ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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第二百話「1949年の状況とプリキュアたちのある日3」

――社会的混乱の大きさもあり、扶桑は装備更新が遅れていた。憤慨した技術者の少なからずが他分野に流出したからだ。だが、カールスラントを脱出したタンク技師がチームごと日本連邦に滞在したことで、却って技術力は向上した。人間工学に配慮したコックピット配置が普及するからだ。早期にジェット機への更新が進んだ結果でもある。その頃、ウルスラは留学先の日本で『日本人が技術の差にこだわる理由』を知り、ものすごく気まずくなった。予定より長く滞在している理由はダイ・アナザー・デイの結果、結局は技術開発競争へと発展してしまったからでもある。また、祖国の軍縮で『帰っても、今まで通りには仕事ができない』事から、帰国を躊躇うことになってしまった。ウルスラは迷ったあげくに、『ウィッチ技術の維持のために帰国せよ』という命令を受け、1949年に帰国した。ウルスラには技術維持の役目が期待されたからである――

 

 

 

 

 

――幹部会議で決められた修行の促進。64Fは国際色豊かな部隊であるのもあり、日本の軍隊でありがちであった『私的制裁』が無いこともあり、入隊希望は多かった。日本の軍隊では私的制裁が横行していたという負の面が義勇兵の暴力行為で将官に至るまで問題が認知され、改革を断行したのが四年前の1945年であった。志賀のような昔気質の士官たちにとっては『肩身の狭い』時代が到来したのである。64Fは改革の模範とされたものの、佐官級将校も使いっぱしりであることから、所属を嫌う古株の将校も多かった。64Fに配属されると、もれなく最前線行きだからだ。だが、当時はテスト部隊が解体され、教導部隊も縮小され、ベテランの行き場が狭まっていたので、ベテランは前線送りが確定していたようなものであった。そのため、50Fなどの支援部隊も自然と大所帯化していった。時勢の都合もあり、通常兵器部隊との連携も徐々に模索されていき、49年には諸兵科連合化されていった。相手がウィッチ単独で戦える敵ではなくなったためである。如何にプリキュアやGウィッチと言えど、バックアップ体制がなければ、戦闘は不可能である。近代の国家総力戦とはそういうものだ。怪異の襲撃にあたる専門組織が出来た事もあり、軍ウィッチの存在意義ははっきり言って『薄れていた』。そんな変革期に起こったのが太平洋戦争だ――

 

 

 

 

 

 

「でも、ネットの誹謗中傷に『戦闘民族の技』ってあるのは何なんです?」

 

「大方、かめはめ波を某戦闘民族の技って思ってんだろ?あれは元は亀仙流の技だし、どどん波だって鶴仙流だぞ?気を扱えりゃ、ああいうのは敷居低いんけどな。むしろ、戦闘民族の技なら、ファイナルフラッシュやギャリック砲だろ」

 

会議を終え、業務に戻ったキュアドリームと黒江。誹謗中傷にトンチンカンなものがあることを二人は話題にした。明らかに原作を見ていない『聞きかじり』のものがあったからだ。

 

「あれって、気を練って凝縮してから、一気に放出するんですよね?」

 

「気功波ってのを理屈的に説明すりゃな。石破天驚拳を見てみろ。あれと原理は同じだ。お前の炎は先祖由来のものだけどな」

 

「炎が使えるのを向こうのあたしに言ったら、電話口で泣かれましたよ」

 

「しかたねーさ。今んとこの実力はお前のほうがダンチで上だしな。気の練り方も覚えたろ?」

 

「だいたいは」

 

「向こうはプリキュアになって二年目の現役、こっちのお前は百戦錬磨のオールスターズ。踏んだ場数が違うからな。のび太も大冒険を25回もしてきた猛者だぞ」

 

「一回死んだとか?」

 

「夢幻三剣士の時にな。曰く、リルルの事で輪廻転生を信じるようになったみたいだしな、あいつ」

 

