ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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今回は「プリキュア5」がメインです。


第二百三話「プリキュア5への依頼と彼女たちの二つの世界での事情」

――プリキュア5の世界はどうなったのか?仮面ライダーディケイドや仮面ライダーBLACKRX、それとBLACK(BLACKは平行世界の南光太郎である)の三人が守護に入り、第二世代プリキュア、ロボットガールズ(ギャグ補正あり)も加勢した結果、現地における敵組織『エターナル』は急速に衰勢を余儀なくされた。その世界でのミルキィローズの活躍の場が縮小するという弊害も生じたものの、大ショッカーの魔手から世界を守ることはできたことでもある――

 

 

 

 

 

 

「ルージュから伝言だよ。向こうの世界は直に落ち着くって。大ショッカーの襲撃も退けたそうな」

 

のび太が入ってくる。30代に入り、そろそろ壮年期が近づいてきている年頃なので、以前よりは年相応の表情をすることも増えてきている。私生活で子持ちになっているためだろう。

 

 

「そりゃ、號ちゃんとガイちゃん、それにRXとBLACK、第二世代プリキュアが持ち回りで守ってる上、修行済みの状態のルージュが長期滞在してるんだ。そんじょそこらの悪の組織くらいが手を出したくらいじゃ、びくともせんよ。のび太、お前も大変だよな。最近は従兄弟の動向を探ってる上、23世紀にあるお前の家の財団で『影の総帥』だろ?」

 

「従兄弟については、一定の目処はたったよ。ウチの財団の調査部に調べさせたから。やはり、予測はピタリだった。あいつ、ル・カイン気取りでテロリストになってるようだ」

 

「何ぃ、お前の従兄弟、あんなのが好みか」

 

「奴は僕に近親憎悪を抱いていたようだしね。どこかで見たあれに憧れたんだろうさ。連邦軍のドロップアウト組やゼントラーディのならず者を従えて、死鬼隊もどきを率いてると来てる。名前を捨ててるようだし、僕も奴に合わせて、『エイジ・アスカ』なんて偽名を名乗ろうと思う。奴に僕の動向は掴ませたくないしね」

 

「お前も律儀だよな」

 

「なに、僕はいくつになっても、世間には子供時代のイメージで語られるからね。偶にはいいさ」

 

のび太は冗談めかして、青年に成長した段階で近接戦に持ち込まれた場合の護身術として始めたトンファーを構えてみせる。体格も少年時代よりガッチリしており、(大学時代はしずかの山岳リュックを持ち上げられなかったが)意外にしっくりくる。

 

「のび太くん。まさか、そのためにレイズナー系のSPTを?」

 

「奴がザカールを持ち出した以上はね。従兄弟の不始末は僕がつけるよ。それに、君の先輩と後輩に拷問を加えたのもわかったしね」

 

「じゃ、はるかちゃんの……フローラの言う通りに…」

 

「ああ。これを見てくれ」

 

「……!」

 

「本式の拷問をしてやがるな…。プリキュアのパワーでもちぎれない鎖で拘束した上で、ムチの名手にムチを打たせる…。昔の東側の連中が得意とした手だ」

 

ドリームも味わったように、この手の拷問は肉体的なダメージよりも精神的ダメージが大きくなる。常人では『苦痛に耐えかねて、情報を喋ってしまう』ようなムチの応酬の一瞬らしき写真。鞭に必死に耐えるキュアブラックの姿に、瞬間湯沸かし器のように怒りが湧き上がるキュアドリーム。

 

「~~!!」

 

「落ち着け。この場で瞬間湯沸かし器になったところで、どうにもならんだろ」

 

「言えてる。その場所の座標も掴めてないしね」

 

「のび太、連邦軍は動かせるか?」

 

「プリベンターに座標の特定を急がせているところさ。軍の諜報部にも裏付け調査をさせてる。ミューズ、ブルーム達に伝えてきてくれないか?」

 

「OK~」

 

ミューズはブルーム達に事を伝えるため、部屋を出ていく。ドリームは気質の変化もあり、まだカッカしている。その辺の変化も後輩達に『キレると怖い人』と認識されてしまう要因であるが。

 

