ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第二百十三話「B世界の坂本への説明、プリキュア5の世界の状況」

――扶桑の内務省の解体は、内政干渉になるという問題、21世紀の総務省に解体論が吹き出た(内務省復活論者には凶報である)ため、結局は『内乱の防止』を名目に据え置かれた。また、軍隊で政治的に厄介者と見なされた組織を解体した結果、軍隊のなり手不足に陥り、一部の高練度の即応部隊に軍功が一極集中する事態に繋がった。また、兵器の急激な刷新の連続に現場がついてこられないという問題も噴出。扶桑は人員教育に多大な費用をかける必要に迫られ、攻勢予定を年単位で遅らせるしかなかった。また、多大な弾丸の消費を嫌う上層部と現場を政治と官僚が、史実の情報を錦の御旗として振りかざして恫喝する事態にも陥ったために、一部の精鋭部隊が頑張る羽目に陥っていた。そもそも、半自動・全自動銃は技術的に可能でも、それを大量に配備・生産し続け、弾薬を供給し続けることには莫大と言えるコストがいるため、扶桑は九九式短小銃からの全面更新を渋ったが、日米から大量に銃と弾丸が唸るほど供与された事、敵がM1ガーランドやM1カービンに更新を終えた事で追い込まれたわけである。(折しも、数十万発のマウザー航空機関砲用弾薬がダイ・アナザー・デイでも使い切る事がなかった事で処理に困っていた頃でもあった)皮肉な事に、ダイ・アナザー・デイでの64Fの孤軍奮闘が自動小銃の有効性を扶桑軍に認識させるきっかけになったわけだ。ただし、戦前型機関銃の全てが駆逐されたわけではなく、自衛隊系国産装備の内、機関銃系は大半が隊員に不評なため、結局は米軍からの供与品を混ぜつつ、戦前型の継続使用となった。(製造ラインの構築などの手間がかかるためもある。)その混乱を補う格闘戦の技能を持つ事が精鋭部隊には求められた。当時は統合戦闘航空団という枠組みが政治的と見なされ、既に有名無実化していた。ウィッチは未だに芳佳の世代が若手扱いであるし、カールスラントの撃墜王達は評判が悪化した影響で、殆どは自分の実力を証明するために義勇兵に転じている。『カールスラント空軍はハッタリの集団』という評判を払拭するためだ。1945年当時の撃墜王たちの大半が義勇兵に転じた。また、和製英語である『エースパイロット』が英語圏での本来の言葉である『フライングエース』を逆に『わかりにくい』と言うことで駆逐してしまうという珍事も起こった。(黒江達が事変当時から『エースパイロット』を用いていた事も大きい)

 

 

 

――ちなみに、扶桑海軍系の撃墜王の多くは1943年の軍令部の指示で、全部隊が『個人撃墜数の記録を廃止していた』事の弊害で日本側に舐められる傾向があり、個人的に記録をしていた坂本と竹井の日誌をソースにせざるを得なくなるという事態に陥った。その推進者の一人であった志賀は1945年当時に『海軍系の部隊は部隊戦果として報告する考えで、カールスラントかぶれの陸式ごときミーハー共とわけが違うのだ』と部下に話していたのが仇となる形で左遷させられたわけだが、数年後には『あくまで、海軍航空隊の矜持を貫こうとしただけで、天皇陛下には従順』という純朴さが高官に同情されて、横須賀航空隊の解散後は広報部に拾われた。この時に『広報の重要性』を遅まきながら理解し、黒江と坂本、芳佳に土下座行脚を行った。今からでも、上層部に辞表を提出すると漏らしたが、坂本に慰留され、『戦争中は現役を続け、禊を行う』事になった。(撃墜王の奨励も、昭和天皇に諭されたと、最終的に認めた)海軍航空隊の再建のためだ。とは言え、レシプロ機時代のノウハウはジェット機に横滑りで適応できないため、志賀が考える意味での海軍航空隊の再建は太平洋戦争中には完全にはならなかった。日本側が空軍の高練度部隊を優先して空母に載せたからである。マリアナ沖海戦とレイテ沖海戦のトラウマが由来なので、扶桑海軍も否定はできなかったのである。航空隊の再建に道筋をつけることを使命とした海軍残留組には、この時期が最も辛く、苦しい時期であったと言える。また、陸軍も2.26事件と宮城事件の事例を教訓に、日本警察から『皇宮警察を扶桑でも拡充すべし。近衛師団は反乱の温床となっている!直ちに解体をし、人員は全員を最前線送りにする』事が提案され、解体が本当に取り沙汰された。だが、カールスラントの内乱の教訓で、『組織は縮小改変。内部に潜む危険思想者は陸軍幼年学校卒者を中心に追放。実戦部隊としては、連隊規模の即応部隊として再編。残りは皇室の護衛と儀仗目的の部隊として残す』という事で妥協された。雇用を奪った事がカールスラントの内乱を誘発したので、日本連邦は『雇用はできるだけ維持する』方向性を取る事で反乱の抑制を図ったのだ――

