――64Fにダイ・アナザー・デイ後も人材が集められた理由は旧陸海軍のテスト飛行隊が解散になった後にその人材の多くが昭和天皇の勅で64Fに回されたからだ。とは言え、64Fも 実戦のカンが鈍っている者を押し付けられるのは懲り懲りなので、極天隊を育成飛行隊として松山に残している。ひかりとしずかはそこで二年ほど訓練を受けた後に正式に奇兵隊へ回されている。その関係で史実の二人の師との関係は薄い部類に入る。二人はアニメで目立っていたためにメディアに追われる日々であり、自分の体験していない事を聞かれるため、うんざりしている。これは芳佳Aも同様であり、産休中の邸宅にまで押しかけられたため、仮面ライダースーパー1とスカイライダーに家の警備を頼む有様だった――
――柱を登り終えた黒江は沖一也と筑波洋から、芳佳A(産休中)の邸宅に日本の写真週刊誌の連中が張り付いたため、ライダーの姿で追っ払ったと伝えられた。芳佳の胎教に影響が出ることを心配した洋の提案で、しばらくは基地地下にあるセーフハウスに隠れることが決まった。黒江が様子を見に行くと、芳佳のお腹はだいぶ大きくなっており、この子供が一族の通字を継ぐ長女であると黒江に伝えた――
「そうか、剴子は二番目だったな」
「ええ。この子は家を継ぐほうです」
「すると、お前、二年くらい後にまた?」
「ええ。その代わりにタイムマシンで間の時間軸から呼んでいいですよ。あたしの治癒魔法は致命傷も治癒できますから」
「4年前に赤ズボン隊のフェルが泣いてたな、そういえば」
「全部のウィッチやプリキュア含めても最高のヒーラーですからね、あたしは。プリキュア化のおかげで魔力も安定しましたし、向こうのあたしみたいな弱体化補正はないです」
芳佳Aは時空管理局による治療やプリキュア化で魔力値の安定と運用管理の改善がなされたため、早い内に魔力の安定運用に成功している。一方のBは転移の影響で魔力が不安定化しており、治療に時間を要した。黒江が実戦に出さなかった本当の理由の一つである。また、B世界のウィッチは『本来いた時間の年齢のままである』という状況になったため、坂本Bはこの機会に訓練として飛びまくっていた。これについては『元いた世界ではないので、戻れば加齢が再開される』というものであると推測された儚い奇跡であるため、坂本Bは積極的に戦った。Aが地上に降りた事を意外にすんなりと受け入れつつ、自分のところの子供達が智子たちの事を責めた事を厳しく叱り、黒江Aに詫びるなど、完全に父親的位置にいた。
「俺、波紋を身に着けたよ」
「黒江さん、あれこれしますねぇ」
「極めたと思ったら、もっと上に叩きのめされる経験を何度もすりゃな。ピーチとメロディに修行を始めさせた。今回は事変の頃から『ウィッチにとって、いらん知恵がある』って言われてきて、『東洋人の分際で、カールスラント空軍に意見するのか』って505の上官に言われたからな。ロンメルにそこはビシッと言ったよ。それでミーナの処罰が重くなったが」
グレーテ・ゴロプの『カールスラントは世界一ィィィィ!!』と言わんばかりの黒江への冷遇と差別的言動が公になった事も、ドイツ連邦共和国が戦前期からの将校の多くをリストラしたきっかけである。ミーナの冷遇がドイツにその大義名分を与えてしまったため、ミーナは本国にいる軍人の多くから睨まれた。その結果、ミーナがノイエ・カールスラントの地を踏んだのは随分後の時代のことになる。
「ミーナさん、本国の様子じゃ、当分は足を踏み入れられませんよ?」
「今は実質的に日本人だし、執着はないだろ。ベトナム戦争が終わる頃までに行ければいいだろう。あ、それと、ドイツはなんで、戦前期からの軍人を追い出す真似をしやがった?」
「一つはナチス化要素の排除、戦前の上流社会の崩壊、将来の共和制化への種まき。これは無理でしょう。ガリアが共和制の醜いところ見せまくって占領されたから」
