第二百六話「プリキュア5世界にナチス鉤十字、翻し時」
――さて、組手は黒江が持ち前の闘技で歴代プリキュア達をなぎ倒していっているわけだが、基礎経験値がそもそも違うための現象でもある。その日に、のび太の同伴でりん達の迎えに行ったのぞみだが……――
――B世界――
「ち、ちょっとぉ!?ど、どーなってんの!?」
現役時代にのぞみ達が通っていたサンクルミエール学園はB世界にもあったのだが、学園は大変な事態に陥っていた。いや、街全体が寸断されていた。『大ショッカー』の第二次攻勢が始まったのだ。
「なんで、ドイツ兵がパラシュートで降りてきてきてんのよ~!?」
りんBが喚くように、学園はなんと、二次大戦当時の軍装に身を包むドイツ空軍の降下猟兵に制圧されていっていた。武装親衛隊も空挺降下し始め、時代錯誤的なドイツ兵達が次々とエアボーン作戦を遂行していっている。
「貴方たち、こっち、こっち!撃たれるよ!」
「あ、『向こう』のあたし!」
「向こうのりんちゃん!って……なにそれ!?自動小銃だよね!?」
「そんな説明は後!!走って!!」
自衛隊の89式小銃を構えたりんAが応戦しつつ、B世界の自分とのぞみBをなんとか突破させる。
「ナッツハウスまで、このまま走るわよ!!」
「説明してよ、りんちゃん!あいつらは何!?」
「見てわかんない!?ナチス・ドイツの亡霊よ!」
「ナチス・ドイツって……今は21世紀よ!?」
りんBが当然ながら、戸惑った声を出す。
「大ショッカーはナチス・ドイツの生き残りの成れの果てよ。サイボーグ手術で延命したりして、再起の時を待った。光太郎さん達の存在を認識したから、大がかりな攻撃に踏み切ったのね……うかつだった」
「りんちゃん、前からなんか来るよ!」
「ブフォ!?機甲装備も持ち込んでるわけぇ!?」
りんAが驚愕したそれは、どこから持ち込んだのか、ティーガー戦車であった。
「ティーガー!?この学園をヨーロッパみたいに焼き払うつもり!?」
「ゆるさ……」
「待ちなさい、のぞみ!」
「なんで止めるの!?あんな古い戦車、変身すれば……」
「乗員はサイボーグ化されてる可能性が大きいわ。あんたの力じゃ太刀打ちできない!」
「こんなのが学校を壊すのを黙って見てろってこと!?そんなの嫌だよ!!」
のぞみBがヒステリック気味に返した次の瞬間、ティーガーが正面から何かに撃ち抜かれ、擱座する。そして、ものすごい重戦車がやってくる。
『おーい~、りんちゃん~!!』
ティーガーがさらに小さく見える重戦車の乗降ハッチから上半身を乗り出したキュアハートが声をかける。
「マナ、グッドタイミング!!」
「この戦車で道を開くから、みんなは後に続いて!」
その戦車はウィッチ世界では採用された『Ⅶ号重戦車レーヴェ』であった。戦中ドイツ軍系の血統を継ぐ戦車としての最終世代にあたる。ウィッチ世界でのスペックは70口径105ミリ砲を搭載し、傾斜装甲をケーニッヒティーガー以上の厚さで備えるもので、第二次世界大戦型重戦車として最高レベルの戦闘能力を誇る。エンジンは21世紀レベルの軽量化された高馬力エンジンで、車格に似合わぬくらいの一定の機動力を確保している。二次大戦当時の常識での戦車戦では、ケーニッヒティーガー以上の装甲によって無敵に等しい。ウィッチ世界では、ティーガーⅠがM26以降の米戦車の登場で陳腐化し、ケーニッヒティーガーの量産が軍縮を理由に縮小された後、カールスラントの意地で量産された車種である。これはラーテ計画が頓挫したり、ビスマルク級戦艦の増産の失敗などで多額の債権を抱えたカールスラントへのNATO軍の一種の救済措置であった。キュアハート/相田マナの乗る車両は相田マナの要請で戦車道世界に提供予定であったが、『1945年8月までに構成部材も完成していない』ということで没った後、実戦仕様に一部が差し戻されて投入されたのだ。
「タンクデサントできないの、マナ」
「あのさ、りんちゃん。昔のソ連軍じゃあるまいし、十字砲火ん時にそんなマネできると思う?」
「……ごもっとも」
「あのさ、何話したの?」
