ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きで、「プリキュア5の世界」編です。


第二百七話「翻るナチス鉤十字。Gフォースの反攻準備」

――大ショッカーは「プリキュア5の世界」に進出。降下猟兵による空挺降下という大胆なエアボーン作戦も重なり、瞬く間に彼女たちの通っていた『サンクルミエール学園』は鉤十字の翻る司令部と化した。これはプリキュアの存在を知ったことで、その支流の世界を抑える狙いがあっての事であった。A世界ののぞみは実質的に反抗作戦を指揮する事になった。かつてとは異なる立場(空軍将校)もあるが、大ショッカーと正面切って渡り合える戦闘力を持つプリキュアはA世界のプリキュアのみだからだ――

 

「反攻作戦の指揮を執れ、か。ガラじゃないんだけどな」

 

「軍隊階級的に、あなたが一番上だからですよ。ダブルエックスは定期オーバーホール中だそうですが、サナリィとアナハイムが『発送遅延のお詫び』にV2をもう一機多めに送ったそうで、その一機をこちらに回すと。アサルトバスター装備で」

 

「アナハイムとサナリィも気を効かせたようだね」

 

「ネットショッピングみたいな話だなぁ」

 

「明日には、ミデアで届けられるそうな」

 

「やっとできたのかぁ。でも、なんで二機?」

 

「パーツを新造する都合で、二機作ったほうが良かったんだとさ」

 

「なるほどねぇ。敵がMS持ち出しても、大丈夫なようにって計らい?」

 

「そういう事だね。使わないに越した事はないけど」

 

「言えてる」

 

ナッツハウスはすっかり、作戦会議のための詰所と化していた。忙しなく施設科と輸送科の自衛官が行き交い、周りに『それらしい』プレハブの建物を建て始める。

 

「あれ、ココとナッツは?」

 

「避難してもらったよ。直に、ここはドンパチで賑やかになるからね」

 

「向こうがナチス・ドイツなら、こっちも相応に準備しないとね」

 

「避難って、どこに?」

 

「壁紙格納庫の中さ。僕の名前でピンと来ないかい?のび太ってさ」

 

「……え、えぇーーーッ!?」

 

のび太が久しぶりに壁紙格納庫を壁に貼っていた。B世界にいるプリキュア5の妖精であるココとナッツを避難させるためだ。それと、自身の名が『のび太』である事をのぞみBに告げる。すると、のぞみBが合点がいったらしく、素っ頓狂な声をあげた。のび太が壁紙格納庫を『スペアポケット』から取り出したのを実物で示したので、幼少期にアニメを見ていたのぞみBはピンときたのだ。語尾が震えだす。

 

「じ、じゃ、あなたはまさか……!?」

 

「君にとっては驚くかもしれないね。野比のび太……そういえば、分かるかい?」

 

「う、嘘ぉぉぉぉ~~!?じ、じゃ、あなたは…」

 

「ココがのび太君の養子で、あたしはそのココと結婚した。つまり、のび太君ちに嫁入りしたって事」

 

「どっひゃああああああ!?」

 

またも素っ頓狂な声を上げるのぞみB。そして。

 

「おーい。のび太く~ん」

 

「ドラえもん、そっちの作業は終わったかい?」

 

「だいたいね」

 

のぞみBが驚いた原因の張本人が現れた。のび太が応援を頼んだのだ。設営にはドラえもんの力が不可欠だからである。のぞみ達の世代(1992年前後の生まれ)はリアルタイムで見れているかは微妙だが、往年の愛くるしいどら声を発するドラえもんはのぞみBを仰天させ、りんBをも唖然とさせた。やっていることは本気の戦闘準備だが。

 

「子どもたちに武器は渡す?」

 

「いつものアレでいいかな?」

 

「実弾は僕たちしか扱えないしね」

 

ドラえもんは毎度お馴染みな『ショックガン』と『空気砲』をテーブルに置く。ドラえもんの時代でのみ製造・流通していたひみつ道具の一つだ。22世紀前半の『ひみつ道具時代』においては『子供でも買える護身具』扱いだが、後の世においては、何らかの理由で製造されていない。

 

「わぁ~。ショックガンに空気砲だ~」

 

「本物……ですよね」

 

「うん。一応、撃退できる程度のパワーはあるからね。奴らは君たちのパワーじゃ倒しきれない。撃退する事だけを考えるんだ。」

 

「私達の力じゃ無理なの?」

 

「うん。奴らはある程度の自己再生能力がある。それを上回るパワーで粉砕しなければならない。それは君たちの力じゃ無理だよ」

 

