――343空の伝説が結果的に扶桑の航空部隊に残された人的資源の一点集中の大義名分とされた。343空は若手隊員が主体であったが、64Fは熟練者しか第一線隊員になれない。それは皮肉な事に、343空の三飛行隊の隊長に早い内に死者が出たという史実を鑑みた規定であった。しかし、実際には新人育成の観点から、将来有望な者は参戦が特例的に許されていた。これは坂本の強い希望によるものである。服部静夏や雁淵ひかりなどの有望な若手はこの特例で参戦が許されていた。戦闘面の定評がある歴代プリキュアも『新人である』のには変わりないからだ――
――基地のトレーニング室――
「え~!?のぞみちゃんがグレートマジンガーで訓練してるって~!?」
「正確には同型機だけどね。マジンガーZはゴッドに改装したんで、レプリカが建造中だから」
「マジンガーZを改造したのがゴッドなの?」
「うん。グレートマジンガーで得られた戦闘マシンとしてのノウハウをつぎ込んで、戦闘用に完成させたのがゴッド。そのレベルにイレギュラーで到達したのがマジンカイザーってとこ。グレンダイザーは生まれが違うから、遠い親戚くらいの関係」
波紋の修行で柱を登っている途中のラブは元から運動神経がいいこと、元・ダンサーであったことでの呼吸リズムの掴み方の上手さもあり、柱をかなりのハイペースで登っている。会話の相手はのび太である。
「でもさ、グレンダイザーってさ。どうして、マジンガーにそっくりなの?」
「生物でもよくあるだろ?生まれが違うけど、どこかで似た姿になっていくって奴。ぼくも学生時代に出木杉くんに聞いたことだけど」
グレンダイザーがマジンガーに似た姿なのは偶然であるが、機能を追求していくと似た姿になるのは、何事にもある話だ。グレンダイザーは宇宙合金グレンという宇宙の超合金で出来ているので、全体的に重い。マジンガーより遥かに重いが、これはフリード星の鉱物が地球と組成が違うからだ。
「光量子エネルギーであれは動いてる。光子力より基礎ポテンシャルが高いから、グレンダイザーはかなりのハイパワーなんだ」
「光のエネルギー?」
「うん。光子力と光量子は同じ方向性の技術だけど、光量子のほうが進んだ技術なんだ。23世紀の科学技術だと、光量子を利用はできても、自前のプラントは造れないんだ」
光量子はかなり高度な技術が無いと、エネルギープラントを造れない。宇宙科学研究所はデューク・フリードの技術提供で可能となったが、それは例外だ。
「大介さんの技術提供で地球連邦はエネルギープラントを用意できたけど、本当は23世紀の技術だとエネルギー生成は無理らしい。フリード星の科学技術は地球で言う、25世紀か26世紀相当にあたるらしいんだ」
「つまり、地球連邦から見ても、グレンダイザーの技術はオーバーテクノロジー?」
「そういう事。空力特性的に飛ばないだろう的な形のスペイザーを高速で飛ばせるくらいだからね。ベガ星連合軍はそれを狙ってたんだけど、自分達が流浪の民になっちゃったんだ」
「なんで?」
「彼らの本星を支えてたエネルギー資源に発端がある。大介さんの頼みでタイムマシンで調べたんだけど、彼らの宇宙侵略に使われていたエネルギーは取り扱いを間違うと、惑星も消し飛ばす危険なものだった。ある日に一人の兵士が些細な取り扱いミスを犯した。そのミスは鉱山を連鎖反応で爆発させ、本星を死の星に変えた。それならまだ希望はあるが、問題はその後に惑星にあった鉱脈が誘爆して消滅したってとこ。彼らは地球を欲している。だけど、地球を征服するのは認められない。だから、まだ戦争状態なのさ」
「かわいそうだね」
「自業自得でもある。フリード星を汚染し、民を虐殺した報いさ」
ベガ星連合軍はもはや、ほうほうの体である。地球に残存戦力をつぎ込むよりも、種の存続を優先すべき時であるのに、侵略戦争の継続を優先すべきと考える者に慈悲はないと。
「もし、今後にウィンダミアが地球を滅ぼそうとしたら、ゲッターエンペラーが先手を打って、星系ごと消し飛ばすだろうね」
「その国、分からないの?力の差」
「辺境の地球連邦軍としか戦ってないからね。本国の主力が本気出したら、あんな星系なんて、一日で終わるよ。それ以前にゲッターエンペラーが来て、一瞬で握りつぶされるかな」
