ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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今回は「プリキュア5の世界編」と同時期に起こっている日常編です。


第二百十八話「ゴールドシップ(ゴルシちゃん)御一行様の珍道中」

――プリキュア5の世界で戦闘が間近になっていた頃、ススキヶ原では――

 

 

「彼女から話は聞いている。適当にくつろいでくれ」

 

「すまない。あがらせてもらう」

 

シンボリルドルフ達を出迎えたのは、ラウラ・ボーデヴィッヒであった。この時はラウラ・ボーデヴィッヒとしての所用があったため、ここ最近では珍しくなっていた、IS学園の制服姿である。野比家の留守を預かって、もう数年になるために来客も応対も手慣れたものだ。所用というのは、ネオ・ジオンが地球圏に遺したグワジン級の最後の末裔『グワーシャ級戦艦』(ムーンクライシス事変にも投入されなかったグワジンの後継艦で、トト派の切り札。内紛で乗員が死に絶え、漂流状態だったのが鹵獲された)の曳航と検分を担当したことで、同艦のパーツの多くはデザリアム戦役後に似通っている設計のベクトラの補修パーツにされたわけだが、『ネオ・ジオンの歴代の戦艦としては最大』であるために完全には解体されず、ガワを復元した後で戦争博物館に収蔵された。連邦にはそれをも遥かに上回る超戦艦が既に就役していた故に、敢えて改修する必要はなかったのだ。ラウラは黒江達の代理でその仕事を引き受け、曳航を指揮。ルナツーで船体の検分を終えた帰りであったので、元の容姿なのだ。

 

「私はラウラ・ボーデヴィッヒ。ドイツ軍の人間だが、彼女とは交流があってな。なりについてはツッコまないでいただきたい。これでも高校生相当の年齢なのでな」

 

「わ、わかりました…」

 

「ドイツにしては属性を盛ってるよな、アンタ」

 

「君が噂のゴールドシップか。武勇伝は聞いてるよ。馬券をパーにした、やりあった連中が後で怪我や病気にかかる……」

 

「アタシ、そんなに有名なのか!?」

 

「レース史上随一の変なウマとしてな。実力はあるが、変な気質のウマだったというのが伝えられている」

 

「そこまで知ってんなら、いいか?本当にアタシにあたるそいつは……マックイーンの孫なのか…?」

 

「母方の祖父らしい。最も、君の生まれる頃にはメジロの馬主は衰退していたがな」

 

ラウラは英才教育の際に、ナチス総統のアドルフ・ヒトラーが競馬に傾倒していて、ヨーロッパ中の名馬を集め、ドイツ産の名馬を生み出そうとする野望を持っていた事を教えられている。その関係で、意外にも競馬事情に詳しかった。

 

「最も、書類を見る限りでは、君等は魂と名を受け継ぐが、血統までは一致しないようだが」

 

「うん。ボクとカイチョーは『よく似た』他人同士だもん。要するに、ボクとカイチョーの名前の基になった、その動物同士が親子なだけでしょ?」

 

「そうだな…。しかし、何故、その動物が遭遇した怪我や病までも受け継いだのでしょうか?」

 

「サイレンススズカの例を考えるに、魂に刻まれた因果が君等の遭遇する出来事に影響を及ぼしているのだろう。……トウカイテイオー。君が処置を受けなかった場合、競技生命の致命傷になる最後の骨折が近いうちに待ち受けているようにな」

 

ラウラの冷静な一言。テイオーにとっては、それはキタサンブラックのため、メジロマックイーンのためにも、断じて受け入れられなかった因果である。

 

「ボク、キタちゃんたちを……カイチョーがボクにしてくれたみたいに育てたかった。マックイーンともう一度、レースを走りたかった。だから、あーやに頼んだんだ。ボクの体とマックイーンの病気のことを」

 

テイオーは黒江の外見が自分と同程度なほどに若々しかったり、気さくな態度であった事もあり、『あーや』と呼んでいる。この呼び方をする者はかなり希少かつ、黒江がかなり気を許している事の表れなので、関心した様子を見せるラウラ。

 

「ほう。あの方がその呼び方を許されるとはな…」

 

「ん?なんで敬語なんだよ」

 

