ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

333 / 788
前回の続きです。


第二百十六話「震電という翼、そして、黒江の新たな友人」

――震電改は扶桑純国産機の最後の光芒であった。改一は計画が土壇場で中止とされたが、人は集めた後だった秋水の運用要員の救済措置で造られた側面があり、ゼロ距離発進のためのロケットブースターの存在や秋水の装備予定の部隊に初期生産機が回されたり、緊急時の『ロケット式の発進』など、秋水の代替機として用意されたと言える。実機の秋水は人が溶ける燃料など、『曰く付き』の代物だったので、日本の介入後は真っ先に中止にされたが、救済措置が必要な段階になっていたため、震電改一型が割り当てられたところもある。二型が計画の本命である事から、凡庸と見なされていた一型はさほど期待されていなかったが、B-36をも超える高空を飛翔できるB-47の登場が間近であるという情報に顔面蒼白となった1945年冬当時の扶桑軍は震電の計画を復活させる口実を得た際に、『手っ取り早く量産可能な廉価版』を造ることにした。これが改一型の起源となる。折しも、秋水が土壇場で計画中止となり、人員がまるごと宙に浮いてしまったため、その人員を改一型の開発に横滑り的に充てた。その結果、初飛行はこちらのほうが早く終わった。だが、予定エンジンの『ネ790』ジェットエンジン(J79のライセンス生産型)が遅れ、別のエンジンを積んだことで航続性能が低下した。そのエンジンは『JT3C』のライセンス生産型の『ネ350』であった。(扶桑はエンジンの命令規則はネ20以来の命名規則をライセンス生産型にも適応し、それをしばらくは継続する。戦前期からの航空業界を知る世代の技術者達の最後の意地であり、戦前期はアジア最高の領域にあった日本の『敗戦で失われた航空大国の夢の残像』と言えるものだった。結果的に日本から『夢』を奪う形となったアメリカ合衆国は寝食も惜しんで、涙ぐましい努力をしている扶桑の航空技術者の意地に同情し、技術を与えていった。たとえ、『自国製航空機を買わせて、彼等に造らせる』ための技術提供であろうと、そこには必死に努力をする扶桑の技術者たちへの同情があったのも事実だ。)――

 

 

 

 

 

――だが、その努力を嘲笑うかのように、日本の防衛省背広組が扶桑の独自開発に冷淡であるという皮肉が存在していた。日本側は知っていた。震電や烈風が間に合ったとしても、『F8FやP-51Hに敗れ去る』未来が表れていただろう事を。故に、扶桑独自の航空機開発をやめさせるための好機として、『ウィッチ・クーデター』を利用した面がある。だが、扶桑の航空技術者はモチベーションを『未来がある』震電に賭けた。残された夢である『日本連邦による日本連邦のための新たな翼』を実現させてくれる最後の希望。震電はレシプロ機として、実戦を飛ぶ事はウィッチ世界でも叶わなかった。だが、次世代の翼である『ジェット戦闘機』としての未来に開発陣は賭けた。ウィッチ世界では色々な理由で肯定的に見られていなかったジェットという技術だが、ダイ・アナザー・デイで黒江達の駆ったF-20やドラケンなどの機種が圧倒的な空戦を見せたことが結果的に『疎んじる』負の感情を羨望へと変えた。レシプロ機では到達できない疾さ、高さ、実現できない機動…。その全てをそれらは見せた。焔の鬣の一角獣と共に。64Fのダイ・アナザー・デイでの孤軍奮闘の証であり、『野中部隊』の散華という絶望を希望へ変えてみせた音速の翼。更にジェットエンジンであれば、レシプロ機では大馬力エンジン機でやっとできた戦闘爆撃機を一流と言える水準で実現可能。この事実は魅力的であったが、ジェットはレシプロ機より遥かに高額な兵器であり、列強諸国であろうと、いきなりの全取替は色々な事情で不可能であった。扶桑も1949年当時はレシプロ四発~双発機を退役させたものの、比較的に高性能なレシプロ単発機のターボプロップエンジン化での延命が進み、高価なジェットで機材を統一できている部隊は優遇されている攻勢部隊と本土と台湾、南洋の主要都市の防空部隊、それとダイ・アナザー・デイで必要であった戦略爆撃機の部隊のみであった。震電改一は『廉価』、『そこそこの性能』を両立させるため、性能水準は史実の第二世代ジェット戦闘機の範疇に収まる程度。ある意味では『時代相応』と言える。日本側のある敏腕で鳴らす防衛官僚は後に、震電改一のみであれば、採用はしなかっただろうと述べている。震電改二という本命のためのデコイ。それを日本の防衛省も認識したからこそ、震電改二のためにシリーズをまとめて採用したのだ。同機にはそれだけの価値があった。奇しくも、空軍への海軍系人材の提供と運用に協力したのが、当初は移籍が忌避されつつも、兵たちの嘆願で移籍が認められつつも、政治的都合で閑職に回された大西瀧治郎中将であったのは、史実の自分の愚行への懺悔と禊のつもりであったのだろう。大西は『多くの若者と陛下へのせめての禊として、空軍の組織作りを使命としたい……』と語っており、狂気に染まっていった史実の自分を客観視することで、若者と天皇への禊をするというのが口癖になっていった大西。彼は批判がつきまといつつ、空軍の閑職に甘んじていくのだった。また、防空の枠組みは完全に日本側が主導して構築され、装備配備の優先度は64Fよりも高くされたが、後に同等に改められた。これは攻勢の必要が出たためであった。――