ウィンダミア王国タカ派はゲッターエンペラーを知らない。一方、ゲッターエンペラーが『プロトカルチャーの叡智も及ばぬ破壊神』であると知っているハト派は地球の底力を恐れ、本国政府の怒りを買わないようにしている。その認識の差が後にウィンダミアにとっての受難を生むのだ。そして、穏便な解決を望む者たちの願いと裏腹に、ウィンダミアは国としての存続すら危ぶまれるにまで追い込まれていく。地球連邦体制に組み込まれて生きるか、地球人類への敵対者として、波動砲を主星にぶち込まれて『星系ごと滅ぼされるか』。まさに二択択一。結果的に王制の存続すら怪しくなるまでに追い込まれるのだ。
「ゲッターエンペラーって?」
「究極最強のゲッターだよ、星系サイズのね。惑星も物理的に握り潰せる究極の進化体。そんなバケモノ、ウィンダミアのどんな攻撃も無意味だよ。手を動かしただけでガス星雲をかき消せるんだから」
ゲッターエンペラーは30世紀で地球連邦軍を敗戦させたイルミダスを有象無象のように滅ぼせる力を持つ。のび太が『ウィンダミアのどんな攻撃も無意味』と言うように、次元兵器すら無意味である。
「そいつが動く基準は?」
「地球を滅ぼすか。地球を汚すか、地球を滅ぼせそうとする時に動くよ。もし、誰かが地球を滅ぼすって言ったら、その瞬間に惑星も消し飛ばすゲッタービームが奔るよ」
ラブは波紋の呼吸をしつつ、のび太と会話をする。黒江よりも早いペースで柱を登っており、強い主役補正の持ち主である事が分かる。
「さすが、綾香さんより早いペースで登ってるね」
「これでも、一年は番組の主役張ってたんだから。のぞみちゃんと違って、二年は主役張ってないけどさ、オールスターズの映画の初の主役だよー?」
「君とのぞみちゃんはピンで共闘したことは?」
「実はそんなにないんだよね。はなちゃんの頃に描写少なかったけど、その時に一回あるくらい。後はアニメにはない戦いが二度くらいかな?それで正式に友達になったんだ。」
「それ、スネ夫に言ってアニメ化してもらう?」
「え、できるの?」
「君とのぞみちゃんが企画したって言えば、制作会社もOkするよ。スネ夫の資金力なら、良好な作画になるだろうし、プロモーションも大々的になる」
「そっか、スネ夫くん、コンツェルンを継いだんだっけ」
「正確には、あいつが立て直してコンツェルンにしたのさ。父親が引退を考えてた時期に大地震があったからね。あいつが継いだ時はかなり大変な状況でね。それであいつが立て直して、コンツェルンにしたのさ。弟のスネツグくんが米国で成功を収めてて、資金援助してもらったとか」
「そう言えば、弟さんいるんだっけ?」
「子供のいない叔父の養子になったけどね。その遺産を引き継いで事業を始めたら、大当たりしたのさ。商才があるのはスネ夫の弟らしいよ」
ここで、スネ夫に弟がいる事をラブに教えるのび太。スネ夫の弟のスネツグは兄に溺愛されて育った。スネ夫は実質的に一人っ子同然に育ったが、スネツグを溺愛しており、子供の頃は『理想の兄』を演じようとしていた事は仲間内では有名だ。
「スネ夫、弟を溺愛しててね。大人になったら、一週間にいっぺんは会いに行ってた。今は疫病が流行ってるから、そうもいかなくなったけどね」
「ジャイアンさんもだけど、兄弟姉妹いると違うのかな」
「そう言えば、君たちは兄弟姉妹いるケースは珍しいっけ」
「はるかちゃん、咲さん、つぼみちゃん、奏ちゃん、はなちゃん……。あたしの知ってるケースだと、そんくらいかな」
プリキュアは一人っ子であるケースが多いため、ピンクで姉妹がいたケースは三、四例ほどが確認されている。ラブはそれを思い出したのだった。
――1946年以降に扶桑陸軍は船舶部隊を全て海軍に供出させられたため、自前の展開能力を失った。更に航空部隊も空軍に統合されたため、残された陸戦部隊を近代化させ、観測機部隊を攻撃ヘリコプター部隊へ改編させ、補給部隊の改善を進めるしか予算の使い道が無くなったが、陸軍の『暴走』を恐れる日本側が強引に押さえつけたため、多くの部隊は『張子の虎』感が否めなかった。コンバットアーマーやモビルスーツはその救世主であった。(扶桑で暴走しやすいのは海軍だったが…)コンバットアーマーは九五式軽戦車などの旧式の軽装甲車両の代替として使われ、MSは未来世界への派遣経験のある者が多い空軍が主に使用した。その急激な近代化は自国の予想以上に扶桑の軍事力を強大にしたわけだ。リベリオン軍にはまともな手段では太刀打ち出来ない事を思い知った故の選択だった。