――RGM-152『ジェイブス』。型式番号が決まる前はRGM-147が囁かれていたが、軍の要望で『キリのいい数字がいいでしょう?』という事で150番台に決まったという。ジェイブスはミッションパック式であるが、肝心のパックの設計が殆どなされず、機体サイズがミドルクラスに上がった都合で小型機に適合しない専用になったのが空母機動部隊の不評を買った。ミッションパック設計が裏目に出たケースとなった。64Fに回された個体はミッションパック『ヴェスバーパック』を機体の基本装備とした再設計型で、B型とされる型式だ。その外観はジャベリンにヴェスバーを装備させたもので、ジム系のお約束で『弱そう』と言われるが、サイズが大型化した恩恵で高出力型ジェネレーターを積んだために機体出力は飛躍し、ガンブラスターよりも高出力である。設計時の仮想敵がリグ・コンティオやゴトラタンなどのザンスカールのハイエンド機だった名残りである。系統的にはグスタフ・カールの発展型に属するため、ジェガンの正統な末裔である。この生産上の混乱で配備数は削られたが、必要上、宇宙艦隊を中心に優先配備された。保有機の老朽化が激しい地上軍も配備を要望したので、結局、連邦政府も認めざるを得ず、第一次生産分の600機が各地に配備され始めた。64Fはヴェスバーが本体の基本装備として再設計された型の先行生産機を受領している。純然たる連邦系量産機で初の『アインラッドに対抗できる攻撃力』を得た事で連邦軍の現場の士気も高まった。デザリアム戦役後の再建の一環である――
――64F基地――
「加藤くん、プリキュアへの訓練カリキュラムの消化率はどうか」
「ハッ。現在、ピンク組はおおよそ40%、その他のプリキュアも30%を完了しております」
「上々だな」
「その姿で真面目な台詞回しは妙な感じですよ、北郷少将」
「仕方あるまい。親父や叔父貴の前でプリキュアの姿は見せられんからな」
北郷章香はキュアマカロンである。北郷としては既に戸籍上で30代に達しており、階級も少将だが、本人は気苦労が多い立場なので、前世の姿でもある『キュアマカロン/琴爪ゆかり』の姿でいることが多い。これは実家が講道館などの理事を歴任しつつ、代々の軍の高官を輩出した家柄なので、その若き当主としての柵が嫌なためで、そこは琴爪ゆかりとして生きた頃の名残りだろう。
「外見年齢はいくつなのです?」
「17だ。現役時代の頃はそのくらいだったからな。相方がおらんのが寂しいがね」
相方とは、キュアショコラ/剣城あきらの事である。某歌劇団の男役のような振る舞いのプリキュアであり、歴代でも目立つので、寂しいようだ。
「貴方のチームメイトのキュアホイップですが、これから徐々に参加させますが、よろしいですね?」
「実戦に出さんと、カンが鈍るからな。構わんよ」
「わかりました。それと、キュアミラクルの乗機は」
「システムのテストもあるし、当面はストライクルージュでいいだろう」
キュアミラクル/朝日奈みらいはこの数年は通常の戦闘も増えてきているが、キュアサンシャインと共に新システムの被験者として、テストパイロットの任についていた。新システムは『MSをコンバットスーツの感覚で運用できる』という利点がダイ・アナザー・デイ、デザリアム戦役で評価され、テストが続いている。なお、インパルスガンダムやデスティニーガンダムも一通りの解析が終わったので、そのテストに回される予定もあるという。
「そのストライクルージュですが、オーブ向けに現地の機体の設計を手直しして製造した機体だそうですね?」
「うむ。なんでも、想定されたパイロットがオーブの国家首脳になったので、乗る機会がないとかで数年の保管の後に再接触の際に返却してきたそうだ」
「なるほど」
