ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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第百八十話「戦い終わって…5」

――ウィッチ世界の歴史は日本を戸惑わせた。(戦国時代当時の倫理観で)暴虐とさえ言われた織田信長が森蘭丸の献身で生き延び、比較的に堅実な政治を行い、当時としては真っ当な政治体制である幕府を開き、安土城も失われていないからだ。(その分、明智光秀の評価がまた下がったが。しかし、江戸城は史実通りに再建されていない)

 

――史実の江戸期と違うのは、武断派を他国の傭兵として送り出すことで家中の安定を図りつつ、大航海時代を謳歌した事だが、明国と李氏朝鮮の怪異への敗北がそれを促したという現実問題もある。南洋島はその頃から開発され、扶桑最大の外地となっている。日本はその事情故に自分からの統治権放棄と国連への統治移譲に正当性がないことを悟り、結局、南洋島の統治継続は認めた。その代わりにシベリア地域については『時期を見てのオラーシャ帝国への譲渡』を呑ませる。これは広大なシベリア地域を統治する事は日本連邦には人的・物的にも不可能だからだ。しかし、同地に戦国期から入植済であった扶桑人が形成済みであったコミュニティへ代替入植地を確保する必要と、彼らの権利補償の問題もあって、正式にそれが行われたのは、世の中が平和となり、ダイ・アナザー・デイから半世紀が経過した後の時代の事である。扶桑の外地の法的位置づけの整備や、時代とともに変化していく南洋の統治範囲もその処置が先延ばしされた要因であった。――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――扶桑も混乱したが、1940年代当時にもっとも不遇であったのは紛れもなく、帝政カールスラントだろう。せっかく民族生存のためにオストマルクを吸収したと思ったら、ドイツ連邦共和国の横槍で無理な軍縮が行われ、経済・政治・国防体制が複合してズタボロにされてしまい、しかも現場のポカで『ペーター・シュトラッサー』(愛鷹)の再整備を航海ができる最低限にまで行うのを自己負担せざるを得なかった上、軍用機のライセンス契約の違約金と賠償金が重くのしかかったからだ。(日本連邦の慈悲とドイツ連邦の仲介で当初予定より値切ってもらえたが)旧・愛鷹の自己都合での返還は違約金が発生するのもあり、反対論があったが、カール・デーニッツはM動乱でのXXⅠ型の活躍を理由に、水上艦隊の再整備よりも潜水艦の造船を優先し、返還を強行した。これがカールスラント海軍のその後の運命を決定づけたわけだ。陸空軍も下士官以上のリストラが莫大だったために機能不全に陥り、完全に本土奪還作戦の実行が不可能に陥るのみならず、軍のモラルも崩壊してしまった。更に多くの優秀な人材が予備役編入を理由に、部隊ごと日本連邦の義勇兵になってしまうケースが多く生じてしまうなど、まさに踏んだり蹴ったりであった。カールスラントの帝政から共和制への移行についても、この時代、太平洋戦争の終戦後の時期、1970年代末から80年代初頭の三回に渡り、大規模に議論がなされる。これは前時代的とされる帝政を廃し、現代的な民主共和制にすることを夢見る共和主義者達の強い働きかけによるものだが、ガリアの派閥抗争の醜悪さを目の当たりにしていたカールスラントの人々は形の上でいいから、人心を束ねられる象徴がある『帝政の維持』を望み、扶桑同様の立憲君主制国家への移行を選択する。立憲君主制国家への緩やかな移行はドイツ領邦連邦としての『妥協』なのだ――

 

 

 

 

 

 

 

 

――ガリアの軍事力の形骸化、カールスラントの衰退、リベリオンの分裂は扶桑を超大国に押し上げる原動力となった。特にカールスラントの急激な軍事的衰退は日本連邦を否応なしに戦線の矢面に立たせた。ダイ・アナザー・デイの失敗で、扶桑は現地部隊に兵器を買わせて、事後に会計を決済する方法で兵器を急いで揃えていく。これは日本の予算審議議論の速度が戦時にはそぐわないからであり、ダイ・アナザー・デイを鑑みた『やむを得ない選択』であった――

 

 

 

――ザンスカール帝国残党をひとまず退けた直後の扶桑本土――

 

「山本、ザンスカール帝国残党は退けたようだが…」

 

「うむ。だが、そのせいで南部住民の疎開を推進せねばならんのが玉に瑕だ。それに、現地の陸軍は全滅に近い。南部の防衛は困難になるだろうな」

 

「部隊の再編は?」

 

「生き残った戦車連隊をコンバットアーマー部隊に改編する。その方が却って安上がりだ」

 

