――プリキュア5の世界を襲撃したナチス・ドイツの残党。映画撮影を周囲に偽り、外との連絡回線の一切を掌握し、学園を制圧した。学園の至るところにドイツ兵が立ち、関係者は講堂に監禁されていた。難を逃れたB世界のプリキュア5はA世界の自分自身らの協力で抗戦を決意した。しかし、強大な大ショッカー相手にB世界のプリキュアだけでは立ち向かえない事は明らかであった――
「僕は遊撃を担当するよ。車は持ってきたしね」
「アルファロメオだろ?お前も通なの持ってきたな」
「ここは西洋風の建物が多いだろ?ミニよりアルファロメオのほうが合うと思ってね」
「お前、アルファロメオなら、ワルサーか、ルガーを持たねぇと、絵面が締まらないぜ?」
「持ってきてるよ。ライフルも、デイブにカスタマイズさせたアンシュッツだしさ」
「用意いいな」
某有名な怪盗の三世を思わせるセレクトののび太。青年期以降はこうした面で遊びの要素を取り入れる。ライフルには組織が粛清用に用意した『コローション弾』(腐食弾頭)のコピー品を装填しており、何気に敷島博士とデイブ・マッカートニーの双方に世話になっている。
「流石にルガーは引っ掛けた時に壊しそうだから、ワルサーPPにしたよ」
のび太はリボルバーを得意とするが、オートマチックが使えないわけではない。リボルバーは『作動確実性の都合で使っている』とも述べているように、オートマチックはのび太の嗜好に合わないだけだ。(ちなみに、西部開拓時代の最末期にもなると、初期のオートマチック拳銃は登場している)
「お前としちゃ珍しいな?」
「長期戦には、オートマのほうが向いてるしね」
のび太は趣味人的なところが強いが、怪人の不意を突ける人間である点は組織にも恐れられている。コローション弾は命中箇所の金属を一瞬で腐食させる。それは超合金Zだろうと例外でない。組織が改造人間粛清用に用意し、アポロガイストに支給していたという記録がある。のび太はそれを拳銃にも装填している。仕事の上では冷酷な殺し屋なのだ。
「子どもたちの前でいうことかい?」
「こっちも半分は仕事なんですよ、一文字さん。それに珍しいって自分の使う銃は趣味で選んでるけど勧める銃は実用性や信頼性と入手しやすさ考えて選んでますよ」
のび太は格納庫のドックを移動するための車に一同を乗せて移動する。Gフォースの臨時基地の設営には壁紙格納庫が必要だが、中は広い。ラ級戦艦などをドックに置けるほどの広さであるので、ちょっとした港湾の如き広さだ。
「ひっろーい。本当にアニメの通りだ~」
無邪気にはしゃぐのぞみBだが、ここであることに気がついた。
「あのさ、ココとナッツ、それにシロップはどこに匿ってるの?」
「君たちから見て、ちょうど北西に立ってるアパートみたいな建物。あそこに避難させてる。ココは世界は違えど、僕の義理の倅だし」
「それぇ、ずるい~!」
膨れるのぞみB。ココ(小々田コージ)はB世界では『いつか別れ別れになる日が来る』身の上の違う種族だが、A世界では同じ地球人で、しかもサムライトルーパーなのだ。Bが拗ねた要因の一つは『正式に結婚できた』事である。
「君だって、ぼくにとってはせがれの嫁なんだ、世界は違うし、運命も違うだろうけど、根源で同じ存在なら、守る理由にならないかな?」
「そ、それは……」
その意味を悟ったのぞみB。顔から湯気が出る勢いで赤面してしまい、後の言葉が続かない。
「それにさ、はーちゃんが義理のおばになるからね?みらいちゃんに説明するの、偉い苦労したんだから、あたし」
ドリームAもBに言う。ことはは戸籍上、義理のおばに当たる。それを説明した時、みらいが大混乱してしまったのを教える。
「はーちゃんは僕の義妹だからね。みらいちゃんを納得させるのが骨の折る仕事だったよ」
「うん。部屋が一個壊れたしねぇ、魔法で…。で、はるかちゃんも来ちゃったから、やること山程あるしさ~…」
キュアフローラ/春野はるかはまだ療養中だが、便宜的に階級も与えられ、プリンセス・プリキュアの中心戦士としての活動を開始している。