「タンクデサントってのはさ、要するにね、戦車の上に乗っかるって事だよ、のぞみちゃん。昔のソ連や日本がよく使った手さ」
レーヴェは戦中ドイツ系戦車の『まともな部類』の戦車の中では最強クラスの性能を持つ。その砲塔が動き、狙いを定め、火を吹く。遠距離射撃で、学園に侵入してきたパンター中戦車を吹き飛ばしつつ、前進する。
「あのさ、戦車って、4人乗りとかでしょ?あと、誰が乗ってんの?」
「こっちのうららちゃんに砲手してもらってる。射撃の腕いいんだ」
「へー……」
この時にレーヴェに搭乗しているクルーは全員がプリキュアであるものの、本物の105ミリ砲弾の装填はプリキュアといえども、流石にスタミナを消費してしまうため、負担低減のために、23世紀型の自動装填装置が導入されている。外見と裏腹にベトロニクスは意外に近代化されていた。(照準器も戦後水準のものである)レーヴェは70トンという重量と第二次世界大戦型装甲の陳腐化を理由に量産の断念も検討されたが、カールスラントの内乱もあり、『現地の雇用対策』で生産と配備が承認されたという情けない話がある。皮肉な事に、プリキュア達が実戦でポテンシャルを証明したことで配備の後押しがされた点で、ドイツ連邦共和国の強権的な姿勢がクローズアップされたのである。
「おっと、雑魚はのけのけ~!」
砲塔に備え付けられた対空用のMG34機関銃を撃ち、近づく兵士たちに掃射するキュアハート。戦車の敵の一つは歩兵だからだ。
「なんか、戦争映画みたいだなぁ」
「呑気な事言ってられるのも今のうちだよ、のぞみちゃん。」
「でもさ、他に言いようがないよ~」
「とりあえず、ナッツハウスを使わせてもらうよ。敵は武装親衛隊と降下猟兵らしいからね」
こうして、敵兵と敵戦車を蹴散らしつつ、プリキュア5が現役時代にたむろしていた『ナッツハウス』につくと、何台かの戦車が建物の近くに駐車されている、自衛隊員が歩哨に立つなど、まるで軍隊の駐屯地のような様相であった。
「ごめんごめん、驚かせたみたいだね」
「あ~~!」
ドリームに変身済みののぞみAがキュアエースと作戦会議中であった。
「あなた、どうしてこっちに?」
「りんちゃんたちを迎えにきたのさ、本当はね。だけど、今はそれどころじゃない。連中はうちの学校に手を出したようだね」
「手を出したって……昔のドイツ兵みたいなのがパラシュートで降りてきてんのに、そんな悠長な…」
「みたいな、じゃなくて、ガチにドイツ兵だよ。奴らはこの街一帯を制圧するつもりだよ。この街は警察も治安が良いから、SATみたいな部隊は置いてないし、自衛隊を日本政府は動かせられない。電波撹乱で外との連絡も断つだろうし、道路や線路も封鎖される。自衛隊が把握しても、政府に本気にされるには、数日かかるだろうから、あたしたちで抵抗しようって事」
「少佐、敵は武装親衛隊と降下猟兵を主軸に、機甲装備を持ち込んでいる模様です」
「ご苦労。敵の動きがあれば私に知らせろ」
「ハッ」
のぞみAたちは事態を受け、圭子に許可をもらい、Gフォースを随伴させた。自衛官たちが歩哨に立っているが、そのためだ。なお、のぞみAは扶桑空軍少佐であるので、陸軍では大隊指揮官相当の職責を担える。その都合もあり、仕事では将校という立場相応の凛々しい口調を用いる。
「武装親衛隊の降下猟兵は……やはり、あの部隊でしょうか、ドリーム」
キュアエースがそれを指摘する。武装親衛隊の降下猟兵(空挺兵)は二つの部隊しか編成されておらず、空軍の降下猟兵と混合で運用するあたり、大ショッカーの組織としての台所事情が窺える。
「うん。第500SS降下猟兵大隊と第600SS降下猟兵大隊の生き残りでも集めたか、戦後にヒトラー・ユーゲントの連中を訓練させたか……。どっちみち、並の練度じゃないね。先輩が第一空挺団から人員を引っ張っておいたのも分かるよ」
「専門用語を羅列しないでよ、のぞみ」
「要するに、パラシュート連隊ってのはね、精鋭部隊ってこと。狙いはあたし達だね。だけど、街丸ごとを封鎖できるほどの部隊を運ぶなんて、Me323を複数用いる必要が…」
