――ある日、歴代プリキュア達はドグマ王国の長であったテラーマクロと遭遇、彼が武闘家だった事もあり、複数が病院送りにされてしまった。比較的に格闘技の技能が高めであった者たちのみが五体満足で撤退に成功したものの、早くも複数が軍病院行きにされたのは予想外の痛手であった。意外なことに、イエローということで戦闘能力が低めと見られたキュアレモネードが五体満足で撤退に成功したことは驚きを持って迎えられた。イエロープリキュアは真っ向勝負の戦闘力が低めな者が多い(属性にあざとさがあるからだが、全員がそうとは限らない)と知られていたからだ――
――その日に召集された『幹部会議』。その名の通り、64戦隊の幹部が一堂に会するのだが、その日、キュアメロディ/北条響は自由リベリオン軍関係の仕事で不在であったため、プリキュア枠は一人が欠席。ブルームとイーグレット、ドリームが通常枠で、報告役としてキュアレモネードが特別に参加したわけだ――
「数名が病院送りにされたか。変身していなければ、重傷は間違いなしだったな」
「どうします、マカロン」
「私はプリキュアとしては若輩者だからな……。とは言え、軍隊階級は高いのが面倒だ」
歴代プリキュアでも年長である月影ゆりでも、新見薫としての階級は中尉であるとの事なので、階級として一番高いのが自分である事は変わりがないことは愚痴るキュアマカロン。
「テラーマクロはこちらの戦力を威力偵察していると思われる。奴は生前、B26暗黒星雲から飛来した宇宙人だが、大首領の尖兵だった。潜入時に地球人に擬態した際の名は黒沼外鬼。赤心少林拳の太祖『樹海大師』の弟子になるという回りくどい手段で拳法を身に着けた。師匠を殺害した後にドグマ王国として活動を開始。ネオショッカー壊滅後に表舞台に姿を現したが、スカイライダーの後を継いだ仮面ライダーである仮面ライダースーパー1との交戦で組織は壊滅。自身も彼に倒され、組織も後続の別派閥であるジンドグマに取って代わられた。こんな感じだな」
「つまり、そいつは……」
「そう。宇宙人ベースの改造人間だ。それでいて、赤心少林拳の攻撃寄りの流派を一時は持っていたプロだ。お前らの防御など、たやすく貫ける」
「あたしたちは戦えるけど、こいつらはまだ修行中ですよ、先輩」
「奴もおいそれと動かんだろう。奴が恐れているのはヒーロー達に動向を知られることだ。大首領も奴の事は信用してはいまい。アポロガイストらしき青年が監視についていたからな」
黒田は涼しい顔で『戦える』と明言する。黒江、智子、黒田、武子などは黄金聖闘士になっている実力者であり、正規の格闘訓練を受けている。とは言え、そんな実力派は貴重であることには変わりはない。
「のび太、ガキ共の訓練はどうだ」
「柱をラブちゃん、マナちゃん、めぐみちゃんは登り終えた。後は細かい部分の修行をすれば、いっぱしの波紋使いになるよ」
「その三人がとりあえずの柱か」
「のぞみちゃんと咲ちゃんも入れて五人。はーちゃんと調ちゃんは予め、修行させておいたから、他のプリキュアにも対象を広げるよ」
「頼む」
ザンスカール帝国残党の撃退から二週間あまりが経つと、ピンクチームは五人が波紋法の促成教育を終えつつある。多忙なために修行が遅れ気味の北条響(シャーリー)は修行の基礎段階に留まり、産休中の花咲つぼみもいるので、波紋法を早期に身につけられた五人あまりのピンクプリキュアが今次作戦での主軸となる事が明示された。
「奴と戦って、五体満足で帰れたプリキュアは?」
「私とフォーチュン、ロゼッタの三人だけですね。他は重軽傷を負わされて、救援部隊の判断で病院送りです」
「強敵だな…」
幹部会議に報告役として参加したキュアレモネード。プリキュアとしては古参なのと、イエローとしての先代であるシャイニールミナスと違い、他のプリキュアに遜色ない戦闘能力を持つ事、元々の運動神経が高い部類である事もあり、テラーマクロの襲撃をくぐり抜けた。襲撃されたプリキュアは七人前後。けして弱くはない面々だが、テラーマクロの赤心少林拳の前に苦戦を余儀なくされ、比較的に古参かつ、戦闘技量に長けた三人のみが軽傷で済んだ。レモネードはその中では弱めと見られていたが、ロゼッタ、フォーチュンの二人と共に奮戦し、他のプリキュア達を守って持ちこたえた。それは充分に大殊勲と言えるものである。