ウィッチ世界では、共和制ガリアがその醜い政争の挙句の果てに亡国の事態に陥ったため、共和制が栄える要素は少ない。ドイツは1945年当時の下士官以上の多くを排除することで共和制へ道筋を作りたかったが、リストラ予定の将校たちが日本連邦に部隊ごと与していくという事態にドイツ政府は困惑する羽目に陥った。カールスラント軍の崩壊は急速であり、兵器の物理的廃棄も含め、カールスラント三軍は1949年には戦後西ドイツ軍にも及ばない規模にまで急激に縮小。有名無実化した。旧オストマルク軍出身者の抗議もあり、『オストマルクを含めた防衛に足る規模』までの再建は定められたが、10年かけても終わらない試算が出るほどの悲惨さである。カールスラント海軍は偶々、主力艦艇が演習で外海であった都合、軍縮に巻き込まれたのは建造中のビスマルク級の二次生産分とUボートだけであった。とは言え、大洋艦隊亡き後のカールスラント海軍の陣容は史実ドイツ第三帝国よりはマシな程度で、虎の子のビスマルク級の増産が『新造の旧式艦を増やしてどうする』と中止になってしまい、水上部隊の質的陳腐化が目立っている有様である。
「ビスマルクの三番と四番が中止になったんで、カールスラントの海軍は泣いてますよ。あんまり哀れなんで、上は鹵獲艦を譲渡することに」
「ドイツ自身が弱点を分かってるからな、ビスマルクは。大和は愚か、紀伊にも勝てねぇ旧式の焼き直しだしな、あれ」
ビスマルク級は基礎設計が古く、第二次世界大戦時代の砲戦では想定距離以外では弱体である。それを把握しているドイツはフリゲート艦の量産でビスマルクの増産を破棄させたのだ。これに困惑したカールスラント海軍。戦艦の増勢は大洋艦隊再建に必須であると見ていたからだが、ドイツは潜水艦とフリゲート艦に傾倒し、砲熕型艦艇の維持に興味を持たないため、大いに揉めていた。また、フリゲート艦で水上戦闘艦を賄う方針はカールスラント国民の理解を得られず、ドイツ側も困惑した。当面はビスマルク、ティルピッツ、扶桑から譲渡された鹵獲艦(バダンのH級)のローテションで維持しつつ、日本連邦の持ちかけた宇宙戦艦をいずれ購入する契約で落ち着いた。
「あのプランにドイツも乗っかるそうです」
「フリードリヒ・デア・グロッセの情報が効いたか?」
「ええ。ヒトラー最後の遺産ですからね、あのラ級」
純正のラ級でラ號を上回る火力を持つのがその艦であり、敗戦寸前に完成していたともされたドイツ唯一無二にして、史上最大最強のドイツ戦艦である。ドイツへの牽制で、ラ號も51cm砲搭載を目指していたが、井上成美などの妨害工作、輸送艦「樫野」の戦没、地下ドックでの建造に切り替えなどで形にならず、信濃用の46cm砲を改造して積むことになった。終戦時には主要部品は完成しており、戦後にとりあえず完成。秘匿された後に宇宙戦艦ヤマトの時代に軍籍になり、改装された。轟天はその運用データを元に新造されたものだが、銘板はまほろばが持っていた、計画当時のものが使われている。両艦の本来の艦名は日本の美称が予定されていたとされる直接的証拠である。
「轟天のパルサーカノンへの換装は?」
「終わってるはずです。プラズマとグラビティショックカノンをすっ飛して、パルサーカノンはオーバーな気も」
轟天は一足早くにパルサーカノンを装備していた。演算コンピュータの30世紀型への強化がされ、補助機関が重力炉であるため、23世紀型波動エンジン艦より武装に回せる出力が大きいことで実現した。ハーロックとクイーン・エメラルダスの『27世紀のグラビティショックカノンクラスは23世紀の現行技術でも、一応の再現は可能だから、もう一息先の技術に手を出しても良い』という判断で供与された。30世紀の世界ではパルサーカノンこそが最強の艦砲であるからだ。
「備えるに越した事はねぇさ。パルサーカノンはイルミダスの船を撃ち抜けるからな。それに、お前の旦那には第三世代のユニットの製造を前もって頼んである」
「それで、ウチの旦那がここんとこ、車庫ににこもってるんですね?」
「無茶な仕事だから、諸方面に資材確保を依頼しといた。この時代の資材じゃ、第三世代式は造れんからな」
「やれやれ。それと波紋の修行を誰と誰にさせるんですか?」
「主要メンバーには全員、修行させるつもりだ。もしかしたら、柱の男たちの同位体がどこかにいるやもしれんしな」
「怖いですね、それ」
「ま、のぞみの同位体には悪いことしたよ。えりかには怒鳴ったし、なぎさは怯えさせたしな。」
「それと聞きましたよ?ドリームの姿で『相手が勝ち誇った時、そいつは既に敗北している』なんて言ったんですって?」
「俺は口八丁とハッタリで乗り切る事も多いし、空戦とカードゲームをする関係で、心理トリックも心得てる。そこでバレたが、スカッとはしたよ」
黒江は『大決戦』で一部のプリキュアに正体を明かした後は戦闘スタイルを自身のものに完全に変え、青年期のジョセフ・ジョースターを彷彿とさせる心理トリックも用いたトリッキーな戦法を用いた。その時に、自分に波紋の素質があることに気づき、修行する事を決めたのである。
