――扶桑皇国は日本国の官民の干渉もあり、急激に価値観の変容を起こし、軍人は社会的ステイタスと見做されなくなり始めた。クーデターの理由もその『価値観の変容』が含まれるため、扶桑軍では団地タイプの官舎が基地内の敷地に建てられる事が増えた。仕事柄、転勤が多いのに、基地の周りに邸宅を一兵卒に至るまで構えられては軍部も困るからだ。これは価値観の変容で故郷を追われた軍人が駐屯地近くに居を構える事が続出したことの対策であり、軍人が社会的に見下される事が増えた事で兵卒が一般人と問題を起こすことへの対策であった。これは世界的に見れば、まだマシな現状である。幼年学校が廃止され、若齢での入隊に制限が加えられた(入隊年齢の下限が15歳になったので、ウィッチの活用年数が減ると反対が強かった)ため、ウィッチの過半数が同じ年齢でも、MATのほうを選ぶケースが続出した。これは国籍問わず、ウィッチならば入隊可能な規定があったためで、それを補うためという名目で、結果的に軍備全体の近代化に成功したというのは皮肉な話であった。――
――大和型戦艦以降の戦艦は数度の改修で、もはやリベリオン軍以外に『太刀打ち出来る軍隊がいない』ほどに強化された。徹甲弾、榴弾、零式通常弾などの性能が圧倒的に強化されたため、欧州の大和型以前の旧式戦艦であれば、一撃でバイタルパート最厚部を撃ち抜けるためだ。他国はこの異常な強化を『日本連邦の道楽』と評した。新造艦は言うに及ばず、既存の大和型戦艦も、40年代の技術では『ドーラ』の直撃でも沈まないようになったためだ。他国の戦艦は怪異のビームに耐えるために熱線への防御力特化になりつつあったが、23世紀の技術で波動防壁すら展開でき、更に素材自体の防御力に加え、対ビームコーティングで次元の違う防御力を得た。まさに超兵器である。他国は艦艇を消耗品と見做しており、そこまでの強化を馬鹿らしいと見做したが、空母機動部隊の時代を迎え、戦艦の保有枠が本当に減らされた海軍大国はこぞって追随しようとしたが、それぞれの事情で妥協を強いられたため、日本連邦海軍の戦艦部隊が最強であることは揺らぐことはなかった。これはミサイルがM粒子の存在で必中の精度とならない事、ウィッチ世界では有用性がそれほど認識されていない潜水艦を攻撃兵器に特化させる事に、ウィッチ閥が反対した事が理由だ。伊400潜は『ウドの大木』とされ、一時は即時の退役が予定されていたが、弾道ミサイル搭載の研究艦、もしくはGウィッチ(プリキュア含む)の専用輸送船として生き永らえた。これは伊401潜が主役艦のモデルになった漫画がそこそこヒットしている事、ウィッチ世界に潜水艦隊の存在のアピールが必要なためでもあった。とは言え、過度に潜水艦隊に予算を回したら、水上艦隊が情けなく衰弱したカールスラント海軍の事例があるので、予算バランスの調整も大事である――
――扶桑海軍は航空隊の練度低下という重要問題があったが、主力水上打撃艦隊の練度そのものは健在であった。そのアンバランスさが扶桑軍の統合運用を促進させたと言える。ようやく、日本側も航空隊の近代化に本腰を入れ、次期空母『瑞龍型』にトムキャットとライノの搭載を決定した。これは日本側も『質で量を超えるには、数十年は追いつけない圧倒的性能が必要』だと認識したからである。当時は敵が戦後第二世代機の搭載を大型空母で実験し始めており、F-8とF-4EJ改の優位が早晩に失われることを痛感した官僚も、ついに重い腰を上げたためである。この時点で、他国に15年分は先んじているので、日本連邦とリベリオンは異常な早さで兵器を更新しまくっていると言え、空軍もF-105の爆撃機としての採用を検討するほどの早さである。空軍は軽爆撃機の後継を模索しており、F-105が検討されている。戦略爆撃機は自前の改良でどうにかなるが、戦術爆撃機が不足気味であったからだ。64Fはデプ・ロッグやケーニッヒモンスターを用意できるので問題ないが、他部隊の機材が問題だったのである。64Fは地球連邦空軍から引き取ったデプ・ロッグをレストアし、生産の捗らない飛天の代わりとして戦略爆撃機部隊へ提供。扶桑空軍の戦略爆撃機の二割はデプ・ロッグへ置き換えられていた。これは一年戦争時の最新戦略爆撃機であった事、飛天より速度性能・搭載性能が遥かに良好であった事での要望、機体の在庫が地球連邦軍の倉庫に大量に眠っていたからである。なぜか?飛天がB-52の模倣である点が官僚に指摘され、B-1タイプにすべきだと指摘され、生産継続で議論が起こったからである。とはいえ、B-1はB-52とは設計思想が異なる上、B-58の失敗、XB-70の悲劇もある。結果、地球連邦軍からデプ・ロッグを購入し、試しに使う事になったのだ。戦術爆撃には機種は事欠かないものの、戦略爆撃となると、選択肢が少ないのである。――
