ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前々回の続きです。


第百六十六話「~行間 プリキュア、そしてとある世界の記録~5」

――B世界では空母へ改装されていることが示唆されている『信濃』。A世界でもそうなる可能性は大いにあったが、工事の進捗率と世論が戦艦にさせたのである。日本側にもそのほうが縁起的な意味で喜ばれるなど、空母化を推した人々にとっては残念な顛末となった。とは言え、大和型戦艦から改装した場合、空母として中途半端な性能になるという試算もあったので、空母化が喜ばれなかった船も珍しい。また、二式飛行艇も生産終了&飛行性能はアップしているが、使用用途は完全に非戦闘用のUS-2に代替されたため、結果的に四式重爆までの双発重爆の殆どがダイ・アナザー・デイで使い潰されたこと、連山はダイ・アナザー・デイでの活躍がその軍歴で華々しい時代であるなど、B世界では配備も済んでいない機体の顛末が記録されている。また、A世界では富嶽や連山などの欧米式設計の重爆が量産化されたが、ジェット戦闘機の登場で早期にジェット化された事も記録されている。エーリカBは状況の違いとは言え、カールスラントが科学の最先端から滑り落ち、扶桑が超大国への道を開いたA世界の情報は妹のウルスラにはショックが強すぎると考え、言わないことにした。B世界では主砲の口径で規格外と陰口がある大和型戦艦も、A世界ではそれを超える主砲の量産化で相対的に火力が陳腐化したとされるなど、色々と差異があるのもそうだが、ジェット戦闘機開発の総本山がカールスラントからリベリオンに移動した事にウルスラはショックを受けるだろうと考え、妹を慮った。(ドイツ系国家は第二次世界大戦相当の戦争に負ける率が高いため、戦時中に開発される機体の後継は出ない率も高い)

 

 

「ウルスラには言えないな、こりゃ」

 

「なんでだ?」

 

「ウルスラは技術屋だしね。多くの世界で航空機開発の主流がリベリオン系になって、多くの国の独自開発機が淘汰されていくなんて教えてみ?ムキになって、それこそ変なの作りかねないよ」

 

エイラBの質問にエーリカBは答える。Bもウルスラが技術局で毎度、へんてこなものを造ってくる事に飽き飽きしているようで、その防止のためにA世界の技術情報の多くは言わないことにすると決めていると。とは言え、次世代の魔導理論と第2世代理論は情報を持ち帰る事は明言する。

 

「第二世代理論だけはここに記憶しとくよ。元の世界のウィッチが超音速の敵と戦うための手段になるからね」

 

「いいのかよ。それにそんなタマか?」

 

「技術情報は持ち帰れないからね。だけど、基礎理論だけでも記憶しとけば、あとは技術屋達が形にしてくれるさ」

 

超高速のネウロイとの戦闘はウィッチの個人技能に依存している節がある事を憂いていたエーリカBはA世界で実用化された第二世代理論を頭脳に記憶する事を選んだ。第二世代理論は完成を早めるためにISや時空管理局の理論を補助に使ったが、それが無くても1952年にはできる理論という。これはエイラBを通し、バルクホルンBにも伝わり、バルクホルンBも協力。武子が許可を出し、基礎理論のメモを渡すことで第二世代理論がB世界に伝わるきっかけを作った。第二世代理論はB世界においてはウルスラ・ハルトマンらが必死に持ち帰られたメモや証言などの断片的な情報を解析した結果、元々、極秘裏に研究がされていた幸運もあり、ロマーニャ解放には無理だったが、その次のベルリン奪還作戦には間に合ったという。また、坂本Bが交わしていた盟約もあり、64Fがベルリン奪還作戦を強力にサポートしたという。(その余波でラーテはやはり投入されなくなったが)

 

 

 

 

 

 

 