最初の接触の際、地球連邦軍はオーブ連合首長国の有する機体データを得た後、ミネルバの鹵獲でその数年後の時間軸の機体のデータを得た。その際にルナツーから得た断片的な情報を再構築して開発したと思われる機体がある事に、アナハイム・エレクトロニクスは苦笑いしたという。ストライクルージュのストライカーパックもいくつかは地球連邦軍の機体の影響を受けており、ヴェスバーに似たビーム・キャノンを持つオオトリなどは『F90・Vタイプの影響か?』と地球連邦軍は考えたという。とはいえ、武器をなんでもパックに積み込む傾向にはアナハイム・エレクトロニクスは苦言を呈しており、ここにお互いの設計思想の違いが出ていた。地球連邦軍は返却後にガイアガンダムと同時期にシステム対応に改修し、ダイ・アナザー・デイ中の時期から朝日奈みらいがパイロットになった。改修の際にオーブ所属時のパーソナルエンブレムは消され、装甲も元からPS装甲ではないが、外観はオリジナルと差異がないため、テスト中の姿が時たま撮影された時には掲示板を賑わせた。また、みらいがいつものクセで箒を使おうとした時にモフルンが『機体のスラスターで飛べばいいモフ?』と指摘したという珍事もあった。
――その朝日奈みらいはというと――
「この機体にもだいぶ慣れたよ、いつきちゃん」
「まさか、君がその機体とはね。ボクは前世で使い慣れてたものだから、いいけどね」
「元の乗り手さんは確か、オーブの?」
「オーブ連合首長国のトップになったよ。システム対応改修前の時に何回か乗っただけだから、腕の程は測れないけどね」
「話は聞いてる?」
「その機体が返却される時にアナハイム・エレクトロニクスのエンジニアが聞いたらしいけど、やっこさんにとっては全天周囲モニターとリニアシートは扱いに困ったらしい」
「どうして?」
「インターフェースが根本から違う上、『完成されたMS用OS』が入ってるんだよ?向こうからすれば、殆どブラックボックスに近いよ」
カガリ・ユラ・アスハにとって、いくら動かしやすく出来ているとはいえ、インターフェースがコズミック・イラのMSとは根本から違う上、機体動力が核融合炉である故のハイパワーは根本的に手に余ったらしく、ヤキン・ドゥーエ戦役後は殆ど乗っていなかったという。なお、核融合炉のスペック上の出力値は3000kw台後半。『フリーダム』の核分裂炉に及ばないが、機体稼働や武装に利用できる出力に差があるので、核融合炉の優位性の証明になった。
「それと向こうは、やっと旧式のレーザー核融合炉を艦艇に積み始めたレベルだから、それより進んだ世代の核融合炉に触れるのを怖がったんだろうね」
フリーダムガンダムなどは旧式の原子炉で駆動するため、どうしても利用できるエネルギーにロスが生まれる。しかし、未来世界の核融合炉にはそれがないし、原子炉は炉心交換が数年に一度は必要なのに対し、未来世界の核融合炉は頑強である上、ラフな扱いに耐える。そこが未来世界が明確に優る点だ。ただし、推進剤の効率はコズミック・イラ世界が数段上回っており、地球連邦軍もそれを取り入れたため、保有兵器の性能が上がったという一幕もある。
「でもさ、なんでパックに武器を積んだんだろうね」
「その機体の原型機は元は地球連合軍の開発したモノで、その中で最も後期の設計で、パック換装で汎用的に使うつもりだったのさ。結局は汎用的に使えるエールストライカーと、重武装パックの系譜だけが生き残ったけどね」
「そうなんだ」
「パックに依存するのもよくないそうな。素体の性能はそこそこになっちゃうとかの弊害もあるんだって」
「へー。で、いつきちゃんはドダイ使ってんだね」
「ボクのガイアは陸戦用だからね。君の機体ほど汎用的運用は考えられてないのさ。こういう時はスーパーロボットや、のぞみのX系が羨ましいよ」
ガイアは陸上では機動力を発揮するが、空を飛べるほどの推力はない。そのため、人サイズに縮小してもドダイやウェーブライダーが必要であるため、不便である。
「今度、モスピーダでも借りれば?」
「MSでバイクにまたがるのかい?」