一方、日独での史実で後世に『愚行』とされた事をした者への苛烈な仕打ちは他国から『狂気だ』と揶揄されるほどで、ドイツに至ってはカールスラントの皇室親衛隊や警察などの人員を公職追放したはいいが、その後にその人員がテロリストに堕ち、治安悪化の温床化するなど、なんともしまらない結果となっている。特に同位国から史実ナチスの行為を理由に部隊が訴追されたのもあり、カールスラントの治安と秩序は失われた。日本連邦はそれを他山の石とし、扶桑の公職追放を徐々に解除した。同時期にオラーシャが内乱からの分裂を起こした事も契機となり、軍の部隊を日本新領の警備に充てるなどの施策でどうにか不満を抑えた。しかし、数が想定以上に増えたので、今度は前線で部隊不足に陥るという結果となっている――
――それを補うため、日本も超兵器の使用を認めた。64Fが大っぴらにスーパーロボットを運用するようになったのは、その決定が理由である。世の中に広く知られている『マジンガー』と『ゲッターロボ』はそのプロパガンダにはうってつけであった。スーパーロボットはリアルロボットと違って『ヒーロー』であり、『敗北』は許されない。その責任もあり、スーパーロボットへの搭乗は狭き門であった――
「高度30000m。このまま宇宙に出れます?」
『スクランブルダッシュの推進系を強化したから可能だ。今時は廉価なVFでも大気圏突破できるからな』
グレートマジンガーは元来、宇宙空間の行動は考慮されていなかったが、ブラックグレートは独自改良で宇宙空間での運用が当初から可能である。オリジナル機の弱点を改良して生み出されたからだ。
「この世界の地球を外から見るのは始めてですけど、日本列島は普通ですね」
『日本列島は地球系の世界には必ずあるからな。のび太の世界には、あべこべな日本列島も宇宙に確認されてるってよ』
「なんですか、それ」
『日本はどこの世界でも、お馴染みの形だってこった』
高度が更に上がり、宇宙に飛び出すブラックグレート。そこからは出現中の怪異の巣を含めたウィッチ世界の地球の全容が見える。
「この世界はどうなっていくと思います?」
『21世紀以降の時代の価値観が急激に入ったからな。扶桑でも、その規範で批判されて、肩身の狭くなった連中は大勢いる。軍部、官僚、政治家などの公職、はたまた医者とか水商売にまで及ぶ。多分、価値観の変容に耐えられないのは出てくるだろう。評議会は戦況と関係ない事でいつも紛糾するからな。参るよ』
日本は軍部への食料品供給についての議論で、『軍部への食料品確保優先権を廃するべきだ』という意見が出たが、史実の悲劇もあり、結局は軍部が自前で食料品を製造・供給できるようにすること、買い付けは軍票では行わないこととされた(軍票の一般社会での使用停止。ただし、事変当時に一般に流通した分の引き換えは事変終結の20年後にあたる1958年前後まで保証するとされた。ただし、刷ってしまったものを消化するため、軍内では代替となる電子通貨などの整備が行われるまで使用が継続されることと定められた)。これは軍票にアレルギーを持つ日本への配慮であった。政治の皺寄せは現場にくるもので、ダイ・アナザー・デイから度々の混乱が起こっている。
『この世界は女性の権利が伝統的に強いのに、史実の状況を前提に批判やらかしやがるからな。おかげで、戦えないウィッチの行き場が無くなっちまった。おかげで俺らが自分で事務処理だ。俺も今日、定期飛行訓練のフライトプランを出してきたよ」
「有事にフライトプランですか?」
『日本の民間機が扶桑の国内でまだ飛んでるから、定期的な個人的な訓練の時は形式上、出せとご達しだとさ』
「日本の民間機、まだ飛んでるんですか?」
『彼らも商売だからな。航空便は続けられてる。日本のジェット機材なら、レシプロ機に襲われる高度は飛ばんからな』
日本の民間機への手出しは敵も控えている。日本はジオンの源流になった国であるので、もし、万一にも激昂させれば『史実の意趣返しと言わんばかりに大地を焼け野原にし、市街地は全て焼き払う』だろうと予測されていたからだ。もっとも、実際にはそこまではやらないが、ジオンの源流(実際、ジオンには日系の名家が多かった)の国家の一つとされているため、妙なところでティターンズを恐れさせているからだ。
「よし、戻ります」
『うっかりでオーストラリアに降下するなよ』