 

 

 

 

 

――1949年度に起工された85000トン級空母『瑞龍』型。キティ・ホークをタイプシップにして設計された超大型空母である。本来は45000トン級空母『改大鳳型』として計画されたが、大鳳型の増産が白紙に戻された後に史実の信濃を上回る『超大型空母』として現実化した。扶桑の切実な要望で、4番艦までの建造は決まった。これは雲龍型が空母として用をなさなくなった上、軽空母以下の空母が強引に退役させられたので、一桁しか空母の保有数を維持できなくなったからである。ウィッチが空母から排除されたのは、蒼龍と飛龍への破壊工作が重く見られた事が理由だ。その損傷度の高さから、廃艦も取り沙汰されたほどであった。だが、ドラえもんがタイムふろしきで直した事で改装が再開され、1949年の春には蒼龍が突貫工事で改装を終えた。飛龍は夏頃の完工が予定されている。史実の翔鶴型航空母艦と同じ大きさだった(史実より大きい)のが日本側に認識されたのがダイ・アナザー・デイ中。改装が決まったのが1946年。工期が遅れた上、艦載機の更新が早すぎたため、使用期間は短いだろうとされている。翔鶴型航空母艦の大きさでは、ジェット戦闘機は多数を積めないからだ。扶桑軍は85000トン級の大型正規空母を『工期がかかる』と難色を示したが、反対派の造船官が何者かに凄惨なリンチをされる事件の発生で認められるなど、日本側がマッチポンプを行ったと推測される事件も多い。高雄型重巡洋艦など、M動乱への出撃時に『過去の改修で水雷兵装を爆雷含めて全てを撤去していた』事が問題視され、日本側に『これからUボートとやり合うのに、爆雷すらも載せてないだぁ!?このド低脳がぁ!!』と、当時の改修を担当した造船官が日本側にこっぴどく罵られ、あまりのショックに打ちのめされた『水雷装備撤去推進派』の若手造船官らが悲憤のあまりに手持ちの拳銃で自殺を図るわ、M動乱の苦戦の責任を取りたいと、艦政本部長へまとめて辞表を提出する事態に陥ったことすらある。(結局、M動乱で対潜戦闘で特に苦戦し、ミサイル兵装と水雷兵装が活躍した後に、ダイ・アナザー・デイで勝利に貢献したため、高雄型重巡洋艦は史実通りに水雷兵装が積まれた状態に戻された。人気だったアイスクリーム製造設備は将兵の要望で『士気の維持のため』に残される事になり、後世の小型高性能化したものに交換され、家具も収納式かつ不燃性の二段ベッドに取り替えられた。しかし、数年の間の実戦での酷使と連続しての被弾が祟り、船体各部が予想以上に疲労していた。紆余曲折の末、後継として、伊吹型重巡洋艦が当初の予定通りに『重巡洋艦として竣工する』事になったのもあり、1947年から1948年にかけて全艦が退役。その生涯を終えた)M動乱とダイ・アナザー・デイの海戦は、『怪異戦には無用の長物である』として不要と見なされていたはずの魚雷兵器が大活躍(艦によっては、出港前に魚雷発射管を慌てて搭載したり、現地での修理の際に、新規に製造された酸素魚雷を発射管とセットで積む羽目になったり、短魚雷を積むために発射管を緊急で再装備した艦が多かった。)したこと、防空システムと兵器のさらなる飛躍、艦隊戦や対潜戦闘の常態化は史実通りの方向性に艦艇運用を差し戻すきっかけとなったわけだ。防空艦運用が予定され、魚雷を積まない設計に改定されていたはずの伊吹型も結局はダイ・アナザー・デイの結果を受け、魚雷を積む史実通りの設計に戻されている。(自衛隊仕様の短魚雷を積むためと、居住性は内装を護衛艦仕様にする事で確保した。要するに扶桑海軍の10年間の居住性と生存性向上のための模索は結果的に徒労に終わったわけである)結局はいくつかの5500トン級軽巡の喪失とそれらの旧式化、ドイツ海軍艦や米海軍艦への砲打撃力の根本的な不足と巡洋艦以下の艦艇の防御力の差がクローズアップされたことで、魚雷兵器の復活がなされた。ダイ・アナザー・デイ当時、扶桑の造船官からは『この10年間の俺たちの努力はいったい…』と嘆く声が続出したが、結局は対人戦がメインになった事もあり、『積めるモノは全部積めるようにしておく』という事になり、ミサイル兵装とレーザー兵装の登場が防空システムを根本的に刷新させた事もあり、『対艦・対潜攻撃に転用できる魚雷は巡洋艦以下に標準装備させる』と、概ね史実通りの武装構成に戻った在来型巡洋艦。