――黒江はこのプリキュア5の世界への遠征は急な任務であり、本当なら、休暇をとって、友人になったウマ娘『トウカイテイオー』の晴れ舞台である有馬記念を見に行くはずで、トウカイテイオーの関係者ということで、観戦チケットももらっていたのだ。そのため、黒江は遠征を手っ取り早く終わらせたかったのが本音だ。しかし、そうは問屋が卸さない。ナチス・ドイツ軍は強力な装備を持ち込んでいたのである。そして――
「奴等、こんなのを手に入れてたのか!バーザムなんて高品質のMS、どこのブラックマーケットから流れた!?」
黒江は敵がティターンズ最後の主力機『バーザム』を手に入れてた事に驚愕した。ブラックマーケットに流れるのは、せいぜいが1.5世代機まで。使われる技術が高度化された第二世代機以降のMSはプリベンターの監視の目があるので、滅多に市場に出ないはずだからだ。だが、実際にはティターンズを支持していた派閥は根絶されてはいないため、その派閥の手でティターンズ系MSは監視の目を逃れ、反連邦組織の手に渡っていく。ジオン残党が自然消滅を待つだけになった時代、皮肉な事に、ジオンが生んだ『地球生まれの双生児』と揶揄された『巨人』の最後のあがきはジオンの源流になった『ナチス・ドイツ』の支援でなされるため、ある意味では歴史の皮肉と言える。
「バーザム!?たしか、生産数って多くないはずじゃ!?」
「三桁しかないはずだ!最後の数ヶ月しか運用されなかったし。マークⅡの簡易型って建前でも、実際は基本構造もマークⅡの面影ねぇから、一部がバージムにされた以外は廃棄処分にされたはずだ!ジェガンやジムⅢに駆逐されたからな」
ティターンズは招来、ガンダムTR系で連邦のMSを統一する野心を持っていたが、実際には従来のジムとエゥーゴのネモを統合したジェガンとその後継機達がティターンズ系と旧来のジム系をほぼ駆逐して主力機となり、良くも悪くも、ジェガンはある時期からの地球連邦軍のある意味での顔役であり、ワークホースであった。ジムに代わり、地球連邦軍標準量産型に落ち着いたわけだが。
「旧式とはいえ、ガンダリウム合金製の機体だ。お前のV2の整備が終わっといて良かったよ。ガンダリウム合金は、実体弾だと破壊が至難の業だからな」
「ええ。ケイ先輩が急がせましたからね。とはいえ、ケイ先輩のノワール、どういう機体なんです?」
「ケイがゲッター艦隊にいた時に、エンペラーが地球型惑星の制圧用に造った端末を再現した機体だそうだ。エンペラーの起源はゲッタードラゴンだから、ドラゴン型になるのは分かるんだが、ゲットマシンが通常のゲッターロボとして運用できるってのは……ゲッターロボというより、光速電神アルベガスを思い出すぜ」
「ああ、どっかの漫画にキワモノ扱いされたの見たなぁ」
「だろ?」
ゲッターノワールは正確に言えば、圭子が持つ記憶にある『本物のゲッターノワールG』のデータを元に、エンペラーが存在する30世紀の技術を用いる形で再現されたレプリカ機である。機能と武装はオリジナルと同じだが、ノワールG形態の『シャインスパーク』にロックがかかっていないという違いがある。ノワールG形態であれば、23世紀最新のゲッターである『ゲッターロボアーク』も霞む超高性能。分離形態でもゲッターGと同クラスの性能であるので、23世紀の水準でいう『標準級のゲッター』として運用できる。それが最大の強みである。
「まさか、アレだけじゃなくて、ハイザックとか、マラサイとかのティターンズ系のMSがブラックマーケットに?」
「こりゃ、ティターンズへの在籍経験のある高官へプリベンターに査察入れて貰わんと……。あんなのがあったら、21世紀水準の世界じゃ太刀打ちできんぞ」
「それじゃ、先輩がV2ガンダムを用意したのは?」
「前の要請の補償もある。アサルトバスターにしたから、火力の『ありすぎる』X系列より取り回ししやすい。装甲とフレームも新式に変えたから、強度もX系に遜色ないそうだ」
