了子』じゃないですよ?」
「うん。だけど、私にとっては、ね。ちゃんとした場じゃ弁えるよ」
響は櫻井了子/フィーネが本当の意味で転生を重ねて、プリキュアになっていた事は承知しているが、心情的には自分の知る名で呼びたい事を滲ませた。(A世界においては)自分が精神的に救えた唯一の人物であったからだろう。とは言え、公の場ではちゃんとTPOを弁えているともいう。(紅城トワ/モードレッド/ペリーヌ・クロステルマンには櫻井了子としての記憶はあるが、その自我意識はないため、本人からも窘められている)
「サンジェルマンさんの事は私の世界じゃ、直接会ったわけじゃないから……なんともいえない。だけど、了子さんは私が直接関わったから……」
「なるほど」
史実では光明結社にまつわる戦いが起きれば関わる事になったサンジェルマンたちだが、A世界では響達の預かり知らぬところで、天秤座の童虎がまとめて『廬山百龍覇』で倒してしまったため、直接の面識はない。そのためか、彼女にまつわる記憶が宿った事には戸惑いがある様子を見せる。そこもA世界の複雑な事情であった。
――この日の方針会議は次元震の黒幕についてで、かつて、仮面ライダーBLACKに倒されたゴルゴム創世王が蘇り、シャドームーンを唆して起こしたとの推測が仮面ライダー一号/本郷猛から報告された。扶桑皇国では日本の要請で、戦争報道によるナショナリズムの高まりを抑え込む施策が取られている(過度のナショナリズムの高まりで『国民が戦争の退き際を認識できなくなる』のを異常に恐れたため)ため、扶桑皇国のヒーロー達の活動への表立っての援助は期待できない事が報告され、ナチス・ドイツ残党を戦後から追い続けているイスラエルやアメリカ合衆国、キングス・ユニオンなどの援助を活用するべきという事が決議された。咲と舞はのぞみに代わる形で、プリキュアの代表として参加している。引き継ぎが終わった1948年から会議に参加しており、この時点では名実共に、彼女達がプリキュアのリーダー格であった――
「ゴルゴム創世王がシャドームーンを使って、バダンと手を組み、次元世界にまたがる『大ショッカー』なるネットワークを構築し始めている。奴らの野望を打ち砕くため、キュアブラック達の捜索と並行して、大ショッカーの拠点を虱潰しにしていきたいと思う」
「異議なし」
本郷猛の提案が会議で全会一致で採択される。この時に初めて『大ショッカー』なる悪の組織の間でのネットワークが存在し、ライダーや戦隊ヒーローやメタルヒーローらに対抗せんとしている事が正式に伝えられる。次元震を引き起こしたのは、最強の昭和ライダーである仮面ライダーBLACKRXを倒すためであるとも推測される。RX打倒のためなら、次元世界全体を混乱に陥れるのも躊躇がないショッカー首領こと、ジュド。RXは彼をしてそうさせるほどの存在である。彼がアドルフ・ヒットラーを操り、ナチス・ドイツを成立させたのは周知の事実だが、ゴルゴム残党がなぜ復活したのか?創世王は蘇生したのか?多くの謎が残っている。バダンとゴルゴムは本来は相容れないはずの目的があったはずだし、創世王はBLACKに倒された時には昔年の肉体は失った状態であるはずだった。
「ゴルゴム創世王の過去の肉体はどういうものだったのでしょうか」
「わからんが、創世王は先代のシャドームーンであった説が濃厚だ。当代のシャドームーンを従えている事、光太郎が垣間見た全盛期の創世王の肉体がシャドームーンの進化体のような姿であったことからの推測だが…」
5万年ほど前のゴルゴムの世紀王の対決はその代のシャドームーンがブラックサンを倒し、創世王となったという仮説は真実も同然の扱いであった。創世王の本来の肉体が在りし日の姿は想像することしかできないが、BLACKとシャドームーンにとても似た姿であったとは推測されている。
「推測だが、世紀王は創世王の器となる肉体でしか無く、五万年ごとに体を乗り換えていたとすれば?」
