ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第百九十三話「プリキュアオールスターズの謎への解答」

――歴代のヒーロー達は戦列にプリキュアオールスターズを加えた。これはある世界で彼女たちから戦う術を奪ったのがバダン帝国を始めとする『大ショッカー』であったことが判明し、彼女たちも組織と因縁があることが示されたからである。それはディケイドの調査で判明したことでもある。そして、『現役時代のままでは組織に対抗する術がない』事はプリキュアオールスターズに周知された。組織はティターンズを駒と見做し、援助をしている。彼らもそれを承知しているのだから、始末に負えない。ティターンズのフラッグシップはガンダムマークⅤ。前世においてはグレートマジンガーと互角に戦った名機である。64Fも必然的にそれらに対抗できる機体を揃えていく。量産機もジェガンの後の世代のMSに切り替えられ始めていた――

 

 

 

 

――第二バルカンベース――

 

「ベクトラ級戦闘空母が君等の部隊に供与されるそうだ。修理後はアースフリートの旗艦の予定もあったというが、艦載機と人員ごと君等の部隊に配備される」

 

「いいんですか?」

 

「ジオン残党の勢力が消えた今、左派から予算の無駄遣いと言われかねんからね。君等も予備機が無ければ、機動兵器戦に差し支えが生じるだろう」

 

「どこに配置を?」

 

「この星の共鳴軌道に配置されるそうだ。機体は検分も兼ねて、君らの基地に運ばれるとの事だ」

 

「ますます、他の部隊から嫉妬されるなぁ」

 

「他の部隊は経験も、細かなノウハウもないからね。連邦軍の正規部隊と同等の練度がある君達を使うほうが効率がいいと判断したんだろう」

 

「正規部隊でも滅多にないですよ。Zタイプを大規模に使えるのは」

 

のぞみはカレーをなんとか食べ終わり、ベクトラ級についての感想を述べた。

 

「Zガンダムの系統って高いんですか?」

 

「ジム系の倍の値段だってさ。変形するしね。重装型のダブルゼータなんて、安くなっても、それの二機分だって」

 

「高いですね」

 

「VFに比べたらね。戦車や戦闘機より高いのは当たり前だよ。ジム系だって、戦車二台分くらいのコストらしいしね」

 

のぞみは全体のリーダーは下りたが、サブリーダー的な立場は維持されている都合、こうした『兵站』に噛むことが多かった。先輩の日向咲は軍事知識は一般人レベルなので、正規軍人であるのぞみが支える必要があった。咲は意思決定権などを掌るが、細かい事柄はのぞみが引き続き処理を担当している。うららにそう示唆する。

 

「大変ですね」

 

「咲さんは戦闘は玄人でも、軍事知識は素人だしね。あたしが後輩として支えないと」

 

のぞみはその点を自覚しているようだ。プリキュアは年功序列がないとされるが、緩めの上下関係そのものは人間社会の必然的に存在する。精神が成人した後の状態であるのもあり、のぞみは咲を立てている。咲も細かいところはのぞみに任せており、実質的に分業制となっている。二人の共通認識は『なぎさは指示役に向いていない』という事。かつての戦い以降における第一世代プリキュア達の共通認識でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――Zタイプはジム系に比して高価な機材である事から、配備数はこれまで意図的に抑えられていたが、デザリアム戦役で有用性が否応なしに示されたため、第二世代型の生産が進められていく事になった。これは初期生産機が老朽化しているという都合もあった。Zタイプの弱点は空挺運用の都合で軽装甲の傾向があり、耐弾性能が低めであるところである。それを解消した試作機『Zプルトニウス』は防御重視の設計であるため、制式採用後の生産機では火力を増強するオプションを増やすという。最後のBWS採用機の『リ・ガズィ・カスタム』も増産される見通しであり、連邦軍の戦略が大艦隊戦を経た故か、ジム系の大量投入から『宇宙戦闘機としても運用可能な可変機を攻撃の要にする』というドクトリンに切り替えられたからだ。とは言え、通常型MSの需要は残っている。小型MSは乱戦での耐弾性能と強度がサイズの都合で低いこと、製造に高度な製造能力を必要とするため、製造拠点が破壊された場合の代替拠点の確保に手間取るなどの難点が露呈し、次第に軍用MSの主流から外れ、サイズ的に大型と小型の中間程度の『ミドルサイズMS』が小型機に代わって台頭し始める。ジム系の最新作『ジェイブス』はその第一号である。とは言え、ミッションパック方式は運用上の不都合の声が大きく、第二生産ロットではヴェスバーが固定装備とされ、本体ジェネレーターのさらなる高出力化などの少改良が施されている。この混乱もあり、同機の配備数はジェガンの再改装型『フリーダム』に比べて少数になる見通しである。ジェイブスはジオン系諸勢力の消滅した後の時代においては『高コスト』と見做されたからだ。とは言え、有事が立て続けに起こる戦乱期であったため、量産自体はつつがなく行われた。『隣国』のボラー連邦と一触即発の状況下であったためだ――