――相手が勝ち誇った時、そいつは既に敗北している――
ジョセフ・ジョースターが青年期から、身体にガタがきた老年期に至る前の時期まで座右の銘としていたその言葉。黒江は彼の型破りなキャラが好きだと語り、リスペクトしている事をダイ・アナザー・デイ前後から公言している。黒江は正体を明かした後は彼へのリスペクトを込め、『この俺が戦いにおいて、貴様らと年季が違うということをこれから思い知らせてやる』と啖呵を切った。のぞみを知る者はこれで『事情』をほぼ全員が把握するに至ったが、そうでない者(その世界にいたデビュー間もない時期のハートキャッチプリキュアや、智子と入れ替わっていた『その世界にいた桃園ラブ』や美墨なぎさ)達の誤解を招いたのも事実だ。とは言え、それを事後に聞いたのぞみAは多少はそのことを意識しているという。(行為そのものには絶叫するほど困惑したが)
「のぞみちゃん、相当に愚痴ってます。同位体にその事で詰め寄られたそうで。なぎささん、それにつぼみちゃんの同位体とかに誤解されてるって、涙目で猛抗議されたとか」
「そいつは悪かったって。今度、日本のファミレスで奢るかなぁ」
こんな調子の黒江だが、のぞみのほうも黒江が自分の姿で、ジョセフ・ジョースターさながらの頭脳プレーをしてくれた事そのものは、自分が昔から『天真爛漫なキャラ』と言われていた事を変えてみたい願望があるために悪い気はしない。その事自体は別段、咎めていないのがその心境の表れだろう。
「ほれ、一人目が生まれるから、その祝いだ。旦那にも後で渡しておいてくれ」
「数年後には剴子が生まれますから、その時には」
「わーっとるさ。ベビーシッターしてやるさ。今日は新京で日本人向けの講演があってな…」
「それで元の姿なんですね」
「元の姿になるのも久しぶりだよ。終わったら容姿は変えるさ」
黒江にとって、容姿は変えるものになったため、素の容姿は仕事用と割り切っている。レパートリーは広く、かの綾波レイの姿も取れる。普段遣いは調の容姿であるが、瞳の色だけは変えてある。大決戦の後からはのぞみの姿も取れるようになったので、のぞみBがますます拗ねてしまったのは言うまでもない。(髪の色と瞳の色は後に微妙に変えたが、ダークドリームに似ていると指摘されているという)
――そののぞみAは黒江の波紋法の修行が一段落つく頃には、キュアフローラ/春野はるかからの聞き取り調査に従事していた。春野はるかは『気がついたら別の世界に一人で飛ばされていて、そこで、何故か単独で戦っていたブラックと出会い、そのまま共闘していた』と話したブラックはホワイトやルミナスとは何らかの理由ではぐれてしまった関係で、変身を解けない(初代は二人が揃わないと変身ができない)とぼやいていたという。その関係で、自分もフローラの姿で付き合っていたと続ける。そんな生活がしばらく続いた後、『カイン』を名乗る男の率いる軍団と敵対するようになり、戦ったのだが、二人がかりでも、カインの駆るロボット兵器『ザカール』にはあまりのスピードの差で手も足も出ず、捕虜になったこと、ブラックが囮になり、自分を逃してくれた事、自分は一縷の望みをかけて、空に現れた時空の歪みに飛び込んだ事を――
「ドリーム、お願い!なぎささんを……ブラックを助けて!!」
「そうしたいのは山々だよ。だけど、その世界の『座標』がわからない事には手の打ちようが……」
「そんな……!」
「まだ起きたら駄目よ、フローラ!」
マーメイドに叱られるフローラ。
「でも……」
「今はゆっくり休んで、フローラ。この世界の事情はおいおい話すから。ハッピー、どう?」
ドリームは七か月後から呼ばれてきたハッピーに問う。
「傷は魔法で塞いだけれど、動けるようになるには療養が必要だね」
「えぇー!?魔法って、みらいちゃんとリコちゃん達みたいな奴だよね、ハッピー!?」
「ほら、寝てなって。プリキュアの姿なら、回復も早いから」
「教えてよー!」
「あ・と・で!」
「う、うん…」
さすがのフローラも、先輩であるハッピーには逆らえないようだ。彼女は全寮制の学校に通っていたため、第二世代以降のプリキュアでは珍しく、先輩後輩という上下関係を心得ているためだ。(同じプリキュアチームのキュアトゥインクル/天ノ川きららが上下関係をあまり気にしない気質なのとは正反対である)
