ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第百七十二話「ショッカーライダーV3対三大ピンクプリキュア、そして…」

――ザンスカール帝国残党とジオン残党の共同攻撃はついにウィッチ世界にも及んだ。それを阻止すべく行動を起こした64F。B世界の統合戦闘航空団の二つはそれに同行したわけだが、予想以上の高速戦闘に対応が難しく、戦果はなかなか挙げられなかった。そして。歴代プリキュアの突破力はMS相手でも健在であり、ザンスカール帝国製のMSをスクラップに変えていく。だが、そう簡単に事は運ばず、ザンスカール帝国残党から志願して、バダンの手で『ショッカーライダー』に改造された個体が現れた。それもV3タイプのショッカーライダーに――

 

「アンタ、一人であたし達を相手どる気?」

 

「そうだ。ここから先はいかせんよ。貴様らと戦うために、私は仮面ライダーと同じ体を手に入れたのだ。お見せしよう」

 

その20代後半ほどのザンスカール帝国の元将校は軍服の上着を脱ぎ捨てる。その男に見覚えのあるデザインのベルトが現れる。それは…。

 

「まさか、そのベルトは!?」

 

「仮面ライダー達の根源は彼らが造った改造人間の型式。同型の改造人間くらい造られていても不思議ではなかろう?」

 

ニヤリと笑ったその男は風見志郎と同様の変身ポーズを取り、変身した。色調が暗くなり、各形状が現代風にリファインされているが、基本形状は『仮面ライダーV3』そのものだった。

 

「彼らの物言いで言えば、『ホッパーバージョン3』と言うべきだが、君たちからすれば、仮面ライダーV3とほぼ同じ姿と言うべきか?」

 

『ショッカーライダーV3』と呼ぶべきその男はその姿に違わぬ戦闘能力を見せた。一瞬でキュアウィンディの懐に飛び込み、『V3パンチ』をみぞおちに打ち込む。キュアウィンディはパンチの威力で数mほど吹き飛ばされ、更に打ち込まれた箇所の関係で悶絶寸前の大ダメージを負う。

 

「が……は……そん…!?」

 

「舞!?……くっ!」

 

「スプラッシュスターは片方さえ封じれば、必殺技は使えんそうだな?」

 

「どうして、それを!?」

 

「21世紀の頃のアニメを見れば、子供でもわかることだ」

 

「なら、その余裕ぶってる態度をぶっ飛ばしてやる!!」

 

キュアブライトは逆上し、ショッカーライダーV3に挑む。だが、全ての動きを見切られており、格闘攻撃は尽く空を切る。光弾も『V3バリア』で防がれ、ダメージを与えられずに終わる。

 

「嘘でしょ……?こっちの動きが見切られてる!?」

 

「君の能力は既に、このマトリック・アイで分析させてもらった。よって、君は私には歯は立たない」

 

仮面ライダー型改造人間は複眼が分析機能を備える事が多い。スペックに頼らない(というより、全てを知ったのは現役終了後という事情もあったが)戦い方を好む本物のV3である風見志郎はその機能を使った事は殆どないが、彼は活用する事でスプラッシュスターの二人を封殺してのけた。とはいえ、攻撃が通らないとはいえ、ショッカーV3相手に持ちこたえると言う点では、キュアブライトの熟練した戦闘のカンを裏づけている。

 

「そう簡単に問屋は卸さないよ!伊達に二代目プリキュアの看板を背負ってないんだから!」

 

そう啖呵を切るものの、精霊の力によるバリアを容易く破るショッカーV3の力は強大であった。アドラステアに一番最初に取り付いたスプラッシュスターの二人であるが、キュアウィンディはパンチで悶絶に陥ったため、キュアブライト単独で実質的に戦う羽目に陥った。そして。脇腹に回し蹴りが入れられる。ダメージは低減したものの、アドラステアの砲塔に叩きつけられる。激しい痛みで片膝をついてしまう。

 

「どうしたね、先程までの勢いは?」

 

「ど、どっかのバトル漫画みたいな台詞なんて言ってくれちゃって…!」

 

ショッカーV3が次なる動きを見せようとしたタイミングで、シャイニングドリームとパルテノンモードのキュアハートが到着する。

 

「ドリーム、ハート!」

 

「ゴメン、ちょっと突破に手間取っちゃって。大丈夫?」

 

「ウィンディをお願い!あたしは大丈夫だから!」

 

「威勢のいいことだ」

 

「やっぱり、組織の手はここまで…!」

 