 

 

 

 

 

 

――プリキュアオールスターズがりんのいた世界で敵対した敵の真の姿『大ショッカー』。次元世界を股にかける強大な悪の組織である。りんの出身世界への侵攻の際、プリキュアオールスターズと激戦を展開。彼女達の『力』と何人かの戦死者と引き換えに撃退された。その損害から回復した大ショッカーは今まさに本丸たる世界にその手を伸ばそうとしている。それを察知し、自らの再改造に打って出た仮面ライダー一号/本郷猛。組織にいながらも、独自の動きを見せる仮面ライダー三号/黒井響一郎。そして、殺戮兵器として完成された仮面ライダー四号。三者の思惑が入り交じる中、フェイトとディケイドを通して、大ショッカーがプリキュアオールスターズの内の『一つ』を実質的に活動不能に追い込んだ事の裏を取った黒江は咲とのぞみを呼び出したが、のぞみはうららと第二ベースにいたため、咲を連れて、第二ベースに赴き、第二ベースでそれを伝えた――

 

「緊急の用件を言うために戻ってきたんですか?」

 

「重大だぞ。りんが元の世界で戦った相手が分かった。フェイトから報告が挙がったが、大ショッカーだ」

 

「大ショッカー?」

 

「バダンを中核にする暗黒組織の集まりだ。のび太の世界で言う22世紀の中頃に相当する頃、りんの出身世界に侵攻したらしい。だが、そこには、りんの世界のお前らがいたわけで」

 

「戦いになったんですね」

 

「その世界の全プリキュアが立ち向かったからな。相手はデルザー軍団、仮面ライダー三号と四号、シャドームーン、ドラスなどを含む軍団。お前らの力でよく撃退できたもんだ」

 

とは言え、プリキュアオールスターズは激戦の末に何人もの戦死者を出しており、りんの世界ののぞみもシャドームーンのサタンサーベルで片腕を斬られ、以後の人生を義手で過ごしたという。そのため、プリキュアの力による加護はあまり期待できない。改造魔人たちが健在である事から、彼女達が命を賭して戦ったのと割に合わない『あまりに無慈悲すぎる結果』だ。

 

「戦死者が出ているのは本当らしい。各チームで無傷なチームを探す方が難しかったそうだ。りんの許可取って聞き取りを行ったが、全プリキュアの残された力を結集した必殺技で撃退したが、それと引き換えに変身能力を十数年は喪失。普通の生活に戻ったが、戦いの傷は相当に大きくて、精神科に通う奴もいたり、思い出さないように、チームとの連絡をわざと断った奴もいたそうだ。お前達はその二の舞にならないように、強くならなければならん」

 

「そうですか…。りんちゃんの世界が……」

 

「組織との戦いは本気の殺しあいだからな。心に傷を負う奴が多くても不思議じゃない。たとえ、女子供でも、仮面ライダー三号と四号は情け容赦がないからな。俺も半死半生に追いやられた事がある」

 

「そうか、それで先輩は」

 

「そうだ。それで聖闘士を目指したんだ。お前らがあいつらと互角に戦うには、最低でも白銀聖闘士上位級のタフネスと攻撃力、スピードが必要だ」

 

