ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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百五十八話の続編です。


第百六十四話「Go!Now!5」

――のぞみの転職の失敗は文科省の一大不祥事と化した。扶桑天皇の裁可まで下っていた案件を自己判断で反故にし、扶桑皇室の顔に泥を塗ったからだ。(過去に一高が士官学校生の転入に独自判断で試験を課したが、これとは次元が違う)文科省はのぞみが『プリキュア5の中心戦士』であることを認識したのはのぞみのファンからの嵐のような抗議の電話でのことで、もはや手遅れだった。文科省は軍人の教職への転職には否定的(日本軍が消滅して間もない戦後の頃には例があったが)であったが、モロにその思考が裏目に出たのだ。担当者が『職業軍人風情が』とせせら笑ったことは痛恨のミスだと、後世の文科省関係者に嘆かれた。同情を買える言い訳の余地を完全に潰してしまったからである――

 

 

 

 

 

 

――2020年も年の瀬が迫り、疫病第三波の対応に追われていた新内閣は文科省が一大不祥事を起こしたことに頭を抱えた。文部科学相は扶桑との外交問題になりかねない不祥事を起こした官僚らに当たり散らしたが、もはや後の祭りであった。圭子はのぞみから情報が伝えられると、すぐにマスメディアにリーク。マスメディアはこれに喜々として食いつき、文科省のとんでもない不祥事として報道した。もちろん、文科省はマスメディアと世論から叩かれに叩かれる羽目となり、文科省の若手官僚たちは上の世代の無知が『冬の時代を招いた』と嘆くのである。それほどのインパクトがあったのである。軍部に高圧的に出た事も文科省の立場を悪化させた。日本の市民運動家などは軍人の教職への転職を禁止すべきとし、文科省を擁護したが、諸外国の軍隊では予備士官が平時に教職をしている事は当たり前である事などから問題視され、大量の予備士官の行き先を潰したことで雇用保険の支出がとんでもない金額になりかねなかった事から、財務省からも苦言を呈されるに至った。軍部は当然ながら猛抗議。日本政府は文科省に『責任を取る』ように通達した。外交問題にしたくないため、文科省を悪者に仕立て上げ、件の官僚に全ての責任を被せるのが最善だったからだ。その官僚は自己保身を図ったが、発言を圭子の薦めで録音していたのぞみの逆襲に遭い、『自己退職』する羽目になり、文部科学相も監督責任を強く問われ、文部科学省の幹部のクビがまとめて飛ぶという異例過ぎる事態に陥った。軍部も予備士官らに紹介した転職先への斡旋を潰された上、すぐに有事が勃発したために再招集をかける羽目になり、余計な手間がかかったため、人件費が嵩んでしまった。のぞみは予備士官に転向する前に、その話が立ち消えになったので正規軍人のままだったが、扶桑皇室の裁可までもらった話を日本の一省庁が自己都合で潰した事は歴史の汚点として記録された。こうして、のぞみは大尉になってから数年以内に少佐へ昇進。危険手当も倍増された(転職話が潰されたことへの慰謝料も兼ねている)。書類上は現役のままだが、こうした騒動に巻き込まれていたのである――

 

 

 

 

 

 

