ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第百九十八話「1949年の状況とプリキュアたちのある日 2」

――軍隊の風習は一般社会には理解されない事が多い。ウィッチ達独自の社会と風習もそれに入る。軍隊が大衆の目に振れるようになり、更に21世紀世界での基準で物事が判断されるようになったため、古株のウィッチ部隊にありがちであった『部隊戦果だけの公表と個人戦果の非公表』は銃後の士気高揚の観点から、厳しく禁止された。これは『個人の叙勲基準の明確化』のためというのが理由であった。扶桑は事変当時から個人で感状をもらい、金鵄勲章を叙勲されることを最高の名誉とされたが、個人戦果の未公表が後年に揉め事に発展したためにダイ・アナザー・デイ以降、世間の評判が『ハッタリのインチキ』と言われるまでに凋落したカールスラント空軍の代替物としての役目を政治的に担わされた後に戦果公表と確認についての規則が改定された。こうした急激な変革を経験した扶桑の航空部隊だが、爆撃機の反復出撃の戦術思想がレーダーの普及などで否定されたため、旧式の双発以下の日本型レシプロ戦術爆撃機は数年の内に淘汰された。日本型爆撃機は四式重爆に至るまで、事変で失われた大陸領の奪還作戦のみを想定していた都合で搭載量と航続距離が太平洋戦線では不足とされたからだ。結果、航空雷撃が廃れたためもあり、搭載量が比較的優れていた連山を戦術爆撃機として数年は運用した後にジェット機への機種転換が始まり、F-4EJ改の爆装機やF-105、F-111の爆撃機としての採用でレシプロ四発機は代替されていった。(富嶽はあまりに高額であるので、戦術用途への転用はされずじまいだった)――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――キュアミューズ達が用事で新京に向かった後、基地では――

 

「サンダーチーフとF-111を爆撃機として採用かよ」

 

「ま、爆撃機としてしか有名じゃないしね。設計元は憤慨するだろうけどね。レシプロ四発機の代替になる搭載量重視のジェット機というとね。型式番号は欺瞞目的で変えないってさ」

 

「日本がよく認めたな」

 

「実績がある機種だし、旧式の重爆を代替できるジェット機は限られてるからね」

 

「源田の親父さんを口説いたな?」

 

「自衛隊にいる高校のクラスメートに助言頼んだよ。日本側は損害を許容しない傾向が強い上、一撃必殺を好むから。フライマンタは連邦には残ってないから、堅実にいったわけ」

 

のび太はスネ夫の末裔の一人が連邦軍の兵器管理部署に勤めているため、かつての連邦空軍の主力機『フライマンタ』を取り寄せられないかとダイ・アナザー・デイの時に問い合わせたが、ガトランティス戦役時に飛行可能な機体を消耗したと回答が来たので、この時の採用検討会議では堅実にいったという。機甲戦力の更新が上手くいかないのに対し、航空戦力は比較的にスムーズにいっているが、機材更新がハイペースにすぎるという批判が多い。(パイロットの育成が追いつかないので)

 

「とは言え、急激にジェット機にしたところで、育成が追いつかんぞ。教育に自衛隊を動員したところで、最低でも数週間はかかるからな」

 

「仕方ないさ。敵の動きは宇宙艦隊で掴んでるから、MSとかを抑止力にするしかないさ」

 

「やれやれ。機種更新をしまくって許されるのは、機体の価格の安いレシプロの時代だぞ。このご時世じゃな…」

 

兵器の高価格化は顕著であり、相対的に更新速度は鈍る。戦闘システムもM粒子が存在する状況下では21世紀ほど高度化は出来ない。誤作動の危険を減らすためだ。ウィッチ世界は100年以上先取りの形でM粒子の存在する戦闘が当たり前となったためと、ミサイル兵器は怪異には決定打となり得ないために、戦艦や重巡洋艦といった装甲を持つ旧来型戦闘艦艇が淘汰されなかったのである。

 

 

「幸い、水上艦隊はこっちが質で圧倒してる。それで時間を稼ぐしかないよ」

 

「日本は一騎当千を求めるからな。おかげで人材を強引に集められたがな。ん……こりゃ、後でガキ共にヤキ入れんとな」

 

「子どもたちが、なんかやったのかい?」

 

「おう。電車の中で口喧嘩だとよ。ライトニングプラズマとボルトだな」

 

「ビンタじゃ、プリキュアにはいろんな意味で効果出ないからね」

 

