ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第百九十一話「あっけにとられる春野はるかと、扶桑のお涙頂戴な機甲行政事情」

――キュアフローラこと、春野はるかはなんとも、つっこみにくい状況に追い込まれた。それはキュアミューズの調辺アコのことで、生前と似ても似つかぬ姿で現れた上、騎士のような姿なのだ――

 

「いいかい、はるか。ぼかぁ、フランスの英雄の生まれ変わりなのよ」

 

「フランスの英雄って、あ、アコちゃん!?」

 

「落ち着きなって」

 

アストルフォの姿なので、マントを羽織り、腰に剣も提げているなど、アコとしての姿とは似ても似つかない。声ははるかも聞き覚えがあるトーンだが、調子がおちゃらけているので、とても同一人物とは思えない。

 

「メイジャーランドのお姫様だったよね、確か!?」

 

「そりゃ昔の話。今はフランス人だよ。最も、イギリスとの混血だけど、日本語は普通に話せるけどね」

 

「あたしだって、今はアメリカ人だ。日本に定住してるけど、生まれは向こうの片田舎だよ」

 

「響はアメリカ人に生まれ変わってるから、生まれ変わっても、日本人なのは少ないんだよね」

 

「それじゃ、のぞみちゃんは?」

 

「この世界の日本の軍人一家の次女。あいつが最初にプリキュアに戻ったから、それに呼応して、どんどんプリキュアが現れたわけだ。マナなんて、もっと別の世界の高校生だったんだぞ?」

 

相田マナ、蒼乃美希、黄瀬やよい、ユニ、四葉ありす、春日野うらら、美々野くるみなどは戦車道世界に生きる高校生であるし、星空みゆきは宮藤芳佳であり、角谷杏であるというある意味で『チート』な転生である。戦車道世界への転生組で一番にチートと言われるのが宮藤芳佳と角谷杏の要素を併せ持ったキュアハッピー、西住みほであり、四葉ありすであるキュアロゼッタである。大会を控えているので、キュアハートは黒森峰女学園を、キュアロゼッタは大洗女子学園を率いる役目が残っている。なお、キュアベリーやキュアピース、キュアコスモにとっては次の大会が引退の花道である。

 

「あいつら、次の休暇で試合してくるんだって?」

 

「大会だって言ってたね」

 

「あいつら、まだ高坊だったな……。ミルクもそうだっけ?」

 

「うん。今は人間に生まれ変わってるからね。歴女なのは笑ったけど」

 

「イタリア語話せるとか聞いたよ」

 

「マジかよ!?」

 

「うん。ただ、ローマ史好きみたいで」

 

「あー……うん。ローマ帝国の滅亡とか見てそうだぜ」

 

「え、ちょっと待って。みんな、普通に英語が?」

 

「あたしは母国語だけど、のぞみも普通に話せるぜ?ユニなんてな、ロシア語がネイティブだぞ」

 

「あの子、宇宙人だったよね!?なんでー!?」

 

ユニは転生後にあらゆる修行をしたため、ロシア語がネイティブに使え、普通にAK-47を扱える。本人曰く、転生後は大人びた外見で期待を押し付けられてきたから、あらゆる修行をしてきたとのこと。ノンナとして万能であるのはその賜物である。なお、個人的に元の世界のロシア軍にパイプがあり、機甲師団の将校をコーチとして招聘できるほどに人脈もあるなど、諜報部員としての適性も備えている。黒江が重宝するのも頷ける。

 

「しかたねーだろ。のぞみも大変なんだぞ、代々、軍の魔法使いを出した家柄に転生しちまったもんだから、名義を使い分けるしかなくなったんだぞ。」

 

「……名義?」

 

「そう。それぞれ転生先での名前が別にあるから、使い分けてんのさ。あたしも三つくらい持ってるし、アコも二つ持ってる」

 

