――結局、扶桑とカールスラントは明暗が分かれた。扶桑はブリタニアとリベリオンの後押しで『次代の超大国』へ変貌し始め、カールスラントは軍事的権威の凋落もあり、国家そのものが急激に衰えていった。軍事国家化していた故の衰退であった。ドイツは思った以上の混乱が起こったことに困惑し、結局は莫大な資金援助をする羽目になる他、NATO内で針の筵状態に陥った。『自分達はカールスラント国民の本土奪還の悲願を邪魔するつもりはなかった。カールスラント国家の軍事国家化を阻止したかっただけなんだ!!』という言い訳でしかない声明を出しつつ、国土復興の資金援助を斡旋した。自分達に非があるのは明らかだからだ。同時期、ガリアでも国土復興至上主義的な風潮に不満が噴出しだしたため、ペリーヌも国土復興一辺倒の姿勢を改め、娯楽イベントの開催を容認した。予想以上に国土復興に時間がかかることがわかったのと、一般国民に癒やしが必要である事を理解したためである。だが、この間にガリアの牧場から名馬の多くが諸外国へ流出していた。1949年度に開催された凱旋門賞は、扶桑の資産家に引き取られ、その庇護下で保護されていた『ガリアきっての名馬』と後世に讃えられるタンティエーム号が制し、その翌年も勝利するという事態が起こった。この問題はガリアの競馬界を揺るがし、後にその子であり、代表産駒となる『マッチ』、『レルコ』、『ルリアンス』はガリア政府が高値で買い取り、ガリア競馬界の復興のトリガーとした。このような現象はガリア政府の組織的疎開の失敗が原因であるため、統一後のガリア政府は文化イベントの大規模開催で復興アピールすることに躍起になった。ガリアはかつての混乱期がそうであるように、次第に民主共和制の負の側面が凝縮されたような有様になり、第四共和制は崩壊へ向かい、ド・ゴール主導の第五共和制へ移行する。皮肉なことに、ド・ゴールは敗北を『自らの一派が主導権を握る千載一遇の好機』としたので、意外なしぶとさを見せた――
――扶桑は日本の左派による妨害工作を乗り越え、1949年初夏の段階で戦時体制に全面的に移行。ゲリラ攻撃が軍隊の戦略とされた。ゲリラコマンドへの傾倒には批判も多かったが、正面兵力では絶対に数で勝てないため、ゲリラコマンドと、基地に立てこもっての防衛が最善とされた。そのため、陸軍の間で不満が生じているのも事実であった。少数で多数を返り討ちにせよという無茶な指令が常態化しているため、今度は正規戦に必要な兵器数の確保に政治家が消極的になるという問題がのしかかった。次々と襲いかかる難題に、扶桑軍は苦悩する。だが、朗報もある。64Fが各所の援助を受けつつ、戦線を支えていたからだ。その過程で『64Fとその協力関係の勢力が他の勢力と対等な立場で話し合うために、デモンストレーションで力を見せる』事も多く行われた。『力には力だ』ということである。同位体同士でも、能力に大きな差異が生ずる場合が多く、デモンストレーションは有効であった――
――調Aは全体的に近接戦闘に成長のパラメータを割り振ったため、以前の名残りは『ギアの展開時にツインテールの髪を覆う装甲』と、『ローラーを使っての高速移動』のみとなっている。格闘では『蹴り技』を用いるようになっているが、それ以外の攻撃も可能である――
「廬山龍飛翔!!」
「!」
傍目からすれば、龍の形をした何かが貫くように見えるだろう『廬山龍飛翔』。この時は衝撃波として放った。シンフォギアのバリアフィールドをも貫く(アンダーウェアなどには損傷なしでダメージを与えた)それは響には未知の結果をもたらした。
「なに……何かが通り抜けたと思ったら、いきなり……!?」
「たぶん、貴方には何がどうなってるか分からないでしょうね」
「それならッ!」
「タフですね。普通は今ので足腰立たなくなるんですが」
「どりゃあっ!!」
