――小宇宙。人も神も関係なく、平等に与えられた『体内にある宇宙的なエネルギー』である。神と戦うための軍団には必須とされた技能でもあり、それを一定の領域まで覚醒めさせれば、神をも穿つ矢になり得る(ギャグ漫画補正が働く者には実質的に無意味だが)。手近な例では、兜甲児の親友で、高校卒業後はラーメン店を開業している『ボス』がそうであった。64Fのラーメンの少なからずは彼からの差し入れであるのだが、彼はギャグ補正がなければ死んでいた場面が多い――
「ギャグ補正は僕やドラえもんたちもそうだね。そうでないと死んでいた場面は多いし、とっくのとうに狂犬病さ」
のび太は野良犬に小学校の六年間のほとんどを噛まれっぱなしであったが、狂犬病にかからなかった。また、電気工事中にペンチが落ちてぶつかることもしょっちゅうであったが、大した怪我にもならなかった。
「そういえばそうだね。そういえば、本当に咲さんと舞さんの時代はTVを見てないの?」
「大学受験の時期でね。それと、坂本少佐もかわいそうだよ。同位体と考えられる日本の撃墜王の悪評のせいで、かなり参ってる」
「先輩の同位体って……まさか」
「昔はサムライとか言われた撃墜王だろうとは推測されてるんだけど、本人の死後に評判が落ちたんだ、その人」
坂本は日本で一番有名な撃墜王の一人が同位体ではないか?とされており、本人もエピソードの類似性から、その撃墜王ではないかと思っているが、その人物のエピソードの多くが本人が戦後に捏造したものが多いのでは?と言われるようになってしまったため、坂本もその色眼鏡で見られるようになってしまった。また、坂本本人も『芳佳のその後』に悪影響を残してしまったことがアニメで描写されたこともあって、坂本はバツが悪いのか、引退後は教導にあまり関わっていない。この点はロスマンと一緒だ。
「坂本先輩も大変だなぁ」
「世間の評判はそう簡単には変わらないからね。僕がそうだったように。君は運がいいよ。総じて、評判はいいから。怒ると怖いなんてのは、歴代のプリキュアでもよく見るからね」
「まぁ、ねぇ……」
「近頃は同位体の発言にまで責任取らされるからね。カールスラントを見なよ。そのせいで内乱。軍刑務所が満杯だ」
「おまけに、私などは階級への不服従を理由に減俸処分食らった上、始末書だよ」
「あ、フーベルタさん」
「参るよ。あれはまだ若く、それもイキってた時期に、軍発行の雑誌に言っただけの一言だというのに」
フーベルタ・フォン・ボニンはこの変革の時期に最も苦労したカールスラント軍人の一人。捕虜収容所にいた時期に『Gウィッチへ覚醒した』。前世はジオンのエースパイロットで、未来世界にもいる『マリーダ・クルス』で、覚醒後にニュータイプ能力を得ている。マリーダ・クルスの人格とフーベルタの人格が自然に混じり合ったため、堅物が多めのカールスラント軍人では珍しいほどのウイットに富んだ好人物である。
「確かに、実力と撃墜数で勝る人間が指揮官であると公言したが、あれは戦時だからで、平時の場合の相手との接し方くらい心得ている。私の先祖はユンカーなんだぞ、全く……」
「そこが不味かったんじゃ?」
「うーむ…。とにかく、本国にはもう帰らんよ。コンドル軍団は今や、鼻つまみ者だからな。恩給も年金も大学の奨学金以下。これじゃ、誰も軍に留まりたくなくなるよ」
