――64Fの戦闘に立ち合った平行世界の統合戦闘航空団。轟天の圧倒的火力に呆然としてしまう者が続出した。これは大艦巨砲主義も航空主兵論も平和な時代で勢いを無くした結果を鑑みた折衷的な決定で調達された『宇宙戦艦』故であった。轟天と廻天はラ號の准同型艦として建造されたものの、装備は刷新されている。ラ級戦艦で最大のライバル『フリードリヒ・デア・グロッセ』を仮想敵にしていたからだ。艦載機はVF-19、22、YF-29、VF-31や新コスモタイガー、30世紀から供与された『コスモシンデン』を有しており、空母及び戦艦に配備されている。『宇宙艦隊』は64Fで集中運用するため、反感を買っていたのも事実だった。日本側はミッドウェイ海戦とマリアナ沖海戦の教訓で、エースの精鋭部隊での集中運用を『是』としており、それで生ずる他部隊との練度差を考慮しなかった。その兼ね合いで、他部隊の大半は乏しい人材でやりくりせねばならず、ウィッチ部隊は特に、ダイ・アナザー・デイで犯した罪をその血で賄う事となった――
――他部隊は教導部隊からの人員転属を強く要望した。熟練者の大半が64Fと50Fなどに独占されているからであったが、日本の政治家たちは教官の供出に強く反対した。特攻を想起させたからだが、自衛隊でも普通に教官の実戦部隊への復帰は行われているので、単なる感情論であった。とは言え、教導部隊もジェット化で実際の練度が下がった時代なので、予想よりも効果は無いだろうという現実的な判断も大きかった。実際、ジェット化はウィッチ世界の常識からは『早すぎる』ほどで、烈風や紫電改の操縦教育がようやく一息ついたところで、根本から違うジェット機では、レベルが違いすぎて、教導部隊もパニックであった。そのため、有望株やエースは最前線中の最前線で戦う64Fで教育と幾分か実戦を経験させて、元の部隊にどこかで戻す案が採択された。しかし、実際はそんな上手い話があるはずもなく、元の部隊に戻りたがらない者が続出しており、若手参謀達の暴走で決定的な弱みを64Fに握られた事もあり、統合参謀本部は窮した。そんなわけで、64Fは最前線に常に突っ込む事が色々な要因で奨励される身になってしまったわけで、それを担保するための機材の独自調達は黙認された――
――芳佳BやバルクホルンB、シャーリーBが奮戦したものの、振るわない戦績に終わったハルトマンB。Aが獅子奮迅の働きを見せたのとあまりに対照的であった。ストライカーの暴走を怖がったが、F-86にはそのような事はなく、メッサーと比較にならない運動性能と速度性能を持つはずだが、ハルトマンBは恐怖でそれを活かせずじまいだった。更にAが無双の活躍を見せた事はハルトマンBに『妹の自分への気持ち』を理解に至らせた。
「……ウルスラの気持ちがわかった」
暗い表情のハルトマンB。ジェット機の特性に苦戦するわ、別の自分はガンガン戦果を挙げるわ…。ハルトマンBが『コンプレックス』という単語を理解した瞬間だった。そして、マルセイユAがクスィーガンダムという未来兵器で空を掌握する様や、キュアラブリーの強さを目の当たりにした結果、ハルトマンBに鬱屈とした気持ちが芽生えたのである。バルクホルンBは対照的にメッサーの鈍さが解消され、加速性能も改善されたF-86をえらく気に入った。マルセイユの上官経験者であるため、A世界でのマルセイユの好人物ぶりに腰を抜かした一人である。以前の問題児ぶりが嘘のようだからだ。
「お前、なぜそんなに落ち着いた?」
「アフリカ戦線を守れなかった悔しさと、超えたい壁ができたからさ」
マルセイユAはティターンズのエースパイロット『クルセイダー1』(TACネーム)に勝てぬまま、アフリカ戦線を後にせざるを得なかった。彼がMSパイロットである事を捕虜から突き止めたのも、マルセイユがクスィーガンダムを求めた理由だ。
「お前が及ばない敵だと?」
「ああ。それと、ケイやクニカにもまだ届かない未熟者さ、私は」