響Dは怯まず、ジャッキアップとブースターで勢いをつけた拳をぶつける。調Aはそれを真っ向から受け止める。片腕だけで。
「なかなかの一撃ですね、さすがは」
腕と背中のブースターの推進力をものともせず、逆に掴み上げる。
「大・雪・山おろぉーーし!」
そこから大雪山おろしでぶん投げる。
「貴方の持ち味は拳での攻撃とその派生。それと、タフネス。そこはどこでも同じなようなので、対策は立ててますよ?それに、私も……鍛えたんですよ?」
ニヤリと微笑うと、腕のパーツが送風機状に変形する。
「えぇ!?う、腕が……扇風機みたいに…」
「いやいやいや、あなたもしてましたよね?とりあえず……ダブルブリザァァド!!」
今度は竜巻で抵抗できずに巻き上げられる。竜巻から放り出され、落下する一瞬。
『必殺・烈風せぇぇいげぇんづきぃぃぃッ!!』
闘将ダイモスの必殺技『烈風正拳突き』。この時は間髪入れずに追撃するため、アッパーカットを土手っ腹に叩き込んだ。パワーアップしている調の全力が叩き込まれたため、態勢を立て直せず、そのままきりもみ回転しながら、地面に叩きつけられた。
「……嘘…………!?」
立ち上がろうとするが、足がふらついて尻餅をついてしまう。再度、立ち上がろうとするが、力が入らない。
「足に……足に力がはいら……!?」
「全力を打ち込みましたからね。普通は戦えなくなりますよ」
「まるで……師匠の攻撃くらったみたいだ……ッ!こんな重いなんて…!」
響Dは地面に這いつくばる形になった。全力の烈風正拳突きを食らい、立とうともがくが、体が言うことを聞かないのか、崩れ落ちないように支えるのが精一杯であった。
「どうして、ここまで強くなったの?」
「色々と経験したんですよ。異世界にいる内に。酒に酔った事ありますし、向こうで一緒に戦った子のスパーリング相手をしてた時期もあるんで。帰ってからも、仕事の関係で鍛えてますし」
背丈以外は自身のDと大差ない見かけの調だが、古代ベルカ滞在中には『オリヴィエ・ゼーゲブレヒト(聖王)の護衛に選ばれ、古代ベルカの騎士としての従軍経験がある。その頃にオリヴィエのスパーリング相手をしていたため、格闘の心得はその時期に培われた。その際に攻撃への耐久力はつけたが、素では『常人よりはマシ』程度。そこは主のクローン体である『ヴィヴィオ』と共通する。そのため、基本的に『相手に隙を与えず、速攻で片を付けるスタイル』であると言える。幼少期、アメリカで拉致されていた時点で一定の『訓練』を積んでいたとはいえ、それがもとで少食になっていたため、それを改善し、騎士として仕事になるくらいのタフさを持つには、年単位の時間を費やした。プリキュアやスーパーヒーローに伍して戦えるだけの耐久力を得るのに更に時間を要したので、合計で20年近くの時間は鍛錬に費やしたことになる。
「それに、私たちがアニメとして存在している世界だと、予め対策を立てられてる場合が多いんですよ。それに対抗するためもあるんです」
「そんな事あるの?」
「多いですよ?私は切ちゃんと分断すれば、ギアのフルポテンシャルは出せない事はバレバレですから。ギアを使ってるのは、身体保護が半分以上になりましたね」
苦笑交じりに明言する。自分のギアはイガリマとの同時運用で、初めてフルポテンシャルを発揮する事は百も承知なので、それに頼らない戦い方を会得していったことを。また、『覚醒』でキューティーハニーのような空中元素固定能力を得たので、武器には事欠かなくなったとも。
「まぁ、武器には事欠かなくなりましたけど」
武器を自前で用意できるようになった事を示すため、ギアとは関連性のない『天空剣』を召喚する。天空剣はボルテスVの必殺武器であり、超電磁フィールドと刃を併用することで大抵のものを叩き切れる。(ただし、『限度』はあり、マジンカイザー系列の超合金ニューZαなど、超電磁フィールドでの分子構造の寸断を寄せ付けない性質の金属は切れない。だが、その性質上、怪異にはたいへん有効である)