「お手柄だぞ、レモネード。感状の授与許可を上に具申してもいいくらいだ」
「ありがとうございます」
「どうします。まっつぁん」
「うむ……。子どもたちの修行が終わるまでは儂らでテラーマクロと戦うしかあるまい。奴は改造人間だ。プリキュアと言っても、多くは年端も行かぬ子たちだからな…。」
実際、のぞみを含めた転生組は大人扱いだが、咲たちのような『来訪組』のほうが実は数が多い。プリキュア5は転生組が過半数、スイートプリキュアは全員が転生組である。
「それが問題なんだよ、まっつぁん。転生組で統一できてるチームはスイートプリキュアくらいだ。後は来訪組がチラホラ混じるぜ」
「仕方あるまい。日本は我々に不手際があると、すぐに叩きたがる。それを黙らせるには、彼ら(仮面ライダー)も苦戦する敵だと言うしかない。お前らが苦戦すると言っても、大人たちはピンとこまい」
赤松は国防を他人事のように言う日本に呆れているようだ。自衛隊の現場もそういう気持ちでいっぱいである。ダイ・アナザー・デイの長期化は日本の政治的な都合に他国を巻き込んだ結果であった。戦功を挙げても、日本に帰れば『人殺し』と罵声を浴びる。それに嫌気が差した自衛官は年金も含めて厚遇してくれる扶桑に定住し始めている。これに焦った日本政府は『日本連邦・派遣任務経験手当』という名目で事実上の日本連邦軍任務に従事した自衛官向けの恩給を創設する。扶桑が自衛官にも勲章を授与し、それに付随する年金を授与していることは止めようがないとは言え、日本のメンツが立たないからである。自衛官は退職後の生活が成り立たない事も増えている時代、戦功を立てるか、戦線で負傷すれば高額の年金がもらえることが確定している『扶桑行き』は疫病で閉塞感の漂う時勢もあり、多くの自衛官の羨望の的であった。日本政府は面子の問題もあり、実戦経験を得た自衛官が『帰ってこない』事の抑止を模索した。その一環が任務手当という名目での恩給である。財務省は渋ったものの、日本連邦の任務に従事した少人数向けの手当ということで承諾した。隊員の気持ちもわからないわけではないし、戦後直後も『特攻くずれ』が戦後社会に適合出来ずに極道に入っていった歴史的事実があるため、治安悪化の防止の観点も創設の理由であった。手当がかなり高額であるのは性質上、死亡率も高いが、生き残れば扶桑の扶養対象に入り、日本で一財産できる金額が保証されるという事を鑑みての日本側の対抗心もあるが、派遣自衛官の福利厚生の改善が目的であった。
「ええ。それも問題ですよ?」
レモネードが言う。
「俺たちは正規軍人だから、何言われてもいいが、問題は自衛官だ。このまま故郷に帰っても、『人殺し』って罵声を浴びせられるからな。退職後にフランス外人部隊や外国の民間軍事会社に入った奴も多いよ。日本政府も慌てて対策に乗り出したが、戦後の日本人は反戦だからな。扶桑に定住した奴も多いよ」
――黒江は実質の海外派遣部隊の指揮官の座を割り当てられ、もう10年近くになる。次のポストを用意すべきという声もあるが、革新政権時に統幕の乗っ取りを警戒する防衛官僚が音頭をとって作り、今や死文化した内規が邪魔になり、『次のポスト』を割り当てられないのである。(そもそも、統括官にしたので、大佐で留め置こうとした扶桑が大混乱に陥り、扶桑軍に准将の階級を設けざるを得なくなったのだ。日本は政権の再交代で黒江の職責が重要化した事、扶桑の現場と自衛隊とのつなぎ役が必要であることから、黒江は間もなく、統括官になって9年目を迎える)現場の苦労を見てきた分、当局とやりあう事も多い黒江の言葉には重みがあった――
「昔の戦後直後の特攻くずれみたいな話ですね」
「彼らは国に死ねって言われたのに、戦争に負けた途端に、自分を軍に送り出した連中が罵声を浴びせてくるのが問題になったからな。戦争中の指導層の一族も日本人の豹変ぶりに落胆したというが、日本人は変わり身が早いからこそ、近代化をなし得たからな」