フーベルタはコンドル軍団所属であったため、危うく名誉の剥奪に遭うところであった。本国での出世が望めなくなった彼女はルーデルの誘いに乗り、早期に魔弾隊に着任した一人となった。軍団関係者の名誉が剥奪されていく事に嫌気が差したためだ。彼女が日本連邦に移住した事が契機になり、古参のエースパイロットの大半は本国でなされるであろう冷遇(要は軍での飼い殺し)を恐れ、魔弾隊に続々と入隊した。ルーデルの高い人望も要因であった。カールスラントのトップ20の撃墜王の上位が寄ってたかって、日本連邦の義勇兵になっていったことは『カールスラント空軍には、ベテランを雇用し続けるだけの意欲も余裕も無くなっていた』事の表れであった。この一連の撃墜王の流出はカールスラント空軍の権威の失墜とされ、同空軍がしばらく『人材派遣センター』と揶揄される事になる理由であった。一方、若手と中堅が大量に抜けた扶桑も数的主力を義勇兵に頼る有様で、64Fを豪華に見せないと『ウィッチの転科準備の時間稼ぎ』もできないと危惧されている。扶桑はその時間稼ぎをするため、戦線の穴埋めのため、カールスラント撃墜王達は食い扶持の確保のためという思惑の一致で太平洋戦争は義勇兵の活躍する場となった。カールスラントは内乱の発生後に、雇用と福利厚生対策と称しての『軍人年金と恩給支給の再開』などが決まったが、その施策が通達された頃には多くの有力将校が日本連邦に高給を保障してのヘッドハンティングをされており、はっきりいって『もはや手遅れ』であった。
「カールスラントは慌ててますよ」
「トップ20がごっそり抜ければな。ガランド閣下も引退なされてるし、今のカールスラントでの戦前戦中からの軍人は鼻つまみ者だ。予備役になっても、生活の保障も危うい金額の年金しかもらえんとなれば、みんな日本に行くよ」
日本連邦は義勇兵には高給で応えており、住宅も提供しているなど、厚遇していた。カールスラントは質のいい人員の宝庫だとされているのもあり、戦争中の『手っ取り早い人材確保』として、カールスラント空軍からの引き抜きに日本連邦は金に糸目をつけなかった。日本も民間軍事会社を規制する方向なので、引き抜きは公然と(野球の引き抜き感覚で)行われた。これは日本側のジュネーブ条約遵守のためのポーズであったが、他国にとってはたまったものではないのも事実。どこも自国ウィッチの囲い込みに必死になったが、ウィッチの存在そのものがジュネーブ条約に触れてしまうため、21世紀に同位国がある国は扱いに窮し、現地の治安悪化を避けるため、ウィッチに関しての例外規定を設ける事の審議が国連で要請されるに至る。実際にカールスラントが内乱になり、NATO軍による介入が行われたからだ。そのため、引退した者を復帰させたRウィッチは政治的に重宝された。なお、暴論ではあるが、『宮藤芳佳さえいれば、どんな事もなんとかなるだろう』という21世紀世界にある種の楽観論は他のウィッチからの彼女へのヘイトを買いかねないため、報道規制が強くなされている。芳佳はウィッチの奇跡の体現者だが、そのあり得なさは他のウィッチのヘイトを買いかねないのである。
「カールスラントは軍人に冷たくなりましたからね」
「日本と違うのは、恩給と年金が雀の涙でも出る点だがな。扶桑に移住する自衛官が多いのも分かるよ」
「君らの界隈は色々と専門用語あるからね。それで、部外との交流を促すように通達が出たのさ。閉鎖的な環境だから、四年前、問題が大事になっちゃったしね」
「おまけに、今は過去の発言や同位体の発言で謝罪させられるからな。やりにくいよ」
フーベルタは過去の発言を事実上、撤回せざるを得なくなった当事者である。欧州にも年上を立てる文化はきちんとあるし、階級に実力が伴わない者が自分の上に立つのを嫌うだけなのに、マスメディアに無責任に攻撃されて、記者会見で謝罪させられたことは屈辱らしい。自分は人種差別主義者であるわけではないのに、マスメディアは憶測で記事を書くからだ。彼女がマスメディア嫌いになったのは、その経験がきっかけである。
「君の発言は軍の階級への不服従と取られかねないからね。空中指揮管制機も使われる場じゃ、君の理屈は通じないよ」
「まだ、モビルスーツで戦うほうが気楽だな……」