「私より軍隊の階級が上なのでな。彼女は一軍の統帥をされていてもおかしくない立場なのだ。私は一介の少佐だが、あの方は中将。自衛隊や日本軍では師団長級であっておかしくない」

 

「は!?そんなえらい人がなんで、実戦部隊で一パイロットしてんだよ!?」

 

「日本には指揮官先頭という言葉が軍用語であるのだよ、ゴールドシップ」

 

――指揮官先頭。古くは日独の軍隊に見られ、未来世界でもMS登場後は尊ばれる風潮である。自衛隊においても、『指揮官先頭じゃないと、世間に後ろ指をさされる』という世知辛い事情で残っている。黒江たちがエースパイロットながら、階級的には一軍の指揮を取れる立場であるのに、実際には一戦士として戦うことが多い理由である。これはカールスラントでも奇異に見られたが、カールスラントでもガランドが現役時代に先例を作っている。64Fが日本の一部官僚にに揶揄されるのは、武子までもが戦陣に立つからであるが、世間からは『日本軍人の誉』と高く評価されている。日本人の認識が日露戦争の時代から進歩していない表れと揶揄されるが、ブリタニアがそれをいうと、『楽観的にマーケット・ガーデン作戦立てたのは、どこのどなたでしたっけ?』と返されるため、日本人の変なところで根に持つところを『職人気質過ぎて、ついていけん』と嫌っていたりする。――

 

「それでいないんだ」

 

「うむ。急な遠征でな…。君の有馬記念を是非とも見たかったのに…と仰ってたよ」

 

「あの人のおかげで、ボクはビワハヤヒデを振り切れる足を取り戻せたからね。お礼をしたかったんだ。もし、前の状態だったら……勝てたかどうか…」

 

テイオーはここで、全盛期の速度を取り戻した結果、有馬記念でビワハヤヒデを振り切れたと語る。残り300mで最後の加速をし、ビワハヤヒデに何馬身かの差をつけて勝利した。ビワハヤヒデは菊花賞の当代レコード保持者。テイオー自身も『抜く』だけの自信を持てなかったが、全盛期の瞬発力と速度にスタミナが伴った結果、ビワハヤヒデをも驚愕させる追い抜きをやれたと。

 

「たぶん、ビワハヤヒデが本気で青ざめたの、初めてだったかも。トレーナーも、顎がはずれる勢いで固まってたもんなー…」

 

「そりゃ、この間まで引退宣言をしようと悩んで大泣きしてた奴がだ。全盛期……いやそれ以上の走りを見せて、ビワハヤヒデを追い抜いてたんだぞ?みんなが固まるぞ」

 

ゴールドシップはその様子をぶっちゃける。レースの当事者であり、後続集団の先頭を走っていたナイスネイチャをして、『テイオーが風になったかと思った』と言わしめたほどの猛追と追い抜き。ナイスネイチャをして、そうとしか言い表せられず、ライスシャワーもレース後に『自分の目を疑った』と零し、ウイニングチケットに至っては、『怪我したなんて、テイオーのインチキだろ!?』とぶーたれつつも、圧倒的速度に腰を抜かしたという。

 

「うむ……。あれは信じられないほどの加速と瞬発力だった。ビワハヤヒデがあからさまに青ざめ、速度を全開にしても、テイオーがグングンと追いついていく。菊花賞のレコードを持っていたビワハヤヒデの心をへし折るに充分過ぎた。あれは……何度も骨折したウマ娘の走りではない。全盛期……いやそれ以上の輝きを放っていた…」

 

シンボリルドルフもこのコメントである。トウカイテイオーの有馬記念での走りは史実と違う形での伝説となったわけだが、インタビューで『トレーナー、チームメイトのみんな……マックイーン……それと……ずっと応援してくれたファンの子たちのおかげで、ボクはまた、風になれたんだ』と述べ、キタサンブラックとサトノダイヤモンドの存在も自分の再起に大きく貢献した事を示している。それを示すかのように、トウカイテイオーのスマホには、キタサンブラックが手作りしたお守りがつけられている。トウカイテイオーはそのお守りを見ることで、ルドルフの一ファンだった頃の自分を思い出し、自分が夢を誰かに見せる立場に立った事を認識させてくれたとし、キタサンブラックを何かとかわいがっていく。ルドルフも挫折を繰り返した挙句に、心を病みかけた愛弟子が立ち直ってくれた事を大喜びであり、キャラに似合わないくらいの『にやけた顔』を同期に見られ、激しく狼狽していたのは内緒だ。