高雄型重巡洋艦はこの造船の流れにひたすら翻弄された巡洋艦として記録された。伊吹への世代交代に伴い、『対怪異特化改造』はコストパフォマンスの悪さを理由に取りやめられていく。イージスシステムなどの後世の防空システムの導入で艦隊単位での防空が可能になったり、対怪異装甲材とそのシステムはMSの高出力ビームには、却って無意味だった例すらある上、高性能魚雷の直下での炸裂の衝撃で船の竜骨がポキンと折れ、轟沈する要因になったのもあり、扶桑では『宇宙戦艦用の資材で艦を作り変える』という方針に取って代わられた。ただし、これにはそれなりの初期費用がかかるのもあり、いくつかの国は既存艦のそのプランでの改装を諦めていった。そんな改装だが、扶桑は『太平洋戦争での激戦を覚悟する』にあたっての『初期費用』とし、大和型戦艦を作り変え、あるいは作り変え後の仕様で新造したのだ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ウィッチ世界には、戦技教導部隊用に少数が使用されていた『零式艦上戦闘機四三型』が存在する。怪異に見立てられたアグレッサーを担うウィッチが搭乗することが想定されたが、戦闘機への搭乗技能を持つウィッチがメーカーの見立てより遥かに少なかったり、ダイ・アナザー・デイ当時の機材不足の際に、現地改修で史実の六四型に殆どが再改造されて日本軍義勇兵らの手で消耗された(機銃も元通りの構成に戻された)ので、太平洋戦争当時には現存機は博物館行きになっていた。ウィッチ搭乗を前提にしての調整は結果として『過剰性能』とされたのだ。更にいえば、怪異の進化で『レシプロ機でアグレッサーをする必要が無くなった』事、レシプロ戦闘機に乗るにしても、『最低でもキ100、贅沢を言えば、陣風』といった次世代の高火力機が必要にされた戦場に『炸裂弾もない海軍式の12.7mm機銃が二丁ぉ?ただのガラクタやんけ!』と酷評された同仕様の出番は無かった。少数生産機だった事、型式名が『縁起の悪い』数字である事、日本軍義勇兵らには『零戦の外観を持つ練習機』と見なされた事から、持ち込まれた個体は殆どが現地改造で『零戦六四型』に改造されて使われ、元の目的が知られないままでベアキャットやコルセアと戦い、消耗された。黒江も『そんな金の無駄遣いな仕様を生産するより、六四型をちゃんと生産しろ』と憤慨したが、本来はアグレッサー任務などでウィッチが使う仕様だったのだ。ところが、零戦自体が戦闘機として急速に陳腐化した事、正統後継機の烈風の完成により、史実の五二型以降の型を生産する予定はないところを『数合わせ』で五二型、六四型を生産させられたため、メーカーも混乱し、四三型は1949年当時には二桁しか現存しない。同型式では、アグレッサー任務の目的のために主翼機銃は撤去されていたのだが、現地で史実通りの六四型に再改造されて投入されたためだ。現実にはベテランウィッチと言えど、戦闘機に乗れる者は限られた事、アグレッサー任務をするよりも、20ミリ機銃搭載の戦闘機が一機でも多く必要であったからだ。本来の想定運用がされずに消耗されたことは大問題だが、1945年当時は海軍航空隊にアグレッサー部隊が現存しなくなっていた事、ビームが怪異の主兵装となり、戦闘機を怪異に見立てる必要が薄れた事、ダイ・アナザー・デイの作戦機の数が必要だった故の仕方ないことであった。そのため、零式艦上戦闘機は史実と違い、1941年12月に試作機(後の一一型)が飛び、43年に二一型が普及し終えたばかりだったのが紫電/烈風/陣風にわずか一年半で第一線機の座を奪われ、1945年のダイ・アナザー・デイ当時には『型落ちの旧式機』と見なされる存在となった。それから四年後には『骨董品』扱いとなり、残存機は軍事博物館で余生を送っている。後継のはずの烈風が『制空戦闘機』としては成功せず、生涯を通して『戦闘爆撃機』として使われた事もあり、『純然たる制空戦闘機として使用された最後の宮菱重工業製レシプロ戦闘機』の称号は得た事になる――