「ザンスカールの連中よりは常識的じゃん?それに前例あるし」
「まぁねぇ…」
苦笑いのいつき。とはいえ、ガイアにはバグゥやラゴゥからもぎ取ったブースターを取り付ける案も提案中であったりする。ちなみにモスピーダそのものは黒江が私用で使っており、基地祭で綾波レイ(プラグスーツ姿)の姿を取った時にお遊びで寄りかかったり、大決戦の際にキュアドリームの姿でモトクロス戦に打って出た時に使用していたりする。
「さあて、私が武器で援護するから、いつきちゃんは敵を接近戦でかき回して」
「移動中の機甲師団は案外に脆いものだからね。頼んだよ」
みらいはストライクルージュの火器管制装置に火を入れ、爆撃体勢に入る。人サイズに縮小されているが、武器の破壊力については高いままであるからだ。敵の機甲師団はM24チャーフィー軽戦車、M41ウォーカー・ブルドッグ軽戦車が主体の編成で、後方支援用の軽装備の師団だと思われる。それでも、ダイ・アナザー・デイ当時の主力であったM4中戦車を火力で上回っているため、機甲師団装備の刷新途上の扶桑陸軍にとっては充分に脅威になりえる。MSを使う二人はこうした撹乱任務に駆り出されていたのである。
――ストライクルージュの爆撃、ガイアの接近戦は機甲師団を混乱させた。随伴歩兵の標準装備ではガイアには傷すらつけられないし、盾を損壊させる可能性があるのは戦車砲と対戦車火器だが、リベリオン軍の通常部隊に(当時としては)強力な武器である『バズーカ』があることは稀で、旧式の対戦車ライフルのほうがまだ多数派であった。これはウィッチ部隊との兵站の共通化の都合でもあった。この装備のチグハグさも、扶桑軍の中に比較的であるが、楽観論があった最大の理由である。――
「くそ、くそ、くそ!!化け物めぇ!!」
恐慌状態に陥りつつも、兵士達が必死に小銃を一斉に浴びせるが、ガンダリウムε合金で身を鎧ったガイアガンダムには蟷螂の斧も同然。盾に傷すらつけられない。
「そんな小銃で傷がつけられるものか!ハァッ!」
プリキュアの状態でも得意とする正拳突きを兵士達に食らわせ、目の前の5、6人ほどをぶっ飛ばす。そして、敵の精神的支柱である軽戦車を何両か、ガイアの頭部バルカン砲(改修の際に地球連邦軍の規格のものに換装されたので、元より大口径である)を掃射する形で行動不能にする。装甲が薄いM24はそれだけで炎上する、砲塔がおもちゃのように吹き飛ぶ車両も生じる。
「な、なんつー脆い戦車じゃ……」
いつきは呆れるものの、M24軽戦車の装甲は主要部で25ミリ程度であるので、MSの武器であれば余裕で貫通する程度。MSの火力の前では『あってないようなもの』だ。とはいえ、戦車砲が当たれば、貫通はしなくとも、感覚的に『かなり痛い』ため、戦車砲の照準を定めさせないように、戦車との位置取りに注意しつつ、戦車には優先して、ビーム・ライフルとビーム・キャノンを使い、順番に破壊していく。
「ったく、こういう仕事は本来、空挺部隊の仕事なのに」
「仕方ないよ。日本が扶桑の余ってる部隊を自分達のほうの極東ロシアに回しちゃったし、クーデターで本土のかなりの部隊が解体されたし、教導部隊の動員が政治家に差止められたからね。だから、うちがなんでも屋やらされてるんだ」
「やれやれ。政治屋連中は気楽と言おうか」
「悔しいけど、政治家や官僚連中の多くの間じゃ、現実ってのはないんだよ。いつの時代も」
64Fがなんでも屋状態であることは前線で戦う者たちなら、末端の兵士に至るまでが認識していた。クーデター後にかなりの部隊が加担の罪を問われ、連帯責任で解体されたため、再編成に時間がかかり、(ザンスカール残党によって南部地域が叩かれた事もあり)戦線での攻勢は当面は無理であった。逆にこの再編成を利用して、軽戦車部隊はコンバットアーマー装備に改編されつつある。これは歩兵戦闘車も日本が設計を出し渋ったせいである。防衛省の制服組は扶桑軍のこの独自の動きと官僚の見下しに頭を悩ませたが、メタ情報がある以上、兵器カテゴリとして陳腐化した軽戦車を敢えて持つ意味はないのだ。とは言え、兵器ばかりが高度化しすぎても教育上の問題があるため、この時に姿が確認されたM41軽戦車は改良措置の後になんだかんだで味方側にも導入される。全ての将兵が人型兵器への適正を持つわけではないからだ。