マルセイユAは圭子と黒田の部下であるため、自分が粋がっていただけの青二才である事を自覚したのと、アフリカ戦線からの撤退で精神的に辛苦を味わったため、他の世界の自分自身より遥かに大人である。自分を未熟者と公言する様はB世界ではありえない口ぶりである。
「それに……面倒を見なければならない奴もいるからな、私は」
美遊・エーデルフェルトを『ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト』として面倒を見ているマルセイユA。アフリカを失った後の居場所を求めたマルセイユは『ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト』になる事を受け入れ、美遊の面倒を見ている。彼女の正体がA世界のリネット・ビショップであるのを考えると、実に数奇な関係性である。これはB世界の芳佳には詳細を伏せられている。別名義で活動する必要があることを理解できないだろうからだ。芳佳BはA世界の自分の事は知らされていても、リーネがどうなったかは欺瞞情報のみを知らされている。これは芳佳は多くの場合で『軍事機密に無頓着』だからだ。また、マルセイユAもダイ・アナザー・デイ後は普段は『ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト』として社交界に出入りする身になっており、軍務に『ハンナ・ユスティーナ・マルセイユ』として服する機会は減ってきている。
「お前に?」
「ああ。妹のように思ってるヤツがいるからな」
ぼかしているが、マルセイユも面倒見が良くなった事を明言する。6分後に到着した合流ポイントで負傷者をコスモシーガルに引き取ってもらったので、シーガルは満杯の状態で帰還した。芳佳Bらはこの時に仮面ライダーの一人と出会う事になった。
――轟天の艦内――
「仮面ライダーV3、風見志郎だ。君たちにも関係する情報を伝えに来た」
「どういうことですか?」
「我々『ヒーローユニオン』と敵対している勢力『バダン帝国』と『暗黒結社ゴルゴム』が君たちの世界にも手出しを始めた。我々は阻止行動を始めたが、敵は君等がこの世界にいる事を突き止め、直に攻撃を本格化させるだろう。君等も市街地を夜に出歩く時は注意してくれ」
「あの、貴方方はコミックのヒーローのような存在なのですか?」
「世の中にはそう認知されている。プリキュアは我々からすれば新参者だな」
ヒーローユニオンは昭和期以来の活動歴を持つヒーロー達が主力を担うため、平成中期からのキャリアしかないプリキュアオールスターズは『新参』なのだ。もっとも、運営の中核が秘密戦隊ゴレンジャーやジャッカー電撃隊などの最古参なので、それに比べた場合の話だが。
「新参者、か」
坂本Bは不思議な感覚を覚える。プリキュアオールスターズは平成中期から令和の始めまでの15年あまりで60人を超えるが、それでもヒーロー/ヒロイン全体からすれば『新参者』なのだ。
「君たちの故郷の世界の座標は敵にも特定された。我々と戦える連中が君たちの世界に行けば、文字通りに蹂躙になる。君たちの世界には、大和型戦艦は二隻しかないからな」
「大和型戦艦の存在が抑止力に?」
「相手はドイツ……。君たちのいうカールスラントの最高技術で造られた超大和型戦艦だ。そんなものが来てみたまえ。空母機動部隊を寄せ付けず、50cm砲で何もかも粉砕する。対抗するには、大和型戦艦を増産するか、それを超えるかだ」
ウィッチB世界は大和型戦艦が史実通りに二隻しか存在しないため、バダンの艦隊の抑止力にはなりえない。単艦では大和型でも太刀打ちが困難である。A世界で大和型戦艦の増産と強化型を造る流れになったのは、H級戦艦らの強大さが理由である。B世界はA世界と違い、対人戦の経験もなく、対艦用の徹甲弾も戦前の性能水準で止まっている。そのため、史実の戦争と戦後のテロ活動で鍛えられた能力を持つバダン帝国の海軍が来れば、容易く連盟海軍は海の藻屑になりかねない。風見志郎の言うことに顔を青くする坂本B。