のび太としずかは自己犠牲という形で、二人の友を失っている。一人は水中バギー、もう一人はしずかのその後に影響を及ぼした悲劇の人『リルル』だ。リルルは自分の存在した歴史が書き換わった後、『転生した彼女』らしき人物がのび太の前に姿を現した事で、のび太としずかは輪廻転生を信じるようになった。そして、のび太自身も彼女の事もあり、自己意志で『子孫』への転生を選んだ。しずかもそれを選んだとの事であり、のび太夫婦は転生して、また巡り合う事が約束されたのである。

 

「鉄人兵団の政権を本国で転覆させたのって……まさか」

 

「そう。転生した彼女だ。のび太としずかは喜んでたよ。多分、彼女はメカトピアの政府首班にでもなってるかもな」

 

 

のび太達には知らされているが、メカトピア戦争が終戦となった一つの要因は『リルルが本国でレジスタンスを率いて政権にクーデターを起こした』ことだ。転生後の彼女がどういう立場であったのかは定かでない。だが、レジスタンスを率い、政権を転覆させたことは確認されており、再編後の政府首班に祭り上げられていると思われる。

 

「彼女の存在がのび太に輪廻転生を確信させたわけだ。俺たちも、お前らもそうだ。一つの可能性を引き継いだわけで…」

 

「向こうのあたしには言えないんですよ、前世の経緯。やることなす事が裏目に出た人生だったから」

 

「いずれは言うしかないだろう。一つの可能性ではあるからな。だが、それを乗り越えるのもお前だ。向こうのお前は向こうなりの答えを見出すさ」

 

「それで世界が分岐しますね」

 

「次元世界の摂理だからな、そういうのは」

 

次元世界の摂理として、違う選択を選ぶ度に『世界は分岐する』というものがある。二人ののぞみのケースもこれに該当する。

 

「なのはももう一つの世界見て、相当に苦笑いしてたっけ…」

 

「なのはの分岐点は『11歳の任務』らしいからな。なのははスプラッシュスターを見てたって言ってたから、お前見た時に嬉しそうだったろ?」

 

「向こうの子供なのは、すごく喜んでましたよ。間に合ってれば、敵をボコボコにしてたんですけど」

 

9歳なのはは子供らしい純真な性格なので、管理局生活を続ける内に気質が変わった事が容易に想像できる。のぞみは子供なのはに懐かれたらしく、大人なのはとの違いに戸惑ったという。

 

「それを考えると……大人なのは、捻くれてません?」

 

「あいつは管理局のルールをシャバにも当てはめる悪い癖があったからな。それで例のポカで出世コースから外れたから、酒癖も悪くなってな。ヴィヴィオがしっかりするよ、あれじゃ」

 

 

大人なのはは『品行方正』の仮面を外した事もあり、酒癖が以前より悪くなる、普段の生活がちゃらんぽらんになるなどの変化があった。その代わりにヴィヴィオが史実よりしっかりするという効果も生じている。なお、プリキュアへの憧れは残っていたらしく、『キュアアムールになれるかな?』と親友がキュアエースになったこともあり、こっそり期待していたのは知れ渡っている。素行は悪くなったが、圭子ほどではない。猫かぶりの技能も残ってはいるので、式典では往時のように振る舞える。

 

「ティアもなんだかんだで管理局の籍がクロノの計らいで復活したそうだ。兄貴の名誉回復と引き換えにして。管理局も現金なもんだ」

 

「あそこは人手不足が極まってますねぇ」

 

「俺達より悲惨だぞ。次元部隊はまだいいが、面子丸つぶれの地上部隊が哀れだ。軍機能とと警察・司法機能が分割される事になったから、人員の配分で揉めてるからな。次元部隊は中枢部は無事だし、単に威信が失墜しただけだから、再建は難しくない。ただ、魔導技術主体になってることの優位性が否定されたから、これからは質量兵器をそれなりに受け入れていくしかないだろうな」

 

