――キュアドリームはダイ・アナザー・デイとデザリアム戦役での活躍が刺激となり、ついに映画でグレースと共に強化フォームを開眼する展開が決まり、スポンサーであるスネ夫はそれを知らされると、すぐに本人にメールで知らせた――
「えぇーーー!?」
「どうしたのよ、ドリーム」
「ま、マジカル!!スネ夫くんからのメール見て!」
「何々…!?ど、ドリーム、貴方……どういうことぉ!?」
「あたしだって、わけわかんないってばぁ!」
スネ夫からの次なる連絡がそこであった。スネ夫曰く、シリーズの玩具展開が疫病でメタメタに落ち込んだので、『起爆剤』を必要としたために極秘でデザインされていたものであり、本人がシャイニングドリームの方向性の発展系に覚醒めた事のほうが制作側には予想外だったと。
「あ、ビジュアルだ……。グレースとおそろいのコスチュームだ、これーー!」
「貴方、咲さんに釈明しといたほうがいいわよ」
「咲さんに悪いもんねぇ。咲さんは客演の機会がオールスターズの展開が終わるとサッパリだし」
ドリームはスネ夫からのメールの添付画像に苦笑する。のぞみはオールスターズの展開が一段落ついた後の時代でも客演の機会に恵まれているが、咲と舞は色々な要因が重なって、第一世代プリキュアの中では最も影が薄いので、咲に色々と愚痴られそうと直感したのだろう。
「あたしのエターニティはイレギュラーだしねぇ。なれた時のキーも限界突破の怒りと悲しみだし、ZEROとの融合で変身が一回解けた後になったし、ビジュアルはともかくも、プリキュアらしくないからなぁ、覚醒が」
ドリーム自身もその自覚があるエターニティ形態への覚醒の仕方。シャイニング形態を経て、それを更に超えるというバトル漫画じみた覚醒なので、『プリキュアらしくない』のである。
「グレースと対になるデザインかぁ。ま、これはこれでありかな」
「貴方自身はシャイニングの発展系が最強形態だものね」
「シャイニングをもっと強くしたフォームだからね。あの姿は……。この画像の姿はあたしのもう一つの可能性……いや、あるべき可能性かもね」
ドリームは自分がエターニティドリームになった事は『別の可能性』を切り拓いた事だという事をここで実感した。もっとも、制作側も『本物』のドリームが戦いの中でシャイニング形態を基本に『更に強化した』形態に開眼した事は予想外であったのも事実。グレースと対になるデザインであるので、それまでの超プリキュアと別の方向性だという事が分かる。
「向こうの私なら、『なれる』かもね」
「それは言えてるわね…。あなた自身は単独で究極フォームになれるわけだもの。今度の定期連絡の時に教えてあげればいいんじゃないかしら」
「先にりんちゃんに伝えておくよ。今頃、向こうの世界に行ってるはずだから」
ドリームも後で知らされるが、ルージュはその頃、B世界で一暴れしていた。後輩の技も借用して。ただし、B世界での『ブンビー』は立ち位置上の都合で、生きた心地のしない状況に陥っていたりする。
――B世界――
「……何これ……」
ドリーム以外ではいの一番に現場に到着(たまたま、割に近い位置にいた)したB世界のミルキィローズは言葉を失う。パワーアップしたルージュが『プリキュアでない二人』と共に、エターナル(プリキュア5の現役時代の敵組織)の幹部をボコボコにしていたからだ。
『プリキュア!!セレーネ・アロー!!』
色々な枠を飛び越えたルージュの攻撃は続く。今度はキュアセレーネの技を借りて放つ。ルージュは現役時代には弓道部の助っ人の経験はなかったはずだが、何故か様になっている構え方である。
「お前、どうした!?技を急に増やしてい……」
