ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第二百十話「三者三様の苦労」

――扶桑軍は日本の民需優先の方針により、軍備更新速度がチグハグになっていたが、扶桑の国際イベントが終わったこと、疫病で日本側に扶桑への興味が失せたことで軍需の需要に供給が応えられるようになった。ダイ・アナザー・デイ直前に強引になされた『旧式兵器の廃棄』がダイ・アナザー・デイの長期化を招いたことの後遺症がそれから四年以上も苦しめていたわけだ。機甲兵器は高性能化に比例して維持費も高くなる。それが扶桑機甲本部の大誤算であった上、空海軍に予算が多く取られる都合、軍事費も減らされた陸軍は志願制が主体になるように体制そのものを変革せねばならないという政治的事情も重なり、機甲兵器不足を急場凌ぎで補うため、他国製戦車を購入、維持するという事になった。それに国産を推す派閥が異議を唱えたが、必要技術レベルが戦後水準に飛躍してしまった結果、扶桑独自の機甲兵器技術は時代遅れになってしまった。必要数が多いのに、政治的事情で74式戦車の配備が遅延を重ねたため、前線で重宝されたのが『センチュリオン』、『チーフテン』、『コンカラー』と言った外国籍戦車であった――

 

 

 

 

 

 

 

 

――プリキュア5の世界に一同が出向いていった日の前線に供給される戦車の内訳を見ると、減産が決まった扶桑国産戦車群は国民の目につく場所に集め、前線には高性能で、キングス・ユニオンのアフターサービスが充実しているブリタニア製新鋭戦車を回す事になっている。これは敵が道路インフラを整備する事を見越してのもので、実際にリベリオン軍は機甲兵器を円滑に運悪く運用すべく、インフラ整備を自主的に行っていた。南洋本島は地盤も固く、機甲兵器を組織的に運用できる土地もあるため、重量のあるブリタニア製新鋭機甲兵器も(日本連邦軍の改修で軽量化がなされていたが)充分に力を発揮できた。徹甲弾技術で一日の長がある事、敵はM4中戦車を好む部隊が未だに多かった事もあり、日本連邦軍の機甲部隊は再編後には質の差で連戦連勝であった。だが、裏を返せば、実戦経験者を酷使している事の表れでもある。交代要員の確保と育成が日本側の市民団体等の妨害で阻害された結果である。この時期の航空部隊の苦境が後世に伝わるが、機甲部隊はひたすら『少数で多数を返り討ちにしろ』という無茶を強いられていたのであった。それを実現させるには、必然的に機甲兵器を強大にせねばならなかったのである――

 

 

 

 

 

 

 

――航空部隊も教導部隊がクーデター後に懲罰的に縮小、人員の多くが前線送りになったために人員育成という点で言えば、悪手であった。しかし、日本側も『攻勢に出た後は、長期戦のつもりでやれば勝機がない』事は理解していたため、政治家の多くは後方で人員を育てる事よりも『連続攻勢で相手の持ち駒を失くすしかない』と考えていた。しかし、それは敵から受ける損害を考えていない机上の空論である。軍隊はどの分野でも、実情と政治の板挟みに遭っていたわけである。坂本の一期先輩であり、1949年当時は教導部隊の教諭であった藤田伊代子少佐はこう嘆いている。

 

『四年前の日本による介入で、全てが変わってしまった。搭乗員も、ウィッチも大量育成はそもそも想定してなかった。ウィッチに至っては、モノになるのは20人の候補生のうち、せいぜい6人だ。クラスヘッドも実際の任務で優秀とは限らんからな。』

 