「え、剣!?」
「言っときますけど、アームドギアじゃないものですよ」
アームドギアはヨーヨーのままであると明言しつつも、ギアのスペックに頼らない意思として、敢えて使わない事を示す。多くの場合、自分一人では戦力として見られないため、そのことへの『反逆の意思』として。
「大抵の場合、自分一人じゃ、戦力として見なされませんからね。そのことへの反逆の意図もあるんですけど」
「確かにそうだけど、いいの?」
「道は違っても、目指す場所は同じですから」
切歌との現在の関係にも触れる。歩む道は異なってるが、目指す場所は同じであるという表現で『一度拗れた後に、以前とは異なる形の関係を築き直した』事を教える。そして。
『……はい。怪異が?29戦隊がヘマしたんですね?あそこも鈍ってますねぇ』
不意に、往年のステルス戦闘機『F-117』を模した形状の怪異が飛来する。64F司令部からの通信で『29Fがヘマをして取り逃がした一体』と判明した。29Fは偵察から戦闘に任務そのものが変化した戦隊で、所属ウィッチは当然ながら、偵察出身が主体。装備は四式ストライカー(末期型)と比較的に優良だが、戦闘任務の経験不足で取り逃がしたという。
『防空司令部からお叱りが飛びますよ、あそこ』
『人手不足だからと、偵察部隊を戦闘に転科させるからよ。迎撃、お願いね』
『了解』
29Fの失態の尻拭いをすることになった調Aは、そのまま怪異の進路の直上まで飛ぶと。
『天空剣・Vの字斬りぃぃぃぃっ!!』
怪異のコアがある部分(戦闘機型の場合は戦闘機で言う胴体部にあることが多い)を起点にして、Vの字にたたっ斬る。怪異のコアは脆弱なものであるため、デュアルコアで生存率を上げた個体も存在している。だが、ここ最近はウィッチ世界のゲッター線濃度が高まったためか、全体的に小康状態になっている。出現そのものが珍しくなり、ウィッチの少なからずが暇を囲むことになった。(怪異が小康状態になったことについては『史実での第二次世界大戦の時期が終わったからでは?』という身も蓋もない予測が出ている)クーデター以降に一部の精鋭を除いて、社会的評価が下がったウィッチ兵科は『戦果を欲するが、肝心要の怪異がほとんど現れない』というジレンマに直面した。ウィッチによる戦略偵察の必要が薄れたことにより、(人手不足もあって)戦闘任務に転科した偵察ウィッチでは格落ちは否めず、このような失態は日常茶飯事になりつつあった。クーデター後に多くの中堅が軍を去った後の穴埋めが上手くいかない事の表れのようなもの。怪異の活動が小康状態に入っていたため、ウィッチ兵科の維持に強い疑問符がついている。危機感を持ったウィッチ出身参謀は64Fを模倣せんとしているが、当然ながら、上手くいっていない。(後世の記録によれば、この時期の試みは却って、一般的なウィッチの一芸特化ぶりを際立たせるだけに終わり、兵科の寿命を引き伸ばすには至らなかったという。空戦分野では、レーダーで接敵を回避可能になったのもあって、敵と接敵できないという問題も起こった)
「Vの字に切り裂いた……だと…ッ!?」
「結構、苦労して覚えましたよ、これ。数年かかりました」
地面に着地し、翼Dの質問に答える。剣技に自信があるのは『どの場合でも同じ』である。(実はD世界では『意識して、口調を変えていた』ことが露呈していたりする)そのため、調Aの技に驚愕したりだ。
「……よく見てみると、所々で差異があるな?」
「イグナイトとアマルガムが機能として共存してるみたいですけど、試した事は一度だけですね。別の異能のほうが手っ取り早くなってるから、そっちの方を使うんですよ」
A世界では、イグナイトモジュールが存在する状態で『アマルガム』が追加される現象が起こっている。しかしながら、そこまで必要となる局面が減った事もあり、実戦運用はA世界ではまだなされていない。