「そこが面倒だぜ。プリキュアは防御力たけーから、青銅聖闘士下位相当の攻撃じゃ効かねぇんだよ」

 

 

キュアビートからのメールに嘆息の黒江。そんな二人の視界に、訓練を終えたブラックグレートが見え、同機が帰還してくる。着地と同時に同機がスクランブルオフで翼を畳む。すると、ブレーンコンドルのキャノピーが開き、そこから直接、キュアドリームが降りてくる。プリキュアであれば、25mの高さからの飛び降りはなんのそのである。

 

「訓練終えてきました。アニメより高性能ですね」

 

「内部機構中心に改良されてるからな。そこは高性能試作機の面目躍如だな」

 

「なんのために生まれたんですか?こいつは」

 

「元はマジンガー量産計画の雛形として試作された機能再現機だそうだ。ところが、諸般の事情と請負先の軍需産業がきな臭い事してたんで、量産が中止された。軍からの発注は今更取り消せないから、光子力研究所と科学要塞研究所の主導でイチナナ式が代替で作られたわけだ。ただ、かなりケチってる仕様だから文句出てる。装甲が超合金Zをメッキにして、合金Zにコーティングしたケチなものだから。超合金Zをそのまま造れよと言いたいぜ」

 

超合金Zはジム系のチタン合金より遥かにマシな強度だが、超合金ニューZ以上の合金で鎧うグレートマジンガー以降のマジンガーに比較すると明らかに見劣りする強度である。その関係で『ケチってる』と言われてしまうのだ。

 

「色々と大人の事情ですねぇ」

 

「ああ。レディロボットの改良も進んでると言うが、さやかさん、甲児と結婚した上に、立場上、所長だからなぁ」

 

黒江の甲児への呼びかけは使い分けが曖昧だが、長年の付き合いもあり、関係そのものはフランクである。なお、のぞみAは黒江達が数年かけて鍛えあげているため、戦闘能力は完全にBとは別人である。なおかつ、基本世界で覚醒めるであろう『ドリームキュアグレース』への道筋も消えてはいないので、そこを指して『チート』だという者もいる。

 

「かれんさんから連絡きたんですけど、りんちゃんから連絡あったんですか?」」

 

「ああ。かれんからの伝言によると、向こうのお前、相当に僻んでるそうだ」

 

「だろうなぁ。自分でいうのもなんだけど、相当にチートになってるからなぁ」

 

「波紋を修行中で、気功波もやろうと思えばやれる。その時点でチートだ。シリアスな物語じゃな」

 

「ギャグ漫画の登場人物や『物語のデウス・エクス・マキナ役』には『勝てない』ですからね」

 

「単純な力だけで勝てれば、この戦争はすぐに終わってるさ。だが、世の中甘くねぇってこった。俺たちがやってるのはガキの喧嘩じゃなくて、国家と国家のぶつかりあい。それも近代工業国家同士のな。日本の連中はそれがわかっておらんのだ」

 

Gウィッチは単純な力で言えば、充分に超常的な存在だ。だが、どんなに強大な力でも覆しようがない事柄はある。それは『ギャグ補正の強い者は絶対に死なない』(のび太は一度死んだ事があるが、すぐに生き返っている。甲児の親友であるボスも絶対に死なないギャグ補正要員である)であったり、神から『デウス・エクス・マキナ』的な役目を背負わされて、実質的に不滅の存在であるデューク東郷は何らかの要因が働き、倒せない。メタ的に言えば『主人公補正』を学術的に説明しようとしたのが異能生存体というモノだが、のび太とゴルゴはその該当者である。自らの肉体の寿命以外の外的要因を尽く退けるほどのものだ。そして、個人単位では聖闘士やプリキュアとて、近代国家同士の戦争の様相を覆せない。近代の国家総力戦というのはそういうものだ。アムロ・レイとファーストガンダムの例は超特殊な事例である。

 

「アムロさんの例は超レアケースだし、連邦がジオンに勝つ一因だが、それだけが連邦が勝つ理由じゃないんだぞ?ったく…」

 

「君たちがヒロイックだからさ。ボクもその一角に入るんだろうけど、この姿だと、子持ちの三十路男だぜ?」

 

のび太は2021年には30代前半だが、既に小学生の息子を抱える身。本来は息子の育児のために戦いから退くつもりだったが、運命はまだ彼を必要としているのだ。

 

「お前は本当なら、普通に環境省の仕事してていいんだぞ?裏稼業も休業中だろ?」

 