「私自身は色々な事があったのよ。ちょうどローズも来たことだし、この技でも使いますか。ラブギターロッド!!」
シャイニングルージュはこれ見よがしに、次なる技のためにアイテムを召喚するが、それはキュアビートの持つはずの『ラブギターロッド』であった。これにミルキィローズBは仰天する。
「ルージュ!?待って!それは……エレンの……キュアビートの武器のはずじゃ!?」
「細かい説明は後!!ビートソニック!!」
ラブギターロッドを鳴らし、空中に音符を発生させ、そのエネルギーを攻撃に転化。指向性のあるエネルギー弾のように攻撃する。目標はブンビーの守りについている怪物『ホシイナー』である。命中後、直ちに次なる攻撃に移る。
「駆け巡れ!!トーンのリング!!プリキュア・ハートフルビートロック!!」
ラブギターロッドをちゃんとソウルロッドに変形させた上で、『ハートフルビートロック』を放っているので、動きは完全にコピーしているレベルであった。
「えぇーーー!?」
ミルキィローズは驚きのあまりに固まり、B世界のルージュ自身も、戦場に到着するなり飛び込んできた光景が『自分自身がキュアビートの技であるはずのプリキュア・ハートフルビートロックを使う』というものなので、ショックが大きすぎて、魂が抜けかかるレベルに茫然自失とする。
「その姿……。のぞみさんの言う『向こうの世界』のルージュなんですか!?」
「そうよ、レモネード。説明しにくい状況で会っちゃったわね」
シャイニングルージュはハートフルビートロックでホシイナーを瞬時に浄化し終えたわけだが、持っている武器がラブギターロッドであり、後輩のキュアビートの技を使ったところでは説明が激しく難しい。
「クソぉ、今日は厄日だ~!撤収!!」
ブンビーは状況を鑑み、なんとか撤収する。
「あ、逃げました!!」
「放っておいていいわ。すぐには再攻撃はできないくらいにフルボッコにしたから、当分は顔見ないで済むわ」
「そ、そうですか…。今日はどうして?」
「なーに、様子を見に来たのよ、レモネード。ここののぞみが拗ねてるって聞いたから」
「状況は分かったけど……、なんで!他のプリキュアの武器を使えるわけぇ!?しかも、技をちゃんと撃てるなんて!!」
「ウチののぞみから聞いたでしょ?あたしも壁を超えたのよ、ローズ」
「そ…そう…あはは…」
「ルージュ、音楽の成績良かったんでしたっけ?」
「ああ、これは特訓したのよ。向こうであたし、色々あって、のぞみを泣かせちゃってね。」
「のぞみを泣かせた?」
「ええ。事故みたいなことがあって、記憶喪失になってた時期があってね。結果としては良かったんだけど、あの子、錯乱寸前になってね。それで強行手段をラブやはーちゃんが取ったのよ。あんたには悪いことをしたわね」
「私が助けに行くって選択はなかったの、りんちゃん」
「敵は強化フォームのあんたを一蹴できる強さだったのよ?それに、究極フォームのキュアハートでさえ、逃げるので精一杯……」
「そんな……!」
第二世代最強のキュアハートすら逃げるのが精一杯の敵。その意味を悟り、青ざめるドリームB。
「うちののぞみが世話になってる人から道具を借りてあるわ。驚かないでよ?」
おもむろにタイムテレビを取り出すシャイニングルージュ。タイムテレビにB世界のプリキュア5が驚くが、それにはかまってられないルージュ。主に写す映像はデザリアム戦役の映像だが、そこがどういう状況の世界かを示すため、統合戦争以前の映像も見せる。統合戦争の惨禍、地球連邦の樹立からわずか数十年で驚異的に復興したものの、ジオン・ダイクンの登場を期に情勢が不安定化。一年戦争に至る過程を。
『神が放ったメキドの火に、必ずや彼らは屈するであろう!!』