「分かってますって」
のぞみ(キュアドリーム)は機体を大気圏に再突入させる。減速や耐熱対策をしないで自由に大気圏突破と突入が可能になった頃の機動兵器ならばの光景だ。のぞみは以後、自身と融合したZEROの助けもあり、少しづつマジンガーに慣れていくのだった。
――大決戦に参加していない者たちから、参加組が聞いたドリームの印象はバラバラで、一番凄いものでは『桜の修羅神』いうものであった。黒江が入れ替わっている時にはハルバードらしきものをブンブン振り回したりし、のぞみAが参加した時には斬艦刀を使ったり、草薙流古武術、聖闘士の闘技を使うようになった上、格闘でも従来と一線を画する戦法になっていた時があるからで、のぞみBが僻んでしまったのも、そのせいで来海えりかに怖がられたことが一因だという――
「のぞみも災難ね。私の世界での事だけど」
「そうなんですよ、かれんさん。今、ヒアリングをしてるんですが、黒江さんと私達の知るのぞみが何回か大暴れしたので、あの子の印象がものすごい事に」
「どんな?」
「桜の修羅神だとか……」
「な、なにそれ…」
思わず、椅子から転けそうになる水無月かれん。彼女はブループリキュアの実質的な一号であるので、コミュニティの実質的な重役ポジションであり、宮藤芳佳の産休中における医療責任者でもある。会話の相手はブループリキュアの後輩かつ、学生時代によく似たポジションであった海藤みなみ/キュアマーメイドだが、実はみなみは生前、のぞみと同学年だったので、みなみはかれんに敬語で接している。(かれんは現役当時は15歳で、年長組に入る)
「あの二人がそれぞれ呼ばれた時に予定調和そっちのけで大暴れするそうで。いつからか、オールスターズの若い子たちの間でそういう評判が立ったそうです」
「私の世界のあの子が拗ねるのも分かるわ~…」
「のぞみも口が荒くなった感ありますからね。特に、頭に血が上ると」
「素体の子の気質が影響を与えたのかもしれないわね。その辺りは興味深いわね。えりかの迎えは?」
「しばらく、未来世界で研修を受けてもらう事になったんです。ガイアにいたので、連絡は早い段階で取れたんですが、ガイアが戦争状態に入って、民間を使っての渡航が制限されてしまったために連れて来るのに手間取って」
「あの子はガイアで普通に?」
「ええ。ガイアでの戸籍を照会したら、普通の学生してるそうです。ゆりさんは軍人で、アースにいる新見軍医の同位体になっていたので、ゆりさんのほうが呼びやすかったです。アースに同位体がいるので、昔の姿で来ると連絡が」
「カウンセリングもしてくれるの?」
「引き受けるようです。ただ、戸籍年齢がアラサーなのを気にしているようで……」
「新見大尉の同位体になっていたのなら、最低でも20代後半だものね。そこはゆかりと同じね」
――実際に月影ゆりは新見薫(佐渡酒造の助手になっている軍医)の同位体となっていた関係で、戸籍年齢は27歳。これは北郷章香となっている琴爪ゆかりとほぼ同じ。ただし、琴爪ゆかりがプリキュアオールスターズで新参者に入る後発組なので、かれんなどに呼び捨てで呼ばれることがあるのに対し、月影ゆりは元から第一世代プリキュアで最年長であるため、現役時代は高校生。かれんも彼女には敬語を使う。プリキュアコミュニティでは『年功序列』は表向き存在しなくとも、人間社会の性で『上下関係』は自然にある。咲がなぎさの『代理』で戦闘面のリーダーシップを取り、舞が精神的な側面で後輩をまとめているのがその証拠である――
「それで、時たま、のぞみが異常に強い時があるのを気になっていたのを、転生したことで調べるようになったそうです」
「その時にアースの存在を?」
「ええ。それで、アースとガイアが正式に国交を結んだ後、のぞみがアースにいることを知って、私と接触したそうです」
「あの子の武勇はガイアにも?」
「ええ。それで、向こうの強硬派がえりかたちを確保しようとしたので、アースが向こうの強硬派の部隊を排除して連れてきたのです。宇宙戦艦ヤマトまで出向く大事でした」
「宇宙戦艦ヤマトまで?彼らも間抜けといおうか。公的に協力要請が出れば喜んで協力するというのに」
「宇宙戦艦ヤマトが一暴れする大捕物ですよ。えりかとゆりさんを彼らが確保した後、向こうのアンドロメダ級を擱座させたそうで」
「なんだが随分と大事になったわね」