「やれやれ、ザカールはやはり持ち出されてたか」
「あれ、のび太くん。それって」
「ビスト財団が前の戦いの時に『V-MAXの性能検証・実証実験機』の名目でレイズナーの基本データを使って生み出したSPTだ。その男、ザカールのV-MAXを扱えるとは、只者じゃないな」
その男こそ、消息不明であった従兄弟ののび太郎の成れの果てであるなど、この時はのび太も予想だにしないのである。事故でのび太郎は23世紀世界に転移後はテロリストに堕ち、のび太と瓜二つとされた容姿を変え、『カイン』(後にル・カイン)と名乗り、ル・カインとして、のび太たちの前に姿を現す。部下達に死鬼隊を連想させる無法者たちがいた事から、のび太は『死鬼隊をどこから用意した?』と問うことになる。のび太も壮年期に差し掛かり、顔立ちや声にかつての気弱な少年の面影が無くなったため、のび太郎に合わせて、『エイジ・アスカ』という偽名を名乗ることになる。それはのび太なりの従兄弟への手向けでもあった。黒江は『まるで、蒼き流星だな、こりゃ』と冗談めかしつつも、のび太の決意を促したのである。母方の従兄弟でありつつも、野比家の人間と必ず誤解されるほどに似すぎたための近親憎悪に陥ったのび太郎は悪の組織でいうところの暗闇大使にとても似ていた。暗闇大使はその容姿を変えなかったが、のび太郎は容姿を嫌悪していたために変え、あくまで別人と嘯いている。のび太はそれを知った後に『奴に引導を渡すためさ』として偽名を名乗り、のび太郎に合わせた。のび太がそれを選んだのは、のび太郎への『優しさ』であり、生涯を通し、のび太が明確に偽名を名乗った数少ない事例となった。こうして、のび太は自身の子孫に用意させた蒼き流星を以て、30代を戦いで迎えることになる…。
――この時期の連合艦隊は近代化が進められる一方、空母機動部隊が決定的に能力が陳腐化しつつあった。艦上機の質はいいものの、国産空母そのものは1930年代から40年代前半までに整備されたものを騙し騙し使っているのである。連合艦隊が戦艦部隊を中心に作戦を立てているのは、空母機動部隊の量の減少(雲龍型が艦上機の大型/ジェット化で陳腐化したため、鋼材の質がいいと見做された初期艦以外は解体か、他用途に転用されたため)と新型国産空母の遅延によるものであった。その代わりにイージス艦が艦隊に配備されたためと艦隊単位での対空砲がパルスレーザーに革新され、RAMも設置され、艦隊防空能力は飛躍的に向上。連戦連勝であった。――
――轟音と共にクリーブランド級軽巡洋艦が轟沈する。連合艦隊の対艦ミサイルが命中し、弾薬庫を破壊したのだ。史実では一隻も戦没していない同級だが、この世界では連合艦隊の近代兵器の前に為す術もなく、戦没艦が続出し、発展型のウースター級軽巡洋艦に切り替えられ始めている。日本はそれを受けて、旧来の日本型巡洋艦を人命軽視としており、デモイン級相当の重装甲巡洋艦を建造させようとしていた。とは言え、デモイン級の大きさや排水量は初期の戦艦と同等以上であり、連合艦隊側は『巡洋艦』の運用思想的にそこまでの高性能化は志向していない。とは言え、超甲巡が日本側の意向で『巡洋戦艦』扱いにされそうなので、扶桑も『ご機嫌取り』で伊吹型の建造段階で図面を変更、攻防速を予定より強化して量産している。とは言え、5500トン級軽巡洋艦の代替を兼ねるとされたため、打撃艦隊にはまだ、殆ど配備されていない。対デモイン想定の新型艦の建造は超甲巡の存在意義の否定となりかねないため、連合艦隊は反対だった。だが、政治的理由で超甲巡の『戦艦化』が議論に乗せられ始めたため、伊吹が量産されたわけだ。(結局、それは金剛型と同等の口径である36cm速射砲の開発と換装が1950年代に行われることで決着する。そもそもの31cm砲の開発目標からすれば不本意だが、日本側は31cm砲を『中途半端』としている)
「戦艦部隊を叩け!半年は制海権を得られるぞ!」