――この騒動の後、『予備士官』に魅力が無くなったと判断した現役将校達は副業の許可を願い出た。社会的に疎んじられ始め、騒動で転職そのものが難しくなったと判断したからである。日本側はこの提案の承認に難色を示していたが、のぞみの一件の責任を取るのも兼ねて、ひとまず承認した。1948年の事である。その資金確保のため、空母建造の承認が49年まで延ばされたのである。戦艦の世代交代が順調であったのに対する空母の世代交代の遅延は予てより問題視されていたが、日本側が『平時にも長く使える大きさ』を志向し、85000トンから100000トン級のスーパーキャリアの少数装備を考えていたのに対し、扶桑側は戦時の調達数を重視し、45000トン~50000トン級の中型空母(1940年代としては最大級だが)を量産することを考えていたからでもある。政治判断で前者のスーパーキャリア案が採用されたが、就役は早くても、1950年代半ばに差し掛かると見込まれた事が最大の難点だった。これを補うために空軍に下された密命が『宇宙艦隊を整備せよ』である。国産空母の殆どは他用途転用か退役。辛うじてジェット対応化に使える大きさを持つ在来艦は蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴、大鳳、天城、愛鷹。しかも、その内の天城は老朽化しているし、愛鷹は状態がひどすぎて使用に耐えられないと来ている。空軍が宇宙艦隊を64Fに揃えさせたのは、その辺りの政治的事情が絡んでいる。その編成が完全になった頃には、地球連邦軍の下手な衛星軌道艦隊が霞むほどの陣容になっていた――

 

 

 

 

 

――ザンスカール帝国残党との戦闘はビグ・ザム後継機のグラン・ザムの存在で混戦に陥りつつあった。B世界のウィッチ達は怪異ではない『超科学が生み出した兵器との戦闘の実状』を垣間見たわけだが、はっきりと『人と戦っている』事実を認識したことで怖さを感じる者も当然ながら続出する中、芳佳Bは芯の強いところを見せた。非公式の参陣である事は承知しており、想像よりも遥かに残酷な戦場の様子にも狼狽えなかった。彼女が元々、医師志望であった事、何かを守るためならば自己犠牲も厭わない点があったのも関係していた――

 

「怖くないんですか、宮藤さん」

 

「怖いです。だけど、誰かを守れる力を持ってるのに何もしないことが嫌なんです、下原さん。だから、揉めちゃったんです。あの人達は最初から諦めてた。魔力がないのなら、ないなりに、できることをすればいいのに……」

 

「あの人たちは私達が子供の頃に、今の私達の立場だった。それに全部のウィッチが貴方みたいに、力がなくなっても前向きに考えられるわけじゃないよ。あの人達はエースとして鳴らしてた分、喪失感もすごいんだよ。まだ飛べる分、尚更ね。だから、そんな物言いはやめて」

 

「あの人たちを悪く言うつもりはなかったんです。私はただ、お父さんとの約束を……」

 

芳佳Bは前年に一騒動を起こし、黒江Aに激しく叱責されている。芳佳Bは自分の言うことが相手をひどく傷つけていることを認識できていなかった。それが黒江Aに叱責された理由であった。芳佳Bは自分が生前の父親と約束したことを守っているだけなのに、それを見も知らぬ他人に咎められるのが納得できず、売り言葉に買い言葉になった。その事への後悔があるのか、目に涙を滲ませる。

 

「そうしたくてもできなくなるんだよ、宮藤さん。普通のウィッチは魔力が枯渇すれば、二度と復活しない。坂本さんが恐れているようにね。20歳を迎えようとすれば、遅かれ早かれ、誰もが坂本さんのようなことになる。この世界の先輩達や貴方は……特別なんだよ。神に愛されてるような…ね」

 

「……私は間違ってるの?下原さん。誰かを守りたいって思う事が!?お父さんが言ってくれた事を貫きたいだけなのに……」

 

下原Bに涙を見せる芳佳B。『エクスウィッチ』という『第一線で戦える力を無くしたかつてのウィッチ』という存在への無理解を咎められていた上、更に自分は『特別』なのだと改めて言われては立つ瀬がない。自分が信じていたものが音を立てて崩れていくような感覚なのだろう。

 

「お前の言うことはある意味じゃ、ただしーぜ、宮藤」

 

「あなたは…この世界のシャーロット大尉……!」

 

下原Bがそう言った相手はシャーリーA。キュアメロディに変身済みだが、下原Bは敢えてそういった。

 

「この世界の……シャーリーさん……?」

 

「この世界じゃプリキュアしてるから、こんなナリだけどな。あ、少佐になってるぜ、あたしは」

 

