――21世紀も20年を超えてくると、昭和期以前の考えを切り捨てる風潮がある。のび太たちは最後の昭和生まれの世代(2021年に30代前半)であるので、昭和の名残りが残っていた時代に子供時代を過ごしたため、ガキ大将文化を当たり前だと思っていた。また、のび太としずかの育児の持論は『無菌状態で子供を育てると、後でとんでもない結果になる』であったことにも由来する(これは自分らが大人の厳しさを子供のうちから知る立場であった事に由来する)。彼らの子であるノビスケはしずかの勝気な側面を強く受け継いだためか、のび太の息子とは思えないほどのきかん坊であり、学校でも『成績は父親よりはマシだが、騒動を起こすガキ大将』と見られていた。これはのび太の恩師である教諭の息子でもある担任教諭(当時に赴任したばかりで、父親の引退と入れ替わりの形になった)の評価でもある。2020年前後に就学したノビスケだが、きかん坊なために両親は気苦労が絶えなかった。2020年代にもなると、昔ながらのガキ大将は過保護気味な親から嫌われる傾向が強く、ノビスケは父兄らからは『時代錯誤のきかん坊』と嫌われていた。その逆に教諭らからは『ああいうのが子供に社会の一員であることを教え込むのだ』と受けがよく、かつてのジャイアンと逆に近い評価であった――
――2020年の終わり――
この年はプリキュア達にとっては『ダイ・アナザー・デイ』とデザリアム戦役を経験した濃厚すぎる年であった。のぞみはこの年が暮れる頃に、先輩である咲にコミュニティのリーダーとしての権利を正式に委譲。咲はのぞみに代わり、プリキュアコミュニティのリーダーとしての職務についた。(それに伴い、少佐へ昇進)プリキュア達は基本的にススキヶ原では変身した姿で過ごしている。学園都市の再編(ドラえもん時空では『一方通行』が理事長をしていた時期があるかは定かではない)で都市から追い出された暗部出身のチンピラやゴロツキ共との戦闘が発生する事が増えたからだ。ノビスケが幼稚園の卒園を控えていた時期に起こった『幼稚園バス襲撃事件』はその治安悪化の端緒となる出来事であった。学園都市の技術のパワードスーツや能力者へススキヶ原の警察では全く対処できないため、プリキュア、シンフォギア装者、仮面ライダー達は現地の治安維持(学園都市は再編の過程で独自組織の多くが日本政府の報復じみた法令で解体されたため、2017年前後から『無法地帯化』したが、ヒーローユニオンが銀河連邦警察に介入を要請。宇宙刑事ギャバンを責任者に学園都市の治安の回復が図られている。なお、独自の軍事研究や能力開発なども非人道的とされて停止されたため、学園都市は『独立国家』としての体裁を失った)を代行している。日本政府は扶桑に『科学の優位』を背景にしての強権を度々ちらつかせる一方で、内情は一都市の治安すら回復させられない有様であったので、扶桑からはその有り様を揶揄されていた。(日本連邦軍の維持費も、その半分以上を扶桑が負担していたためでもある)
――学園都市とススキヶ原を結ぶ自動案内軌条式旅客輸送システムの軌道内――
2017年度から運行停止状態の同システムの軌道上で戦闘を行うのは、リコ共々、ザンスカール帝国残党と戦闘が一段落ついた後に取れた休暇を利用して野比家を訪れていたマリア・カデンツァヴナ・イヴ。暴動で使用された『学園都市製のパワードスーツ』はなんと、シンフォギアの攻撃にも高い耐久度を発揮し、装者では熟練と言えるだけの能力を持つはずのマリアをも苦戦させていた。
「嘘でしょ!?この時代の兵器にこれだけの耐久力が!?」
「こいつらは特別製なのよ。だから、普通の警察じゃ対処出来ないのよね。プリキュア・サファイアアロー!!」
キュアアクアがとどめを刺す。プリキュアの攻撃でようやく撃ち抜けるあたり、学園都市のパワードスーツの素材は頑丈である。
「貴方達は世代によって、物理的攻撃力が違うというけれど…」
「私達は物理的攻撃力を高レベルで持っていた頃の世代だから。近頃の子達より戦闘向けって言えるわね」