そこが謎であった。キュアドリームAの言うように、Me323『ギガント』のようなものを用いない限りはナチス・ドイツはエアボーン作戦を隠密に大規模で実行は不能のはずだからだ。
「みんな、だいじょう……!?」
「あ、くるみ」
「!?★※の、の、のぞみが……二人!?」
「あ、向こうの私だよ、くるみ。本当はりんちゃんたちを迎えに来たんだけど…」
「事態が事態なので、私たちが対応策を練りますわ。私達は自衛官に準ずる仕事に就いていますので」
キュアエースが会釈しながら言う。
「自衛隊の人が歩哨に立ってたから、わかったわ。だけど、自衛隊は昔の軍隊みたいに、独自に動けた?」
「私たちの指揮下にある部隊は三自衛隊から人員と装備を抽出したある種の『特殊部隊』なのです」
「有事即応のね。」
「私達は『組織』への対応は世界を超えても許されています。とは言え、当たり前ですが、秘密裏に動かなければなりません」
「万一、外部の人間に見られても、あたし達だったら、ごまかしは効くからね。そこんとこが辛いところだね」
「それじゃ、あなた達は本当に?」
「ガチで戦闘訓練受けてるよ。ただし、普段住んでる世界の都合で、昔の軍隊式の階級で呼ばれてるけどね」
キュアドリームAは虚実入り交じる説明をする。自分のことは以前に簡単に説明はしているし、Gフォースの事は説明がややこしすぎるからだ。また、のぞみが高度な軍事教育を前提にした地位(高級将校)にいる事も世界による違いを考慮しても、驚きが大きいものだ。
「増援は?」
「準備が完了次第とのことですわ」
「よし、ひとまずはここらへんに戦線を敷こう。とはいっても、今いるのは一個大隊程度だけど」
「敵の航空装備は?」
「不明ですわ。メッサーシュミットやフォッケでは勝負にならないことはわかってると思われ、旧・ソ連や東ドイツの装備をちょろまかしている可能性も…」
「そうなると、相応の準備が必要だね…」
「増援に戦闘空母を要請しますか?」
「そうだね。念には念を入れとこう」
ものすごい会話に唖然となる美々野くるみB。こちらは(当たり前だが)妖精の姿を持つ『パルミエ人』である。
「あなた達、どうして変身を解かないの?」
「私は元々、現役時代は小学生でしたし」
「あたしは半分、仕事着みたいな感じになっちゃってね。それに、変身解いたらさ、そっちのあたしと区別つかないよ?服装以外だと」
「うーん……」
キュアドリームAの口調などは変化がないように見える。だが、実際にはZEROとの融合による完全な『Gウィッチ化』したためと、既に『社会に出て働いている』事もあってか、Bより遥かに精神的に落ち着いている様子も出している。Bが年齢相応のあどけなさを感じさせるのに対し、Aは仕事でのオンオフが身についている『大人』である。変身を解かないのも、その『スイッチ代わりにしているから』だということを悟ったくるみBであった。
「彼らは?」
「他のみんなを助けてるそうですわ。直に来るかと」
「今のところ、敵は学園の制圧を優先してるようだ」
「あ、のび太くん」
「ドリーム、この人は?」
「うーん……。ココが転生した先の世界での義理のお父さん。つまり……」
「え、す、すると何!?この人は……ココさまとあなたの……」
「そ。戸籍上は嫁入り先のお父さんになるね」
「え~~!?ココのお父さん!?……嘘だぁ、だって、この人……、どう見てもさ、20代だよ」
「こう見えても、妻子持ちの30代なんだ、僕」
「え~~!?」
デザリアム戦役後に行動を共にしているのび太は30代を迎えた頃の時間軸の人間である。既にノビスケを儲けた後で、実年齢も30代前半であるが、童顔なのもあり、外見上は20代の頃から変化は殆どない。
「RXさんからの連絡で、この世界のうららちゃんを保護したそうな。アクロバッターで敵中突破するそうだよ」
「わーお。過激だなぁ」
「他の仮面ライダーにも連絡を入れた。何人かが動けるって」
「そりゃ良かった」
「連中はどういうつもりだろうね。こんなところに武装親衛隊と降下猟兵を出すなんて。警察も碌なのいなさそうなのに。この街」