「君、前世はジオン軍人らしいけど、連邦系は大丈夫かい?」
「アナハイムが造ってる以上、連邦もジオンもコックピットは共通化されとるよ。それに、前世のように『強化されたわけでもない』し、ガンダムに乗るのも悪くはないだろうさ。それに、君の世界には、私とは別のマリーダ・クルスがいただろう?」
フーベルタは前世がジオン軍人でありながら、転生後は『ジオン軍に嫌気が差した』とし、生前に敵として戦った地球連邦軍の側に立って戦うことに抵抗はないという。同位体がジオンの枷から解き放たれたことを知覚でもしたのか、前世には囚われずに生きると示唆する。
「それに、ジオン系は時代が下ると、どうしてもゲテモノが増えるんでな」
「ああ、Rジャジャやハンマ・ハンマとか、ジャムルフィンとか」
「ザクⅢよりドーベンウルフを選んだ時点で、ジオンは負け確定だったよ。シャア・アズナブル大佐もギラ・ドーガを選んだろう?」
「言えてる」
「連邦はそれを見てきたから、ミッションパック方式に懐疑的なのさ。ジェイブスも結局、第二ロットはヴェスバーが固定装備にされたように、MSに求められてるのは素での汎用性さ」
ジェイブスB型はフーベルタの言う通り、ミッションパックとされていたヴェスバーが機体の固定装備にされたこともあり、F91の簡易量産機という体裁が強まった。依然として、製造コストがジム系としては高い部類であるため、廉価なMSである『フリーダム』を束ねる指揮官機、あるいは同機種での中隊での運用が想定されている。ジェスタやジムカスタムのような位置づけである。デザリアム戦役では正式な配備前であったが、パルチザンの手に渡った試作機はジム系最新機種の名に恥じぬ活躍を見せている。また、デザリアム戦役でギラ・ドーガやギラ・ズールと言ったネオ・ジオンの普及機には圧倒的優位を示し、ドーガ系のビームマシンガンがジェイブスのビームシールドを撃ち抜けないという場面が度々発生した。
「それに、私達は最前線送りだからと、全てに強さを求められても困るのだが。前世がジオンの強化人間だからと、MSをいきなり充てがわれてもなぁ」
「慣れるしかないですね」
「連邦はフィールドモーター式が駆動の基礎で、ジオンは流動パルス式だ。戦後は双方の混合だったりするが、難しいんだぞ、MSでの作業の力加減。それに、連邦はファンネル搭載機は少ないからな」
「クスィーとν系統くらいですからね。Gビットは正式なファンネルじゃないし」
「一年戦争の時よりは機種転換は楽さ。一年戦争のジオンが何故負けたかは、座学で習ったろ、夢原?」
「ええ。確か、操縦法の不統一でしたね?」
「ジオンは一年戦争の後期に統合整備計画が始まるまで、機体操作方法が機体ごとに統一されていなかった。ほれ、扶桑でも、陸海で飛行機の操作法が違うとかあったろ?あれが宇宙時代にもあったんだ。連邦は一年戦争の頃から、戦闘機と基本レイアウトを同じにするとかの工夫を凝らしていたが、ジオンはメーカーごとに違う操作方だ。それを統合整備計画で改善しようとしたが、計画の開始が遅すぎた。その頃には連邦は戦闘機や戦車兵を短期間に転換させて、そこそこの練度の兵士を雲霞のごとく用意できたが、ジオンは一騎当千の強者とそれに追従できる少数の古参に頼る状態。これで戦線が維持できるか?」
「ジオンの将校だったからか、辛辣ですね」
「いつの時代も、負ける側の軍隊の事情は似たりよったりになるものさ。扶桑と日本は負ける気がないにしろ、銃後の力が強すぎる。向こうで言うところのアメリカが怖いにしろ、質で量を補うのは限界があることをわかっとらん」
「日本は疫病に巻き込まれた上、戦後からの軍事忌避の風潮がまだ強いからなぁ。それで量が揃えられないから、この子達のようなヒロインを祀り上げることで質が自分たちの想定になるまでの時間を稼いでるつもりなんですよ、大佐」