彼女は実戦畑の人員であったが、後方が手薄になる事を恐れたウィッチ出身参謀らの根回しで教諭を務めていた。これは彼女の後輩であった坂本が『近代的な教導には不適格』とされ、その更に後輩の志賀が二つの失態の責任を取らされる形で現場から遠ざけられた結果、参謀たちは人望のある彼女に白羽の矢を立てた。育成ノウハウの喪失を恐れたのだ。航空機そのものがレシプロからジェット機に世代交代を迎え、空中給油と空中指揮管制機も実用段階に達したため、空戦の様相もすっかり様変わりしたが、それに現場の教員が追従しきれないのである。

 

『様変わりしすぎて、我々のほうが教えてもらいたいくらいだ。旧来通りの空戦はいざ知らず、今はジェットの時代だ。我々の部隊は名ばかりだよ』

 

空中指揮管制機の登場はすっかり空戦の様相を変えた。その関係もあり、以前より戦隊長による空中指揮の必要性は減った。だが、それでむしろ『戦隊長による戦果』が却って必要になってしまう結果にもなった。64Fが如何に当時としては先進的な空戦を行っていたかの証明である。教導部隊は教員の前線送りが続いている事もあり、縮小が続いている。藤田少佐自身も『前線の熟練ウィッチ不足』を理由に、このインタビューに回答した翌日に最前線に送られている。64Fは黒江と圭子の不在の際には智子や赤松が支えており、それでも『無敵』を謳われるため、敵軍に64Fのいる方面の戦力を過大評価させた。結果、M48戦車(リベリオン本国側はシャイアンと呼称していた)を配備することになった。日本側とドイツの技術競争の懸念と裏腹に、敵は徹甲弾技術がまだ『高速徹甲弾』が量産された徹甲弾の中で最新であり、『装弾筒付徹甲弾』は怪異への効果に疑念を持たれた事もあり、試作品が出回る程度だった。対する日本連邦軍は21世紀現用の『装弾筒付翼安定徹甲弾』を既に普及させており、機甲部隊の連戦連勝はこの徹甲弾の世代差によるものだ。もちろん、64Fの『プリキュア5の世界』への遠征軍にも配備されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

――プリキュア5の世界を訪れた遠征軍は到着後、直ちに基地の設営を行い、壁紙格納庫に各種兵器を格納していった。ナッツハウスに一応は営業休止の看板を掲げ、外に防衛用の防空兵器を展開させ、一応は基地の体裁を整えさせた――

 

「ディフェンダー、ファランクスを外に設置したんですね」

 

「敵が重爆を持ち込んでる可能性もあるからな。Ju290、下手すれば、Me264(史実では試作機のみが完成したドイツ空軍の超重爆)。が出てくるかもしれん。戦中の教訓で、急降下爆撃は戦略的に影響を与えんことは知っているだろうからな」

 

黒江はナッツハウスの周囲に防空用デストロイドを展開させた。敵の超重爆を警戒したからである。急降下爆撃機は怖くない。むしろ、怖いのは絨毯爆撃と対地掃射機の襲来である。

 

「迎撃戦になったら、こいつを使う」

 

「マルヨンとドラケンですね」

 

「ここのお前らは高高度での戦闘はしたことがないし、爆撃機との戦闘ノウハウもない。奴らに航空部隊がいれば、こいつで対応する」

 

「バルキリーは持ってこなかったんですか?」

 

「あいにく、全機が定期オーバーホール中でな。戦車とデストロイド、MSとSPT、スーパーロボットしか持ってこなかった。それでも、ブラックグレートとゲッターノワールだ。充分にお釣りがくるぜ」

 

「向こうのあたしたちに見せます?」

 

「連携する必要があるからな。一文字さんにガイドは頼んでる。ほら」

 

『うわぁ……すっごーい……』

 

最終調整中のブラックグレート、パーツ単位の調整や追加パーツのマッチングテスト中のV2ガンダムといった『いかにもアニメ的な』光景が広がっている事に驚いているのぞみBの声が響いてきた。格納庫は広く、グレートマジンガーを立たせたままで整備できるだけの天井の高さを持つ。その中で入念に整備される機体はのぞみBにも『ものすごさ』が理解できた。