 

「お前、錦の気質に影響されたのか、血の気が多いよなぁ」

 

「つ、つい…」

 

「その変化も、あの渾名の理由かもね」

 

「し、しょんな~!」

 

「いちかちゃんに文句言われるよ?やれやれ」

 

ちょっと呆れ顔ののび太。のぞみは最近、後輩の宇佐美いちかの台詞を気に入ったのか、借用することが多いからだ。

 

「それと、大決戦での一枚だよ」

 

「ん、ん!?せ、先輩、これ……。仮面ライダーカブトが使ってたとかいう『パーフェクトゼクター』じゃ!?」

 

「ん、ああ。士の奴が出したから、せっかくだから借りたんだよ。二重の意味での借用って奴だな」

 

仮面ライダーディケイドが『パーフェクトゼクター』を召喚したので、それを借用したと話す黒江。たしかに二重の意味で借りている。

 

――KABUTO POWER、THEBEE POWER、DRAKE POWER、SASWORD POWER。ALL ZECTER COMBINE――

 

このような電子音声が響いた後に発動し、巻き起こすパワーは下手な昭和ライダーのフルパワーにも匹敵するほどとされる『パーフェクトゼクター』。黒江は大決戦で『雑魚散らし』として、『マキシマムハイパータイフーン』、『マキシマムハイパーサイクロン』の双方の機能を使用。下手なプリキュアの技が霞むパワーで敵を蹴散らした。その際の一瞬を捉えた一枚だ。

 

「ま、お前の姿で撃ったから、その意味じゃ三重の意味になるな」

 

「それは言えてる」

 

「これじゃ、後輩に誤解されるの当たり前ですよ~!」

 

「お前自身も、ノリノリでエクスカリバー打ってんだろ?」

 

「それはそうですけど……」

 

「多分、何回か君と綾香さんが入れ違いに参加する内に尾ひれがついたんだろう。どっちみち、かつての君よりは圧倒的に実力があるから、君等が本来、『想定されている敵』はもう敵じゃない。アニメ映画だと、後輩を立てる必要はあるけれど、多分、昭和ライダー後期の映画での『歴代ライダー』くらいは見せ場あると思うよ」

 

のび太も言う通り、2021年の春公開のプリキュア映画もドリーム達はそのくらいの活躍が想定されていた(あくまで、『ファンサービス』の一環である)。だが、『本人達が扶桑や地球連邦の戦争で仮面ライダー達と共に、華々しく活躍している』事実を鑑み、後輩のミラクルとラブリーに監修を依頼し、活躍シーンを突貫作業で増やす事になった。『ドリームキュアグレース』はその過程で生まれたという。(デザインそのものは早期にできていたが、ドリームの現役時代からの年数経過的に制作側に採用が躊躇われたという)また、声優諸氏のスケジュール的に追加アフレコが困難なプリキュア5のメンバーについては、軍司令部から特別に休暇許可が出た『本人』らが追加シーンのアフレコを担当する事になり、それも映画の目玉として宣伝される。

 

「どうだろう。みらいとめぐみを監修の触れ込みで呼んだんだ。ある程度はシナリオに融通効かせるかもな」

 

「でも、春公開の映画ですよ?そんなに融通ききます?」

 

「2021年の頃になると、昔みたいにセル画を使ってるわけじゃないからな。上には俺から話しておくから、お前のチームはいつでも、アフレコの話が来てもいいように心構えはしておけ。おっと、りんはダメだったな…」

 

「りんちゃんはHUGっとの時にダメ出しされてますからね。サポーターの仕事はしてもらいますけど」

 

 

りんを除いたプリキュア5のメンバーはこの後、声優諸氏の都合がつかなかった者に限り、該当箇所の追加アフレコに臨む事になる。全員が揃っているということで、(日本で疫病が流行っている事もあるが)舞台挨拶の他に、全員でのビデオメッセージを変身後の姿で発表する流れになり、それが日本で話題を呼ぶことになる。

 

「俺らなんて、F91に乗ってるだけで文句出るんだぜ?シーブックさんでなくても、あれを最大稼働させりゃ、MEPE(質量を持った残像のこと)は発生する現象だってのに。それに試作型のほうがサナリィも楽なんだぞ、チューンナップで機能を復活させなくていいから」