ショッカーV3は仮面ライダーV3とほぼ同型の改造人間だが、風見志郎のそれより現代風のリファインがされている。カラーリングもオリジナルのV3より暗い色調になっているのもそうだが、より強化服然としたデザインになっている。最大の違いは手袋が金色であることか。

 

「こちらから行くぞ」

 

静かに彼は攻勢を開始する。プリキュア達は上位形態になっている者もいながら、彼の攻勢に瞬く間に防戦一方となる。仮面ライダー型の改造人間は風、熱などを自らのエネルギーに変換できる機能があるため、キュアウィンディの風は攻撃手段にならず、キュアドリームが得た炎も決定打にはならない。彼の持つ利点は彼のボディのオリジナルを持つ風見志郎が『プライドが高く、自らのボディのスペックに頼らない戦法の持ち主』だった故に、昭和ライダーと共闘してきたプリキュア達もV3のボディに秘められた改造人間としてのスペックを知らない事だった。そこを把握している故に、スペックとギミックを活用してプリキュアを退ける選択を取った。

 

『V3プロペラチョップ!』

 

まずはプロペラのように腕を高速回転させた上での手刀である。その威力は迂闊にその間合いに入ったキュアハートのコスチュームを容易く斬り裂くほどであり、キュアハートは防御の間すらなく肩口を斬られ、吹き飛ばされる。

 

「そんな、パルテノンモードの防御を上回るなんて!?」

 

キュアハートは思わず驚愕の叫びを挙げる。ドキドキプリキュア最強無比を誇るはずの形態の防御を容易く貫く攻撃力は自身の現役時のいかなる敵にもなかったからだ。

 

『V3サンダー!!』

 

追撃で100万ボルトの電圧を持つ『V3サンダー』が触覚から放たれる。キュアハートは防御を貫かれ、高圧電流に焼かれ、大ダメージを負ってしまう。

 

「うああああ!?」

 

「ハート!!……くっ!」

 

ドリームはハートを介抱し、バトンタッチしてショッカーV3と対峙し、拳をぶつけ合う。ドリームは100万ボルトに耐えられる肉体になっているからである。また、一号ライダーから聞いていた『V3・26の秘密』をとっさに思い出し、彼が展開する『V3バリア』をぶち破る方法を取る。

 

「アンタのそのバリアを破る方法はあるよ」

 

「ほう、活きが良い小娘だ」

 

「アンタのそのボディのオリジナルは一号ライダーと二号ライダーが造った。つまるところ、スペックはまるっとお見通しだよっ!」

 

意気揚々とポーズを決めつつ、啖呵を切る。一昔前(2000年代)に流行ったミステリードラマの主人公のキメ台詞をオマージュして。彼は仮面越しに苦笑し、ブライトとハートは『ちょっと古くない?』と言いたげだ。

 

「ねぇ、ドリーム。もしかして、あのドラマさ……見てた?」

 

「……うん。子供の頃に。それと、こまちさんが好きでさ…。」

 

ブライトとハートはその説明で納得した。ドリーム(のぞみ)はその人気ドラマを見ていたのだ。それとキュアミント(秋元こまち)が好きなドラマである事も明言する。

 

「あ、うん…。納得」

 

「二人共~!」

 

頷く二人。ガビーンと落ち込むドリーム。ドリームは気を取りなおし、黒江から教わって、この頃には自家薬籠中の物にした闘技を披露した。

 

『ライトニング・ボルト!!』

 

光速拳であるライトニングボルト。当然、100万ボルトどころの電圧ではない威力であるので、V3バリアは破られる。これを視認できる一瞬の予備動作中に回避行動を取れる人間はデューク東郷(ゴルゴ13)と青年期以降ののび太、その転生であるノビタダの三人だけだ。改造人間の反応速度でも避ける間もない、雷を帯びた拳。ストロンガーが『栄光の七人ライダー』で最強の攻撃力を持つ理由もここにある。

 

「雷か…。いい線をいっている」

 

立ち上げるショッカーV3。ライトニングボルトを食らってもさしたるダメージを負っていないようだが、ライトニングボルトの電流が奔ったためか、マフラーをアースにして、体に残留した電気エネルギーを逃している様子が見て取れた。

 

 

 

「今のは小手調べさ」

 

「そっか、あのバリアには耐電限界があるんだね!」

 

「そうだよ、ハート。前に本郷さん…ライダー一号から話を聞いてたの思い出したんだ」

 

「このボディの事を聞いたか」

 