 

 

 

 

 

 

――基地の敷地にある一般向け博物館――

 

「これがこの世界で使われた零式の後継機か」

 

「烈風。芳佳の親父さんが最後に設計した戦闘機よ。本当は1942年くらいに生産されるのを見越して設計されてたけど、実際は生産設備の転換、2200馬力エンジンの開発の問題で1945年までかかったのよ。その間に基礎設計が年単位で新しい紫電系統が量産されたから、制空戦闘機というよりは戦闘爆撃機扱いで使われたわ」

 

「しかし、まだ四年だぞ。こんなところで見せ物にしていいのか」

 

「超音速ジェット戦闘機が主力化しつつある時代だもの。それに、状態のいいのはターボプロップ機に改造されてきてるから、これは使い込んで、静態保存になった個体よ」

 

「軍が博物館で小銭稼ぎとはな」

 

「今の時代は資本主義の世の中よ。国民のご機嫌窺いしないと、志願定数も維持できない。だから、こうした施設や基地の開放日は必要なのよ」

 

智子は坂本Bに、A世界の軍隊が直面している問題について教える。智子達の本来の現役時代からは10年もの月日が経過した時代、かつての自分たちの評判だけでは軍に人は来ない。こうした取り組みこそが、大衆の理解を得る手段なのだと。

 

「あ、智子さん」

 

「ロゼッタ。どう、調子は」

 

「なんとか。少佐を?」

 

「ええ。向こうのね」

 