――一方、そんな扶桑の兵器局の苦労と関係なく、ドラえもんからの動画付きメールに唖然とするハメになったキュアアクアとキュアマーメイド。黒江がドリームの代理でオールスターズの戦闘に呼ばれたはいいが、ビッグバンかめはめ波を本当に撃ってしまった動画を目の当たりにしたからだ――
「……どういう原理!?」
「綾香さんはオーラパワー……つまり、気も扱えます。それをナインセンシズと石破天驚拳の要領で増幅させれば……」
「だからって、まずは普通のかめはめ波から入るものでしょう!?いきなり最強形って何!?」
「か、かれんさん。お、落ち着いてください!」
「あ、その綾香さんからです。『まぁ、ギャラクシアン・エクスプロージョン のつもりで気合い入れちまったんで、勢いのまま『ビッグバン』しちまった、スマンな。反省はしたが後悔はない』ですって」
「な、何よそれーーー!?」
キュアアクア(かれん)は珍しく、ギャグ顔で取り乱す。そして、黒江からの次の動画では、その世界にいたキュアブラックがパニックに陥り、その戦いでの新人枠の『別世界のキュアハート』からは尊敬の眼差し、『別世界のキュアマリン』からも激しくツッコまれてる様子が写っていた。そして、その後に送られてきたキュアピーチからのメールには『キュアドリーム(黒江)が膝蹴りの連打からサマーソルトキックを目にも留まらぬ早さで食らわせ、その後にカッコよく最後の敵に『ソウルパニッシャー』、もしくは『スターダストブレイカー』と呼ばれる、『手の平に虹色の光を帯びた気でできている球体を作り、それを相手に投げつけて炸裂させて浄化する』技を浴びせる様子が撮影されていた。黒江は『一応、実はこの姿は借り物でな、戦神の使いとして、逃がした敵を追ってきた』と釈明はし、ブルーム、イーグレットとピーチがそれを肯定して場を収めたと記しており、説明に相当に難儀した様子が推察できた。この話には続きがあり、黒江がドリームの姿で暴れる様子が尾ひれがついて他の戦いでの後輩達に伝わり、それがのぞみBたちの世界にも伝わったので、のぞみBは僻んでしまったわけだ。とはいえ、BLACKRX達に助けられてばかりな上、Aがココ(小々田コージ)の転生体と結婚が叶ったということも嫉妬の原因である。
「あ、りんさんです。……はい、みなみです。かれんさんと一緒にいます。メール見ました?……。そちらにいるのぞみさんの様子は……。スピーカーに切り替えますね」
「参った。相当に僻んでるわ。ココがサムライトルーパーになってることは喜んだんだけど、RXさんたちの足を引っ張ってるんじゃないかって気にしてるし、かれんさんたちを連れてくる時に、はーちゃんとラブが強引な手段を講じたもんだから、ショックみたい」
「切羽詰まってたのよ、りん。そこは二人を責められないわ。それと、そちらにいるのぞみに『ドリームキュアグレース』の事は?」
「伝えました。腰抜かしてますよ。2021年って言ったら、14年位は後の未来ですからね、かれんさん」
のぞみAはエターニティ形態を持つが、更に超弾動を発動させ、輝煌帝の力を用いる形態を模索中である。Bが一番近いのはドリームキュアグレース形態だろうか。
「あ、本人が来たんで、話させます」
りんはのぞみBを話に加える。すると。
「か、かれんさん!みなみちゃん!!ど、ドリームキュアグレースって……、どういうことぉ!?」
「2021年の後輩とあなたが変身するフォームよ、のぞみ。アニメでね」
「別の世界じゃ、私達……アニメになってるの、みなみちゃん!?」
「ええ。なぎささん達から順に、普通に全チームがアニメになってるわ。映画も当たり前に」