 

「量産型でも復活したけど、機体を調整しないと使えませんからね、『質量を持った残像』」

 

「最大稼働であれが発生しないと、F91の売りが無くなるし、ネオガンダムが採用されなかったのが幸運だって言われるからな。それに、『トリスタン』の一件の制裁を受けて、立場危ういからな、サナリィ。だから、『質量を持った残像』を復活させたんだよ」

 

「先輩達のは、時期的に考えると、量産型ですか?」

 

「武子のは試作型だよ。俺のはオリジナル寄りのチューンナップをした量産型だが、あいつは隊長特権でオリジナルの同型機だ。サナリィが保管してた奴を出させたのさ」

 

F91は試作機が三機、予備パーツ込みで六機分のパーツが製造された。その内の二機が実戦に使われたことになる。武子が使用したのはシーブック機とは別の個体で、ハードウェアとソフトウェアを最新のモノに換装した改修機である。

 

「よく出しましたね?」

 

「ユング新大統領に、サナリィがアレックスを『トリスタン』に改造して使ってたことをのび太に流してもらったのさ。一般にアレックスの件を流されたら、あそこの幹部の首が飛ぶから、連中も青くなってたそうだ。それで、あそこのガンダムに正式にガンダムの機体コードを割り当てることと、ガンダムの機体整備要領を連邦に伝えることで手打ちだとさ」

 

「今頃、評議会で多聞丸のおっちゃんが日本に情報を流して、軍の予算規模を維持するために論説奮ってるだろう。ガンダムってのは、機体と装備の維持にそれなりに金がいるからな」

 

「なんでですか?」

 

「よほどの事情でない限り、内装の部品が量産型には使ってないハイエンドのモデルだからさ」

 

 

黒江はぶっちゃける。ガンダムタイプは量産機とは共通でない部品も用いるために、維持費がかかると。それも宇宙人との戦争の時代を迎えるまでは戦役ごとに死蔵されがちであった理由なのだと。とはいえ、地球連邦軍も宇宙大航海時代を迎えるにあたって、連邦の権威の復活には『ガンダムタイプは地球連邦軍の象徴』という認識の復活が急務と捉え、ロンド・ベルとその支隊に使用許可を与えた。それを正式な大統領令としたのが、自らも元エース・パイロットであったユング・フロイトである。

 

「ミノフスキードライブの製造量の関係で、V2がまだ回されてこないんだぞ、俺」

 

「え、まだ申請してたんですか」

 

「あれが初代から技術的に関係があるMSとしては最高到達点だしな」

 

黒江は機体の製造ラインは既に閉じられていたが、『V2ガンダム』の配備を要望していた。技術的に、初代から発達したMS技術の最高到達点だからでもある。V2アサルトにすれば、小型機のネックである『防御力の不足』もある程度は補えるという点も大きい。

 

「あれ、なんであそこまで高性能になったんです?」

 

「V1とV2の間に、セカンドV、あるいはVセカンドっていう機体が挟まっててな。フレームを流用したら、エンジンの出力にフレームが耐えられないとかいう欠陥ができてな。それで、それに耐えられる強度の新規フレームを持つV2が造られたらしい」

 

なお、V2ガンダムには、ペーパープランとしての後継機『V3ガンダム』が存在する。V2アサルトの機能を更に強化したプランだったが、ミノフスキードライブの量産効率の低さ、ザンスカール戦争の終結、リガ・ミリティアの自然消滅などの要因で実機は製造されずじまい。それから間もなくして、小型MSの斜陽の時代に突入したのもあり、『幻の三代目』と評される。とはいえ、V2ガンダムの時点で高い完成度を持つため、さらなる改良は(さらなる新技術が出ない限り)は不要とされている。

 

「なるほど。まぁ、ドライブ一基でクラップ級を製造するのと同じコストだそうだし、ガワが安いのに、中枢部品が高い機体なんだよね、あれ」

 

「へー……」

 

「君のダブルエックス以上の機動力だよ、あれは。歴代最速だと思う」

 

「うそぉ!?」

 