「条件、厳しくないですか?」

 

「これでも危ないくらいだ。下手すれば、奴らは加速装置でマッハ5以上を出すぞ」

 

「加速装置ぃ!?」

 

「そうだ。それをやられた場合、現役時代のステータスのままじゃ、嬲り殺しに遭うのが関の山だぞ。対応するにはそれに匹敵する、あるいはそれを超えるスピードを常に出せるくらいの力をつけろってこった。俺も平成ライダーに接触したから、クロックアップを覚えられたがな」

 

「うーん。パワーを上げても、それが当たんなかったら、何も意味ないですからねぇ」

 

「そういうこった。お前らにも波紋の修行させっぞ」

 

「……本気ですか~!?先輩ぃぃ…」

 

「今のあたしたちにメリットあまりないような…」

 

「私もですか~!?」

 

「そうだ。うらら、お前の技は拘束系だが、振りほどかれやすいからな。カレーの感想書いて、長官に渡したら、お前らも修行開始だ」

 

「ぶっ飛んでるって言われません?」

 

「お前らだって、敵に負けたら名折れだぞ」

 

 

――というわけで、一同は正式に波紋の修行となった。横隔膜あたりを波紋使いが刺激し、呼吸を整えることで始まりとなる。この頃にはラブ達が先行して始めている。転生組かそうでないかを問わず、『精神力を鍛える』目的も多分に含まれた。これはりんの世界での彼女たちが激戦の果てにトラウマを負い、チームメイトと会わなくなった者が生じたという調査結果の教訓であった。また、平行して少宇宙を覚醒めさせるための修行も課した黒江。(のぞみは変身している時にのみ扱えるようになっていたので、それを普段から発揮できるようにするため)プリキュア達は組織が別世界の自分達を結果的にバラバラにした事を知らされ、『その世界の自分達に代わって、雪辱を果たす』というモチベーションを得たため、修行に打ち込んでいく――

 

 

 

 

――23世紀世界で敗れ去っていった軍隊の生き残り達はティターンズ残党の呼びかけで、かつての主義主張を超えた『反地球連邦組織』として団結。ウィッチ世界のティターンズに戦力を提供し始めた。地球連邦軍はそれに対抗するため、駐留部隊と64Fに最新鋭機を配備。必然的に体制を立て直し始めた地球連邦と、地球連邦の派閥抗争に敗れた者、かつてはスペースノイドの代表とされたジオンの残党などの対立がウィッチ世界に持ち込まれていった。扶桑とリベリオンの戦争はその代理戦争の側面も含まれていた――

 

 

 

 

 

 

 