連合艦隊主力は敵戦艦を数度の海戦で叩きまくっている。とは言え、元から頑丈な米戦艦をスクラップにするには、51cm砲を以てしても4発のバイタルパートへの命中を必要とする。リベリオンの工業力は季節ごとに戦艦の完成を可能にしているため、連合艦隊の将兵の間では『敵は魔法を使っているに違いない』と噂されていた。扶桑は自身の国力で戦艦を造る場合、三年以上はかかるからだ。とは言え、竣工間もない艦には訓練期間も必要であるので、半年は制海権を維持できることは確定している。連合艦隊はそこを狙っているのだ。空母機動部隊が量的に弱体化したためと、日本の空母の温存方針もあり、その量的再建は最低でも、あと4年以上先である。(軽空母と護衛空母の大半が民間に問答無用で売却されるか、超大型空母の維持費捻出のために解体処分。練習空母になれたのも少数である)扶桑皇国海軍は欧州大戦に対応するためという名目で基地航空を軍の主力として育成していたが、独立空軍の設立でその努力が無に帰した形となったため、空軍への被害意識が航空隊では強く、この時期の海軍航空隊の風紀の強い乱れに繋がった。日本側も高練度が担保され、秩序を保っている空軍部隊を重視し、艦載してまで重宝したため、海軍航空隊は予算対策用の組織とまで揶揄されるのである。また、ウィッチ装備も原則的に強襲揚陸艦に移され、空母はジェット戦闘機などの運用に専念するとされたため、空母からウィッチの姿は1948年度に消えている。A世界の空母は1949年度には『ジェット戦闘機などの運用に専念する』ものとされたが、一部のウィッチがこれに強く反対している。坂本と若本が海軍に残留したのは、自分達の居場所を自分達の手が及ばぬ次元の議論で奪われ、社会的にも『穀潰し』扱いされだしたため、招来を悲観した海軍ウィッチの風紀が乱れることを懸念したからで、そこも複雑であった――
――なお、この当時は皇室の軍事的役割が事実上の終焉を迎え、事変当時の武子が指揮権を代行した例についての議論にようやく決着(皇室に担保されている国家緊急権の行使ということになったが、当時に新米の少尉であった武子に議会の頭越しに指揮権を与えた事は日本側から『シビリアンコントロールに無知すぎて呆れる』と問題視され続けたし、その後に参謀本部が彼女を冷遇した事は当時の高官達の勲章などの名誉剥奪に繋がった)した。憲法改正後の皇室の権限は事変経験者達の強い要請で国家緊急権の行使は残されたものの、その他は儀礼・儀仗的なものとなり、軍事的役割は1947年で事実上の終焉を迎えた。(日本の皇室と違い、形式上の指揮官という体裁は現場の士気の問題と、国民の議会への事変以来の不信で保たれた。扶桑での皇室の軍事への関わり方はブリタニア式だったからだ)その関係でウィッチ出身者に用意されていた侍従武官のポストが名誉職化し、魅力がほとんど無くなるという事態も起こった。軍に残った優秀な人材の殆どが64Fに配属された背景には、その関係も大きい。とは言え、そこで第一線に立てるかは別問題である。武子の復帰後は幹部たちの厳しい選抜試験を潜り抜ける必要があったからで、実戦経験が無ければ、育成枠に入れられ、極天隊行きになる。そのため、64F幹部の指名で転属する事は格別の名誉とされた。セラは黒田とスコアを争っていた事が高く評価され、1949年に復帰した後は隊の幹部と扱われている。それは戦時中には珍しいケースとされたが、彼女は元は紅海のはみ出し者と揶揄されていたので、腕っこきだが、はみ出し者の集まりと言える64Fに正式に属する事で真価を発揮したと言える。
――扶桑は基本的に外地で敵を留め置き、本土の防衛をする方針であったため、日本の本土決戦も辞さない方針とは相容れないが、日本は外征のノウハウが失われて久しい。だが、防衛戦では長年の研究の成果で扶桑の上を行く。特に硫黄島の戦訓で扶桑に地下都市が築かれた後、そこに大要塞も築かせたところに表れている。64Fの補給物資のうちの重要物資は地下都市を通る形で輸送されており、基地の地下部に備蓄されている。501部隊B側に明かされたのはその詳細である。A世界に存在する『ウィッチ以外の異能』もその際に全てを明かされた。その上でそれを素で超える人間もいる事、一つの異能だけに固執すると、他の何かに凌駕される事も出撃前の時に伝えられた――
――出撃前――
「貴方達はウィッチを超えたんですね、文字通りに…」
「ああ、そうだ。あがりという枷から解き放たれたから、全盛期の魔力を維持できるようになった。それでも及ばない敵と戦うことになったから、色々な手段を講じたまでだ」
A世界では、フィギュアスケート競技の選手とプロスケーターのようなものの例えでRウィッチやGウィッチの事を説明することが定着した。Gウィッチは特に『単にウィッチであり続けてるわけではない』からだ。