 

「奥にもっとすごいのがあるぞ。見てみるか?」

 

「え?」

 

黒江に促されて、『プリキュア5の世界』のプリキュア5は格納庫の最深部へ足を踏み入れた。そこには。

 

「船の……ドック?」

 

「り、りんちゃん、あれあれ!」

 

「へ!?……せ、戦艦大和!?」

 

プリキュア5(B)が目の当たりにしたのは、艦首にドリルがついている以外は『旧日本海軍の戦艦大和』そのものの艦艇がドック入りしていた

 

「これが……あなた方のいう切り札……大和型戦艦の七番艦なんですか?完成を?」

 

「いや、艤装の最終調整を省略しての引き渡しがあったから、使いながらの調整なんだ」

 

 

かれん(分身体)は本体と記憶を共有しているため、ラ級戦艦の事を知っている。また、轟天とその姉妹艦は海軍の予算で建造費を賄った都合で、議会対策に『大和型戦艦の予備艦』とされている。正確には超大和型戦艦なのだが、そこは軍機なので、伏せられている。

 

「ちゃんと旭日旗も掲げられるわね……。だけど、こんなものまで持ち込む必要あるんですか?」

 

りんBが疑問を口にした。

 

「敵がこのフネと同じ能力を持つフネを持ち込んでる可能性も捨てきれないからな。戦艦の装甲は自衛隊の空対空ミサイルじゃ破れないし、40000トンを超える船が超音速で飛べば、発生させる衝撃波だけで戦闘機は落ちる」

 

 

空飛ぶ戦艦はそれが超音速で飛ぶだけで、充分に武器となる。かつて、戦艦が航空機に敗れたのは航空機からすれば、戦艦はいい的だったからでもあるが、戦艦が空を飛んだ場合、とんでもない脅威となる。宇宙戦艦の操舵手が戦闘機出身者な事も多いのは、宇宙戦艦は戦闘機的機動も行えるからだ。

 

「同じ能力を?」

 

「最初に日本海軍が完成させたこの種類の船の名をとって『ラ級』と呼ばれている。エンジンに重力炉があり、前か後ろにドリルをつけているかという条件がある。それはドイツからアイデアがもたらされた。アイデア元な以上、戦艦ビスマルク、ないしはその改良型をベースにしたモノは持っているだろうさ」

 

「なんで、こんなSFみたいな船を?」

 

「日本とドイツ、イタリアは戦争の起死回生を図って、連合国は新動力の実験材料として作った。殆どは陣営を問わず、戦争が終わった時に闇に葬られたが、ある世界のナチス・ドイツ残党がそれを蘇らせた。それで対抗のために、俺や別のお前がいる世界の日本も、こいつの基になった艦を蘇らせた。こいつはその運用データを基にして造られた新造艦だ」

 

「これを飛ばすんですか!?」

 

「いざとなったらな。コンピュータの調整がまだ途中で、あと三日は火器管制の調整がいる。敵もおいそれとは動かんだろうし、長丁場になる」

 

「先輩、偵察からの報告です。敵はパンターとティーガーを街に配置しているようです。それと、あたしたちの実家への道を封鎖しているようです」

 

「やはり、お前らの家族を人質に取ろうとしていたか」

 

「じゃあ、あなた達がお母さん達を『映画撮影』とか言って、匿ったのは」

 

「その可能性があったからだ。間に合って良かった。お前らは戦車くらいは大丈夫だろうが、問題は怪人だな。お前らの攻撃力じゃ、ひるませるのがせいぜいだろう。怪人は言うならば、サイボーグ技術の結晶だからな」

 

プリキュア5は戦闘スキルは現役時代から高いが、個々の技の威力は怪人には通じない。これはA世界にいるプリキュア5が思い知ったことでもある。

 

「怪人を戦って勝つには、弱点に技を至近距離で打ち込むしかないけど、あなた達の力じゃ、それも難しいからね」

 