「えぇぇ~~!?そ、それじゃ、そっちのあたしはそれを知ってるの…?」
「舞台挨拶とか普通にしてるわ。はなたちの代のオールスターズの映画の頃からね。先方からの要望でね」
「へ、変身した姿で……?」
「時と場合によるけど」
「へ…?」
「はなの現役の時、あなたが現れたって言うから、先方があなたの出番を増やしたシナリオに改稿してね。アフレコもしてたわ」
「あ、あ、アフレコぉ!?な、なんで!?」
「担当の声優さんが急病だったみたい。それで、別のあなたがアフレコ経験があるって言って、残ってる箇所と追加シーンを吹き替えたのよ。こちらのあなた、咲さんにドヤ顔で自慢してたわよ」
みなみ(マーメイド)はのぞみBにその事情を説明する。Aは『うららの仕事がアフレコを伴うものだった時に何度か相手役をやった』と述べ、高度なアフレコ技能を見せた。本人曰く、昔とった杵柄という。
「なんでアフレコできたの、そっちの私…?」
「昔とった杵柄だとか?うららの仕事を何度か手伝ってた時にやったみたいよ?」
「えーー!?演技部、三日でクビだよ、私!?」
「声の演技は直接の演技とは、また勝手が違うのよ。なぜか、それは上手くいったみたいで。本人も自信持ってたわ。実際にプロの声優さんも音響スタッフも関心してたようよ。それで迎えにはーちゃんがきたから、声優さん達から黄色い悲鳴が――…」
「だいたい想像つく……。」
のぞみBはその出来事でアニメ業界に縁ができたAがその年以降は後輩達がアニメ化、もしくは映画化の発表会などにゲストとして呼ばれるようになり、時と場合によるが、趣向を凝らして、キュアビートからラブギターロッドを借りたりしていることを教えられた。
「えーーーー!?武器って……そんな、貸し借りできるものなの!?」
「私達はできるのよ。現役を終えた後の状態だから、かしら?りんさんも他のプリキュアの武器を使ったでしょう?」
「ラブギターロッド……。だけど、私達は音楽に関係ないよ!?」
「そこはわからないわ。こちらでは、プリキュア間での技や武器の貸し借りは普通にやるようになってるのよ。あなたとラブは『スパイラルスター・スプラッシュ』を撃った事あるし、響さんと『プリキュア・パッショナートハーモニー』を撃ったことも……」
「なんでなんでぇぇ!?どういう事ぉ、みなみちゃん!?他のプリキュアの武器や技を使えるなんて!?」
「プリキュアの力は個にして全、全然にして個、皆の力でそれぞれも強くなる事ができるのよ、鍛え磨かれた力と技に出来れば……」
かれん(キュアアクア)が一応の見解を示す。それはどういうことだろうか。のぞみAもよくわかっていないが、A世界では普通にチームを超えた合体技は行われている。ラブや響(シャーリー)との合体技は相性がいいのか、よくやっていると教えられるB。あまりの衝撃に、声が裏返りかけている。
「後でりんに動画を見せてもらいなさい、のぞみ。あなた、こちらだと、ノリが余計にいいわよ?響と一緒に『絶対許さない!!』って決めたり、ラブと一緒に『幸せ、ゲットだよ!』とか言ってるわよ」
「な、なんですか、それぇーーーー!??」
「たぶん、現役を終えてるのと、他のヒーロー達と一緒に戦うようになって、精神的に余裕が生じたからかもしれないわね」
「ヒーローって、他にも?」
「信じられないほどいるわ。平成の半ばからいる私達なんて、とんだ若輩者よ。こちらの貴方もそれは意識してるわ」
かれん(アクア)はのぞみAが明確にヒーローユニオンの一角を担うヒロインとしての立場を意識し、バダンと戦うには『プリキュアオールスターズの力だけに頼らないことも必要』だと自覚し、自分たちは『若輩者』だと言うようになっていると教えた。昭和の時代以前から地球を守ってきた『栄光のスーパーヒーロー達』の仲間に加えられたが、立場的にその末席であるからだ。
「昭和の時代からいるのよ、ヒーローは。仮面ライダー達はその中でも古株のヒーロー達。RXやBLACKと同じような力を持つ人達は……少なくとも、あと12人はいるわ」
「じ、じゅうに……!?」
「ええ。こちらののぞみは彼らのようなカッコいいヒーローといおうか、ヒロインになりたいって言ってるわ。恩義もあるから」
「恩義?」