ドラえもんは戦闘では冷静な側面を見せる。現役時代相当のプリキュア5の力では『大ショッカーに正面からの対抗は難しい』と面と向かって断言した。

 

 

「奴らには情け容赦は無用だよ。特に武装親衛隊のならず者共にはね」

 

ドラえもんは武装親衛隊を『ならず者共』と表現する。その事からも、ドイツ国防軍は正規軍であるので、一定の騎士道精神が残っている(国家の正規軍だから、当然だが)と見なされていても、武装親衛隊は『虐殺、人体実験、捕虜虐待』も悪魔のように平然と行う『ならず者』であると断じられているのがわかる。とはいえ、通常部隊より有力な装備を持つ場合も多いのが難敵とされる理由である。この組織と皇室親衛隊(カールスラント)が同一視され、強引に解体を進めようとした事がカールスラントの混乱の原因である。

 

「武装親衛隊は有力な装備が回される事が多かったから、強敵だよ」

 

「正面切っての戦闘はあたし達が引き受けるよ。奴らの中には怪人になれるのが混じってるはずだから。それと戦うために鍛えてきたからね」

 

「敵の装備が機甲装備で済むなら、こっちの戦車でどうにかなりますからね」

 

「あ、レモネード」

 

「正確に言えば、この世界の私自身じゃありませんけどね」

 

苦笑するキュアレモネードA。レーヴェの砲手は彼女だったからだ。

 

「変身して乗ってたの、あんた!?」

 

驚くりんB。

 

「そのほうが体力の消耗は抑えられますからね。生まれ変わった先の世界の都合で、戦車には乗りなれてますから」

 

「何よそれ!?」

 

「説明がややこしいんですよ、りんさん」

 

「そこが難点なんだ、あたしたち。バラバラの世界に生まれ変わってたから」

 

キュアドリームAもその点については説明が難しくなるので、苦笑交じりである。更に言えば、生まれ変わる前の世界もバラバラであるのも、A世界のプリキュア5の特徴である。一つだけ共通しているのは『二つの組織と戦ってきた』ことのみ。のぞみAは職業軍人に生まれ変わったことで、生前の短所のいくつか(方向音痴、自炊できない、超弩級のドジ)が職業上の都合で解消、あるいは緩和されているので、Bとの間には顕著な違いがある。

 

 

「詳しい説明は後でするよ。今は事態が切迫してるからね」

 

「ん、ドリーム、外を見てください!」

 

「あ、あれは……ツェッペリン飛行船!?大仰なものを持ち込みやがったな!しかも武装化されてるぞ」

 

ナッツハウスの外に出たキュアドリームAとキュアレモネードAはそれが何であるか知っていた。ツェッペリン飛行船だ。ナチス・ドイツが軍用に改装し、空中戦艦のように運用している個体の存在が当時の機密書類には示されていたが、その実物を使って兵士と物資を運搬したかと唸る。

 

「奴ら、M粒子とアクティブステルスでも使ったのか?そうでないと、あんな分かりやすいのが在日米軍や自衛隊のレーダーサイトに引っかからないはずがないぞ?」

 

「映画撮影とか言って、上手く誤魔化して飛んでるって手もありますよ」

 

「そこまでするか?普通」

 

悠然と飛行して、上空を通過するツェッペリン飛行船。ハーケンクロイツを掲げているが、武装を収容し、映画撮影であるかのように『あまりに堂々と去っていく。

 

「な、何あれ!?」

 

「ツェッペリン飛行船の生き残りだよ。ヒンデンブルク号の親戚だよ」

 

「何それ」

 

「ちゃー……そこだったか」

 

呆れて物が言えないと言わんばかりのキュアドリームA。自分が若き頃に如何に無知だったかを客観的に見せられたせいか、余計にため息らしく、ド派手にずっこける。

 

「りんちゃんの気持ち、わかった気がする……。参るなぁ、これ」

 

「もー、呆れないで説明してよー!それと、あなたもわたし自身なのに、何よその言い方ー!」

 

「ごめんごめん。これでも、元・教師だからさ、一応」

 

膨れるのぞみB。キュアドリームAは自分自身が如何にドジだったかを、客観的な視点で見せられることで再認識したわけだ。

 

 

「いい?戦前のドイツにヒンデンブルク号って飛行船があって、それが事故ったのは有名じゃん?」

 

「うん」

 

「今のはその生き残りか、親戚にあれこれ改造を加えたものだって事。しかも戦車や潜水艦も運べるくらいのね。連中はあれからパラシュートで降りてきたんだろうね。白昼堂々と……」

 

飛行船というのにも、あまりに巨大な『それ』が敵が空挺降下作戦を白昼堂々、実行できた理由であることを悟ったキュアドリームA。

 