シャーリーは紅月カレン名義、北条響名義と併せて、三つの名を持つし、のぞみも中島錦の名義を持つ。それは軍の都合で素体の活動記録を必要とするからでもある。

 

「まー、のぞみが一番大変さ。この世界の日本の名家に転生したし、姉妹も全員が軍人だから、名義を統一できなかったんだから」

 

「どうして?」

 

「のぞみが転生した家は軍で代々、魔法使いを出す名家。その家の次女が、人格が別人になったからって、別人として生きるなんてのは許されると思うかい?幸い、その家の当主が理解のある人だったから良かったけど、これがカチコチの軍人なら、錯乱したと見做されて、ね」

 

アストルフォの言う通り、のぞみが自分が錦を実質的に上書きする形で転生したことで恐れたのが『小鷹への事態の露見』だった。実際には杞憂だったが、時代が時代であるため、充分に可能性があった。高官達もそれを容易に想像できたので、隠蔽工作に協力した。とは言え、実際には帰国後、自分に情報が入らなくなったことで混乱した諏訪天姫が調査を小鷹に依頼しており、小鷹は比較的早くに知っていた。さる高官からその事を聞き出したのである。小鷹は知った後は天姫に身を引くように助言し、自身は『姉』としてできる事を選び、表向きは情報を鵜呑みにしていると装いつつ、黒江と裏で接触したわけだ。アストルフォは『もっとも国家と軍の都合に振り舞わされた転生組のプリキュアはのぞみである』と説明する。のぞみは肉体の人格を上書きする形で転生し、肉体の容姿も元の原型がなくなったため、のぞみは名義の統一を望んだのだが、中島家の次女であるという事実がそれを阻んだ。元々、軍部と長島飛行機のパイプ役の役目としての功績が中島家にあった上、錦の姉である『小鷹』は実戦には出なかったが、若松と同期の元士官であるので、軍が機密にしても閲覧できる立場であった。そのため、のぞみは小鷹に実態が知られる事を恐れたが、小鷹は実際には鷹揚で、妹の人格が別人になっても動じなかった。それどころか、『なぜ俺に相談せんのだ?』という始末。『若松は兵隊やくざだ。俺に相談すれば、いくらでも手を考えてやったというのに』と愚痴られ、面会した黒江も面食らったという。

 

「黒江くん、君のことは若松がよう自慢しておったよ。妹のことは君に一任する。煮るなり焼くなり、好きにしたまえ。あの子はもう大人だからな。末の妹の疾風はまだまだ子供だがね」

 

「ハッ……。恐れ入ります、先輩」

 

中島家で交わされた会話はその後、デザリアム戦役でのぞみが情緒不安定に陥った際に、立ち直らせるために、殴り合いの際に詳細を告げ、小鷹自身もビデオレターを黒江の薦めで送っている。精神的問題はこれで解決を見たが、ダイ・アナザー・デイ後に小鷹に打診し、扶桑で内定していた『転職』は日本文科省の干渉で見送る羽目となり、同様に転職を潰された予備士官が抗議デモを行うなど、社会問題にまで発展してしまった。しかも、のぞみの事例はダイ・アナザー・デイでの戦功を祝し、昭和天皇が直々に認可した事柄であったのだ。文科省が事の重大さに気づいたのは、週刊誌に『文科省、頭ごなしに扶桑で認可された転職を潰す!』とすっぱ抜かれた後だったという有様。

 

『君等は私に相談もなしに、扶桑の天皇陛下が認可なされた案件を勝手に潰したのかね!?』

 

文部科学大臣がヒステリックに当たり散らすほど、のぞみの事案は『通すべき案件』であった。しかも、のぞみは『プリキュア5のリーダー格の戦士』であるために、知名度は高い。下手すれば、文科省の上層部のクビがまとめて飛びかねない案件。文部科学大臣も監督責任を問われかねない。官僚たちは文部科学大臣のヒステリーな喚き散らしを止める術を持たず、週刊誌は第二弾、第三弾の記事を用意している。文科省存続の危機である。