「いや、前に話した従兄弟がね。どうも、23世紀に飛ばされたっぽいんだ」

 

「のび太郎とかいう……」

 

「うん。昔に一度会ったきりの縁戚の従兄弟。そいつの足取りを断片的につかめた。ヌーベルエゥーゴにいた」

 

「ぬ、ヌーベルエゥーゴ!?」

 

驚く一同。ヌーベルエゥーゴというのは、デザリアム戦役でのぞみの仇敵であったタウ・リンの率いていた過激派のテロ組織。それに属していたというのかと。

 

「名前は偽名を使ってたようだ。最近に整形手術かなんかで外見と声を変えて、あそこの残党をはぐれゼントラーディや軍のドロップアウト組のならず者たちを束ねて、自分の組織を造ったようだ。ザカールは恐らく……」

 

「そいつの手に?」

 

「間違いないね。それに、キュアブラックはたぶん……ヤツの手に」

 

「や……ヤロウ!!許さねー!!」

 

キュアドリーム(A)は熱り立つ。錦からの影響を受けたためか、B世界の彼女と違い、好戦的な思考になっている面がある。口調も粗野で勝ち気なものになることがあるが、これは錦が遺した遺産である。

 

「熱り立つな、ドリーム。今すぐどうこうはできん」

 

「奴の狙いはボクだろう。奴は思春期からは僕に瓜二つなことに近親憎悪を抱いていたらしいからね。血を分けた従兄弟をこの手で殺る事になるけど、これも運命か」

 

「のび太くんがやることないよ!そいつがヌーベルエゥーゴにいたのなら……このあたしが代わりに……!」

 

のぞみAはデザリアム戦役でりんを奪われかけた事もあり、自分もボロボロにされたヌーベルエゥーゴの構成員には情け容赦しない。大恩あるのび太の従兄弟だろうと、自分が倒すとまで言い切る。

 

「これは従兄弟のボクへの挑戦だ。受けて立たないわけにはいかない。アムロさんも言ってただろ?革命はインテリが始めるが、夢みたいな目標掲げるから、いつも過激なことしかやらないって。あいつには、ジオン・ダイクンやシャア・アズナブルみたいな高尚さはない。大昔の学生運動や過激派の大半みたいな動機だろうさ」

 

 

のび太はそう断じ、彼を倒すためにレイズナーマークⅡを用意したのだと述べる。

 

「これは僕の不始末のようなものさ。だから、奴は僕が倒すよ」

 

「ううん、のび太くんに親戚を殺させるなんて、そんなこと…、そんなことさせられないよ!!ヌーベルエゥーゴには借りがあるんだ、あたしが……あたしがそいつを……!!」

 

そう告げる時ののび太はどこか哀しげな表情だった。のび太に大恩があるキュアドリーム(A)は自身がのび太と姻戚関係(養子の妻)になっていることもあり、胸が締め付けられる想いだった。先輩であるキュアブラックが彼に囚われている事は確実なので、自分がどうにかするしかないと考えている。のび太の従兄弟といえど、怨敵たるヌーベルエゥーゴの一員なら、かける慈悲はないと。その思いからか、のび太郎の始末は自分がやると強く主張する。彼女にしては珍しく、敵愾心を顕にしての言葉だった。これがタウ・リンが自らの存在を以てして、のぞみへもたらした『激昂心』と『敵愾心』であった。(ある意味、ヌーベルエゥーゴの自業自得だが)

 

 

 

 

 

 

 

 

――扶桑皇国の主力艦艇の対空能力の飛躍はウィッチの艦隊への帯同の必要性を薄れさせた。更に敵機の性能が当時に普及していたレシプロ戦闘脚の速力を遥かに超えた事、一般ウィッチの空戦機動は世に知られるエースたちと違い、戦闘機と代わり映えしないものであったため、ジェット機を落とせる手段を持たない(アウトレンジされる、火力不足など)のもあり、直掩任務からも外され始めた。ダイ・アナザー・デイ後は刀剣類による接近戦を行える者も減少したからだ。上層部は想定外にウィッチの保有する空戦技能が単一化されていたことに気づいたが、銃火器を撃つ以外に戦う手段を持たないウィッチが大多数になっていたため、教育の長期化が進む時勢を利用し、カリキュラムに接近戦闘を盛り込む。実質の空挺歩兵化を進めるのが兵器の発達の中で生き残る道だったからだ。可変MSやVFなどの未来兵器がマルチロールファイターとしての究極形を見せた事もあり、空戦ウィッチに旧式ストライカーで爆撃をさせる必要はなくなった。新式ストライカーの普及が遅れたのもあり、儀仗的意味合いでのみ維持される部隊が増加した。実戦に耐える部隊はもはや事変以来の伝統を持つ(多くのウィッチ部隊が1945年からの数年のうちに人員の移籍で消えていき、事変以前に編成されていた部隊は消えてしまい、第一戦隊を前身に持つ64Fのみが存続している。ウィッチ技術と技能の継承目的で、64Fとその支援部隊のみが実戦的な訓練を行っている)64、50、244の3つのみ。他の部隊は多くが人型兵器運用部隊へ改組したため、純然たるウィッチの教育・訓練はこの三つの部隊に分隊が設けられる形で決着し、本土で訓練を行う専門部署が設けられていた――