「今、降りてきてる連中は第一陣でしょうね。完全編成の戦闘団は最低でも、連隊規模でしょうし」

 

「強敵だな…。ナチの陸上装備は第二次世界大戦当時としちゃ最先端に近かったから」

 

「ええ。それに、狙撃ライフルの精度も高かったですし、侮れませんよ」

 

キュアレモネードAも続く。学園を制圧するナチス・ドイツ残党軍の装備は二次大戦後の軍隊の装備体系の原型と言えるものが多い。それらが戦後に完成されたとすれば?はっきりいって、強敵である。

 

「とはいえ、全ては準備が整ってからだね」

 

「明日以降ですね。この世界の私や、かれんさんとこまちさんの分身体は?」

 

 

「仮面ライダーたちが保護したって。問題は奴らがどんな兵器を持ち込んだか、だね」

 

「マウスやラーテは運べないでしょうし、普通の戦車や航空機でしょうね。今更、大戦中のメッサーシュミットやフォッケを持ち出したところで、こっちのスコアの肥やしになることはわかってるはずですから……」

 

「ミグやスホーイの可能性は高いな」

 

「ロシアには意外にドイツ系の科学者とかが捕まったとか聞きますからね。それに旧ソ連も一枚岩じゃないし、意外に流してたかも」

 

「ロシアのは、西側諸国より安いからな」

 

ドリームAの口調は仕事モードに入ると、錦寄りのサバサバしたものになる。これはデザリアム戦役で人格の統合が進んだためである。

 

「ん、ああ。わかった」

 

「どうしたの、ドラえもん君」

 

「今回新造されたV2のミノフスキードライブの出どころがわかった。サイド2がザンスカール帝国を解体した時に製造されてたモノを回したそうだよ」

 

「まさか、噂のザンスパイン用?」

 

「たぶん。三基も積むはずだったって言うから、パワーに耐えられるフレームの製造とかに手間取ったんじゃない?それで未完成に終わったんだろうし。V2だって、ガンダリウム合金の強度を上げないと、『モノにならなかった』んだし」

 

ザンスパイン。実機の建造については不明である『ザンスカール帝国の次期フラッグシップ機』である。V2ガンダムがあまりに強すぎたため、それに対抗可能な機体ということで製造予定だったもので、予定パイロットはファラ・グリフォン、あるいはカテジナ・ルースであったと伝えられている。とはいえ、ミノフスキードライブのパワーに耐えられるMS用のムーバブルフレームはかなりの強度を要求するため、ザンスカール帝国と言えど、苦戦を強いられ、手間取っているうちに帝国が終焉を迎えたわけだ。

 

「そうか、思いがけずに良質なミノフスキードライブが得られたから、それでV2のガワを作ったわけか」

 

「そういう事だね。連邦政府はミノフスキードライブの製造を渋ってるから。アナハイムはようやく、F91を完全に模倣できたとか言って喜んでるけどね」

 

「ああ、例のセンチュリーガンダム」

 

「たぶん、ウチに納入されるかもよ。ネオの後継機だけど、F91とネオの間の子みたいな特性になったそうな?」

 

「どういう事?」

 

「連邦軍の要求仕様が『ネオの火力とF91の機動力を併せ持つ』だからだよ」

 

ドラえもんの言う『センチュリーガンダム』とは、アナハイムがシルエットフォーミュラを反映し、より洗練させた特性を持たせる目的で進めていた計画の完成形であった。途中に軍縮による中断を挟んだ後、ミドルサイズに機体サイズを改正するなどの変更を経て完成を見た。外見と武装は『F91とネオの特徴を併せ持つガンダム』であるのだが、ミノフスキー・ドライブ機ではないので、機動力ではV2には及ばないが、火力は完全に上回っているので、『変形を取っ払って小型化されたZZガンダム』との評価がある。これは核融合炉も第三世代の技術による反応炉に進化したためだ。ちょうど、デザリアム戦役の直後は動力源の発展による技術の世代交代期でもあったため、センチュリーガンダムも単なる『F91の最大稼働の模倣』ではないガンダムになれたわけだ。

 

「それと抱き合わせになりそうよ」

 

「実戦テストのいい機会って奴ですね。アナハイムもあくどいですね」

 

「あそこも、中々にあこぎだからなぁ」

 

「おーい、なんの話なのさー?」

 

「なーに、明日になれば分かるよ」

 

と、首をかしげるのぞみBに対し、ドラえもんは上手くはぐらかす。その間に、プリキュア5の他のメンバー達が歴代仮面ライダー達に連れられてやってきたが、ナッツハウスが軍隊の駐屯所のような様相になっている事に例外なく、腰を抜かしていた。こうして、一同はナッツハウスで一夜を明かす事になり、その日は平穏に終えられた。