「君たちの世界は怪異と戦うことを前提にしている。その分、軍事的崩壊は早いかも知れん。それに備え、我々と『日本連邦軍』は全力で君たちの世界を守ることを約束する」
「我々の世界はどうなっているるのです?」
「君たちが戻らん限り、状況は進まんし、君たちがいなくなって半日も経っていない様子だったと、調査員の報告にある。つまり、こちらにいる限り、君たちの肉体の加齢は起きんということになる」
「元の世界では半日も経っていない……なんという不思議な…」
「それが次元世界というものだ」
坂本Bは戦闘面の責任者であるためか、その事を最初に知らされた。これは黒江Aとの盟約の関係も大きい。B世界では半日も経っておらず、前線では大騒ぎにはなっているが、司令部にまだ知らせが届いていないとの事である。ただし、そこにバダンが殴り込みをかければ、軍事的に連盟軍は崩壊してしまうという。また、バダンには少数ながら、イタリア王国陸海空軍、日本陸海軍の残党もおり、それらが暴れた場合、人同士の戦争の備えが精神的にできていない連盟軍は崩壊する危険が大である。坂本Bは戦闘隊長としてそれを危惧したために、盟約をミーナには黙って結んだのである。
「ミーナ君には知らせなくていいのか?」
「ミーナに言っても、対人戦では楽観的に事を見るでしょうし、最悪の事態を想定しようとしていない。私もそうでしたが。その時に言うしかないでしょう。この世界の私自身から聞きましたが、黒江たちを信頼する様子を見せたら、表向きは気にしてないようにしておいて、裏でジェラシー全開だったと。だから、私はあいつにギリギリまで言わないようにしたんです。この世界のように、隊全体や上層部を巻き込む大事にはしたくありませんから」
坂本Bは盟約をミーナBには伏せておくと風見志郎に明言した。A世界での501統合戦闘航空軍誕生の舞台裏を聞き、ミーナの根本にある『愛する誰かが侵されそうになると、途端に冷静さを失い、言動が一方的でヒステリックになる』本性を危惧したのだ。これがミーナAが人格変容前に残した教訓であった。ミーナは本質的に坂本に安らぎを見出していた感があり、自分でも自覚していないが、同性愛に目覚めつつある。坂本Aはそれに気づいてしまったために気まずくなり、人格変容直前には距離を置いていたが、Bはそういう選択は取りたくなかったので、その間を取った折衷案を選んだ。竹井Bのみがそれを知っており、なんだかんだでミーナに立ち入れない領域が坂本にはある証であった。
――こちらは医務室――
「派手にやられたねぇ」
「サンキュー。向こうの芳佳に言付けは?」
「ちゃんと実家は継いでるって言っといて。ご奉公はせど、診療所の跡取りだしね」
芳佳AはBとの遭遇に備え、キュアハッピーの姿である。それで治癒魔法を行使する。のぞみ達は治癒魔法で応急処置を済ませた後、西洋医学での処置をキュアアクアから受けることになっている。治癒魔法は基本的に肉体の治癒力を増大させるか、『あるべき姿に復元する』部類の力であるものの、別途に医学的処置は必要だからだ。
「かれんさん、後の処置は任せます」
「分かったわ」
コスチュームの上に白衣を羽織ったキュアアクアが西洋医学での処置を行う。手刀で斬られた咲と、フリーザーショットで凍傷にかかったマナは治癒魔法に加え、西洋医学からの処置を受け、包帯を巻かれる。比較的に軽傷ののぞみは絆創膏と軟膏の塗り薬で済む。悶絶してしまっていた舞は念のためにベットで休んでいる。
「これでよし。……こういう時になんだけど、これで夢が叶ったわ」
「かれんさんは医者志望でしたっけ」
「ええ。両親は音楽家なのだけど、のぞみと出会って、プリキュアになってから色々あってね。それで医者になろうって決めたのだけど、現実には色々キナ臭いじゃない?医局って」
「古くは白い巨塔…。医療ドラマって、その辺りの黒いところを古くからクローズアップしますからね。TV向けにデフォルメされている事を考えても…」