「海軍のヤマトのようなものだな。あれへの入れ込みは宇宙戦艦ヤマトを見ればわかるが、日本人はあれか、自分たちがされた『科学技術レベルの差を自分たちが逆に見せつける事』をしたいのか?」
「たぶん。政治家は票田を失わないように、軍に無茶しか言わないし、損害がちょっとでも出ると、官僚は嫌味をいう。だから、あたしたちが踏ん張るしかなくて…」
「大変だな。私も早く、連邦系の機体に慣れなくてはな…。ああ、格闘訓練の相手が欲しいなら、グンドュラをこき使え。あいつにはいい薬だ。ずるい手を使って物資を分捕ってきたんだ。そのお返しをさせたくてな」
「え、もしかして、フーベルタさんのとこからも?」
「ああ。ミーナも言っただろう?届くはずの物資が来なかったり、人員を盗られたと。うちにもあってな。エーリカに肋骨を折られたのを聞いて、ほくそ笑んでしまったよ」
グンドュラ・ラルは覚醒前には『悪童』と呼ばれるほどにダーティな手段で502統合戦闘航空団を運営していたが、このA世界では日本経由でその全てが露見してしまい、一時は更迭と降格論もあった。折しも、彼女のGウィッチ化が確認された事、アドルフィーネ・ガランドの突然の引退と後継指名が世間を騒がした時期であるので、ガランドの思惑通り、グンドュラはガランドの後継者として『妥協的に』祀り上げられた。フーベルタとグンドュラの先輩であり、カールスラント英雄の一人にして、ガランド後任の有力候補者であったヴェーラ・メルダースが航空事故に遭遇し、事故の後遺症で昏睡状態に陥った上、コンドル軍団関係者に与えられた名誉の剥奪が真実味を帯びてきたという政治的事情で就任を断念せざるを得なくなった事による代替人事という形で、ガランドの後継指名は果たされた。事情としては、ヴェーラ・メルダースは人望もあり、上層部受けも良かった。対抗候補のミーナが選考レースから脱落し、エディタが鬱病に罹患(後に退役)した後は彼女がガランド後継の最有力候補と見なされたが、ダイ・アナザー・デイ中に現職の任地に着任するために向かっていたところ、不運にも航空事故に遭ってしまう。現地の医療体制の不備もあり、1949年現在も昏睡状態のままである。その事故がグンドュラを空軍総監に押し上げたと言っても過言ではない。だが、既にカールスラント空軍は衰退期に突入済みであり、グンドュラの就任時には往時の威光は失われていた。そのため、総監という職も有名無実であった。
「あいつが率いれる部隊はもはや、一個航空軍にも満たんだろう。軍縮で500機も作戦機は残っとらんからな。この時代に冷戦後の基準を当てはめるのはナンセンスだよ」
「500機ったら、一回の会戦で全滅するくらいの数ですからね」
「表向きはメッサーとフォッケの旧式の処分だが、メッサーのG型とフォッケのD型まで処分されちゃかなわんよ。弾道ミサイルはM粒子で、ものの役にも立たんというのに」
連合軍の悩みの一つが『同位国による強権的な振る舞い』で、ダイ・アナザー・デイの長期化と欧州の何カ国かの軍隊の有名無実化の原因にもなった。『米国がムスタングを提供する』事を前提にしての独による空軍軍縮であったが、自由リベリオン軍にはそんな余裕はないので、ドイツも窮してしまうなどのポカ続きであり、ウィッチ世界の安全保障はキングス・ユニオンと日本連邦に事実上、委ねられたと言っていい。
「シュワルベの後継にF-86を割り当てるのは分かるが、F-104をフォッケのG型の後継に割り当てるのはいかんよ。いったい何を考えている?エーリカが暴れたのも分かるよ」
「戦闘爆撃機が欲しいんじゃ?侵攻用の。元々、本土奪還のために、無理して軍拡してたわけですし。ラーテなんて、バカでかい戦車作ったのも……」
「まったく、ここの事情を考えてほしいよ。こちらにも面子があるんだぞ」