「え、はるかちゃんもそっちに?」
「なぎささんとはなちゃん以外なら、ピンクチームは全員いるはず。全員が戦闘担当じゃないけど」
正確にはスタートゥインクルのひかるも不在なので、三人ほど欠けている以外は、ピンクチームに関しては咲~いちかまでの全員が集結済みである。だが、つぼみ(キュアブロッサム)が産休中であるので、戦闘要員は意外と減る。
「あ、ブロッサムは産休取ってるよ?それにスターもいない」
「あ、そうだった。はなちゃんから聞いたことしか情報がないんだよなぁ、スターについては。まだグレースのほうが…」
キュアグレースは映画でも共闘し、前世でも実際に共闘した記憶があるが、キュアスターとは接点がないため、困っているキュアドリームA。
「グレース?」
「ヒーリングっど・プリキュアの子だよ。まだ力が安定しないようだから、連れて来なかったんだ」
実際にキュアグレースは立花響が覚醒する形で覚醒したため、シンフォギアの影響で力が変質しており、ヒーリング・ステッキなしで変身ができた上、戦闘でも、ステッキを使わなくとも敵を浄化できるようになるなど、ガングニールの力がプリキュアの力をかなり変質させた事が強く表れているなど、ポテンシャルが未知数なところがある。(元来、立花響は『その手に何も持たないからこそ、誰かと手を取り合える』という強い信念があり、それはプリキュア因子が覚醒しても不変だったため、プリキュアの力が彼女の望む形に変化したと思われる)その彼女はキュアフローラの警護と、別人格の沖田総司の分離の試みなどを試されている。主に後者の実験が重要だが、肉体をグレースの状態に慣らす必要もあるため、この時はキュアグレースの状態で基地の留守番をしている。
「あ、噂をすれば、彼女から電話だよ」
「わかった。あ、グレース?そっちはどう?」
「プリキュアに慣らすのはいいんだけど、どう説明すればいいんだろう?ほら……」
「アニメ通りじゃないから、それで押し通しちゃえ。あたしもそれで押し通したし」
「クリスちゃんに色々ぶーたれられたし、惑星ゾラに修行に行ってる切歌ちゃんには、写メール送れって催促されたよ」
「翼ちゃんは?」
「翼さんは昨日からギャグ漫画みたいな事になってる。ほら、フェイトさんも天羽々斬が使えるの知らせてきてさー」
「だいたい反応が想像できたよ」
風鳴翼は天羽々斬をフェイトが時たま使っている事を知らされ、あまりの衝撃に、ギャグ漫画のように取り乱しまくっている。いくら声が似ているからと、ホイホイとシンフォギアを使えるものかとたかをくくったら、本当に使えたのでアイデンティティの危機を感じ、取り乱しまくっている。電話口に『防人としての……。い、いや、テスタロッサ女史なら…』などという混乱状態の翼の声が入ったからだ。
「重症だね」
「う、うん。もう一日はこんな状態。どうしよう」
「良ければ、僕と綾香さんが知ってる剣士のとこに連れていってもらったら?赤松さんが休暇でその人に会いにいくっていってたし」
「いいの?」
「伸びしろを得るには丁度いい。マリアちゃんも一緒に誘うように誘導しな。あの子一人だと、なんか変にこじらせそうな気が」
「い、言えてる。ドリーム、そんな感じでいい?」
「後で、咲さんに認可をもらうようにいいな。D世界のあの子達自身と接触すると、話がこじれるから、気取られないようにね」
シンフォギア装者は二組が滞在中である。一つは黒江が接触し、調の出身世界でもある世界線の存在、もう一つは次元震の影響で平行世界をつなげる聖遺物『ギャラルホルン』が作動して偶発的に現れた世界線の存在。ややこしいが、シンフォギア装者はもう一組が来ているわけである。後者は状況説明はされているが、事変や戦役には殆ど関わってはいない。(説明の問題や、既に装者の数人はダイ・アナザー・デイで著名になっている都合もある)
「わかった。それで私をグレースの姿に?」