魔法は余計に危うさがある事がキュアフェリーチェなどの存在で明らかになったため、時空管理局は実質的な地球連邦の傘下に入っての再建では『火薬や化学など、魔力によらず大量破壊を生み出す兵器』のほうがストップをかけやすいという皮肉な現実を突きつけられたため、人員の激しい減少と『強力な魔導師の希少さ』を理由に『質量兵器を認める』方向に方針転換せざるを得なかった。『地球が自分達より強大であった』事が明らかになることでの秩序崩壊を恐れた時空管理局は成り立ちの真の経緯を隠匿した上で、実質的な地球連邦の傘下組織体制に移行する。これは内乱で魔導師をあまりに消耗し、直轄部隊の魔導師に強力な魔導師が殆どいなくなったためで、ポカをやらかしたなのはが『懲戒免職処分』にならなかった理由である。

 

「なのはがクビにならなかったのって?」

 

「代わりがいないからだ。管理局礼賛のプロパガンダにも使ってたから、ポカをやらかしたとしても、色んな意味でクビにはできんよ。ミッド出身でなくても、将校に出世できる見本みたいに使ってたからな」

 

時空管理局はいろんな理由で、なのはを切れない。子供なのはが聞いたら幻滅しそうな経緯である。大人なのはは実質的に『飼い殺し』のような形で留め置かれているので、本人もやや自暴自棄気味だ。しかし、自業自得の面があるのは言うまでもない。時空管理局での肩書はもはや有名無実化が進んでおり、本人も地球連邦軍への出向を好むようになっているなど、子供なのはには言えない事になっている。

 

「こんなの、ガキのあいつに見せられっか?」

 

「朝っぱらから酒?乱れてんなぁ…」

 

「調をなのはの家に手伝いに行かせてるのは、酒浸りにさせないためだ。子供の教育にも良くねぇからな」

 

「言えてますね」

 

大人なのははダイ・アナザー・デイ後、出世コースから外れたと見なされたことで、仕事場で不本意な扱いをされる事も増えたためか、非番の日は酒を煽るようになるなど、『ダメな大人化』が急速に進んだ。見かねた黒江は調を時々は手伝いに行かせている。アリシアもなのはのダイ・アナザー・デイ後におけるだめんずぶりを嘆いており、シェルブリットの発現を『発奮のもとになれば……』と述べている。黒江がタブレットで見せた写メールには『朝っぱらからビールを飲んで、どこか投げやりな様子のなのは』が写っており、別世界の子供なのはに見せられないのがよくわかる。(この態度には、アリシアとアリサといった自身の近しい者たちがプリキュア戦士だったことへのショックも入る)

 

「ヴィヴィオちゃんがしっかりしたのって……」

 

「たぶん、これが原因だろーな。親友ともう一人の親友の姉がプリキュアじゃな」

 

なのはにとっては、自分と近しい人物二名がプリキュア戦士であるのもショックだったようだ。更に転生した『闇の書が生み出したコピー』の存在がキュアアムールである事の衝撃はなのはにとっては『サイパンの戦いの敗北』か『硫黄島の玉砕』と同レベルの衝撃であったらしい。しかも、小学校低学年以来の親友が歴代でも手練と評判のキュアエースの転生。(エースの出自を考えると、もっとややこしいが)その衝撃や如何程か。

 

「エースが聞いたら、叱りにいきますよ。これは」

 

「なのは、妙にガキのまんまなとこあっからなー。もう20いくつだってのに」

 

「気持ちはわからなくはないですけど、うーん~……」

 

 

なのはは史実より長く学生生活は送れたが、一方で幼少のうちから事実上の軍隊生活に入った故の弊害も生じ、結果的に自らのキャリアに影が差すことになった。立花響を傷つけるつもりはなかったにしろ、問題行為と見なされたための自業自得である。ただし、立花響がなのはの行為の後に自分を客観的に見て、プリキュアに憧れた結果、キュアグレースの因子の覚醒に至ったという結果もあるにはある。

 

「ま、なのはや君たちはまだいいけど、ボクなんて元は英霊だよ?クレームつける奴が多いから、最近はプリキュアの姿だよ」

 

