ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第百九十二話「プリキュアオールスターズの一つの選択。そして、謎」

――歴代プリキュアの中には、大決戦の際に64Fが有していたサイコフレームの共振の際の幻視で23世紀の世界の光景を垣間見た者もいる。それは奇しくも、一年戦争から第二次ネオ・ジオン戦争の様子であり、隕石を人為的に落とし、核の冬を人工的に起こそうとした人類の業を垣間見たことで、『次元世界全体の邪と戦う道』を選んだ者もいる。水無月かれん、秋元こまち、日向咲、美翔舞などが該当する。プリキュア達にとっても、一年戦争からネオ・ジオン戦争までの戦乱の歴史の光景は衝撃的であったが、それを現実なのか、幻影かを判別する事は出来なかった。だが、大決戦の際のサイコフレームの共振で感応現象を起こした者が後に優先的に選ばれるかのように、それぞれの世界で大決戦の記憶を後々に思い出した者が自分の世界での全てよりも優先する形で戦列に加わったため、サイコフレームはプリキュア達に強い影響を及ぼしたと言える。その兼ね合いで元の世界だけでない『次元世界全体の守護』の使命に覚醒めたため、ヒーローユニオンへのプリキュアオールスターズの加入をのぞみに薦め、のぞみもそれを了承した。その結果、ヒーローユニオンとの連携が叶い、プリキュアオールスターズは目の前の戦いに専念できるようになった――

 

 

 

 

 

 

 

――プリキュアオールスターズは一定の人数に増加した後、のび太の世界の血みどろの未来を知らされた。23世紀には宇宙大航海時代を迎えたものの、宇宙規模の戦争になったがために行われる所業も凄まじいことになった事、オーストラリアに至っては、首都であったキャンベラと最大都市のシドニーを大地ごと消滅させられ、旧大国としての地位を失った歴史を知らされ、圧倒された。こうした説明で自分達が呼ばれた理由を悟ったわけだ。デザリアム戦役でジオン共和国は消滅したものの、『ジオン公国は死せず』と言わんばかりの抵抗は続けられており、本来は思想・信条の相容れないはずのティターンズに加担する有様であった事はプリキュアオールスターズも憤慨させた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ザンスカール帝国などの残党がウィッチ世界のティターンズに与した事を知ったユング・フロイト地球連邦大統領はウィッチ世界の64Fに政府の一部から廃艦論があったベクトラ級戦闘空母を艦載機と人員ごと供与し、掃討に充てる事を決定した。ダイ・アナザー・デイ末期に一時的に派遣された同艦だが、64Fに運用させることで、維持費を扶桑に負担させる思惑もあった。64Fが欲していたZタイプを大量に有している同艦は地球連邦軍の純粋な戦闘空母としては史上最大である。そのため、実質的に地球連邦軍の空母機動部隊が一個まるごとウィッチ世界に派遣されたのと同義であった――

 

 

 

 

 

 

――64F 基地――

 

「ベクトラ級まで回されるのか?」

 

「ジオン残党がティターンズに与したようだしな。これで俺たちは地球連邦軍史上最大の展開能力を持つことになるぞ。大統領の計らいだそうだぞ、坂本」

 

「贅沢だな」

 

「ネオ・ジオン戦争の教訓だよ。それと、宇宙のジオン残党が火星やこの世界に逃げ込んでるから、俺たちを使って掃討させたいんだろうさ。装備と人は寄越すから、結果を出せって事だ」

 

「まったく」

 

「仕方ない。日本からの援助は俺の息がかかってる連中からしか期待できないんだ。地球連邦から援助を受けるほうがまだマシだ。有事の需要と供給を理解出来てるからな」

 

「何故だ?」

 

「軍隊を災害救助に都合のいい政府直轄の土木作業員としか見てないんだよ。だから、海保が数年前に海援隊と揉めたんだ。それに有事の需要と供給を第二次世界大戦から70年を超えてるのに、理解しとらん。そんな政治家や官僚が多い。日本はとかくブツを出し渋るから、物的には宛にできんよ」

 