怪人の反応速度は概ね、格闘技チャンプの全力の攻撃を打たれてから避けられるほどだが、それをも超える速度で飛来する弾丸には対応できない。敷島博士はそれを知っていた。組織には『銃撃で負傷した』、『不良品と判断されて、粛清された』怪人が山のようにいたからだ。それを担っていた男が『ゴッド』の秘密警察の第一室長であったアポロガイストである。

 

「怪人の不意を突いて、超高速の特殊弾頭を打ち込むか、怪人の装甲をぶち抜ける者が戦うか。その二択しか方法はない。怪人がいくら加速装置を備えていようと、反応速度を超える超高速の抜き打ちで不意を付けばいいけど、これは僕と、もう一人しかできないしね」

 

「のび太、銃は届いたのか」

 

「ああ、デイブに頼んどいたものが届いたよ」

 

のび太も成人後はデイブ・マッカートニーというガンスミスに仕事を持ち込む。ゴルゴ13御用達ということで、20世紀後半から21世紀にかけて裏世界で活躍したガンスミス。ゴルゴ13とは、東西冷戦時代からの腐れ縁。のび太は成人後に老境に入った彼と知り合い、成人後は仕事を持ち込むようになった。のび太成人後には自身の加齢を気にし始める年頃で、もしもの事に備え、弟子を育てているが、ゴルゴとのび太の依頼は自分が引き受けている。かつて、自分の仕事を『正確無比』と自画自賛したように、彼の仕事は誇張なしに正確無比だからである。

 

「あのジイさんも、とんでもない二人に見込まれたもんだね」

 

キュアドリームAはデイブ・マッカートニーに同情する口ぶりである。のび太の使いで、彼の仕事場に行った事があるからだ。彼からは『若いのとこのお嬢ちゃん』と呼ばれている。(のぞみAは仕事の関係もあって、マルチリンガルである)

 

「愚痴るのが、最近のデイブの仕事始めさ」

 

「言うね、のび太くん」

 

「デイブに会うと、四回にいっぺんくらいの割合で、東郷にこき使われてることの愚痴をこぼされてるからね」

 

デイブ・マッカートニーはゴルゴに酷使されている事で有名。1990年代末時点で関わりあいが20年を有に超えている。デイブは『関わったおかげで独立できたが、依頼しに来る度に身構えちまう』と愚痴っており、頻度は低いが、ゴルゴと厚い信頼関係がある。のび太のほうが顔を合わせる機会が多いのは、ゴルゴはデイブ以外にも、顔なじみのガンスミスを数名ほど抱えているからだ。

 

 

「アンシュッツをベースに改造してもらったよ。狙撃にはもってこいの精度だしね」

 

ゴルゴも依頼での精密狙撃に使うことがままある『アンシュッツ社製のボルトアクション式ライフル』。ゴルゴものび太も市販のものそのままでは使用せず、かなりのカスタマイズをガンスミスにさせてから使う。高校と大学の受験生だった頃に培った『忍耐』がのび太に精密狙撃に必要な我慢強さをもたらしたわけだ。

 

「奴等は僕と彼の共通の『敵』だからね」

 

のび太とゴルゴの共通の敵はナチス・ドイツ残党である。ゴルゴも度々、ナチス・ドイツ残党と対決をしている。懇意にしていたMI6の部長を勤めていた貴族『ヒューム卿』が警戒していた相手でもあるが、彼と懇意にしていた事が因縁となったか、ナチス・ドイツ残党を掃討する事を使命とするイスラエルや戦後西ドイツの依頼でネオナチと度々激突した。イスラエルはマルティン・ボルマンの率いていた残党の一派を始末する際に、ゴルゴをジョーカーとしていた。戦中の同志の『裏切り行為』に義憤を持つ元・ナチ党員の依頼を受けたりしているが、80%以上の確率でナチ残党はゴルゴに立ち塞がっている。末端のネオナチとも対決してきたため、ゴルゴにとっても『敵』と言っても差し支えはないだろう。