 

 

 

 

 

 

 

――ティターンズは一時は地球連邦軍全体を掌握したが、グリプス戦役で敗北し、クワトロ・バジーナの演説で大衆の支持を失った後は反逆者、反政府運動のレッテルを張られた。エゥーゴが勝利し、解体後に残存兵力の多くがネオ・ジオンに属した事も『連邦を割るために、連邦軍に潜入していたジオン軍』という情報工作を大衆が受け入れる下地となった。ムーンクライシス戦役が終結し、ネオ・ジオンが解体された後、連邦軍に恭順した将校の少なからずは元ティターンズの将兵であったように、ネオ・ジオンも一年戦争の勇士の過半数を失った後はティターンズ将兵を買収し、将校の頭数を揃えていたに過ぎなかった。ティターンズとジオンが保有していた兵器も多くがブラックマーケットに流れ、その少なからずは組織の手に渡った。遠征軍がMSやスーパーロボを持ち込んだ一つの理由は、組織にそれらが流れたという情報がプリベンターより報告されたからだ。ティターンズはドラえもん達の手でガンダムGPシリーズの情報を抹消した事が明るみに出た結果、ますます立場が悪化。連邦軍扱いされることは公の場では無くなり、GPシリーズのレプリカが製造されたり、連邦軍もエゥーゴ寄りであった改革派が勝利したために、最終的にその真逆の解釈を黙認した。とはいえ、ティターンズ将兵はバスク・オムに媚びていた武闘派以外であれば、元々が精鋭部隊の触れ込みであったため、少なからずが復権に成功し、幸運にも、ロンド・ベルに属せたケースもある。また、アナハイム・エレクトロニクスも野比財団がビスト財団を蹴落として、次の支配者の地位に収まり、デラーズ紛争以降のジオン残党との経営陣の癒着を糾弾した結果、アナハイム・エレクトロニクスはプリベンターによる莫大な罰金や戦艦製造での指名停止処分を甘んじて受ける形になり、戦艦建造分野でのシェア獲得を棒に振る形となった。(この時、南部重工業やネルガル重工などの日本系の造船会社の台頭、ヴィックウェリントン社がラー・カイラム級などの採用やラ級戦艦の改装で主導権を握った事で中興したため、アナハイム・エレクトロニクスが戦艦のシェアを得る余地はなかったのだが)だが、デラーズ紛争の惨禍でティターンズに同調していた連邦軍の一般将兵たちの多くは理不尽な体制と大衆の掌返しに遭い、行き場を求めた挙句に自分達が憎んだはずのジオン残党に合流し、結局はムーンクライシス事変の片棒を担いだ者が多かった。皮肉にも、『連邦軍に侵入していたジオン兵』という彼らへ貼られたレッテルを自ら肯定してしまっていたという事態に気づくのは、事変の戦後処理での事。ティターンズ残党はそれを利用し、デラーズ紛争以前の惨禍を知る世代の連邦軍将兵を取り込み、人材を確保し始める。皮肉な事だが、ティターンズはどうであれ、デラーズ紛争以前の惨禍を知る世代の連邦軍将兵の溜飲を下げる存在であった。ウィッチ世界に結果的に逃れた残党が1990年代まで存続した理由の一つが古参世代の正規軍将兵の取り込みだったのだ――