 

『大臣、軍部の方がお見えに…』

 

『誰が来られたのか?』

 

『申し上げにくいのですが……かの山下奉文大将閣下です』

 

『マレーの虎の山下大将ぉぉぉ!?』

 

ズルっと椅子から滑り落ちる文部科学大臣。抗議に来たのが山下奉文大将とくれば、腰も抜ける。彼の名は歴史を多少なりとも諳んじていれば知らないはずはない。南方作戦の英雄にして、悲劇の陸軍大将。はっきりいって、超大物である。

 

『いかがなされますか?』

 

『居留守を使うわけにもいかんだろう!面会してくる。はっきり言って、腰が引ける……。なぜ山下大将なのだ……』

 

と、怯える文部科学大臣。山下大将といえば『イエスかノーか』であるからだ。なぜ、彼かというと、64Fが陸軍航空隊の所管の頃に彼がその最上位編成の責任者であったからという縁である。別案で黒江の後ろ盾である『前田利為大将(華族で、侯爵)を派遣する』案もあったが、彼では話が余計にこじれそうなので、押しの強い山下が送り込まれたのである。会談はその日の内に行われ、山下が柔和に対応したこともあり、日本側との話はまとまった。

 

・軍を予備役となった将校が教職につく事は日本連邦として規制しない。講師については令和四年度から解禁。

 

・予備役制度の近代化と、転職支援制度の創設準備。なお、退役後の恩給支給は元軍人の固有の権利であり、転職に関わらず支給されるものとする。

 

・夢原大尉に対する損害補償として、危険手当の増額と、少佐への昇進、『夢原のぞみ名義での武功章授与』を行うものとする。

 

などが決められた。プリキュア達は危険手当の金額の相場が最も高い。これは『日本連邦を脅かすあらゆる脅威と戦う』からで、意外に所得は大きい。資産運用は黒田が設立した財団が行っており、慈善活動などに投資している。黒田は黒田家の資産を元手に財団を起こし、のび太が30歳を期に、スネ夫の資金援助で設立した『野比財団』と提携している。野比財団はやがて、『ビスト財団に代わるアナハイム・エレクトロニクスの支配者』にまで成長を遂げていくわけだが、元は黒田財団と提携を結んでいる小さな財団であったのだ。それが急成長したのは、のび太とノビスケ親子の功績、セワシが亡くなるまでに財団をビスト財団に負けない地位にまで成長させるほどに優秀であったからである。野比財団の設立は2020年。23世紀に至るまで存続し、アナハイム・エレクトロニクスを掌握するまでに成長できたのは、ひとえに野比家の代々の当主が基本的に人の良い性格であるからで、金銭にがめついとされるセワシも、基本的には人のいい性格だったからこそ、一年戦争でジオニズムと決別しても社会的信用を保ったのである。ジオニズムの最大の失敗は『地球圏で最も慈悲深い名家』である野比家を敵に回した事であろう。野比家はマイッツァー・ロナも警戒していたほどの影響力を22世紀後期には持っており、マイッツァー・ロナの隠居で実務を取り仕切っていたカロッゾ・ロナからは『忌々しい日本の旧家め』と吐き捨てられていたという。ブッホ・コンツェルンも恐れ、ビスト財団の『マーサ・カーバイン・ビスト』が23世紀の当主『ノビ・ノビタダ』を暗殺しようとするほどに危険と隣り合わせである。のび太がその基礎を青年のうちに築き上げていくのだが、のび太自身も妻が2010年代に公安警察官になった都合で反日本連邦派に狙われる事が増えてきており、プリキュア達に実子の警護を頼んでいる。ノビスケがきかん坊になった理由の一つは『常に守られている』ことへのコンプレックスが成長と共に現れてきたからだが、そのコンプレックスが彼がサッカー選手として成功するための闘争心を養うことになる。サッカー選手を志した最大の理由は幼稚園時代の事件で『キュアルージュとキュアマーチの合体技』を目の当たりにしたからであるというのを聞いたキュアルージュ/夏木りんは後にいたく感動したとか。(りんは現役時代、フットサル部のエースストライカーだったからである。最近はまだ会っていないが、後輩のキュアソレイユにライバル心があるという)