「説明したくても、あなたの状態が安定しないと、話にも出せないよ。それに、向こうは2045年くらいの時代の住人みたいだし」
「……え、本当、それ」
「うん。スカーレットが聞いてみたら、その年代だって」
「2045年……あたしの世界よりずいぶんと遅いよ?」
「そっちのほうが本来の基本世界に近いんだって。あなたの出身世界の出来事をスカーレットとミラクルが話したら、ありえないの連発だったって」
「まぁ、ねぇ。フロンティア事変から歴史変わったし、記録映像に残ってる調ちゃんのシュルシャガナの色も本当なら、魔法少女事変以降でしか発現しない『明るめのトーン』のものだし、それに綾香さんが入れ替わってた時のあの口調に目つき……腰抜かすって」
D世界の装者にキュアスカーレットらが見せた映像はA世界のSONGが要点をまとめたものだが、黒江のやりたい放題に多く時間が割かれている。本来の調より10cm以上は高い背丈、ギアの機能に頼ることなく、フロンティア事変当時の全装者を圧倒する戦闘力、イガリマの『絶唱』すら物ともしない『右腕』とそれに宿りし聖剣。ギア姿で一日を好き勝手に過ごす映像。驚きの連続である。
「先輩、ギア姿で草野球に参加したし、バイトしてたっていうからなぁ。向こうの子たち、驚いてたでしょ?」
「うん。特に調ちゃん自身がね。開いた口が塞がらないって感じ。何せ、目つきの悪い自分が荒っぽい口調で、おまけにギア姿で草野球してる映像が流れたから」
A世界の調も帰還後に『ハイドロブレイザー』を会得し、それを攻撃に用いる事もあるので、史実通りの経緯を辿ったであろうD世界の彼女自身からすれば、驚天動地ものである。更に黒江が自身の闘技を『借りた姿』で使う映像は調Dをノックアウトする勢いであった。
「示現流の奥義……えーと、雲耀の太刀だっけ?……を使ったの見たらさ、こっ恥ずかしいやら、何やらで赤くなってた」
「だろうなぁ。あたしも『シャインスパーク』撃つのを映像で見せられた時はさー……」
調とのぞみは姿を『借りられた』という共通の経験を持つ。状況的に仕方ないのだが、二人の第三者からの第一印象を大きく変えてしまっている。例えば、調の場合は風鳴弦十郎などからの、のぞみの場合は来海えりかからの第一印象を大きく変えられているという点がある。ただし、その後の結果を見れば、調とのぞみの双方に『前向きさとひたむきさ、いざという時に必要な勇気を持つこと』の大事さを再認識させている。また、グレース(立花響)自身も、黒江がキャロルを救えない事をわかっていても、『お前に食われた女の子のためだ』と言い、エリスに立ち向かったという事実を知らされ、調の面倒をきちんと見ている事を知ったため、黒江への反感を捨てた。更になのはの軽率な行為を叱り飛ばし、自分も監督責任を取っている(監督責任で減俸処分が出ている。なのはは教導隊の教導としては当たり前の事を行ったが、それを外部の人間に当てはめるべきではなかった)。
「でも、なのはさんの事を叱ってくれた時は安心したよ。後から参加した二人は指示に従っただけで、責任はないけどねぇ」
「先輩も、あれは失敗だって言ってる。なのはちゃんは良くも悪くも、時空管理局と地球連邦軍以外の社会を殆ど知らない。先輩が高校までは行くようにさせたんだけどなぁ。時空管理局の士官教育の質を疑いたくなっちゃうよ」
なのはの不幸は時空管理局の『警察と軍隊のどっちつかず』の空気に慣れすぎていたところで、黒江も『懸念はしていたが……』と自分の選択の誤りをはやてに話し、時空管理局の組織にメスを入れるように、はやてと話し合ったが、時空管理局の士官教育そのものは他の世界の軍隊と大差ないのだが、なのはの場合、帰還後に『英雄』と持て囃されたこと、なのは自身、ゲッター號以外に『負けた』経験がさほど持てず、メカトピア戦争(戦役とも)で地球連邦軍の高度な三次元戦闘術を吸収したため、個人戦闘力で並び立てる者が(身内以外に)時空管理局に殆どいなくなっていた事、エースと持ち上げられ続けた(黒江たちにも不遇の時代があったし、アムロも軟禁生活を味わう羽目になった時期がある)結果、天狗になっていたところはあるだろう。のぞみの覚醒後、黒江は『なのはのことだが、お前があと数日早く覚醒していたら、あれの事はお前に任せただろう』と自身の失敗を悔やんでいる。のぞみは曲がりなりにも『教職経験者』だからだが、なのはも『教導隊の看板』を背負っていたはずである。