 

 

 

 

 

――その翌日――

 

「援軍が来たようだね」

 

「って、何あれ!?」

 

「先輩たちも、ド派手なの持ち込んできたなぁ」

 

「ブラックグレート、ゲッターノワールG…。乗ってるのはたぶん……」

 

「ああ、間違いないね」

 

ミデアが飛来したのだが、その護衛機が凄まじく豪華であった。ブラックグレートとゲッターノワールGのゲットマシンである。

 

「あなた達、いったいなんなんですか!?」

 

「そうだね、強いていうなら、『通りすがりの正義の味方』かな?それも軍隊規模の」

 

のび太がうららBに言う。それを他所に、垂直着陸を行うミデア。ドラえもんが用意した壁紙格納庫の巨大版のハッチが開き、そこに収容されていく。ゲッターノワールGのゲットマシンとブラックグレートは護衛も任務の内なので、その近くの地面に着陸する。

 

「よっと。……よう、お前ら」

 

「先輩達、わざわざ来たんですか」

 

「武子がお前に指揮をさせるのを心配してな。それであたしらを寄越した」

 

「一応、今日は戦闘服なんですね」

 

「武子の命令なんだよ」

 

巫女装束と小具足は扶桑陸軍航空ウィッチの戦闘服として定められていた。空軍への移行後も陸軍出身の古参兵と将校は好んで用いている他、空軍の組織の大まかな母体が陸軍飛行戦隊である事から、部隊によっては引き続き、着用義務を定めている。64Fにはその規則はないが、圭子の普段着がタンクトップとホットパンツという『青少年の教育に大変によろしくない』ものであるので、武子が着させたと不満げに語る圭子。

 

「ガキ共の教育によろしくないってぬかしやがってなー。……ったく」

 

「先輩、思いっきりアウトロー的な格好ですからね、普段。軍人には見えないし」

 

「ケイさんはこんな調子でなー。困るぜ」

 

「オッス、響」

 

「そっちのお前と会うのは、今回が初めてだっけ」

 

「たぶん」

 

「あれ、響さんじゃないですか?」

 

「よっ。ここの世界だと…、久しぶりになるか、うらら?」

 

「え、それじゃ……響さんも?」

 

「そうだ。あれがここののぞみだな?」

 

「あれ、ひと目で分かるんですね」

 

「分かるよ。昔通りのアホ面だしな」

 

「あ、アホ面……」

 

「事実だろ?」

 

 

北条響(シャーリー)はガサツになっているのと、のぞみとは半ば腐れ縁のような関係で面倒を見てきたので、言うことがキツイ。うららBは『アホ面』という単語に面食らってしまう。

 

「響ちゃん?久しぶ……って、どうしたの、その格好。なんで、アメリカ軍の軍服なんて着てるのー?」

 

「別のお前自身と同じ世界にいたからだ。生まれ変わった先が米国だったんだよ。お前の知る北条響じゃねぇってこった」

 

姿は北条響のものにしているが、服装はシャーリーとしての軍服(階級は少佐のもの)であるので、A世界での北条響である事を強調しているシャーリー。

 

 

「それじゃ、あんた、別にアメリカ式の名前を?」

 

「シャーロット・E・イェーガー。それが生まれ変わった先での名前さ。米国の片田舎から都会に出てきて、レーサーしてたけど、軍に入ってさ、将校してる」

 

シャーリーはレーサーとして高名でありながら、魔力発現を親への大義名分にして、軍に志願。1949年時点では少佐に昇進していた。自由リベリオン軍のシンボル扱いだが、北条響名義での活動もしだしている。後年の退役後に歌手へ更に転じたのは、訓練で『食べていけるだけの歌唱力』が身についたからだ。

 

「そういえば、響。あんた、あの時……」

 

「ああ。あたしだよ、りん。だから、打ち上げの時に歌ったろ?」

 

「あの時、うららが拗ねてたもの」

 

「その戦いでのライブを見たのは、私ですけどね。それでも衝撃受けましたよ」

 