 

「君もそうだが、俺たちもイメージがつきまとうからね。俺や一也先輩なんて……」

 

「あなたたちは似た俳優のスキャンダルが21世紀で起こりましたからね」

 

「ヒーローは『イメージ』も大事だからね。幸い、外見が若いのが救いだけど」

 

仮面ライダーほどのヒーローになると、持たれるイメージも大事にしなければならない。南光太郎は21世紀に『外見が似た俳優がスキャンダルを起こした』例の一つになってしまったため、困った事になっていた。ただし、光太郎は20歳くらいの若々しい容姿なので、そこは救いである。

 

「君たちも、プリキュアとしてのイメージがその後の生活につきまとうから、気をつけたほうがいいよ」

 

南光太郎(ライドロンやロードセクターの整備をしていた)も一言言う。

 

 

「あたしも現役を終えた後の前世は表に出せる部分以外は伏せてるから、わかります、それ」

 

「なんか引くなぁ、そういう会話ぁ~……」

 

「大人として生活すると、どうしても『個人』としては見られなくなる面が鬱陶しく見えるからね。俺と、もう一人の先輩は顔が似てる俳優のスキャンダルのせいで、俺達自身がえらい目にあってるんだ。参るね」

 

のぞみBがげんなりして引いているが、Aも大人になった後の教師としての一度目の人生については、はぐらかしたりして伏せているのは事実である。現役時代のイメージを少なからず壊してしまうからで、光太郎と一也(スーパー1)の気持ちを理解できる。

 

「僕もそうさ。一応は官僚になって、子供もカミさんとの間に儲けて、それなりに暮らしてんのに、未だに子供の時のイメージもつきまとうことがあるからね。子供の時に、お袋がテストの答案の束を運んでる時に、強風に煽られてずっこけて、テストの答案が市井にばらまかれたのも関係してるんだろうけど」

 

のび太のイメージの醸成には、その出来事も関係している。それが息子の就職に悪影響が生じる懸念を心のどこかで抱いていた玉子はのび太が青年になり、就職が現実問題になった大学生の頃に詫びている。その際に『のびちゃんはのびちゃんの人生を生きなさい』と述べており、『息子の人生に消せない烙印を自分が押したのでは?』とする罪悪感をその時から抱いていたと思われる節があった。のび太が成人後は息子の金使いなどには口出ししていないのは、その事を含めての『のび太のためと、口やかましく口出ししてきたこと』の埋め合わせであったと言える。

 

「ああ、あの映画のエンディングの」

 

「うん。お袋も、そのことはずっと気にしてたみたいでね。大人になった時に詫びられたよ。その時には10年以上前の事で、お互いに歳を重ねてたから、なんていったらいいのか困ったけどね。あれはお袋なりの僕への詫びだろうな……」

 

自分のミスがのび太の人生を狂わせてしまったのでは?そう考えていた玉子のある時の懺悔。のび太は官僚というエリートコースに乗ることで、玉子の詫びに応えた。どこか哀しげなのは、青春時代の四年を受験勉強に費やし、エリートコースに乗ったが、青春時代の四年を棒に振る形になったからだろう。(玉子がのび太が長じた後、憑き物が取れたように穏やかになったのは、その事に負い目を感じていたのもあり、大学の四年は自由に過ごさせたのだろう)

 

「大変だな、君も」

 

一文字隼人も思わずそう漏らす。

 

「いや、なに。大学の四年は自由に過ごしたんで、今は気にしてませんよ。僕自身、今は子持ちですからね」

 

「うーん……歳取るのが怖くなるなぁ…」

 

のぞみBは大人の世界の悲哀を垣間見たためと、別の自分が成人後に何かしら苦労した事を匂わせたために愚痴混じりにボヤいた。

 