 

 

――話は戻って――

 

「おっと、今日は給料日だったな」

 

「給料日って…」

 

「仕事なんだから、給料出るのは当たり前だろ?使い道があまりないのが泣き所だけど」

 

「それもそうだけど、あたし、実家が和菓子屋でさ……」

 

「お前、実家は和菓子屋かよ」

 

「実はね」

 

春野はるかの実家は和菓子屋である。世界線によっては実家を継いでいる。お嬢様学校に行っていた割に世俗的な家業なためか、他のプリキュアには明かしてこなかったらしい。

 

「こまちさんと同じだな」

 

「え、そうなの」

 

「お前、知らなかったのかよ」

 

「ご、ごめん。プリキュアオールスターズとしての戦歴はあまりないし……」

 

はるかはプリキュアオールスターズ期の最末期に加わった世代なので、古い世代のプリキュアとの交流はあまり出来なかった。そのため、秋元こまちの実家が和菓子屋であるのを知らなかったのだ。

 

「仕方ないって。はるかとみらいがオールスターズとしての戦闘経験のある最後の世代なんだし」

 

「むー……なんかジェネレーションギャップ感じるぜ」

 

ちょっと不満げな響(シャーリー)。それを宥めるアストルフォ(調辺アコ)。アストルフォとしての外見になっているが、ツッコミ役になっている。

 

「ジェネレーションギャップは仕方ないって。はるかとみらいは2002年くらいの生まれだよ?」

 

「なにーーーーー!?」

 

「えーーーーーー!?」

 

響とラブが同時に腰を抜かす。はるかとみらいの生年は2002年以降である。と、言うことは自分たちの現役時代はまだ子供も子供。下手すれば、ミラクルライトを振る側でもおかしくない。それにようやく気がついたのだ。

 

「嘘だろ。2000年代以降かよ……」

 

「そ、それじゃ…。あ、あはは~…」

 

ショックのあまりにへたり込んで、真っ白になって魂が抜けかかるようにうわ言を言う二人。

 

「あれ、どうしたの、二人共……」

 

「君、2002年だろ?生まれた年」

 

「う、うん……」

 

「ラブと響が現役の頃、君は何歳の計算だい?」

 

「え~と……。嘘、本当に?」

 

「二人の反応見てよ」

 

「え、えーーーーー!?」

 

「やっと、気がついたようだね」

 

はるかもようやく事態を呑み込む。つまり、はるかはラブの現役時代だった2009年には九歳前後、数年後の響の時代でも、十一歳前後。本当は二人と三歳以上は有に離れている。これがのぞみとでは、もっと離れている計算になる。プリキュアオールスターズの出会いが如何に奇跡であるかを数学的に理解したわけだ。

 

「な、なぎささんは…何年?」

 

「1990年。君と一回り以上離れてる。はなが切りのいい2005年生まれだから、それを基準にすると、際立つんだ。君以降の後輩たちの若さと言おうか…その……」

 

流石に言い淀むアストルフォ(調辺アコ)。野乃はな以降は第一世代プリキュアが戦っていた時代に赤子であった世代がプリキュアになる計算になる(花寺のどかは下手すると、プリキュア5の現役時代に生まれている)。そこに気がついた春野はるかは気まずそうだった。

 

「嘘……それじゃ、私達以降のプリキュアとなぎささんは……」

 

「一回りくらい違うよ。下手したら、君の現役時代の若い教師がなぎさと同輩かも知れない。のどかなんて、2007年。のぞみが現役時代の時の赤ん坊だよ?のぞみにそれ言ったら、あの子、ショックで7分も固まってたよ」

 