大決戦に参加した、あるいはその話を後から聞いた者の間で伝説的に広まっていた『のぞみと響のワンマンライブ』。うららAも衝撃を受けたと語り、のぞみBとりんBの世界には、りん、かれん、こまち、くるみの四名からの伝聞で伝わった。元々、うららは本業として、現地(フェアリーパーク)の宣伝を行う手筈であったので、ライブを元々予定していたが、戦闘での疲労でそれどころではなくなったので、シャーリーと黒江(その時はのぞみと入れ替わっていた)が代わりに行った。シャーリーは『本当はこの一年後のデビュー(スイートプリキュアの初陣はその翌年のはずであった)なんだけどなぁ』とぼやきつつも、ライブはきっちりこなした。うららのマネージャーであった鷲尾プロデューサー曰く、『今すぐスカウトしたい』と漏らすほどのクオリティで。シャーリーはダイ・アナザー・デイ以降、『美雲・ギンヌメールの影武者』を副収入にしており、(黒江による猛訓練の成果も大きい)歌唱力も『サウンドエナジーが可視化するレベル』に達していた。後年にレーサーではなく、歌手として第二の人生を歩んでいく事の伏線はこの時期に醸成されていたと言える。(本来はピアニストだったので、その分、その翌年で初陣であった『別の世界の北条響』がえらい目にあったという)

 

「敵と戦うには、まだ時間がかかる。暇つぶしにその映像見てみるか?のび太、映像は録画してあるな?」

 

「うん。ドラミちゃんに頼んで、画質調整してもらったけどね」

 

「え、いいんですか?」

 

「近代以降の戦争ってのは、相応に準備が必要なんだよ。戦国時代の戦でも、それなりに物資の備蓄がないと、戦えなかったろ?奴らもこっちの反撃を予想して、しばらくは動けん。近代軍隊には物資が重要なんだよ、特に装備がある程度になった時代以降は」

 

戦争というものはそうである。徳川家康にしろ、最盛期の豊臣秀吉にしろ、織田信長にしろ、相応に準備して戦に臨んでいる。兵站の真髄を理解していなかったのは、昭和期の日本軍だけである。(その認識が扶桑軍参謀の人事的意味での二度の粛清に繋がり、扶桑は太平洋戦争で『生え抜きの参謀の不足』に悩む羽目に陥ったのだが)

 

 

「施設科と輸送科、需品科、武器科の連中から報告がくるだろう。設営が終わらんことには、こちらも動きが取れんからな」

 

Gフォースは基本的に扶桑・地球連邦・日本の三者の資本で運営されている。21世紀では三自衛隊の外征用の統合部隊扱いである都合もあり、兵站部門は施設科と輸送科、需品科などに分けられている。(事実上の後身でもある)地球連邦軍の援助もあり、Gフォースはダイ・アナザー・デイを経た太平洋戦争で、その存在価値が日本政府にもようやく認識されるに至る。『黒江の息がかかった者の放り込み所』ということで軽視されていたが、『自衛隊本体を無理に動さずとも、自衛隊の存在感を扶桑に強く示せる』という重要な政治的利点がクローズアップされたのだ。

 

「あ、紹介が遅れたね。加東圭子さん。あたし達の部隊の上官。兵隊やくざだから、軍人に見えないけど」

 

「兵隊やくざは余計だ。と、いうことでよろしく頼む」

 

圭子は振る舞いや荒々しい口調で、プリキュア達からも既に『兵隊やくざ』と認識されている。この時には既に将官になっているのだが、やっていることは若き日の尉官時代とそれほど変わっていない。キュアドリームを怒らないのは、自覚があるからでもある。顔立ちは素でも整っているが、転生前と比べると、目つきが悪くなっていたり、やさぐれな雰囲気を醸し出している。1949年当時は扶桑での戸籍上で30歳を迎える。なんだかんだで、ウィッチとして長い軍歴を誇る古参に分類される。

 

「隊長から言付けは?」

 

「連中を生かして返すな、だそうだ。今回は武装SSが相手だからな」

 

「んじゃ、火器は使い放題……」

 

「敷島のジジイが送ってきた、物騒なのがたんまりあるぞ」

 

「あのジイさん、まだ作ってんすか?」

 

「余計にぶっ飛んできたぞ」

 

キュアドリームAがあからさまに辟易するほどの敷島博士の兵器開発のぶっ飛び加減。語尾も変わるほどであるので、如何に敷島博士がぶっ飛んだ博士なのが分かる。圭子をして『物騒』と言わしめるのだから。

 

「ホー、このしょんべんクセェガキが現役時代ん時のお前か?」

 

「文字通りにピチピチの14歳ですよ、先輩」

 

「んじゃ、あたしから見れば、曾孫くらいは離れてんな」

 

「先輩は1910年代末の生まれですからね」

 

「え、えーーーー!?」

 

「そりゃ、違う世界の違う時間軸にいるんだ。このくらいは序の口だろ?」

 