「誰しも、宮藤みたいな『奇跡』は起こせんということだ。巨大な敵に立ち向かうために、ウィッチ以外の異能を身につけるしかなかったんだ」
圭子はリーネBにそう答えた。芳佳は『特別な存在』であるので、大方からすれば、奇跡と言える事を何度も起こすのが確定しているが、そうでない大多数のウィッチにとって、魔力は『儚い奇跡』である事を断言する。
「宮藤、お前にとっての正義はみんなにとっての正義じゃない。知らず知らずの内に周りに妬まれていても不思議でない。一度無くなった魔力が何度も復活することが多くの平行世界で確定してる。魔力そのものが儚い奇跡な普通のウィッチには異端視されてもおかしくねぇんだぞ」
「……」
芳佳Bは出撃前に圭子にそう断言された事で少なからずの衝撃を受けた。だが、彼女は精一杯の反論をする。
「私は……お父さんとの約束を守りたいだけなんです!あなたが坂本さんの先輩だろうと、これだけは譲れません!」
「なら、『戦いたくても戦えない』ジレンマを抱えてる奴の気持ちを少しは考えろ、ボケ!!去年にもそうやって怒られたろうが」
芳佳は多くの世界で『自分の拠り所を守ろうとする』時、あるいは自分が正しいと思った事を貫く時などで強い頑固さを見せる。その頑固さがA世界への滞在中はトラブルメーカーと化している面は否めなかった。芳佳の悪いところは自分が良かれと思って行うことでは『他人の都合や考えを考慮しない』ところである。それが戦争の残酷さの増したA世界では裏目に出てしまう事のほうが多い上、自分達の世界の黒江らのように『戦えなくなった者』の心を抉る事を口にしてしまうという失敗も犯した。Aが飄々とした態度で上層部とも渡り合う老獪さを身に着けているのとは対極の青臭さである。黒江Aにも軽率な言葉を咎められたが、圭子にも怒る形で頑固さを諌められたため、芳佳Bは父親との約束を守るという自分の考えは悪いことなのか?と自問自答して考え込む羽目となった。そして、A世界のシャーリーが変身するキュアメロディに諭され、大泣きするのである。リーネBも既に黒江に叱られた後であるために、その場では強くは擁護できない。芳佳の不幸は『自分はどんな事をしても魔力が絶対に尽きない故に、他のウィッチでは当たり前に起こる魔力減衰の怖さ』を完全に理解しきれない点だろう。
「さて、ここでウィッチ以外の異能について説明する」
圭子が気を取り直して、映像付きで説明映像を再生する。これまでの記録映像も多く含む豪勢なもので、SS以降の歴代プリキュア戦士たちの変身/名乗り→個人戦闘の映像が順に流される。彼女達は魔法との関連は基本的に薄いが、強化形態か第二形態であれば自力飛行が可能である事、その力は並の空戦ウィッチの10人や20人程度では束になっても敵わないほどである事実を見せつけられる。それを以てしても、体を極限まで鍛えた人間には苦戦を強いられる現実がある事も提示された。
「筋肉モリモリマッチョとは言え、普通の人間が格闘技を極めただけでウィッチに立ち向かえるのかよ?」
「これを見ろ」
筋肉モリモリマッチョな軍人にバルクホルンが怪力を発動して尚、圧倒されてしまう映像。しかも頼みのそれが歯が立たず、逆に首を絞められる有様。キュアメロディになったシャーリーAの助けがなければ、気絶させられていたという映像は何よりの証拠だった。つまりはプリキュアやウィッチも慢心すると、ろくな目に遭わないのだ。のび太も射撃に自信はあるが、生来の臆病さが戦闘面ではいい方向に働くことが成功の秘訣である。ゴルゴも自分の性格を『うさぎのように臆病』と評しているので、世界トップレベルの暗殺者達が『臆病』であることで危機管理能力を備えているのは、のび太の勇ましさと少年時代の性格、私生活だけを切り取って批判している者には良い皮肉となる事実である。
「何事も慢心は駄目だってこった。異能はあくまで、その場で取れる手段が多いってだけだ」
他にも、超能力が魔法に拮抗する事が示される。また、科学の発達がウィッチが戦場で発揮できる能力を上回ったり、異世界の超技術が持ち込まれ、その結晶と言える超兵器『スーパーロボット』が根本的な戦局を動かしたというのは、B世界のウィッチ達には衝撃であった。『通常兵器は怪異には歯が立たないか、あるいは魔女の引き立て役』という認識を根本的に覆す光景。地形すら変える破壊力で自分達の世界より強力な怪異を一撃で粉砕する、一部の機体の見せた幾何学的飛行は核兵器すら無効化できるほどの再生能力がある怪異をも超える『機械仕掛けの神』がいる事を示していた。