「攻撃力はアサルトアーマーとかいれんと、V1と大差ないけどな」

 

V2は機動力が歴代最速であることから、格闘を好む黒江の好みに合致し、V2ガンダムの配備をダイ・アナザー・デイ当時から要望していたが、既に機体の製造ラインが閉じられていたり、ミノフスキードライブの製造コストの高さなどから、ウィッチ世界で四年が経っても支給されていない。その事実上の代替品がZプルトニウスであった。

 

 

「でも、F91の時点で凄いインパクトだったって、かれんさんとこまちさんが言ってますよ?」

 

「質量を持った残像とフェイスオープンのおかげだな。F91はそれで、MS史に名を刻んだから。ヴェスバーを背負ってるカッコいいレイアウトだし、肩や足の放熱フィンが最大稼働で展開されると、いかすシルエットになる。あいつらも最大稼働のF91の動きを呆然と見上げてたからなー」

 

黒江が懐かしそうに回想するように、F91は大決戦では、64Fの機動部隊の指揮官機として投入された。武子の手堅い操縦でありつつも、ハヤブサのような鋭い機動もあり、大決戦においても活躍。参戦したプリキュア達に『真の高速戦闘』を強烈に印象づけた。『質量を持った残像』を発生させ、敵機を幻惑しつつ、高機動力を見せつけるその姿は、その後のプリキュア達の『空戦機動』の模範とされるほどである。

 

「でも、隊長はどこであんな技術を?最大稼働のF91を制御できるなんて、まるで玄人ですよ」

 

「あいつ、空間把握能力が同期で最高でな。それがニュータイプ能力に昇華された上、ロンド・ベルで実戦と訓練を組んできたんだ。俺ほどではないが、玄人の領域だ」

 

64FでMSなどの操縦技能最高は自分だとさり気なく自慢する黒江。流石にアムロやジュドーほどではないが、MS操縦でも充分に玄人になっていると自負している。のぞみも遥か以前の前世である『レントン・サーストン』としての能力が蘇った事で『ガンダム乗りに相応しい実力』を得た事によって、操縦技能に自信ができたのか、『玄人』という台詞回しをする。

 

「お前が玄人なんて、難しい単語つかうたぁな」

 

「これでも、覚醒前はテスパイしてたんですからね。みんなに信じてもらえないけどー……」

 

のぞみは人格の覚醒前は『中島錦』として『47F』でテストパイロットの経験があるので、腕に覚えのあるウィッチであった。覚醒後もその経験で『機種転換訓練を短時間で終えられる』という、搭乗員としての利点を持つようになった。シャイニングブレイク(TMS)から、通常の汎用機であるガンダムX系にスムーズに転換できたのも、三分の一は錦としての経験を生かしたことの賜物だ。

 

 

「ま、お前は戦闘センスはエース級だけど、私生活が壊滅的に等しいかんなー。錦に感謝しとけよ?お前に家事のスキルを残してくれたんだから」

 

「わかってますって」

 

錦の自炊スキルはのぞみの私生活に良い影響を及ぼし、りんを安堵させている。現役時代は家事が壊滅的にできなかった(お粥を焦がすレベル)のぞみに高度な自炊スキルをもたらしてくれたからだ。

 

「お前のチームは『客寄せパンダ』の要領で選ばれたんだと思うが、みらいとめぐみをスタッフに迎えたことで『見せ場が増える』かもしれんぞ?」

 

「なんでです?」

 

「めぐみがいるだろ?あいつ、お前に恩義があるみたいだからな。何かかしらの注文はいうだろうから」

 

「あー、なるほど」

 

プリキュア5は新作映画の『客寄せパンダ』と目されており、彼女ら自身もそれを認識するレベルであった。しかし、本人たちの実在が確認されたことで制作側も『作中での扱いをぞんざいにするわけにもいかなくなった』のも事実だ。その兼ね合いで、仮面ライダースーパー1の劇場版における歴代ライダーの扱いをベースにする案が有力視されていた。(最初はクロスオーバーと銘打って制作されていたわけではないため)だが、みらいとめぐみの意向もあり、『両雄並び立つ』というものに変更されるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