プリキュア5が現役時代に住んでいた街は西洋風の街並みが特徴だが、実は首都圏からそれほど離れていない郊外にある。意外に街の規模は大きく、戦前期には華族の保養地だったという。その名残りなのか、治安の良い街とされており、重装備が必要な犯罪を現地の警察はあまり想定されていないという。
「あたし達が抵抗するのを想定したんじゃないかなぁ。警察は暴徒鎮圧は出来ても、軍隊を相手どって戦える装備はないから」
降下猟兵や武装親衛隊の装備は第二次世界大戦の残党の通り、あくまで当時の水準だが、当時の目で見れば最先端に近い。携行武装はStG44、Gewehr43、MP40などの1943年以降の陸軍制式装備だと、のび太が報告を入れる。降下猟兵としては最高レベルだ。
「SATも暴徒鎮圧目的の部隊さ。暴徒鎮圧はできても、武装組織との正面切っての戦闘は想定外だからね。この世界の自衛隊は死傷者を恐れる連中のせいで出動しないだろうから、この世界の治安組織はあてにしないほうが良いね」
ナチス・ドイツの時代から60年が経過済みのこの時代、『ナチス・ドイツ残党の襲撃』など絵空事ととられるだろう。街にとってはのっぴきならない出来事でも、ナチス・ドイツをわざわざ模したテロを起こす必要性はないからだ。
「君たちに支給する銃は僕が預かって、ここに持ち込んであるよ。ケイさんが使えってさ」
「先輩のことだから、ベレッタでしょ?」
「あれは総じて、扱いやすいからね。それにさ、軍の制式のは不評だろ?確か」
「うん。将校用の九四式拳銃は精度がいい加減なんだよね。事変挟んだのもあって、粗製乱造だし。かといって、十四年式拳銃は古臭いし」
扶桑皇国は史実の日本軍同様の銃を自主開発していたが、製造中に事変を挟んだこと、圭子を嚆矢として、外国産の拳銃を買うことが将校の間でトレンドになったため、殆どは倉庫で死蔵されていた。九四式は戦後の自衛隊から見れば『稚拙な設計の粗悪品』でしかないため、流通再開は差し止められており、結局はベレッタ系などが将校たちの間で流行する流れとなった。日本が大量に制式拳銃である『P220』を供与しだしたのは、『戦前日本型の拳銃の日本連邦軍からの排除と使用弾薬の統一が目的である』というのが、自衛隊の言い分だ。
「それと、軍刀も用意してあるから、好きに使いな」
「OK」
「何よ、その会話」
「こっちの世界での仕事上の都合で、銃は使うからね。それと、時代が時代だから、軍刀を持ってないと外聞的に都合悪いんだ」
「あなたはどこの時代で仕事してんのよ」
「え、もうじき1950年になる頃だけど、その世界はまだ戦時が続いてるんだよねぇ」
その点では、どことなく疲れている感じのキュアドリームA。自分が普段いる世界が1950年代を迎えようとしているのに、戦時の真っ只中であることはうんざり気味らしい。錦時代も含めれば、ほぼ十年も戦争をしてきてるからだろう。
「どうして、軍隊にいるのよ」
「魔力が発現したからさ。魔法使いになると、うちの世界はもれなく軍隊行きでね。前世の記憶が覚醒めて、プリキュアに戻ったのはつい最近さ。それまでは当然、別人として生きてきたからね。姿もまったく違ってた。なんて言おうか……そう。夢原のぞみの姿に戻ったのは、プリキュアの記憶が復活してからだよ、くるみ」
キュアドリームAはそこがややこしい。別人としての人生を歩んでいたのが、プリキュアの記憶の覚醒で前世の姿になった。黒江達も『そういうパターンはお前が始めてだ』と述べるなど、Gウィッチに転生者としての意味合いが加えられた最大の要因が彼女である。
「だから、ここのあたしに拗ねられたのさ。目指してたのとは、まったく別の商売してる身だしね。説明はしたんだけどさ」
「もしかして、軍隊にいるのは」
「半分はその名残り。もちろん、転職しようとはしたんだけどね。あたしの世界、彼の世界と交流があるから、色々なしがらみで転職出来なくてね。軍隊を続ける事になったんだ」
「そういう事」