ギレン・ザビの扇動的演説。地球連邦軍の必死の攻撃をも物ともせず、オーストラリアのシドニーが近隣のキャンベラ共々に消し飛ぶ衝撃的光景。
「シドニーが……一瞬で……」
「メガトン級の爆発だったらしいわ。シドニーとキャンベラはこの爆発で消し飛んだ。オーストラリア大陸の16%を削り取る規模の爆発と地殻変動でね。それで……」
それにも関わず、戦争は続いた。やがて、ファーストガンダムが獅子奮迅の活躍でジオンのエースを次々と打ち破った事も一因となり、オデッサの戦いで敗れ、地球連邦軍もMSを量産配備しだすと、連携プレイが苦手なジオン軍は加速度的に敗北を続け、最終的にア・バオア・クーで国家指導者たちが死に絶えたジオンは和平交渉に応じ、一年戦争は終わる。だが、これも戦乱期の序曲でしかなく、デラーズ紛争、グリプス戦役、何回も起こったネオ・ジオン紛争、コスモ・バビロニア紛争、ザンスカール戦争といった人同士の戦争、更にガミラス帝国やゼントラーディ人の襲来による『星間戦争』の時代の到来、絶滅戦争に近い様相の戦い。宇宙戦艦ヤマトの登場と彼らによるガミラス帝国中枢の撃滅によるガミラス帝国の崩壊、ガトランティスとの絶滅戦争。そして、プリキュアオールスターズが関わった初の宇宙戦争が『デザリアム戦役』である事が示される。その中でシャイニングドリームとなった別の自分が一人の壮年男性に手も足も出ずに叩きのめされ、それで精神バランスを崩し、ダークプリキュア化してしまうこと、後輩たちがそれをどうにかするために、こまちとかれんを連れて行ったこと、そして、りんが入院していた病院が爆破され、更に自分をかばって、一人の少女が瀕死の重傷を負ったことへの怒りと悲しみで『変身アイテム無し』でシャイニングドリームに変身した後にキュアレインボー化し、その男と戦ったこと、更に世界を滅ぼせる力を持つ魔神との戦闘、和解と融合によって新形態を開眼し、戦争そのものには地球連邦軍の最新鋭のガンダムを以て参加したことも示された。
「じ、情報過多過ぎて、理解がおっつかないよぉ…」
「あ、あんたねぇ…」
ドリームBは頭脳が完全にオーバーフロー状態に陥って、漫画でいう『頭から煙が出る』状態に陥った。そんな中、ミルキィローズは『融合でA世界のキュアドリームは人間とは別の存在になった』事を直感的に悟っていた。機械と融合したという事は『姿は変わらないようでも、中身は相当に変化しているはず』だからだ。生物学的な意味での変化は『老化の停止と再生能力の会得』のみに留まっているが、身体能力面は遥かに向上しており、変身していなくても、以前の通常フォーム時以上のスペックになっている。ブラックRX同様にコンピューターへのハイパーリンク能力も素で備えているなど、黒江は『どこぞのエヴォリュダーじみてるな…』と融合後ののぞみAを評している。(その影響でガンダムX系の操縦法を短期間で会得したとも言える)
「ルージュ、そっちののぞみは……」
「察しの通り、機械と人間の融合体。見かけは変わらないけど、魂のレベルで融合したのよ。だから、肉体が老化しないし、腕や足の一本が斬られても自力で再生できる。身体能力も素で以前の変身した状態以上になってるわ」
「えーーー!?」
ドリームBは素っ頓狂な声と共に腰を抜かす。あの自分自身は人と別の存在に変わっていたといえば、普通はそうなる。
「だから、ココが言ったっしょ?すべてを失いかねないほどの労苦の果てに手に入れたって。ここのかれんさんとこまちさんを巻き込んだのはすまないと思ってるわ」
「それと、あんた、パイロットも兼任してるわよ」
「パイロットって……あんなロボットをよく動かせられますね…」