――今後に希望はあるものの、A世界では21世紀世界のジェンダー観の流入でウィッチ優位の社会が変質し始めており、ウィッチであるからと言って、社会的優遇を受けられるわけではなくなりつつある。それに納得がいかなかったのが45年当時の中堅世代で、彼女らが『代替役』を担う組織として後年に認められる『MAT』の第一世代を担う事になったが、軍に残った者との対立構造ができた事から、代替役として正式に認められたのは1995年。大戦世代が老年期を迎え、社会的に引退を迎えていた頃であるあたり、対立は根深いものであったことが分かる。1945年に中堅であった世代は上の世代が受けた社会的優遇を自分達も受けられると思っていたところに価値観の急激な変容に遭遇し、それまでの価値観を守ろうとしたら、社会がそれを許さなかった点では被害者だが、世間的には『国難を前に、自分達の殻に閉じこもって仕事を投げ出した臆病者』でしかないのも事実である。その認識が彼女達の世代に背負わされた十字架となっていき、社会的に赦されるのが平和な時代を迎えた90年代以降であったのは、40年代後半から迎えた戦乱期に『怪異が小康状態であったのをいいことに、いい暮らしをしていた』ことへの社会的反感の醸成が理由であった――

 

 

 

 

 

 

――49年の時点で扶桑軍部はMATに部隊ごと移籍した者たちのせいで防空戦略の見直しを迫られていた。旧陸軍時代の飛行戦隊や海軍基地航空隊の少なからずはMATへ移籍しており、64Fに多大な負担がかかっていた。軍部は前線の後詰めが一部隊しかない事に強い危機感を持っていたが、教育部隊からの引き抜きがダイ・アナザー・デイで失敗し、『手札としては使えなくなった』ため、義勇兵で編成した部隊を本格投入し始める。ダイ・アナザー・デイでの教訓である。ただし、教導部隊から転属していれば、前線参加の機会があるため、教導部隊はこの時期には冷や飯食いと認識されていた。ダイ・アナザー・デイでの111Fと112Fの編成の失敗が響いた形である。教導部隊の扱いが軽んじられることを危惧する声もあるが、日本の政治判断としての『手練れは前線に置いて戦果を出させる』戦略は史実の成功例がある以上は覆せない。64Fはそんなわけで、機材で不自由が無くなったのである。ミーナBは日本連邦のこの戦略に疑念を抱いた。教導部隊を軽視しているように見えるからだ。ウィッチの頭数が減ったためとは言え、新世代の育成を怠っているのではないのか?と。この時期は軍ウィッチ冬の時代であり、服部静夏と雁淵ひかりが1949年でも新人扱いのままである事で、A世界の人材難ぶりがわかる。

 

「どういう事、美緒」

 

「この世界では四年前に決戦があったんだが、その時に色々あってな。ウィッチの新規入隊下限が上げられたのだ。教育期間も三年と正式に決まり、新人の育成には時間がかかるようになってな。それに反発した中堅がやらかした。そのせいでウィッチそのものの社会的地位が下落したのだ。私達は否応なく戦うしかないのだ。私はそうなる前に引退できたが、幸運だったよ」

 

「この世界ではいるのよね?宮藤さんのような体質のウィッチが」

 

「我々はそのような特異体質のウィッチを『G』と呼んでいる。宮藤以外にも、古今東西のエースウィッチに確認された上、過去生の都合でスーパーヒロインに変身できるようになった者もいる。ウチの構成メンバーの固有人員では、シャーリーやペリーヌ、宮藤がそれだ」

 

「G?どういう意味なの」

 

「ウィッチを超えたウィッチという意味を込めた造語だ。山本元帥が言い始めた事で、それが全連合軍に波及した。おっと、お前たちの世界では連盟軍のままだったな」

 

「連合軍?」

 

「こちらでは連盟が連合に発展したんだ。その主導権は扶桑の手にある。ブリタニアは戦争が長引きすぎて財政難で、外征できる余裕が無くなったので、我々がリーダーシップを取らなければならぬのだ。カールスラントとロマーニャは衰え、ガリアも見る影もなく、リベリオンは内戦だからな。オラーシャは政変で抜けたし」

 