「お前も大変だよな」

 

「そーだよ。あくまで、ボクは可能性の一つだよ?そもそも神話だってねぇ……」

 

 

キュアミューズはアストルフォでもあるので、偉人としての振る舞いをきちんとしろというクレームに憤慨している。最近はキュアミューズであるほうが多いのも、アストルフォの振る舞いは英雄らしくないというクレームが来ているからだ。

 

「ま、お前。そもそも理性が蒸発して、全然ねぇもんな」

 

「そーだよー。そうでなきゃ、神話や伝承でアホ扱いはされないよ」

 

「アルトリアさんはどうなんでしょう?」

 

「あいつはまだ伝承に近いから、いいほうだろ。食いしん坊なのも、生前の環境考えれば説明がつくからな。モードレッドの策略にハマったアホなところも含めて、基本的に騎士道に忠実だからな。キャメロットっていう映画が昔にあったが、あれに近いような経緯があったのは事実らしいからな」

 

アルトリアはブリタニアの王位には今更、何の興味もない。かと言って、カールスラントの帝位にも興味はない。顕現の際の素体になったハインリーケがカールスラントの帝位継承権の保有者だった偶然により、騒動に巻き込まれる羽目に陥った。エクスカリバーの『本物』を有する事もあり、彼女自身の帰属にも揉めた。結局、素体の関係でカールスラント籍には落ち着いたが、今度は軍縮のターゲットにされたため、日本連邦に移住する羽目となるなど、受難続きである。

 

「あの子も受難続きだからね。ボクはまだ、プリキュアになるって選択もあったけど、あの子は王位経験者、それも円卓の騎士を率いていた立場。思いっきり難しい立場だよ」

 

 

キュアミューズ(アストルフォ)も同情するが、アルトリアは『アーサー王』その人の一つの可能性。色々と文句も来やすい上、転生先も帝位継承権持ちの貴族。本人としては複雑だろうと推察する。

 

「この国で人気なのが救いだよ。あの子は王位とか騎士とかから解放されたかっただろうし、理想像に徹しすぎて、国の統治や人心を顧みなかったから円卓が崩壊したって、征服王に『どこかの世界で言われた』のを気にしてるようだしね」

 

「あー……ZEROの時にそんなイベあったっけ」

 

「本人曰く、あの通りじゃないそうだけど、似たことは起こってたそうだよ。君もだけど、かめはめ波撃つだけでクレームだもんね」

 

「ありゃ、亀仙流の技だぞ?気の扱いに熟達してれば撃てるもんだぞ。作中で殆どの戦士が身につけてるんだし」

 

「あたしは負けただけで、変なクレームだよ?初見で南斗鳳凰拳を見切るなんて、北斗神拳伝承者とかじゃないと不可能だよ~!」

 

「おまけに君は草薙流古武術を使えるのが不味かったね」

 

「攻撃が当たんなきゃ、炎だって無意味だし。あいつ、炎を手刀で切り裂いたんだからね~……」

 

ティターンズ残党の長『アレクセイ』は当代の南斗鳳凰拳伝承者である。炎を手刀で断ち切る事も容易にできるので、ダイ・アナザー・デイ時点のドリームが負けるのは当然の事であった。ティターンズ幹部は神闘士、もしくは南斗五聖拳の使い手であることはダイ・アナザー・デイ後に正式に確認されている。それと互角に渡り合うのび太とゴルゴの凄さはよく認識している。

 

「それとのび太はよく渡りあったよ」

 

「あいつは口八丁のハッタリで脅すのも上手くなったからな。こいつは世界一強力な拳銃だ~って。銃弾を見切るには、引き金の指の動きに注意しつつ、銃口の向きから『見越し射撃』を狂わせる頭と運動神経、カンを必要にする。のび太のやつ、ダー○ィハリーのセリフなんて引用しやがって。こいつは世界一強力な拳銃なんだ。お前さんのドアタマなんて、一発で吹っ飛ぶぜ。楽にあの世まで行けるんだ。運が良ければな…。さあ、どうする?ってな。おりゃ、すぐにピンときたぜ」