「そうさ。その体はゲルショッカーの末期からデストロンが活動を開始するまでの時期に設計された『ホッパータイプ・バージョンⅢ』が出どころ。一号と二号はその基本設計を使う事で風見さんをアンタのボディのオリジナル……『仮面ライダーV3』に改造した。アンタはその基本設計を、後年に組織がリファインする事で完成したボディに改造された……ってところかな?」

 

「御名答」

 

「やっぱりそうか。組織は三号の他にも仮面ライダータイプを生産しに入ったんだな」

 

デザインの方向性は仮面ライダー一号の最強形態『ネオ一号』の装甲に隠された『素体』と同様の強化服然としたものであること、V3の基本は崩さずに現代風にアレンジされている事から、組織も仮面ライダーも同じ考えでリファインを行った事をここで悟ったキュアドリーム。

 

「うっ…」

 

「舞、大丈夫?」

 

「咲…。ごめんなさい、まさか…いきなり悶絶させられるなんて…」

 

「お目覚めか」

 

彼の淡々とした感想。

 

「ドリーム…!」

 

「分かってるさ、ウィンディ。こいつは強敵だ……何せ、風見さんと同じボディを持つんだからね」

 

目覚めてすぐに、後輩へ注意を促すウィンディ。仲間思いである。ドリームは頷くと、その一言を言う。『敵は仮面ライダーV3と同型のボディを持つホッパータイプの改造人間』であると。ホッパータイプとは『バッタやトンボの能力を与えられた改造人間』の正式な組織での型式名であると同時に、仮面ライダーと同型で、彼らと同種の能力を持つ改造人間を『本物と区別するために』呼ぶ呼称でもあった。元々、仮面ライダーは組織が生み出した改造人間。彼らが強力な改造人間である仮面ライダーと同型の改造人間を一体も生産しないはずはないのだ。

 

「伊達に、ザンスカール在りし日に将来を嘱望されてはいなかったと言っておこう。だから、改造手術にも適合した。とはいえ、もはや『マリア主義』などは信じておらんがね」

 

「なら、なんでこの世界に来て、争いをばらまくの!?」

 

「我々は主義主張で飯を食ってはおらん。灰になって燃え尽きている。なら、その上で何かを燃やしつくした上で未来を選ぶのも良かろう?」

 

「ぬかせ!!あんたら、神にでもなったつもり!?思い上がらないで!」

 

あまりに身勝手で傲慢極まる発言にキュアハートも激昂する。

 

「神、か……愛されてはいるつもりだがね」

 

「やっぱり、アンタ…、BADANに……!」

 

「そうだと言ったら?」

 

「ぶちのめすっ!」

 

「……『ホッパーボディ』は神降ろしの器と知らぬ訳でもあるまい?」

 

「あいにく、あたしらは神を超え、悪魔も倒すために宿命を背負った。それがなんだっての!ブライト、ハート。こりゃ……、久しぶりに大仕事になりそうだよ…!」

 

「そうだね……。現役ん時より強いプリキュアが寄ってたかってってのは癪だけど……」

 

「相手が仮面ライダーと同じボディの改造人間ってんじゃ……。そりゃ、相手にとって不足はないけど、ラブリーもここに連れてくるべきだったね…」

 

「向こうの芳佳たちの援護に回したからね…!参った」

 

ぼやきあう三人。仮面ライダーと同様の姿と能力を持つ敵が相手。予想だにしない強敵である。三人は仲間内でも『戦闘に長ける』と評判である。今回はスプラッシュスターの本格的初陣であるはずが、彼の登場で旗色が変わってしまった。そう実感させるほどの強者である。

 

 

「ボヤいている余裕があるのかね?」

 

改めて、彼は第一期プリキュアの雄であるキュアブライト、キュアドリーム、『最強の第二期プリキュア』であるキュアハートをまとめて相手取り、風見志郎と同様のファイティングポーズを取ってみせる。自分も『V3』である事を示すためだ。三人はダメージを負い、まだ満足に動けないキュアウィンディを庇う格好でだが、同時に構える。三人はアイコンタクトを取り合い、その数秒後、堰を切ったように、一斉に襲いかかる。傍からすれば、どちらが味方で敵だかわからない構図だが、ショッカーライダーV3には、三人にやむなくその戦法を取らせる『ポテンシャルがある』のだ。歴代ピンクプリキュアでも『五指に入る』強者とされる三人と仮面ライダーの切り込み隊長兼目立ちたがり屋』として名を馳せた仮面ライダーV3とほぼ同型のボディを有する『ホッパータイプの改造人間』。彼との対峙と戦闘は『物事はそう問屋がおろさないのだ』という出来事の証明であった。また、彼は祖国のリガ・ミリティアへの敗北でかつての祖国の掲げた大義名分『マリア主義』に失望している事を垣間見せた。亡国の軍隊故の哀愁を彼らも持っている。強烈なアイデンティティに支えられていたジオン系勢力と違い、ザンスカール帝国は象徴と指導部が失われた途端に瓦解してしまうものであった。それに失望したザンスカール帝国の軍人は多い。彼もその一人。ナチス・ドイツ残党であるバダンに取り入り、ショッカーライダーになった理由もそれだ。ザンスカール帝国の大義名分を信じ、敗戦で否定された後に『同じ境遇である』ナチス・ドイツの残党に取り入る。なんとも哀しくもあり、ある意味では自業自得でもある経緯であった。