「ありえますね。そういうのはありえます」
「創世王の力であれば、魂のみでも生きれるはずだ。体を造らせていたのはおそらく…」
本郷の推測は戦慄するほど不気味である。バダン大首領も自分の器足り得る肉体を造らせようとした過程の試作品がライダーマン以外の8人ライダーのボディであるように、バダンとゴルゴムは似たことをしてきたと言える。ゴルゴム創世王は表向きは代替わりしているとされるが、この仮説では『見せかけの代替わりで一人の創世王がずっと支配していた』ともとれる。
「アラストル体のリフレッシュが五万年ごとに必要で、その名目として世紀王というシステムを作った。だが、世紀王の肉体には創世王も知らぬ進化を起こせる余地がある。それが『RX化』だろう」
RXはゴルゴム創世王も予想外の進化であり、創世王に匹敵する奇跡を世紀王でありながら起こせるイレギュラー。クライシス帝国がとうとう打倒できなかったように。
「現状、昭和、平成、令和の三つの時代を通して、RXと能力で互角なのは数人のみ。平成では、おそらくは二人のみだろう」
本郷は令和をも含めた全ライダーでも最強というのに相応しいのはRXを含めても数人と断言した。それだけに大ショッカーの誕生はクライシス帝国がRXの活躍で倒れし後の時代における悪の組織の一つの形である。
「本当は君たちのような子供を俺たちの戦いには巻き込みたくはなかったが、君たちも宿命を背負わされているようだね?」
「あたしたちも同じです。貴方達には『あの時』に助けられた。あたしたちは貴方達みたいなすごくカッコいい理由で戦ってきたわけじゃないけど……皆があたしたちを求めるのなら、どんな奴とも戦います。それがのぞみちゃんのためでもあるし…」
キュアブルームは本郷にそう明言した。のぞみのためだと。のぞみが転生後に背負わされたモノを自分が受け継ぎ、先輩としての責務を果たしたいと。
「私達がこの世界に呼ばれた理由はわかりません。だけど、のぞみちゃんが世界に背負わされたモノを思えば、先輩の私達がそれを黙って見てるわけにはいかない。同じ時代に生きたプリキュアとして…」
キュアイーグレットも続く。彼女達は正真正銘の14歳だが、のぞみの先輩であるが故の責任感を口にする。
「俺たちの戦いに格好良い理由なんて無いよ、失ったものと得た物の埋め合わせと、自身が許せない敵が居たから闘い始めた、その後も求められているから戦っている、決して一人で、自分だけの決意で戦ってる訳じゃないんだ」
「そうだ。あまり気負うな。俺達も本郷と似たような理由で戦い続けているからな」
アカレンジャー/海城剛も頷く。彼らもプリキュアと似た理由で戦い続けているからだ。
「君たちだけではないと言うことさ。ここにいる皆、誰もが何かを背負っているんだ。君たちなりのものはこれから見つければいい。後輩のためだとかではなく、ね」
宇宙刑事ギャバン/一条寺烈も言う。彼は今や将来の銀河連邦警察高官候補で、ダイ・アナザー・デイ当時より多少加齢して30代前半ほどの外見になっている。帽子をかぶっているのはコム長官に仕事のミスを指摘され、丸坊主にされたからで、三大ヒーローのリーダーでは一番に世俗じみている。
「おい、ギャバン。気になってるんだが、その頭、どうした?」
「事務作業をミスったのをコム長官に怒られてね。反省しろと言われて…」
リーダーの中では一番にカタブツの海城もこれには吹き出す。ギャバンが見事にツルッパゲになっていたからだが、頭を丸めて反省させる文化がバード星にも存在する事は奇妙ながらも地球に近しい証でもある。同時にコム長官が中々に古風な考えの持ち主なのも判明した。ギャバンの父であったボイザーの関係で日本に滞在歴でもあるのだろう。
「子供たちの前だ。これくらいで勘弁してやろう」
とはいうものの、海城は笑い転げている。相当にギャバンのビジュアルが受けたのだろう。
「さて、敵の動向と平行世界の501についてだが…」