 

「す、すみません!」

 

謝る下原B。シャーリーA(キュアメロディ)は微笑いつつ、こう返す。

 

「メンコと階級章の星が増えただけだ。あまり気にすんな。……お前の言うことはある意味じゃ正しいけどよ、それは一面的なんだ」

 

「どういう事ですか、シャーリーさん」

 

 

「正しいが、それはお前にとって、だ。お前は並ではない魔力量や血筋で何時までも戦場を飛べるかもしれないが普通のウィッチにとって上がりは前線に出たら確実に死ぬ覚悟をする必要があるし、力尽き燃え尽きた存在なんだ。だからエクスウィッチは教壇に立ち後身の育成現場に立つか故郷に帰って次代を育てるかを選ぶ事になるんだ。現場で後身の指導してるだけでも大したものなんだぜ?」

 

「……」

 

「いいか、宮藤。黒江さんにも言われただろ?ウィッチってのは、普通は20になれば自然と終わる『10代の時だけの儚い奇跡』なんだ。お前の一族みたいな特異体質は極稀。あの人達はかつて、今の私達のような立場だった。それだけに一番つらいって事は分かってやれ。この世界のあの人たちのことは知らされたろ?何度も国難を救った大英雄、エースオブエース、英霊。そう言われている上に普通に現役張ってるんだ。しかも、未だに最強の一角であり続けている。そんなのとの落差を考えてみろ。辛くなるだけだ。辛うじて飛べる程度しか力は残っちゃいないのと、20後半になろうとも現役の国家英雄とじゃな」

 

「シャーリーさん。シャーリーさんはどうなんですか…?」

 

「気づいてると思う。普通に行けば、あたしも普通なら去年には引退してていい年齢だ。だけど、四年前にプリキュアになったことで体質が変わった。だからこそ、未だに現役でいられるのさ」

 

「あなたたちはウィッチなんですか、それとも別の……?」

 

「黒江さんも言ったろう?ウィッチを超えたウィッチだって。それと、あたしはプリキュアでもあるしな。子供達が望むかぎり、プリキュアは永遠不滅なんだ。望む、望まないにしろ、戦う宿命を背負ってる。誰かの笑顔を守る為に」

 

キュアメロディはシャーリーとして、芳佳Bに明言する。芳佳の想うことは間違ってはいないが、一面的すぎると注意する。ルッキーニBにはキレたために一時は避けられたが、本質は変わっていないことを悟り、ルッキーニが謝っている。芳佳Bはキュアメロディになっているシャーリーに衝動的に抱きつき、泣きじゃくる。

 

「お!?み、宮藤…?」

 

「シャーリーさん、私……私…」

 

「泣きたいんなら泣けばいいさ。この場にいる誰もお前を止めねーよ」

 

芳佳Bは何かが弾けたように、キュアメロディの胸の中で大声で泣く。芳佳Bを優しく抱きとめるキュアメロディ。キュアメロディは最近は紅月カレン的な激しい面が注目されがちだが、北条響としての大らかで優しいところもちゃんとある。シャーリーとして持つ母性もあり、母親的な優しさを見せたわけだ。それを遠目から目の当たりにしたルッキーニBは衝撃を受けるが、芳佳が泣きじゃくるというレアな場面を目の当たりにしたのと、キュアミューズの制止もあり、邪魔を入れなかった。

 

「あ~~~~~!シャーリーの胸はあたしの~!」

 

「あのねぇ。場面的に野暮だと思わない?」

 

「それはそーだけどー!」

 

「宮藤さんが泣くなんて…」

 

「ま、去年の事とかで溜まってたんだろうね。ああいうのは気が済むまで泣かせて、文字通りにスッキリさせるに限るよ、ペリーヌ」

 

「あなた、シャーリーさんと同じチームにいらっしゃるのでしょう?ミューズというのは…」

 