黒江は坂本に愚痴るが、日本にモノを出させるには、外圧で出させるか、外国産兵器を買う話を流すという手段が手っ取り早いと零す。実際に、ダイ・アナザー・デイでコンカラーやセンチュリオン、ティーガー系を現地部隊が緊急で購入したという報を聞いたある高級防衛官僚が『けしからん!』と怒ったというが、『俺たちに丸腰で戦えというのか!』という現地部隊の指揮官の猛抗議であっさりと引き下がった逸話を残したほどの醜態を晒している。この教訓で扶桑への装備供与は出し渋るなという内規が生まれたが、左派の政治家達が扶桑への装備供与を規制しようとするなどのチョンボ続きで、装備と物資援助の主体は地球連邦軍からのものに切り替わっていた。扶桑も南洋防衛を優先し、南洋島での使用を前提にチーフテンを生産し始めていた。これを聞きつけた日本の防衛産業は焦り、機甲装備の現地生産を正式に認めさせるように政府に圧力をかけるが、それには時間を要したという。その間にM41軽戦車も鹵獲からのコピーが始まっていたため、装備数は結果的に増加し、防衛装備庁をきりきり舞いさせたという。

 

「それで、セイバーフィッシュやワイバーンの数が増えたのか?」

 

「コスモタイガーは高性能だが、あまり持つと、戦闘機の保有枠の規制を考えるアホな政治屋がしゃしゃり出てくるからな。その点、在来航空技術の集大成のあれらは枠の維持に丁度いい」

 

扶桑は続く消耗戦で保有機材を喪失しており、補充に地球連邦軍製の高性能な航空機を使用するようになっていた。これを知った日本の防衛産業は市場喪失を恐れ、自衛隊の使用する機材の現地生産の要請を出した。とは言え、自衛隊の保有機材の多くは米軍機のライセンス生産であるため、おいそれと現地生産が許可されるとは思えなかった(実は扶桑が予め、ダイ・アナザー・デイの際にライセンスを獲得していた)防衛産業は扶桑に協力を要請。しかし、扶桑はライセンスを独自に取得済みで、地下工廠でF-14以降の機体を生産中であったと通告されたため、1952年度からF-15、F-2などの現用機の生産を正式に開始する取り決めがなされた。1945年から5年余りで扶桑の生産機の技術水準は21世紀の現用機水準に到達する事になる。

 

 

「ウルスラを日本に留学に行かせたが、良かったよ。ダイ・アナザー・デイの兵器開発合戦と物量戦は奴には酷だ」

 

「数週間で朝鮮戦争、今じゃ戦後水準だものな。コンピュータ技術もそのうち市井に流れるだろうから、扶桑は超大国になるだろう」

 

「史実の米国の役目をうちの国が担うことになったからな。ガリアはアルジェリアをやる気か?」

 

「ド・ゴールも乗り気ではないが、周りがそうさせるだろう。資源確保のためにな。だが、連中の装備は戦間期の水準のままだ。やれば虐殺になるぞ?」

 

「日本は自立させたがるだろうが、ウィッチの安定供給が成り立たないと、この世界では独立したがらない。ブリタニアのコモンウェルスが分離していないようにな。」

 

黒江の予測は後々に的中し、アルジェリア独立派は日本連邦への帰順派に粛清されてしまい、日本連邦は准加盟地域扱いでアルジェリア地域を維持する羽目となる。日本連邦からすれば『まったく旨味のない戦争』となるが、ガリアの権威が『ワーテルローの戦い』以来の無残な軍事的敗北で失墜したことでドゴーリストの多くが失脚していく端緒となる点では、欧州で歓迎された。カールスラントの急激な軍事的影響力喪失、ガリアの権威失墜で欧州はブリタニア連邦の手に再び委ねられたが、ブリタニアの経済は減速傾向であり、更に扶桑への賠償金の負担で軍備規模は緩やかな縮小を余儀なくされたため、日本連邦軍は『世界最大最強の軍隊』へと成長せざるを得なくなる。また、ガリアの権威失墜でガリア海外領の統治権を日本連邦へ移譲させるという提案が国連で連名で出されるに至る。この対応に後々にド・ゴールは頭を抱え、彼が晩年期に差し掛かる頃、ガリア領インドシナ(ベトナム)に久しぶりに怪異が現れるのである。それは1960年代以降の話であるが…。