 

「良くも悪くも、大人になるというのは、そういうことさ。俳優だって、年取ってから売れだす例があるだろ?逆に年取って売れなくなる事もある。自分なりの立ち位置を見つけ出す事は大事だってことだよ」

 

南光太郎はゴルゴムと戦っていた頃、最終決戦間近の頃に、それまでの友人が日本から避難してしまった上、シャドームーンを手にかけなくてはならなかった(生存していたが)ため、孤独を嫌というほど味わった。のぞみAがりんAのことで精神を病みかけ、独断で復讐に走りかけた時にはビンタしてまで叱咤し、彼女に仲間の存在を示している。その彼の言うことには説得力があった。

 

「うーん……」

 

「君も今後、困難にぶち当たれば、俺の言うことの意味が分かると思う。君とドリームは同一人物ではあっても、互いに違う可能性を辿った世界の住人からね。俺と『光太郎』のように」

 

南光太郎自身、ブラックのままで戦いから身を引いた(世界が平和となった)世界の自分と、『クライシス帝国が襲来して、RXへ生まれ変わって戦い続ける』世界の自分は別人であるという自覚がある。同時にブラックの自分には『五万年の寿命』があるが、RXになった自分は実質的に不滅の存在になっている。(恒星の光とキングストーンが相互補完する都合で、実質的に不死身)その事を踏まえての一言である。

 

 

「あたしも、大人になった後に色々な事があって、それで『戻りたい』と心のそこから願ったことで、あなたと同じ年齢の姿で転生した。大人の世界ってのは、綺麗事じゃ片付けられないことも出てくるんだ。教師になりたくても、軍隊にいるってだけで転職の話が潰れたしさ」

 

「あなた、予備役編入願いを取り下げるしかなかったものね」

 

こまち(分身体)が口を開く。こまちはのぞみに乞われる形で、のぞみに付き添って、共に文科省の役人と交渉に当たった。そのため、のぞみが教師になるために扶桑の国家元首である昭和天皇に頼み事をし、その裁可までもらっていたのに、日本の文科省の役人はその裁可を一笑に付した(まったく本気にしなかった)事に憤激しかけた。その話を黒江と圭子から聞いた『マレーの虎』の山下奉文大将がのぞみを不憫に思い、自ら文科省を訪れるといった『文科省の乱』と呼ばれる騒動が起こったのは記憶に新しい。

 

 

「ええ。あの時はキレそうになりましたね。ぶん殴りたくなりましたよ、あの役人の慇懃無礼な態度」

 

ドリームAは昭和天皇が裁可を下し、錦の姉であった小鷹の尽力で決まっていた学校への赴任の話を文科省の独断で潰されている。山下奉文大将が抗議したことで『大学講師にはなれる』事(今後の事例のために)にはなったが、中高の教諭を望んでいたのぞみとは相容れなかった。昭和天皇の顔に泥を塗ってしまった日本文科省は騒動の『火消し』を急いだが、扶桑と外交問題になりかける上、時の内閣を苦境に立たせる一因を作ったことで総理大臣に疎まれ、恫喝的に再分割が検討されるなど、彼らにとっての冬の時代が訪れる。

 

「予備役の士官が普段は教師なんて、外国じゃありふれてるってのに」

 

「まぁまぁ」

 

こまち(分身体)が宥めるが、ドリームAは『軍隊でエリートだろうが、所詮はキャリア官僚以下の扱いなくせに、武官の分際で、偉そうに文官に意見するな』と役人に詰られた事に未だに不満があるようだ。(件の役人は文科省幹部のトカゲの尻尾切りで『彼の独断である』とされ、騒動の全責任を被せられて『自主辞職』。その後に週刊誌を使い、文科省やのぞみに反撃に出ようとしたため、文科省に全責任を負わせようとした『時の内閣総理大臣』の依頼を受けたゴルゴによって暗殺されたらしい)