「対空兵器はあたしが優先して潰す。いつきちゃんは戦車をある程度は叩いて!そうすれば、敵は投降するか、転進する!」
「よしきた!」
二人は勢いに乗り、そのままMSの武装で機甲部隊に大打撃を与える。二人が破壊した軽戦車はM24を中心に最終的に30両以上に登り、輸送中の対空兵器に至ってはかなりの数である。軽戦車のカテゴリ的陳腐化は明らかとなったが、軽戦車にさえ75ミリ砲を積むようになっているという事実は陸軍機甲本部を大いに震え上がらせ、チーフテンの生産数の増加が決められるに至る。
「これで最後!」
ガイアガンダムのビームサーベルが抵抗を続ける殿のM24軽戦車を切り裂き、沈黙させる。戦車隊はMSの機動力に翻弄され、主砲を撃つことも殆ど叶わず。兵士たちは抵抗を諦めて投降する者が多数に上った。とは言え、一応の抵抗は試みており、そこは褒めるべきだろう。
「輸送部隊に手配は済んだ?」
「連絡は入れた。すぐに捕虜を連れて行くそうな」
「それを確認したら引き上げるよ」
「わかった」
「どのくらい潰した?」
「こいつらが運んでた対空兵器は殆ど。どうやら、重要なところに対空兵器を運んでるのを護衛してたようだね」
「それをぶちのめしたから……?」
「敵も予定が狂っただろうね」
「お、輸送部隊が来たね」
「シーガルとミデアだね」
「扶桑の機甲本部がM24とM41を欲しがってるんだってさ」
「やれやれ。殆ど残骸なんだけど」
「いいんじゃない?無傷なのがいくつかあれば」
輸送部隊が到着し、二人は責任者に状況を説明する。輸送部隊の責任者は『無傷なのがいくつかあればいい』とし、残骸を含めて回収していく。
「機甲本部は軽戦車の配備要望に困っていてね。MBTが大型になっていくんで、偵察用の軽戦車を騎兵部隊を源流に持つ部隊が欲しがっているそうな」
「やれやれ。そんなの言ってられなくなると思いますよ?」
「そのうちね。だが、連中としても、治安維持にMBTは大きすぎると考えてるのさ。本土の道路インフラ整備度では、まだ機甲部隊を本格的に動かせるだけの自由度はないからな」
この頃の扶桑本土は再開発の始まったばかりで、40トン以上の戦後型MBTの運用ができる平野部が少なかった。そのため、扶桑機甲本部は大戦後期型で満足していたのである。ところが、M24とM41軽戦車が現れたため、狼狽しているのが現状である。戦車研究開発の複雑化を妙実に示す事例である。その兼ね合いで、軽戦車としては強力である『M41』は分析の後、扶桑機甲部隊のうちの騎兵部隊に起源を持つ部隊向けに生産配備(テケ車の後継的ポジション)されていくのだった。
――プリキュア達は基本的に第一期と第二期プリキュアが戦闘の主力になる。これは第三期以降のプリキュアは共闘経験が直近の数世代としか有さない場合が多いのも、一つの要因である。その事の兼ね合いが、キュアミラクルまでのプリキュアが積極的に前線に駆り出される理由であった――
「え~~!?のぞみちゃん、そんな事になってるの~!?」
「そーなんだ。全部の平行世界のプリキュアでも五指に入るんじゃないかなぁ」
「なんでなんでー!?」
「落ち着いてよ、はるかちゃん。今、説明するからさ」
「ラブちゃん、そんな!」
「あたしだって、現役時代とかけ離れた能力が覚醒めちゃったからさー」
療養中のキュアフローラ/春野はるか。事情の説明が桃園ラブからされていたが、あまりに素っ頓狂な衝撃にすぎ、医務室のベットから跳ね起きるほどだった。