「しかし、剣の腕をどう磨いたのだ?」
「10年ほど、ファンタジーとSFが混じった世界で磨きました。あとは色々な世界での実戦や、色々な人に教えを乞いたんです。時間はあったんで」
D世界の調自身より世俗じみた口調なので、どことなく不思議な感覚を覚えるD世界の一同。
「むー……」
「どうしたのかなー?」
D世界の自分自身が膨れていることに気が付き、ふと、頭をなでてみる。
「なんか違う……」
不満タラタラな様子で、ふくれっ面だ。
「同じ自分とはいえ、こんな感じだったかなー?昔の私って」
「あなたが変わったのよ。でも、ギアを制限なしに纏えるというのは…すごいわね……。」
「法律の制限もないからね。手入れは頼んでるけど、数ヶ月おきに一回でいいくらい」
シンフォギアは基本的に、整備が可能な場合は定期的な整備が望ましい。調Aはエルフナインの技術提供を受けた真田志郎の手での整備を受けている。(彼はあらゆる技術をすぐに自家薬籠中の物にしてしまうため、シンフォギアA世界の関係者から『技術の天才』と畏敬の念をこめて呼ばれている)これはSONGを離れているためである。
「元の世界に未練はないの?」
「本当の名前は一部でも知ったけれど、今更、その名前で生活できるわけでもないし、『親族』にも迷惑がかかる。それに、自分の生きてきた時間を否定するつもりはないよ」
調Aは自分の名が便宜的につけられた仮名である事(幼少の時の事故で、本当の家族との一切の記憶を無くしている)ことの由来を調べた事がある。その過程で、自分が『調神社の当代の宮司の孫娘』であることを知った。口には出さないが、宮司とはお互いに一線を引いて接している。孫娘と名乗るにも、お互いに時が経ちすぎた(調と両親が遭遇した事故から11年以上が経過していた)のを自覚しているからだ。
「それに、時間が経ちすぎたのも、ね。事はそう単純じゃないから」
A世界の調の意外に重い事情。F.I.S.に連れてこられる以前の経歴を一部でも解き明かしたが、『時が経過しすぎていた故の悲哀』により、現在の立場でいることを選んだと。個人の各々の事情に口を挟むべきではないが、家庭が崩壊状態だった響Dは『時間の壁が実の家族を隔ててしまった』ことを示唆していることを悟ったのか、思いっきり複雑そうな顔だった。
「まぁ、それなりにやってますよ。なんやかんやはあったけど、自分の居場所は作れましたから」
Aは若いままで数十年を生きているため、どこか達観したところもある。その一方で、切歌との和解には何人かの仲介が必要であったなど、拗れまくった誤解の解消に手間がかかって『失敗した』点もある。
「人間、全部が上手くいくわけじゃない。だけど、希望はどこかで生まれますよ」
D世界は基本世界と大差ない歴史を辿ったため、A世界と違い、戦いは魔法少女事変の後も継続し、多くの出会いと別れがあった。そのため、未然に二つの動乱が防がれ、翼の父親も存命している世界はベターエンドと言えるものである。
「とはいえ、シンフォギアが占めてきたポジションは揺らいだのでしょう?」
「とはいっても、本当の意味での完全聖遺物を扱える闘士や、星系を消し飛ばす規模の宇宙戦争をしてるような世界の超技術の産物で成し得たことだよ。私達の持ち得る範囲の技術で、シンフォギアとその類似技術の優位性は変わってない」
「本当の聖遺物?」
「うん。正真正銘の神様が神話の時代に造らせたり、臣下に権能で与えた代物。私達の使ってるのは、先史文明が『それを模して生み出した兵器』の残骸だから、本当の意味での聖遺物じゃなくて、それに近い機能を持たされたもの。それと同等以上のポテンシャルを現在科学の延長線にある技術の産物が達成したってだけ」