 

 

 

 

 

 

 

――ティターンズは結局、その意を受けて動いていた憲兵部も巻き込んで、ティターンズの組織は解体。人員もグリプス戦役の戦犯とされ、デラーズ紛争からの暗躍が白日の下に晒された結果、連邦軍の暗部を押し付けられる形で四割が『反地球連邦のテロリスト』として処刑されたが、三割はロンド・ベルなどに(ティターンズ所属の過去を抹消した上で)属し、三割はジオン軍に転じた。かのベルナルド・モンシア、アルファ・A・ベイトらも最終的には火星のジオン・コミュニティに媚びる悲惨な日々を送っている。それと対照的に、ヤザン・ゲーブルはネオ・ジオン解体後はゴップに取り入る形で偽名を得て連邦軍に復帰し、以前からゴップの子飼いであったように振る舞っている。彼がもっとも逞しいティターンズ将校であった。(アムロやカミーユと互角に渡り合えるとされる腕があったため、拾われた)ティターンズ寄りであった者たちの多くはツテがあれば、民間軍事会社に転じたり、偽名を得れるが、それは少数。多くはジオンシンパの疑いが冤罪含めてかけられ、ティターンズの元々の発祥元である(ティターンズはジャミトフ・ハイマン麾下の憲兵隊が肥大化した産物でもあった)憲兵隊の人間は多くが冤罪で極刑にかけられたり、エゥーゴ/カラバ出身者の手でリンチされるなどの苛烈な報復に遭い、その結果、なり手が大きく減少。プリベンターの手で一旦の解体がされ、人員の入れ替えがなされた。ティターンズ残党はこうした『グリプス戦役後の掌返し』を上手く利用し、将校の人材を確保。シンパの手配で人材を得ていた。これはウィッチ世界のウィッチ同士の戦闘が懸念されたほど起こらず、結果的に『巨大な力』に頼る事で軍での居場所を守った航空ウィッチだが、この時代以降、『戦局に寄与しなかった』として急速に権威を喪失していく。ティターンズが力に驕った結果、滅亡したように、航空ウィッチは『自らの優位性に驕り、近代兵器にも対抗しえるであろう存在を軽んじ、秩序に拘った結果、身を滅ぼしかけた』経緯と共通していた。江藤が参謀職就任後にこのことに気づき、この時期にはかつてと正反対に、広報業務に力を入れる参謀として知られている。黒江らを宣伝する事で、ウィッチたちに訓練を単純に終えただけで『近代兵器と並び立つと思わないことだ』と思い知らせる役目を選んだ。江藤はGウィッチで唯一、後方任務を仕事場に選んだが、それは事変の際の罪の償いのためであった――

 

 

 

 

 

 

――プリキュア5の世界――

 

「なんで、こんなのを持ち込んだんです?」

 

「一つの理由がある。ある一つの世界で宇宙戦争があった。人同士のな。地球に残った人間と宇宙移民の対立が破局に至った結果…」

 

「オーストラリア大陸の16パーセントが消滅するほどの大惨事を起こした」

 

「え!?」

 