「……頭がクラクラしてきたよ……」
「それに、はーちゃんなんて、ものすごい事に別方面で強くなっちゃったし」
「べ、別方面?」
「たぶん、剣持たせたら最強クラスに…」
「えーーーー!?」
「それに、今はのぞみちゃんがはーちゃんの面倒見てるんだ」
「え、なんで?」
「実はね……」
みらいとリコは敵に一度倒され、そこから蘇生されたためもあり、恩返しも兼ねての仕事で多忙になり、ことはの面倒を常に見られるわけではなくなった事、のぞみは偶然にことはと同じように、のび太に世話になった関係で共に生活している(結婚後も同様)がラブからはるかに語られる。
「嘘ぉ!??」
「嘘じゃないんだ、これが」
ウィッチ世界では、ウィッチは良妻賢母として引退後の人生を生きるように求められる。扶桑ではそれが顕著であったが、21世紀以後の価値観を持ち込み、一気に化学変化を起こさせようとしたのが日本であった。だが、本来は平成時代以降に花開くものを無理に昭和中期にもなっていない頃の時代に普及させようとしたために無理が生じたというのが、1945年以降の扶桑の社会的混乱である。その混乱で生じた傷もウィッチコミュニティの閉鎖性の終焉』の象徴であった。64Fのように広報に力を入れる部隊が政治的都合で増やされていく中、昔気質のウィッチは徐々に裏方仕事に移っていく。仕事と家庭を両立しているのぞみのような者は新時代の範だが、それは大正以前の価値観からすれば異端である。黒田が当主になるのに、黒田本家の一族から強く反対があったのも、その面が大きい。結局、その混乱は時代と共に収まっていく。戦争が女性の根本的な社会進出を促したからだ。が、それはいい面もあれば、悪い面もある。日本が結果的に陸海の有名な派閥を根こそぎ解体に追い込んだことで、逆に部内の『横の繋がり』が薄れ、部隊間の交流が希薄化するという弊害もある。それが64Fをより強化する理由になるという皮肉であった。
「この世界は昭和20年代だからさ、あたしらの時代の考えを大っぴらに言うと、『何いってんだ?』なんて言われるんだよね。そこは面倒くさいよ」
「そこは時代だよ、時代。私は学校がお嬢様学校だから、古い時代のしきたりをある程度わかるけどね」
とは言え、ウィッチ世界は基本的に女性の地位が史実よりだいぶ高い。男性に魔力が生ずる例は『古代にあった』伝説程度の言い伝えだからである。プリキュア達は仮面ライダーやメタルヒーロー、スーパー戦隊という日本三大ヒーローに負けない活躍が期待できる『21世紀型ヒロイン』であるが、彼女たちの戦闘行為を『法的に合法とする』仕事は軍隊しかないのである。歴代プリキュアを軍隊が抱え込んでいる事には批判があるが、法的には合理的判断であるのには変わりない。さらに言えば、何人かは素体が正規軍人で、生え抜きの将校である。それに合わせただけである。
「でも、なんで、みんなが軍隊に?」
「法律との兼ね合いと、自由に動くための都合なんだってさ。のぞみちゃんが最初にこの世界に生まれ変わってて、覚醒める前は普通の軍人だったから、それにみんなが合わせたんだ。あたしもだけどね」
「全員、日本軍に?」
「響ちゃん、アコちゃん、トワちゃんは別名義で外国の軍隊に籍がある。全員がそのまま日本人じゃないし、元は違う世界にいた子もいるじゃん?」
「別名義?」
「生まれ変わってたところがどこかによるけどね。新しく来る子への説明が難儀なんだよね。ほら、みんな、昔の夢と無関係な商売な上、戦争してるし」
「ダンサー志望だっけ、ラブちゃん」
「うん、世知辛いとこ。ま、プリキュアやってるから、機会はあるのが救いかな。のぞみちゃんが一番救いないけど、職業的意味じゃ」
「へ?」
「のぞみちゃん、教師になりたがってたじゃん?」
「うん、前に聞いたことがある」
「軍隊を予備役になってから、転職しようとしたんだけど、予備役になった軍人は正規の教師になれないって規則になったから、結局、折り合いがつかなくてね。で、その埋め合わせが出世なわけ」