『ストナァァァァァァ・サァァァァンシャァァァァイン!!』
一文字號の駆る真ゲッターロボの『ストナーサンシャイン』。その破壊力は一つの都市をクレーターに変えられるほどである。核兵器の開発が怪異への効果を疑問視され、計画が中止されたB世界の人間には『信じられない』破壊力である。そして、都市単位の大きさの怪異すら、有無を言わさずに一刀のもとに斬り伏せたゴッドマーズ。その力の強大さが否応なしに示される。怪異の巣を倒すのに、4、5年はかかることが501の事例で判明しているが、その間にウィッチの世代は二つほど変わる。つまり、比較的に短期間での世代交代のデメリットが同位国に金食い虫と認識された事がA世界でのウィッチ衰退の理由である。A世界での決戦にウィッチそのものは戦局に殆ど寄与しなかったのも大きく作用している。そして、兵器の急激な発達。ティーガーすら一撃でスクラップに変えられる火力の重戦車が走り回り、高度12000mを超重爆撃機が飛行する。それを迎撃するミサイルや高性能ジェット機。その映像が流され、絶句するウィッチ達。戦争の様相はすっかり変化しきっているのだ。
「そんな……こんなことになっているのなら……私たちが関われる余地なんて……」
リーネBと下原B、ジョセBなどのおっとりした性格の者たちは一様に表情を暗くする。ウィッチであるだけでは生き残れなくなった戦場、ウィッチの力を超えてくる兵器と人間、社会通念上の都合でウィッチと一緒くたにされていても、それとは違う『プリキュア』の力。自分達は関われる余地がないと口にする。だが、それでも芳佳Bは関わる意思を持つ目をしていた。芳佳Bは知っているのだから。この世界の自分がプリキュア戦士の転生である事を。そして、新たな生命をその自分が生んだのなら、その自分と家族を自分が守らなくてはならないという使命感を抱いている。芳佳はどこの世界でも、根本的に責任感の強い性格の人物なのだ。
――芳佳Bが責任感を新たにする一方で、幹部級の人員はA世界の状況を招いた一端はウィッチ達が他兵科に対して高慢に接した事への不満の蓄積であると言うことを見抜いていた。501でさえ、整備兵の不満が蓄積していた事での密告がもとで、二度目の査問が行われたのだから。黒江達が実権を握った後に整備兵の中堅を配置転換させたのは、その不満を表に出されて、自分達のユニットを整備不良に陥らせて『合法的に殺す』事を行う事を阻止するためであった。実質的に黒江達が実権を握った新501、それが合併した64Fでは、アフリカ(ストームウィッチーズ)の自由な空気が持ち込まれて定着したため、整備班との適切なコミュニケーションが図られ、自分でも機体の状態をある程度は把握する事が求められている。そこは64Fが扶桑陸軍航空隊を出自に持つことの表れである。なお、強化形態で飛行能力を持つ事が多いプリキュア達は基本的に自前の翼で飛ぶので、偽装の必要があったり、素体の姿を使うなどの特殊な事情がある者以外にはストライカーユニットは支給されていない。のぞみはその必要があるので、数ヶ月ごとに数回づつは飛行資格の維持のために錦の姿で飛行している。それはシャーリーたちも同様である。その分、広報部の嘘を扶桑において真実と認識させる補強材料になっているのも事実だった――
「疾風か?防空隊に配置されて二年だから、そろそろ転属したいだぁ?三年はいろ。そうすれば、お前の転属希望も通りやすくなるし、俺や姉貴の口添えも効きやすくなる。上官に不満があるのなら、言ってみろ。なんなら、俺が黒江先輩に言って、そいつをアリューシャンへ左遷させてやる。…分かった。圭子先輩に頼んで、ハチロクを回させてやっから、辛抱しろ」
この日、のぞみは錦の姿になっている時にその実妹の中島疾風からの電話の愚痴を聞いてやる。中島疾風は任官が教育制度変更前に間に合わず、工科学校に入れ直されて再教育された最初の世代のウィッチで、この時期にはRウィッチ化済み(1949年当時に19歳前後のため)である。姉と違い、基本的にサバサバしつつも、基本はのんびり屋の性格だが、不満ははっきり口にする。中島家の三女としての矜持であろう。のぞみは長姉の小鷹が事情を知りつつも、応援すると表明したことにより、一応は中島家に時々は顔を出したり、連絡を入れるようになった。疾風は次姉がプリキュア戦士になったことに喜び、任官後は頼る率が上がっている。のぞみは前世では一人っ子だったので、『上と下に姉妹がいる』生活は新鮮であったが、数年が経ったこの時期には慣れてきている。なお、声色はレントン・サーストン寄りの声色に調整している。