――取り直して会議は続く。会議では平行世界の501からの要請があった事、敵にF-11が現れたことが議題に上がった。平行世界の501のみならず、502を実戦に出していいのかなどの議論が真面目に話し合われた。この時に坂本Bから『宮藤に震電の使用を認めてくれ』との要請があった事も伝えられた。だが、震電はA世界では旧式化している上、部品の予備が501Bごと転移してきた基地にある備蓄分しかない。要請は却下するしかないが、その後継機種にあたる震電改であれば用意は可能であった。また、震電改は比較的にレシプロストライカーとの操作上の感覚の違いはあまりないため、多少の訓練で使えるようになるだろうという観測もある。また、カールスラント系にはF-86が回され、短い時間ながら、セラや智子、黒田による即席の訓練がB世界側のウィッチに課されていく。芳佳BはA世界の自身が産休に入ったことで『共に戦えない事』を残念がり、孝美Bはというと。
「先輩、妹を前線に出さないでください」
「前線に出るのはあの子の意思よ、孝美。どこの世界でもシスコンね」
「茶化さないでください!!」
「そうカッカしないの」
智子に迫ったが、うまくあしらわれる。孝美のシスコンぶりはA世界では周知の事実。B世界では孝美に自覚がないので、智子にあしらわれるのである。
「ちょうどいいわ。デスクワーク続きで肩がこってたから、あたしと一戦しましょう。あの子を指導しているのは、このあたしよ?」
「先輩があの子を!?」
「この世界では、ね」
と、二人は模擬戦に入る。孝美Bも手練であるため、智子の動きに追従してみせる。
「ふぅん。リバウにいただけあって、やるじゃない」
「リバウ航空隊をなめないでください!事変の後で最強と言われたのは私達です!」
「貴方にしては強気ね?」
孝美Bはリバウで戦ったことを誇りにしているようで、智子の全盛期が終わった時代では自分たちが最強を謳われたと口にする。
「なめられたものね、この白色電光戦闘穴拭も」
智子が自称したものの一つが『白色電光戦闘穴拭』。ダイ・アナザー・デイでは黒江と圭子の影に隠れてしまったが、相応に戦功を挙げており、64Fの幹部として相応の名声を保っている。本気を出した動きは史実通りの孝美程度の練度のウィッチでは捕捉すら困難であった。
「そんな、私が捉えられないなんて!?」
孝美は元々が狙撃型のウィッチであり、ドッグファイターの智子との相性は最悪であった。扶桑海軍系ウィッチの常で『格闘戦に一定の対応ができる』が、百戦錬磨の智子とブランクを挟んでいる孝美Bとでは差があったのだ。
「こう見えても、近接攻撃じゃ未だにトップなのよ?」
「……リバウ航空隊の誇りにかけても…!」
孝美Bはリバウ航空隊を見下したような口ぶりの智子にカチンときたらしく、絶対魔眼を使う。模擬戦では本来はご法度だが、自分の誇りが敗北を許さないのか、使用に踏みきった。そして、智子のストライカーに狙いをつけるが……。
「悪いわね。こっちにも奥の手はあるのよ」
智子は覚醒の固有魔法を久方ぶりに見せた。この時期の容姿は青髪と銀の瞳で、蒼い炎のオーラを纏っている。
「え……!?」
吸い込まれるかのように向かってきた弾丸を受け止めて、指で弾いた智子の変化は絶対魔眼を発動させている孝美Bを動揺させた。智子が持つはずのない固有魔法。それも若本と同系統の覚醒魔法。赤く発光する自分が鈍く見えるほどに鮮やかに蒼い炎を纏う智子。
「嘘……覚醒系の固有魔法は若本さんしか…!?」
「この世界じゃ、あの子の専売特許じゃないし、あたしのほうが高位のものを持っているわ」