「スペースコロニーって知ってるでしょ?SFに出てくるあれさ。あれを質量弾のように地球に落としたのさ。その結果、シドニーとキャンベラは地殻ごと消滅。オーストラリア地域は最大都市と首都を失って、その後に片田舎に零落。北米も戦乱で荒廃。その前の世界大戦やその後の宇宙戦争もあって、21世紀の姿を旧主要国で留めていられたのは、日本と英国くらいなものさ」

 

のび太と黒江がのぞみBに語った自分達が戦う場所のこと、自分達が何を警戒しているのか。そして、ナチス・ドイツが後世の国家や組織に多大な影響を及ぼし、それが宇宙移民時代に壮絶な大戦を招き、その禍根が少なくとも10年以上も戦争を招き、その流れを断ち切るには『宇宙人や宇宙怪獣の襲来』が必要であった事が語られる。やがて、恐竜帝国やミケーネ帝国、百鬼帝国といった地下勢力も台頭し、マジンガーZ、グレートマジンガー、ゲッターロボ、ゲッターロボGなどが相次いで登場していった事もかいつまんで説明された。

 

「そんな世界にいるんですか?」

 

「俺はな。こいつはお前と同じ時代の人間だよ。ただし、漫画と違って、1988年の生まれ。この時代だと、19歳の大学生だ」

 

「僕がいるのは2021年だから、もう三十路の子持ちだけどね」

 

のび太は2021年当時の30代当時の姿であるので、まだ青年と言えるくらいの若々しさはあるが、一児の父としての落ち着きが垣間見える。のぞみAの義父であり、ことはの義兄。なおかつ、既に小学生の息子がいる身でもある。

 

「おまけに、はーちゃんと出会って、もう20年だしね。君自身とも四年くらいだね」

 

「に、二十年!?」

 

「ほら、あの子は歳食わないじゃん?」

 

「そ、そういえば……」

 

ことはは元が神格の存在であるため、因果が改変されようと、不老不死である点は変わりがないため、のび太が11歳から32歳へ加齢しても、ことはは姿が変わらない。(服装は変えている。2010年代以降はプリキュア姿での活動も多い)その兼ね合いで、のび太は時たま、数歳ほど若返ることをしていたため、93歳まで存命するのである。21世紀では『長寿だが、ありふれている範囲』の寿命だ。(本来の肉体の寿命は80歳代くらいだった事が窺える)

 

「俺の故郷は魔法のある第二次世界大戦の時代の世界だ。その頃に軍隊にいる20そこそこの俺は、この時代にはヨボヨボの婆さんだが、異世界に渡れる技術を持った世界と交流が始まったから、こうして、お前さんと会ってる。分かるな?」

 

「え、ええ…」

 

「今のうちに別のお前と出会った経緯を話しておきたい。そして、この世界を巻き込んじまったナチス・ドイツ残党との戦争の事、お前らに助勢した仮面ライダーの起源を……――」

 

 

黒江はのび太と共にのぞみBに、Aと自分達の出会いの詳細、何故、『ナチス・ドイツの生き残り』が世界を股にかける行動を取れるまでの勢力を保ったのか?仮面ライダーの起源とは?そのことを語った。Aは元の世界から転生した後に日本軍の航空部隊の士官になっており、自分の部下になったあたりで『夢原のぞみ』としての記憶、プリキュア能力、生前の容姿を取り戻した。それ以後は夢原のぞみとしての第二の生を選び、転生後の家族とは事務的な付き合いに留めて生活していること、教諭は志望したが、士官学校卒の将校であったのが災いし、官僚に話を潰されてしまった。結局は軍隊に骨を埋めることとなったが、昭和天皇の許可が出ていた話を独断で潰した文科省は顔面蒼白になったこと、のび太のいる2021年の日本は文部科学大臣の謝罪会見やら、扶桑の予備役軍人の制度を混乱に陥れた責任を取らされていることが語られた。Bにとっては遠い世界のようだが、別の自分が直面した出来事であるので、他人事には思えなかった。また、ナチス残党は仮面ライダーを生み出した親のような存在であること、仮面ライダーは元は組織の生み出した改造人間で、ゴルゴムという組織が有史以前から生み出した『世紀王』と似通った外見を持つなどの情報も伝えられた。仮面ライダーBLACKは初代からZXまでとは完全に別の技術の改造人間なこと、あのスタイリッシュな装甲の中身はバッタ怪人である事も教えられる。