 

 

 

 

 

 

 

――バダン。『神に愛されし者』を意味する造語だが、いつ頃から使われ始めたかは定かでない。一説によれば、神も仏もないとされたスターリングラード攻防戦の頃とされるが、大戦末期の『第三帝国の黄昏』の頃にヒトラーが信奉しだした『ラストバタリオン』の大元となる思想ともされる。ナチス・ドイツはそれを実現させ、遂には遥か後世にも影響を残している。ジオン残党が地下勢力化した動機の一つが『ナチス・ドイツがしていたから』であるように、ナチス・ドイツはジオン公国に極めて大きな影響を与えたと言える。彼らはジオンの源流となった国の一つである。(それは彼らと手を組んだ大日本帝国にも言えるが)彼らの持つ秘密兵器の一つが『フリードリヒ・デア・グロッセ』。ビスマルク級戦艦の強化型であるH級戦艦をベースにラ級戦艦に仕立て上げた大戦艦である。その主砲は50cm砲級である事が予測されており、ラ號とその姉妹たちの性能強化が行われる理由でもある――

 

 

 

 

――未来世界のある地――

 

「大元帥、次はいかなる術をお使いになられるので?」

 

嫌味ったらしく喋るジェネラルシャドウ。デルザー軍団の幹部である。その彼が敬語を一応使うのは。

 

「インペロを使う」

 

「ほう。二次大戦で裏切る寸前に回収できたパーツと船体を組み上げたというリットリオ級を?イタリアのパスタ好き共の作っていた艦を使うというので?」

 

「本当はフランスのガスコーニュを使いたいが、まだ修理が終わらんのでな。無いよりはマシであろう?」

 

マシーン大元帥。デルザー軍団の長であるが、些かの間抜け感が否めないミスが多い上、煽りに弱い面がある。そこを内心でジェネラルシャドウは小馬鹿にしている。デルザー軍団から見ても、リットリオ級は新戦艦では二流の扱いなのが分かる。イタリア(ロマーニャ/ヴェネツィア)の造船官が聞いたら、顔を真赤にすること請け合いだ。ガスコーニュの代打でしか駆り出されないあたり、組織での扱いの軽さが伺えた。

 

「イタリア艦は乗り手次第で強力な戦力になる。戦後、伊達に砲のトップメーカーの一角を抱えては居ないぞ、シャドウ」

 

「ほう。ローマをフリッツXで失うような間抜け共にしては…」

 

シャドウはイタリアを見下しているらしいが、彼も生まれつきの魔人ではなく、元はある時代の魔導師で、いつしか魔道に落ち、首領に見いだされ、改造されたわけだ。元・人間であるので、純粋な魔人の狼長官とは反りが合わないのも有名だが、人間だった時代にローマで迫害にあったらしく、イタリアをやたら嫌う。そのわずかながらの人間臭さが首領のお気に入りである所以だ。

 

「ライダーとプリキュアの小娘共にしてやられた後、あの男に嫌味を言われおったのでな」

 

「やれやれ…」

 

黒江を前世で半死半生に追いやった黒井響一郎/仮面ライダー三号。組織でもかなり上位の地位にいるのか、デルザー軍団と同格の扱いであった。仮面ライダー四号共々、組織の上位の階級にいる彼に遠回しに嫌味を言われたのがむかっ腹が立った事を気にするという、俗っぽい姿を見せるマシーン大元帥。若干の小物臭さが漂うのは、そうしたコミカルな一面のせいだろう。彼が出陣で率いることになる『インペロ』とはいかなる艦か?説明せねばならないだろう。

 

 

 