銀の瞳と青髪になっているため、ミステリアスな印象になっている智子。一応、かなり力は加減している。練習用に格下げされたレシプロストライカーでは、機体の開発目的が局地戦闘脚であろうが、全力を出すと壊れるからだ。事変当時ではなおさらだったので、超レアケース。後に聖闘士となったのもあり、この魔法の使用機会は少ない。ストライカーを履いた状態では、ストライカーの強度限界一杯での機動を可能にするが、設計限度ギリギリで常にオーバーブーストで動かすに等しい行為なので、機体が使い物にならなくなる事が多発する。若本が長じた後に覚醒をあまり用いなくなった理由である。(ちなみに、若本について語る場合、その親友の坂本もセットで語る必要がある。坂本は日本での自分の同位体と思われる人物の評価が良くない事を気にしており、『機材を壊した事がない』事などは自分から自慢はしていない。『威張り散らす』事を避けた新人育成をしていたのもそのためで、若本が覚醒で機体を壊す事には文句は言っていない)
「さて…と」
「……!?」
智子は瞬間的に小宇宙を爆発させ、瞬間的に遷音速まで加速する。絶対魔眼発動中の孝美Bが感知不能なほどの加速であった。
「悪いわね、一本もらったわよ」
智子は孝美Bの機体についていた吹き流しをいつの間にか切断していた。絶対魔眼を発動していても感知すらできなかった事に孝美Bは驚愕する。
「そんな……感知もできないなんて!?」
「瞬間的に遷音速まで加速したのよ。機体に負担がかかるから、あまりやらないけど」
「遷音速……!?」
「固有魔法で多い超加速を超える『瞬間加速』ってところね。他の技能との組み合わせで編み出した技よ。とは言え、対人用の技だから、怪異には今の所はやる必要はないけど、いずれ必要になるわね」
怪異は史実では自己進化で超音速すら当たり前になり、従来型ストライカーユニットではエーリカすら単独では対抗できなくなるなど、強力化が顕著になる。それを知っている智子は『いずれ必要になる』と述べた。それはこの先の怪異の進化を知っているからだ。
「どういう事ですか?」
「怪異の進化が顕著になるからよ」
1946年を迎えると、基本世界では怪異の進化も顕著になり、従来型ストライカーユニットの限界が判明していく。B世界でもほぼ同様であると推測されているため、智子はそれを教えることで孝美Bの不満を解消させるのだった。
「次世代のジェットになると、エンジン出力で速度調整が難しいから技で速度調整しないとならないのよ。貴方の世界での普及は遅いと思うけれど、覚えておきなさい」
智子は律儀に忠告する。孝美Bはそれでジェットに興味を持ち始めるのだった。
――ネオ・ジオンの敗北と解体を経たデザリアム戦役後、一時はスペースノイドを席巻したジオニズムは遂に終焉を迎えつつあったが、一部の者達は尚も連邦への復讐を望み、ティターンズ残党やザンスカール残党と手を組む本末転倒ぶりであった。64Fはウィッチ世界に彼らが兵器と人員を送り込んでいる事を知っていたため、B世界の人員の参加を控えさせていたのだ。A世界で何故、ウィッチの権勢が衰退へ向かったのか?何故、ウィッチとして総合的に最高レベルの能力を持っている面々が魔力とは違う能力を求めていったのか?その答えを隊員に先だって提示されたB世界の統合戦闘航空団の幹部ウィッチ。ティターンズ残党の超人たちの強大な力。プリキュア達すら正攻法では歯が立たず、特訓をする必要があった事、バルクホルンの怪力すら超人達は素の身体スペックでねじ伏せ、バルクホルンは叩きのめされた事があると映像付きで説明される――
「この世界じゃな、並の異能なんて、すぐにねじ伏せられるってこった」
「馬鹿な、我々の力は砂上の楼閣だというのか、加東!?」
「いろんな要因があるが、既得権益を守ろうとして、あたしらのような『普通と違う力を持つ者』を疎んじて排除しようとしたしっぺ返しを食らったのさ。それも超科学力を持つ世界との接触っていう形でな」