第3世代プリキュアは2000年代以降の生まれである。第一世代が戦っていた時代には赤子であった。これは第3世代の嚆矢であるはるかで2002年の生まれである事で確認が取れている。第一世代にとっては凄まじい衝撃である。

 

「は、はは……気づくべきじゃなかったぜ…」

 

北条響(シャーリー)はこの有様だが、シャーリーとしては1928年前後の生まれなのを考えると、21世紀に生きていた場合はヨボヨボである年代の生まれだ。

 

「響。その肉体だと、1927、8年生まれでしょうが。21世紀まで普通に生きてたらヨボヨボじゃん」

 

「うるせー!」

 

シャーリーは1928年前後に生を受けたため、普通に加齢した場合、1947年前後にあがりを迎える。ウィッチとしての寿命をとうに超えているが、当然、シャーリーとしての姿は1944年当時のままである。北条響としても基本的には現役時代の14歳当時の外見であるが、部分的に変化することも可能なので、戸籍年齢の都合で、ボディの外見をシャーリー本来のナイスバディにすることもある。この日はその状態である。

 

「でもさ、君も中々の芸達者だよね。ボディだけ元に戻すなんて」

 

「顔を切り替えたんだよ。今日はグラビアの撮影の仕事だったし」

 

「え、どういう事」

 

「お前は知らねえだろうが、その昔にキューティーハニーって漫画があった。今のあたしたちはその漫画と同じように、任意に骨格まで作り変えられるんだ。感覚としては完璧な変装だな」

 

「別人に骨格や指紋も任意に作り変えられる。僕たちは転生で、いわゆるチートを得ちゃったわけだよ、はるか。君の時代に流行ってるネット小説お馴染みのあれ。僕なんて、現役時代は小学生の姿だったから、前前世の『アストルフォ』っていう英雄の姿を取ってるしさ」

 

「プリキュアになれるの?」

 

「もちろん。ただ、ボクは背が大きくなってるから、何かと日本だとツッコまれる身の上さ」

 

アストルフォからキュアミューズになる場合、背丈はアストルフォとしてのモノになるので、そこそこの身長になる。そこがロリっ子好きには残念がられているものの、変身者が女体化したアストルフォなので、変な方面にも人気である。

 

「最近は亜久里の奴が来たんだが、属性が増えちまって渋滞起こしてんだよ」

 

「ああ、キュアエースのあの子。属性が渋滞って……?」

 

「転生先で多国籍企業の社長令嬢、魔法少女の親友、炎剣使いの炎髪灼眼、メロンパン好き、成長変身……。盛りすぎだと思わね?」

 

響は円亜久里(キュアエース)の持つ多くの属性に文句が言いたいらしい。なのはの親友に転生していた上、元々はトランプ王国の女王の善の心の転生。しかも、変身後の容姿が炎髪灼眼、二度目の転生後は打刀に炎を纏わせるなど、炎使いになっている上、メロンパン好きで『うるさいうるさいうるさい!!』がお馴染みの台詞となれば、シャーリーでなくても文句を言いたくなる。その兼ね合いか、現役時代のように常に敬語ではなく、タメ口でキレることもある。それを指して、黒江は『同位体に炎髪灼眼の討ち手がいるだろうな。こりゃ完璧だ』と評している。

 

「うーん……それって重要?」

 

「たりめーだ!あたしはな。転生してから、音楽を特訓し直すのに何年もかかったんだぞーー!!ピアノを弾けるようにするのに年単位かかったんだぞーー!!ちくしょーーー!」

 

シャーリーは才能は前世から引き継いだが、リベリオンの片田舎の生まれな上、環境的に音楽と無縁だったため、キュアメロディに戻れた事自体が『ルッキーニを守りたい』心が呼び覚ました奇跡である。なお、バルクホルンからは『信じられん、お前が音楽のプリキュアだと?』と言われるわ、ルッキーニ(クロになる前)からは『縮んでるーーー!!』と文句を言われるなど、受けは良くなかった。とは言え、覚醒順としてはドリーム、マーメイドに次ぐ三番目で、ハッピーとはほぼ同時期である。