「御名答♪。ボクとシャーリーは音楽を司るプリキュアチームにいるのさ。スイートプリキュアっていう、ね。のぞみは別のチームのリーダー格だよ。本人は嫌ってるけどね、そういう役目」

 

「別のチーム?」

 

「そう。夢と希望を司るチーム『プリキュア5』。のぞみ……キュアドリームはそのリーダー格の戦士。僕たちの先輩格さ。僕らは六代目、のぞみ達は三代目にあたるからね。ちなみに、あの子のフルネームは夢原のぞみさ」

 

「中島中尉……この世界では少佐でしたわね……はそう名乗っているのですか?」

 

「扶桑の名家の出身だから、何かと元の姿じゃ面が割れてるんだよね、あの子。だから、あの姿なんだ。姿も、声もまるで別人みたいでしょう?」

 

「言えてますわね…」

 

B世界の者向けの出自の説明をしつつ、キュアドリームのことを説明するミューズ。B世界では錦とペリーヌは元々、面識があったからだ。のぞみ(ドリーム)は全体のリーダー役は降りたが、戦闘の主軸である事は依然として変わりないため、今回は何かと話し合う機会も多いミューズ。錦はボーイッシュな声色なので、のぞみとしてのトーンの高めな声(それでも、女性としてはかなり低めだが)は驚いているペリーヌB。そして、のぞみは戦間期に教諭への転職を目指していたが、彼女ではどうすることもできない政治的なところで理不尽に潰され、『話をなかったことにする』代わりに早期に佐官にし、危険手当を以後は普通のパイロットの更に倍額(プリキュア5のリーダー格であるので、財務省の試算では『三倍』とも)で換算されるという妥協的な顛末を辿ったことが明確にB世界のペリーヌにも明かされる。

 

 

「政治的ですわね」

 

「向こうの当局の無知が招いたことさ。予備士官っていう役職の魅力を根本的に削いじゃったから、軍の人件費が嵩むって奴。向こうは教諭への転職を規制したかったんだろうけど、予備士官って奴に根本的に無理解でね。結果、あの子を含めた大勢が迷惑を被ったから、雇用保険やらで人件費が嵩んでね。哀れ、空母の新造が何年も先延ばしになるくらいの被害」

 

「私はそういう政争を嫌って予備役になったのですけど、あの方はモロですわね」

 

「のぞみは予備役になろうとしてこれだよ?で、話をなかったことにする代わりに危険手当と年金を倍額にするからって言われたんだよ?そりゃ怒るって。君なんか、良かったほーだよ。結局、この戦争が始まったからね」

 

「この世界の506も?」

 

「うん。結成前になかったことになった。リベリオンの分裂で運営費が捻出できなくなったからね」

 

「私はどうなったのです?」

 

「ロマーニャ解放後は予備役になって、ガリア議会の議員さ。家の当主も継いだ。その関係で501から抜けた。ボクの後輩のトワはその後任さ」

 

と、口から出任せに近いが、だいたい合っていることを説明するミューズ。

 

「ロザリー少佐にはご苦労をかけましたわ…。しかし、貴方、どうして十二騎士としての姿を取らないのです?」

 

「君も知ってんっしょ?理性がぶっ飛んでるってこと」

 

ミューズは元のアストルフォの姿に戻れない理由がある。それは理性が吹き飛ぶからである。そこはキュアミューズの姿では気にしているらしい。ペリーヌより背が高いが、あざとい格好を通しているのも気になるようだ。

 

「その格好はなんなのです?もうちょっと戦士として…」

 

「変身解くと、見た目小学生になるから余計にプリキュアの姿を取らないと色々マズイしね。それに一応、一国の王女だった経験もあるんだよ?それに、ボクは元からイングランド王の子でもあるから、ハーフだよ」

 

「そ、そうでしたわね…」

 

「君が擬せられたジャンヌ・ダルクなんて、元は文字も読めない無学の田舎娘だよ?それが死んでから聖人ときてる。本人も呆れてるよん」

 