『ウィッチに不可能はない』と公言し、ウィッチ信仰が強かった坂本Bは動揺を顕にする。地球連邦軍の超科学力がウィッチの寿命のコントロールすら可能にした事に反発したウィッチ達だが、次いで接触した21世紀世界の政治勢力によってコミュニティが『軍閥』と見做され、コミュニティを解体させられた挙句に軍、ひいては社会そのものから排除されそうになるといった悲惨な目にあったこと、変革を受け入れ、社会思想そのものが変わり始めた時代に適応した者たちが1946年以降に軍に残っているウィッチ達であることは衝撃だった。
「軍隊が社会的に優遇される時代は終わったからな。だから、普通ならありえない編成がされた。教導部隊は縮小、装備テスト部隊は反乱への加担を理由に解体されたから、その人員もウチが引き取った」
「何故だ。エースを一箇所に集め過ぎれば、戦線の平均練度が…」
「統合戦闘航空団だけで戦況が好転しているっていう平行世界の情報が伝わったから、それに準じる部隊を一つか二つ置いとけばいいと判断されたんだ。それに、軍に残れたウィッチは基本的に高齢層だったんでな」
軍部は平行世界の情報を得たことで『精鋭部隊を一つか二つ置いとけば、ウィッチ部隊は事足りる』と判断した。1948年以降は64Fの編成に手を入れる事はせず、参謀たちの行った策略を咎め、64Fの存在を事実上の聖域として扱った。これは21世紀世界のアニメという形で平行世界の様子を上層部が知ったからだ。それ以後は統合戦闘航空団の運営権を扶桑が得ていた事と併せ、64Fと一体の部隊として運用されている。
「この世界ではベルリン奪還より太平洋戦線が優先された。何故です!」
「いきり立つな、バルクホルン。扶桑にとっては死活問題なんだ。南洋に全ての鉱物資源のみならず、燃料を南洋に依存している以上、扶桑が太平洋戦線に全力を費やすのは当たり前だ」
「しかし!」
「扶桑が落ちれば、この世界は敵の思うがままだ。お前は扶桑に戦争に負けろというつもりか?」
「い、いえ……そ、そういうつもりでは…!」
バルクホルンBは圭子に気圧される。基本的に故郷の奪還に強い思いがあるバルクホルンだが、A世界の連合軍はその目的が失われ、空中分解寸前に陥ったのを扶桑の力で辛うじて体裁を繕っているにすぎない。それを提示しなければ、ますますヒートアップしてしまうので、圭子は扶桑の実情を示すことで沈黙させる。
「ベルリンは下手すれば、敵が落としてる可能性もある。奴らの超兵器なら、ベルリン程度は容易に制圧できるからな」
ティターンズ残党は前世がそうであったように、ガンダム・インレやTR-6などの最終兵器を秘匿している。それを使えば、ベルリンの制圧は容易い。ティターンズとの正面対決の危険があるベルリンより、緊急性の高い南洋島防衛のほうが急務と扶桑が判断したのも無理はない。
「見ろ。これがあたしらの今の主敵だ」
ティターンズの主要MSが映し出される。怪異を思わせる姿だが、動力パイプやインテークなどがあるので『兵器』であると言うことが分かる。戦争の序盤にアフリカ方面の連合軍がハイザックやマラサイなどに圧倒され、蹴散らされる場面、マルセイユが空戦で負けるシーン、無残に敗軍の将になるロンメルが映し出される。マルセイユが空戦で負けるというのは、元上官(信用していなかったが、素質は認めていた)のバルクホルンBも信じられないようだった。
「馬鹿な、あいつがいくらジェットとはいえ、あのような機体に負けるなど…!?」
F-104にあっけなく背後を取られ、片肺飛行に追い込まれ、敵と見なされないマルセイユ。みっともないほどに泣き喚くその姿はバルクホルンBを固ませた。マルセイユがその後、アフリカ戦線撤退までその敵を撃墜しようとするも、機材の性能差のみならず、マルセイユの固有魔法を技能でねじ伏せるほどに優れたパイロットにより、煮え湯を飲ませられたままだった事が映像付きで説明された。
「ハンナは当時、青二才だったからな。そいつにとうとう弄ばれたままだった。あたしはいなかった頃だが、あいつの性格が変わった理由の一つだ」
マルセイユはB世界では黒江の部下だということしか知らないB世界のバルクホルンだが、上官が違う以外は大差がないようだ。