「師事した教授が派閥抗争に負けたら、その系統の病院での出世は見込めなくなるし、裏で金が飛び交う。それに…、日本じゃ若くしての開業は親の七光りか、有力者に媚びを売らないかぎりは可能性も低い。そんな金権的な光景が嫌だったから、ことはの誘いに乗ったのよ。たとえ、軍医という仕事で辛いことを味わうとしても、ね」
キュアアクア/水無月かれんは日本の医局につきまとう『汚い側面』を嫌い、たとえ、医局に入った場合以上に辛い場面に直面しようと、自分の抱いた志を無くしたくないために軍医になる事を選んだ。ことはの誘いに乗った理由の一つはそれであると明確にした。
「もちろん、貴方を助けたかったのは本当よ、のぞみ。貴方はいつも笑ってないと、ね」
「かれんさぁん……」
感動し、ウルっときたのぞみ。
「うーん。胸がキュンキュンしますよぉぉ~、かれんさん!」
「マナ、貴方は落ち着きなさい」
こういう場面で『胸がキュンキュンする』という類の台詞を言うのは、ある種の伝統なのだろうか?キュアハッピーはその様子を冷静に観察する。角谷杏としての冷静さが由来だろう。
「でもさ、かれんさん。元の世界じゃまだ現役っしょ?どうしたの、元の世界」
「ドラえもんさんから分身ハンマーを借りたわ。行く時に私とこまちの世界ののぞみに大泣きされてね…」
とは言え、自分の世界ののぞみの面倒を分身ハンマーで造った分身に任せる形になっているので、のぞみBとは一時、気まずくなったのも事実である。咲の質問にその辺りのことを話す。ラブまでもが『連れて行く』と明言した時のののぞみBの取り乱すしようは普通ではなかった。ことはに食ってかかる、後輩のラブの前で泣くなど、『奪われる』という先入観と恐怖で意固地になっていたと推察できる心理状態だった。その一方で、自分がプリキュア5の精神的支柱である事を理解しているのか、その後の時間軸での『シャドームーンの襲撃』では必死に食らいついている。A世界にいるのぞみもそうだが、『一人の人間としての脆さとヒロインに相応しい精神的強さが同居しているという人間臭さ』を持つ点が魅力なのだと、かれんは実感している。一歩下がった目線で見る事で、のぞみを助けるために汚れ役、あるいは憎まれ役を買って出たことはやラブの心境を理解したのだ。
「でも、まさか自分が戦艦大和の姉妹艦に乗るなんて、思わなかったわ」
「アルカディア号に乗ってる時点で言います?それ」
「ま、まぁ…」
「向こうの芳佳たちにしてみれば、あたしたちが普通に空を飛べて、格闘も普通にこなせるのは羨ましいでしょうね。足を自由に使えますから」
「バトル漫画よろしく、空中でも蹴りができるのは強みなのよ、ある意味では。私達は戦闘機より遥かに旋回半径も小さいし、ストライカーよりも迅速にトップスピードに乗せられる。そこがね」
「のぞみちゃんは別格ですけどね」
のぞみはその中でも別格であり、真ゲッターロボよろしくの慣性の法則を無視する幾何学的飛行を生身で可能とする。元・神のフェリーチェを除いたプリキュアでは最速レベルであるが、マジンガーZEROがもたらした力である。
「そんなのがガンダムダブルエックスに乗ってるんですから、ネットであれこれ言われるんですよ」
「声の妖精さん的には、ブンビーさんのガンダムだし、あれ。前にりんちゃんがB世界の様子を見に行った時に、ブンビーさんが『うぉぉぉ!!それは私のガンダムだぞぉ!』ってメタい台詞を言ったそうです。確かにそーだけど」
「貴方のガンダムはサテライトシステムとフラッシュシステムを積んで、攻撃力はウイングゼロに匹敵するもの。貴方はそれをフルで扱える。MSとしては究極的なパワーよ?」
「そうなんですよ。一応、ニュータイプ扱いになったのはいいんだけど、サーフボードに乗るロボットのほうが似合うとか言われますけどね」
「ジオン残党はネオ・ジオンの解散で大規模なのは消えたけれど、どうして、あんなモビルアーマーを?」
「火星に艦隊規模で残ってた連中が横流ししたんでしょう」
「火星?」