圭子はさらっという。圭子は1919年生まれ。1936年前後の第一次扶桑海事変当時に既に17歳に達していた。そのため、変容前のミーナからは『戦力』と見なされていなかったという経緯がある。だが、実際にはかつての神通力は健在なまま。ミーナの評価が底を突く勢いで下落する要因となった。プリキュア達の登場と共に退場する形になったため、『プリキュア達を扱いきれないだろう』とさえなじられていた理由は『三人をエクスウィッチという色眼鏡で見たから』だが、坂本は友人として、かつてのミーナを擁護し続けている。『話せば分かる人物だった。書類確認の不徹底による単純ミスなのだし、本人も辞表を書くくらいに悔やんでいたのだから、マスメディアは叩かないでほしい』と。しかしながら、昭和天皇の耳に入ったことは事実で、外交ルートでの抗議は確かになされている。彼が激昂するのを連合軍の現場が過剰に恐れたという政治的事情があった。ミーナはこのたった一度のミスで、以後のキャリアに暗い影を落とすこととなり、太平洋戦争で前線指揮官のポジションには復帰するが、嘱望されていた後方の事務管理職への栄転の道は断たれた。これはなのはと似た経緯だが、協議と時空管理局の政治的判断で『飼い殺しのような形で教導隊に留め置かれた』なのはよりは明るい未来が残されている分、周りに同情されていたと言える。(本当に事変に無知である事が査問で知れ渡ったため、ロンメルも人事処分に困ったという)

 

「黒江先輩と加東先輩、あと、もう一人の先輩は変身したあたし達より強いよ。元から魔法使える上、あれこれ覚えた技能のレベルが人外魔境だから」

 

「あの時のあの強さ見れば、ねぇ」

 

「あたしは他の二人と違って、聖闘士じゃねぇが、それでも、お前らをまとめて相手取れると思うぞ?」

 

それは事実だ。圭子自身、転生した後は空手等の格闘術を極めており、ゲッタードラゴン(50m)の頭頂部から生身で飛び降りても大丈夫になっているなど、聖闘士でないのに、高位の聖闘士級の身体能力を持つ。(流竜馬と比較しても、パワーで多少落ちる以外は互角)そのため、プリキュア単独より戦力は上と判定されている。

 

「なんですかそれ~!」

 

「いずれ証拠は見せるさ」

 

「あれ、格納庫に入れられてるのって、アメリカ軍の戦車ですよね?」

 

「相手がパンターやティーガーらしーから、こいつのツテで調達した」

 

「お互いの時間軸が違うと、色んなメタ情報が伝わるだろ?それで割合、現場の声が伝わりやすくなったおかげだな」

 

自由リベリオン軍は史実のメタ情報が伝わったため、アイゼンハワーに至るまでが戦々恐々となる羽目となった。パットンが『別のワシの発言にまでは責任取れんよ!』とボヤく羽目に陥った『M26パーシング戦車』の逸話。アイゼンハワーはそれに罪悪感を強く感じ、矢継ぎ早に戦車の更新(M4と戦車駆逐車がダイ・アナザー・デイで万単位で破壊される大惨事になったのも大きいが)を敢行することで兵士達への罪滅ぼしとしたが、流石に自由リベリオンの製造能力の限界もあり、『M48戦車』を10年単位で早めるのが精一杯であった。M48は双方のリベリオン軍の最新鋭戦車であったが、配備ペースは陸軍管理本部の束縛がない自由リベリオン軍のほうが早く、この日に回された戦車もM48である。ただし、量産されている車両はディーゼルエンジン搭載の最終型相当に既にアップグレードされているので、『M60までの場繋ぎ』という位置づけで量産されているのが分かる。パットンやアイゼンハワーなりの兵士への罪滅ぼしである。(パットンには日頃の言動の問題で米国からの提案で更迭案もあったが、兵士達に人望があるため、退役まで前線で戦ってもらうということで更迭を免れた)

 

「ま、戦後水準の戦車だから、戦中型の戦車が残ってるドイツ軍が泣きを見たがな」

 

黒江も補足するが、M48の性能は当時のカールスラント陸軍の主要装甲戦闘車両の尽くを陳腐化させて余りあるもので、カールスラント陸軍を激しく狼狽させた。レーヴェの105ミリ砲すら超える火力、パンターⅡ並の機動力を併せ持つ同車の登場は戦中後期型戦車の普及が終わりかけたところに軍縮で混乱を起こしたカールスラントの面子を完全に潰した格好となった。

 

「先輩、模擬戦してたんじゃ?」

 

「武子が中断させて、行かせたんだよ。智子は今回は留守番だ」

 

「誰がノワールの二号機を?」

 

「私だ。マナがいる以上、私が呼ばれる流れになるからな」

 

「あ、六花ちゃんも来たんだ。」

 