 

「アコちゃん、響ちゃん、こんなキャラだっけ…?」

 

「あー、気にしなくていいよ。アメリカ人になったから、リアクションが大げさなんだよ」

 

はるかも思わず零すほどのオーバーアクションで大いに嘆く北条響。プリキュア第一世代最後のピンクであるのだが、些か影が薄いことを気にしていたのか、妙にオーバーアクション気味なので、アストルフォからは呆れられている。これは直近二代の先輩がラブとつぼみであり、現役時代は彼女たちに比べると個性が薄いという評価があるのに落ち込んだためである。

 

「おまけに、最近はのぞみがリーダー格みたいな感じでマスコミへの露出多かったし、気にしてんだ」

 

「そ、そうなんだ…」

 

呆気にとられるはるか。響(シャーリー)は第一世代最後のピンクである故に、目立ちたいらしい。オールスターズで目立ったのは、オールスターズの初陣とスマイルの初陣の時のみというのもあり、時を経ても、第一世代の代表、あるいはサブリーダーを張るのがお馴染みののぞみにライバル心があるのだ。

 

「響ちゃんが目立ってたの、二回くらいだしねぇ。オールスターズ戦だと。あとはピンクカルテットの時くらい?」

 

「だから、あんな感じなの?」

 

「うん。あたしはオールスターズ皆勤賞だから、こうなるとさ…」

 

第一世代のピンクでオールスターズ皆勤賞なのはラブのみになったので、響がそれを気にする事に関しては口を挟めない。はるかは先輩たちのこうした姿は初めてなので、呆気にとられるのだった。

 

 

 

 

 

 

――扶桑海軍青年将校のクーデター事件の事後処理は総じて苛烈に行われ、首謀者はウィッチだろうが、情け容赦なく公開処刑に処された。また、高官で、同情的かつ交友があった場合は名誉の一切を剥奪された上で懲戒免職処分という苛烈な処理がなされた。これは日本側の意向であり、扶桑の大衆の助命嘆願も意に介さない情け容赦ない判決と公開処刑は扶桑の大衆にある種の恐怖を芽生えさせた。軍ウィッチの世代交代の遅滞を本格化させ、MATの勃興を起こした。昭和天皇は祖父の代から仕えていた竹井少将の功を慮り、玉音放送に踏み切った。玉音放送の効果により、軍へのウィッチ供給が徐々に再開されたが、ウィッチになった者を軟禁していた農家が不敬罪を恐れ、人身御供のように都会へ人身売買のように送り出す例が続出。社会問題となった。軍部はこの対策に追われ、前線に生え抜きの新規ウィッチを供給できなくなってしまった。日本が前線の様子の報道に規制を敷かせた事もあり、銃後と前線との空気の差に愕然となる将兵も出ていたため、本土の大衆に細かな戦況を伝えるため、手紙のやり取りは推奨された。検閲もなされなくなった(自主的な検閲も禁止されたため。だが、日本にもある種のデメリットがある。扶桑にそれを強いた手前、2020年の状態以上の規制強化を控えるようになった)ため、兵士たちもありのままの戦況に関する心境を綴った。とは言え、集団心理が強く作用する扶桑の大衆に経済活動を自主規制されては困るため、経済活動の継続を強く推奨し、マスメディアも敵対心を煽る報道(史実の敵性語運動など)は強く禁止された。扶桑はこうした流れで軍への新規志願を募るのに苦労する羽目に陥った。のぞみの教職への転職の失敗はこうした混乱の流れに一石を投じたわけである――

 

 

 

 

 