――インペロとは、ウィッチ世界でも存在する戦艦だが、大抵の世界では建造が中止されたリットリオ級戦艦の一つである。(ジェネラルシャドウらもそう認識している)カタログスペックは悪くないが、航続距離が短すぎるのが難点として、平時では真っ先に処分された新戦艦になったリットリオ級。とは言え、他国の40cm砲に匹敵する火力の38cm砲はラ級戦艦としては悪くはなく、その総合性能は列強でも中程度に入る。日本とドイツの艦の主砲が他国より大口径なのは、存在そのものに国の起死回生を賭けていたからで、それ以外は実験艦としての体裁が強い。とはいえ、アメリカがリバティを計画したように、対抗上の理由で二番艦が別級になるケースもないわけではない。インペロは改ローマ級ともされるため、リットリオの改善型のはずだが、ジェネラルシャドウやマシーン大元帥からは二軍扱いなのは、彼らの先入感とローマの沈没が由来であるのは言うまでもなく、艦娘・ローマは後に『バカにしてる!』と憤慨したという――

 

 

 

 

 

 

――ドックで出撃準備に入る、旧・イタリア王国海軍戦艦『インペロ』。組織もこれ見よがしにその海軍旗を掲げさすなど、旧枢軸国の怨念が込められていた。このように、超兵器であるラ級戦艦の悪用がナチス・ドイツ残党の手で行われている事を知らされた日本は防衛省内部から『対抗手段を扶桑は持つのか』と懸念したが、扶桑には轟天と廻天がある。扶桑は1949年が二月になったタイミングで『有志が持ち込んだ『旧日本軍が秘匿していたラ號の同型艦の設計図を使い、完成していたパーツを組み上げた』という形で公表した。宇宙戦艦ヤマトの部品で改修した上で――

 

 

 

 

 

 

――2021年 年頭――

 

「何故、それを我々に早く通知しなかったのですか」

 

「貴方方に早い段階で通知すれば、戦艦を造る暇があれば、資材を空母に回せだの、資金を福利厚生費に回せだの言う輩が出てくる。だから、初号艦が完成した後の段階で通知する事にしたのです」

 

バツの悪い思いの日本側。ラ號の接収に失敗して10年ほどが経過していた時期に扶桑が准同型艦を建造した事が通告され、ダイ・アナザー・デイの意趣返しをされた事に気がついた。空母機動部隊の近代化に手間取る扶桑は手っ取り早い戦力強化に宇宙戦艦を使ったのだ。

 

「どこで運用するのです」

 

「空軍の最精鋭である64Fが母艦代わりに運用しています。彼女らは超文明で宇宙戦艦を操艦する訓練を積んでおります。貴方方のほうの政治屋連中が従来兵器の保有に制限を設けようとしている以上、こうした手段は必要でしょう?」

 

「だからといって、宇宙戦艦になど…」

 

「そちらの前首相が空自に宇宙を管轄させた理由の一つですよ」

 

扶桑は戦時下であるので、日本側への通告は事後に行うケースが増大していた。ダイ・アナザー・デイでの混乱の意趣返しであった。歴代プリキュアを抱えていたり、歴代の仮面ライダーと協力関係にある64Fにも相応のバックアップ体制が必要なのだ。米軍がかなりの兵器を卸した事を知った防衛装備庁と防衛省は自分達も卸そうとしたが、政治屋の『シビリアンコントロール』名目での保有制限を扶桑に課そうとする動きに圧されていた。日本の政治家は『平時の頭』で統制しようとするので、戦時下の状況下の扶桑の軍人から信用されていなかった。ダイ・アナザー・デイ従軍記章と扶桑海事変従軍記章の創設を認めるかどうか、その授与基準で、かなり議論があったからでもある。(日本では金鵄勲章は廃止されて久しいので、書類上は危険業務従事者叙勲の扱いになった)

 

「轟天号と廻天号はその計画で生み出されたのです。書類上は貴方方の先祖たちが計画していた大和型戦艦の第二生産ロットとしていますが」

 

「何故です」

 

「我々が造ったと言っても、政治屋は本気にせんでしょう?」

 

駐在武官はそういう。日本への気遣いとして、二番艦の表記を『回天』ではなく、『廻天』に変えたと。

 

「本当は回天で内定していたのですが、名前がそちらでの人間魚雷とかぶってしまった。それを考慮したのです。廻天は轟天から多くが改良されているのですが、これ以上は機密ですので…」

 

廻天には試作武装である『プロトンサンダー』が砲塔型の熱戦砲の代わりに搭載されている。轟天と違い、攻撃重視の設計になっているからだ。なお、ドリル内蔵冷凍砲は維持されているが、これは伝統だからだ。