「やってみると、飛行機や車より簡単よ?それに仕事で行ってる世界の兵器の操縦法は概ね統一されてるしさ。あ、うちのほうのレモネード曰く、『戦車より楽ですよ』だって」
「な、なんですか。それ…」
レモネードBは思わずずっこけてしまうが、地球連邦軍の兵器のインターフェースは一年戦争中から統一されているため、機種転換訓練も上位機種を除けばだが、楽な部類に入る。一年戦争中に連邦が短時間に戦闘機パイロットの多くをMSパイロットに仕立てることが出来た理由でもある。ジオンはネオ・ジオン時代のものはいざ知らず、総合整備計画以前の機種は操作系が統一されておらず、機種転換訓練に手間がかかる難点が存在し、一年戦争末期にザクやドム系が好まれる一方、当時に最新鋭機であったはずのゲルググが学徒動員兵に多く割り振られ、その真価を発揮出来なかったことが証明とされる。だが、エースパイロットのゲルググは通常のジムでは為す術もないのも事実なので、ジムスナイパーカスタムを祖にする『ジム系の上位機種』が作られたわけだ。(逆に、ジオン系諸勢力が一騎当千の重モビルアーマーや大型MSに頼る理由でもある)それでも抑え込みが無理な場合はガンダムタイプを使うのが連邦のドクトリンである。敵勢力が基本的にその時々の連邦の主力機を超える能力の機体を造るからで、連邦は予算不足もあり、『ガンダムは造れても、敵の量産機と戦えるくらいのジム系が造りにくい』という本末転倒な有様である。
「それと、あたし自身も色々とあったから、のぞみほどでないにしろ、魔改造状態なわけよ。みらいとリコのように魔力を持ったし」
「それじゃ、魔法を使えるんですか!?」
「まぁ。実際はそう便利でもないけどね」
ダイ・アナザー・デイとデザリアム戦役での戦いはのぞみやりんに高い魔力をもたらした。メリットは思ったほどはないのも事実だが、時空管理局のデバイスを起動できる、クラスカードを使える(実際に、のぞみやことはが使用した)、一定強度のシールドを張れるという大きい利点もあるので、あるに越したことはない。
「あなた、どうして他のプリキュアの技を!?」
「そう騒がないの、ローズ。それも説明するから。それに仕事仲間の事を紹介したいし」
「仕事仲間?」
「仕事の同僚でね」
ガイちゃんと號ちゃんがここでようやく話に入れるためか、ホッとしたような表情を見せる。彼女らについての説明もややこしいので、一苦労するだろう。
――そののぞみAは戦闘面では一気にオールスターズでも五指に数えられる実力になったが、主婦としての技能がダメダメなのは以前と変わらず、夫のコージが家事を担当する始末。とは言え、ある程度は自炊ができるようになったのが救いだった。コージから話を聞いていたのび太は『畑のレストラン』などの食料品関連のひみつ道具を与え、食事面で援助していた。コージは中学教諭とサムライトルーパーの二足の草鞋を履いている都合で多忙であり、どうしても帰りが遅くなるからだ。のぞみも休暇を取っているとは言え、ススキヶ原を事実上は守っている都合で治安維持に従事しているが、『手当無し』なのは独身時ならともかく、結婚した後では『生活費的意味でキツイ…』とぼやいていたりする。家庭を持つと言うのは、意外に出費があることなのである――
「貴方、その鞘は?」
「先輩からダイ・アナザー・デイの時にもらった三個目の斬艦刀。先輩、元から大物食いでね。エクスカリバーなくても、充分にすごいと思うよ?」
「あの刀は何なの?黒江綾香の故郷の世界の技術じゃ造れない代物よ?」
マリアはそこが気になっていた。斬艦刀はシンフォギアを防御フィールドごと叩き斬れる業物。曰く、『1930年代前半までの戦艦くらいなら、軽く一刀両断できる』というが、ウィッチ世界の技術では不可能な液体金属技術が入っている超高度な技術の結晶なのだ。