ジャンヌとはある世界線での縁で交友があるらしく、ジャンヌ本人は『聖人なんて柄ではない』と謙遜している。(戦友のジルドレが自身の死後に狂った事は嘆いているが…)

 

「丁度、満月だし、理性一番飛んでるけど、それでいいならアストルフォの姿になっても良いけど?ただし、今の肉体の関係で女の肉体だけどさ」

 

「そ、それじゃ………」

 

「あらよっと☆」

 

プリキュアの変身を解いて、アストルフォ本来の容姿に戻る。しかし、それでも可愛い顔立ちなのは変化がなく、ピンクの髪という特徴もあり、却ってあざとい。

 

「どう~☆?」

 

騎士としての服装だが、それが却って可愛さを演出している。ルッキーニBはさっそく胸を触る。

 

「うーむ……ちっさいなぁ~」

 

「元はボク、男だしね。ついてもそんなもんだよ。君はどこでもそれするのかい?」

 

「だって、胸を触るのがあたしのコミュニケーションだもん~!」

 

ルッキーニは次元世界に数人いるおっぱい星人の一人であるため、相手が英霊であろうとも胸を触る。これはA世界のルッキーニが転じたクロも変わりない。

 

「る、ルッキーニさん!貴方…!」

 

ペリーヌBは大慌てだが、ルッキーニはどこ吹く風である。ただし、その気質でえらい目にあったのも事実だ。

 

「ま、君のことだから、やるって思ってたよ」

 

「迎えに来たわよ、アストルフォ」

 

「やぁ、クロ」

 

「あ、アンタはあの時の黒いの!」

 

「相変わらず元気ねぇ、フランチェスカ??」

 

「だーかーら、どうして、あたしのフルネーム知ってんのー!?」

 

クロは自分自身の転じた姿と知れば、腰を抜かすだろうと微笑むアストルフォ。ルッキーニのいたずらっ子な性質はクロになっても持っている。

 

「ひ・み・つよ」

 

「むー!また言ったー!」

 

クロは見かけによらず、精神年齢は意外に高い。声色はルッキーニの時とほぼ変わらないが、物言いが大人びている事もあり、異なった印象を与える。なのは曰く『スバルとルッキーニちゃんを足して割ったような感じの声』とのこと。

 

「世の中、似た雰囲気の声の人間はいるんですのね……」

 

「君にもいるから、人のことは言えないよ~?」

 

もっともなアストルフォのツッコミであった。

 

 

 

 

 

 