「なのはさん、どうしてる?」
「自暴自棄になってる。自業自得だけど、人生で目立った挫折をしてないエリートほど、挫折した時は脆いからね。調ちゃんとヴィヴィオちゃんが面倒見ないと、飲んだくれに完全に堕ちちゃうから」
「どうにかならないの?」
「シェルブリットで荒くれ者になるのを目指し始めた。子供の頃の気持ちは捨ててないのが安心できる点かな。ほら、あるじゃん?昔の特撮ヒーローものの役者が落ちぶれて、自暴自棄を起こすとか、チンケなトラブルで作品のイメージまでズタボロにしちゃうケース。あれみたいなもんだよ。なのはちゃんの場合は小学三年生当時の天真爛漫なイメージがつきまとったし、常に品行方正を周りから求められてたから、その後の自分が顧みられないことに鬱屈した気持ちがあったんじゃないかな。それであなたと向き合った時に……」
「荒療治って大義名分はあったけど、叩かれて当然の追い打ちだった?」
「うん。先輩も驚くくらいの一発さ。あなたもしばらくは放心状態だったでしょ?あの子の真意がどうであれ」
なのはの素行が悪化した要因は『やり過ぎ』と周囲に咎められたことで教導隊の教えへの盲信が崩れ去り、『何を信じたらいいのか』という不安、『徹底的にきっちり打ちのめしてあげる方がいい。教えられる側も学ぶことが多いから』という教導隊の方針がM動乱後の再編であっさりと撤回され、なのはの扱いも『腫れ物に触るような』ものになり、実質は窓際業務をやらされ、時空管理局の客寄せパンダ同然にされた事への反発も含まれていた。
「シェルブリットの力を受け入れて、今までの外聞をかなぐり捨てられればいいんだけどね。飲んだくれになったのは、天狗になってたツケだと思う。あたしも前世の事があるから、あまり言える立場でもないけれどね」
ドリームAはそう〆る。過去の自分がに似た状況にあったため、『自分は他人の事を言える立場でもない』とはっきり述べる。そのような自分を客観視する姿勢が立花響と向き合った時のなのはには無かった。それまで抱かれてきた『エース』の偶像や『時空管理局の俊英』という虚像が崩れ去った後、残されたものは?なのはには、自分でそれに答えを見出して欲しいのが周りの気持ちだ。エースという偶像に頼らなくても、なのはには『翼』と『叶えたかった思い』がある。それだけでも充分だと。
「なのはちゃんに抱かれてた『エース』って偶像や虚像は木っ端微塵になったかもしれない。だけど、あの子には翼がある。『叶えたかった思い』がある。拳がある。なら、まだ飛べると思うんだ」
「確かに」
「空を飛ぶってのは難しい商売だからね。うちの海軍の連中には『多量撃墜者』なんて称号が部内向けにあったけど、要するに外聞上の都合で設けられた称号だった。事変世代の引退に合わせて、戦い方を変えようとしたけど、ドイツ空軍にすごいのが大勢いたから、結局はエースを政治的都合で宣伝しないといけなくなった。それを部内じゃ認めない風潮があって、陸軍航空隊と喧嘩をしょっちゅう起こしてた。で、空軍の主導権を陸軍に取られたからって、2.26みたいな事を起こしたんだ。その後の『島流し』で海軍航空隊は『組織の形だけある』状態。実際の主力はうちら空軍が担ってる。それを受け入れられない連中も大勢いるからね。どこも『同じ空を飛ぶ』のに、縄張り争ってるって奴さ。時空管理局にも前はあったそうな」
「え、今はないの?」
「戦いで有力なのがごっそり抜けたもんだから、他の世界への外聞上の都合で取り繕う必要が出たんだって。外殻が無傷でも、本土の中枢部に大ダメージを負ったから。で、中枢がやられた上、艦隊司令部もかなりボコボコにされたから、のび太くんの世界の地球に『恥も外聞もあったもんじゃない』って泣きついた。それでだよ」