 

「三番艦はあるので?」

 

「空母との兼ね合いもありますので、今のところは。あと二隻、いや、四隻は欲しいですが」

 

「他国向けのはどうやって予算を?」

 

「注文した国々の負担ですよ。オラーシャ向けは貴方方の妨害でしばらく死蔵ですが」

 

「ロシア向けは不味いですから。いくら学園都市が弱めたとはいえ…信用ならん国ですから」

 

「キングス・ユニオン向けは卸して構わんですな?」

 

「あそこは原子力潜水艦閥が妨害工作していますよ?」

 

「我々にとって、潜水艦に原子力は過剰性能ですがね…」

 

キングス・ユニオン向けはクイーン・エリザベスⅡ級ベースにした『コンカラー』級という触れ込みで購入契約が結ばれている。大和型戦艦とほぼ同等の火力は英系戦艦では最強だからだ。英国は単艦性能を重視しない造りであるから……と識者は小馬鹿にするが、実際の英国海軍(ブリタニア海軍)もここ最近の戦艦の性能にコンプレックスがあるのである。特にキングジョージⅤ世(二代)級の主砲口径が小さいことは大和型戦艦の登場以後は特にチャーチルのコンプレックスを刺激した。とはいえ、ブリタニアは戦争毎に戦闘艦を潰してきたため、平時の運用性を重視する戦後英国と反りが合わないところがある。それが戦艦であろうと。そのため、ブリタニアはキングジョージⅤ世級をダイ・アナザー・デイ後、すぐに退役させ、ライオン級以降の戦艦を維持する事で財政の改善を図っている。キングジョージⅤ世級は記念艦になったキングジョージⅤ世以外は解体、もしくはそれまでネルソン級が在籍していた予備艦隊に転属していった。映画撮影の需要があるため、日本に置かれた長門同様に航行と主砲の稼働は可能な状態で維持される事になり、キングジョージⅤ世は史実のヴァンガードが担った役目である『王室用ヨット』の役目を退役までの六年ほど務める。英国も戦艦を航行可能な状態で使える事はパフォーマンス的にも役に立つため、これを受け入れ、1949年度にはその準備中である。クイーン・エリザベスⅡ級の三隻は予算名目上はプリンス・オブ・ウェールズなどの代艦で、ロマーニャもリットリオの代艦名目でインペロを調達している。

 

「1930年代に造った戦艦がそろそろ老朽化する。そこで我々は超文明に協力を仰ぎ、宇宙戦艦を調達することにしたのです。通常の戦艦と別枠で」

 

「なぜ、共同で?」

 

「財政難ですよ、我々の世界の列強は。大和型戦艦のせいで陳腐化した戦艦を変えたいのですよ」

 

「なぜ、そこまで?」

 

「戦艦は貴方方の時代でいう原子力潜水艦と同じなのです。国威の発露であり、希望なのです。ガリアがボコボコにされた後もリシュリューとジャン・バールを手放さなかったように」

 

「ガリアはその割に計画に噛んでいないようですが…?」

 

「ペリーヌ・クロステルマン議員が阻止したのです。復興第一だと。卿は度々暗殺未遂に遭ってますがね」

 

ペリーヌAは実は戦間期だけで7回も王党派、ド・ゴール派の過激派、共和右派、ボナパルティズム信奉者などの手で暗殺されそうになっている。ペリーヌ自身は暗殺を恐れず、むしろ、暗殺者を返り討ちにしそうな性格であるが、太平洋戦線に紅城トワとして参戦したのは、その政治的暗闘で自身の運営する孤児院に類が及ぶのを恐れたからだ。ちなみに、その孤児院に出資してくれたのがルーデルであり、ルーデルは魔弾隊になるまでの数年は孤児院の運営とスノースポーツで生計を立てており、エーリカに『熱でもあるの?』と真顔で言われる始末だ。

 

「それで、我々は連合して購入したのです。向こう側も大口注文なので、喜々として応じてくれましてな」

 

「しかし、あのペリーヌ・クロステルマン中尉が議員に?」

 

「卿はかつての貴族でもあります。孤児院の運営も行う慈善家ですよ。彼女自身も身寄りがないのですが、ガリアから離れなかったのです」

 

「見上げた愛国心だ」

 

「だからこそ、暗殺されそうになるのです。ガリアは今、ドゴーリスト達の天下ですから。まぁ、アストルフォ氏やジャンヌ・ダルク女史は冷ややかですが」

 

「ジャンヌ・ダルク…。無学の田舎娘だった彼女が今や聖人ですからな」

 