「現地じゃオールドモビルって呼ばれてたそうです。ジオン残党はあちらこちらに潜り込んでいたそうで、火星に流れ着いた一派はティターンズ残党も取り込んでるそうです」
――ティターンズが『連邦軍の革を被ったジオン』と戦後に言われるようになったのは、所属部隊の少なからずがジオンに迎合したからで、火星に流れ着いた残党はまるごとオールズモビルに加担した。オールズモビルにグリプス戦役時の技術が流れた理由の一つだ。また、火星にはジオンシンパも多く、グラン・ザムのような高性能モビルアーマーも造れる。だが、所詮はモビルアーマーの域を出ないため、スーパーロボットには敵わない。それが彼らが逃げた理由だ――
「残留日本兵並に面倒ね」
「あれより質悪いですよ、終戦したの知ってるんですから」
――1年戦争のジオン系MSはテロ活動で消耗されたため、23世紀初頭当時の残存数は意外に少ない。扶桑が退役させたレシプロ戦闘機を日本に売って外貨を稼いでいるように、旧ジオン共和国もそれで外貨を稼いでいたが、共和国の解体とサイド3の移民船化で一気に放出したため、ブラック・マーケットに複数が流れ、ティターンズ系MSと混成編成でテロ活動に使われる事が増えた。残留日本兵と違い、戦後の共和国を売国奴とし、サイド3へのテロ活動にも躊躇が無かったので、共和国の立場を悪化させ、『解体』を促進させた側面が強い。ミネバ・ザビが隠棲を余儀なくされたのも、ザビ家の生き残りとして、残党を束ねようとしなかったのを咎められたからだ。ジオンは宇宙人に先だって、地球に災厄をもたらした事もあり、サイド3ごと移民船団化することで『円満なジオンの終焉』をアピールするしか、世への『禊』の方法がなかった。シドニーとキャンベラを消滅させられたオーストラリア地域では、ジオン地上軍の『荒野の迅雷』のおかげでジオン残党の隠れ蓑になっていたが、かつての首都圏を世界遺産ごと失ったオーストラリア地域全体は反ジオンの風潮であり、ジオン共和国の解体は旧オーストラリアの政治的圧力によるものだ。フラッシュシステムは一説によれば、サイコミュシステム研究の過程で枝分かれしたシステムで、旧・ジオン軍で一年戦争末期に基礎研究が行われ、ティターンズがそれを再研究させ、それを接収したエゥーゴが完成に至らせた研究であるという――
「フラッシュシステムの出処はジオンらしいですよ。」
「あー、それ。前にネットに転がってたジオン共和国の調査記録で見たよ。一年戦争が末期になった頃にサイコミュシステムの研究過程で枝分かれした一つで、それがティターンズに流れた後にエゥーゴが完成させて、その後にガンダムX系に載せたとか?」
「のび太くんが目をつけて、子孫に命じて載せさせたらしいよ。それが上手いことあたしに適合してさ。それでGビットも生産されてさ。それでツインサテライトキャノンさ。ジオン残党の戦意はあれでくじけたと思うよ、マナちゃん」
「つか、普通のサテライトキャノンでコロニーが消し飛ぶんだから、そのツインなんてねぇ」
「サテライトキャノン自体はガミラス戦役の頃から研究されてた要塞や衛星用の兵器で、それが技術進歩とウイングゼロの影響でMSの武装に転用されたんだって。ツインサテライトキャノンはジオンの質量攻撃を止めるために『本丸』にされて、軍もガンダムXを採用したんだそうな」
「それでネオ・ジオンが?」
「タウ・リンに利用されたのを実感したからね。ハインライン計画だって、ギレン・ザビが考えた夢想を引き継いだザビ派がタウ・リンに持ち込んで利用されたんだから。ザビ家の復讐装置のこともバレたから、ミネバ・ザビはが隠棲を選ぶしかなかったんだ。彼女に責任がなくても、ね」
「ザビ家の復讐装置……」
「スペースコロニーの生態系を崩壊させる化学兵器だそうです」
「アスタロス。私も資料で見たけれど、あんな非人道的な行いを考えつくものね……」