「ええ。貴方が参加できなかったあの時よ。あの時、こちらのあなたは彼らに必死に頼み込んだのよ。頭を下げてね。彼らはそれに答えてくれた。全力でね。その恩もあるから、私達は彼らと共に戦う事に決めたの」
「……できれば、私がその場にいたかったですよ、かれんさん」
そこは譲れなかったようだが、Aがヒーロー達に必死に頭を下げる様子は想像できたようで、大決戦に参加したかった様子を窺わせる。しかし、Aとて大決戦の時は参加していないのも事実だ。だが、精神年齢の差も生じている。のぞみは基本的に後輩達と違い、覚悟を決めた場合は敵を殺すことも厭わない。Aは特にこの傾向が強い。りんを傷つけた事もあり、タウ・リンに一切の慈悲を見せなかったのがその証である。『また、真を智り、人を信じ、礼を尽くして正義を行なう、これぞ仁の途なり』と、サムライトルーパーとなったコージに説かれ、自身もその道をデザリアム戦役で選んだため、戦うことには一切の躊躇がなくなっている。Bは現役時代の頃の精神状態なので、良くも悪くも不安定さが残っていると言える。
「仕方ないわ。あの時に参加したのは貴方自身でない第三者よ。ラブの時代に『外見が同じであれば、第三者でもプリキュアへの変身はできる』って事は証明されてるし」
「えーーーーー!?」
「ラブから聞いてないの?」
「え、ええ…」
ラブが現役の時代、妖精のタルトとキュアパインの精神が入れ替わった際にそういう事例が起こったので、第三者でも、外見が正規変身者と同一であれば変身ができることは確認されている。黒江はこの法則で正規の手順を踏めたわけである。(プリキュア・ブレスの開発後はのぞみ自身も正規の手順を踏まないで変身することがある。また、何かしらの思い、あるいは意志が強ければ、気合で変身できることはスイートプリキュアの時代に確認されているので、デザリアム戦役を境に、正規の手順を踏む必要性は薄れたが)
「今度、ラブか、タルトに会ったら聞きなさいな。事のあらましが分かるから。貴方に取っての問題は今送った動画よ。会話しながら再生できるから見てみなさい」
「待ってください……え、えぇーーーーー!?」
シャイニングドリーム系統の姿になった自分がかめはめ波を本当に撃つ動画を見せられては驚くしかない。初代のマーブルスクリューやSSのスパイラルスター・スプラッシュをも圧倒的に超える極太の光線が奔る。完全に自分のできることを超えている。
「かめはめ波、かめはめ波って言ってません!?これ!?」
「ええ……。原理そのものは簡単だから、格闘技をある程度極めていれば、出来ないことはないというけれど……」
プリキュアの力は外的要因のパワーアップによって技も強化されるが、そこまでは強化されない。そのため、ビッグバンかめはめ波の威力は強化形態の必殺技も霞む威力であると言える。
「か、格闘技を極めていればって……!?こんなのできませんって!?」
のぞみBも変身時限定だが、それなりに格闘技には自信があるので、自分に扮した人物がかめはめ波を本当に撃つ光景は信じられないようだ。歴代プリキュアは仮面ライダー達のように、全員が素で運動神経抜群ではなく、変身前の時は運動神経が鈍い者も多いので、格闘技を極めていても、漫画、もしくはアニメの中の絵空事と思われた『かめはめ波』が本当に実現した光景は度肝を抜かれたようだ。
「いいえ、気を極めれば、可視化されたオーラが出るようになったり、正拳突きで鉄板程度ならぶち抜けるようになるわ。こちらの貴方は転生した肉体の資質も関係しているとは言え、炎を素の状態で打ち出せる」
「嘘ぉ!?いったいどうなってんですかーー!」
「あんた、さっきから叫びっぱなしじゃない。水飲んで」
「あ、ありがとう…」
りんAに促され、のぞみBはコップ一杯の水を飲み干す。驚きっぱなしで声がガラガラになり始めていたからだろう。Aはかれんも言うように、肉体が軍人としてそれなりに鍛えられ、魔力を有していたり、覚醒前に草薙流古武術を継承しているなどのプラス要素があるため、かれんの言うことは間違ってはいないと言えよう。
――黒江の暴れっぷりも重なり、のぞみの戦闘面の評判が醸成されていった。キュアフローラ/春野はるかもその評判を聞いていた一人であると述べている――