「危うく、ボコボコにされるところだったから、助かったがな」

 

「あ、六花。来たんだ」

 

「お前のお目付け役でな」

 

「あれ、ダイヤモンドって、そんなキャラだっけ」

 

「話せば長くなる。細かい説明は後回しだ」

 

キュアダイヤモンド(菱川六花)は口調などがサンジェルマン時代の凛々しいモノになっている。以前の高めの声が出せないわけではないが、軍隊での役目などの色んな絡みで『サンジェルマン』時代の口調と声色で落ち着いた。のぞみBは六花の現役時代における高めの声しか知らないので、現在の凛々しい低めの声は新鮮なようだ。

 

「でも、よくゲッターに乗れたね?」

 

「何、要は精神力だ。ゲッターとは、そんなものだ」

 

キュアドリームAにはそう返す。現役時代とキュアダイヤモンドのキャラが全く違うので、のぞみBたちは呆気にとられてしまう。

 

「これから、僕たちは戦争をする事になるよ。本当の戦争をね。君等のような子どもを巻き込みたくはないけどね。ま、僕も人のことは言えないけどね」

 

「僕たち、世界の存亡がかかった戦いを何回もしてるからね」

 

「もしかして、映画の出来事を経験してるの?」

 

「その質問、僕らにとっては二度目だよ。そうだね、2005年以前の映画ならね」

 

ドラえもんは『2005年以前』と注釈をつける。ドラえもんは声色が異なる同位体が多数、存在するからだ。未来世界に繋がる世界で生まれたドラえもんは『2008年時点では、その三年前まで放映されていた前シリーズでの声色』を持つ『多数派寄り』の個体である。

 

 

「うわぁ~い!子供の頃、レンタルビデオショップでビデオ借りてもらった事あるんだよ~、私!」

 

「落ち着け~。今はそんな事言ってる場合じゃないって」

 

「それはそうだけど~」

 

りんBのツッコミに膨れるのぞみB。子供の頃に憧れた存在が目の前にいては、のぞみでなくても、平静は保てないが。

 

「君たちの家族には、自治体の名義で『映画撮影への協力』って形で避難してもらったよ。先手を打ってね。奴らは君等の家族を間違いなしに人質に使うだろうから」

 

「よく、そんなの流せたね?」

 

「この世界の日本にも協力者はいるからね。連中も外からの各方面の連絡には、その手で誤魔化してるようだし」

 

「どうして、そんな回りくどいやり方を?つか、なんでわかるんですか?」

 

「奴らの無線を傍受したからさ。どうやら、今は騒ぎを知られたくないようだから、映画撮影だと触れ回り、偽装工作をしてるのさ」

 

「回りくどいような?」

 

「俺達に察知されるのを恐れてるのさ」

 

「光太郎さん」

 

南光太郎がやってきた。RXとしての彼なので、白のジャケット姿だ。

 

「俺たちに知られれば、もれなく戦闘になる。一定程度の戦力を集めながら、外に情報がいかない、あるいはもれないようにしてるのは、街の外に騒ぎが知れ渡り、自衛隊なり警察と戦闘になるのは避けたいのと、俺たちが動くのを防止する狙いがあるんだろう。抜け目のない奴だよ、ゾル大佐は」

 

「ゾル大佐?」

 

「俺たちの世界で本当にナチス・ドイツ陸軍の大佐だった男さ。戦後に狼男に改造され、組織の大幹部となったが、仮面ライダー二号との死闘の果てに倒されたが、再生手術で蘇った」

 

「再生手術!?」

 

「サイボーグは破損箇所を直せば、生き返れるという特徴がある。たとえ、木っ端微塵になっても、奴らの技術なら再生可能だし、ボディの変えは効く。拒絶反応も克服されているからね」

 

「そんな……人を生き返らせるなんて……」

 

「奴らの技術の粋の結晶が俺の先輩である仮面ライダーZXだ。彼は脳以外の全てが機械に置き換えられた『パーフェクトサイボーグ』。早い話が、人間の脳みそを機械の体に載せた代物だけどね」

 

「ボディの制御装置代わりにしてたハカイダーよりマシだけどね。要するに、そんな技術を持つ相手が僕たちの敵さ。インカ帝国時代のロストテクノロジーすら手中に収めるという強大な組織。単なるナチス・ドイツの生き残りじゃない、仮面ライダーがこの世に生まれるきっかけを生んだと言える、平行世界を股にかける邪な存在そのものさ」

 

「そんな……そんなの相手に、あなた達は……」

 

「奴らの存在があたしたちに新しい使命を与えたんだ。闇あるところ、光ありっていうでしょ?」

 