――扶桑皇国が警戒するリベリオンの海軍力。1949年時点ではダイ・アナザー・デイでの痛手から立ち直り、改モンタナ、超モンタナを基幹にした大艦隊を有するにまで規模を回復した。ウィッチ部隊は儀仗上の理由で残されているが、既に実戦部隊としては見做されておらず、空母の甲板は艦上機で埋め尽くされていた。ウィッチ同士の空戦はダイ・アナザー・デイでも懸念されるほどは起こらず、リベリオンが実戦部隊の編成からウィッチを外したことが伝わった事も、扶桑軍ウィッチ兵科にとってはものすごい痛手であった。ダイ・アナザー・デイの際のサボタージュはそれを大義名分にしていたからだ。裏でサボタージュの糸を引いていたウィッチ出身の参謀らにとっては最悪の結末と言える。結局、怪異の脅威が小康状態となり、なおかつ従来の考えが通用しない敵が主敵に切り替わったために彼女たちは政治的に追い込まれたわけである。派閥は解体され、黒江の一件や64F隊長代理の派遣の失敗でウィッチ出身参謀たちは既に追い詰められていたため、この事項の判明は完全なるトドメになった。ウィッチ運用装備は主要艦艇から撤去され、強襲揚陸艦に移設されていくが、かつての隆盛とは程遠い。主力艦の対空装備が飛躍し、VLSやパルスレーザー、RAMも普及し始めた時期、ウィッチを敢えて対空直掩目的で使う意義も薄れていたのだ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――日本連邦とリベリオンの兵器開発競争は凄まじい勢いであり、他国が15年以上かかる開発を数年で済ませるほどのスピードで兵器が刷新されていくほどであった。日本連邦は国家単位での介入で技術進歩速度は急激であり、1950年代が目の前に迫る頃である1949年の頃には、航空技術・装甲戦闘車両技術は1970年代後半以降の水準に到達していた。とは言え、装甲戦闘車両は工場の建て替えなどの都合で本国では大量生産が出来ず、航空機も工員の雇用問題も絡み、ジェット機への切り替えに遅れが生じていた。そのため、軍は直轄の南洋地下工廠で兵器を製造、そのまま投入するという策で場繋ぎを行っていた。英国製のセンチュリオン、コンカラー、チーフテンが轡を並べて、南洋で使われたわけだ。74式の生産が予定より遅延したせいでもある。日本の政治家や市民団体の妨害で防衛産業は市場を逃しかけている。この報に気まずくなった中道右派の計らいで『国産兵器と半々にする』ことで決着し、21世紀の最新兵器である『10式戦車』を1951年を目処に、ライセンスと生産設備を供与することが決まる。これは英国製に装甲戦闘車両が独占されそうになっている現状に憤激している三菱重工業の重役の働きかけの結果であった。一方の現場は軍需産業のそんな自負などはどうでもよく、とにかく『強ければいい』であった。当時、カールスラントの戦車がその重量と専用部品の多さ、専用弾薬、車種そのものの旧式化でブランドとしても陳腐化し、政治的理由で国内保有車両の維持さえ四苦八苦していたのと対照的に、ブリタニアは日本連邦が大量に戦車を買い付けたために兵器ブランドイメージのアップと国内経済の浮揚に一役買っていた――

 

 

 

 

――海軍も空母機動部隊の増強が遅延しているため、空軍が宇宙艦艇を揃えることで、事実上はその代替となった。また、陸軍も装甲戦闘車両の増強と刷新に手間取る上に妨害があるため、その妨害を潜り抜けるために人型兵器を調達するという有様であった。攻勢プランもどこまで侵攻するかで意見が纏まらず、『史実の意趣返しにハワイや西海岸を消し飛ばせ』という過激な意見まで出る始末なのである。現場がいくら頑張っても、力を得たことで増長した者、負かせるため(国民に『敗北した経験を持たせたい』という思惑から)に情報を漏洩する者、侵攻に興味がない者の『どっちつかず』の態度など、日本連邦は正式な戦争遂行プランが策定されない有様であった。また、太平洋戦線での必要上、長い航続距離を持つことが必須とされたので、欧州向けに航続距離を切り詰めたモデルが『不要』とされてしまったのも、航空部隊の誤算であった。とは言え、史実より長めに見積もられていたものの、1900キロ前後であったので、零戦二一型の長めの航続距離を強みと見ていた日本側から『アンポンタン』だの、『ノータリン』だの責められる羽目に陥った。陣風や烈風のターボプロップエンジン型で航続距離が伸ばされたのも、その兼ね合いだった。とは言え、在来式の航空技術での航空機の航続距離は2000キロ~4000キロ前後で頭打ちとなっており、空中給油で伸ばすことが当たり前であったため、機内燃料タンクでの航続距離は2500キロ前後で妥協された。ウィッチ世界では、通常兵器は航続距離の長さよりも搭載量や使い勝手を求められてきたので、史実よりも長距離飛行が必要な太平洋戦線では勝手が違ったのである。そのため、双発攻撃機(銀河以前の機種)は退役を余儀なくされ、連山も退役が始まったのである――

 

 

 

 

 