――日本連邦は志願数が低調なままで50年代に突入するのが確実になった。人的資源の補充が覚束ない状況では、いくら兵器を揃えようとも意味はない。そのため、ヒーローユニオンへの非公認の出資を増額してゆく。情けないが、当時の状況では仕方ない選択であった。消耗戦では絶対的に不利であるため、一回あたりの敵の損害を甚大にしない限り、戦線の維持は覚束ない。そのため、リベリオン軍は兵器と人員の質の差で、師団の一個か二個は会戦の度に壊滅してしまうという軍事学的にはお涙頂戴な状況になっていく。リベリオンは史実のソ連ほどの人的資源はないので、この状況は如何ともし難かったが、兵器開発競争には乗っていく。それは両国の他国との軍事力の差が顕著になっていく流れである。リベリオンも航空機のジェット化を完了しつつあるなど、兵器開発競争は加速していく。扶桑皇国は日本側には未通告だが、既に一定数のF-14とF/A-18E/Fを保有済みである。これは日本側の干渉を恐れてのことである。大戦は一種の消耗戦だが、日本の政治家は理解しておらず、『うんと質のいい兵器が少数あればいい』とするのだ。ジオン軍の敗因をそのままなぞっている。その結果、人員を消耗できない日本連邦は精鋭部隊におんぶに抱っこなのだ。他国も『精鋭部隊』との触れ込みの部隊をダイ・アナザー・デイに動員したが、1943年以降の『世代交代期』で実際の練度が往時に比して低下していたため、結果的に醜態を晒す事になった。太平洋戦線への配置を躊躇う国が増加したため、ヒーローユニオンへの投資を増やし、新式兵器の普及までの時間をダーティーな手段を用いてでも稼ぐ。それが太平洋戦争で起こっている出来事である――

 

 

 

 

 

 

――義勇兵らと正規兵の軋轢も問題であった。日本陸海軍の出身者は基本的に『温厚』か『荒くれ者』の二極であったが、日本海軍出身の義勇兵らは当初、かつての仕打ちへの『お礼参り』をやりまくったため、扶桑軍の正規の下士官や将校が『バッター』の恐怖に怯えることとなり、上層部が海軍精神注入棒の全部隊からの回収と廃棄に追われるなど、問題を起こした。とは言え、特攻も辞さない敢闘精神は評価されていたのも事実である。扶桑は日本の義勇兵で構成される部隊を前線に配置し始め、F-86Fを与えている。これは正規部隊の訓練が未了であるためで、64F他の少数の精鋭部隊以外の航空部隊(制空・爆撃など)は殆どがジェット化に伴う訓練に追われており、南洋戦線では人型兵器に機種変更する部隊が増えている。日本側はこれに困惑したが、戦争中である扶桑は手段を選んでいられないのである。配備が進む航空機の中では、比較的に訓練が容易なクフィールやA-4は退役処理がなされた複座戦闘機や軽爆撃機などの代わりとして重宝され始めたが、『部隊によって使う航空機がバラバラ』なのは多分に問題視された。発注数の減少した軍需産業への救済措置の側面もあるのと、基本的に旧・西側諸国の装備であるという共通性はあるが、訓練の手間を問題視したのである。とは言え、旧式のレシプロ戦闘機にまだ需要が残っている時代であるので、機種が多いのはやむを得ない――

 

 

 

 

 

 