「なにそれ」
「日本でよくある『大人の事情』だよ」
大人の事情はよくあることだが、のぞみの場合は転職が日本側の市民団体と厚労省の無知で一方的に潰された(天皇の裁可まで出ていたのも不味かった)ため、軍部は埋め合わせとして、昇進に必要な規定日数に達していないが、特例措置でのぞみを少佐へ昇進させた。(軍部は予備士官制度の混乱への報復として、後に防大へ大量に人員を送りつける事になるのだった)結果的にプリキュアである彼女の夢を潰してしまったため、厚労省は冬の時代に突入してしまい、懲罰的に再分割を検討されるに至る。(後日、『プリキュアと事前にわかっていれば、制度の宣伝も兼ねて認めたのに……。名前と顔写真だけじゃ…』と厚労省は軍部を非難したが、経歴付きの書類も軍部は送付していたため、厚労省の『ほうれん草』の不徹底、軍部への高慢さが却って示されてしまったという顛末であった)
「それで、すぐにまた戦争になったわけで…。しかもそれが、アメリカが枢軸側の太平洋戦争」
「へ?」
「この世界、織田信長が本能寺の変を生き延びて、坂本龍馬が暗殺されなかったなんていう超レアルート辿っててね。はっきり言って、史実から離れてた世界なんだけど、それを他の世界が『近づけちゃった』ようなものだから、あたし達はその罪の償いも入ってるんだよね」
「どういうこと?」
「つまりだ。違うルート行ってたのを、意図せずに史実ルートに近い形にしちまうバカをしたんだよ、この世界に関わった『他の世界』が。それに、世界征服なんて、大昔の漫画でよく見たタイプの野望持ってるタイプの連中がよりによって、この世界のアメリカを抑えやがったからな」
「あ、響ちゃん」
「よっ、はるか。久しぶりだな」
「あれ?そんなサバサバした感じだっけ?」
「あたしはアメリカ人になってるからな、今は」
服装はシャーリーとしての軍服姿だが、姿は北条響としてのものにしている。ただし、シャーリーとしてのナイスバディは維持しているので、以前とは印象が変わっている。
「……うーん……」
「それについては諦めろ。あたしはアメリカでステーキとか食いまくってたからな」
「ずるいーー!」
はるかも響(シャーリー)のナイスバディぶりにジェラシーを感じるようだ。
「おーい。響はいるかーい」
「あ、アコ」
「やー、はるか。久しぶり。姿は違うけど、調辺アコだよん♪」
「!?★※」
はるかは頭脳がオーバーヒートしたようで、フリーズしてしまった。
「アコちゃん、その格好でいきなり来ないでよ。はるかちゃん、オーバーヒートしたよ?」
「そーかい?ハッハッハ。これくらいでねぇ~」
アストルフォとしての姿で来た調辺アコ。アストルフォとしてのおちゃらけキャラ全開であるので、はるかは処理能力がキャパオーバーを起こしてしまった。現役時代と似ても似つかない姿なのも大きいだろう。
「今日はその姿かよ」
「日本でCM撮影の仕事があってさ。その帰り。それとフランスの大使との会談してきた。ボクは一応、フランスの英霊だしさ」
「お前がその姿で?なんのフレンチジョークだよ?」
「ちゃんと理性が戻る時を選んださ。プリキュアの姿じゃ不都合だったんだよー」
アストルフォは理性が戻る時があるので、そこを選んだと言う。プリキュアとしての姿では不都合だったからだ。
「フランスの外交筋と?」
「そうそう。物質の援助を取り付けてきたよ。もっとも、ボクはイングランドとのハーフだから、ルーラーの協力が必要だったけど」
「ペリーヌもそうだけど、フランス人ってのは……」
「自分達がヨーロッパで一番偉いって思ってんのさ。そんなの、フランク王国の時代と太陽王の時代、それと『コルシカ島の小男』の時代だけだよ。遥か昔はローマの植民地だもん」
「その昔、東郷はワインにまつわる依頼の時に苦言を呈したっていうからな」