 

「とは言え、今の規模の軍隊はブリタニアも維持できまい。10年後には外征する余力もなくなるだろうさ」

 

「英国も無理して外征してるから、外征能力は維持するだろうさ。宛にできんだろうがな。」

 

坂本と黒江はブリタニア連邦の外征能力は10年以内に半減するだろうと予測する。これは近いうちに、ブリタニアの政権が交代すれば、自慢の戦艦も維持費の高騰を理由に、多くが解体されるだろうと見込んでいたからだ。実際にその議論がなされていたため、日本連邦は他国が『軍事的負担をさせる』思惑で支援金を供出することで戦費を賄っていた。近代的な国家総力戦は金がかかるのだ。その戦費の節約の槍玉に挙がるウィッチ兵科。竹井少将の存命期間のうちは維持は約束されているが、竹井少将は病を患い、細々と生きながらえているにすぎない。1937年、少将の時点で退役を余儀なくされた事から、明治時代の事変に参戦した経験を持つ軍人の生き残りと思われる。孫娘の竹井醇子もこの時点では20代を迎えていることから、1949年時点では高齢もいいところ。21世紀の基準でも充分に高齢になっており、本人も老い先短いと公言しているため、聡明な軍人たちは『備え』を既に始めている。彼がウィッチ兵科の庇護者であるため、彼が死ねば、ウィッチは例外的な者を除けば『政治的庇護を失う』事を自覚していたからだ。

 

 

 

 

 

――ちなみに後世の記録によれば、竹井少将が高齢になる1940年代後半から既にその備えは将校になっているウィッチ達の間で始まっていたとされる。それが現実味を帯びて来るのは1950年代半ばに入る頃である。彼はウィッチ兵科の最期を見届けたいとし、その気持ちで生きながらえていたが、肉体の衰えが1949年頃に顕著となりはじめ、孫娘の醇子(海藤みなみ)もその時を覚悟し始めたという。だが、元軍人の意地か、なんとか踏みとどまり、しばらくは『小康状態』となる。その間にウィッチ将校たちは他兵科に移るための準備を進める。軍部もいきなり他のことはさせられないため、移行期間はその意味でも必要と判断されたのである。ウィッチの多くは1940年代後半~1950年代半ばまでにそれを行っていく。戦闘に専念できた者は事実上、64Fのみであった――

 

 

 

 

 

 

――こちらはプリキュア達。大決戦の際に黒江たちがサウンドエナジーで鼓舞した事がうららから、のぞみに伝えられる――

 

「先輩、歌上手いからなぁ……。あたし、元の世界でエアギターは自信あってさ」

 

「え、エアギター出来たんですか:」

 

「うん。披露する機会無かったけど、実は得意なんだ。おとーさんが若い頃にロックバンドにかぶれてたみたいでさ」

 

「意外ですね」

 

「先輩、色々誤解作ってんなぁ……」

 

「色々ぶっ飛んでましたよ。断空光牙剣、シャインスパークとかしてましたし」

 

「……あ、アハハ……やりすぎ」

 

「歴代のヒーローー達が強かったんで、相対的には目立ってませんでしたよ」

 

「そりゃそーだけど……」

 

「結果的には勝てたんだし、いいじゃないですか。綾香さんと智子さんがいなかったら、私達はあの場で倒されてました。のぞみさんが事態を把握して、ヒーローユニオンを動かしてくれたから、勝てたんですよ。パワーソースを侵されることの重大さも理解出来ましたし」

 

「でも、あの場にいないはずのプリキュアの記憶はいつ戻ったの?」

 

「しばらくしてからでした。次の戦いで仮面ライダーJが助けに来た時です。響さんが初陣だった時ですよ」

 

「瀬川さんが助けに行ったのは、あの時だったんだ…」

 

「某光の巨人みたいに巨大化できるんですね」

 

「精霊の力を借りるから、恒常的な能力じゃないけどね。そうなったら、ものすごいよ」

 