――扶桑海軍は結局、近代化の進展が優先されたこと、それまでの軍事思想の淘汰で大規模作戦行動どころではなくなっていた。戦艦と巡洋艦を使い潰し、空母を後生大事にしまい込むという空母温存戦法は扶桑海軍青年将校らの反発を生んだが、空母と艦載機の世代交代による大型化での『損失補填の難しさ』は扶桑海軍をして納得させるほどの説得力であった。また、史実で完成しなかった『伊吹』が結局は巡洋艦のままだったのは、ジェット機の登場で大戦型軽空母が陳腐化したためと『験担ぎ』であった。信濃型航空母艦も存在しない世界であるが、雲龍型の大半が他用途に転用され、大鳳の増産も見送られ、軽空母/護衛空母は退役したため、空母機動部隊の量は一気に低下。連邦軍からの供与空母が実際の主力になる有様であった。これは日本がプロセスと戦場の実状を無視して『超大型空母を少数運用する』ドクトリンを模倣し、強引に切り替えを進めようとした事の弊害であった。また、空母航空団の育成がジェット化と引き抜きで振り出しに戻されたため、扶桑海軍は64Fやその他の空軍精鋭がいなければ、統一された洋上作戦行動も取れない状況に追い込まれていた。これは日本が航空部隊を空軍にまとめようとしたためだが、予算分布上の問題が浮上し、形骸化した組織だけが残されたためだ。1949年になっても、矢継ぎ早の機種変更で教育が追いつかず、実際の練度は『当てにならない』という有様。海軍が基地航空隊に多額の予算をかけていた一方で、空母機動部隊を軽視していた事がマスメディアに叩かれた結果である――

 

 

 

 

――海軍は招来の主力化を見込んで育成途上だった陸上航空隊を空軍に丸ごと引き抜かれたため、高練度パイロットが極端に不足する事態に陥った。空母機動部隊と対潜航空隊は残されたが、空母機動部隊は一から育成し直すのには10年単位で時間がかかるため、空軍に手違いで移籍した航空団部隊に旧任務専従を命令するという『ややこしい話』になり、理不尽に上層部から叱責された旧・艦上機部隊が抗議とボイコットをする事態ともなったので、この数年は64FとGフォースで制空権(航空優勢)を維持しているという情けない状態であった。その性質上、多忙を極める64Fの人員は休暇の許可が出やすいのである。のぞみたちは後にこの事を鑑みて、広報業務の一環という名目を立てて休暇を取得。アフレコに臨むのである――

 

 

 

 

 

 

 

 

――映画の追加アフレコの話は黒江達が話していた日の次の日には、咲と舞が5チームの他のメンバーに伝える形で通達がなされた。皆、咲と舞を差し置いて、事実上の二番手として起用された事にバツの悪い思いがあるのを吐露したのは言うまでもない。咲と舞は本人たちの声優は健在でも、妖精役の声優の内の一人が2010年代に病気で亡くなってしまっているという制作側にとっての切実な事情があり、『本来の順番を飛ばす』形で『5』を登板させたという妥協的な事情があった。なおかつ当初に『想定していた』内容が『本人たちへの配慮』で難しくなったため、みらいとめぐみを監修という名目で雇ったのだろうと、武子は推測している。とはいえ、既に七割方できている上、公開予定までに間がない映画のシナリオの根本を変えるのは不可能なので、『プリキュア5の活躍シーンを増やし、のぞみの新規での変身シーンを挿入するので精一杯だろう』とは映画に詳しい圭子の予測だが、追加シーンにめぐみのこだわりが炸裂し、緊急で追加アフレコが決まったのだが、声優諸氏の大人数の都合がつかず、本人達はその箇所の追加アフレコを依頼されることになる。のぞみはもっとも追加アフレコが多くなるのである――

 

 

 

 

 

――後日――

 

 

「嘘ぉ、あたしの担当箇所……多くない?」

 

「めぐみちゃんが多くしろって言ってね。のぞみちゃんの登場シーン増やしてもらったんだって。扶桑へも売り込みたいらしいの、先方は」

 

「変身シーンはあたしだけ?」

 