「航空部隊はどうだ?」

 

「これも旧型機の払い下げと新型への機種変更で一定の練度になるには時間を要する。技術者のご機嫌取りもせねばならんからな、最近は」

 

ここ数年は航空分野でリベリオン製兵器のライセンス生産が数的主力を占めている。それに納得しない航空技術者は大勢いるため、国産機も一定の数を流通させている。扶桑は独自設計機が世界水準に達していた分、史実戦後同様の流れは承服出来なかったのだ。今や、軍の長老達が世を去り始めたのもあり、扶桑海軍の最高権威となった山本五十六と古賀峯一はそこに悩んでいた。

 

「敵戦艦はどうだ?」

 

「今のところはモンタナの改善型に切り替えているようだ。あと半年もあれば、完全に主力化するだろうさ」

 

「日本側の反応は?」

 

「奴さんは腰を抜かしているよ。空母より優先して作って来てるからな。それも大和型戦艦に匹敵する大きさの。ウィッチ閥がうるさいから、大手を振って新式の大型航空母艦を量産できんのだろう。とは言え、ウィッチの弾は潜水艦狩りで尽きてるはずだ。直に力を失くすだろう」

 

古賀の言う通り、ウィッチはリベリオンではそれほど確保できないので、ダイ・アナザー・デイの損害と開戦時の潜水艦狩りでウィッチ部隊は壊滅状態であった。サボタージュ後に各国でウィッチ部門が解体され始めたのは、『上層部の命を無視し、重大作戦を長引かせた』という重大な事実があったからで、軍での居場所が無くなったと感じた者たちは後輩も引き連れてMATへ移籍したため、現在(1949年当時)までに太平洋戦争での功績の多くが64Fに偏る有様なほど、ウィッチ部隊の練度はバラツキが生じている。ウィッチはこの時点で既に『戦場の花形』ではない事が認識されていた。

 

「育成数は減らすか?」

 

「華族や皇族枠もある以上はお上に裁可を仰ぐしかなかろう。織田時代から通して維持してきた枠だからな。我らには土地との結びつきという利点があるので、一定数は確保できるが、食い合いになるからな。当面は彼女らに負担をかけるしかあるまい」

 

「軍の古参ウィッチは苦々しく思っとるが?」

 

「仕方あるまい。教導部隊を縮小して要員を少しづつしか前線に出せん上、根本的に原理が異なるエンジンへの切り替えが始まってる時代だ。陸戦はともかく、空戦ウィッチは64Fを使い倒し、有用性が維持されている事を政治屋共に示さなくてはならんのだ。それに撃墜王の存在を示さなくては、カールスラント軍に裏で馬鹿にされていたような出来事を繰り返すだけだ。古賀、Y委員会の部下共に言って、メディアを動かせ。予算の確保のためには人心を掴む事が肝要だ」

 

「分かっている。息のかかっている新聞社や出版社を動かす手筈は整っている。公式発表が全く信用されん以上は、彼らに先に報道させるしかない」

 

古賀峯一は山本五十六にそう告げる。報道関係も抑えていると。情報戦も戦の内なのだ。64FはY委員会の思惑もあり、『精鋭部隊』という事が強調されていく。扶桑軍に残された唯一無二の『最前線の最強部隊』であると。実情はそうではないが、日本向けの報道では特に強調されたため、他戦線のウィッチは『その他大勢』扱いであることに反発した。しかし、七勇士の大半や44JV、343空、厚木空、244Fなどの『腕っこき』で慣らしていた部隊の在籍経験者で固められていたため、実戦経験のない教導部隊在籍者を回しにくいという裏事情がある。キマイラ隊の事例があるので、『最前線で徹底的に戦わす』しか、他戦線のウィッチに『編成の豪華さ』を納得してもらえないのが、64Fを支援する側の泣き所であった。

 

 

 

 

 

 

 

――色々な都合でウィッチ枠に含まれた歴代プリキュア達。キュアメロディであるシャーリーは北条響名義の軍籍は得たが、正式には扶桑軍の所属ではない。そこがややこしいところであった――

 

「すると、お前は扶桑に逃れたリベリオン外征部隊の所属なのか?」

 

「ああ。書類上はね。だから、南洋の新島を租借してるリベリオン軍から給金は支払われてるんだ。扱いも出向になってる。国際法上は義勇軍の扱いだから、扶桑人の名前で扶桑の偽装軍籍も作ってもらった」

 

「お前、いいのか?」

 

「この世界じゃ、軍に優秀な奴は殆ど残っちゃいないからね。私みたいに複数の軍籍を持ってるのは意外にいるよ。黒江さんが若いのを発掘出来たのは奇跡に近いよ」

 