――だが、富嶽を戦術用途に供するには大きすぎるため、連山をターボプロップエンジン化した『浅間』が戦術爆撃機としての後継機とされた。搭載量はウィッチ母機としての必要もあり、原型より増やされていたが、ウィッチを爆撃機で運ぶことの危険性が指摘されたため、実際は戦術爆撃機としての運用に専念した。当時は戦闘爆撃機のジェット機化も進んでいたものの、ガンシップなどを宇宙艦艇に代行させるのももったいないということで、連山ベースの浅間が適任とされた。また、当時は対地掃射機までジェット化することへの疑念が大きかったという事情もある。ウィッチの軍事的価値の低下で空戦ウィッチの輸送はなされなかったものの、陸戦ウィッチの空挺降下には機能が活用され、その用途では好評であった。陸戦ウィッチは歩兵支援に有用なのには変わりなかったため、『機械化装甲歩兵』ということで運用が積極的にされた。1949年でのウィッチの花形は泥臭いとされたはずの陸戦ウィッチになっていたわけだ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――太平洋戦争の陸戦は概ね膠着状態になっている。ザンスカール帝国残党を用いて、ティターンズは打開を図ったが、64Fが阻止した。64Fの戦力は地球連邦軍の厚意で増強されたわけだが、他部隊、特に海軍系部隊からは『質の突出』を咎められ、不満が噴出していた。海軍や陸軍航空出身の参謀や高官達は戦力の平均化を図ろうとしたが、日本側が史実の航空戦の様相を突きつけて黙らせた。他部隊の幹部たちは不満が極限に達していたが、史実で『日本列島を焦土にされるのに為す術もなかった』ことは彼らを顔面蒼白にさせていた。とは言え、一部の部隊のみが戦功を挙げることへの不満はダイ・アナザー・デイからあったため、日本側に文句を言われないように『出向』という形で、本土部隊のうちの一定数の人員を前線に一時的に配置することが行われるようになった。これはダイ・アナザー・デイの際に『東二号作戦』が取り消されてしまい、派遣された要員の半数以上が南洋に軟禁された教訓で考案された策で、実際に誇れる戦功を求めた『第111戦隊』、『第112戦隊』(作戦の取り消しで、正式な編成はされなかったが、要員は半数が各地防空に回され、もう半数が南洋に軟禁された)の空中勤務者の嘆願がもとで、日本側も負い目があったので、提案を承認した。そのため、同部隊の隊員であった者が優先的に前線に一時派遣され、充足感を感じた後に本土に戻っていった。それが日本の『贖罪』の一環であった。練度が高いウィッチが一様に『前線に貼り付けにされている』状況に異議を唱えるウィッチは多かったが、航空審査部も天皇の勅命で廃止され、前線に持てる力を費やすのが方針になったので、64Fの存在を認めていく。これは練度が高く、テストパイロット向けのウィッチを過去に迫害した航空審査部の罪がクローズアップされた弊害であった。航空審査部は抱えていた人材を四散させられた上、汚名を被ったままで解散されたわけだ。その名誉回復を求める人員は多かった。『黒江を鬱病寸前にして追い出した事で昭和天皇の激怒を招いた』騒動が知れ渡り、世論に白眼視されるようになったため、1945年当時の在籍者の多くは『贖罪』を志向していき、世論の同情を得ていく。これはクーデター加担後に見苦しい言い訳を重ね、昭和天皇や重臣たちに白い目で見られた横須賀航空隊とは対照的な顛末である――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――『64Fは事変以来の伝統を誇るエース部隊』。そこが強調されてプロパガンダされることに反発する古参も多かったが、ダイ・アナザー・デイでの孤軍奮闘ぶりは巷にも知られているし、結果的に『結成当時の若手が隊の幹部職を引き継いでいる』という事実もあって、羨望の的であった。軍部に残された撃墜王の八割方を独占的に有し、事変当時の隊の若手が現在の幹部職にあることで、クーデター後は断絶された感の強い『伝統の継承』が成功しているという雰囲気を醸し出している。そして、新世代と事変以前の旧世代の共闘。ウィッチ社会ではあり得なかった光景である。黒江たちは一般に『事変とその後の数年が全盛期』と考えられていたので、45年以降も神通力が健在である事は一般大衆にも驚きを以て迎えられた。芳佳Bは来訪後、幾度かの模擬戦で黒江達と戦ったが、まったく勝てずじまいであった。そして、智子が人形のモデルだと知った時、『人形にモデルって……いたんですね』と言ってしまい、智子を落ち込ませている。智子はかつては人気はあったが、44年以降は知名度が低下気味で、黒江と圭子の影に隠れがちになっている。B世界では『過去の人』扱いなので、智子Aは落ち込んでいる。ここ数年は黒江と圭子に人気が取られたからだ。――