シンフォギア世界のカストディアンは超技術を持つ宇宙人の集団であった。先史文明が滅亡した後、その内の一人が当時の猿の一種を改造し、次代の人類を生み出した。そこは他の世界でのプロトカルチャーや大首領『ジュド』と似通っている。だが、調はゲッター線などの効果で性質そのものが変貌し、カストディアンに利用される存在としての『ヒト』ではなくなった。そのことも、以前と一線を画する存在となった理由である。また、通常物理法則を超越した合金である『超合金ニューZα』や『真・合成鋼G』、特殊加工済みの『超硬化テクタイト板』、サイコフレーム入りの『ガンダリウム(ガンダニュウム)合金』、聖衣の『オリハルコン』などはアルカ・ノイズの炭化攻撃を物ともしない利点がある。グレートマジンカイザーがアルカ・ノイズなどの異端技術を捻じ伏せ、聖衣がその力を見せつけた事で発見され、その後にテストされた事柄である。
「それが、こっちの響さんを殊更に悩ませちゃったんだ。居場所が無くなる恐怖に繋がったのと、本当の神様への反発で喧嘩売っちゃって。オリンポス十二神の一柱に喧嘩腰で啖呵切った人間は、有史以来で響さんが初めてだったらしいよ」
「うぅ。そういうところで、一番乗りしたくなかったよぉ。どんな感じだったの?」
「うーん…。自分のガングニールの力なら、キャロルを助けられたのにって怒ってたらしいですよ。後から聞いたから、詳しい内容は」
「立花の力も……真なる神には通用せんというのか?」
「ええ。コトバノチカラによる呪いも、キャロルを乗っ取った敵には効果がなかったんです。そいつが真なる聖遺物としての『ゲイ・ボルグ』をぶつけたんで、『聖遺物としての真名』から変質してたガングニールでは対抗しきれなかったそうです。それで籠手がけんもほろろに砕かれた精神的ショックで気絶して、次に目覚めた時には、装者が手を出せない『光速』の領域の戦いが繰り広げられていて、蚊帳の外に。エクスドライブでも、光速の領域には完全には追従できませんからね」
エクスドライブ。シンフォギアの基本的な最強形態だが、ギアのロックを全解除したかは定かではない。攻防速を飛躍させるものの、神聖衣を纏った状態の聖闘士や、超プリキュアの上位形態のように、感覚の壁を超えるほどの強化ではないため、本当に光速、ないしは超光速で動く存在は『認識する』ことができない。『エクスドライブを以てしても、戦力外である』特異な状況を受け入れがたかったことは容易に推察できる。
「それと、スーパーロボットが光速以上の速度で『群がる敵を薙ぎ払っていく』光景も衝撃的過ぎたかもしれません。異端技術を現代科学が超えてしまう事の証明ですからね」
グレートカイザーは『最初に生まれた世界』でマジンガーZEROには及ばなかったが、それでも『互角に渡り合えるポテンシャル』は持ち合わせるため、異端技術を捻じ伏せるには充分である。逆に言えば、ZEROが健在であった際の単純なスペックは『皇帝』級であり、それに魔神パワーを上乗せしなくては勝機がなかった事の証明でもある。その魔神パワー対策のために、ハイブリッド動力と装甲にした機体がマジンエンペラーG。グレートカイザーは元祖マジンカイザーのような『伸びしろがなかった』事が仇となった形だが、ZERO以外の敵には絶大な力を振るえる。それは異端技術相手でも同様だった。
「その機体だけど、ずっと昔のアニメのロボットがパワーアップした姿だって本当なの?」
「あれはグレートマジンガーの性能を純粋に『極限まで強化した』だけの機体なんで、伸びしろがないんですよ。単純な強化(進化)の袋小路に入ってるって感じで。運用試験中に、マジンガーと同根の邪神には勝てないってわかったんで、それに対抗できる力を持つ新型が新規に用意されたんですよ」
「つまり、完成された設計の機体を単純に強化するだけでは無理だということなの?」
「平たく言えば、ね。で、ベースは同じだけど、別のエネルギーを組み合わせたハイブリッドの動力にした機体が別に用意されて、その邪神を討った。それとカタログスペックが同等のマシンを使って、キャロルを乗っ取った敵と戦ったんです」