持ち回りでガイド役をしていたキュアロゼッタと出会った二人。変身しているのは『四葉ありすの記憶を持つ状態の西住みほ』なので、現役時代のように『お嬢様言葉』を使うわけではないが、プリキュアとしての使命を果たしている。記憶があるので、戦闘面での技能は生前と遜色ない。

 

「君はキュアロゼッタと言ったね」

 

「はい。ドキドキプリキュアの一人です。ひょんなことからチームを復活させる事になったんですけど、成り行きで軍隊の階級をもらっちゃって」

 

「しかし、穴拭。この子もそうだが、何故、ホイホイと士官の地位を与える?」

 

「その方が何かと都合がいいのよ。昔と違って、兵卒でも大学出が奨励されるようになったし、士官なら最低でも高卒以上の学力が理想ってされるようになった。この子達は良質の中等・高等教育を受けているし、プリキュアの力を持ってる。下士官以下にはできないでしょ」

 

「宮藤が兵科の将兵と同じ扱いになっているのもそうか?」

 

「海軍の兵科序列の根拠が廃止された後に移籍したのよ、あの子。空軍は独立した軍隊だし、それに、今はそんな事言うと、どんな部隊の長だろうが、もれなく謹慎処分が下るわよ」

 

「本当か?息苦しくなったな」

 

「こっちでは、エクスウィッチの現役復帰も当たり前になってるし、兵科の違いで兵科将校が増長するのを明確に押さえつけるためよ。だから、今の参謀本部じゃ、主計科とか輜重科のほうが偉ぶってるくらい」

 

「馬鹿な、戦闘時の序列を定めた軍令承行令を廃止するなど」

 

「政治的都合も大きくてね。今じゃ、海軍でも、兵学校出の将校よりも特務士官出の将校の方が公式で『偉い』扱いよ。芳佳が空中勤務者としても『少佐』として遇されたのは、それが理由よ」

 

軍令承行令。本来は海軍の科ごとの指揮序列を定める軍令であった。史実では日本型組織の限界を露呈するものと判定され、否定的に語られている。その理屈で廃止されたため、現場は一時的に大混乱に陥った。(ただし、扶桑では日本海軍と違い、特務士官を神様のように崇める風潮があったため、兵学校卒の将校たちが混乱しただけだったが)芳佳はその混乱の時期に海軍軍医になり、空軍に移ったわけだ。

 

「しかし、兵科将校としての能力が欠如している事に対する人事措置さえも叩かれるとは……」

 

「今は階級が達していれば、その場の指揮権を継承しなければならないご時勢だもの。芳佳も四年前の段階で中尉になってたわ。ミーナがこの世界で殊更に叩かれたのは、エクスウィッチ出身者への差別と人種差別がそれと複合して『差別主義者』と取り沙汰されて、国際問題になった結果よ」

 

ミーナAは査問がマス・メディアに取り上げられたダイ・アナザー・デイ中期には、人種差別も取り沙汰されたせいで、本当に軍を追われかけていた。Gウィッチ化による人格の変化、パットンが裏で庇ったおかげで、それを免れたようなものである。『エクスウィッチが往年の神通力を取り戻し、なおかつ、現役ウィッチより依然として強いままである』という軍全体も想定外の事実があったので、懲戒免職処分は免れた。(通常、ウィッチは20代になると、10代半ば当時の戦闘能力を色々な理由で失うためである)

 

「この子のような『ウィッチとは言えないけど、社会通念上の理由でウィッチと扱うしかない異能』の登場も、結果的に『カールスラントの軍事的栄華』を終わらせたようなものよ。カールスラントは……なんていうか、自分たちが世界一優れているって思い込んでる阿呆どもが多かったから」

 

「しかし、それは『他国軍人の発奮』のためにわざとらしくいうカールスラント軍なりの他国軍への『社交儀礼』だろ?」

 

「それが銃後に叩かれる時代になったから、カールスラントの優秀な士官達が扶桑のヘッドハンティングに応じたのよ。本国で窓際に追いやられて『冷遇される』よりは、扶桑でうまい飯食いたいから」