――トウカイテイオーとの電話の翌日、黒江とキュアドリームAは引き続き、兵力の偵察に出たところ、バーザムが敵に配備されていることを確認した。バーザムはティターンズが機種統合計画での統合先にするのを目論んだ最後の制式生産機であり、第二世代初期(ジェガンはその最後期に属する)の中では高性能機に属する。しかし、バーザムはその独特の構造などが仇になり、一般向けの書籍には『准採用状態で生産された』とさえ記されているほどマイナーだ。しかし、実際には900機が生産(記録に残された数。実際には、工廠でもう数百機はあったという)され、その内、300機がグリプス戦役で失われても、廃棄処分を免れた機体はかなり存在しており、残った機体がブラックマーケットに流されたわけだ――
「操作性は?」
「V2はレジスタンスが設計してる。その分、Z系に比べれば遥かに楽だ。だから、Z系に乗った経験があれば、大抵の機体は乗りこなせる」
連邦系MSの操作難度はZ系を頂点にしてのピラミッド構造である。V2は高性能と操作性が両立された、ガンダムタイプとしては珍しい部類である。ガンダムはいつからか、操作難度が極限に達したマシンとなった。機体性能を存分に引き出せるニュータイプの搭乗が前提になったからだろう。マドロックの事例が連邦軍に与えた影響は甚大で、ニュータイプ、あるいはそれに近い力を持つ腕利きでなければ、使用が許されなくなったという。実際、ガンダムはアムロ、カミーユ、ジュドーなどのニュータイプが乗れば『時代を動かす』力を見せたが、コウ・ウラキなどのオールドタイプが乗った場合は戦略に影響を与えなかったケースが多数派である。そのため、オールドタイプが軍用のガンダムに乗れるケースは大きく減少した。とはいえ、ジムでの物量攻勢が通用しない相手に対してのガンダムタイプの投入は連邦軍系の勢力の戦術として定着している。また、スーパーロボットとの混成編成も研究されている。スーパーロボットの中では、マジンガーとゲッターは『比較的に集団戦に適応できる』からである。(単騎で事足りるスーパーロボットも多いため)
「V2かぁ。光の翼の応用百科見ないと…」
「MSにはMSだ。スーパーロボットの技は無駄な破壊を招くからな。奴らもお前の闘技を封じるためにMSや戦車を持ち出したんだろう。いや、俺も入るか。ヤークトティーガーの正面装甲は昔より強化されたのなら、傾斜したのを考慮しなくとも、有に270ミリを超える。お前らの現役当時のパワーでは破れん。それどころか、硬さで拳を痛めるだけだろう」
「現役時代のパワーで考えると、なぎささんとほのかさんくらいだろうな、そんな装甲をぶち破れるの」
「ドイツの戦争末期の重車両は200ミリ超えの正面装甲が多い。現役時代のお前らは中戦車は壊せても、重戦車と駆逐戦車は壊せんだろう。側面装甲を狙わせろ」
「言っておきます」
「クソ、テイオーから観戦チケットもらってたのに、無駄にしちまったよ」
「先輩のことだから、のび太くんちに呼ぶとか?」
「マックイーンのことでお礼がしたいと、向こうに言われてな。俺たちの世界は戦中だから、そこに呼ぶわけにもいかんだろ。それに、あの世界の子らを巻き込むわけにもいかんよ。俺には、あいつがグレースだったからと掌返ししたって陰口もあるからな。なのはの指導を誤った責任はあるが、あいつがプリキュアだったから、引き入れたわけじゃない。俺があいつの担うはずの役目を半分は奪ったようなものだったから、モチベーションを与えたかったんだよ。なのはの事は完全にミスだった…」
黒江は、なのはがあまりに教導隊の方針に忠実すぎる事を読めなかったため、数年経っても自分の読みの甘さを後悔している。のぞみがもう数日早く覚醒していれば、『任せた』と度々漏らしており、のぞみの教え方を高く評価していることが分かる。自分がシンフォギア世界滞在中、半分は立花響が担うはずだった役割を奪ってしまった事の自覚はあり、その罪滅ぼしのため、モチベーションを与えたい小日向未来と相談した結果、響たちへ要請を出したわけだが……。
「あいつがプリキュアだったのは、偶然だよ。因子はある時、突然に目覚める。いくつかの兆候で幾分か読めはするが、確実じゃない。あいつ自身だって、シンフォギア装者であることを貫きたかったから、プリキュアになる事にかなり葛藤があった。だが、お前の背中を追いかける事を選んだ。俺もガキの頃、まっつぁんの背中を見たから、軍に入った。お前は現役を終えた後に、なぎさたちの存在を知ったから、戦い続ける道を選んだ。テイオーも、レースの道に進むきっかけはシンボリルドルフと出会った事だし、テイオーの背中をキタサンブラックが見て、レースの道に足を踏み入れた。なのははわかってなかったんだろうな、思いを受け継ぐことの重みを……」