「ふー。妹から電話。時々、連絡してくるんだよなー」
電話が切れた途端にのぞみの容姿と声に戻し、一息つく。
「お前、声の切り替えもシームレスになってきたな」
「ま、先輩から特訓受けたし。その辺いいよね、シャーリーは。声色は変えなくても、喋り方変えるだけで演じ分けができてさ」
「演じ分けって自覚はないさ。昔や同位体の記憶を参考にしてるだけだしな。美雲さんの影武者はアルバイトだしよ。そのおかげで、あおいにライバル意識持たれたよ。ほら、あのガキ、音楽やってんだろ?」
「あー!前にいちかちゃんから聞いたよ、それ」
「あたしが未来世界で超人気の音楽グループのメインボーカル『ワルキューレ』のメインボーカルの影武者のバイトしてるのを、前にあいつに教えたのよ。そうしたら……」
『なにィ―――ッ!?響さん、アンタ。確か、本業はピアニストだったろ!?CDデビューしてる人気グループのボーカルの影武者のアルバイトぉ!?ちくしょぉぉぉう!!こっちはライブ・フェスとかで地道に頑張ってきたってのにぃ!!ちくしょぉぉぉう!!」
「って感じ。やたらとちくしょうを連呼されたぜ」
「あの子、えりかの系譜だよなー。青のプリキュアなのに、ちっともクールじゃないしさ」
「だよなー。あの感じはえりかだぜ。早く来てくれよ、あのバカ。りんが復帰早々にツッコミ役の重責で胃に穴が空いてんだから」
ガイアに転生していた来海えりかだが、ガイアがとある植民星との間で戦争を始めた煽りで一般人の渡航に長期的に制限がかかり、予定日の直前で頓挫。合法的には来れなくなった。(そのため、スカウトして連れてくる方法に切り替え、地球星間連邦としての法規に文を加える交渉中である)シャーリーが愚痴るように、『突然の急報』なのだ。
「その辺は外交がどうにかしてくれるさ。それであおいちゃんが?」
「あいつ、ロックバンドしてんだって。あたしは音楽のプリキュアだし、ちょっとはドヤ顔してぇだろ?」
「まさか、アンタ」
「その場にいたエレンやアコ、調、金剛(艦娘)を巻き込んで、『ワルキューレはとまらない』、『破滅の純情』、『LOVE! THUNDER GLOW』を披露してやったよ。決めゼリフもちゃんと決めてな」
――聞かせてあげる!女神の歌を――
シャーリーは後輩の立神あおい/キュアジェラートがロックバンドのボーカルをしていることを聞くと、キュアメロディの姿でワルキューレの楽曲を熱唱。その圧倒的パフォーマンスを見せつけた。未来世界で超人気の新進気鋭の音楽グループのメインボーカルの完コピを可能にする圧倒的パフォーマンスに、あおいは圧倒された。その衝撃であおいはとんでもないショックを受け、『ちくしょう』を連呼しまくり、シャーリーはドヤ顔を決めたわけだ。
「それを黒江さんに話したらよ、すげー笑い転げてさ。あおいにFireBomberを薦めてたぜ」
「オズマ少佐の功績だね、そりゃ」
「あったことあんのか?」
「ランカさんのライブの護衛をフェイトちゃんから頼まれた時に何度かね。ランカさんがめぐみちゃんに声が似てたのは驚いたね」
「そいつはすげぇや。そうか、それでめぐみに特訓させてたのか」
「本人はかなり困惑してたよ」
「ゆうこの……キュアハニーの役目だしな、本当なら」
この時点でも不在なプリキュアの一人である『大森ゆうこ/キュアハニー』はかなり歌が上手い。そのため、愛乃めぐみは自分が歌の特訓を受けさせられる時にかなり困惑していた事が語られる。コーラの瓶を持ちつつ、二人は飛行資格維持のための定期飛行を終えた事の報告書を新京にある統合参謀本部の現地庁舎の担当部署に提出。その帰りは地上の列車ルートになった。行きで使った隊の連絡機は現地部隊が所用で使用することになったからだ。二人は南洋諸島横断鉄道の駅に行き、その六番ホームにある64F基地のある地下都市行きの列車に乗り込む。地下都市に入る都合、使用される列車は本線に先立って電化されている。日本では疫病の影響で廃止される車内販売サービスも扶桑では健在であるため、二人は数時間に及ぶ行程の暇潰しに、おつまみやら、弁当を購入。飲み物を片手に、冷凍みかんを窓枠に置いて、如何にも『昭和の列車の旅らしい事』をするのだった。