 

「そんなわけ。多分、時速110キロ超えてたんじゃないかなぁ。新世代最速って謳い文句がされてたビワハヤヒデをさ、ちょっと本気出したらぶっちぎれたし」

 

「時速110キロか。君はパーマンか?」

 

「ゴールドシップにも言われたよ、それ」

 

ちなみに通常のウマ娘の最大速度は80キロから70キロ台の間なので、肉体を作り変えたトウカイテイオーの疾さはまさに『神速』。レースの実況アナウンサーに『神速』と例えられれるのも当たり前であった。

 

「旧作のパーマンより早いのは確かだろ?」

 

「言えてるな…」

 

ゴールドシップも本気を出せば、時速80キロ超えを出すに値するだけの身体ポテンシャルを有している。そのゴールドシップも素直に驚くほどの速度。(ウマ娘の生物学的限界速度は80キロ台とされる)黒江がトウカイテイオーに残したプレゼントは予想以上のものをもたらしたわけだ。(ちなみに、パーマンは初出時のスペックは時速91キロが個人単位の限度であった。現在に知られている『時速119キロ』は新作/カラーアニメ版(1980年代)以降におけるものだ)

 

 

「君達の好物について調べさせてもらった。ウマと同じように、にんじんが好物のようだね?」

 

「にんじんは嫌いじゃないけどさ、スペちゃんほどじゃないよ、ボクは。甘いもの好きなのはみんな一緒だけどね?」

 

「スペのヤツは好きだよな。普通に辛いもんも食うぞ、あたしら」

 

ウマ娘は馬が進化した生物らしいので、馬の特徴も残っており、にんじんなどの甘いものが好きな傾向がある。スペシャルウィークは特ににんじん好きであることで知られる。とは言え、現在では人間(ホモ・サピエンス)と耳としっぽ以外は変わりない外見に至っている。メジロマックイーンやスペシャルウィークはその中でも甘党らしい。

 

「マックイーンは甘いもの好きだよ。この間、二人でハロウィンの街を練り歩いたら、マックイーン、綿あめだとか、鯛焼き見てさ、幸せそうな顔してた」

 

「マックイーンの奴は甘党なんだよ。それで太りやすいのか、ダイエットの時は裏で泣いてんだ」

 

ゴールドシップは何気に秘密をばらしている。マックイーン本人は『レース前は甘いものを控えている』という風に、やんわりとした表現で煙に巻いているが、実際はかなりハードなトレーニングで体重を落としている。それを何故か知っているのである。

 

「なんで知っている、ゴールドシップ?」

 

「前に、あいつが体重計の前でやたらブルってんの見ちまってなぁ…」

 

マックイーンの秘密を面白ろおかしく語るゴールドシップ。

 

「君。帰ったらさ、キン肉バスター確定だよ?」

 

「トレーナー相手に、スクリューパイルドライバーやってたぞ、あいつ」

 

「あんなの、どこで覚えたんだろう?」

 

「メジロ家お抱えのプロレスラーでもいるんじゃね?」

 

「は、はは……」

 

呆れるシンボリルドルフとラウラ。ゴールドシップはマックイーンにやたら絡むが、相応のしっぺ返しは食らっており、以前に『超重量の蹄鉄』で二回も背中を思いっきり踏まれる(半分は事故だが)という仕打ちを受けている。とは言え、マックイーンとは不思議と馬が合う面も存在するので、なんだかんだで、お互いに気になる存在であるのは事実だろう。

 

 

 

 