黒江は赤松の背中に憧れ、軍に入隊した。二人の関係はシンボリルドルフとトウカイテイオーのウマ娘としての関係によく似ている。そして、第二の導き手が城茂(仮面ライダーストロンガー)と南光太郎(仮面ライダーBLACKRX)である。のぞみも現役引退直後になぎさ、咲と出会うことで『プリキュア戦士としての想い』を受け継ぎ、自身の後に続く者を導く事を選んだ。黒江は自嘲気味に語る。なのはを導くことに半ば失敗した自覚があるからだろう。当のなのはも自暴自棄を起こしている事は自覚しており、『(黒江と智子の)不肖の弟子』と口にしているので、自分の犯したミスの大きさを自覚した故に、自分自身に嫌気が差し、自暴自棄になったことを窺わせている。
「あの子も少佐になってたから、結構叩かれてますからね。連邦軍に行けば、優遇されるんだろうって」
「あいつは過失を犯した事になる。実際はそうはならねぇよ。たぶん戦闘で立てる功績で大佐までは行けるだろうが、そこでお終いさ。あれがなきゃ、ヴィヴィオとの時間を楽に取れる後方勤務の役職が約束されてたのに。はやても嘆いてるぜ。ヴィヴィオはまだ小さいからな。本当は甘えたい盛りの年齢だろうに」
士官学校卒の者は良好な勤務態度、あるいは懲役に至るほどの罪を犯していなければ、大佐の昇進までは、よほどのことがなければ保証されている。なのはの過失は人事記録の残る『訓戒』であるので、将官への昇進は事実上絶たれている。免職にならなかったのは、地球連邦軍においては『ドロップアウト組』がテロリストに堕ちるケースが多く、なのはのように強力な魔導師は『放逐するよりも利用し尽くすべき』という意見があるので、それに従っての措置だった。(戦闘で有能な人材であるのは変わらない)敢えて敵に回すよりも、利用し尽くすべしとなったのは、アムロを軟禁したティターンズがその後、アムロ・レイをエゥーゴとカラバに救出された結果、アムロの前には、ティターンズのどんなエースもアムロ・レイにはまるで勝てずに相次いでなぎ倒され、地上軍を滅ぼされた教訓をティターンズ出身者が重視したためである。
「それと、ウマ娘たちは『サラブレッド』だ。競走馬が走ることに特化して配合されてきたってのは、子供でも分かる本に書いてある。俺らの婆さんたちが日露戦争相当の戦争で使った軍馬とは、そもそも特性が違う。軍馬は持久力とパワーが必要だが、競走馬はある程度の距離を走ればいいからな。それに特別な教育がいる。自ずと分かることだ。それに、日本の軍馬は大日本帝国が法的に消える1952年に消滅してるから、扶桑で縮小してる軍馬を引き取ってるんだが」
扶桑は近衛師団の儀仗用に軍馬を残していたし、最後の騎馬師団(ダイ・アナザー・デイで最後の活躍を見せ、戦史における軍馬の活躍の掉尾を飾ったという)が三年後の1952年に正式な解散の見込みである。これは機械化部隊が騎兵を時代遅れにしたためだが、基盤となるインフラに関わる人間達に『競争用のサラブレッドの育成に切り替える』ための猶予期間を与えるため、1945年当時に騎兵師団の機械化部隊への改組のガイドラインが決定されている。何事も急には失くせないし、自衛隊も『どうしても必要になったから、社会からの脱落者の烙印を押されつつあった旧軍人達に仕事を与える』目的で作られた事は暗黙の了解である。
「そういう事情って、内輪以外に理解されないですよね」
「サラブレッドは戦前の名馬も、戦後の食料難で馬刺しにされたなんていう、悲しい言い伝えが残ってるくらいだ。サラブレッドと軍馬は戦後のTVじゃ区別がつけられてない。武田騎馬軍団だって、実際は見栄えしない馬だったんだ。要するに、ある物事が廃れた後の時代の人間達に面白おかしく言われる例だ」
「サラブレッドはある意味、交配重ねて、早く走ることに一点特化の種類ですからねぇ」
「クルト・タンク技師も比喩で言ってるだろ、フォッケ作った時に。自分の飛行機はひ弱なサラブレッドではなく、軍馬だと」