ジャンヌは転生後も政治には関わりは持たず、『無学』と謙遜しつつ、地球連邦軍でルナマリア・ホークの衣鉢を継いで、第二の人生を謳歌している。明堂院いつきの法的後見人は実は彼女夫妻だ。(素体の関係上)なお、シン・アスカはデザリアム戦役の後にロンド・ベルに配属され、歴代ガンダム乗り達の使いっぱしりにされているが、ステラ・ルーシェが同位体で、しかもキュアサンシャインになる形で生存していることに幸福を感じており、コズミック・イラ世界には戻る気はなく、未来世界で暮らしている。この時期には20歳前後であり、精神的に安定したためか、戦争に巻き込まれる前の人間性を多少取り戻し、読書と映画鑑賞が趣味になっている。土方経験もあるので、隊ではモビルワーカーにもよく乗せられていたりしている。経験上、どうしてもいつき(ステラ)には過保護気味なので、いつきはそこは困っているものの、定期的に連絡は入れている。そこはステラ・ルーシェの要素が残っていると言えよう。

 

 

「日本向けの広報として、ネットに載せようと広報部が検討中の写真です」

 

「これは…」

 

「ススキヶ原で撮影された一枚です」

 

それは軍が日本向けの募集チラシとして配ろうとする中で撮られたもので、宮藤芳佳、ゲルトルート・バルクホルンがキュアドリーム、キュアフェリーチェ、キュアサンシャイン、キュアミューズと共に何気なく駅前を歩いている写真である。バルクホルンも穏やかな表情で、どことなく幸せそうである。キャッチコピーは検討中と駐在武官は言う。

 

「貴方方はこれほどの人員を…?」

 

「ええ。バルクホルン中佐はヘッドハンティングに応じてくれまして。今では我が64Fの幹部です。楽しそうでしょう?」

 

「よろしいのですか」

 

「今どき、昔の『撃ちてしやまん』など流行りませんからな」

 

自虐も入る駐在武官。扶桑はこの頃には日本各地でリクルート活動を始めており、写真も募集ポスターの検討用資料だ。歴代プリキュアたちへのフェミニズム的批判に対応するためでもある。第一期プリキュアと第三期プリキュアにジェネレーションギャップがあることも考えると、第一期プリキュアはむしろ広報でも使いやすい存在である。仮面ライダー達がポスターなどの出演を控えているという事情もあり、プリキュア達は広報活動にも駆り出されている。

 

「色々と資料は預かって来ております」

 

彼らはいつしか広報業務に熱を上げる。後日、バルクホルンが許可を出したため、商店街の一枚は日本の高校や大学、職業案内所向けのポスターに採用され、最初に世に出た。ポスターには何パターンかあり、ダイ・アナザー・デイ中に智子がショルダースライサーですれ違いざまに敵機を両断する際のショット、プリキュア枠でドリームがエターニティ形態でエンペラーソードを有名なポーズで構えているもの、紅蓮聖天八極式の前でポーズを決めるシャーリーというパターンもあった。エターニティドリームはアニメには存在しない強化形態なので、プリキュア枠では最も話題をさらった一つ。もう一つは朝比奈みらいがSガンダムの駐機している格納庫でツナギ姿で整備兵と話し合うもの、というものであった。Sガンダムというマニア垂涎の機体と、ツナギ姿の朝比奈みらいというミスマッチのような組み合わせはネットオークションやフリマアプリで高値で取引され、智子のものの倍の値段で取引されており、智子を悔しがらせたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

――ある日のノビスケの小学校――

 

「いいなー、ノビスケのところのお姉ちゃんたち。本当にプリキュアなんだもんなぁ…」

 

のび太の卒業した小学校のある授業の合間。ジャイアンの息子『ヤサシ』は父親のつてで入手できたみらいのポスター(ミニサイズ)をノートに貼って眺めることを励みにしていた。彼はジャイアンの子ということで、のび太の時代からいる古参の教師には何かと気弱さを気にされがちで、本人も母親似のおっとりした性格の自分が恨めしいと思うようになっていた。この世代の『子供』たちの中でののび太の役回りの殆どは彼が担っていた。声や体格も同年代の頃のジャイアンと瓜二つなのに、気弱である事から、クラスメートにいじめられがちの日々で、ガキ大将のノビスケがそれを庇うといった、かつてと逆の位置づけだった。ノビスケはキュアルージュとキュアマーチの影響でサッカー少年になっており、最近は城茂/仮面ライダーストロンガーの影響でアメフトにも手を出すなど、のび太と真逆のスポーツ三昧の日々である。ヤサシはプリキュア達と既に知己であるが、キュアミラクル/朝比奈みらいを一番に慕っている。隣町のガキ大将にいじめられていたのを助けてくれたからだと、ヤサシはいう。要は彼にとっての初恋なわけで、みらいは相当に仲間たちに茶化されている。出木杉の息子の英世は自身が優秀なためか、キュアレモネードやキュアロゼッタを慕っているとの事で、2021年にはプリキュア達はかなり地域に馴染んでいる。この時代、出木杉英才は職場結婚した妻と共に宇宙開発に勤しんでおり、アメリカ人の妻を娶り、息子の英世はハーフにあたる。また、ひみつ道具の元になった技術のいくつかは長じた彼が生み出したという。