――こうして、三人のウマ娘は野比家に滞在する事になった。ウマ娘の世界は平和な世界であるので、地球連邦の事情に巻き込まぬように細心の注意が払われている。とは言え、テイオーが突如として、全盛期以上の圧倒的な力を持った事に色々な噂が飛び交うようになっており、そのあまりの落差にドーピング疑惑も出たが、テイオー自身が直前まで三度の故障の後遺症に悩み、引退を本気でしようしていたことは周知の事実である。テイオーが生まれ変わったかのような走りを見せたことの謎は黒江達の処置を同じく受けたメジロマックイーン、そのマックイーンから事情聞き出したゴールドシップ、トウカイテイオーから聞き出したトレーナーと、テイオーの事実上の保護者であるシンボリルドルフのみが『真実』を知る。超医療技術でテイオーとマックイーンの怪我と病気は完全に治癒しており、ナノマシンが筋肉組織も副次的に強靭に組み直した結果、二人に『当代最強級』の力をもたらした。施術後に発揮する能力が以前の最良の状態をも更に凌駕するまでに飛躍したわけだ。肉体が両名が施術時点で求める力をナノマシン技術はもたらした。テイオーの場合は骨格の強度も強化されている。彼女が元から備えていた高い柔軟性に追いつくほどに向上しており、それが有馬記念の圧倒的速度に結びついた。(テイオーの骨折の要因の一つは『体の高すぎる柔軟性に骨格の強度が追いついていない』事である)トレーナーにとっても、テイオーの選手生命に関わるとさえ言われた三度の骨折の痕跡すら身体から消え去り、なおかつ筋肉量さえもいつの間にか増加している事は21世紀水準のどんな医学でも、生化学的検知からも説明がつかない事であった――

 

「いったい、テイオーはどんな事をして、こんな常識超えの速さを身に着けたデスカ……?ウマ娘の『限界』を…!?」

 

ウマ娘の世界で有馬記念の映像を何度も見返すウマ娘がいた。その名をエルコンドルパサー。喋り方や性格が艦娘・金剛によく似ている。黒江と会えば、馬が合うだろうウマ娘の一人である。(ただし、エルコンドルパサーは素の性格が意外に内気で、顔のマスクは自身を奮い立たせるために着用している)

 

「ここデス……。ここでビワハヤヒデを……!」

 

ビワハヤヒデが驚愕する程の急加速、菊花賞レコード保持者であった彼女をもあっという間に置き去りにし、何馬身も差をつけての圧倒的勝利。ビワハヤヒデがあまりのショックで、ゴール後に放心状態に陥り、観戦していた妹のナリタブライアンが見かねて、姉のもとへ駆け寄るという場面。実況アナウンサーも腰を抜かさんばかりに驚愕し、『神速』と形容するしかないほどの速度。テイオーは自身の復活を有馬記念で声高らかに示したものの、一面的には『やりすぎ』の感が否めず、ビワハヤヒデがその後しばらくの間、精神的トラウマに陥り、彼女のキャリアが不振期に入る原因となった。(有馬記念の『衝撃』はナリタブライアンがテイオーに挑もうと決意するきっかけになる)エルコンドルパサーはそのレースを何度も寮の自室で見返していた。

 

「この速さ、スズカに匹敵……いや、それ以上……!?そんな、スズカを超える速さを出せるウマ娘は……」

 

映像のテイオーの加速度は歴代のウマ娘の中でも随一ではないか?と息を呑むエルコンドルパサー。当代最速の足を謳われるサイレンススズカを彷彿とさせる追い抜き、菊花賞レコード保持者であったビワハヤヒデが置き去りにされるほどの速度。ライスシャワー、ナイスネイチャ、ウイニングチケットなどの強豪ウマ娘達が追従すらできなかったほどの速さ。(直線では、後続集団とは実測で20キロから30キロもの速度差があった)エルコンドルパサーは必死に解析しようと試みる。世界に挑戦した自らをも遥かに超える速さでの差し。比較的に下位から二位になり、最終コーナー付近からの超加速でビワハヤヒデの心を折った。

 

「……どうなってるデス…?」

 

首を傾げるエルコンドルパサー。彼女はテイオーの復活に答えを見出そうとしている。スタミナ温存策を学んだのか、足の調子が戻ったのか?鍼灸程度でどうにかなるような負傷ではないのは、三度目の故障で証明されているはずである。エルコンドルパサーはこの事があることで、解析に悩むのだった。(なお、そのナリタブライアンは『テイオーの復活は祝いたいが、何も、うちの姉貴を精神的にボロボロにする必要はなかったはずだ!』と漏らしており、姉が精神的に叩きのめされたのには怒りを見せているなど、公私を割り切っている様子を見せていたという。レースでの仇討に燃えるナリタブライアンだが、速度ではまったく及ばないのは百も承知。どういう戦略で戦おうか。それが他のウマ娘たちにとっては重要であった)