「え~!?そういうからくりだったのぉ~!?」
「そう。ボクの友達が姿を変えられる能力持ちだから、時々は休暇の関係で入れ替わってるわけ。その子、戦いだと自重しない質で、予定調和そっちのけで暴れるわけ。だから、新しく来た子と他の子と体験がずれてる場合はその子が入れ替わって混じってた事をボクたちは勘定に入れてるわけ」
はるかにからくりを教えるアストルフォ。
「な、なるほど……」
「だいぶ体も良くなったようだし、今日は買い出しに付き合ってくれるね?」
「う、うん。いいけれど?その姿で?」
「変身していくさ。その方がまけてくれるし」
「えーーー!?い、いいの?」
「この世界に日本人もかなり出店するようになったし、君もキュアフローラの姿で行けば、個人経営の店だとさ、値段をまけてくれるよ」
「い、いいの…?」
「宣伝になるからね。のぞみものび太の世界に行くと、それで食費を安上がりにしてる時がある。いつでも、いちかを連れては行けないからね。あ、多少、撮影会に巻き込まれるかもしれないけどネ」
「そ、そうだよね。ん?そういえば、いちかちゃんはパティシエだっけ」
「修行中だけどね」
「あー!?変身したぁ!?」
「アイテムをいつでも使えるわけじゃないからね。ボクは今だと気合い入れれば、ミューズになれるようになったわけ。ただ、昔よりだいぶ背が伸びてるけどね」
アストルフォは163cmで、調辺アコが成長期に入る直前の小学生だったのを考えると、その姿から変身した場合、かなり背が高くなる。
「確かに……昔は小学生だったっけ?」
「歴代最年少だよ、ボク」
「え?まだ?」
「うん。えみると亜久里はボクより上の学年でプリキュアになったしね」
小学生プリキュアはアコ、亜久里、えみるの三人が確認されているが、2021年時点でも未だにアコの歴代最年少の座は健在である。そこが自慢だったりする。
「さて、外出届出してくるから、フローラになってて」
「い、いいのかなぁ…?」
と、言いつつも戦闘用途以外でプリキュアに変身する事が許されている世界だというので、なんだかんだでキュアフローラになるはるか。彼女はこの時始めて、戦闘以外でプリキュアになったのである。
「うーん……。ま、いっか」
他のプリキュアも時々、変身した姿で新京に買い出しに行くことがある。通常の状態では、とても持てない量を持てるからで、かれんやみなみも最近はしている。新京は電車で数時間程度だが、最近は鉄道会社が気を使い、基地からの直通路線を開業してくれたので、便利になっている。ミューズに連れられ、基地の地下のプラットホーム部に行れていかれるキュアフローラ。
「え、この世界、まだ1950年にもなってないよね!?これ、普通に私達の時代の電車だよね!?」
ホームに停まっている列車がどう見ても、自分達の時代にある高速鉄道のデザインなのにうろたえるキュアフローラ。
「この世界のこの大陸の横断鉄道用に導入されたピカピカの車両。21世紀の世界から大枚はたいて買ったんだ。本当は新幹線をそのまま持ち込む計画だったけど、予想より非電化区間が多い上、軍部が装甲列車を使い潰したいって要望を出したんで、イギリス輸出用電車を購入することで妥協したわけ」
「装甲列車?」
「史実だと中国で走ってた武装化された列車。時代相応の動力だから、退役予定だったんだけど、鉄道部隊を無くした後が面倒くさいから、そのままさ」
二人は定期便に乗り込む。この列車は基地の人員の通勤用の列車なのだが、日本流に車内販売も行われているなど、サービスは疫病が流行る前の日本の長距離列車を基準にしているようだ。21世紀の基準で車内販売も行われているので、社内で弁当や軽食、飲み物も売られている。21世紀では疫病を大義名分にどんどん廃止されゆくサービスが健在なので、それを目当てに大陸間横断鉄道の職員になる日本のマニアも多い。
「どういう路線なの?」
「基地の通勤用なんだけどね、本当は基地の周りを開発する計画があって、だけど、計画が潰れてね。先に路線は通ってたから、通勤用に再利用したわけ。30分位は地下を通るよ」
「へ~」
基地から新京へは往復で数時間程度と遠いが、これは南洋本島が日本列島全体の倍くらいのサイズが有にある故の長さで、大陸の基準では『短距離』とされる。