「向こうがドレッドノートとアンドロメダなんて出すから、こちらもアンドロメダに対抗できる宇宙戦艦を出す事になったんです。こちらの宇宙戦艦ヤマトはガイアのそれより高性能ですからね。彼らが言い方悪いですけど、敵中突破をしてくれたんです。私はその時に彼らの世話に」
「宇宙戦艦ヤマトに乗るなんて、ある年代より上のアニメファンは感涙ものよ」
「転生前の戦艦大和にも乗ったことあるので、そこは。私は元は海軍ですから」
「そういえばそうだったわね」
みなみは竹井醇子として、元は扶桑海軍に属していた。その関係で戦艦大和に乗艦経験がある。つまり、彼女は双方のヤマトに乗った経験があるのだ。
「でも、元は260m級のフネをよく宇宙戦艦にしたわね?」
「宇宙戦艦にする時にサイズアップしたそうです。そうでないと、コスモタイガーなどは積めませんからね」
宇宙戦艦ヤマトは戦艦大和をベースと資材にしたが、実際は新造した部分も多いのは言うまでもない。とはいえ、艦載機の格納庫がかつての水偵格納庫にあたる箇所とその隣の箇所を上下左右を最大限使用している事はわかるし、武装配置の多くは大和型戦艦のそれと同じである。コスモタイガーなどを軽空母級の数で積むにはかなりの工夫がいるはずだが。
「でも、艦載機をどうしてあんなに積めるの?ちょっとした空母並みよ?」
「空間圧縮技術も用いたものだそうです。アースのヤマトは元は移民船として設計されたそうで、その名残りで遠距離航海に適する設備があるんです。後発のドレッドノートが劣るのは居住装備や航行性能ですね」
地球連邦軍の外征艦隊の第一世代波動エンジン搭載艦であるドレッドノートは量産性を重視した結果、能力値はヤマトより格落ちが否めない。戦闘艦としてのバランスは良好だが、居住装備面では前ヤマト世代の『えいゆう級』よりはマシだが、ヤマトに比べて簡素になっている。それが不評であるので、次世代型の『長門型戦艦』では改善の見込みである。また、艦載機は直掩に必要最低限の数を運用する程度になっていたので、後期型では艦載機運用装備は撤廃されているなど、ドレッドノートは艦隊戦でのどつき合いに特化した。が、ヤマトがあまりに無敵であるので、長門型戦艦とブルーノアなどは艦隊戦を運用可能である。
「それがこの模型の?」
「なんでも、綾香さんが甥御さんにあげるつもりで作ってるそうで」
医務室の机のラックの一角に置かれている地球連邦軍の主力戦艦『ドレッドノート』の作りかけのプラモデル。21世紀でごく普通に入手できるもので、デカールは自主制作のアースの地球連邦軍の仕様になっている。デカールで再現しようとしているのは、ガトランティス戦役最大級の幸運艦『薩摩』。土星決戦で落伍したために主力艦隊の壊滅に巻き込まれなかったり、ヤマトに付き従い、テレサの特攻の際にも居合わせたという。故郷の旧名を頂いた宇宙戦艦。黒江も『ジムみたいで味気ねぇ』と好かないドレッドノート級だが、故郷の名を持つ同艦だけは例外のようだ。
「ずいぶんと簡素ね」
「アンドロメダを簡素にしたのがこの艦級だそうです。初期生産型は数隻しか稼働状態で生き残れなかったとか」
薩摩は生き残った後、装甲材の換装やエンジン強化などの改善パッチが当てられつつも、初期の艦容を比較的に留めるドレッドノート級である。対空砲が増設されたデザリアム戦役での状態を再現しようとしているらしく、対空砲をスクラッチ途中であるのか、作り方の箇所が残っている。とはいえ、大まかな全体の形状は推察可能である。アンドロメダとドレッドノートのどちらが設計が早いかは諸説ありであるとの事。
「見るからに大量生産品って感じだもの。……薩摩?」
「綾香さん、九州の出身なんだそうで、それでしょうね」
「その割に訛ってないような?」
「東京暮らしのほうが長いからだそうですよ。……薩摩か。史実の日本海軍の薩摩は不幸な生い立ちなんですけどね」
「どういう事?」
「長くなる話なんですが…」
みなみは戦艦薩摩についてレクチャーする。日本純国産戦艦の第一号でありながら、英国のドレッドノート級戦艦の登場で『造っている段階の時に型落ちになった』という不幸を。そして、ウィッチ世界の同艦の数奇な最期を……。末裔である宇宙戦艦が幸運艦となったということも併せて『数奇な運命』となった同艦のことを。黒江の故郷の旧国名を関し、ガトランティス戦役の最終局面を稼働状態で見届ける未来をも含めた『数奇な運命」…。