ウィッチ世界の主要国の尽くが政変、財政難、荒廃などでボロボロになった中、比較的に国力が健在な扶桑が連合の常任理事国筆頭になるのは当然の流れであった。そして、連合軍の主力もカールスラント軍から扶桑軍に移行していることが伝えられる。カールスラントは軍縮をしすぎたのだ。その戦力は外征が不可能な程度にまで減退している。ようやく戦前期のオストマルクまでを含めた領域の防衛に足るまでの再建は許可されたが、国ごと逃れた疎開地の取り扱いで揉めてしまい、そこもカールスラントが結局は20世紀末まで、かつての『軍事大国』のブランドを取り戻せずに冷戦期が終わる理由となる。一方の扶桑はブリタニアの疲弊と日本の持つ技術の吸収などで太平洋戦争後も戦乱が続いた事もあり、20世紀末には史実アメリカの役目を担う『超大国』の地位につく。大戦世代は『戦乱期の国防を担った』という意識の強さがあり、冷戦が終わった後にも社会的影響を残した。また、ウィッチが社会的に認められ続けるための最前線にいたという自負も強かったため、MATの代替役としての法的措置の確定は1995年にまで先延ばしされた。とは言え、1960年代後半には当時の内閣による閣議決定で『代替役と見なす』ことは了承されており、代替役と既に定められていたのだが。

 

「その結果がこの会報?」

 

「そうだ。今や、大和型戦艦の系譜は連合の海軍力が未だ健在であることを示すためのシンボルだよ」

 

連合軍は大和型戦艦に匹敵しうる能力の戦艦こそ、いくつかの国が持てたが、超大和型戦艦以降の『超戦艦』の跳梁跋扈する時代には追従しきれなかった。造船能力の限界の兼ね合いで、だ。会報に載る戦艦の尽くが大和型戦艦の系譜を継ぐ者たちだ。ブリタニアが46cm砲艦七隻と引き換えに、旧式戦艦の多くを退役させたのは、原子力潜水艦にブリタニアは魅力を感じない故のポーズでもある。カールスラントはナチスからの鹵獲戦艦(H41及び、H42級)の修繕とその前型に当たるビスマルク級でのローテーションでお茶を濁し、ロマーニャはリットリオ級の老朽化を名目に『インペロ級』を1946年度から建造。日本連邦以外の国々では珍しく、海軍再建に意欲がある。ガリアは後のアルジェリア戦争後に国土再建に目処は経ち、アルジェリア戦争の敗戦が火を付ける形で軍備再建に乗り出すものの、ペリーヌ・クロステルマンが防波堤となり、戦艦の保有はローテーションが組める最低限の数である6隻までと決められる。ペリーヌは怪異による鉱物資源の吸収具合から、国情的に貯蔵されている鉱物資源の余裕があまりないことに気づいていたのだ。とは言え、日本連邦による宇宙開発の始まりで鉱物資源についての心配はせずに済むため、ペリーヌの行為は後世には『自制心を身につけさせるための選択』と高く評価されたのである。

 

 

「カールスラント海軍は大洋艦隊の夢をもう見れないのね…」

 

「お前のとこの先帝だか先々帝が第一次世界大戦の前に構想し、1930年代に設計が起こされた『世界首都ゲルマニア』があるだろう?それと同じになったのさ。この世界では我々が今後はブリタニアに代わる世界の覇者として振る舞わなくてはならなくなる。それには『揺るぎない力の証』が必要なのさ」

 

世界首都ゲルマニア。史実ではアドルフ・ヒトラーが構想した街だが、ウィッチ世界ではヴィルヘルム二世か、その子と思われる皇帝が大洋艦隊の壊滅の責任を取らされ、退位させられた際に世間に残した設計だという記録が確認された街だ。構想しか存在しなかったが、B世界では、それそのものの形状が『怪異の巣を兼ねた防衛兵器』として存在していると思われる。B世界では芳佳が絶対的な反攻のシンボルと見なされるようになっていたが、A世界ではスーパーロボットやGウィッチ全員の存在がそれと見なされている。

 

「揺るぎない力の証…?」

 

「お前の世界ではそれは宮藤の絶対的主人公補正だろうが、この世界では七勇士とその系譜を継ぐ者たちだ。宮藤はあくまで、その一人にすぎん。とは言え、私は辞めてるがな」

 

坂本Aはそこは微笑ってみせた。B世界で迎えるはずであった『終わり方』よりも穏やかに第一線から身を引けたエクスウィッチとして(実際には魔力は健在だが)。そして七勇士を『揺るぎない力の証』と評する。自身の後継者になった宮藤芳佳、自身の衣鉢を空軍で継いでくれた西沢義子が『新生七勇士』のメンバーの一人であると明言した。

 