 

 

 

――このように、ウマ娘世界では、トウカイテイオーの完全なる復活と復活後に見せた超高速は各所で議論を呼んでいた。三度の骨折で肉体に見えない大ダメージが及んでいたはずのテイオーが何故、いきなり『全盛期を超える』ほどの速度を手に入れたのか。盛りを過ぎたとさえ酷評されていたはずのウマ娘が力を盛り返すことは過去に類を見ない。(ちなみに、史実の競走馬としてのトウカイテイオーは90年代が半ばにさしかかる頃の有馬記念が最後の輝きであり、四度目の骨折を契機に引退している)これは奇しくも、全盛期から力を衰えさせていないどころか、ますます意気軒昂であった黒江たちをミーナが根本的な無知と私的な嫉妬から冷遇したら、他のメンバーが漏らす『伝説』を裏づける圧倒的な戦いぶりを示され、自分があわや失脚しかけたという経緯に似ていた。違うのは、世間のトウカイテイオーへの評価が持ち直した一方で、骨折などの負傷を経験しても、レースで入賞できるというところが注目され、ウマ娘全体の一種の希望となったというところだろう。(一般に、スポーツ選手が負傷後にパフォーマンスを落としてしまう背景には、加齢による回復力の低下、実戦離れによるカンの冴えの低下、自身の能力の衰えが表面化するなどの要因が複合して起こる)新たに得た『頑健な肉体』(テイオー本人曰く、ギャグ補正込みのゴールドシップ級らしい)を以て、自分を慕うキタサンブラックのために、現役を続行する道を選んだ。ふとした偶然で得た幸運を活かすために。自分の驕りを戒めるために神が与えた試練を乗り越えた自分への褒美。テイオーは黒江達との出会いをそう解釈した。――

 

――再び野比家――

 

 

「むぅ……。いかん、カレールーを切らしていたのか」

 

野比家の冷蔵庫にカレールーがないことに気が付き、困った表情を見せるラウラ。

 

「カレールーがないって?ボクがひとっ走り行ってくるよ」

 

「こいつ一人じゃ不安だから、アタシもついていくよ」

 

「君たち、日本円はあるのか?」

 

「学園内の独自通貨を日本円に換金してきたんだが、この世界のレートがわかんなくてさ……」

 

そこはどことなく不安そうにボヤくゴールドシップ。

 

「大丈夫だ。同じ21世紀の日本なら、貨幣価値のレートにそんなに差はない。むしろ、お互いの時代が違うほうが大きく悩むものだ。たった数十年違うだけで、貨幣価値というのは大きく変貌するものだ。子供のこづかい一つとっても、昭和の昔は500円だったが、平成が終わり、令和になったら、小学生でも平均で数千円前後はもらえる。ただし、物価が上がったから、やれることは昔とほとんど大差ないがな」

 

「昭和ねぇ……。ボクたちからすれば遠ぉ~い昔みたいに思えるけど、昭和が終わる頃からは、令和に入っても、たった30年くらいしか経ってないんだよね?」

 

「昭和は長く続いたからなー。日本の総人口の半分以上はまだ昭和生まれが主流だ。一部にはまだ、明治と大正の生き残りもいるからな。もっとも、昭和初期の連中はヨボヨボになってるけどよ」

 