 

「嘘ぉ……あの中身、バッタ怪人なんですか」

 

「変身する時に一瞬見えるだろ?あれが素体だ。あれが人型の装甲を纏った姿がBLACK。それが太陽光のエネルギーで進化して、バッタ怪人の姿に近づきつつ、スタイリッシュな姿になったのがRX。BLACKとは同一人物であるけど、違う経緯を辿った世界の人だ」

 

「RX……」

 

「最強の仮面ライダーの一人だ。BLACKの更に数十倍ともいうパワーを誇るからな」

 

「数十倍……」

 

「進化したんだ、BLACKの時に発揮しきれなかったキングストーンの力がフルに発揮されてる結果だ」

 

「BLACKは完全体じゃないんですか?」

 

「元は代々、対になるキングストーンを持つシャドームーン……。ほれ、なぎさや咲から聞いたろ?あの銀色の仮面ライダーっぽい奴。そいつと争って、勝った側が二つのキングストーンを一つにすることで、『世界を支配する』とされてる。これは当事者だった光太郎さんの証言だがな。RXは月のキングストーンで進化するはずの部分を太陽光で補って進化した存在。ゴルゴムにとってもイレギュラーだと思うぜ」

 

「あんなに強いBLACKが霞むなぁ…」

 

「誰もが思ってるよ。リボルクラッシュが命中すれば一撃必殺。ピーチに変身してた俺のダチ(智子)が真似たが、それでも再生幹部を一撃で貫いた。なぎさが言ってたろ?」

 

「そんなこと言ってたっけ…」

 

「あれは一度、命中すれば一撃必殺だが、防がれたら、万事休すになる。RXも一度だけ防がれた時は大ピンチだった」

 

――RXのリボルクラッシュを防いだ怪人はグランザイラスのみであるので、グランザイラスはヒーローユニオンの総攻撃すら無傷でしのぎ、至近距離からのプリキュアオールスターズの合体攻撃も一切寄せ付けないなど、外部からの攻撃を無効化する強固な装甲を備えていた『クライシス帝国の最終兵器』であった。だが、大地の精霊が力を与えた仮面ライダーZOとJの参戦で自慢の装甲を見事に貫かれ、最後は内部から破壊する事で『死中に活を求めた』バイオライダーに倒されたが、プリキュアオールスターズやヒーローユニオンがその時点の総力を結集しても圧倒され、バイオライダーが『死中に活を求めた』という特筆すべき功績を挙げた唯一のクライシス怪人であると言える。それを話す――

 

「そのケースはレア中のレアケースだが、お前らが強化フォームで戦っても手も足も出ないって状況になったのは、それ以外にもある。Aはそれでイカれかけた事があってな」

 

「どういうことですか?」

 

「りんから聞いてないのか?その時――」

 

黒江はその時のAのことを話す。憎悪を顕にし、殺意を口走ってまで戦ったが、その時点の最高の力を以てしても歯が立たなかったこと、りんとの友情を嘲笑された事などがトリガーになり、ダークプリキュア化しかけてしまった事を。それからは情緒不安定に陥り、敵を殺しかける、テロリスト集団の捕虜をボロボロになる(顔の形が変わるほど)までプリキュアの姿で殴り続ける愚行を犯すなど、精神が危険信号点滅の状態になってしまった事を伝える。Bには信じられないが、それはAに起こった事実なのだ。

 

「それで、はーちゃんとラブがかれんとこまちをこの世界から強引に連れて行った」

 

「あの子らを責めるなとは言わないさ。こちらの都合だけで連れて行ったし、君が反感を持つのも仕方ないと思ってる。その償いがこの戦いなのさ、のぞみちゃん」

 