「この大陸だと短距離に入るけど、普通に片道で一時間半くらいはかかるよ。土地買収の都合や、軍部の爆撃対策の要望で、わざとまっすぐにしてない区間があるから」
軍部は物資運搬路を読まれ、破壊工作されることを異様なまでに恐れたので、途中で迂回ルートを通る。これは黒江も苦言を呈したが、1930年代の路線策定である以上は仕方がない。
「なんで?」
「軍部は爆弾仕掛けられるのを怖がってね。実際、線路爆破は史実の関東軍がやったから、ありえなくはない。だから、物資運搬路を読まれないようにしたらしいんだけど、時間の無駄だね」
とはいうものの、軍部の努力は確かで、トンネルを築き、軍の防空区間を迂回路に組み入れるなどの防空上の努力は正しい選択である。後に直通の地下鉄が通るので、地上路線は軍事用に統一されていく。また、迂回ルートの中には沿岸都市があり、中華街の上を通るので、南洋に漢民族の末裔が多い証拠とされている。
「そういえば、この世界の中国ってどうなったの?」
「この世界だと、明朝の時代にあっさりと滅んだよ。漢民族の生き残りは南洋に難民として富裕層や王族とかが逃れてきてね。今はほとんど同化してるそうな。だから、中華料理らしきものの文化は残ったわけ。だから、ラーメンの原形らしきものは南洋で食べられるよ」
「それじゃ、かなり最近まではあったんだね?」
「300年以上も昔に滅んだから、欧州の連中は知らないの多かったよ。孫子の兵法を知らないドイツ軍の士官が日本の防衛官僚にこれ見よがしに笑い者にされて、国際的に揉め事になったくらいに」
中華文明の存在した証である事柄は欧州には知られていない事が多い、ウィッチ世界。例えば、孫子の兵法をカールスラント軍は知らず、日本の防衛官僚に物笑いにされたが、これが揉め事に発展したことさえある。これがウィッチ世界の最大のカルチャーギャップの一つ。黒江が事変当時に『生意気』と評判が立った理由も、当時の新人は知らないはずの孫子の兵法を知っていたことで、カール・フォン・クラウゼヴィッツの戦争論に近代以降は傾倒していた扶桑軍では『異端』視されたからである。黒江は双方を知っていることで、自衛隊で俊英と言われる評判を得られたし、山本五十六や前田家などの先祖が武士である者たちなどからは、事変当時から高く評価されていた。江藤もそこはちゃんと評価していたため、ミーナは事更に非難の対象となったが、促成教育しか受けていない者に孫子の兵法を求めるほうがおかしいとする擁護もかなりあった。ミーナは戦時志願の歌手志望の少女であり、初歩的な軍事教育を施す暇がないほど切羽詰まった戦局の時に配属されたのは事実だからだ。ミーナの悲劇は『精神的に成熟する前に、戦功で高級将校の地位に上ってしまった』という点も作用している。ウィッチの宿命的には仕方がないものの、かなり裏での擁護が難しく、アイゼンハワーも『落とし所』を考えるのに徹夜してしまったという。
「この世界のドイツ軍はかわいそうだよ。実力主義を公言しただけで、年上に敬意を払えないのかって週刊誌に書かれるんだからさ」
「どうして?」
「年功序列はアジア的な文化が由来だから、実力主義が強いドイツ軍には奇異に映るのさ」
カールスラント空軍はアジア文化的観点からの批判に晒され、その釈明にひどく四苦八苦してきた。ミーナが人種差別への憶測なら、フーベルタは『年上に敬意を払うこと』への憶測である。フーベルタはユンカーが出自であることや、コンドル軍団在籍経験者であることから、『ゲルマン民族至上主義』のレッテルを危うく貼られそうになったが、実際は潔癖なほどの実力主義者なだけである。本人は『僚機が最下級軍曹であっても、撃墜数が多ければ(実力が自分より上であれば)空では命令に従う』、『戦場では撃墜数がものをいう。階級とか、他のくだらぬものはどうでもいい。地上では軍律があるが、空中では最多数撃墜のパイロットで、戦闘技術と経験に優れたものが指揮を執るのだ!!』と公言していたのが、平時の時代から来ている者も多い場では、その事そのものが不味かったのだ。そのため、現場復帰後は日本向けの釈明文の発表に追われるわ、黒江達のみならず、プリキュア達にも叩きのめされる(そのショックで覚醒した)など、散々な目に遭った。なお、フーベルタのことで、またも胃を痛めたロンメルは『公言するべき内容じゃない、軍の規律を守らないと公言されては、軍の名分が立たんのだ』と当人に告げ、『近頃は銃後が強い。空では信頼出来る者に指揮を預ける、とでも濁しておけば良かったものを……』と面と向かって宣告し、フーベルタ本人も覚醒後は『あれは若気の至りとでも考えてくれ……。』と苦し紛れに釈明している。どこかの世界でマリーダ・クルスとして生きた記憶が覚醒めたために、かなり人格が変わったからである。