「あの、あなた達はこの世界に住んでるのに、どうして、そんなに日本の歴史に詳しいんですか?」
「黒江くんは元々、日本の持つ軍事ノウハウや工業技術をこの国に伝えるために送り込まれたスパイだったからね。その必要もあった。私は単に琴爪ゆかりとしての記憶が覚醒めたためだが」
キュアマカロンはぶっちゃける。黒江は元々、日本の技術情報を扶桑が得るためのスパイだったが、いつしか日本と扶桑のつなぎ役に役目が転化し、日本連邦の実現の一翼を担ったわけだ。キュアレモネードは苦笑する。
「まあ、テラーマクロは当面、波紋使いになったり、格闘技を訓練し終えた連中で対処するしかないな。監視についているアポロガイストには構うな。奴の銃の腕は相当だと、Xライダーから通達が来ている」
テラーマクロは武闘家なので、比較的に対処が容易だが、アポロガイストは『暗殺者』的任務も担った銃の名手。Xライダーも認めているほどなので、遭遇戦ではのび太しか対処できない。(接近戦に持ち込めば、勝機がないわけではないが)その事もあり、幹部たちはアポロガイストのほうを警戒している。
「ボウズ、子供達の銃の訓練はどうか?」
「おう。四年前からやらせてるけど、平均してそこそこだよ、技能は。早撃ちはレモネードやドリームが辛うじて、それなりにこなせるくらいだなぁ。護身には使える程度だな」
「私は戦車砲は慣れてますけど、拳銃はあまり。訓練の一環で撃てるけれど、早撃ちは得意じゃないんですよ。むしろ、スナイパーライフルが欲しいです」
「手配しとく」
キュアレモネードはこの時、はっきりと自分は狙撃向きだと述べた。キュアドリームは錦の嗜好が受け継がれたので、大口径銃を好む傾向があるのか、連射は考えていなかったりする。
「ドリーム、お前はピースメーカーでの連射に慣れろ。のび太を見習えとは言わんが……」
のび太は苦笑する。のび太の早撃ちは機械であるドラえもんも不意をつかない限りは勝てないと断言するほどのテクニックを持つ。連射テクニックも常人の及びもつかないレベルであるからだ。
「それと、『向こう』ののぞみちゃんが機神拳の詳細を教えてほしいと来てるよ」
「参ったな。あれはゲームをもとに再現したでっち上げなんだがね」
「君が作ったって、答えればいいんじゃない。拳法の流派なんて、歴史を見ると、適当な理由で作られてるんだし。人間性の育成も目的に入る事も多いよ」
「いいのか?」
「君だって、いろんな技能を用いて再現したわけだろ?細かいことは気にしない」
のび太はこんな調子だ。とは言え、黒江が『機神拳』を現実にしたのは日本のゲームクリエイターたちも予想外の出来事であろう。のび太も30代以降は『渋い車種を乗り回す』道楽男であり、のび太との関係が年月と共に変化しているのがわかる。
「先輩のおかげで、あたしは『桜の修羅神』って事になってんですから、責任とってくださいよ」
「わーっとる」
キュアドリームも愚痴る。黒江が時たま暴れる事で平行世界での自分の評判が『拳神』のようになってしまっているのは不本意であるからだ。実際、ドリームの戦闘技量は歴代のピンクでは上位に位置するが、黒江が扮した場合、有り体に言って『更にものすごく強い』。それを何回か行う内に確立されてしまった評判である。一応、釈明はその度にしているが、結果的に、のぞみの後輩達からの評判が明後日の方向に爆走してしまったという事実が完成してしまった。黒江は『責任を果たす』といった通りに、後日、のぞみBを『ドリームキュアグレース』へ導くのである。つまり、のぞみは少なくとも、パワーアップに二つの方向性があることだ。一つはアニメのように『ドリームキュアグレース』を引退後しばらくして得る事、もう一つはシャイニングドリームを更に発展させた形である『エターニティドリーム』。エターニティドリームは『本筋』ではない一つの可能性』であるため、ドリーム(A)も自分の三段変身は『可能性の一つ』だと、Bへ述べている。
「本筋には影響ないとはいえ、のぞみさんの評判、かなり広がってますよ」
「本当かよ」
「ええ。フローラは知ってました」