 

 

 

 

――戦局は膠着状態にあった。組織はテラーマクロとアポロガイストを送り込み、歴代プリキュアの戦力に探りを入れる。テラーマクロは生前は武道家であり、赤心少林拳の使い手であった。人間社会に潜伏した際に『黒沼外鬼』を名乗り、赤心少林拳に入門していた。それを仮面ライダースーパー1/沖一也から聞いていた歴代プリキュア達であるが、元々が格闘技の心得も接線もない、一般の女子中高生だった事や、多くが変身した際の技を含めたスペックに頼っていた事もあり、遭遇したプリキュア達の複数が返り討ちにされ、(赤心少林拳の奥義で重傷を負わされた)軍病院送りにされる事例が生じた――

 

 

「バダンめ。テラーマクロを生き返らせたか…。何人が病院送りに?」

 

「第二世代以降の子たちに多いわ。救出した他部隊の判断で軍病院に送られたと報告が入ったわ」

 

「で、なんとか五体満足で帰還したのがお前とはな、レモネード」

 

「一応、前世の仕事の関係で殺陣には慣れてましたし、プリズムチェーンとレモネードフラッシュの合せ技で目眩ましして、その場はどうにか逃げおおせました」

 

「第二世代以降の子は格闘の経験がないのですか?」

 

「そういうわけではないが、今回の敵はかつて、仮面ライダースーパー1の戦った『ドグマ王国』の長。しかも、元はプロの武闘家だ。我々は総じて、ただの女子中高生だったのだ。それを考えれば善戦できたほうだが……」

 

キュアマカロン(北郷章香)はそう断言する。テラーマクロのことは沖一也から聞かされており、スペックとは別の次元で差がある事を明言した。キュアレモネードは戦闘経験値が高い事、戦車道世界にいた関係で護身術を身に着けていたことで偶然に逃げおおせただけである。相手が武闘家であったテラーマクロであれば、幸運としかいいようがない。

 

「問題はきちんとした格闘技の経験がある者が転生した者を含めても、実に希少だという事だ。仮面ライダー達は皆、格闘技を何かの形で極めていたからな。我々の多くは戦う内に身についていったもので、悪く言えば、基本がなってない『我流』だ。それに…、必ずしも全員が『転生』をしているとは限らん。これから幹部会議を開いて、善後策を練る。まともに戦える者が文字通りに少数なのでは不味い」

 

「ええ。どうします、マカロン」

 

「そう簡単なことではないからな、これは…。小技を繰り出して逃げおおせる事ができても、まともなダメージを与えられんのでは話にならん」

 

「でも、元から格闘技をこなせるのは少数ですよ?」

 

「わかっているよ。レモネード、君も手伝ってくれ」

 

「わかりました」

 