――ザビ家の復讐装置。それは地上軍がキャルフォルニアで生み出した『アスタロス』という他の生態系を破壊する植物を非ジオン系コロニーにばらまき、そのコロニーの環境を崩壊させるという非人道的なものだ。それがのび太やドラえもんの手で公にされ、非ジオン系コロニーへの残虐性が知れ渡ったジオン残党はデザリアム帝国との戦いや同時期のムーンクライシス事変で敗北を認め、ネオ・ジオンの解体とシャア・アズナブルの投降で地球圏では組織だった活動を終えている。とは言え、火星に潜伏していた『オールズモビル』は健在であり、彼らが最後のジオン残党と言える。彼らは火星で自治権を認められ、一定のジオン系コミュニティを維持しているが、ティターンズ残党も一定数を抱えているという特色がある。そのため、火星がジオン残党のオアシスといえる状態で、サイド3の移民船団化を受け入れない者達は火星に移住していっている。アスタロス、コロニー落とし、G3ガスなどの非人道的行いと研究はナチス・ドイツもかくやのもので、事実上のナチス・ドイツの行いの『継承者』と言える。曲がりなりにも『議会制民主主義を掲げる』地球連邦は反ジオンの姿勢を取り続けてきた。のび太やドラえもんなどの『過去の人間とロボット』に『地球連邦の統治の正当性』が説かれ、ジオンの歴史的意義は既に果たされ、役目を終えた事を示されると、ムーンクライシス事変(デザリアム戦役に含まれる)直前の時期、野比家の関係者はジオン残党のテロ活動の標的と見做された。当時に最晩年を迎えていた野比セワシ(彼のひ孫であるノビタダの任官前後に死去)が次男一家のコロニー落としでの死去後に反ジオンへ転じていた事もあり、ガンダムX系統の開発に尽力。のび太の意志もあり、ガンダムXとダブルエックスはのぞみの手に渡ったわけだ。キュアアクアの反応から、プリキュアたちをして引かせるほどの行いをした事がよくわかる――
「あの子達の世界に組織の手が?」
「ええ。風見さんの話だと。奴らがどういう組織かはこれから周知させるそうです。それと、覚悟させるそうです」
「あの子達も組織との戦いになれば、否応なしに戦うしかなくなるものね」
「向こうの世界は事実上は無防備に近いですから。この世界の呉がそれで奇襲されたように」
「この世界の呉はどのくらいの被害を?」
「連合艦隊の中心軍港が横須賀に移るくらいでした。工廠を払い下げることは実質は放棄と見做されました。それで台湾や南洋、横須賀、大神の工廠を増強して、呉の機能を補って、建造能力を分散させる事になったんです。先輩が言ってました。呉に残されたのは基地機能だけです」
「それで横須賀が?」
「本土最大級の建造能力を持つまでに成長したとか。大神も増強に限界があるんで、横須賀が結果的に最大の工廠に。室蘭や山口県に建設予定の工廠を続行させる案もあったらしいんですが、用地買収の都合で、横須賀や台湾、大神の拡充と近代化が地下工廠の建築と一緒に決まったのが三年前です」
「三年じゃ計画途上ね?」
「ええ。空母を造れるドックが台湾にもできたくらいですからね。日本からの横槍で遅れが出てますけど」
「横槍?」
「市民団体のアレですよ。おかげで計画が遅れてるんで、地下部を増強する羽目に。参謀が大量に免官されたりしたんで、司令官級がえらい苦労する羽目に。暴走を抑えるためって理由で締め付けたら、逆に中央が末端を把握できなくなるローマ帝国みたいな事態に。だから、あたしらみたいな司令部直属の部隊しか動かせないんですよ」
日本の失敗は扶桑軍組織を改革しようと、それまでのエリート層を否定したため、中央が末端の様子を把握できなくなるという本末転倒な事になり、司令部直属部隊が実質の独立部隊として奮戦する羽目に陥っていた。これはブリタニアのグローリアスウィッチーズも同様だが、世代交代期であったために結成時の練度は望むべくもなく、期待された効果は出なかった。その結果が却って、64Fの人材の独占感を際立たせた。とは言え、64Fのエースたちは転生者が多くを占めており、他部隊への放出が不可能(黒江の一軒以降、エースの後方部隊への配置がタブー視された)なために仕方がないことでもある。しかも、扶桑の名うての大半が転生者であったという珍事は連合軍上層部を悩ませた。64Fはその受け皿として機能するようになったため、編成は恒常化したのが実情。中堅世代ウィッチのクーデター後はドラえもん世界におけるロンド・ベルのように『外郭独立部隊』のような扱いが固定化したのもあり、前線に突っ込まれるのだ。