「なんか、向こうも大変だなぁ」
「あなたほどじゃないよ。今は二重属性じゃん?」
「あ、あはは…。参るよ。おまけに装者なのが関係してるらしくて、ステッキを使わないでも戦えるでしょ?どう説明すれば…」
「それはこっちも考えてる。あたしに比べればマシだよ。あたしなんて、デザリアムの時にZEROと一つになったから、マジンガーとゲッターの技を撃てるようになったんだし。おまけに、アイテム無しでも、仮面ライダーみたいにポーズ取れば、変身できるしさ…」
「あー……なるほど」
「RXさんのポーズがかっこいいから、時々はそれを取ってる。先輩は電気使いだから、ストロンガーさんのポーズで変身したらしいけどね。他にも、ラブちゃんはアギトの力がプリキュアの力と共鳴したらしくて、あれのポーズで変身できるって」
「いいのかなぁ、それ」
「あたしも最初の頃はブレスで変身してたから、ポーズ取るのには抵抗なかったしね。それにプリキュア以外の力を今の肉体が持ってたから、それとプリキュアの力を組み合わせるのは不自然じゃないよ」
キュアドリームAは草薙流古武術を素体である錦が継承していたため、この時期には取れる戦術の幅がかなり広くなっている。プリキュアの姿で魔力の行使も可能なので、それらと組み合わせて、かなりの手札を持つようになった。『技の一号』との異名を持つ本郷猛の手ほどきもあり、仮面ライダーの技をいくつか放つこともできる。プリキュアとしての基礎パワーはなぎさとほのかに劣るとしても、手数では勝っている。
「どうして、そこまで?」
「なぎささんとほのかさんがいないと、烏合の衆みたいに思われてる節があるからさ、あたしたち『オールスターズ』は。歴代ライダーみたいに、大学の先輩後輩関係で自然と上下関係ができるわけでもないし」
それはデザリアム戦役でアポロガイストが指摘した事でもあり、プリキュアオールスターズの精神的支柱であるキュアブラックとキュアホワイトが不在のオールスターズは恐れるに足らずと断言されてしまっている。また、指揮序列も明確でないので、のぞみが『最古参のピンク』(2021年のキュアサマーがピンクチームかどうかは今の所は不明)として、数年間、リーダー格としての責務を負わないとならなかった。咲にリーダー格の地位を譲った後のこの時間軸では、その問題はある程度は解決してはいる。なぎさとほのかへの依存の解消に、後輩たちが如何に苦心しているかの表れだった。
「必殺技とかどうしてるの?」
「手数はあるんだけど、現役時代から使ってる技は『マルっとお見通し』とばかりに効かないこと多くなったからねぇ。ライダーキックとか、リボルクラッシュみたいな絶対的な技が欲しいって思ってる」
手数はあれど、現役時代の三種の技が必殺技としては陳腐化している事により、ドリームはかなり焦っていた。会得済みのマジンガーとゲッターの技は破壊力が物理的にありすぎるので、むしろ、遠慮なく使えない事を知っているためだ。
「マジンガーとゲッターの技は破壊力ありすぎて、むしろ使い勝手悪くてさ…」
「なんか、想像つくよ」
「でしょ?」
話を聞いているA世界の一同は『その割に、あまり気にしてないような…』と苦笑いするのだった。なんだかんだで戦闘では『手段を選んではいられない』のだ。黒江達は数度の転生の果てに『ハイパークロックアップ』までの加速を手に入れ、『奥の手』としている。だが、それすら運やその他の要素で凌駕して、無傷で生き残れる者がゴルゴとのび太なのだ。(どうしようもなくなっても、二人は何らかのアクシデントが起きて生還するからだ)
「うーん。のび太、どう思う?」
「そうだね、クロックアップを覚えさせれば?転生者なら、空間のタキオン粒子の操作はできるはずだよ」
「それでいくかな?」