「……私自身がかれんさんとこまちさんを求めたのなら、私もこれ以上は言いません。むこうのりんちゃんに言われたんです。あなた自身がかれんさんとこまちさんを求めた。あたしとの記憶を嘲笑られる事に怒った。それはどこの世界でも、あたしたちの友情が変わらない証じゃないの?って。だから、受け入れる事にしたんです」

 

「お前らしいな」

 

「気づいたんです。私も……同じような事しちゃうっていう可能性に。りんちゃんに何かあったら……頭がこんがらがって…。向こうの私はそれで…」

 

「当たりだ。二人が来たタイミングがちょっと遅ければ、心が壊れた可能性も無きにあらずのところだっただろうな。りんが元に戻ってからも、口調が荒くなったり、マジンガーと融合したからか、江戸っ子っぽくなったりな…。ある意味、東京に住んでるから、合ってるといえば合ってるが…」

 

「えーーー!?なんでなんでぇ!?」

 

「Aは東京在住なんだよ」

 

「ほら、僕は練馬区に住んでるから」

 

「あーーー……って、なんでぇ!?それだけだと、江戸っ子気取りできないじゃんーーー!」

 

「んーー。多分、融合したマジンガーの影響だろうね。融合したマジンガーのパイロットだった兜甲児さん、ちゃきちゃきの江戸っ子だし」

 

のぞみAは江戸っ子のような言い回しも用いることがある。中島錦が関東在住だったり、ZEROの抱く往年の若かりし頃の兜甲児に精神的に影響されたなどの理由だ。生前は列車で首都圏に来れる範囲の近郊に住んでいたが、転生後は東京に在住している。のび太は苦笑いだ。

 

「おまけに、僕も先祖代々の江戸っ子でさ。僕の六代か七代前には、江戸のすぐ近くに移住してきたらしいし。それで感染っちゃったかも」

 

「ん?ああ、悪い。異世界の友達から電話だ。ああ、おお、有馬記念で勝てたって?おめでとうだな。後で俺から……」

 

「え、異世界同士で電話できるんですか!?」

 

「ああ、異世界を渡れる技術がある以上、通信手段もあるよ。もっとも……色々な理由で、今は軍用に限られてるけどね」

 

「ん、待ってください、有馬記念って競馬のレースじゃ?競馬ですか?」

 

「ああ、説明するよ。綾香さん、前に任務である『世界』の調査に同行したんだけど、その世界で友達になった子のツテで詳細を調べることができたんだけど……その世界……説明しづらくてね。」

 

「え?」

 

「有名な競走馬が擬人化した存在……いや、馬が人型に進化して共存してるのかはわからないけれど、そういう存在がいる平和な世界でね。ボクも綾香さん名義で、その世界に出資したところ」

 

「そ、そんな……いいのかな、そういうの?」

 

「船の魂が九十九神みたいな存在がいるから、馬が人みたいに進化してもおかしくはない。サラブレッドが人型に進化したような存在だけど、見かけは僕たちと変わりないよ。実在した競走馬の魂が転生したと思われるところもあるけど、謎の多い種族さ」

 

のび太はデザリアム戦役の直後あたりに、その世界のことを聞かされたが、実際にその世界に行き、レースを見たことで確信を持ったという。有名な競走馬の名を受け継いでいると思われる者が多いが、サラブレッドとしての血縁関係をそのままは引き継いでいない場合もある。

 

「綾香さんが話してるのは、『トウカイテイオー』。90年代に名を馳せた名馬の名と宿命を受け継いだと思われる子さ。僕たちが出会った時には、色々な不幸で思い悩んでいたようだけど……、彼女の一番の親友との約束を果たせたようだね」

 