「それを思えば、自衛隊の現場は楽だよ。基本的にオタクが多いから、すぐ休暇を認めてくれるし。災害救助にも行った事あるよ、僕たち」
日本では自衛官扱いになるので、災害救助にも参加した事があるというキュアミューズ。ダイ・アナザー・デイ後は扶桑での災害が中心とはいえ、日本の災害救助にも参加したこともある歴代プリキュア。のぞみはリーダー扱いだったこともあり、プリキュア班の指揮官として、災害救助で指揮を取ったこともある。下手な重機よりもパワーがある上、精細な作業にも向いているため、災害での瓦礫の撤去などで活躍しているし、火災の人命救助にも活躍した。扶桑の南洋島での台風被害の際の救助活動や火災の真っ只中に飛び込んでも生還できるため、人命救助率は下手なレスキュー部隊よりよほど高い。日本警察はクラステクターやソリッドスーツの廃棄を死ぬほど後悔したと伝わるのは、プリキュア達がかつての特警ウインスペクターや特捜エクシードラフト宛らに、人命救助にも活躍しているからである。(パイルトルネードやギガストリーマーなどの現存するパワードスーツ用の装備も彼女たちが継承しているため)
「ま、何かあると呼び出されるけどさ。基本的には楽しい現場だよ。君だって実家でのお菓子作りが活かせるかもよ?」
「い、いいのかなぁ」
「キュアロゼッタとキュアハートなんて、この大陸のカルチャースクールの講座持ってるよ」
キュアロゼッタは西住みほ、キュアハートは逸見エリカでもあるので、ミリタリーオタク向けの『子供でも分かる戦車講座』という講座を受け持っている事がここで語られる。キュアロゼッタなど、助手として秋山優花里を連れて来ているのだ。(秋山優花里はダイ・アナザー・デイで知識を教えた事が評価され、なんと、扶桑とカールスラントから勲章を授与されている)
「えーーーー!?」
「転生した先が面白い世界でさ。ロゼッタは一番に大変な立場だって」
「ああ、さっき言ってた…。でも、家元の家って大変なの?」
「大変だよ?世間体もあるし、連盟との関係、母親は師範だったから、元締めの家元を恐れているようだったしね」
向かうところ敵なしと思われた西住しほが唯一、心から恐れるのは、自分の母である家元。その家元がみほ寄りであることを表明し、まほばかりを大事にする姿勢を強く叱責した事は西住家を大きく揺るがした。これが四葉ありすとしての強かさを得た西住みほの母親への意趣返しである。キュアロゼッタ覚醒後は四葉ありすであった時に持っていた強かさを蘇らせたので、何気にえげつないことも躊躇しない。みほとまほの祖母は多くの世界だと、孫が戦車道大会に出る頃には既に没しているが、四葉ありす達が転生した世界線では引退間近ながら健在であったのだ。祖母の威光を使うことで母への意趣返しを成し遂げたキュアロゼッタだが、ややこしいことに、歴女チームのカエサルが先輩であるミルキィローズだったので、お互いに困惑する羽目になった。
「ただ、ややこしい事に、学校で同じ部活をミルキィローズがしてるから、記憶が蘇った後、お互いに気まずかったって」
「あ~…。ローズは5のメンバーだったね」
ミルキィローズはプリキュア5の追加メンバー。一方、キュアロゼッタはドキドキ!プリキュア。チームの世代はそれなりに離れているため、戦車道をしている身としては、お互いにかなり気まずくなったという。ただし、ミルキィローズの基本人格はカエサルであったので、以前よりかなり明朗快活な快人物になっており、お互いの関係は以前と変わっていない。むしろ、ローズと5のメンバーとの関係の多くが改善したという。
「そうだ。おかげで多少はややこしい事になったぞ?」
「あれ?君も乗ってたのかい?」