 

 

「のび太くんって、現代劇だと、ああいうの趣味なんですか?」

 

「ガンアクションが根本的に好きだからね、のび太」

 

「ゲッタウェイとか、狼の挽歌、雨の訪問者とかの渋いムービーが現代劇だと好きなんだと。ほら、あいつ、根本的に優男だろ?」

 

「ああいう、昔ながらの男臭さ漂う俳優も映画も減ったからねぇ。近頃はあいう男臭さを強調すると、ジェンダーがどうのこうの……ってクレームつくから。野暮ったい時代になったよ」

 

往年のス○ィーブ・マックイーンやチャールズ・ブロ○ソンのような男臭さを売りにした渋い男優が減ったことをのび太は嘆いている。西部劇もすっかり往時の光を失い、のび太の子供の頃には当たり前であった『いい意味での男らしさを求める』傾向も時代遅れになってしまったためだろう。のび太としずかは昭和の名残りが色濃い時代に子供時代を送ったため、『男らしさ』や『女らしさ』を親から求められた。その点でプリキュア達より世代が前である事が分かる。キュアミューズは『野暮ったい』と表現したが、それはゼントラーディとメルトランディを創造したプロトカルチャーの『嘆き』を知っていたからであるかもしれない。

 

「そもそも、ボクらも『女の子だって暴れたい』って願望を形にする形でメタ的には生を受けた分野なわけだしね。しずかが前に言ってたけど、戦うべき時は銃だろうが、槍だろうが、何かを持って戦うのが普通だし、誰かに守られてるばかりじゃ嫌だっていう女の子達の願望が『プリキュア』ってジャンルを生んだ。ボク達『第一世代』はその範にならないといけないんだよね」

 

「皮肉なもんだよ。某セーラー戦士へのアンチテーゼとして生まれたお前らが代を下ると、それにむしろ近づいてきているんだから」

 

「だから、定期的に原点回帰がなされるんだろうね。メロディはエールをいけ好かないとか言ってるけどね」

 

「ああ、あれは言うことがちょっとクサイからな。シャーリーは紅月カレンだった頃に本物の人種差別をブリタニアから受けた事がある。ある時に危うく、リフレイン(自白剤)を打たれそうになったからか、クサイ事宣う奴は嫌いなんだよ、あいつは。ある意味、紅月カレンとして嫌った手法……『システムの内側に入って改革する』ことを自分が今してるからな。自嘲めいたことをのび太に漏らしたそうだ」

 

「あの子も何かと複雑だし。それに、麦野沈利としては『仲間を手にかけてる』経験もしてるからね。麦野沈利としての記憶は思い出したくなかった時期だって言ってる」

 

「フレンダの事だろ?麦野沈利としちゃ、人格破綻者だ。浜面仕上だっけ?に愛憎めいた感情抱いてるっていうしな。シャーリーが思い出したくなかったっていうのも無理ねぇさ。それらの経験があるから、言うことがポリコレみたいなキュアエールはいけ好かないんだろう」

 

「本人はそんな意識ないと思うよ。クラスでいじめられた過去と決別したいから『イケてる人になりたい』って意識が根底にあるし、ポリコレって単語も知らないと思うよ。言い方がクサイから、なおや響にそう捉えられてるなんての、本人も予想外だと思うよ?めぐみも言ってた」

 

シャーリー自身は野乃はな個人はそれほど嫌ってはいないが、ポリコレめいたことをやたらと言うことに腹が立つのだ。実際の世界は優しくないことを実感してきたし、彼女の存在が親友ののぞみの前世を(間接的に)狂わせてしまったことを償わせたい思いが燻っている。これはのぞみの前世を知った、あるいは共に生きたプリキュア経験者にありがちな心理である。はなの心理をより理解できていた愛乃めぐみは前々から、はなの立場を考慮した発言をし、花咲つぼみとともに世代間の融和に務めている。花咲つぼみ、相田マナ、愛乃めぐみの三人は中立派に分類でき、黒江に前世での『のぞみとはなの衝突を発端にしたプリキュア間の対立』を話すなど、その出来事の二の舞を踏むまいと努力している。