「あの人はどういう風に改造を?」

 

「確か、地空人って種族が地球を守るために、仮面ライダーZOをモデルにして助命と改造をしたとか。だから、仮面ライダーZOと仮面ライダーJは生体改造なんだって」

 

「生体改造……」

 

昭和ライダーの系譜は基本的に改造人間である。これはバダン、もしくはゴルゴムは機械式サイボーグ、もしくは生体改造の改造人間の技術を持つからだ。BLACK以降の仮面ライダーが生物的な有機的な姿なのは、生体改造式の改造人間(アマゾンがその最初の事例と言える)だからだ。

 

「あたしもそれ聞いたの、ダイ・アナザー・デイが終わってからなんだけどね。」

 

「でも、私も別世界に生まれ変わって、戦車を乗り回すなんて、ぜんぜん思わなかったです」

 

「アメリカの戦車っしょ?」

 

「イギリスの作った改造型ですよ、正確には。大戦の頃にドイツの重戦車をぶち抜くために用意したものです。戦車道だと強めの車両です。大学選抜チームとの時はパーシングの改良型を使いましたけどね」

 

「先輩がテコ入れを命じて送ったんだけど、どうだった?」

 

「スカッとしましたね。大学選抜チームが後で愚痴ってきましたから。ミルクがカール自走臼砲を分捕ってきた時は苦笑いしましたけど。でも、できれば、7人ライダーと会った時に記憶を取り戻したかったですね」

 

カレーを食べながら、両者は話を続ける。とは言え、現在は往年のように芸能活動を広報業務の一環で行い始めているうらら。前世で芸能人として名を成した者として、大決戦の際の黒江達のサウンドエナジー戦術にライバル意識があると明言する。

 

「正直に言えば、あの時の綾香さん……ちょっと対抗心ありました。私も女優のついでとは言え、歌手活動してたじゃないですか」

 

「先輩は作詞もできるくらいに、素で音楽の才能あるから。おまけに英才教育の名残りで、歌唱力もある。可視化するくらいのサウンドエナジーを出せて、シンフォギアも起動させられるからなぁ…」

 

「バリバリにロックとか歌いこなしてましたから、なんか悔しくて」

 

「先輩、ランカちゃんのツテあるからなぁ。おまけに、フロンティア船団で才能あるって言われたそうだから、その気になれば、歌手で食えるそうな」

 

「チートじゃないですか!」

 

「先輩、基本の時点でチート気味だったのが、転生を重ねた今じゃ、ゴルゴとのび太君以外の相手と互角にやれるらしいよ」

 

「その二人は例外ですか?」

 

「存在自体がデウス・エクス・マキナなゴルゴは普通に倒せないし、ギャグ漫画の存在でもあるのび太君はギャグ漫画の存在補正が英霊の特性並みに強いんだ。それでシリアスにやれるから、どんな攻撃でも死なないようになってるらしいよ」

 

のぞみは黒江から聞いていた事をうららに教える。のび太は小学生時代の内から、野良犬に足を噛まれまくっていたのに、狂犬病にかからない。更に自動車に跳ねられても致命傷に陥らないなど、明らかに強運の域を超えている点が多かった。更に接近戦での早打ちは人類としては史上最速であるなど、シリアスに強い特技を備え、タフネスにすぎる回復力とご都合主義的なひらめきを以て切り抜けてきた。ゴルゴは存在自体がデウス・エクス・マキナ気味なので、まさにチートの代名詞と言える。(ちなみに、ゴルゴが『俺の心に火をつけた……』とつぶやいた時は本気を出す時だが、殆ど人智を超えた彼がそれを言ったのは、実は一回のみ)

 

「あの時の幻視はなんなんだったんですか?」

 

「サイコフレームの共振だよ。幻視が現れたプリキュアから呼ばれたって事は、世界が求めてるから、かも」

 

「なんだか、人の領域でどうにかできるレベルじゃなくなってませんか?」

 

「りんちゃんがいた世界での決戦みたいなものだと思う。その戦いは『神も仏もない』敵との滅ぼしあいだったっていうから、それを避けるためにあたしたちは順に集められたんだと思う」