 

 

 

 

「悪い、電話だ。……智子か?なんだよ、ギャーギャー喚きやがって。何が言いてぇんだよ。何ぃ、ブロマイドの売上が落ちてるだぁ?仕方ねぇだろ、お前のスオムスでの戦功は機密指定だったし、若い頃から10年経ってんだぞ」

 

黒江は呆れる。智子は目立ちたがり屋だが、最近はブロマイドの売上が下降傾向である。動向が長らく機密であったり、最近はことは、のぞみ、調、芳佳などの新世代が台頭しているので、昔ながらの『扶桑撫子』そのままの智子は旧時代の代表と見なされたのも大きい。智子は昔ながらの凛々しさを外見上は持つため、堅物のイメージが定着している。その点がマイナスポイントで、近頃の風潮には合わなくなってきたのだ。対して、黒江は『現代的な』気さくな実像も知れ渡ったのと、ダイ・アナザー・デイの英雄とされたため、人気を獲得。この時点では人気トップ10を争う。45年以降は『柔和なイメージか、兵隊やくざか』という枠組みで人気が左右されたため、圭子は今や『兵隊やくざ』の代表格扱いである。

 

「わーったから泣くなよ。ガキの頃から変わんねーんだから」

 

と、愚痴を聞く黒江。愚痴が終わると、ため息だ。

 

「智子先輩からですか?」

 

「あいつ、ガキの頃から目立ちたがり屋でな。俺も似たようなもんだが、あいつは根が泣き虫なのに、強気そうに振る舞うからトラブるんだよ」

 

智子は根が泣き虫である事はこの時、部隊内では有名であった。智子は弱気な自分を奮い立たせるために自己暗示までかけて『勇猛果敢』な風に振舞ったが、それでトラブルを引き起こしたことも多い。同じ隊に所属さえすれば好かれる事が多いが、トラブルを引き起こしやすい体質であった。これは『口は悪いが、アネゴ肌で隊をまとめる』圭子とは対照的である。

 

「智子先輩、カタブツなイメージが強いですからね」

 

「ケイなんてさ、あいつ、元々は温和な性格だったんだが、温和な性格のやつなんて、どの世代にもごまんといるだろ?それで、今回の転生の時に、前にのび太んとこで読んだ漫画をヒントにロールプレイしてみたら、存外にいい結果になったから、それが定着したんだ。それがあいつの『タネ』だ。最も、オフレコなのは分かってるな?」

 

「な、なんとなく……。」

 

三人は同意する。圭子が参考にした漫画に三人は合点がいったようだ。

 

「でも、あの漫画、連載が長いですよね?」

 

「のび太が30代に入る頃でも連載されてるし、あいつが高校くらいからずっと追ってるからな。流石に、あのおふくろさんものび太が高校くらいになると、息抜きに漫画を買い込むのは認めてたからな」

 

のぞみも、うららも、咲も知るその漫画。圭子がロールプレイの参考にした漫画がどういう漫画かは既に、なんとなくの察しがついていたようだ。自分たちの本来いた時代に流行っていたからだ。とは言え、ウィッチ世界ではそんな漫画は知る由も無いので、圭子は『兵隊やくざ』などの渾名で呼ばれる『トゥーハンド(二挺拳銃)』の女と強く印象づけられている。なんとも不思議な話である。

 

「ロールプレイって、あなたもしてましたよね、あの時」

 

「ああ。カミングアウトするまではな。向こうののぞみが拗ねちまったが、いきなり話すわけにもいかんかったし、はぐらかしたから、調のところでの事がややこしくなったからな。俺だって、考えてないわけじゃないぞ」

 

うららの指摘に頷く黒江。黒江はその気になれば、のぞみのキャラを演じられるわけで、大決戦でそれをした。うららはその精度の高さに関心している。かつての本業がアイドルと兼業していたとは言え、『俳優』であったためで、のぞみと咲より熱心に聞いていた。

 

 

 

 

 

 

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