「あなたがこの世界でのあいつの上官だと?」
「そうだ。つか、あたしが作ったようなものだったからな、部隊を」
アフリカ戦線でマルセイユが所属した部隊は圭子が基本的に作り上げるが、B世界では黒江が同様の役目を担っていたという。A世界では『ケイの留守を守れなかった』ショックがマルセイユの能力をニュータイプ能力にまで昇華させ、Gウィッチ化も起こし、1949年でもクスィーガンダムのパイロットである。
「ハンナだが、今はこんなものに乗っている」
映し出されるクスィーガンダムの姿。シルエットは21世紀世界でのアニメで強調された『異形』感があるデザインではなく、オーソドックスなガンダム顔を持つヒロイックなデザインラインである。これは連邦軍に正式に『RX-105』として採用され、納入された兼ね合いである。もし、納入先が連邦軍ではない場合は異形感のある『ヒーロー物にありがちな偽物メカ風』なデザインの機体を世に出すつもりであったとは、開発主任。デザインに違いはあれど、基本性能に差はないとのことで、『正規軍に採用される見込みが薄いプランだったから、細かいディテールなどに違いを出したんだが…』とのこと。
「30mはありそうではないか。そんな巨体で戦えるのか?」
「ところがどっこい、次の映像を見てみろ」
「なに?」
マルセイユが乗機にしたクスィーガンダムはνガンダムとZZガンダムの長所を併せ持つ空戦型ガンダムという位置づけで造られている。第四世代MSの発展である第五世代機というのがアナハイム・エレクトロニクスの言だが、未来世界では『小型機が現れた後にアナハイム・エレクトロニクスが既存技術の集大成と言わんばかりに逆の方向性で作り上げた空戦型MSの完成型』というのが実際の位置づけだ。小型MSが衰退し始めた時代に世に出たが、開発自体は小型MS全盛期の頃からされていた。ミノフスキーエンジンというミノフスキー・クラフト内蔵式核融合炉が積まれ、ファンネル・ミサイルが積まれた以外はオーソドックスなガンダムタイプの構成そのもの。とはいえ、ビームシールド全盛の時代には実体シールドの有効性が疑問視されていたのも事実。実機製造はメカトピア戦役後に『想定された戦場』であると判定されたウィッチ世界の存在の判明(実際は再発見)後になり、その間にアップデートされた技術で設計時より限界性能を引き上げる措置がなされ、先行するRX-104FFの成功後にそのアップデート機という形で実機が製造されたが、νガンダムの後継を意図した連邦軍の手で『Ξガンダム』と名付けられた。そのうちの一機がハンナ・ユスティーナ・マルセイユの手に渡ったわけだ。
――映像では、マルセイユが乗り込み、ティターンズが持つ旧式機や空戦型怪異相手に猛威を振るう様子が分かる。超音速で飛行し、好事的なウィッチが行うのみとされた接近戦を光の刃(ビーム・サーベル)で行い、怪異を外殻ごと一刀両断するなど、人型ならばの万能性と柔軟性を備えている事、ビーム兵器を普通に扱える技術を持った世界で造られている人型兵器の中でも高位にあたる機種かつ、『贅を尽くして製造されたワンオフモデルというロマンの塊のような機体』である故に頑強な装甲を備え、怪異を一撃で倒せる火力を持ち、空戦ウィッチのような機動力と陸戦ウィッチの柔軟性を備える事はグンドュラB、サーシャB、坂本B、ミーナB、竹井BなどのB世界側ウィッチを驚愕させた。
「馬鹿な、量産を考慮しないエースパイロット専用の超高級機だと?名は?」
「RX-105。ペットネームはクスィーガンダム。その世界でも高性能機の象徴とされる『ガンダム』というタイプの人型兵器の一体で、空戦を考慮して開発された最新鋭機だ。空を飛ばすために大きくなったらしいがな」
圭子の説明に一同は息を呑む。ここでA世界にもたらされし『ガンダム』の存在がB世界のウィッチに明らかとなった。そして、A世界に何がもたらされたのか。まだまだ説明は続く。