ガリア(フランス)はヨーロッパで最も偉大。そう思い込んでいる節があるが、本当に偉大だった時代は一時期のみ。第二次大戦では戦勝国に名を連ねたのが不思議なほどの惨状だ。(ウィッチ世界では、怪異に本国全土が制圧されていたために『鉱物資源が無きに等しいか、微少しか残っていない』状況であるので、史実並の復興にはアース側のコスモリバースシステムが必要だろう)アストルフォは英霊であるが、英国との混血なので、フランス人の抱く愛国心やプライドには冷ややかだ。
「あのおっちゃん(シャルル・ド・ゴール)の一派は勇ましいけれど、軍の再建なんて当分は無理なのに、資源供給地を守ろうとして、扶桑とやりたがってる。アホだね。今のガリア三軍に日本連邦とやりあえる力なんて無いってのに」
「信じらんねぇ。ろくに戦力残ってねぇのに、外地を抑えておくための戦争だぁ?太平洋の大海原で世界一の国家とやりあって鍛えられた連中と、昔の栄光に縋ってる『時代遅れのアホ』が戦えば、全盛期のマイク・タ○ソンやモハ○ド・アリに、州大会で優勝したばかりのイキってるガキが挑むよーなもんだぞ?」
「いずれ、アルジェリア戦争が起こるだろーね。ガリア、今度こそ軍隊が崩壊するよ?」
「戦間期型の戦車しかねぇ連中がMBT持ちに挑むなんて。ドン・キホーテ並のアホだな」
シャーリーに散々にこき下ろされるガリア。実際、自前の兵器生産はもはや細々としか出来ておらず、戦艦の維持・更新すらままならない。そんな国がリベリオンと本気で喧嘩し、勝つ見込みのある国に戦いを挑む。シャーリーはそんなドゴーリストを『ドン・キホーテ』と評した。
「あ、アコちゃん。なんでそんな、昔の騎士みたいな姿なの!?」
「はるか、やっと気がついたようだね。説明するからさ。ほら、お土産のフランスケーキ」
「机と椅子を用意するぜ」
「買ってきたの?」
「向こうにいったからね、ラブ。いちかに連絡して、精査してもらったよ」
アストルフォ(調辺アコ)は日本でケーキを買ってきたようだ。こういう時にパティシエの専門教育を受け、店も切り盛りしていた経験がある宇佐美いちかは役に立つとのこと。
「いいよな、お前。シャルルマーニュ十二騎士だもんな」
「一番のアホポジションだけど。そこからプリキュアになったからね、ボク」
「あのぉー、どゆこと?」
「あのな、はるか。お前。シャルルマーニュ十二騎士って伝説知らねーのかよ」
「マニアックな部類だからね」
「あれ、ラブ。君はなんで知ってんの?」
「昔、みゆきちゃんが欧州の伝説の解説本貸してくれてさ」
「わ~お。意外…」
意外に知らない事もある春野はるか。かつてと姿もキャラも違う戦友達に戸惑いつつも、彼女の新しい生活が始まっていくのだった。
「あ、外見て」
「ソードの奴、調と模擬戦か?」
「ソード、押され始めたみたいだよ」
「まあ、あいつも黒江さんの技能受け継いでるから、ソードの攻撃はパターンを見切れば、いなせる。それに、ソードは剣を持ってねぇからな」
「あの子はトランプのスペードがモチーフだからね」
「でも、ジャッカー電撃隊のスペードエースは持ってんぜ」
「そこはね」
模擬戦の様子が一同のいる医務室から見える。キュアソードは奮戦しているが、手刀という点では調に及ばないようで、相当に焦ってるのが見て取れた。調は畳み掛け、腰に提げている鞘に収められた磁光真空剣の模造品『磁光真空剣・鏡月』を鞘から抜いて、戸隠流の印を結んで、刃をレーザー刀として光らせる。
「あいつ、磁光真空剣を使えんのかよ!?」
「模造品だけどね。あの子の血筋、どこかに戸隠流の当主の血筋の人がいるんじゃない?そうでないと、レーザー刀の機能は発動しないし」
「あいつ、本当の名前は不明なんだっけ」
「目星はつけたらしいけど、今の名前で生きるからって。それに、死亡扱いの人が生きてましたなんて話、大抵は不幸な事になってるでしょ?それもあるんだ」