「ランダムに呼び出すとは言え、何十人もいれば、何人かは掠るからね。宝くじのような確率だが」
会議の重要事が決まった後の雰囲気は和気藹々としたものに変わる。重大事が思ったより早く決まったからである。のぞみの評判や平行世界の可能性についての言論に変わっているのも、終了予定時間まで時間があったからだ。
「でも、そんな確率、いくつですか?」
「地球と火星がぶつかる、月が消えるくらいの確率だが、60人超えのプリキュアの中の第一世代のみにランダムに発現している出来事を知る者を引き当てるのは、宝くじで100万以上を引き当てる確率のほうが高いはずだが、ものの見事に当たっているからな……。しかも、いつしか尾ひれがついている」
「あなたも、その異名があながち間違いでないくらいの強さじゃない、ドリーム」
「そりゃそうですけど、隊長~!」
尾ひれがついた末ののぞみの評判だが、彼女と対照的に評判が下がったのが坂本である。アニメで実質的に芳佳を道連れにし、芳佳のその後にも悪影響を及ぼした事がアニメとして放映されたため、我の強い坂本を教導から外すべしとする声も強いが、坂本本人からすれば『はた迷惑』であり、この世界においては引退後は周りに請われ、教官を『ついでにしている』にすぎない。(実際、太平洋戦争の終戦後は空母の管制官に専念し、後に空母の艦長になったという)
「お前は変な方向とはいえ、上がったじゃないか。私は風評被害だぞ」
「坂本先輩、溜まってません?」
「私も直に産休に入るから言わせてくれ」
「え、先輩も?」
「ああ。黒江にベビーシッター頼んだよ」
「おめでたいじゃないですか」
「今回はもう三人くらい儲けようと思ってる。前世では一人っ子なことで、子どもに悪影響出たからな」
坂本はその言葉の通り、今回の歴史では、最終的に第四子まで儲けるという。また、あくまで戦士であることにこだわったことでの悪影響を鑑み、今回は公的に引退宣言と引退セレモニーを行っている。
「ただ、我が強いからと、教導向きでないというのは心外だぞ。私は実技担当で、座学担当ではないからな」
「先輩は小学校しか出てないんでしたね」
「12歳の頃に事変があったからな。むしろ、当時はそれが当たり前だ。今のように、最低でも高校を出てからというのはな…。私の代や醇子の代は戦前期のカリキュラムで教育された最後の世代だ。高等教育を受けてるんだぞ」
坂本は高卒以上の学歴が軍入隊に必要になった時代には複雑なようだ。坂本は最終学歴は海軍兵学校であり、日本では短大卒と同等の扱いである。戦前期に教育を受けた最後の世代に相当するため、戦中期の短縮教育は受けていないのだが、元ウィッチであるので、短縮課程と思われ、苦労していた。これは坂本や竹井の世代が参謀になり始める時代に入ったためだが、追放された前の世代から実務ノウハウが引き継がれなかったので、坂本と竹井の世代の者で『デスクワーク』に転じた者はもれなく苦労を強いられた。運営ノウハウが引き継がれなかった都合で、彼女たちでは組織が回せなかったため、自衛隊の幕僚達が教えている有様である。そのため、扶桑軍に言われる『大日本帝国時代の生き写し』と言われるような空気は次第に薄れていく。
「お前は小学生でなくなった後にすぐに入隊したからな」
「軍の付属小学校にいたからな。どうなるんだ、付属小学校は」
「軍学校に組み込まれる。それに、小学校でもなくなるからな。今の在籍中の生徒の扱いで揉めてるよ」
「やれやれ。余計なお世話だな」
この頃、クーデター事件の要因であった『軍人の教育現場からの追放』は『社会的混乱を招いた』として、慌てて処置が解除され始め、『予備役であれば、私立校の体育教師や大学講師などにはなれる』という風に規定が改定された。のぞみの一件で文科省の再分割も囁かれてしまったので、現地の混乱を鎮めるという名目で規制緩和策を講じる羽目になったわけだ。
「日本は困ってるだろうさ。親たちからの抗議で。タダで高等教育への道が開けるのが売りだったのを変えようとして、更に市井へ放逐しようなんて、親たちは許さんだろうからな」
「面倒な事を…」