南光太郎とドラえもんの説明に息を呑むのぞみB。キュアドリームAは自らの背負った新たなる使命を明示する。平行世界を股にかける強大な敵と戦うために集められ、その使命を与えられたと。

 

「はーちゃんも、ラブちゃんも言ってたでしょ?あたしたちには戦うべき相手がいるって。それが奴らなんだよ、『のぞみ』?」

 

「自分に名前で呼ばれるってのは、なんか変~!」

 

「仕方ないじゃん。どう呼べばいいのさ」

 

「う、そ、それは…」

 

「ま、任せてよ。あたしは少々荒っぽいけど…ね」

 

「あ~~~!!なに、何なの、そのどでかい刀ーーー!!」

 

「黒江先輩から渡されて、先輩以来の魂を受け継いだ武器だよ。戦艦だって斬れる業物だよ。スターライトフルーレがよく折られちゃうって相談したら、用意してくれたんだ」

 

「液体金属使ってる上、作るのにえらく手間かかるから、三振りしか作ってねぇがな。普通の日本刀としても使えるが、その姿が真価を発揮するモードだよ」

 

黒江が斬艦刀についての解説をする。『示現流』の使い手のみが真価を発揮できる事、ウィッチ世界では、液体金属の知識と精製方法を知りつつ、刀鍛冶として熟練した者しか斬艦刀は作れない事、単騎駆けでも強い黒江のせいで、『単騎空戦の技能が編隊空戦の協調性より強調されるのを嫌がった』若き日の武子の進言で、当時の公式記録にはその存在は記されなかった。だが、事変後に黒江から斬艦刀を預かっていた黒田が使用し、セラと竜虎を謳われる活躍を見せた事、黒江が501配属後に使用したことから、扶桑は記録の訂正を余儀なくされた。ミーナが自己保身に走ったのは、1940年代初めに『与太話』扱いされていた話『扶桑では、大剣で怪異を倒す事を大物食いと呼称する』ということの『実例』、それもその話の発端になった『グレートエース』が他ならぬ黒江であり、その継承者が黒田だった事実を一回目の査問で突きつけられたからである。

 

「あたしたちはこれを斬艦刀って呼んでる」

 

キリッとした表情で〆るキュアドリームA(のぞみA)。実は「してやったり」と、心の中でほくそ笑んでいる。一応は既婚者なのだが。

 

「斬艦刀……。何よ、剣豪みたいに決めちゃって~~!!、私だって……私だって!!フルーレは持ってるもんーーー!うわぁ~~ん!」

 

ドリームAが斬艦刀を地面に立てて、剣豪っぽいポーズを決めたが、すごく決まっていたので、刀剣類を武器としては使うことが一度きりであった『のぞみB』はものすごく羨ましい反面、同一人物として悔しいのか、涙目で地団駄を踏む。

 

 

「そういう事じゃないっしょ…」

 

呆れるりんB。どこの世界でもツッコミ役は変わらない事の表れで、ドリームAやシャーリーは内心ですごく安心したのだった。

 

 

 

 

 

――ミーナの一度目の査問と同じ頃、扶桑の参謀本部で、江藤が一度目の引退前に上申していた黒江、圭子、智子についての注釈付き戦闘詳報が調査される事なく、当時の担当者が戦闘詳報を棚に仕舞い込んで、後任に情報の引き継ぎも行わなかった』という重大なホウレンソウの不徹底が露見した。書類の書き換えはその日のうちに行われ、その訂正後の書類が改めて届けられたため、ミーナは人事書類をきちん確認しなかった事を査問の際に悔やむ羽目に陥った。江藤とミーナの差は『江藤は、当時の現場の慣例からすれば問題ない事をしただけで、ちゃんと褒章の推薦もしていた』、ミーナは黒江達の戦闘能力を目の当たりにするまで、自分もエースである自負があったので、20歳超えの『前の世代』が今更、501の戦力になるはずがないという先入観で冷遇した』という、エクスウィッチ差別を助長しかねない行為を『現場責任者でありながら行った』点にあり、人種差別疑惑と絡んでの大問題に発展してしまった。ミーナはカールスラント空軍に上層部の更迭回避と管理責任回避のためのスケープゴートにされた感が否めないが、ミーナは人格が変わる前に謝罪文を残しており、これが『ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ』本来の人格が最後に行った行動であった。その後にミーナの肉体を動かす事になった西住まほが『尻ぬぐい』に奔走した理由でもある。斬艦刀はカールスラント空軍の黄金時代を終焉させた出来事の象徴的アイテムとしても、ウィッチ世界の後年に至るまで、空軍界隈で語り継がれてゆくのであった―

 

 

 

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