 

カールスラントが1937年前後から築いた各種の軍事的儀礼などは多くが時代遅れと見なされた。戦前/戦中からカールスラント軍に在籍した下士官以上の者は共和制への移行を強く志向したドイツ連邦共和国の意向で冷遇される見通しになり、それに失望した古参の下士官や将校の多くは日本連邦のヘッドハンティングに応じていった。(この試みがドイツ連邦の最大の愚策と後世において酷評されるのは、優秀な人材の大半がダイ・アナザー・デイ中~太平洋戦争までの四年で日本連邦軍に流出し、その人的損害の補填が30年以上もままならず、21世紀初頭には『昔の遺産だけで持ってる二流の軍隊』と謗られる立場に零落したからで、グンドュラ・ラルが二流は保てるように踏ん張らせたため、後世においては彼女は『功労者』扱いである)

 

「無知な政治屋め。カールスラント軍を機能不全にする気か?」

 

「仕方ないわ。向こう側の政治的都合なんだし。それに、あそこ、共和派が優勢になったけど、それで内乱になったのよ。鎮圧の見通しだけど、共和派が内乱煽ったってんで、あそこ、少なくとも十年は混乱するわね」

 

坂本Bは複雑だった。カールスラントは帝政維持派と共和派が対立した末に内乱となり、NATO軍に鎮圧される見通しだが、政治的混乱は避けられない見通しとなったA世界の経緯は、B世界では表面化していない問題だからだ。

 

「それで、扶桑が世界の秩序の維持を背負い込まされたのか」

 

「カールスラントは強引な軍縮で下士官以上の軍人のかなりがクビになって、治安も悪化しましたからね。1935年の状態に戻すのにさえ、2001年までかかる見通しだっていいます」

 

「2001年だと…!?この場にあいつらがいなくてよかったよ」

 

キュアロゼッタも同情しているようである。坂本Bはそれを聞いて、ミーナBやバルクホルンBが同席していないことに『ほっとする』のだった。

 

 

 

 

 

 

 

――こちらは『プリキュア5の世界』。B世界のプリキュア5はA世界のプリキュアスターズや仮面ライダーらの庇護を受けることになったが、戦力と見なされていないことへの反発もあった。だが、実際の戦力差は大きかった。キュアハート、キュアダイヤモンド、キュアエースの三人は既に現役時代の最終時よりパワーアップしていた上、ロボットガールズの二人は技一つで地形を変えられる。更に、A世界のキュアドリームは完全にB世界の自分自身の追従を許さない戦闘能力を持つ上、その存在そのものも『単なる一プリキュア』では無くなっている――

 

「うへぇ……。なんかの戦争映画みたいだ」

 

「突撃銃を持った兵士が『BMW・R75』を乗り回してやがる……マジに装備を持ち込んでやがるな」

 

大ショッカーは大本がナチス・ドイツの残党なため、装備も基本的に第二次世界大戦中に使われていたものである。第二次大戦中の軍と親衛隊の部隊は当時そのままの服装をしているので、余計にナチス・ドイツの亡霊感がある。

 

「おい、ドリーム。なんで、ガキのお前がくっついてきてんだ?」

 

「すいません、ついていくって聞かなくて」

 

「私だって、同じ『キュアドリーム』なんですよー!それに、この世界のプリキュアとして……」

 

「気持ちは分かるけどさ、これは隠密行動なんだよ?…ったく。我ながら……」

 

「何よその言い方ー!」

 

「馬鹿、声がでかい!」

 

頭を抱えるキュアドリームAと、のぞみBのやり取り。のぞみBは外見相応にあどけなさがあるので、年相応の少女なのだが、Aからすれば、『空気読め…』と言いたくなるが、言わば、『過去の自分自身』なので怒りにくい。

 

「どーします、先輩」

 