 

 

「おかげで現役軍人を続行することになったんだ。有事がすぐに始まったから、軍の人事部にとっては『良かった』とか言われるんだけど、予備役になった軍人の転職に制限が入ったようなものだしなぁ」

 

ドリームAは自分の騒動がきっかけで、扶桑皇国全軍の予備役関連制度や短期現役士官制度が大きく揺らいだことにバツの悪い思いがある。日本では自衛官に恩給はないし、佐官以下で退職した場合は危険業務従事者叙勲の対象にもならなかったが、扶桑は如何な階級だろうと、勲章がもらえる(年金付き)上、年金と別に恩給が出る。戦前日本と違い、扶桑は経済力があるため、現役軍人としての給金も当時の平均所得水準からすれば『高額』の部類だ。それに文科省の一部官僚や過激な市民団体が反発したのだろうが、命がけの職業である以上は当然の措置だ。内閣が文科省を叱責したのは、扶桑軍制度への強度の介入は扶桑への内政干渉になるからで、扶桑から当事者への何かしらの懲罰が求められたのも当たり前であった。軍隊というのは、一般社会からすれば『特殊な』世界だが、文官統制だからと、日本の事情だけでモノを考えれば、痛い目をみる。文科省はまさにそういう目にあったのだ。

 

「なんか難しくて、わかんないよぉ~!」

 

「大人の世界の話さ、のぞみちゃん」

 

光太郎がフォローするが、口下手なので、イマイチ滑っている。のぞみBは混乱するが、これは大人の世界の厳しさの一端なので、うららやかれん、こまちは理解していた。その三人は頷いている。りんBはのぞみが『大人の世界の厳しさ』に無知なのをどうフォローすればいいのか困っているようだった。

 

 

 

 

 

――キュアドリームA(のぞみA)は、日本でいう『予備自衛官』のようなものになろうとした。扶桑国内で予備役になった軍人がどういう仕事をしようが、日本に直接の関係はないはずだが、文科省にいる『扶桑に日本の平和教育を広めたい』というおせっかい的な考えの官僚や市民団体の猛攻撃は扶桑への内政干渉も気にせず、日本連邦の看板を錦の御旗として振りかざし、のぞみやその他の軍人達の予備役編入と教職への転職を握りつぶした。だが、軍人の中には『師範学校を出た生え抜きの教職にあったが、世間の目を気にして、短期現役士官制度を利用して、数年の軍役についた者』も大勢いたため、社会的混乱を招いた。財務省(扶桑は大蔵省)からの『失業保険用の資金が底をつく!!』という警告もあり、結局は『現役継続扱いにする代わりに、階級を一階級アップし、手当の増額で損害補償とする』事になった。しかしながら、能力が伴わない者の昇進については、別のところで議論が起こったし、『戦功目覚ましいが、大尉任官から間がなく、少佐への昇進の規定日数に達していない』のぞみAを『専門的な軍事教育』無しに『高級将校』である『少佐』にしていいのかという問題もあったが、素体の錦が陸軍航空士官学校卒の『エリート』であった事、二次大戦中までは階級の昇進は日独を中心に、現場での戦功で行われているという時代背景もあり、『黒江達が教官となって専門教育を現場で施し、戦後に指揮幕僚課程、統合高級課程などを正式に受講させる予定とする』ことで決着を見た。これは扶桑は『戦時』であり、悠長に平時の時の教育を行える余裕がなかったからである。これが扶桑の予備役と予備士官制度の信頼性を大きく揺るがせた『プリキュア5の予備役編入願いの失敗』事件の全容であった。日本は自分のところにも『予備自衛官』制度があったため、本来なら口を挟める立場ではないが、日本の文科省の一部官僚の暴走と独断が扶桑に社会的混乱を強いたことで『日本連邦最初の不祥事』と記録されてしまったのだった――

 

 

 

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