「私が辞めて、徹子は任地の都合で七勇士と見なされる事は減ったから、今は義子と宮藤を入れて考えるように…おっと、江藤さんも中央勤務になって外れたから、宮藤のバディの菅野か、黒田が見出した中島を入れる向きもあるな」

 

七勇士の意味合いはこの時代になると、『扶桑の空中勤務者で最も有力な7人』を指すように変化しつつあった。ミーナが本来の意味の七勇士を知らず、おとぎ話と見做していたことが扶桑に伝わった事の余波である。中島錦が候補とされているのは表向き、彼女がキュアドリームへの変身を身につけたことになっている関係で、坂本Aもそう言い繕う。なお、黒田の後輩である事は本当なので、黒田が見出したことになっている。

 

「この世界での私は戦時の促成教育で座学を省略した関係でそれを知らなかったのよね?」

 

「うむ。もう教えられたと思うが、私も引いてしまうくらいに無知でな。二回の査問の時、私も擁護する気が薄れるくらいの体たらくだった。事後に錯乱する…。みっともないと思ってしまったよ」

 

「パットン将軍が喚き散らしたと記録があるけれど?」

 

「ケイは彼のお気に入りでな。それでパットン将軍には『悪役』を演じてもらった。司令部の中のカールスラント軍人の高慢さへの不満を将軍級の誰かが代弁してやらんと、カールスラントの司令部付きの連中とウチの国の連中が殴り合いしそうだったんでな。彼に悪いから、便宜を図ってやったよ。お前を責めるのは気が引けたが、冷遇を見てていられないのも事実だったんでな」

 

二度の査問で見られたパットンのミーナへのヒステリックまでの喚き散らしと、愛銃の振り回しなどの一連の行為は『悪役』的なパットンの演技であり、司令部を巻き込んだ坂本と圭子の策略であったと明言される。また、パットンに不満を代弁させる事で、司令部内部のカールスラント将校らの高慢な態度を戒める効果があった事、ミーナAのGウィッチ化を促した事は、結果的に新生501内にあった『黒江たちを過去の人間と軽んじる空気』を一掃した事は事実だ。

 

「こちらの宮藤さんが気にしていたわ。『プリキュア』という存在を」

 

「やはりな。薄々とは感じていたが」

 

「彼女達は何なの、美緒」

 

「世界を本当の意味で守り続ける宿命を転生しても背負わされた者達の総称だよ。シャーリー、ペリーヌ、宮藤、中島、醇子、先生……少なくとも、私の身近な人間の多くはその過去生を持ち、能力と記憶が蘇っている。とは言え、黒江たちのように人生を繰り返した事で超人化した者もいる。お前はカンがいい。この機会に話しておくよ」

 

「いいの?」

 

「責任は私が持つさ」

 

坂本Aは自分の責任で、Gウィッチに内包されている歴代プリキュア戦士達のことも明かした。ミーナを『二度』も蚊帳の外には置きたくはなかったのだろう。

 

「何、加藤さんたちも分かってくれるさ。それに、お前のところの黒江たちに希望を与えたくてな」

 

黒江B達は芳佳BとリーネBに責められてしまった事で、すっかり意気消沈しているのは知っていた坂本Aは『ウィッチ以外に異能はあり、ウィッチでなくなったとしても戦う手段はある』ことを示し、前向きになってもらいたかったのだ。

 

「ごめんなさい。あなたが慕う先輩たちに嫌な思いをさせてしまって…」

 

「こちらのあいつらとは別の存在とは言え、いたたまれなくてな。二人は『私』が焦っている事は知っているはずだぞ?お前らのところの私の教育不足だな」

 

坂本Aはエクスウィッチの心を抉る行為を図らずもしてしまった二人を『同位体の教育不足』と断じる。そこは辛辣である。

 

「エクスウィッチは燃え尽きた存在だ。ウィッチであり続けたかった者も多い。事は、あの子らの思っているほど単純ではないよ。多くの世界で私が辿る運命もそうだが、あがりが近づく傾向は自分の人生の物語の一ページが終わり始めることだ。そして、仲間と共にいられなくなる時間の訪れが近いうちであることを否応なく突きつけるサインだ。黒江たちはかつては私たちのように名を馳せた。そんな自分が選ぶしかなかった身の振り方を魔力が全盛期を迎えた年頃の小娘に否定されてみろ。惨めさを突きつけられるだけだ。かつての名うてほど、それを強く感じるのだ…。こちらの黒江はそれを怒ったのだ」