「師範学校だって、教育学部への転向で色々揉めてんだ。就職の約束も反故にできないから。みっちゃんの世話で、芳佳が身重なのに駆けずり回っとるよ」
「やれやれ……」
「日本は横槍は得意だが、支援になると尻込みして、あてにならんよ」
日本からの横槍で民間・軍事の双方で大混乱に陥った扶桑皇国。軍事的には機甲部隊の装備の数の不足にここ四年は悩まされる羽目に陥り、なりふり構わずの外国製戦車の購入で急場しのぎを行っている。軽戦車にさえ、76ミリ砲が積まれる時代に突入し、扶桑の旧来の装甲戦闘車両の大半が旧式化したため、扶桑陸軍はM動乱の戦訓で機甲装備の威力を思い知ったが、90ミリ砲搭載の『五式中戦車改』の生産がスローペースなままで105ミリ砲戦車の時代に突入してしまう有様であった。これはダイ・アナザー・デイの直前に三式中戦車までの戦車を強引に回収したせいであり、大作戦を前にして、戦車が足りなくなるという未曾有の混乱を起こしてしまった。日本が外国産戦車の使用の継続を認めたのは、『105ミリ砲を旋回砲塔に積む技術の取得』と、戦前期の『早く砲弾を装填できる、57㎜級以下の小口径の砲を好む。大口径化すると装填速度が悪化して、即急の対応が難しくなる』という旧世代の意見の一掃のためだが、実際には扶桑陸軍はM動乱に深入りしたために、史実ドイツの化け物戦車を目の当たりにしたので、その認識を既に捨てていた。言わば、『余計なおせっかい』であった。(逆説的には扶桑に戦中日本の機甲部隊の辛苦が伝わったと言える)特にチリ改は最終的には装甲も史実61式戦車よりはマシになっているため、この時期の主力戦車の一つにはなっている。とは言え、備砲の旧式化も叫ばれているので、74式が切望されたが、そのまた次も議論されるに至った。だが、他国からすれば『頭のおかしいレベルの更新速度』である。未だに1930年代半ば以前のレベルにすら達していない装備を使用する国もあるからだ。
「だが、他の国に比べればマシだ。スオムスは未だにⅣ号戦車の後期型を有難がってるからな。だから、あそこはウチの国のイエスマンになったんだ」
「うちに捻り潰されるのを恐れたのか?」
「まー、あそこは地の利で怪異を食い止められてるに過ぎない国さ。M動乱以降のウチの国が本気で攻め込んだら、一週間も持たないからね。智子先輩のことを大義名分に使われるのに怯えてるって、ニパが言ってた」
「そういえば、ハッセが来るって話はどうなったんすか?」
「向こうの反対で潰えた。代わりに分隊に属すると言ってきた。どうも、向こうでも行き違いがあったみたいなんだ」
「行き違いだと?」
「ああ。マンネルヘイムは確約してたから、現地指揮官の独断だろう。それでマンネルヘイムも処理に困ったから、そうしたんだろう。ハッセを教官に留め置きたい指揮官は多かったからな」
「やれやれ。どこも同じか」
嘆息の坂本。
「そんなわけで、お前らは責任重大ってことだ。相手がテラーマクロだろうが、アポロガイストだろうが、戦えるようにせんとならん。お前らは俺たちより『負けが許されん』からな」
「ええ。前に負けたってだけで、えらく叩かれましたからね。参りますよ」
「お前らは最後に一発逆転かますのがお馴染みだが、相手がそれをも超える場合があるのを奴らは考えておらんからの、富くじ娘」
「最強フォームで負けるの初めてでしたからね。相手も超人だと、こっちの動きを見切られますからね…」
「だから、修行させたわけだ。シャインスパークを使えるようにしたろ?」
「あたしは元から似た技持ってましたから、あれをした時はみんなに驚かれましたよ?」
「威力はダンチだろう?似た技のプリキュア・フローラルパワー・フォルティシモやプリキュア・シャイニング・フォルテッシモ・ハートキャッチも遥かに超えるし、あの系統の元祖だよ、元祖。ゲッタードラゴンの最強技で、それ以降には、真ゲッターや真ゲッタードラゴンも使うんだから」
「会得するのに苦労したけどね。その代わりに使えば、今までの合体技も嘘みたいな破壊力で一撃必殺。ただし、体力を持っていかれるのがなぁ」
「何事にもリスクはつきものさ。スカイライダーだって、必殺技撃った直後には隙ができるくらいだしね」