 

「敵って…なんなんですか」

 

「わからない。りんちゃんの出身世界はまた違う世界らしいから。あたしたちが力を長く失って、片腕を無くしたのはまだいい方っていうんだから……よほどの敵だよ。バダン……ゴルゴム残党か……?それとも、デルザー軍団か……」

 

りんの出身世界で起こった大戦の詳細は不明だが、大激戦の末にプリキュアオールスターズは十数年後くらいは戦う力を失い、戦死者まで生じたという事は言及されている。その悲惨な結果の再来を避けるために、自分たちは集められたのだろうか。のぞみは釈然としないものの、敵の目星はつけていた。そして、敵に対抗する力を身に着けてほしいと願った『その世界の歴代の妖精たち』の願いが世界を超えて作用したのだろうか?プリキュア達は徐々に組織との戦いに巻き込まれつつあった。

 

 

「敵はラ級も持つ。モンタナの残骸から回収したコンピュータの記録によれば、ガスコーニュとリバティ、フリードリヒ・デア・グロッセ、インペロが敵の手にあるそうだ」

 

「ラ級って?」

 

「のび太くんの世界で、先史文明だが、海底文明だかが残した重力炉を戦艦に積んで、一騎当千を実現させようとした記録があるんだ。無敵のドリル戦艦を第二次世界大戦当時の列強は欲しがったわけ。枢軸国側のは公式の記録に残されなかったけど、戦勝国側のは残ってる。長官が今言った名前は敵が持ってる艦の名前だよ」

 

「そうだ。未完成だった日本海軍の大和型戦艦の五番艦……超大和型戦艦の二番艦のラ號が世界で最初に確認されたラ級戦艦だから、ラ級。ほら、よく弩級とかいうだろう?あれは英国のドレッドノートという戦艦が言葉の由来だよ」

 

「なるほど」

 

「基本的に実験兵器扱いで計画された戦勝国と違って、決戦兵器として作られた枢軸国側のほうが強力だ。その時の最新最強の戦艦をベース艦にしているからね」

 

「つまり、敵に残っている艦の多くは」

 

「どこかのタイミングで手に入れた戦勝国側の艦と、未完成だった枢軸国のそれを戦後に完成させたもので組み合わせている。ソビエツキー・ソユーズは鹵獲し、モンタナは撃沈している。残るは四隻あまり。戦中から増産していないかぎり、ね」

 

嵐山はラ級の増産の可能性を危惧している。故に扶桑にラ級を量産させたのである。軍人らしい用心深い思考が窺える。

 

「長官は敵が増産に入ってると?」

 

「軍事学的に、一隻のみというのはありえない。二番艦までは考えるのが常識だ。ガスコーニュも『同型艦』があるかもしれん」

 

ガスコーニュは史実の諸元を考えると、380ミリか400ミリ四連装砲塔を前後に一基、あるいはラ級としての空中戦を重視し、前方集中配置を続けたという二案が想定されている。ダイ・アナザー・デイでは試作状態と思われる艦の撃退に留まったため、未だ健在であると思われる。戦力価値は未知数だが、欧州系では随一と思われる。

 

「インペロはカタログスペックは優秀だが、実際の能力は低いと思われる。だが、ガスコーニュは完成していた場合は侮れん。B世界に投入されていれば、向こうの世界の連盟海軍は一日で全滅だ」

 

「空を飛べる上、艦載機を国によっては持っていたでしょうしね」

 

「向こうの坂本少佐はそれを危惧している。バリアもある以上、敵が向こうの世界を見つけ、侵攻した場合は連盟軍は為す術もなく蹂躙されるからね。ロマーニャやカールスラントの解放どころではなくなる。兵器の怪異化研究も同時に潰してほしいと注文したそうだ」

 

「坂本先輩らしいですね」

 

「こちらでは、黒江くんたちが研究所ごと消し飛ばしたから、未来技術の導入に流れたが、そうでなければ、諸刃の剣である怪異化研究を続けるだろう。魔導ダイナモを研究所ごと破壊してくれと頼んだそうだ」

 