「二年前に上がノウハウを盗もうとして、隊長の代理をとっかえひっかえしてた時期がありますけど、中央も部隊ごとの強さがてんでバラバラなのをどうにかしたいんだけど、何故か、それが裏目に出る。だから、精鋭部隊を突っ込ませる戦法しか中央は取れないんでしょうね」
結局、『有能な人材は前線で戦わせたほうがいいし、指揮官は前線で戦ってナンボ』とする日本的思考が連合軍全体を覆った結果、連合軍は前線配置部隊の編成に悩む羽目になるのである。また、慰問部隊『ルミナスウィッチーズ』も編成がお流れになり、正式に別の形で用いられることになったのもこの時期で、色々な面でウィッチA世界に生まれた『歪み』が表面化し、軍ウィッチの『冬の時代』の本格化が始まるのである。生え抜きの新人の数が少なく、それも早期には確保できなくなり、日本や他国出身の義勇兵を大量に受け入れた扶桑軍では、それまでの慣習だった徒弟制由来のウィッチ育成法が廃止され、画一的な教育制度に刷新される。これは時空管理局のカリキュラムが参考にされたもので、日本出身者などを手っ取り早く『数合わせ』である程度の練度にするためには、仕方がない妥協であった。45年からの混乱でかなりの候補生が軍に入らなかったことで生じた空白の大きさの表れであった。その教育制度刷新は1947年度からであるため、わずか二年では効果は表れるはずはない。ウィッチ兵科の存在意義もダイ・アナザー・デイの様相で一挙に薄れていた事も重なり、巷でも『軍ウィッチは斜陽』と公然と語られるに至る。そんな中でも、まばゆい光芒を放っていたGウィッチ(プリキュア含む)は世の中から疎まれ、『魔女狩り』が起きることや、ウィッチとしての責務を果たさないことで(当時はMATは自衛隊所管だが、正式には扶桑内で代替役とは見なされていない)世間から後ろ指を差されることを恐れていた扶桑ウィッチ達にとっての希望と見なされ、この時期には『コミュニティのはみだし者』、『摂理を乱すならず者』と見做されていたダイ・アナザー・デイと打って変わって、『ウィッチの責務を果たしている』、『御国に奉職するウィッチの鏡』という真逆の評価がなされ、世間から『英雄部隊の復活』と評価されるに至っている。
「物事の世の中の評価なんて、時代や状況が変わればコロコロ変わります。だから、差っ引いて見るべきですよ、かれんさん。あたしがそうだったように」
「切実ね……」
「落ちこぼれだの、部活追い出されクイーンだの、飽きっぽい子ナンバーワンだの言われてきたの人生でよく実感しましたからね。だから、前世で戦いが拠り所になっちゃったんです」
半分は恋人との約束も完全には守り通せなかった前世の自分への自虐であったのぞみの言葉。それ故に、自分の欠点をポジティブに見つめ、ついには部分的であるが、欠点を克服し、社会人として充分すぎる成功を掴んで、いっぱしの家庭も築けたのび太への憧れが強い。
「だから、のび太君には……帰る場所をくれた恩もあるんですけど、憧れがあるんです。若い頃のあたしととても似てるのに、社会人として成功して、しずかさんとノビスケ君と幸せな家庭も持ててる。前世のあたしにはできなかったから。だから、のび太君と出会ったことは……あたしに『生まれ変わった人生での生きる目的』を与えてくれたようなものなんです。引き会わせてくれた黒江先輩にはすごく感謝してます」
のぞみは学生時代はのび太によく似ていた。(ただし、私立に入れる程度の頭脳はある)だからこそ、前世の記憶が蘇った直後の悩みを吹き飛ばしてくれたのび太の人生経験談の凄さや、のび太自身の学生時代の努力ぶりをプリキュアで一番に理解できた。また、覚醒直後から相談に乗ってくれたばかりでなく、のび太に引き会わせてくれた黒江のことを『先輩』と呼び慕っている(黒江も二重人格期があったので、のぞみの苦しみを理解している。それ故にのび太に会わせた)理由も明確にする。