サラブレッドは早く走れるが、クルト・タンクの言うように、ひ弱な側面を持つ。クルト・タンクはそれを嫌い、フォッケウルフを軍馬的な飛行機に仕立て上げた。クルト・タンクは貪欲に新技術を吸収した結果、ジェット時代にあたり、史実の『HF-24』を更に改良した機体を設計し、クルト・タンク、未だ健在だということを示していく。対照的にメッサーシュミット博士は史実通りに『HA300』をモノにできず、名声が落ちた感の強い後半生を送ることになる。
「ウマ娘の調査はまだ続行中だ。名馬の因果を引き継いでるっぽいのも、トウカイテイオー、メジロマックイーン、サイレンススズカの三例で確認されているからな。(テイオー自身も、別の世界の競走馬の因果を自分が引き継いでしまい、似た出来事に遭った事に青ざめていた。『史実』通りなら、トウカイテイオーの骨折は『もう一度』あるのだ。何故、骨折を繰り返すのか、と悔しさ混じりにぼやいている)テイオーには、本人の頼みで医療用ナノマシンでの骨格と下半身の筋肉の再構築を施した。後輩のキタサンブラックを可愛がってるから、あと一回の骨折が自分の競技生活に最後のトドメになるのを酷く怯えてな。帰る日に頼まれたんだ」
「なるほど」
トウカイテイオーは史実を考えれば、三度の骨折で肉体の限界が近づいており、有馬記念が『花道』になるのを黒江は知っていた。それを言うしかなかったため、テイオーはすがりつくように言った。
――お願い、ボクはまだ走りたいんだ!!キタちゃんやマックイーンのためにも!!次の有馬記念で終わりたくないんだ、ううん、終わるわけにはいかないんだよ!!――
テイオーは自分のファンであり、入学すれば『後輩』になるキタサンブラックを可愛がっており、キタサンブラックが自分を憧れの目で見ることは、かつてのシンボリルドルフと自分を見るようであったのもあり、シンボリルドルフのように、彼女を先輩として導きたいというささやかな願望があった。だが、自分に降りかかるであろう、さらなる災厄(四度目の骨折と引退)を知ってしまい、それを非合法的手段を講じてでも、なんとか回避したいと黒江に縋った。トウカイテイオーの切なる願いに応え、黒江は元の世界へ帰る日に、テイオーの体に筋肉と骨格の再構築プログラムを施したナノマシンを注入した。結果は成功し、彼女は全盛期のスピードを完全に取り戻し、キタサンブラックのためにも、トウカイテイオーは当面の間は現役ウマ娘で居続けることを選んだ。(その後の定期検診のレントゲン検査で、痕になっているはずの三度の骨折の痕跡や肉体のダメージが完全に消えていたことなどが判明。慌てたトレーナーや実質的な保護者といえる『シンボリルドルフ』に問い詰められた末に『非合法的処置で肉体そのものを再構築した』ことを告白。シンボリルドルフは『その方に会わせてほしい』と言ったが、黒江は遠征任務に従事しており、会わせられないのである。窮したテイオーは『向こうを騒ぎにしたくないから、カイチョーだけ来て』とし、現地の調査を黒江から引き継いだフェイトと接触。そのことと、トウカイテイオーとメジロマックイーンのことの礼のために野比家に滞在しにやってくる途中であった。
――その道中――
急に入った時空管理局の仕事のため、フェイトは駅で三人と別れ、地図をテイオーたちに渡した。トウカイテイオー、シンボリルドルフ、ゴールドシップの三人は『ウマ娘がいない世界』にも関わず、誰も驚かない事に驚いていた。
「すげぇ。この世界、アタシたちが歩いてても誰も驚かねー……。嘘だろ」
「う、うむ……。しかし、まさか滞在することになるとはな…」
「仕方ないだろ、その人がしばらく戻ってこないんだし」
それぞれ特徴があるが、銀髪の長身、黙ってれば美人なのがゴールドシップ、メッシュ入りの髪型で、親子か姉妹のように(史実の競走馬としては実の親子である)似ているのがシンボリルドルフとトウカイテイオーだ。
「……なんで、お前がついてきた?ゴールドシップ」
「アタシはマックイーンの代理だよ。医者が診察するとかでこれなかったんだと。親に聞いたら、一応、遠い親戚関係らしいからな……。縁がないわけじゃない」
競走馬としては、メジロマックイーンの実孫がゴールドシップなのだが、ウマ娘としては『遠い親戚』(不確定)であるらしい。
「まいったなー。事情は話してあるって言うけど、不安だよ、カイチョー」