歴代プリキュア達の多くは戦闘時の徒手格闘は我流であるため、テラーマクロや仮面ライダー三号のような『元から武闘家であったり、格闘訓練を積んだ者』には不利が否めない。64Fの『聖闘士である者』を省いた場合、歴代プリキュア達は修行を積んだ者以外は戦力外通告を受ける者が続出してしまう。それは大問題である。仮面ライダー三号は圧倒的に強い(その戦闘能力はV3以降のライダーの殆どを圧倒するという)情報が伝わっているため、三号や四号といった組織が正統な仮面ライダーの流れとは別に用意している『仮面ライダー型の改造人間(ホッパータイプ)』への対策は急務であった。64Fが勤務中の幹部を召集しての幹部会議を開くことは滅多にないからで、如何に大事なのかという話である……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――当時、軍部は上層部を中心に政治的な締め付けが酷く、実質的に『横の繋がり』も派閥の根絶を理由に絶たれたことから、組織だった連携行動が却って取れなくなってしまうという有様であったので、前線では、64Fしか『ウィッチ部隊』で即応可能な部隊はいなかった。ウィッチ部隊は命令に不服従であることを理由に、ダイ・アナザー・デイ後はつるし上げ的に多くの幹部に監督不行き届きの処分が下った。それを不服として、多くのウィッチが部隊ごと軍を抜けたため、兵器の発達を理由に、軍事的に見限られてしまう。結果的に、64Fはウィッチ育成と運用ノウハウの継承目的に、隊内に保有する教育隊の規模が現存する部隊の中で一番に大規模となっていた。太平洋戦争で実働主力となるであろう新世代の多くは三つの部隊の教育隊から輩出されていた。年間で40名前後が卒業するので、かつての訓練校に比べれば遥かに小規模であったが、一般校で大規模に募集・教練することが不可能に陥った時代を鑑みれば、教練の職務を失った多くの将校に一応の働き口を与えられたため、状況に一定の改善が見られたと言える。64Fはもっとも教練が厳しいが、それは部隊の予備隊員の選抜も兼ねているからである。また、幹部級は人外と言える戦闘能力を備えるため、実質的には後方支援要員の選抜であったが――

 

 

 

 

 

 

 

――実際、夢原のぞみ(A)は1949年の春に入ると、それまでの努力と経験が実を結び始め、転生した肉体の持っていた草薙流古武術に加え、聖闘士(主に廬山系)の闘技、黒江がゲームのものを再現した『機神拳』、流派東方不敗。そして波紋法の心得を得るに至り、赤心少林拳も習っている。ダイ・アナザー・デイでの苦い経験とデザリアム戦役の苦しみの経験はなんだかんだで得難いものであったのが分かる。彼女の護身用拳銃は最終的には圭子の薦めでベレッタ系統を普段は持ち歩く事にし、日本に行く時は特別許可を得ている。本分が扶桑軍人であるからである。また、タウ・リンの一件以降は『素体』であった錦の持っていた攻撃性がのぞみが元から持っていた激昂心と混ざり合う形で表面化しているため、以前より情け容赦のなくなったと思われる苛烈な言動も増えている。とは言え、コージ(小々田コージ/ココの転生した存在で、烈火の鎧を受け継いだサムライトルーパーである)から『仁の心』について説かれたり、この時期までに自身もサムライトルーパーの力である『超弾動』に覚醒、制御を身に着け、サムライトルーパーの技を撃てるようになったことで一時ほどの不安定さはなくなり、『血気盛んな若者』の域に収まっている。のぞみは愛するコージを自分が守りたいのだが、デザリアム戦役では逆に彼に救われた。そして、航空事故で家族を失い、孤児となったコージを養子として引き取り、我が子同然に育てたのび太への恩をコージの『伴侶』として返したいという思いが強い。のび太に一回はときめいた事があるのは、生前の小々田コージと青年のび太はとても雰囲気が似ていたからである。コージと再会し、籍を入れた現在では恥ずかしい話だが――

 

 

 

 

――ダイ・アナザー・デイ後に野比家で撮られた新しい家族写真には、キュアドリームと烈火の鎧を纏ったコージが加わっている。二人が婚約した時期に撮られたもので、のぞみはコージがのび太の養子である事に驚き、後輩であることはとも、戸籍上で義理の叔母と姪の関係になることに気づき、チームやオールスターズの皆への説明に四苦八苦することになった。北条響(シャーリー)、桃園ラブといった『プリキュア三羽烏』の仲間、自身を心配してくれていた花咲つぼみ(アリシア・テスタロッサ)、自身を姉のように慕う愛乃めぐみ、そして、幼馴染の夏木りんから特に強く祝福された。ヴァージンロードを共に歩く父親役はのび太が引き受け、芳佳、坂本との合同で挙式と結婚披露宴を和洋の折衷で行った。48年のある日の事だ。芳佳もキュアハッピーなので、本来ならば世間の話題をさらうが、戦時中なのと、坂本が『職業病』で『世間の注目は浴びたくない』と希望を出したので、式場は基地の格納庫となった。これは芳佳の祖母が孫娘の結婚式は和風を望んでいたためだった。しかし、色々な兼ね合いで和洋折衷にせざるを得なくなった。そんな予想外のドタバタを挟みつつ、のぞみ、芳佳、坂本は同時に入籍。軍高官たちは式場で出された引き出物の処分方法に悩んだという――

 

 

 

 

 

 