苦笑いののび太。のぞみAは転職しようとしたが、『軍隊からの直接の転職』を嫌うのび太の世界の文部科学省の妨害工作と交渉の末に決裂。山下奉文大将が抗議に文部科学省を訪れるに至った。結果、のぞみAは転職を諦め、職業軍人で居続ける事になった。1949年当時の戸籍上の年齢は(錦のものを引き継いだのもあり)21歳前後だが、『夢原のぞみ』としての軍籍も1946年前後に新規で作られているので、そちらでは書類上は10代とされている。
「当たり前だけど、途中まで別人として生きてたから、運動神経は別物になったわけ」
「あたしは死んだら、そのまま別の世界に送られて、目が覚めたら昔の姿に若返ってたパターンね。この子の願いで引き寄せられたって奴」
「なんとかの一念、岩をも通すとは、よくいったものね…」
りんAも続く。くるみBはそれだけ言うのが精一杯。のぞみBは目の前の青年が自分の養父にあたる人物ということで、その衝撃でまだ固まっている。
「戦車の整備、終わったよー」
「ご苦労さん。ここに来るまでに何回か発砲したね?」
「うん。パンターが来たから、ぶち抜いてやったよ~。でもさ、ドイツ戦車の整備、手間かかるんだけど」
「仕方ないさ。21世紀の技術で多少は重量が軽くはなったけど、現地の都合もあるからね」
レーヴェは戦闘力は第二次世界大戦レベルの重戦車では最強クラスに高いが、整備に一手間がかかるという点が問題である。だが、史実のケーニッヒティーガーよりは遥かにマシであり、ティーガー系統の淘汰を目指す重戦車としては合格点であると言える。キュアハート/相田マナは逸見エリカとして、ドイツ戦車乗りであるのだが、手間がかかることは度々、愚痴っている。仕方ないが、ドイツ戦車の難点は『機構が精巧すぎて、戦闘力に比例して故障も多く、前線の整備兵の手を煩わせる』ところで、そこがモータリゼーションが40年代の時点で完了し、兵器稼働率を兵の命よりも優先していた米国のM4などとの『見えない』戦力価値の差であった。
「そういえば、あの戦車、どこの戦車よ」
「うーん。別の世界のドイツで使われだした重戦車としか。(ティーガーとは別ラインだし、あれ。)それを持ち込んだわけ」
りんBの疑問にキュアハートが答える。レーヴェはケーニッヒティーガーの後継だが、車体に共通の部品が使われている以外に設計の共通点はない。ただし、基本デザインそのものはケーニッヒティーガーから大きな変化はない。(戦車の基本デザインは第二次世界大戦で完成されたため、その後はあまり変化がない)史実では構成部材すら完成されずじまいであったので、その希少性から、米国の戦争博物館などが引き取る案もあるほどであった。ダイ・アナザー・デイで、『性能証明のため』に先行生産車が使用され、一定の戦果を挙げた。カールスラント陸軍はそれを受けて、量産を決議していたが、ドイツ連邦共和国側が『車体重量への懸念、徹甲弾技術の進歩による装甲の陳腐化の懸念』を理由にレーヴェの量産を諦め、『戦後世代の戦車であるレオパルト1戦車を量産すべき』とし、その指針を通告したことで、ついにカールスラント軍のドイツ連邦共和国への不満が爆発。ノイエ・カールスラントは内乱となった。NATO軍は内乱をその圧倒的軍事力で鎮めつつ、『現地への救済措置くらい行え』とドイツ連邦共和国に外交ルートで勧告。日本連邦からも、同位国への強権的な姿勢を非難された。ドイツ連邦共和国もNATOでの地位の喪失を恐れ、NATO軍の勧告を最終的に容認。レーヴェは制式に『Ⅶ号重戦車』の型式で量産に入った。だが、その頃には火力で凌駕する戦後世代の重戦車たる『コンカラー』や『ファイティングモンスター』(ウィッチ世界では、21世紀からの逆輸入で、M103重戦車に名付けられた)が既にキングス・ユニオン、自由リベリオン軍に登場済みであり、性能面で(特に火力)格落ち感は否めなかったのだが。
「ドイツって、なんで、ドイツなのよ。日本やアメリカ、イギリスじゃないの?」
「割合、持ち込みやすかったからだよ。アメリカやイギリス製の重戦車はお役所的意味で管理が厳しいからね」
「お役所ねぇ…」