「趣味の本を買いにいくんだが、お前たちも乗ってたのか。久しぶりだな、フローラ」
「う、うん。あれ?そんな喋りかただっけ?」
「転生したんだ、全部が昔と同じじゃないぞ?」
そのミルキィローズがやってきた。同じ車両に乗っていたらしい。人格の基本ベースが現役時代の『美々野くるみ』ではなく、『カエサル』なので、その言葉遣いは現役時代とまったく異なるものである。なお、『妖精』から地球人に転生した何例か目になる。
「君もややこしくなったね」
「お前に言われたくないぞ。フランスの英霊で、現在進行形でプリキュアだと?盛り過ぎだぞ」
「君だって、歴女でイタリアかぶれじゃん」
「国として好きなだけだぞー!」
「戦車も海軍も弱いくせに」
「ローマ時代は偉大だったんだぞー!」
「ゲルマンの大移動で滅んだじゃん」
「ぐぬぬ……!」
ミルキィローズは転生先でイタリア好きになったが、英霊であるキュアミューズのほうが『ローマ亡き後のイタリア』をよく知っているので、こうした子どもじみたやり取りは日常茶飯事であった。とはいえ、ローマ時代の偉大さは双方が知っているものの、現在のイタリアの起源はフランク王国だったりする。
「今のイタリアはフランク王国が起源じゃんー!」
「お前だって、伝説の殆どはアホ伝説だろー!」
「いいじゃーん!これでもイングランドとのハーフなんだからねー!」
素人にはついていけない単語が連発である。
「お前の国は大戦ですぐ降伏したろうが!」
「君んとこだって、ドイツ怒らせたくらいに無能で、脱落も一番だったろー!戦場でパスタなんて…」
二人の言い合いは変な方向に凄まじい。ついには仏伊の愛国議論になっているが、実はフランスも現代イタリアも同じフランク王国を起源とするので、目くそ鼻くそに近いのだが。
「あ、あの、二人共~……?」
『ぐぬぬ……!』
ヒートアップし、ムキになる二人。二人に挟まれ、口を挟めないキュアフローラ。その困惑した姿からは哀愁が感じられる。全員がプリキュアに変身しているために余計にシュールすぎる光景である。
(誰か~!たすけてぇ~……みなみさーん、トワちゃーん……誰でもいいから~!!)
二人に挟まれ、口出しできないキュアフローラは内心でチームメンバーに助けを求め、冷や汗タラタラであった。そこに意外な救い主が現れた。
「バカモノ、ラテン系同士で、お互いに刺しあってどうする」
「その声はエレンちゃん……ビート!」
「エレン、君……」
「ローズが帰って来ないから様子を見に来たが、お前ら、何をしている。はるかが困ってるだろう」
口調はクラン・クラン(大人)時の落ち着いたものなキュアビート。
「お前ら、もう少し『先輩』としての自覚を持たんか。アコ、お前もだ」
「ぶー!エレン、君だってさー!」
「やれやれ。すまんな、はるか。こいつらは先輩としての自覚に欠けているようでな」
「あ、ありがとう。エレンちゃん」
キュアビートはクラン・クランでもあるので、叱る時は叱る。黒江の悪友でもあるので、軍隊階級は1949年時に大佐。素体が成人であるため、『大人』としての振る舞いが素でできる数少ないプリキュアである。
「帰ったら、綾香にライトニングプラズマでも叩き込んでもらうぞ。お前らにはお灸が必要なようだな」
ビートはローズとミューズをシメる。フローラを困らせた罰である。
「オニー!」
「ライトニングボルトも追加してもらいたいか?」
「うっ……」
二人が一気に青ざめる。懲罰としての修正は64Fにも存在するが、プリキュア達へは黒江や赤松が聖闘士の闘技を浴びせる形で行われる。普通のビンタでは効果が薄いとした武子の決定である。
「あ、あの、エレンちゃん?」
「な~に、よくある懲罰の類だが、精神注入棒を使っていた昔ほどは過激じゃない。その代わりにしびれるぞ」
涼しい顔で言うキュアビート。
「おにー!!あくまー!!」
キュアミューズとミルキィローズが抱き合って青ざめて怖がる。それほどの効果が聖闘士の闘技にはあるのだ。シメるべき時はシメる。それが破天荒な者が多い64Fが隊としての規律を保っている理由の一つ。キュアビートは(クラン・クランとして、元から軍隊経験を有するのもあって)プリキュア班の風紀委員のような役目も担っていたと言える。