「前の予定だと、バトルの助っ人みたいな感じでの出演なんだったんだって。そこをのぞみちゃんだけでも変えたそうだから、がんばってね」

 

「あれ、くるみの出番は?」

 

「バトルでちょびっと。くるみちゃんやうららちゃんの出番を中心に削らないとならなくなったんだってさ」

 

「りんちゃんはアフレコできないの?」

 

「うん。はなちゃんの頃の映画でチャレンジしてみたけど、ダメダメでさ」

 

「あの子は運動部だものね。でも、自分に自分でアフレコなんて、楽しそうね」

 

「不思議な感覚ですよ、こまちさん」

 

「そうね。私たちは賑やかしの範疇でも構わないけれど、のぞみはメタ的に言えば『番組の主人公』だもの。おまけに扶桑で実際に『血の献身』をしている。扶桑に映画を売り込むのなら、それなりに配慮は必要ってことよ」

 

「政治的だなぁ」

 

「仕方ないって、のぞみちゃん。扶桑で目立ってる以上、それを無下にもできないんだしさ」

 

みらいとプリキュア5の追加アフレコの多めな面々の事前打ち合わせはかなりの長丁場となった。出番がもっとも多くなったのは、のぞみ、それと年長のかれんとこまちで、りんはアフレコに参加しない(前回の時にダメダメであったので)、その次にうららである。

 

「でも、くるみの出番を削らないと無理だったの?」

 

「うん。予想以上にのぞみちゃんが出る場面が増えた兼ね合いだって」

 

「みらい、めぐみは?」

 

「スタッフと最後の打ち合わせに行ってます。私は皆さんとの打ち合わせ担当です」

 

「ごめんなさいね。私達が本当ならやるべき事なのに、後輩のあなた達に…」

 

みらいにそのことを詫びるこまち。

 

「いいんですよ、こまちさん。映画の監修なんて、ワクワクもんでしたから」

 

「でも、よく間に合わせましたね、脚本」

 

「突貫だったって。脚本の人、徹夜で書いたとか?」

 

「相当にスケジュール、切羽詰まってるんですね」

 

「本当は映画の箔付けにあたしたちを呼んだんだと思うんだけど、めぐみちゃん、のぞみちゃんに恩義があるとか言ってさ。熱意が通じたと考えればいいかな?」

 

「めぐみさん、無茶させますね…」

 

「あの子はのぞみちゃんに恩返ししたいって言ってたからね。相当に慕われてるよ~」

 

「うわぁ、今更だけど……責任重大だぁ……。」

 

仕事の重大さを実感し、青くなるのぞみ。

 

「でも、出番がなくなって、くるみが拗そうモフ」

 

みらいに抱かれているモフルンが同情の一言を漏らす。

 

「仕方ないわ。あの子、現役時代は正式なプリキュアにカウントされてなかったから」

 

「本当モフ?」

 

「ええ。それもあの子の立ち位置が微妙なところでね、モフルン」

 

くるみの出番はむしろ削られたと明言するみらいとモフルン。それに同情するかれん。美々野くるみ/ミルキィローズの実質の姉貴分と言おうか、保護者的な立ち位置にいるからだ。

 

「そいや、そうでしたね。でも、のぞみさんだけでも、変身シーンをよくねじ込めましたね」

 

「一人分だしね。現役時代の時のバンクシーンを流用できるのも効いたそうな。そこはアニメって分野のいいところだね」

 

「うぅ。分厚いなぁ~」

 

台本が自分のものだけ分厚いことに愚痴るのぞみだが、意外と切実な映画の制作事情。練習も兼ねて、事前に渡された追加分の台本が自分のものだけ分厚い事にめまいを起こしそうなのぞみ。自分で自分にアフレコするという珍しい体験にウキウキのこまち、現役時代の際の仕事柄、慣れているうらら。初体験ながら、意外と心が弾んでいるらしいかれん。スペシャルサンクスにモフルンの名も載るらしいとみらいはいい、

何気に『スペシャルサンクス』という形の自己アピールを行うモフルンに、のぞみは『抜け目ないなぁ~…」と言うのが精一杯。抜け目ないモフルンに呆気にとられたのだった

 

 

 

 

 

 


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