――とは言え、敵味方共にレシプロ機がまだ使用されているのは事実である。生産ラインの転換や訓練の手間を省きたいのか、F8F、F4U、P-51H、P-47後期型の姿は健在である。扶桑も対抗上、ターボプロップエンジン化した陣風、烈風のラインは維持している。前線の航空隊は比較的少数のジェットを多数のプロペラ機が補佐する状況であり、ダイ・アナザー・デイを生き延びたレシプロ機で疲労が少ない物はターボプロップエンジンへの換装と構造の補修と強化が行われ、純粋なレシプロ機を本格的に代替し始めた。新造も行われたため、この時期のレシプロ時代の高齢パイロットが未だ現役である頃は、機種転換訓練の手間をある程度省くため、ターボプロップエンジン機が数的主力であった。ジェット機を扱えるのはエリート部隊か、防空部隊、空自出身義勇兵の多い部隊のみという状況であるが、64Fとその支援部隊は人型兵器も運用する権利を有する。これは陸軍近代化の遅延対策であり、一騎当千の人型兵器でどうにか時間を稼ぐとするドクトリンである。それは成功し、64Fがザンスカール残党を撃退した数日後には、チーフテンの機甲部隊への配備が本格化し、ダイ・アナザー・デイに参加しなかった部隊も更新し始めていた。とは言え、日本側からの批判も大きかった。重さである。南洋はともかく、本土に55トンの戦車は置けないというものだ。とは言え、扶桑には150トン戦車である『オイ車』を試作していた過去があるので、55トンはかわいい方であると認識していた。この認識の違いも機甲兵器の遅延に繋がっていたには否めない――

 

 

 

 

 

 

 

――その機甲師団の装備更新の遅れを補うため、64Fは装備増強を急ぎ、その一つの目玉として、RX-94『量産型νガンダム』を当初設計より高性能化して配備した。これはジェイブス部隊の指揮を取る機体とエースパイロット用としての『准ガンダムタイプ』が必要になったためだ。ほぼ同様のポジションのジェスタは最新鋭機であるので、連邦が供出を渋ったが、サイコフレームの兼ね合いで量産計画の存続そのものが本当に危うかった量産型νガンダムであれば、すぐに供与をしてくれるだろうとする予測に従っての要請だった。実際、量産型νガンダムのラインは条約交渉の最中には既に稼働しており、連邦としても投資費用を無駄には出来ないため、ジオン穏健派との条約交渉を隠れ蓑に、一定数を試供品代わりとし、『量産検討』の名目で50機を生産。ジオン共和国の自治権放棄でサイコフレーム規制条約の根拠が『消滅した後』に本格配備を開始した。その頃には当初設計での予定性能では不足と見做されたため、部材単位の更新での高性能化が図られ、『ファンネルを非搭載の場合のνガンダムに匹敵する』程度にまでパワーアップした。ロンド・ベル本隊にとっては、陳腐化した『ジェガンR型』の代替機、64Fにとっては指揮官機としての需要があり、それ向けの第一次生産分が納入された。地球連邦軍も外貨獲得で再建の資金を得たいため、量産型νを扶桑へ輸出した。扶桑が機動兵器を多種多様に運用せざるを得なかったのは、当初の目当てであった機甲兵器が日本側の思惑で配備計画が尽く遅延・変更を余儀なくされたためで、プリキュア達が華々しく活躍する裏では、極めて政治的な意味での部内の暗闘が繰り広げられていたわけだ。プリキュア達の活躍が実態以上に大げさに扶桑で報道されるのは、機甲部隊の装備更新が遅れに遅れている状況を隠すしかないからで、ダイ・アナザー・デイで日本が犯した失態が如何ほどに甚大な損害であったのかの表れである。とは言え、扶桑本土で運用可能な『最強の軽戦車』である『M41軽戦車』が前線で鹵獲されたことは朗報であり、コピーと量産化が即日で決議された。目的は『騎兵を祖に持つ部隊を満足させるため』、『テケ車を奪ったことへの詫び』であった。扶桑本土の機甲部隊は当面、1960年代後半当時の陸自機甲部隊の構成で忍ぶ事になった。これは扶桑本土のインフラ整備が史実と大差ない状態だった兼ね合いであり、南洋方面に重武装の戦車が回される傾向にあった。南洋島は地盤も強固であり、機甲戦を大規模に展開できるだけの広い土地もある。そこが日本がまだ把握しきっていない扶桑の土地事情であった――

 

 

―そして、扶桑がなぜ、(同盟関係とは言え)キングス・ユニオン製の戦車群を大量に購入したのか?突きつけられた『謎』に、日本防衛装備庁は悩む羽目となった――

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