キュアハートもいうように、ダイ・アナザー・デイの折に前線部隊が独断で車両を買い込んだ事を日本防衛省は問題視したが、現地のやむなき事情ということで有耶無耶になった。その反省なのか、その後は装備管理を厳しくしようとしたが、太平洋戦争で弊害を露呈している。軍事援助の一環という形で装備の提供が公認化されたためだ。防衛省も有事に対応できずに後手後手の対応であったわけだ。
「報告します。敵は学園の制圧に成功。学園にナチスの国旗が翻りました」
別の自衛官が報告する。それを受けて、A世界の者たちは気を引き締める。
「時代錯誤的ね……今は21世紀でしょうに」
「教職員や学生たちは体育館や講堂に集められております。殺すつもりはなさそうですが、奴らのやり口ですな」
「そこを収容所に使うつもりだな。やれやれ。やること派手だね、ナチは」
「仮面ライダーBLACKRXからの連絡によれば、敵の指揮官はゾル大佐とのことです」
「ゾル大佐か……。ナチ出身の大幹部だし、妥当だね」
「うん。生え抜きだしね、奴は」
ゾル大佐。かつて、仮面ライダー二号と死闘を繰り広げ、倒されたショッカー大幹部であり、生え抜きのナチス・ドイツ軍人であった。第二次世界大戦では連隊指揮官であったが、気質の残虐さから、武装親衛隊隊員の疑惑も持たれている。生え抜きのナチス・ドイツ軍人であるので、帝政ロシア将官であったブラック将軍より部下からの人気がある。蘇生後は度々、64Fと交戦しており、プリキュアオールスターズを『小うるさい小娘ども』と呼んで憚らない。
「たしか……、奴の変身体は黄金狼男だったね」
「うん。強いよ、奴は。この世界ののぞみちゃん達の攻撃はたぶん……通じないかも」
キュアハートはそう断言する。仮面ライダー二号の好敵手であり、大決戦ではパワーアップの影響か、歴代プリキュアの必殺技の尽くを耐え抜くほどの堅牢な装甲を有し、黒江がドリームの姿で試した『プリキュア・シューティングスター』を真っ向から弾き返している事を口にする。
「そいつは私達の技を耐え抜いたの…!?」
「ああ。それも決め技レベルの大技を尽くね。初代、S☆S、君たち、フレッシュ、ハートキャッチ……」
「嘘……私達の全力を…?」
のび太のその一言を聞いたのぞみBが青ざめる。
「あの時、奴はプリキュアオールスターズの最強技の連続攻撃を寄せ付けず、撃退するには仮面ライダー達の力が必要だった。皆、青ざめてたよ。歴代プリキュア達の最強技が連続で放たれて、確かに直撃したのにも関わず、奴は無傷で立ってたからね。それを受けて、ライダー達が必殺技を食らわせて……」
歴代プリキュアの最強技の連続攻撃。地形を変えるほどの破壊力を有するが、パワーソースの弱体化による基礎パワーの低下もあり、想定以下のパワーしか発揮できずじまいであったために黄金狼男に通じず、プリキュアオールスターズを絶望させたが、仮面ライダー達が間髪入れずに必殺技(卍キック、超電子イナズマキック、ZXイナズマキック、電光ライダーキック、リボルクラッシュ)を食らわせたことで撃退に成功したと、のび太が話す。
「それじゃ、私達の力じゃ戦えないんですか!?」
「落ち着いて。君たちのパワーソースが万全の状態なら、戦えはするはずだよ」
「うん。レインボージュエルが万全の状態であれば、ね」
キュアドリームAも肯定する。第一世代プリキュアたちは元来、共通のパワーソースを持っていた。『レインボージュエル』がそれにあたる。DX2の戦いはそれを侵されるイレギュラーなケースであり、万全な状態であれば、歴代仮面ライダーに劣らない戦闘能力は担保できるはずだと。とはいうものの、『経験値の差』でどうしても基礎戦闘力に差は生ずるが。
(あなた、あなた自身を元気づけるために?)
(ま、自分自身が拗ねたり、落ち込んでるのを第三者視点で見せられるのは変だけど、なんてつーか…、見たくないからさ。嘘は言ってないよ、嘘はね)
(変わったわね)
(こう見えても、大人の世界を見てきたからね)
キュアドリームAは美々野くるみBにそう耳打ちする。くるみBはこうした点で二人ののぞみにある違いの一つである『精神年齢の差』を実感するのだった。