「お前も本当であれば…」

 

「20代に入ってるからな。だが、ウィッチであると同時にプリキュアでもあるからな。そのおかげで、今日まで現役なんだよ、少佐」

 

「お前以外に何人いるんだ」

 

「プリキュアになったのは更に限られてるよ。その中でも、あたしやのぞみみたいに、強力なパワーを持ったプリキュアだった過去生を持つのはもっと少ない。ましてや現在の生で軍人な奴はね」

 

転生先で軍人や民間軍事会社の社員であったプリキュアはプリキュアそのものの出現数に比して圧倒的に少数派。ピンクプリキュアでは、キュアドリーム(のぞみ)、キュアメロディ(シャーリー)、キュアハッピー(芳佳)のみが『覚醒以前から軍人である者』である。芳佳は立場上、ウィッチとしてのほうが需要があるので、ピンクプリキュアの中では戦闘の機会が少ない部類に入る。ドリームには最近は更にその一期後輩のキュアハートが補佐に入る事が多い。

 

「それ以外はやってきてから入隊したのが大半だ。軍事知識なんて無きに等しい新米。だから、アンタとの折衝はみらいたちとあたしが交代でするようになったのさ。北郷さんは家の都合で、プリキュアとしてはあまり動けねぇからな」

 

「先生は名家の出だ。それは仕方あるるまい。講道館などの理事や師範を歴任なされているからな。お前はプリキュアだから、今まで現役でいられたと?」

 

「本国が分裂して、教官としての帰還命令が有耶無耶になったのもあるけど、扶桑じゃ、そういうよりも前線で戦うほうが尊敬されるからな」

 

扶桑(日本)ではこの時代、教官任務は軽視される傾向にある。これは人員不足により、新人教育が縮小せざるを得なくなった上、機材が新技術のものに切り替わったので、それまでの教育が通用しなくなったからだ。新人は殆ど入隊せず、しても取り合いである。これは自由リベリオンでも同様だ。

 

「確かにそうだが、新人が育たんだろ」

 

「殆ど入隊しなくなったからなー。多くは軍以外の新設の怪異駆除専門組織に入るようになった。このご時勢じゃ、怪異駆除の待機って大義名分で遊んでいられるから、軍に残ってるウィッチからは睨まれてるよ」

 

「確かに、人と戦うのにアレルギーな者はいたが…」

 

「四年前はそれで問題になってな。敵の超兵器の前にウィッチ隊は蹴散らされ、残った部隊は最終的にウチの部隊だけになった。おまけに近隣の部隊は出動拒否だ。孤軍奮闘って言葉がピタリ合うよ」

 

「それで、三年前以降に部隊の解体が進められたのか」

 

「うちらが孤軍奮闘して、欧州の制空権を守ってる時にタダ飯くらいしやがってたからな。ずいぶん問題になったんだよ。だから、うちの部隊(64F)以外にこの戦域にいるウィッチ部隊は司令部直属ってことで温存されてた精鋭部隊だけだよ」

 

「他国のウィッチはいないのか?」

 

「ウィッチ部隊の解体も進んだ上、45年当時の中堅の殆どは国を超えて移籍していったからな。ブリタニアだって、世代交代の進んだグローリアスウィッチーズを前線に駆り出してる有様だしな」

 

「あの秘蔵っ子部隊も前線送りか」

 

「あそこ、結成当時はベテランぞろいだったっていうんで、プロパガンダによく使われたけど、駆り出されてきた時は『口ばかり達者なトーシロー』が多くなって、うちの足を引っ張る有様。それであの時は途中から後方に回されてたよ」

 

ブリタニアの秘蔵っ子とされた『グローリアスウィッチーズ』は『見かけ倒し』という評判が立ってしまった。人員の世代交代で実際の練度が下がっている時期に投入されたため、64Fからは『物見遊山に来た』と揶揄された。更に運悪く、敵の兵器に(当時に実戦テスト名目で使われた)F8FやP-80などが登場する時期にぶち当たったために隊員の負傷率も高く、64Fを支援するどころか、足手まといであった。彼女らは『役に立たない』との烙印を押され、ダイ・アナザー・デイの後半には後方に退けられた。この時代には結成当時のエースたちがR化を選んで復帰し、練度も持ち直しているので、欧州の前線にいる。

 

「大作戦で功を挙げたのがお前らだけとはな…。ハルトマンについては詫びる。あいつはジェットの事はバルクホルンの一件で嫌っててな」

 