 

そこまで言い終わると、寂しそうな表情を見せつつ、タバコ型の喉の薬をどこからか取り出し、『服用する』。引退後に始めたのだ。

 

「あなた…」

 

「引退後に吸い始めた。タバコ型の喉の薬だよ。ケイに薦められてな。それに、タバコのようなものを咥えて見せんと、欧州では大人扱いされんだろ?」

 

戸籍年齢が20代以上になった扶桑ウィッチは事情がない限り、『タバコ型の喉の薬』を実年齢が20歳を超えたことを示すための小道具として、口に咥えることがこの時代には当たり前になり始めた。ミーナBが苦笑するように、実際はそうとは限らないが、日本連邦ではそういう認識が主流である。圭子が覚醒後の荒くれぶりの演出も兼ねて使い始めた(圭子は自分の能力で作っていた時期もある)のがその始まりであり、1949年時点では黒江、智子、黒田も演出のために咥えている事がある。日本の既製品を扶桑国内で最初に吸ったのはセラであり、彼女も自分の妖艶さを演出するための道具としている。(ちなみに、水タバコを愛好していたマルセイユも切り替えている)

 

「扶桑では、そういう認識なのね?」

 

「扶桑の人間は欧州人からは童顔に見えるからな。東洋人なりの欧州での背伸びだと思ってくれ」

 

そう答えつつ、苦笑交じりに咥え、服用する坂本A。

 

「そういえば、こちらのトゥルーデが扶桑の地下鉄の時刻表と路線図とかを欲しがってるわ」

 

「……あいつが?」

 

目を丸くして驚く坂本A。

 

「クリスちゃんよ。ほら、あの子の妹…」

 

「ハッハッハ。こちらでは恥ずかしいのか、言っておらんが、クリスちゃんは鉄道マニアか。それも地下鉄専門」

 

「ええ。トゥルーデ曰く、クリスちゃんが小さい頃、地下鉄の駅員や運転手に親切にしてもらったとかで」

 

「こちらでの黒江のオートバイと似たようなものだな。あいつにも、兄のように慕うヒーローが日本にいてだな…」

 

何事にもきっかけがある。バルクホルンの妹『クリスティアーネ・バルクホルン』は幼少期に地下鉄の駅員や運転手に親切にしてもらったことをきっかけに、地下鉄マニアになっていると、ミーナBが語るように、黒江Aも仮面ライダーストロンガー/城茂と出会ったことでオートバイに傾倒しだした。お互いに知り合いの趣味が始まるきっかけの話に花が咲く。

 

「そういえば中島の奴も……過去生の知り合いのおかげでサーフボードができるようになったと……」

 

それはのぞみのことである。のぞみがさらなる過去生について『おぼろげに覚えている大切な兄貴分』の記憶や『守りたい子』に関する僅かな記憶が呼び覚まされた事で得た技能『カットバックドロップターン』。なぜ、その技を記憶していたかは『のぞみ本人にも理由はわからない』。だが、『忘れたくない記憶』なのは分かると常々言っている。

 

「過去生、か……」

 

「欧州人のお前たちは知らんかも知れんが、東洋には輪廻転生という概念が古くからあってだな……」

 

坂本Aはそこは微妙に間違って覚えていた。欧州は古代ギリシアにもその概念はあったりする。専門家ではなく、元来は鍛錬と軍事以外の俗事にほとんど興味がなかった坂本にしては相当に頑張って勉強した方である。ミーナBは引退後に必死に『一般常識』を勉強したであろう坂本Aの努力を微笑ましく思い、そこは敢えて指摘しない優しさを見せた。二人の本来の関係を表す一コマであり、実は圭子が遠目から居合の要領でカメラ撮影をしており、坂本Aの頼みで扶桑で流通する週刊誌に寄稿する『ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケの人物像について、同僚として擁護をする内容のエッセイ』の挿絵の参考にする一枚にするつもりであった。その時間を稼ぐために会話を続けたあたり、坂本Aは『策士』であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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