ゴールドシップもいうように、昭和は60年以上も続いたため、大日本帝国期の初期、帝国が解体され、日本国に改組した後の中期以降に分けられる。そのため、社会風俗も初期と終期では、まったく異なると言っていい。先入観でよく言われるが、日本帝国期の風俗は表向きは無くなっても、元・華族のうち、武士時代の支配層に君臨していた層は21世紀になっても『名家』扱いが続いているのが暗黙の了解的に知れ渡っているなど、残っているモノもある。また、軍隊の金鵄勲章も1986年に『高齢化した旧受賞者へのお情け』で公式に戦後世界での佩用が認められている。(この事がドラえもんの世界で世に知られたのは、黒江が式典の際に扶桑での金鵄勲章を佩用していた際の騒動からである)また、2005年以降、自衛隊に籍を置く扶桑軍人が式典の際にジャラジャラと、扶桑での勲章のメダルやリボンをつけていることに左派から『あの年齢で勲章はありえない』と批判が飛んだが、結局、扶桑軍人である事が知れ渡ったり、勲章は形式上、若年でも皇室の人間には授与されるため、ある意味では他国の軍人や王族への侮辱になるため、批判がピタリと止むという事も多かった。そういうものだ。(のび太も扶桑から勲章を若年のうちに授与されている)

 

「ま、とにかく行こうぜ。ゴルシちゃん号が使えねーのは不便だけど」

 

ゴールドシップは元の世界から愛用のゴルシちゃん号と名付けた『セグウェイ』を持っていこうとしたが、ドラえもん世界では『既に製造中止になっていて、予備部品がない』事と『乗り物として廃れてしまった』事で懸念される安全面の問題が重なったため、泣く泣く断念したという。とはいえ、ゴールドシップ自身も素で時速80キロ以上を叩き出せる俊足なので、ウマ娘のいない世界では速度違反自動取締装置(オービス)に撮られる可能性もある。モータリゼーションの普及し始めの時代より自動車の性能が飛躍的に向上し、大衆車でも昭和30年代当時よりだいぶ速くなったため、ウマ娘の巡航速度である35キロ~45キロ(個人差あり)は東京や横浜市中心部などの大都市部や郊外のベットタウンまで、割合によくあるレベルの車の運転速度である。そのため、ゴールドシップもトウカイテイオーも、スピードを意図的にセーブして、買い物に向かった。(人間が走るウマ娘の前に立つのは、人が車道に飛び出すのと同じくらいの危険度というのは、スペシャルウィークの談。なお、ウマ娘には、サラブレッドの特徴を持つ者が多いが、『スポットライトが当たる』のがレースで名を馳せたサラブレッド種の魂を引き継ぐ者たちであるだけで、かつての日本軍が用いていた軍馬や、昭和初期以前の時代に使われていた農耕用の使役馬の魂を持つ者もいるにはいるという)

 

「おっしゃ、腹が空いたとこだ、てっとり早くすませんぞ、テイオー!」

 

「うん!ボク達の足なら10分もあれば、駅の周りは一周できるからね!」

 

ゴールドシップとトウカイテイオーはノリノリで買い物に出かける。意気揚々と勇み足の二人だが、駆けていく二人を『やれやれ』とため息交じりに見送るシンボリルドルフ(彼女が受け継いだ名の由来となった競走馬は実質的に初の無敗での三冠(皐月賞・日本ダービー・菊花賞)を達成した名馬であったので、彼女も同世代屈指の実力者であった)とラウラ・ボーデヴィッヒであった。

 

 

 

 

――これは余談だが、ヒト種が出せる走行速度は五輪選手の最速と謳われたとある金メダリストで45キロ。この速度はウマ娘にとっては早めの巡航速度である。後日、この時の二人の走る姿を偶然に目撃した陸上競技の関係者が野比家を訪れ、スカウトしたいと言ってくる要因になった。(ちなみに二人の能力であれば、五輪のレコードの尽くを塗り替えることは容易である。しかし、姿が現生人類とほぼ同じなだけで、彼女らはウマ目ウマ科の『ウマ』がヒト(ホモ・サピエンス)と同じような進化を遂げて誕生した『馬人類』というべき異人類であるのだ)思わぬ騒動に巻き込まれていくトウカイテイオー達。往年の名馬の名とその能力を引き継いだ存在(種族)が明らかになったため、次元世界の不思議を、日本は彼女たちウマ娘と艦娘の存在で改めて認識することになる。プリキュアの実在と合わせ、日本が世界に『人外魔境』として見られていくわけだ。仮面ライダー、スーパー戦隊、宇宙刑事を輩出している地であるので、世界各国の首脳達は『またしても日本か……』と呆れ半分にボヤくのだった――

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