のび太が黒江の電話の相手が誰であるか教える。トウカイテイオーという競走馬の名を持つ『ウマ娘』。同名の競走馬の辿った運命通りに怪我を繰り返してしまい、後遺症で全盛期の実力を失ってしまったことや、医師からの宣告で強い精神的ショックを受け、思い悩んでいたところに黒江やのび太と出会ったわけである。そこに運悪く、悲報が舞い込んだ。彼女の親友のウマ娘『メジロマックイーン』がウマ娘にとっては致命傷と言える『繋靭帯炎』を発症してしまった事を知らされたのだ。ショックを受けた彼女は親友のもとに向かおうとしたが、それがどういう病気であるか、遊び人の次兄の友人が競馬で調教師をしている関係で知っていた黒江は『君にできることはもう……』と止めようとしたが、テイオーは『やだよ!!マックイーンと約束したんだ……きっと…!』と泣きじゃくった。のび太がテイオーの意を組み、どこでもドアを出し、メジロマックイーンのいるところに向かったのだが……。ドアが開き、雨が降る彼女の邸宅の練習場につくと……。

 

――その時の様子を少し……――

 

「マックイーン!!」

 

叫び、顔は青ざめ、泣きそうになりつつも、メジロマックイーンに駆け寄るトウカイテイオー。彼女の目の前に飛び込んできたのは、雨が降りしきる中、地面に倒れ込んでいる親友のメジロマックイーンの姿だったのだ。青ざめて当然だ。黒江はその様子を見て、何があったかを悟った。そして、こう漏らす。

 

「やはり……。」

 

「どういう事……?」

 

不安になったトウカイテイオーが聞く。黒江はそれに答えた。

 

「俺の兄貴の友人から聞いたんだが…繋靭帯炎は選手生命を終了に追い込む致命傷だ。この子はその痛みで気絶しちまったんだ……まずい、すごい熱だぞ!?」

 

メジロマックイーンの顔が赤いことに気がついた黒江はマックイーンのおでこを触ってみる。すると、すごい発熱がある事がわかった。

 

「この雨だ……肺炎起こしてる可能性もあるよ!」

 

「不味いな……医者呼んでる時間はないぞ、お医者さんカバンを持ってきてるか!?」

 

「うん!応急処置はできるはずだよ。それと医療用のナノマシンを!」

 

「よし、上出来だ!」

 

黒江とのび太は急いで手当の準備を整える。それを見守っていたトウカイテイオーは事の重大さを悟り、こう懇願した。

 

「マックイーンを助けて、お願い……!」

 

「ああ。やってみるさ……!」

 

黒江は必死になりつつ、テイオーにそう言い、お医者さんカバンで往診する。診断結果は雨に打たれたことで風邪を引いたのと、繋靭帯炎が左足に起こっていることだった。黒江は風邪に効くワクチンと、マックイーンが絶望してしまった一番の原因である難病『繋靭帯炎』を根治させられる可能性を持つ服用薬を医療用ナノマシンと共に投与した。ドラえもんの時代と23世紀当時の最新医療のダブルコンボである。それを投与した後は雨をしのげるキャンピングカプセルのベットに寝かせた。それから30分後……。

 

「こ、ここは……わ、わたくしはいった……」

 

記憶が飛んでいる様子を窺わせるメジロマックイーン。銀髪の長い髪の毛、端正なプロポーションは彼女が『名馬の名を持つ存在』である事の証明であった。

 

「あ!!良かったぁ~~!マックイーン、気がついたんだね~!」

 

「て、テイオー……」

 

メッシュの入った前髪の小柄なウマ娘であるトウカイテイオー。実はメジロマックイーンより年下なのだが、学友でもあるので、親友としてタメ口を聞いている。

 

「目覚めたようだね。えーと、メジロマックイーンくん?」

 

「あ、あなたは……」

 

「俺は黒江綾香。故あって、友人と街に来ててね。トウカイテイオーくんに街を案内してもらったんだが……。君がいなくなったと聞いてね。駆けつけたら、君が倒れていた。介抱させてもらったよ。今、友人に君の家に説明しに行ってもらっている」

 

「そうですか、ありがとうござ……!?」

 

そこまで言った段階で、自分に何があったかを思い出し、顔色を失うメジロマックイーン。そして。

 

「テイオー……ごめんなさい…わたくしは……わたくしは……」

 

自分に何があったのか。それを思い出し、泣き出すメジロマックイーン。

 