第一世代のプリキュアは物理的攻撃力も高いレベルにあったため、戦闘では先陣に立つことが必然的に求められる。キュアアクアはその最たるもので、実は最初に剣戟をしたプリキュアでもある。(プライベートでフェンシングや乗馬を嗜む上流階級の令嬢であるためでもあるが)彼女はコスチュームが青である最初のプリキュアであり、最終的には弓を必殺技にしている事から、ヒーローユニオンでは『超獣戦隊ライブマンのブルードルフィン/岬めぐみ』との類似性を指摘されている。お互いの生年月日の都合もあり、キュアアクアはマリア・カデンツァヴナ・イヴと対等な口ぶりで接している。
「場馴れしてるわね、貴方」
「プリキュアとして、二年くらい現役だった時期の最後のチームにいたから。そうね、それについては百戦錬磨よ」
アクアは素で学園都市製のパワードスーツとの組み合いに勝てるパワーがあるため、パワードスーツの腕部を過負荷で破損させられる。そして。
「雑魚はすっこんでなさい!」
蹴りでパワードスーツの腕部を引きちぎるというパワーファイター的な戦法を用いる。ブループリキュアは頭脳明晰な者が代々なるというのが不文律だが、どういうわけか、テクニカルなファイトスタイルの者は意外に少ない。第一号たるかれんからして、パワーファイターなので、他のヒーロー達からも色々とツッコまれる点である。
「す、すごい…」
マリアも歴戦の勇士だが、アクアはそれ以上である。マリアは思わず見とれてしまう。攻撃力、防御力、共にシンフォギアと同等以上であることが証明される。しかも通常フォームでだ。
「医務官になってるけれど、戦闘が出来ないわけじゃないわ。この世界の日本は警察や軍隊に金を出したり、軍隊に美味い食事を出すのを露骨に渋るのよ。だから、扶桑とは常に何かで揉める。警察が学園都市の治安回復のためにバブル全盛期のような重装備を買おうとしても、財務官僚はせせら笑う。そんなだから、学園都市からあぶれたチンピラやゴロツキの処理が銀河連邦警察や私達に丸投げなのよ」
「それ、日本警察としてはいいの?」
「いいわけないわ。私たちは本当は正規軍人よ?学園都市には本当は『警備員』という重武装の組織があったし、学内に『風紀委員』っていう枠組みもあった。日本政府が今までの報復として、それらまで有無を言わさずに解体したから、学園都市が無法地帯化したのよ。スラム街も同然らしいわ」
日本政府は2010年代半ばの頃に学園都市独自の組織をそれまでの意趣返しと言わんばかりに根こそぎ解体したが、字面だけを見て、治安維持組織まで解体したために治安が極度に悪化。2017年前後に銀河連邦警察の介入が行われる頃には、わずか数年で全体がスラム化する有様。銀河連邦警察とヒーローユニオン主導で治安回復が試みられている。一時は世界の科学技術の最先端と言われた同地はアイデンティティを失った途端に、治安が最悪の一都市に落ちぶれたわけだ。(元々、東京西部を中心に強引に開発してきたため、存在そのものを認めない者も多かったが、科学技術に差があったため、これまで手を出せなかったわけだ)
「確かに、シンフォギアや貴方達と渡り合える代物を持ってる連中を日本の警察が抑えるのは無理ね…」
「サットにしても、法令や何やらでおいそれと動かせないし、彼らの装備でも、こいつらの鎮圧は荷が重い。私達が任務の片手間に治安維持もやるようになったのよね」
キュアアクアの言う通り、日本警察の『特殊急襲部隊』(サット)は暴徒鎮圧のために比較的に重武装だが、学園都市の装備と渡り合える程ではない。銀河連邦警察へ丸投げしたのは、警官の殉職を避けるため、サットの評判が下がることの防止であるため、銀河連邦警察からも呆れられている。(当のサット内部でも政治への批判がある)プリキュア達や仮面ライダー達にそれを代行させるあたり、他国からは奇異なほどの日本の国内事情が垣間見える。実際、拳銃一丁が当たり前な日本の警察官に重武装パワードスーツや能力者を鎮圧しろというのは無理があるので、スーパーヒーローやヒロインに鎮圧させるのは理に適っているが、日本警察に強度の暴徒鎮圧能力がないことを衆目に示しているようなものである。
「警察がよく許したわね」