「あいつも、どこかで折り合いつけねぇといかんぜ?」

 

「それなんだ。今後のネウロイの進化如何によっては……」

 

坂本BはハルトマンBが精彩を欠いたことを詫びる。ハルトマンほどのベテランでさえ、躊躇いが生じていると、普段の輝きが失われてしまうのを目の当たりにしたからだ。対して、明確な目的があった芳佳Bは普段どおりに戦えていたので、余計に際立ってしまった。

 

「お前、なぜプリキュアに?」

 

「ルッキーニを守りたい一心が能力を呼び覚ましたのさ。ルッキーニの奴、あたしが変身できるようになったのに、妙にガックリしてなぁ…」

 

「あー……想像ついたぞ」

 

「でしょ?」

 

キュアメロディになった姿はルッキーニ曰く、『なんで、そこが凹んじゃうのー!!』ということで受けが悪かった。とは言え、戦闘能力の向上は本物である。坂本Aは『何故、私の周りにはこうも、プリキュアが多いのだ?』とぼやいたという。この頃にはチームの再結成も成っていたので、スイートはSS、5と並び、『欠員がない』プリキュアチームになっている。

 

「響、そろそろ次の仕事に行かないと」

 

「もうそんな時間かよ。ほんじゃな」

 

パートナーの南野奏(クレア・ヒースロー)に促され、シャーリーは次の仕事に向かうシャーリー。プリキュア仲間からは前世での名で呼ばれているのがわかる。前世と違うのは、のぞみと親友に近い間柄になっていることだろう。のぞみが『夢原のぞみ』名義でプリキュア活動をしているのに対し、シャーリーはウィッチとしても著名な立場故に『北条響』の名義をあまり使えないのだ。

 

「君は南野奏……と言ったね?」

 

「はい」

 

「シャーリーを宜しく頼む」

 

「わかってます。昔からよく知ってますから」

 

その一言に奏は微笑みながら応える。坂本Bはその言葉を聞き、どこか安心したようだった。『昔からよく知っている』との一言は坂本Bにシャーリーと南野奏の関係を推理させるには充分な証左だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――B世界のウィッチたちはA世界のウィッチに突然変異のような形で現れた『Gウィッチ』達へ不思議な気持ちであった。その中でも更に希少な『プリキュア』はA世界の特異性の証明であり、49年になっても、シャーリー達以前の世代が現役でいられる理由であると、カンのいい者は気づいていた。

 

「単に魔力が無尽蔵になっただけでは、あそこまでの強さは得られないわ。シールド強度が一定になったとしても、怪異の攻撃力は年々増加しているもの。魔力値そのものが安定する程度は宮藤さんの事例があるわ」

 

「あのプリキュアという異能だが……覚醒めれば、リベリアンのような形式的にしか格闘訓練を受けていない者でも、一流の戦士になれるのか?」

 

「映像を見る限りじゃ、そうなるわね」

 

「しかし、チームは細かく違うというのに、それを束ねるカリスマ性を持つ者がいるとはな」

 

「合同部隊の指揮官のようなものでしょうね。彼女らの血の献身が『四年前』の戦闘を勝利に導いた。宮藤さんもその内の一人だそうよ」

 

「宮藤も……だと!?」

 

「ええ。この世界の宮藤さんはウィッチとしての能力とプリキュア能力を兼ね備えているそうよ。ストライカーの使用記録によれば、震電はこの世界では、宮藤さんの手に渡る事はなかった。テストはされたようだけど、レシプロストライカーとして出回る事はなかった。横須賀航空隊が『テスト未了』を理由に出さなかったらしいわ。その試作機は三年前だか二年半前のクーデターで焼失。メーカーに残っていた別の試作機をジェット戦闘脚に仕立て直した。その兼ね合いで、宮藤さんは零式の後継になるはずだったけど、紫電の普及で大規模量産が見送られた『烈風』ストライカーを改良して凌いだとあるわ」

 

「そうか……。それで、宮藤は?」

 

「宮藤さんはウィッチとして名が知られていたから、プリキュアとしての戦闘記録はあまりないそうよ。その逆に、ウィッチとしては無名に近かった中島さんはプリキュアチームのリーダー格として活躍。別名義のほうが有名になってるわ」

 

「私やハルトマンはどうなった?」

 

「色々な騒動に巻き込まれたようだけど、エーリカは金鵄勲章の国外初の受賞者で、陛下にも拝謁する名誉に預かってるそうよ。あなたは私が不祥事で事実上、運営から身を引いた後のカールスラント代表として活躍。この時代には二人共、少佐だそうよ」

 

「ハルトマンはなぜそこまで?」

 