 

「おい、ジャイチビ。ねーちゃん達の写真欲しいんだったら、少しなら分けてくれるって言ってたから取りに来いよ、その代わり、日曜日のサッカー付き合え!」

 

「いいのー?」

 

「調おねーちゃんの弁当も食えるぞ。スネ樹とスネ太郎にも言っとけよ」

 

ノビスケは横暴なところはあるが、ジャイアンと違い、アメとムチを使い分ける。調やことはがアメとムチで父親を動かすのを見て育った関係だ。プリキュアと知己である関係で、ノビスケは女子からもかなり人気であり、後の妻になる『ゆかり』もこの当時は彼の取り巻きの女子の一人であった。なお、キュアグレースになった立花響もリコの代わりにミラクルと一緒に学校を訪れた事があるが、この時点での現行プリキュアなので、彼女自身が驚いたという。

 

「今頃、職員室じゃ、若い女の先生達が、今日はどのプリキュアかしらーなんて言ってんだろうなぁ」

 

「ノビスケのところも大変だよね、共働きでさ」

 

「親父が俺くらいの頃とは違うし、親父もよく留守にするから、調おねーちゃんがよく相手をしてくれたよ」

 

調はノビスケに敬愛されている。留守がちの両親に代わって相手をしてくれ、よちよち歩きの頃はよく散歩に連れていってくれたこともある。調もSONGを抜けた後の居場所を見出し、ノビスケを育てた事から、この頃にはベビーシッターの資格を取得しており、ヴィヴィオの面倒も見ている。これはなのはもフェイトも、仕事の都合で子育てが『下手』だったからで、アリシア(花咲つぼみ)と交代でヴィヴィオを見ている。

 

「あのおねーちゃん、何歳なの?」

 

「女に年齢聞くのは失礼だぞ、ジャイチビ。親父が俺たちよりちょっと上くらいの頃に来たはずだから、もういい歳のはずだけど」

 

調は表向き、2000年代の内に大学も出ているので、2021年には若く見積もっても30後半の公算である。歳を取らなくなっているが、表向きの年齢は気にしていた。

 

「そうだよねぇ。とーちゃんの昔の写真に今と変わんない姿で写ってるし…」

 

「昔の時代劇でもいたろ?数十年も変わんない人。そういうもんだって思えよ」

 

そこに気がつく二人。とはいえ、美人は歳を取らないという格言もあるにはある。そういうことにしておくのだ。プリキュア達はいくらでも誤魔化しようはあるが、調はあまりない。とはいえ、ノビスケが『真実』を知るのは、彼が思春期を迎える15歳を過ぎてからで、野比家当主の座を継ぐのが確定した後のことだ。この頃はことはが叔母ということも知らない純真な子供。ことは自身が『叔母さん呼ばわり』を嫌がったのもあり、15歳を超えてから知らせることにしたのだ。こうして、ノビスケの代を皮切りに、二人の事を子供が15歳を超えたら、関係を知らせる事が野比家の恒例行事になっていく。調はセワシの父の代で一旦は離れるが、セワシの更に曾孫である『ノビタダ』に仕えることになり、野比家のハウスキーパーに落ち着く。この頃はその過渡期である。ことはも、神になった同位体と違う方向の存在となり、世界を守る事になった事を、ある時に別の自分たち……『魔法つかいプリキュア』に告げるという不思議な出来事に遭遇する。その時にことはは自分に同位体がいる事を知るのである。

 

「日曜日だね?」

 

「そうだ。お前のとーちゃんにも言っといてやるから」

 

ノビスケはこういうお膳立てが上手い。父と母が仕事で準備魔であるためだろう。こうした会話がこの時代における野比・剛田・骨川の三家の子供たちの関係性であった。

 

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