「現場は批判タラタラだそうよ。一昔前にあったという専門部門(特警ウインスペクター~特捜エクシードラフト)も革新系政党の勢いが増した時期に『予算食い』を理由に解散させたそうだから。だから、警察は私達に通報するのが仕事。休暇中というのに、参るわね」
「日本の革新政党はいつの時代も変わらないのね」
「今が良ければ、後のことはどうでもいいって奴よ。やれやれ。自分達が平和なら、周りはどうなってもいいってのは、明日にも崩れるものよ」
キュアアクアはプリキュアとしての経験から、『わかりあえない時は叩き潰すしかない』という持論を持っているようだ。第一世代プリキュア達は平成生まれだが、第一世代のプリキュアは昭和時代の名残りが強い頃に子供時代を過ごしたため、基本的に昭和期以前のヒーロー達の思想に近いところがある。そのため、第三世代のプリキュア達とは相容れないところがあるのは仕方ないところである。
「貴方、現実主義ね」
「まぁ、実質的に二年も戦っていれば、ね」
アクアは古式の馬乗戦も経験しているが、意外にそれは知られていない。百戦錬磨と言われるのは経験値が群を抜いているチームだからである。
「アクア、連中は街に行くのを諦めてないわよ!」
キュアマジカルが警告を発する。アクアは頷く。
「ああいう手合の輩にはお仕置きが必要ね」
「貴方、水を操るの?」
「ええ。前は渦にして打ち出してたけど、今は弓矢にしてるわ。その方が弓術を活かせるから。それに、ドリームには負担かけてたから、少しは働かないとね。サファイア・アロー!!」
プリキュア・サファイア・アローはプリキュア5が現在のコスチュームになった際にアクアが会得した技で、水を弓矢の形に固定し、水の矢を放つ。その精度は元から弓術を嗜んでいた事もあり、相当のもの。同種の技を持つキュアダイヤモンド、キュアビューティとの合体技も見せた事もある。
「貴方、弓術をしてるの?」
「両親が高名な演奏家でね。その関係で色々な習い事をしていたの。バレエや乗馬も経験あって。その名残りよ」
「その後を継ぐことは?」
「中一あたりまでは漠然とね。プリキュアになってからは色々と考えたけれど、医者になるって決めたの」
キュアアクアは身の上話をしつつ、サファイアアローを流れるように放つ。シンフォギアの攻撃に耐えるパワードスーツの装甲も流石にプリキュアの必殺技までは防げず、次々と行動不能にされる。
「そうそう。ルージュがまだ病み上がりで本調子じゃないから、その分の属性をドリームが補ってるのよ。その証拠が……」
アクアがそう言った瞬間、怒った表情のドリームが急降下してくる。
「せっかくの休暇だってのに、てめーらのせいで仕事せにゃならねぇ!もー許さねぇぞ!!伍百伍拾伍式……神威!!」
敵の真っ只中に降り立つと同時に、拳を地面に叩きつけて巨大な炎を起こし、焼き払う。口調は錦の荒っぽさが前面に出ている。草薙流古武術の闘技を使う時は闘争心が強まるためか、口調は荒くなる。本来はルージュの領分である『炎』を操るが、これは素体になった中島錦がウィッチ世界における同武術の継承者だったためだ。
「へへへ……燃えたろ?」
指先から炎を出してみせる。ショッカーV3との戦いでは、彼に当てられる自信がなかった事から、同武術はあまり使用していない。
「ガキの前だ。ちったぁ、いいカッコ出来たかな?」
「ドリーム、スイッチ入ってるわね」
「草薙流古武術を使うと、ね」
「生年月日の都合とは言え……、なんだか……くる物があるわね」
マリアは『見かけ』とは別の意味で子供扱いされる事に堪えているようだ。とは言え、学園都市出身のチンピラやゴロツキには比較的に高位の能力者もいるにはいるため、マリア達といい勝負をする者もいるにはいる。今回の騒動の首魁である『衝撃波を操る』レベル4の能力者がそれだ。
「私達に生身で挑む気?」
「フ……何も『技』はお前達だけの特権ではないと言うことだ」
その男は20代ほどであったが、指をパッチンと鳴らすだけで付近に放置されていたコンクリートブロックがまっ二つに切れる。
「なっ…!?」
「フィンガースナップでまっ二つだと……どこぞの十傑集かってーの!」
ドリームも思わず毒づく。
「ほれ」