「ここじゃ、『剣豪』として名を馳せている上、異名も『黒い悪魔』。……剣の才能に開眼したのね。それと、私が失脚した後は隊の潤滑油的役目を担っている」

 

ハルトマンのブロマイドは1945年のダイ・アナザー・デイの後は坂本に代わるポジションになったかのように、剣豪としてのイメージが強調されている。違うのは剣を背負わず、腰に提げている点だ。使用ストライカーも扶桑製になっている。これはカールスラント製のユニットが生産縮小で手に入りにくくなったり、戦闘の様相が代わり、ストライカーには火力と誘導ミサイルを躱せるだけの『小回りの良さ』が求められる時代になった故である。ダイ・アナザー・デイ後半期に補給の都合でキ100(五式戦闘脚)を主に使用するようになってからは扶桑製、あるいはそれに近い設計思想のユニットを愛好するようになっている。

 

 

「しかし、こうも違うものになるのか?」

 

バルクホルンBは広報部が売り出しているハルトマンAとキュアドリームのブロマイドを手に取り、そうつぶやく。

 

「単に、世界の違い……の一言では片付けられないわね」

 

ミーナBが見ているダイ・アナザー・デイの映像で活躍する歴代プリキュア。それを事実上は率いる形のキュアドリームの勇姿は、錦としての地味な戦歴と裏腹の華々しさを備えている。その彼女らの傍らに一人の扶桑人青年がちょくちょく姿を見せているのに気づく。

 

「ん?この青年は……誰だ?」

 

「えーと、扶桑軍の民間協力者らしいわ。でも……扶桑人にしては背が高いわね…」

 

その青年こそは青年のび太。170cm台の身長は1945年当時の日本男性の平均身長からすれば、かなりの大柄である。そこそこ整った顔立ち、手に持つ大型のリボルバータイプの拳銃など、当時の扶桑人にしては珍しい服装(西部劇風のポンチョ)をしていた事により、かなり目立つ。二人が引き付けられたのは、彼の神業的な早撃ちである。

 

「…今の早撃ち、何秒だ?」

 

「……0.1秒、あるいはそれより早いわ。私達は曲芸師じゃないから、早撃ちと言っても、数秒間の隙がある。彼は相手が気がついた時には引き金を引き終わっている。西部のガンマン並か、それ以上よ」

 

「……信じられんな。リロードもリローダー無しでまたたく間に終えている……。しかも、あの威力はなんだ?357マグナムよりあるんじゃないか?」

 

「普通の扶桑人の男性に扱える大きさと威力には見えないわね……」

 

のび太が持つ銃は『スターム・ルガー スーパーレッドホーク』の長銃身仕様をベースにしたカスタム銃で、ウィッチ世界で最新であった『357マグナム』よりも遥かに大威力の弾丸を装填できる。のび太は青年期になっても体格は割に細めであったので、大威力の拳銃を撃てそうには見えないが、その実は細めながら、そこそこ鍛えられた体を持つ。ウィッチではない普通の人間、それも軍人でない民間人の男性が大威力の回転式拳銃を西部劇のように撃ちまくるのは衝撃であった。

 

 

「この世界では、あんな化け物が市販されておるのか?」

 

「さぁ……」

 

ミーナBとバルクホルンBは知る由もないが、このA世界においては既に454カスール弾、.50 Action Express弾、.500S&W弾などの後世において現れるはずの強力な拳銃弾が使用され、ウィッチ狩りなどで使用されている。ダイ・アナザー・デイで示された一つの事実とともに。

 

 

――『純鉄で作られた454カスール弾以上のスケールの拳銃弾は、如何なる魔力量のウィッチのシールドも容易に貫通せしめる』――

 

マグナム弾やライフル弾でも、そうは貫通しないはずのウィッチのシールドを突破するには『魔導殺し』の純鉄製の弾丸が最適であるという事実。ウィッチが単にシールド頼りでいかなくなった最大の理由。ゴルゴとのび太が味方側で証明してみせたその理由は、ウィッチの栄華に一つの終焉をもたらした。

 

 

 

 

――些か未来の結果だが、この時代に登場し始めた第二世代宮藤理論の空戦ストライカーユニットが重装備に舵を切り、更にその次の世代である第三世代宮藤理論でパワードスーツ状に変革した最大の理由はダイ・アナザー・デイの際に純鉄の弾丸で『ウィッチ・ハンティング』がなされたことの戦訓。地上空母への苦戦とウィッチ・ハンティングの戦訓は技術者たちに物理的防御力も必須であると結論づけるには充分な結果だったのだ。――

 

 

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