転生者は死を『乗り越えた』存在であるので、空間に満ちるタキオン粒子を操作できるようになっている。黒江が『仮面ライダーディケイド』に会い、フェイトが『仮面ライダーカブト』に出会ったことでクロックアップの存在を知り、昭和ライダーが原理を解析したことで、それを自覚。特訓で自家薬籠中の物にした。タキオン粒子そのもののパワーは後に発明される(未来世界の25世紀以降)モノポールエネルギーには及ばないが、かなり応用が効くエネルギーであり、タイムマシンとタイムふろしきの原理にも関わっている。(つまり、ひみつ道具時代にはタキオン粒子の制御技術が存在したが、統合戦争で失われ、波動エンジンの製造で再取得した事になる。カブトは21世紀の仮面ライダーであるので、タキオン粒子の制御技術そのものは21世紀レベルの技術で実現可能である事が示されている)
「あのライダーみたいに、回し蹴りでのタキオン粒子を込めた攻撃させるかい?」
「それだ!」
黒江はピンときたようだった。のび太は子供の頃からアイデアマンなところが存在する。それは仮面ライダー達も一目置くほどである。クロックアップは通常の物理法則を超える加速であり、サイボーグである昭和ライダーを以てしても、疑似的な創世王に相当するRX以外の昭和ライダーは、『視認はできても、対応は困難であった』。昭和ライダーはディケイドからもたらされた情報で使用技術を解析、その成功後に自身の加速装置にハイパークロックアップまでの加速機能を組み込む事で対応を可能にしたのだ。
――タキオン粒子は地球連邦軍最強の鉾である『タキオン波動収束砲』の根幹技術でもあり、超古代文明『アケーリアス』がおとめ座銀河団に覇を唱えるに当たっての拠り所としたもの。つまり、『タキオン粒子による波動エネルギーを手中に収めた者こそが『アケーリアスの正統後継者』なのである。ウィンダミア王国の過激派が信奉する学説『滅亡寸前であったプロトカルチャーが最後に創造した人類種とされている自分達……ブリージンガル球状星団の民こそが!プロトカルチャーの正当な後継者…つまりは銀河の統率者なのだ!』というものは、プロトカルチャーの更に祖先であるアケーリアス超文明の存在が明るみに出た事、プロトカルチャーは『タキオン粒子の波動エネルギーと違う文明を作った都合上、タキオン粒子を実用化しなかった』点で既に破綻していた。プロトカルチャーはアケーリアスの後継者たり得ず、23世紀初頭時点でゲッターエネルギーと波動エネルギーを軍事利用する地球連邦こそが正統なアケーリアスの継承者。ウィンダミア王国の過激派が復讐のために思い描いた地球連邦政府打倒のプランは『ゲッター軍団』の襲来を招きかねない。穏健派は危惧していたのだ。プロトカルチャーの叡智すら『赤子の手を捻るように』ねじ伏せる『宇宙を食らう機械のバケモノ』たる『
――ゲッターは…大いなる意思の戦いなのだ。それでなくては宇宙に存在するゲッターの意味がないのだ!!――
ゲッターエンペラーの二段前の段階である『真ゲッタードラゴン』ですら、23世紀初頭時点で最強クラスを誇る。オリンポス十二神の長『ゼウス』はウィンダミア王国の強硬派を『身の程知らず』と評した。それは神々の意思を受けて進化を続けるバケモノたるゲッターエンペラーの『究極の進化、それは多次元宇宙を支配することだ』とする目的の前には『プロトカルチャーの叡智』も児戯に等しい事を意味する。一つの宇宙を手中に収める事がゲッターエンペラーの目的ではない。最終仮想敵たる『時天空』打倒のために。
――喰い合う事によって強くなる、破壊せよ、同胞を殺せ!武器を作り上げろ!――
神々が何故、人類を創造したのか?その答えたる存在はどこかに存在する。時天空。神々ですら手も足も出ない超常の存在。それを倒すために模索された『星々を喰う魔物』、『兵器を使い、宇宙を消滅させる機械の化物』。その内の後者となるためにゲッターエンペラーは生まれ、進化する。それが動くことは地球人に敵対的な種族の滅亡である。敵味方に畏怖される超常のゲッターロボ。それがゲッターエンペラーなのだ…。