「先輩がエネルギー転換装甲と液体金属を使って、一個目を造った後、能力でコピーを造ったんだって。一個目は借りたんだけど、恐れ多くてさ…。うちの軍隊じゃ、黒江先輩が最初の『大物食い』で知られて。その斬艦刀を借りてた黒田先輩がアフリカと紅海で無双したから、いつしか『斬艦刀持ちは大先輩の教え子が受け継ぐ得物』って評判が立っててさー。あたしも覚醒前から剣技には自信あったけど、先輩達とは接点なくてさ」
「それが?」
「うん。あの戦い(ダイ・アナザー・デイ)以降は対外的意味で弟子って事になったから大変だったよ」
「要は他の部隊から文句が出ないように取り繕ったと?」
「うん。先輩は事変を見た世代からは憧れでね。あたしも覚醒前から武勇伝を隊の上官や古参兵から聞かされてた。本当はテスト部隊がほしがるくらいに口で情報伝えるの上手くてね」
「あの時は押され気味だったから、そんな風には見えなかったわ」
「響ちゃん、押しが強そうだからね。先輩、あの子みたいな押しが強いタイプは苦手なんだよ。前の隊(47F)にいた時、古参の下士官がそんな事言ってたの聞いた」
「押しに弱い、あるいは強く出られると断れないの?」
「先輩、お母さんがそういう性格だったみたいで、子供の頃は厳しく英才教育されたみたいなんだ。その名残りかも」
「あの人にも苦手なものはあるのね」
「先輩も人の子だよ?苦手なものの一つや二つはあるって。坂本先輩だって、隠してるけど、ニョロニョロしたの大嫌いで、リバウでミミズかなんかが大発生した時は大パニック起こしたっていうし」
「意外ね」
「あたしだって、現役時代は理系ダメダメで、よく教員免許取れたなーって振り返ってるよ」
「あなた、前世は教師だったの?」
「中高のね。それで上の娘をかまってやれなくて、グレられてね。前世で一番のショックだったよ」
のぞみAはこの頃には、前世を笑い話風に振り返るだけの余裕ができた。それを乗り越えられたのは転生後の事だが。
「今となっちゃ、色々と心残りもあるよ。だから、神様がもう一度与えてくれたチャンスは無駄にはしたくない。とは言え、日本が予備士官の規則変えちゃったから、予備士官になって、有事だけ軍人する選択肢は潰された。今度の戦いが一段落ついたら、当てつけで防衛大学校の講師でもするつもりさ」
変身した姿で現実的な話をするのは気が引けるようだが、扶桑の予備役制度を混乱させた日本の文部科学省に怒りたい気持ちがあるからか、そこははっきり言う。
「日本連邦のシステムはどうなってるの?」
「議会制民主主義のお約束で、基本的に官僚や政治家が強くてね。生え抜きの職業軍人は嫌われ者。だから、あたしがプリキュアの中心戦士の一人だって分かった時の連中の冷や汗ぶりったら。先輩たちが防衛大臣を動かしてくれて、防衛大臣が文部科学大臣に事を伝えたら、文部科学省も大慌て。軍も埋め合わせをすることになってね。おかげで規定より早く佐官になれたよ」
「大変ね」
「そのせいで、実家の姉貴が用意してくれた転職先も断るしかなくてさ、姉貴に謝ったよ。実家近くの学校に教練の担当って事で赴任するの内定してたのに、教練が問答無用で廃止になったから、あたし以外にも大勢のウィッチが路頭に迷う事態になったんだ。あたしはまだ内定の段階だったから良かったけど、教練の担当になってたウィッチは相当に多くて、社会問題になったよ」