フーベルタの言う通り、カールスラントはドイツのせいで面子丸つぶれな上、内乱に突入してしまった。結局、この内乱でカールスラントの外征能力をある程度は回復させる事が容認されたが、自力での本土奪還は不可能でしかない範疇であった。連合軍はカールスラント帝国の面子に配慮し、後々に旧・JG52や旧・44JVの面々を日本連邦の実施したベルリン攻略に参加させた。それが戦前期からのカールスラント空軍の栄光の残光であり、実質の鎮魂歌のようなものだった…。のび太とキュアドリーム(夢原のぞみ)は思わず同情するのだった。
――日本連邦も政治のパワーバランスと『質で量を補え』という伝統に基づく軍備整備と管理が祟り、これまで防戦一方の戦況であった。とはいえ、日本側へ事後通告という形で揃えた未来兵器の本格配備と訓練が始まった時期が1949年の春にあたり、ラウンドフェイサー、ヘイスティやDAMなどのコンバットアーマー、ジェガン、ジャベリン、リゼルなどのMS、簡易型スーパーロボットの『イチナナ式』などが急速に出回り、形式的に存続していた軽戦車部隊や余剰の砲兵部隊などは人型兵器部隊へ転換されていった。通常兵器の保有数を規制しようとする動きがあったためで、その裏をかいたわけだ。64F以外にも人型兵器を有する部隊が出現したことで、日本は自国産兵器の売り込みを急ぐ。その結果、太平洋戦争は各時代の兵器の壮大な実験場と化す。1950年代にもなっていない時期に超音速機が飛んでいるのを考えれば、当たり前であったが――
――ウィッチ世界の各国の財政面での疲弊ぶりは『すぐに軍縮をしなければ、財政破綻が現実味を帯びる』ほどのもので、太平洋戦争にはほとんどの国が与せず、支援物資提供のみに留めていた。とはいえ、キングス・ユニオンのみは再編した東洋艦隊に支援を担当させていた。当時、欧州の覇者の地位を相対的な意味から取り戻したブリタニアには、それくらいの余裕はあったからだ。東洋艦隊は史実の1940年代の陣容よりは強大で、退役予定であったが、竣工から10年以内と『若い』艦齢やダイ・アナザー・デイでの戦功を考慮し、一定の近代化改修を施したライオン級戦艦を保有し、虎の子の空母も数隻は持つので、ある程度の『抑止力』にはなっていた。英国戦艦は日米の『艦隊決戦用に強化された』重戦艦には及ばないが、欧州では最強クラスであることには変わりがない。キングジョージⅤ世級が陳腐化を理由に『予備艦隊』行きになった後は前線の要望もあって、ライオン級は1950年代中の現役維持が決められている。これは怪異への艦隊打撃力の維持のためで、艦隊決戦は表向きの建前であった。ミサイルは怪異には必ずしも有効打にはならないからだ。当時は連合軍の中核がカールスラントから日本連邦に移行しつつある時代であるため、戦艦の実用的価値は多くの国で低下しつつも、大和型戦艦のファミリーへの対抗という政治的息合いで保有だけは続けられている。そんな状況の表れがライオン級戦艦の引退撤回である。――
――『ウィッチ』という括りにするには、いささかの無茶がある歴代プリキュア達。だが、ウィッチ世界で彼女たちの力を『魔力でない力』と説明しても信じられないし、強すぎる事をアピールすれば、コミュニティの輪を乱したとして、周りから迫害を受ける。黒江達が過去にそうであったからだ。黒江達は1945年以降は『勝ち組』だが、それ以前は『輪を乱す問題児』とされていた。江藤は復帰後に『黒江達がミーナに舐められた』ことで、元上官としての責任を押し付けられたが、実際は江藤に責任はなく、差し引いたスコアの申告も当時の扶桑陸軍航空では当たり前の『教育的措置』であったのは言うまでもない。それが後年に問題化したということで、ミーナと江藤は連合軍で針の筵だった。江藤はあくまで『その当時は皆やっていた事』の範疇だったため、復帰後に形式的な始末書を出すのみで許された。だが、ミーナは仮面ライダーたちからも利敵行為を疑われるほどに黒江達を冷遇したため、パットンが裏で擁護しなければ、士官でいられるかどうかも怪しいとされるほどの厳罰が下されていたとされる。歴代プリキュアの内、早期に覚醒めていたキュアドリーム、キュアメロディの二人のピンクはデザリアム戦役直後の時期の連合軍発行の雑誌のインタビューに、『プリキュアでその時の様子を知る者』ということで、こう答えている。