――ミューズ(アストルフォ)も呆れるように、のぞみの一件以降、予備士官を含めた予備役の『転職』に規制がかかったことで現役期間の延長を願い出る兵が陸海空で続出したことで人件費が嵩んでしまった。軍部は問題の発端になった文科省へ普段は険悪な財務省とタッグを組んで責め立てた。予備役制度にイメージ的な大打撃を受けてしまった軍部としては切実な問題だからだ。扶桑もけして1945年以来の問題と無縁ではないのだ。直接の打撃はカールスラントのほうが計り知れない。エディタ・ノイマン大佐が降格と左遷で鬱病を患った挙句の果てに退役。この頃には機械産業会社を興し、企業家へ転じているなど、理不尽に有能な人材を奪われる事態に陥っている。エーリカ・ハルトマンやハンナ・ユスティーナ・マルセイユに至っては扶桑の永住権を得ているなど、カールスラント軍を支えてきた人材の多くが扶桑に脱出している。噂で流れた大規模リストラが恐れられたのである。カールスラント空軍は軍縮と人材の喪失で大きく弱体化。1949年度に在籍している者の中で以前にエース・パイロットとして鳴らした者はごく少数。ベルリン奪還作戦が棚上げされた精神的ショックが大きかったのだ。ドイツのリストラが過激すぎたためもあり、陸軍も兵器稼働率は20%を割る、海軍は訓練航海すらままならないなど、まさにズタボロになった。扶桑はそのうちの陸空軍の有能な人材を義勇兵として多く受け入れ、近代化を促進させる起爆剤とした。海軍を誇る扶桑の弱点を補完するにはうってつけだったからだ。本国で冷遇されたカールスラント軍の将校たちは扶桑で厚遇され、それに見合う功績を残していく。カールスラントが連合軍で主導的立場を果たした時代は1945年に既に終わっていたと言える――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――日本連邦も日本の軍事軽視の政策に扶桑と加盟間もない太平洋共和国が振り回される事態が頻発している。予備役の扱いで大揉め、太平洋共和国の保有艦艇であった『戦艦薩摩』の解体処分事件などで日本側が補償に追われる羽目に陥るなど、日本も自業自得というべき事態に陥る事も多い。1949年を扶桑が迎えた頃、日本では2021年になろうとしていたが、日本は疫病の流行への対応でウィッチ世界への興味を失いつつあったが、予備役制度の混乱の収拾、戦艦薩摩の代替となる予定の巡視船の提供を海保が渋り、国に反論してくる事態に陥るなど、混乱は続いている。ダイ・アナザー・デイでの失態でロマーニャ、ヒスパニアから睨まれた(国土が戦場になったため)のもあり、日本連邦は軍事面で負担が却って大きくなったと言える。とは言え、ダイ・アナザー・デイで大和型戦艦の強力さが存分にアピールできたので、発足した国際連合で最強の海軍の座は得ている。25ノット以上で艦隊行動の取れる海軍はこの時代にはロマーニャ海軍と日本連邦海軍しかない。更に言えば、量産化された改モンタナ級戦艦に正面から対抗できる戦艦はかつての世界三大海軍の更に新鋭戦艦しか存在しない。特に坊ノ岬沖海戦やレイテ沖海戦のような『絶え間ない数百機規模の航空攻撃に対抗可能な防御力を持つ』点を考えると、世界に10数隻しか存在しない。かつてのビックセブンに代わる強さ基準のスタンダードとして言われ始めたのが『前大和型戦艦(プレ・ヤマト)』と『超大和型戦艦(スーパーヤマト)』、『超々大和型戦艦(ハイパーヤマト)』の三つの性能基準である。これは三笠型と敷島型戦艦の登場後の時代の造船技術分野では、『完成時の大和型戦艦』が一種の性能基準の指標となったためである。スーパーヤマトは48cm~51cm砲までの口径の艦砲を有し、全長が280m以上というもの。ハイパーヤマトは該当艦が扶桑の二種類しかないため、事実上は便宜上の区分だ。だが、海軍力の指標として定着していく。それは扶桑が戦争抑止力として用いていくからでもあった。――

 

 

 

 

 