「君が繋靭帯炎を発症している事は、君の執事さんから聞いた。お節介なようだが、君の病状は我々が持っていたメディカルキットで処置を施させてもらったよ。風邪も引いていたようで、あと少しで肺炎になりそうだったからね」

 

「し、処置!?そんな、繋靭帯炎はウマ娘にとって不治の病……。どんな名医にも……」

 

「細かい説明は後でするが、君も気づいているはずだ。左足の痛みは無くなったはずだ」

 

「……え!?」

 

マックイーンは言われるままに、繋靭帯炎を発症しているはずの左足を動かしてみる。すると。気絶寸前まであったはずの激痛が嘘のように消えていたのだ。魔法がかかったかのように。

 

「すっごーい!!魔法でもかけたの~!?」

 

「いや、俺、治癒魔法の使い手じゃねーし……」

 

「つ、使えるんだ……魔法自体は…。」

 

「攻撃魔法と飛行、身体強化魔法はな」

 

テイオーも予想外の返事がきたため、あっけらかんとしてしまった。ここから黒江は二人に自分は『魔法のある別の世界から調査に来た航空自衛官』である事を明かす。その世界でも最新の医療技術を用いたことで、繋靭帯炎を治した事を。

 

「あなたの世界、どういう世界なんですの?繋靭帯炎を投与薬で治療できるなんて……。」

 

もっともな疑問をぶつけるメジロマックイーン。黒江は苦笑交じりに答える。

 

「話せば長い。君とテイオーくんの感動場面をぶち壊す事になっただろうことについて、先に侘びておく。そもそも――……」

 

 

 

 

 

――話は戻り――

 

「――これが出会い。ちょっと強引だったけど、その子の怪我を治したから、もうひとりの子からすごく感謝されてね。で、僕たちへの感謝と怪我した親友へのこれまでの恩に報いるために、その子、有馬記念相当の大レースに出場する事になった事までは聞いてたんだけど、今日がその日だったんだな」

 

「なるほど」

 

嬉しそうにトウカイテイオーとタブレット越しに会話する黒江を見て、のび太は事の次第を悟ったようだ。トウカイテイオーのちょっとあどけなさを感じさせる高めの声が時々漏れる。実はトウカイテイオー、黒江たちと出会う前に三回目の骨折をし、一年間レースに出られず、度重なる負傷の後遺症で全盛期の実力をすっかり失い、心無い者たちから『トウカイテイオーは終わった』、『スパッと引退したほうが晩節を汚さないのに』、『引き際を考えろ』と陰口を浴び、バッシングも受けていたのだ。初対面の黒江たち相手には、表面上は明るく振る舞ったが、それまでの心の支えを失ってしまったことや、憧れの先輩と交わした約束を果たせなかったことでの絶望に苛まれ、思い悩んでいたのだ。そこに降って湧いたような『神様の侘び』のような幸運。親友を絶望の淵から救ってくれた事、自分に『この世に光がある限り、希望は必ず見つかる』事を再認識させてくれた二人に感謝を伝えたいと、トウカイテイオーは有馬記念に招待したいと述べ、招待券を後日に渡した。だが、それは二人の今回の任務で叶わなかった。しかしながら、レースの日付は聞いていたため、二人とも、その結果が気になっていたのだ。

 

 

「勝ったんでしょうね、その子」

 

「電話してきたんだ、そうだろうね」

 

嬉しそうな表情の黒江を微笑ましく見つめるのび太とのぞみBであった。

 

 

 

――ここより後日。トウカイテイオーから話を聞いた、トウカイテイオーが姉のように慕う『シンボリルドルフ』、メジロマックイーンから話を聞いた、彼女と腐れ縁である『ゴールドシップ』の両名がのび太と黒江に感謝の言葉を伝える事になる。黒江はルドルフがテイオーの競走馬としての親である事や、競走馬としてのゴールドシップがマックイーンの孫にあたる事をその時には調べていたため、史実の血縁に囚われない不思議な関係がウマ娘にあるのを実感するのだった――

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。