「あいつは事故現場から拉致されたからな。しかも米国に。それであの世界の米国は落ちぶれてんだろ?」
「非人道的なことだしね」
調は幼少期に両親が事故で死んだところを米国の特殊部隊に拉致された。その経緯を知った黒江がフロンティア事変が終わった時に当時の二課にぶちまけ、日本がそれを外交のカードにした(マリアから話を聞いていた)ため、マリアと切歌は免責された。調はその後、自分の本当の家族などの目星はつけたが、年月が経ちすぎている事から、本当の名前のことは『知れただけマシ。本当はフィーネの器だったし、私』と区切りをつけた。母方に戸隠流の当主の血筋の人間がどこかの代でおり、その血が自分に磁光真空剣を使う資格をもたらしたことは感謝している。調はそれに聖剣の霊格を宿し、切れ味を強化する事を本気としており、炎剣を振るう姿は『どこかで見たような構図』だ。
「トワといい、亜久里といい…。流行ってんのか?炎剣」
64Fには炎剣の使い手が何人もいるため、ぼやくシャーリー。
「最近はりんもやるって」
「マジかよ!?」
「君だって、十手に近い構造のメーザーバイブレーションソード使ってんしょ?」
「そりゃそうだが」
64Fが軍全体の模擬戦大会で他の部隊を突き放す力を持つ理由。それは白兵戦分野では絶対無敵であるからでもある。ここ3年、64Fは軍全体での演習でも無敵であった。主要メンバーの多くはウィッチを完全に超えた力をデフォルトで持つ上、格闘戦で歴代プリキュアに勝てる者は他の部隊にはいなかったからだ。(1945年当時の古参が残っていれば、可能性はまだあった)
「初夏の演習、今年はどういう手でいくのさ」
「今年はいい加減、研究されてきてるだろうから、端っからマジに行くぞ」
「白兵戦にどう持ち込むか?」
「そそ。演習とは言え、子供の夢は壊せねぇだろ?」
「グレースを参加させる?」
「まだ覚醒間もないから、様子見だな」
「映画みたいに、『ドリームキュアグレース』になる可能性は?」
「あいつの特性的にすぐなれそうだよな。」
「だよねぇ。のぞみちゃんだけ新フォームはずるいよー。あたしたちだってさ~…」
「お前はトロピカル~ジュと共演できる可能性があるから、まだいいだろ、ラブ。あたしなんてなぁ……」
「おーい~?」
置いてけぼりのはるかだが、ラブにはのぞみのように『映画で新フォームが得られる一縷の希望がある』が、北条響にはその可能性は低いため、のぞみが如何に恵まれているかの愚痴である。
「ちくしょう、プリキュアとしては野郎のほうが目立ちやがる!仮面ライダーV3かっての!」
「愚痴るねぇ、響」
「たりめーだ!オールスターズが一段落ついた後は客演の機会がねーんだぞ!のぞみなんて、ラブと同じ時に声付きの客演があったんだぞ!ハグプリの頃だったよな?」
「うん。あたしとのぞみちゃんは声付きだったよ。はなちゃんが現役の頃だったから、間違いないね」
「ぢくじょ~~~!!」
「あ、あの、響ちゃん?」
「あー、気にしなくていいよ、はるか。ここ最近はこーなんだよ、響」
アストルフォ(調辺アコ)が軽く流すが、北条響(シャーリー)はプリキュアオールスターズの展開終了後は声付きの客演の機会がないので悔しがっている。響の一期先輩の花咲つぼみは相方の関係もあり、声付き客演の機会が多かったが、彼女はオールスターズでも声無しの出演があったからである。
「いいじゃん、君は別方面でも需要あるし」
「ナイトメアフレーム的と歌手的意味でな…。あたしはな、プリキュアとして目立ちて―んだよぉぉぉ!!もう一度ぉぉ!」
「うわ、ぶっちゃけてるね、チミ」
アストルフォ(調辺アコ)が引くほどの嘆きだが、現実は非情である。咲と舞でさえ、客演のお呼びがかからなかったのに、北条響に声はかからないのだ。まだラブのほうが希望がある。ラブは申し訳無さそうな顔、アストルフォは呆れ顔、北条響は嘆きまくり。春野はるかは完全に置いてけぼりを食っていた。