ドリームが自己意思で『シャインスパーク』を使ったのは、デザリアム戦役以後の時間軸で、それ以前はドリームに扮した黒江や、キュアフェリーチェが主な使用者である。突進系の技はだいたいが似たビジュアルになるが、シャインスパークは文字通りの最終兵器であるので、インパクトが段違いである。エネルギー量と密度も段違いであるため、威力は段違い。当たれば文字通りの一撃必殺である。
「元がゲッタードラゴンの必殺技だってわかったの、あたしと舞はしばらく後のことでしたよ。ウチのおとーさんが子供の頃に再放送で見てたみたいで、あたしが大人向けの超合金魂を誕生日にプレゼントしたら、喜んで…」
ここでキュアブルームが発言する。ブルームとイーグレットは大決戦の後に気になって、ゲッターロボのことを調べたらしい。
「お前ら、意外なつながりがあるんだなぁ」
「男の子はロボットアニメを高い確率で通るからね。ゲッタードラゴンやグレートマジンガーは古めのアニメだから、プリキュアの子たちの父親たちが再放送の時に見てる可能性は高いね」
のび太も大笑するが、男子たる者、一度はメカニックに興味がわくらしい。
「ゲッターロボの実物見たなんて、言えなかったけどね。でも、グッズは初代が多いね」
「ああ。初代は初期のTVアニメじゃなくて、99年のOVAで見直されてからは人気あるよ。ゲッタードラゴンはそのOVAだと敵役でね。君たちの時代だと、オリジナル版のグッズは却って、手に入りにくいかもね」
「そっかぁ。でも、シャインスパークって追加装備なの?」
「機能としては最初からあった説もあるけど、解禁されたのがしばらく後だっただけさ。その代わりに、初期は『撃ったら帰還』くらいのリスキーな武器だったそうな。炉心の改良やゲッターの世代交代でポンポン撃つようになったけど、エネルギー消費が激しいのには変わりないって」
ゲッタードラゴンはゲッター線増幅炉がまだ初期のものだったり、機体そのもののエネルギー容量そのものはゲッター1と大差なかったりした関係で使いどころの難しい武器だったが、ゲッターの世代交代により、強敵相手の切り札として多用が可能になったが、ゲッターの強力化で威力も段違いになったので、やはりおいそれと使えない。
「それを再現するから、プリキュア5の『プリキュア・レインボー・ローズ・エクスプロージョン』が霞む威力なわけ。DX2の時は力が落ちた時に撃ったから、敵に通じなかったのさ」
のび太はプリキュア5の『プリキュア・レインボー・ローズ・エクスプロージョン』は(第一期プリキュア共通の弱点であったが)パワーソースが侵された時に使用すると、エネルギー量・密度も比例して低下するという弱点があることを知っていた。なので、大決戦の後にドリームに『シャインスパーク』の会得を勧め、ドリームもデザリアム戦役でモノにした。
「のび太君はそれを知ってたの?」
「まあね。でも、あの時は綾香さんがシャインスパーク撃ったろ?」
「あの時はぶったまげたけどさ、ゲッタードラゴンの技だってわかった時のほうが驚いたよ」
キュアブルームははっきりと述べた。のび太ともそれなりに気心が知れた関係になれたようで、タメ口である。
「突進技って似たビジュアルになるんですね」
「シャインスパークが演出的に元祖になるかな?メタ的に。その発展型の真シャインスパークは君等も見たろ?」
「ええ。ものすごい衝撃で。マリンがそれでかなりぼやいてますよ」
「だと思った」
「えりか、そこは昔から気にするんだよな~。どこの世界でも変わんないんだなぁ…」
キュアマリン/来海えりかが大決戦でのキュアドリーム、キュアピーチ、キュアフェリーチェの『シャインスパーク』、真ゲッタードラゴンの『真シャインスパーク』を目の当たりにした事のインパクトを自分の後輩たちに伝えていったのも、のぞみの評判が明後日の方向にぶっちぎった理由だろう。ドリームは前世でも付き合いが深かった後輩の顔とギャク要員ぶりを思い出し、懐かしそうに一言漏らす。それはブルームとイーグレットも同じ思いだったようで、二人も微笑むのだった。