「黒江中将は貴方の悩みを分かっておられた。だから、貴方をのび太さんに会わせたんでしょうね。とてもよく似た学生時代を送ったけれど、社会人として成功を収めていたのび太さんに。それに、あの人の養子の一人は貴方が恋い焦がれた『ココ』の転生…。恐らく、彼もココを貴方に」
「ええ。ココもそう言ってました。君と再会するのを薦めたのは義父さんなんだって。だから、すぐに話がまとまったんですよ。とは言え、あたし達が法的に夫婦になるのは、のび太君がおじさんになってる時代なんですけどね」
コージ(ココ)はのび太壮年期の頃に普段は住んでいるため、法的に二人が夫婦になるのは法的には、のび太が青年である2021年頃からは数十年ほど後の時代のことだ。とは言え、タイムマシンを使うのび太やドラえもんに『時間軸の違い』は意味をなさないが。現にのび太がまだ青年期である2021年の時点でのび太に『家族』と見なされており、周囲にも『親戚』と触れ回っている。彼女がしている結婚指輪ものび太からプレゼントされている。
「ややこしいわね、そのことは」
「おかげで、向こうの自分自身とりんちゃんがパニックしまして。ココと一緒に四苦八苦でしたよ」
「でしょうね」
「でもさ、普通は驚くよ?外見は変わんないのに、既婚者で、しかも夫婦揃って戦闘要員って」
「しかもココは転生したら、かの有名なサムライトルーパーなんしょ?うららちゃんあたりは知ってるかも知れないし」
「こっちも向こうもうららは知ってたよ」
「あ、やっぱり?」
マナの言葉に頷くのぞみ。
「うらら、無名の時期になんでもやったとかで、ヲタク系のカルチャーを勉強したんだって。その手の番組とかで仕事をもらって下積みしてたそうで」
「うーん。アイドルも大変だなぁ」
咲がそういうと、かれんはこれを補足する。
「スターダムに上り詰める時は一気にいくわ。だけど、最初から売れっ子なんてのは一握り。うららも相応に下積みをしてから、スターダムを登っていったのよ」
「咲さんはフラッシュダンス(80年代にダンスなどで一世を風靡したサクセスストーリー仕立ての青春映画)を見るべきだね」
「あ、それ、おかーさんが子供の頃にみたとか言ってた」
「二人共、見てたの?」
「あたしは舞やおかーさんのかんけーだね」
「あたしはまこぴーの関係なんだ。まこぴーも参考にしたとか?」
「なるほど」
剣崎真琴(キュアソード)はアイドルとして芸能界に打って出るという方法で生計を立てると決めた際に『サクセスストーリーのイメージの参考』という形で同映画を視聴し、表向き(ファン向け)の『アイドルを目指した理由付け』に使ったと言っており、元から彼女のファンであった相田マナもその映画を見ていたと語る。意外な事だが、プリキュアたちも名画に何かしらの縁があったのだ。
「あたしも学園艦で見たよ。いい映画だと思うよ?」
キュアハッピーは『角谷杏』として見たという。
「星空みゆきとしては見てないんだね?」
「恥ずかしながら~。現役時代は童画題材のばっか見ててさ。絵本作家になりたかったし」
キュアハッピーはそこは赤裸々に語る。絵本作家志望だったので、青春映画などの類はあまり興味がなかったからだ。
「でも、うららちゃん、下積み時代に何でもやったってことは…」
「あたしも一度、その頃に手伝った事あるんだけど、ドジばっかでさ。戦闘になったから、有耶無耶になったけど」
「想像できる~」
「あ、やっぱり?」
春日野うらら/キュアレモネードは現役時代、芸能人と学生とプリキュアの生活を送っていた。それはこの場の全員が知っている。だが、下積み時代のことはのぞみとかれんしか知らない。医務室ではその話題で盛り上がり始めるが、当のうららはそんな事はつゆ知らず、マナ同様に、戦車道大会の対策を考えていた。不意に大きなくしゃみが出たのを『風邪かなぁ…?』と心配していたのだった。