彼はフィンガースナップをマリアにしてみせる。そうすると、マリアはシンフォギアの防御フィールドすら無視される形で、体をかまいたちのように切り刻まれる。
「なっ……!?ぎ、ギアの防御フィールドを無視して……」
「ふふふ……学園都市は俺にレベル4の価値しか見いださなかったが……」
「チィ…、どこぞの『素晴らしき』気取りか、テメー!」
「ふん、わかる者がいたのは嬉しいがね」
ギアをも切り裂かれ、その場で膝をついてしまうマリアを庇うように立ち塞がるキュアドリーム。
「うおおおおっ!?」
パワーアップを重ねたドリームを以てしても、その指パッチンを見切るのは至難の業で、額や足を衝撃波で切られる。
「どうだね。この俺の能力の味は?」
「くそぉ、味な真似を……!」
「言ったろ?レベル5の価値があると」
勝ち誇る『彼』。ドリームも頬や足に切り傷をまたたく間に負う。いくらセブンセンシズ以上の感覚を身に着けていようが、攻撃される対象が『認識する』前にその攻撃が終わっていれば、攻撃を容易く当てられる。のび太やゴルゴもそうであるように。ましてや不可視の衝撃波なら『難易度』は低くなる。
「貴方、血が…」
「なーに、かすり傷さ」
笑ってみせるドリームだが、傷はけして浅くはない。変身しているが、スプラッシュスターのように防御バリアがあるわけでもないので、マリア以上に傷が大きい。とはいえ、以前より無茶が効く体になっているので、笑みは崩していない。
「ほう?なんだね、その笑いは」
「な~に。すぐに分かるさ」
すると、キュアドリームの傷が比較的に浅い箇所が治り始める。マジンガーZEROの持っていた魔神パワー『再生』が形を変えて効果を発揮しているのだ。
「あなた、傷が……」
「マジンガーと融合した時に得たものでね。ちょっとそっとの傷はすぐ治るんだ。当然、これも万能じゃないけど、昔より無茶が効くようになったよ。そして、私が昔からずっと想い続けてた人から習った闘技を見せてあげる。」
ドリーム(のぞみ)は両腕に一対の日本刀を召喚する。そして、その日本刀を柄で連結させ、刀身を光に包む。その技こそ、ココ(小々田コージ)が転生した存在である『コージ』が彼女に授けた代々の『仁』の『サムライトルーパー』の闘技。その名も。
「超弾動ぉぉぉぉ!!そぉぉえぇぇ――んざぁ――んッ!!」
デザリアム戦役で闇に堕ちかけた彼女を救ったモノの一つは彼の『愛』であり、『仁』の心であった。のぞみはコージを前世の頃から愛していた。お互いに転生する事で叶った愛。その愛が彼女の光となったわけだ。そして、りんとの友情を信じ、貫いた事の証である『炎』。のぞみにとって、炎は不滅の愛と友情の象徴なのだ。
「はああああっ!」
乾坤一擲と言わんばかりに放たれた『双炎斬』の炎は凄まじい勢いで彼を呑み込む。だが、彼は炎の中から影と声だけを浮かび上がらせ、ドリーム達に再戦を予告する。
「これは面白い……まさか、プリキュアが『超弾動』に覚醒めているとは。また会おう。フハハ…」
「昭和のアニメのボスキャラっぽい台詞回ししやがって!おととい来やがれってんだ!」
「貴方も江戸っ子喋りになってるわよ、ドリーム…」
「それは言えてるわね…」
キュアマジカルがツッコミを入れる。それはマリアも同意する。とは言え、ザンスカール帝国残党を退けた時間軸には、のぞみは夫でもあるコージから闘技を教わっていたのである。戦闘で昂揚したりすると、どういうわけか『江戸っ子風の喋りになる』事が多いのは、錦のガサツさがデフォルメされた形で残っている上、ZEROが記憶していた『兜甲児の若き日の言動』の影響によるものだと推測されている。とは言え、二刀流の達人となったコージのレクチャー、剣戟でまともに戦った経験がある数少ない『ピンクプリキュア』(中心格の戦士のイメージカラーはピンクである事がドリームからグレースまで続いていたため)の一人であるという貴重な属性、素体の中島錦が示現流免許皆伝であった事とが重なり合い、こうした光景が実現したわけだ。
「腕を上げたわね、のぞみ」
「かれんさんほどじゃないですって。馬乗戦の経験は無いですし」
「懐かしいわね、その話は。私も剣には自信はあるのだけど…」