「私もだ…。しかし、驚いたな……私とテイオーが……その…なんだ……」
恥ずかしそうなシンボリルドルフ。嬉しそうなトウカイテイオー。
「気持ちわかるぜ。アタシもマックイーンの孫だぜ、孫!あ~!次に、あいつとどんな面で会えばいいんだっての~!」
シンボリルドルフは競走馬(ウマ娘の世界には馬という動物は現存しないらしい)としてはトウカイテイオーの親であるのを知ってしまい、なんともいいようがないが、自身が別の世界では『シンボリルドルフの子供である』ことを知ったトウカイテイオーは大喜びである。
「でもよ、キタサンブラックだっけ?あの子、動物としては、お前らよりずいぶん後の世代で、アタシよりも後の世代だってよ」
「うん。20年以上あるって。なんか複雑だなぁ…」
「でもよ。ある意味じゃ、いいんじゃないか?たいていの世界だと、21世紀になると、すげえやつか、頑張ってるやつのムーブメントが起きねぇと、レースが社会的に注目されることは少ないし、賭け事の対象だから、嫌われてる側面もある。それに比べれば、純粋な娯楽に徹する事ができてる、あたしらの世界は幸せだよ」
ゴールドシップはいつの間に調べたのか、社会的にムーブメントを起こした歴代の競走馬の存在を引き合いに出した。彼女達の世界には『馬』という動物が現存していないため(馬科の生物がウマ娘に進化したのだろうか?)、いまいち実感がないようだが、競馬は古くから賭け事の側面もあるため、そこは複雑らしい。
「いつの間に調べた?」
「途中、いくらでも時間があったからなー。でもよ、なんとも複雑なのは事実だぜ?ほら」
自分にあたる存在が大観衆の馬券を紙屑に変えてしまった大事件の解説が書かれていたページをスマホで見ていたらしく、なんとも複雑な顔を見せる。すると、それを見た二人に。
「お前……」
「ゴールドシップ、君ねぇ~…」
「なんだよ、なんだよ、あんだよ、二人共~!チクショウ~!なんで、こんな事しちまったんだ~!あ~~~~~!!別の世界じゃこんなことになってんのかよぉ~!!」
二人は呆れ顔で引いている。同じ表情で呆れて、ジト目になっているあたり、史実での親子である故の共通点であろう。ゴールドシップは自分が犯したミスが別の世界での『競馬』で『歴史に残る大事件』になっていたことに頭を抱えて、本気で嘆いた。三人はススキヶ原を闊歩する。礼を言うためであるが、10日前後は滞在予定である。彼女達はその期間でリフレッシュも兼ねた休養を取るのだった。
――プリキュア5の世界――
「統括官、V2アサルトバスターの調整、完了致しました」
「ご苦労。慣らし運転をさせる。ドリーム、チューイングピザ(ドラえもんがドリーマーズランドで買っていた食料品。一粒で腹をかなり満たす)は食ったな?」
「はい。念の為に二粒」
「よし。慣らし運転してこい」
「了解」
キュアドリームAは黒江の命で、V2アサルトバスターに搭乗した。ウッソ・エヴィンのものと別の機体だが、製造年度の都合で性能は細かい点で向上している。デザリアム戦役の経験でMSの操縦は身についているが、必要なのは経験値である。
「のぞみ。あんたがどうして、そんなのに乗るのよ」
「うーん。このあたしは一応、パイロットで飯食ってるから。くるみ、離れてて。起動させるから」
コックピットハッチが閉まり、V2アサルトバスターが起動する。カラーリングはグリーン主体のものになっているが、それ以外はウッソ・エヴィンの持つ一号機との差異はない。
「いったいどうなってんの!?」
「詳しくはマナちゃんと亜久里ちゃんに聞いて。キュアドリーム、V2アサルトバスターで出ます!」
V2アサルトバスターは自力での飛行を可能とするガンダムかつ、『RX-78以来の堅実な技術で作られた正統な開発系統としてのガンダムの発展の究極形態』である。V2は究極の小型MSであり、それ以上の発展はさらなる技術革新がない限りは『不可能』だという。壁紙格納庫が開き、慣熟飛行のため、V2アサルトバスターはフル装備で出撃していく。V2アサルトバスターが光の翼を羽ばたかせる姿は、『究極のパワーアップには、翼はつきもの』であると、くるみBへ教えていた。
「翼って……パワーアップにつきものなの?」
と、零したのだった。