扶桑では学校教練をウィッチ確保のために女子学校にも課していたが、それが廃止となったために大勢の将校が現在の職場を失う事態に陥り、扶桑の社会不安が煽られた結果、軍ウィッチ部門の決定的弱体化に繋がってしまった。日本はそれに慌て、揉み消しも兼ねて、ダイ・アナザー・デイ以降、太平洋戦争でも『数合わせ』と言わんばかりに配属将校経験者を前線に送り込んだが、そのまま前線で負傷して、傷痍軍人になる率も高く、却って軍の財政を圧迫した。はっきり言って、大日本帝国の二の舞であった。そのため、1940年代末の時点では生え抜きの扶桑軍人の新人ウィッチは前線に殆ど供給されなくなっていた。
「日本や他の国から勧誘して、前線の補充要員にしてる有様だよ。おまけに、日本の学園都市への報復的な施策で現地の治安は最悪になって、のび太くんの街を守ることになったわけ。それで、変身してる事が多くなったんだ」
「そういう事情だったのね」
「姉さんもそこそこ有名だから、サインねだられると思うよ?」
「せ、セレナッ!」
(マリア・カデンツァヴナ・イヴはキュアマジカル/十六夜リコが自身の死んだ妹『セレナ・カデンツァヴナ・イヴ』の転生であること、リコがセレナとしての記憶を持つままである事から、『セレナ』と呼び続けている。リコもセレナ・カデンツァヴナ・イヴとしての前世は13歳で亡くなっている事から、それを許している)
「いいじゃない。私なんて、ノビスケ君の学校に迎えに行ったら、若い先生たちにサイン攻め食らったのよ?」
「そうそう。あたしも、みらいちゃんと一緒にさ、現役時代に着てた学校の制服で行ったら若い先生たちに囲まれてー……。その先生たちに子供の頃に見てました!!……なんて言われた時にゃねぇ…」
のぞみもみらいも、ノビスケの迎えに行った時に生徒よりも教諭に囲まれ、サイン攻めに遭うアイドルのような事になってしまった事があるという。まだ世代的に新しいみらいはともかく、のぞみは最も古い世代に属するプリキュアであるので、若い教諭たちに『若い頃にあなた達のアニメを見てました!!』と言われたのが精神的に堪えたのか、『とほほ…』と言いたげだ。
「あら、ファンサービスも人気を保つには必要よ?のぞみ」
「さすが、姉さん。慣れてる」
「十万人ライブに慣れてる身としてはね。いい?貴方も心構えを持ちなさいな、心構えを!」
(リコちゃん。お姉さん……)
(スイッチ入ったわ。しばらく付き合いなさいな、のぞみ。姉さん、歌手業に憧れててね…。私が『死んだ』後になれたってのは予想の範疇だったけど、才能あったのね…)
マリアは歌手業もしているため、ファンサービスはお手の物。のぞみに人前に出ることでの心構えを説く。珍しく、熱の入った姿である。リコ(キュアマジカル)はのぞみ(キュアドリーム)にそっと耳打ちをし、姉に付き合うように促す。
――ギア姿だが、戦い終えたばかりのリラックスした表情は珍しい姿である。どこか楽しそうなのは、妹のセレナ・カデンツァヴナ・イヴが転生していた事、キュアマジカルという全くの別人に輪廻転生しても、前世同様に『姉妹』でいる事を許してくれた事で後ろめたい気持ちが無くなっているためだろう。姉のそんな姿をリコも尊重している。この時期には、マリアの前でも、十六夜リコとしての素も出し始めている。リコもマリアのことを『ウチの姉よ』とプリキュアオールスターズに紹介するなど、転生で生まれた『不思議な姉妹関係』を受け入れている。これはプリキュアオールスターズ全体では、秋元こまち/キュアミントと如月ハニー/キューティーハニー(ハニーはこまちの実姉であった秋元まどかの転生体にあたる)の関係に次ぐものであった――
――こうして、マリア・カデンツァヴナ・イヴは野比のび太を介し、プリキュアオールスターズと関係する事で自身が失っていたモノを擬似的にであるが、ある程度は取り戻す事に成功していく。その点ではシンフォギア装者で有数に『恵まれていた』と言える――