――他の歴代プリキュア達も形式的にだが、護身用拳銃は持っている。変身前における威嚇などの目的で持たされた。仕方がないが、ウィッチ世界の扶桑は戦前の日本のように『一般人が銃を購入できる』環境にあるためである。流石に日本も戦後世界のように『銃規制を扶桑でも日本と同等に強める』事はいろんな兼ね合いで見送るしかなかった。(許可制にするのが精一杯であった)また、士官たちは護身用拳銃を自前で購入する風習があり、官給品は外地派遣経験者ほど使われないという事実があった。これは圭子が先鞭をつけた事柄であった。士官用拳銃の国産統一品という名目で生産されていた九四式拳銃も事変と大戦での混乱でその思惑を達成できぬままに多くが倉庫で死蔵され、士官用は結局、複数の外国産拳銃が入り混じり、圭子のように外見にカスタマイズが施されたものまで公然と使用されている。日本はSIG SAUER P220などの自衛隊の持つ自動拳銃の供与を試みたが、扶桑の銃火器工場の雇用維持や近代化などの兼ね合いで、いきなりの大量供与は見送られた。それと、軍刀と拳銃については『個人の嗜好が多分に許される』文化が陸海を問わずにあったため、現場の将校達の猛反対にあったためだ。とは言え、エースパイロットの海外派遣が常態化した後の時代であったため、派遣される軍人が買う拳銃は欧米製のものが主流となっていたために、その使用弾薬は殆ど統一されていたという幸運もあった。64Fは幸いにも自衛隊などと連携関係であるため、幹部級以外に支給される拳銃は自衛隊と共通であった。防衛装備庁が胸を撫で下ろしたのはそこであった――

 

 

 

 

 

 

 

 

――日本連邦軍という『一つの軍隊』として扶桑と日本の実力組織を一体運用するにはかなりの苦労があった。海軍の任務部隊編成化の挫折、ウィッチ世界の実情として『指揮専用艦』は怪異からの自己生存性の低さを理由に忌避されている事、ある時点まではウィッチ装備重視であったために、通常兵器の予算増額、近代化改修にウィッチ派閥の強い抵抗に遭った。ダイ・アナザー・デイ後の空母『蒼龍』と『飛龍』(ウィッチ世界では史実の翔鶴型航空母艦の大きさ)の近代化改修への妨害工作と破壊工作、機甲部隊の大口径砲への強い忌避感など……。問題は山積していた。だが、64Fにおんぶにだっことしか言いようのない戦場の実状、敵方新兵器の飛躍的強力化などを鑑み、ついに扶桑軍の保守派も折れた。ダイ・アナザー・デイ中のサボタージュを大義名分に、厄介なウィッチ派閥の解体と危険思想者の中央からの追放が断行され、『人材の太平洋戦線への一極集中』が議決され、形式的に必要な部隊以外の扶桑に残された人的戦力は太平洋に集約された。だが、現実問題が立ちふさがった。64F、50Fの二つは外征部隊として重視されたが、数年かそこらでMATに移った者の穴を埋められるだけの人的資源を発掘することは如何に扶桑がウィッチ大国であろうと、どうにもならなかった。こうして、他国の義勇兵に頼る事が再び行われ、軍縮で職を実質的に失ったカールスラント空軍の下士官や将校を大量に招き入れた。その内のエース級は64F内の三つの中隊で集中運用され、1949年には実働段階に入った。こうして、扶桑は内々にウィッチ兵科の将来的な『発展的解消』に向けての検討を始めつつ、戦争を勝ち抜くために『一定数のウィッチの確保』を目指すという『矛盾した方針』……。悪く言えば、二枚舌的な方針を定めるが、1945年当時より減少した『扶桑海事変経験者』達頼りの状況を改善したいというウィッチ出身参謀たち(事変~欧州戦線初期の頃の経験者が多い)の切なる願いが作用した結果であった。実際、64Fの主力も『事変から欧州戦線の初期を経験した最古参級の人員』であり、その平均年齢は歴代プリキュアで引き下げて尚も、1949年頭の時点で『20代半ば』に到達する。ウィッチ界隈での常識では『超高齢』である。それを憂いて『世代交代』を志向するウィッチ出身参謀達だが、人員不足を理由に、自らが戦線復帰せざるを得なくなることも当たり前になりつつあるなど、太平洋戦線の実状を把握しているとはいい難いポカも続出していた。軍を物的に近代化することにも手間取る有様なので、その人心を一つにまとめるには今しばらくの時間が必要であった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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