――スーパーロボット。その圧倒的破壊力がダイ・アナザー・デイで連合軍に注目された。ラーテに多額を投資したのが一瞬で馬鹿らしくなるほどの威力であった。カールスラントはせっかく試作車が完成したものを死蔵する事になったが、ジェット戦闘機からバンカーバスターを落とされて撃破される危険が大きいとされ、ドイツの意向で博物館行きになった。装甲が艦艇装甲の流用であることでの重さ、あまりに大きすぎて欧州の全インフラが耐えられない(地盤も耐えられないだろうという指摘があった)という判断だった。用意されていた七号車以降の車両用の資材は他の陸上兵器に回し、現存車両は軍事博物館に収蔵する事が決まったのが作戦決行日の寸前。連合軍の統合参謀本部が紛糾する中、その代替として急遽、白羽の矢が立てられたのがスーパーロボット群であった。プリキュア達を襲ったマジンガーZERO撃退のためもあり、当代最強レベルの機体が集められたため、圧倒的物量差を見事に覆した。その神がかり的破壊力がウィッチの運用面のデメリットを際立たせてしまったのは事実だった。その中でも新鋭とされるゲッターノワールG、グレートマジンカイザーが手元にある事は64Fの特別な地位ぶりを表している。それでいて、普通にウィッチとしても最強レベルの逸材を独占していることは常に批判の対象だった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――B世界でも、エースを多く配置する部隊はどの国にもある。統合戦闘航空団はそのしがらみを無くし、エースウィッチを全人類のために運用するというのが本来の趣旨だった。A世界では501が特に戦功を挙げることが重視されたのと、506の政争の具ぶりが問題視された結果、501主体に全統合戦闘航空団の代表的人材を一箇所に集める。その戦略は日本が史実の源田実のアイデアを元に策定し、人材の有効活用の観点から、米軍も擁護した。地球連邦軍からの機材提供もその後押しになったが、策定された時期には既に505と503は壊滅済みであった(欧州着任時、黒江は505元隊員扱いで、救出後のフーベルタ・フォン・ボニンも503副長扱いのまま招かれた)。その穴埋めが行き場を無くした統合戦闘飛行隊『アフリカ』の面々と1940年当時のいらん子中隊の主要メンバーのうちの三人であった。ミーナBは戦闘の合間の時間に、閲覧が許される範囲の資料を取り寄せていた。このA世界での統合戦闘航空団という枠組の顛末を自分で知りたいのだ――

 

「次の出撃までには時間あるから、持ってきたよ」

 

「ありがとう、エーリカ」

 

「この世界の統合戦闘航空団の顛末には一枚噛んでるしね。トゥルーデは機材のチェックと作戦会議だし、あたしは手空きだからね」

 

「あの子が直接?」

 

「扶桑の伝統なんだって。機材の自分でのチェックとレポート。あたしも整備学校に通ったよ」

 

笑い話風にしゃべるエーリカAだが、ジェット時代では機材の不具合は命取りになりかねない実情、整備兵に不具合をレポートで伝えられる程度の知識はつけないといけないため、その手の知識の教育を受けている。整備要領が完璧に決まっているジェット戦闘機と違う点はそこだ。ストライカーユニットは自分の足でもあるので、扶桑陸軍以来の『ウィッチも整備に関わる』伝統が保たれた。そこがかつての501と決定的に違うところであり、バルクホルンとエーリカは実はその伝統に慣れるのに少し戸惑ったクチだ(長らく、ミーナが整備兵とウィッチの業務以外の会話を禁止していた弊害である)。

 

「私の悪いクセのせいね」

 

「そっちじゃ認識できているんだね」

 

「宮藤さんが怒っていたのは知っていたもの。そちらではどうしてたの?」

 

「早い内に不満が溜まってきてたよ。初期メンバーには整備兵とのコミュニケーションが生き残るコツだと公言してたのもいたから。あたしとトゥルーデ、シャーリーが来てからはシャーリーも巻き込んで、整備兵に手紙を出すって形で意思疎通を図ってた。整備兵を怒らすと、戦場で機体トラブルが起きるもとになるからねー。だけど、他の部隊と合併する時にトラブル起こしたのさ。よりによって、ケイの指揮してたアフリカ出身の連中とね。それで上に整備兵の問題がバレたのさ。それでケイのことを知らずにカマをかけるみたいな事言っちゃった時さ、あたしとトゥルーデは青ざめたよ」

 

圭子が501転属後に銃撃狂の本性を最初に垣間見せたその事件のことを話すエーリカA。圭子のかつての武功を知る者はマルセイユも含めて『命知らず』、『明日の朝日は拝めんぞ?』と青ざめたという。特にエーリカとバルクホルンはあからさまに青ざめ、ガタガタ震えて恐怖した。ミーナBは別の自分の失敗談をこうして聞くことになった。

 

 

――エーリカは語りだす。その時のことを。自分とバルクホルンが近年で最も恐怖した出来事を――

 

 

 

 

 

 

 

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