「お前のことだ。帰れといっても聞くまい。荷物でも持たせとけ」

 

「わかりました!」

 

「え、ち、ちょっ…」

 

荷物を押し付けた二人だが、のぞみBはマナと違い、普段の腕力は並以下であるため、荷物を持たせた途端に顔色が青くなる。

 

「お、おも……」

 

一瞬で青色吐息になるのぞみB。ドリームAは「忘れてた…」といわんばかりのリアクションであった。

 

「……お前、現役時代は腕力無かったんだな……」

 

「恥ずかしながら…。五キロのダンベルも持てなかったんで…」

 

「ガキの頃ののび太並だな…」

 

Aは鍛えたおかげで、変身しなくとも、重量物を運べるようになっているが、Bは現役時代ののぞみなので、素の腕力は『子供時代ののび太よりはマシ』な程度。黒江はAの身体スペックの高さは『素体の錦の高い能力が受け継がれた事によるもの』だという事を、この時に改めて知ったわけだ。

 

「しゃーない。俺がおぶってやる」

 

「す、すみません~…」

 

「ドリーム、戦車や装甲車はいないな?」

 

「いません」

 

「よし、学園の購買部があるとこまで、屋根つたいにいくぞ」

 

「了解!」

 

「行くぞっ!」

 

「へ、うわぁ~~!?」

 

黒江はのぞみBをおぶった状態で、屋根まで跳躍する。ドリームAも続く。

 

「あ、あなた、何者なんですかー!?プリキュアでもないのに、屋根の上までジャンプできるなんて!?」

 

「話せば長い。他のプリキュアから話を聞かなかったのか?」

 

「機会がなくて……って、うわ、あそこ!」

 

「お、スナイパーか!んじゃ、ドリーム。頼む」

 

「わかりました。ごめん、真琴ちゃん。技借りるよ。閃け、『プリキュア・ホーリーソード』!!」

 

ドリームAは転生に伴い、使う技に世代間の垣根を気にする必要が無くなったため、『技のデパート』と化している。これは転生したプリキュアに共通の事柄である。別に掛け声は変える必要はないが、元の使い手に気を使っているのである。ホーリーソードを使い、狙撃手を潰す。

 

「嘘、キュアソードの技じゃん!?なんでなんでぇ!?」

 

「説明は後!先輩、スナイパーは潰しました!」

 

「よし、このまま突っ切るぞ!」

 

「うわぁ~~!?」

 

黒江とドリームAは一気に駆け抜ける。のぞみBはわけの分からぬままに黒江におんぶされている。二人がすぐにスピードを出したため、色々なショックもあって気絶してしまう。

 

「あ、のびやがった」

 

「ま、今のスピード、原付きくらいは出てますからねぇ。あ、あそこです」

 

「よし、降りるぞ」

 

建物を伝い、学園の購買部があり、皆で食事をしていた場所に降り立ったドリームA。事態が事態なので無人だが、世界が違っていても、景色は同じであることに感動したのか、涙腺が緩む。

 

「なっつかし~~!何年ぶりかな~…。あ、メニューも同じだ~!!」」

 

ドリームAは感覚として、母校に足を踏み入れたのは『数十年くらいぶり』なのだ。感動もひとしおである。平行世界でも『基本は同じ』なのだが、細かい違いがある事はあるので、それを覚悟していたためだろう。

 

「ま、今は買えねーけどな」

 

「それ、言わないでくださいよ~」

 

「しかたねーだろ。…よっと」

 

 

辺りを一応、確認しつつ、気絶しているのぞみBを下ろす。

 

「あ、つきました?」

 

呑気な一言に呆れ顔の黒江。

 

「お前なぁ…。しっかし、シャーリーのいたって街もそうだけど、この学校のあたりって……洋風だよな」

 