「そのパイロットは本当に人間なのか?」
「人間ですよ。ただし、とんでもないタフネスな人ですけど」
スーパーロボットのパイロットは基本的に、常人より遥かに肉体・精神的にも頑強な者が勤める。人の常識が明後日の方向に飛んでいく傾向が、マジンカイザーや真ゲッターロボ以上の強力なものでは顕著である。剣鉄也はデザリアム戦役後には1児の父になり、少年期からのコンプレックス、甲児への嫉妬心を乗り越え、亡くなった兜剣造の恩師『神竜博士』(ゴッド・マジンガーの陽子炉完成に大きな貢献をした『ロボット工学・エネルギー分野』の権威。デザリアム戦役直後に他界)の養子になり、戸籍上は『神竜鉄也』となっている。炎ジュンとはその前に結婚していたので、ジュンは剣姓を名乗っている。父親となったため、鉄也も温厚になったが、戦闘時は以前と変わらぬテンションなのはお愛嬌だ。
「簡単な強化服だけで光速に耐えられるなんて、オカシイだろ!?漫画かよ!?」
「いやぁ、そんな事言われても。直に、彼と会うと思うんで、顔写真は見せておきます」
ここで剣鉄也の素顔の写真を見せるのだが。
「なんだぁ?大昔のスポ根アニメに出てきそうな『濃ゆい』オッサンじゃねーか」
「どう見ても、30代くらいに見えるよね……」
「う、うむ……」
「そういうと思ってました。彼、濃ゆい顔ですけど、ピチピチの20代ですよ」
「冗談はやめろって。昭和ならいざしらず、宇宙時代の未来で、こてこてに濃ゆい顔の時代錯誤な顔の日本人青年がいてたまるかよッ!」
「いるんですよ。これが彼が18歳当時の顔写真。で、それが成人後です」
「どこが変わってんだーーー!?」
剣鉄也は宇宙時代では絶滅危惧種といえる『老け顔で、漫画のようなもみあげのある、古いタイプの日本男児』(ただし、彼が純粋な日本人かどうかは定かではないという)な風貌であるため、初陣を飾った18歳当時と現在を比べても、あまり変化がない。クリスDが憤慨するほどに『濃ゆすぎる風貌』である。調Aは可笑しくなり、笑う。
「彼が聞いたら、落ち込みますよ~?白髪が出ただけで、この世の終わりみたいな落ち込み方するんですから」
「顔の割に、打たれ弱すぎだろっ!」
クリスDがツッコむ。しかし、剣鉄也は風貌の濃さで忘れられがちだが、元は戦争孤児なので、養父の一人である兜剣造に愛蔵入り混じる感情を抱いていたり、自分が築いてきたものを誰かに壊されることに異常に怯えるなど、それ相応の弱さがあった。その不幸故の脆さへの周囲の理解の無さが甲児とのイザコザ、ひいては兜一族へのジェラシーとなった。折しも、鉄也自身が思春期であったこともあり、情緒不安定に陥って、大ピンチを自ら招いたことすらある。
「見かけの割に、意外に繊細なんですよ。若い頃はそれがもとで死にかけたそうで」
鉄也が本当の意味で『人間的に成長した』のは、成人後しばらくした後。調はそんな彼を『繊細』と表現しているが、多少なりともオブラートに包んでいる。鉄也は自らの嫉妬心で大ピンチを自ら招いてしまった過去から、周囲から『問題児』と見なされていたからだ。その当時は成人前であったところを鑑みても『自業自得』なところがあった。甲児への僻みと嫉妬で自分本位に動き、自分にとっても義父である剣造を危うく死なせるところだったという経緯、その当時にしていた『不遜極まる言動』は彼の若い頃における過ちであり、調も引いてしまうほどである。とはいえ、周囲が『甲児の代替物』としか見ていなかった事が鉄也の精神不安定さ、ひいては破滅フラグを立てかねない『嫉妬心に繋がった』ため、鉄也の人物評価はそこの点を考慮して考えるべきだろう。鉄也にも『若さ故の過ち』はある事が甲児との間柄を好転させたわけだ。
「どういうことだ?」
「話せば、長くなりますよ?」
調Aは断りを入れる。鉄也の複雑な心理と人間関係を理解しない事には、彼のことは語れないからだった。