※キュアドリームの場合
「あれは言っちゃ悪いんですけど、同性愛をこじらせたせいじゃないかなぁ。黒江先輩、モテるんですよ、男らしい性格だから。ミーナさんが仕事で冷遇したのは、世代的に先輩がとっくに20を超えてたからかもしれませんね。黒江先輩はニ年前(1945年。インタビューは1947年に行われた)の時点で22歳くらい。普通のウィッチの常識的には『戦力外』ですから」
※キュアメロディの場合
「あん?黒江さん達が冷遇されたことか?簡単だよ。ありゃ、嫉妬だよ、嫉妬。あの人、温厚そうにしてるけど、実はヒステリックな一面があったんだ。整備兵の恋人が死んだからって、整備兵との接触を禁止にするってのは、『純潔じゃなくてはならない』とか言う前時代的な迷信を盾にしての言い訳だぜ。それで拠り所だった少佐を取られるからって冷遇したんだぜ?あの人たちの実際の強さがわかった時の青ざめた顔ったら……痛快だったぜ」
キュアメロディはシャーリーとして、部下としての時間が一番長かったため、事変の詳細を知らないミーナに呆れていた事を大っぴらにする。圭子の『シャインスパーク』を目の当たりにしたミーナが帰還後に保身を図るような素振りを見せたことも知っているため、三人のプリキュアの中では最も辛辣な回答をした。ミーナが本来の人格であった時期に、自己保身を図ったのは、後にも先にも、圭子の闘技を目の当たりにした直後のみだったからだ。ここからは二人同時のインタビューである。
――なぜ、彼女は自己保身を?――
「事変の詳細をあの人はガチで知らなかったんだろうさ。戦局が押し迫った時期に志願して、座学がほとんど省略されて任官された世代のウィッチらしいから。本当に知ったのは、あの三人の詳細な情報をエーリカが教えた時だそうだし、その時には、エクスカリバーやシャインスパークとかの闘技を見せていたことで、事の重大さに気づいたんだろう。事変の英雄を冷遇した事の意味を」
――彼女は何故、錯乱を?――
「たぶん、坂本先輩が自分より、どこの馬の骨ともわからない上層部の差し金を信頼してる素振りを見せてた事を妬んでたからだと。上層部が厚意で送り込んだ、扶桑最強の三人だって事を知った時には、彼女への査問が決まってたっていいますから。多分、査問で坂本先輩が自分を庇わなかった事で、溜まった感情が爆発しちゃったんでしょう」
――よく鎮圧できましたね?――
「ハルトマンが迅速に制圧したからな。そうだな、あの人本来の人格を見たのは、それが最後だったな。あたしらがプリキュアだって事を上層部に正式に伝えたのは、その後の事だ。確認が必要だったとかで」
「うん。どんどんわかったしねぇ。一番手はみなみちゃんで、あたしは二番手だったみたいだけど」
このインタビューは1947年度の軍発行の雑誌からの抜粋だが、江藤は『その当時には合法だった行為だった』なのもあって、部内でも許されたが、ミーナの場合は『実害が生じた』こともあり、上層部も問題視したわけだ。隊を割りかねない事態だったからで、その後にプリキュア達は活動を開始したわけである。カールスラントの落日はミーナの錯乱を始まりとし、日本連邦の旭日の始まりは『プリキュア達の活動開始』であると、後年の歴史には刻まれている……。