「坂本先輩は流れを変えるつもりですね」

 

「『G』の事を詳しく知れば、そうしたくもなるさ」

 

A世界では黒江たちが事前にその研究所を丸ごと吹き飛ばしたが、B世界では研究はウォーロックの教訓から、何分かは確実に制御できるように改良・試作がなされたと容易に推測されている。坂本Bはアニメの通りに『戦艦大和に積まれる』事を海軍の誉を汚す事と強く罵っており、北郷が引退を余儀なくされた過去の記憶もあり、坂本Bは上層部の思惑を根底から覆し、思惑を破壊したかったのだ。A世界の『超ウィッチ』達の力で怪異を駆逐し、上層部の信奉する『怪異化研究』の有用性の否定のみならず、人として手を出す領域ではないとし、その間違いを証明したい。それが坂本Bの願いであった。それを汲んだ黒江は盟約を結び、B世界のウィッチを帰還させるついでに、自部隊で一暴れする腹積もりであった。A世界とは、根底から違う歴史になると思われるB世界に風穴を開けたいという坂本Bの願いは聞き入られていた。A世界で判明した事柄をB世界に伝えた時、何が怒るか。それは神のみぞ知るといいたいところだ。

 

「ミーナ中佐には知らせないでくれとのことだから、オフレコで頼む」

 

「ミーナさん、なんかこう……ハブにされてませんか?」

 

「少佐は自分が責任を取る形でもいいから、人類を誤った方向に持っていきたくはないのだろう。だから、彼女には知らせんのだろう」

 

「やれやれ。これが悲劇のもとなんですけどねぇ」

 

「仕方あるまい。坂本少佐は向こうでは、そういうトラブルに巻き込まれておらんし、自分の魔力の寿命のほうを優先しているようだし」

 

「向こうの芳佳にも、ですよね。秘密にするのって」

 

「少佐のしようとしている事はダーティーなことだからな。君たちも摂理を超えてしまったことで非難されたり、誹謗中傷されたろう?少佐は咎を自分で受け、生涯抱えるつもりだ。あの子がそれを知れば止めようとするだろうからと、少佐は言っていた」

 

のぞみも、嵐山も坂本Bが黒江に盟約を持ちかけた理由を悟っていた。坂本Bは自分の名誉と引き換えにしてでも、『兵器の怪異化研究』を永遠に闇へ葬りたいのだろうと。皆に明かさず、A世界のウィッチ達と共謀する事を選んだのがその証。なんとも哀しいが、根本的に仲間想いな坂本はどこの世界でも、厳格にウィッチの本懐を遂げようとしているのだ。のぞみは坂本がアニメで口癖のように言っていた『ウィッチに不可能はない』という言葉がこの時ばかりは、『敵の遺物を利用せんとする思考を正す』という大義名分のもとに、坂本Bのワガママを通すための方便に思えて仕方なかった。だが、史実で師の北郷から否応なしに自立を余儀なくされた事の怨恨を考えると、同情に値するのも事実だ。

 

「先輩は分かってるんでしょうか」

 

「分かってて、敢えて引き受けたかもしれん。『摂理などは乗り越えるためにある』という事をあちらの世界に教えるために」

 

「先輩はB世界のウィッチにそれを…?」

 

「私の推測だがな。ほら、彼女、すぐにここをまた出ていったろ?あの子も忙しいからね」

 

黒江は会話と試食を済ませると、次の仕事場へと向かっていった。黒江は統括官として忙しい身の上だからだ。食堂に残った三人のこの一連の会話は64Fが如何に重大な任務を背負っているか、プリキュアオールスターズに課せられし使命の一端を示す重大なもの。黒江は自身の技能をフルに活かし、短時間の内にあちらこちらへ顔を出していたわけだ。そして、目下の調査事項は『如何なるラ級戦艦が敵にあるか?その数は?』、もう一つは『夏木りんの出身世界におけるプリキュアオールスターズ最終決戦の謎』の解明。夏木りん/キュアルージュが何度か口にしたその戦いの謎の解明。時空管理局を使って調べさせていることの中では、最も秘密のベールに覆い隠されている事柄であった。

 

 

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