「そう言えば、剣で戦った経験あるのは…」
「そうね。あとはれいかとめぐみ、あかねくらいね。のどかはどうだったか聞いてないから」
「メインで剣使ったの、めぐみちゃんとあたしだけかぁ」
「セレナ…」
「あー……。気にしなくていいから、姉さん」
キュアマジカルはマリアとは前世の関係もあり、『ソウルシスター』となっている関係上、セレナ・カデンツァヴナ・イヴであった頃に近い接し方を通している。とは言え、リコの性格はセレナと違うのも事実。この頃には、だいぶ素を出して接する事ができるようになったため、清楚な性格であったセレナとは違う形の関係を築いている。
「のぞみはいつも、こんな感じよ。前より荒くなってるけど、私の先輩よ」
「貴方が?」
「こー見えても『三代目』だよー!咲さんのすぐ下なんだからー!」
マリアは怪訝そうにドリームを見る。ドリームは当然ながら膨れる。プリキュア界の仮面ライダーV3を自負するようになったため、実質的にはプリキュアのNo.2であるというポジションが自慢らしい。
「それで戦い慣れしているのね、貴方達」
「ええ。古株って言っていいわ。貴方も大したものよ、マリア」
アクアはマリアを労う。
「そう言ってくれるのはありがたいのだけど……、基礎ポテンシャルはまだまだ及ばないわ。それを考えると、野比のび太はバケモノね」
「メタ的に言えば、シリアスとギャクの双方の属性を持ち合わせてる故ね、彼の強さは。『少し不思議』ってカテゴライズされてるし…」
のび太の強さはメタ的に言えば、『ストーリー漫画とギャグ漫画の双方で主人公を務められる』点にある。大人になった後にサポートが多くなったのは、『バトル漫画の主人公の世代交代』を意識しての振る舞いでもあるという。
「ドリーム、日本警察に連絡は?」
「入れたとこ。治安維持を代行してるからには手当の支給くらいはしてほしいくらいだけど」
「贅沢言わないの。駅まで戻ったらお昼にしましょう。駅ビルのレストランもオープンしてるはずよ」
「近頃は皆、疫病に敏感だけど、どうするの?」
「変身してるとは言え、近頃はうるさいから…。マスクは魔法で用意しとくわ、アクア」
「お願いね、マジカル」
「なんだか妙な感じね…」
変身している状況下でもマスクが必要なのだろうかと考えるマリア。それにアクア(かれん)が答える。
「疫病が流行ってるご時世、マスク無しで駅ビルや店内を出歩くと無闇なトラブルを招くわ。食事の時は外せるけれど、いくら変身してても、店の中を出歩くとかの時は必要よ?医療関係者としても言うわ。それに、ヒロインたる者、周りの目には常に気を配ってないと」
アクアは医療関係者でもあるので、そこは気をつけている。プリキュアになっていても、マスク着用はエチケットとしてしなくてはならない。これは疫病が蔓延する中で2021年を迎えようとしているご時世故に仕方ない事でもある。そんな一同だが…。
「帰ったら警察への報告書まとめかぁ。めんどくさいなぁ…」
「仕方ないでしょ。日本連邦軍名義での警察業務の代行なんだから、職務上必要なことよ?」
「そりゃ分かってるけどさ…。歩いて戻るのー……?」
「あのねぇ…、ドリーム。ここからなら、そんなに距離ないでしょうが。」
「二キロはあるよ…」
「あなたねぇ……」
一同は運転休止状態の自動案内軌条式旅客輸送システムの軌道を歩く。学園都市とススキヶ原を最初に結んだ観光路線の一つだが、2017年の学園都市の治安悪化で本数が減り、この時期には軌道の維持だけはされているが、運転は休止扱いである。ススキヶ原駅までの距離に辟易するキュアドリーム、それに呆れるキュアマジカルの姿はマリア・カデンツァヴナ・イヴに『プリキュアは仮面ライダーのようには、体育会系じみた先輩後輩関係にはあまり囚われていない』事を実感させた。
「この線路の先にあるという学園都市とは、どういう街だったの?」
「それが……、話すと長くなるのよ、マリア。あそこは」
キュアアクアもそういうように、この世界にある『学園都市』は説明が一言では終わらない。二キロの道のりを歩いて戻る間、マリアは学園都市について聞いてみることにしたのだった。