「この辺り、戦前戦中は華族の保養地だったんですよ。その名残りです。旧校舎にこの辺りに住んでた外国の伯爵の幽霊が出た事あるけど、その幽霊の生前の恋人がりんちゃんに瓜二つで……」

 

「りんの先祖か?」

 

「さー?詳しく調べようにも、その時の時点で有に60年は昔の事だったし、持ち主も戦後に何回も変わったらしくて」

 

「華族は戦後に少なからずが色んな理由で没落したからな。土地を戦後に売ったんでもしたんだろう。それで何十年かして、安く買った土地に私立の学園が立てられた…。よくある話だよ」

 

「あれ?そっちも、あのことはあったの?」

 

「うん。だって、あたしは現役を終えた後だし、それで先輩のいる世界にいるんだよ?そこは同じだって」

 

「なるほど~。でも、あいつら、本当にナチス・ドイツの生き残りなの?」

 

「装備や服装は見たでしょ?外見が年を食ってないように見えるのは、体をサイボーグ化したりしてるから。普通に考えて、第二次大戦中に戦争行ってる世代なら、今の頃には普通に生きてれば、ヨボヨボになってるっしょ」

 

「それもそうだ」

 

「だから、お前をできれば矢面には立たせなくなかったんだよ。これは俺たちが持ち込んじまった問題だしな。だが、フェリーチェとピーチがお前らを巻き込んじまった以上、そういうわけにもいかなくなったわけだ」

 

「事情は途中からはわかってました。だけど、かれんさんとこまちさんを盗られる気がして……。なんだろう。同じ自分なのに、私自身じゃない子が本当にいて、その自分を助けたいっていう……ラブちゃんとはーちゃんの気持ちが伝わって……。どうしたらいいのか、全然わかんなくなっちゃって…。私自身が行けばいいんじゃないかって思って、拗ねてたっていうか、引っ込みがつかなくて……」

 

「それで、フェリーチェとピーチにボコボコにされたわけか」

 

「はい…。それと、もう一つ。他のプリキュアから『凄くカッコよくて、イケてる』噂が伝わってくるのが、なんか悔しくて…」

 

「プレッシャーに感じてたんだね」

 

「うん…」

 

のぞみBはここで、心のつっかえになっていた思いを吐露した。引っ込みがつかなくなり、なぎさとほのかから聞かされた『プリキュアのタブー』を破ることになってしまった罪悪感からの告白だった。そして、Aがかれんとこまち、コージ、ことは、ラブの助力と尽力で精神バランスを取り戻し、みらい、リコ、ことはの世界を滅ぼした敵と『和解』を選んだ事は自分にはプレッシャーであったと認めた。

 

「みらいちゃん達の世界を滅ぼした敵と和解する…。そんな選択、私にできるか…」

 

「うん。みらいちゃんとそれで殴り合ったよ」

 

「え!?」

 

「うん。月面でちょっと…」

 

「つ、つ……月ぃ!?」

 

「それで、お互いに最強のパワーで殴り合ったもんだから、巻き添え食った宇宙戦艦を沈めやがった。凄まじかったぜ、こいつらの大喧嘩」

 

呆れ気味の黒江。トンデモ情報に目玉が飛び出る勢いで腰を抜かすのぞみB。赤裸々にその事を公にするキュアドリームA。黒江曰く、「全長400mもある宇宙戦艦がパンチでへし折れた』というほどの大喧嘩。月面を舞台に繰り広げた壮大な『最強形態の無駄遣い』な大喧嘩。

 

「つまり、お前自身が得た新最強形態とアレキサンドライトスタイルのキュアミラクルがガチンコで殴り合ったわけで…。壮大な無駄遣いといえるな」

 

「えーーーーーーー!?」

 

のぞみBも朝比奈みらいのプリキュアとしての最強の力『アレキサンドライトスタイル』の事は知っている。それとガチンコに殴り合ったA。この事実はのぞみBには驚天動地もの。大声を思わずあげてしまうのだった。

 

 

 

 

 

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