 

「あいつは世代間の融和を第一に考えてるからな。つぼみと気があうのはそのせいか?」

 

「戦闘面じゃ、のぞみやラブとの相性がいいけどね。つぼみは素の戦闘力は高くないほうだから」

 

「言えてんな」

 

「めぐみちゃん、どういうわけか、あたしを慕ってくれてるけど、前世だとそういう記憶ないんですよ、先輩。あの子はオールスターズ最末期に初陣の世代なんで…」

 

「ヒアリングしておいた。あいつの現役時代の末期……、転生前だかはわからんが、とにかく、自分の行動の根幹を親に否定されたことで、今までの自分の幸福を否定されたように感じて、思いつめて自殺寸前だったのを、お前やラブ、響の三人が止めて、めぐみを叱咤したんだそうだ。それで三人がそのまま最終決戦に参戦する形で付き添ってくれて、四人のピンクで『ラッキークローバー・グランドフィナーレ』の応用技を決めて決着した……らしい」

 

疑問形なのは、キュアラブリーとキュアフォーチュンの証言のみで、その出来事にいまいち確証がないからだ。

 

「えぇぇーーーーーーーー!?」

 

腰を抜かすキュアドリーム。

 

「なんだ、おりゃ知ってるもんだと」

 

「知ってれば、もっと先輩風を吹かせてますって!」

 

「お前、後輩にも先輩面できない学生生活だったもんなー…」

 

「ずるいですよー!学生時代の事をあれこれ知ってるなんて~!」

 

「文句言うなら、キュアハッピーに言え」

 

「ぐぬぬぬ…アンニャロ、後で草薙流の『大蛇薙』を食らわせてやるぅ~!」

 

黒江は巧みにキュアハッピーに怒りの矛先を向けさせる。当のキュアハッピー(宮藤芳佳)は身重なのはわかっているので、ドリームも『言うだけならタダ』の要領で口に出している。

 

「君もあくどいネ」

 

「俺もあいつのDVD見るまでは、本当に知らんかったのは事実だけどな」

 

 

呆れるキュアミューズ。黒江の執務室での一幕だが、ミューズは新京での用事が意外に早く終わったため、そのまま次の列車で戻ってきたのだ。

 

「そういえば、お前。すぐに戻ってきたけど、わざわざ新京まで行った用事は何だったんだ?お菓子なら、PXで……」

 

「日本の大手スーパーの新京限定のお菓子なんだ。すぐに買えたからね。ほら、君たちへのお土産」

 

「ふ、ふぉぉぉ……み、ミューズぅぅ~!ありがとー~~♪」

 

ミューズがおもむろに日本の大手スーパーの紙袋を一同に差し出す。ドリームはあまりの嬉しさに破顔する。

 

「わりーな~♪」

 

「って、早っ!」

 

黒江がさっそく食べている。日本ではお馴染みのあるお菓子の扶桑限定のフレーバーの一つで、南洋限定のフレーバーである。

 

「南洋限定のフレーバーか……。日本だと沖縄でしか売りようがないなぁ」

 

「こっちだと、台湾も南洋も領地だからできたことだよね」

 

「言えてら」

 

黒江とミューズはさっそく食べ始める。ドリームも勇気を出して封を開け、お菓子を口に運ぶ。それから数秒後……

 

「お、おいし~!!!!なんて言えばいいんだろう……この味……」

 

これである。南洋特有のフルーツの写真がパッケージにイメージ画像として使われていることから、南洋のフルーツをフレーバーにしたのは間違いない。一同はとんぼ返りしたミューズの厚意に預かり、勤務中ながら、ちょうど午後三時なのを良いことに、『おやつタイム』にするのであった。

 

 

 

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