ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第二百二十一話「ゴールドシップ(ゴルシちゃん)御一行様の珍道中 4」

――扶桑社会は戦前日本より物的ゆとりがかなりあったが、軍を『花嫁修行』の場としてしか考えていなかった者が富裕層にも多かったため、憲法改正などで色々な事が一気に世相ごと変わったことで、一気に志願人数はグンと低下。日本人(この場合は大和民族か)の現金な気質の表れであった。それを補うためと、従来兵器の保有規制を潜り抜けるため、扶桑空軍はMSなどの導入を推し進めた。64Fはジェスタを主にRGM系の上位機種として調達していたが、ジオン残党の地球圏からの消滅で以後の新規生産数が大きく絞られたため、代わりに似た性格を持つ上位機種であるグスタフ・カールが回されるようになった。これは64Fの任務の性質上、物理的強度と耐久性が求められたが、元々がジオン根絶のためのUC計画の副産物であったジェスタは『役目を終えた』と判断されて、総生産数が絞られ始めたためで、それと対照的に、元から『ジェガンの後継・上位機種』として開発されたグスタフ・カールの方が生産枠を議会で確保しやすかったからである。遠征軍の持ち込んだMSにジェスタがなく、代わりにグスタフ・カールが存在するのも、同機の重厚なシルエットが政治家に受けたからである――

 

 

 

 

 

――プリキュア5の世界――

 

「なに、ジェスタがない?で、なんでグスタフ・カールしかないのかよ?ジェイブスでもいいくらいだぞ?」

 

「まぁまぁ。ジェスタの生産数が絞られたからだって。政治屋にはこっちのほうがウケが良いんだってさ」

 

「ガタイはリック・ディアス並のデブッチョなのに?」

 

「ま、小型機やミドル機は外見的に華奢だから、こいつの見かけが重厚なのが受けたんでしょ」

 

キュアドリームがV2のテスト飛行に赴いた後、のび太と黒江は追加搬入されてきたジム系がグスタフ・カールであったことに不満を覗かせた。グスタフ・カールはカタログスペック上はジェスタよりハイパワーだが、目に見えないところでジェスタに遅れを取っており、用兵側にもグスタフ・カールの増産には反対論があったが、度重なる宇宙戦争で物理的強度の強大さも重要要素になったため、耐弾性能などで分があると見なされた同機がクローズアップされたという地球連邦軍の事情も大きく絡んでいた。そのため、第二期生産分のグスタフ・カールは各部のアクチュエータなどに大きく改良が施され、初期生産機にあった『ジェスタより動きが鈍い』問題を解決した。また。型式番号も治安部隊用の『FD-03』から通常の『RGM-97』に変更されている。これは通常部隊にジェスタの代替機として回すための軍の政治的方便である。未来世界での地球連邦軍の『てっとり早い手近な仮想敵の消滅』に伴う変化が分かる。

 

「やれやれ。アナハイムの連中、こいつがウケが悪いの知ってんのか?」

 

「だから、機体各部のアクチュエータとか、反応速度を改良したらしいよ。ジェスタがあまりに強かったから、見かけ倒しだって評判立っちゃったからね」

 

アナハイム・エレクトロニクスもそれは把握していた。ジェスタとグスタフ・カールはジェスタのほうが(熟練兵の操縦、設計年度の微妙な差で)現場の評判で優勢であったが、大規模なジオン残党の地球圏からの消滅で政治家に『過剰性能だ』と目の敵にされ、その調達数は大きく減らされてしまった。(アナハイム・エレクトロニクスへの義理立てで生産ラインと保守部品のラインは維持されるが…。)その代替に宛てがわれたのが、類似する性能を持っていたグスタフ・カールである。のび太は自身の末裔で転生体でもあるノビタダからその報告を受けており、ジェスタは官僚の政治判断で性能が良いのに関わらず、グスタフ・カールへの統一という名目で淘汰されてしまったといえる。

 

「これからはこいつを主流にしたいとさ」

 

「おいおい、マジかよ。ゴリ押しじゃねーか。グスタフ・カール、官製の計画なのか?」

 

「元はそうだったみたい。アナハイム主導のUC計画を潰すために官立工廠の連中が立案したみたいよ。連中、軍縮の時代に冷や飯を食わされたから、その意趣返ししたかったみたい」

 

「……これだから、どこも官僚ってヤツは」

 

「それと、プリキュア5の出る映画だけど、スネ夫が聞き出したらしいが、TVでも、あの子達が出る予定があったけど、このご時世のスケジュールの都合で見送られたから、映画で助太刀するのに唐突感が拭えなくなったんだってさ」

 

「マジかよ」

 

「うん。映画自体は子供がメインターゲットだから、そういう事のあれこれの説明は考慮されていなかったけど、近頃は大人も映画見るから、昔みたいな『大味なシナリオ』が書きにくくなったって、脚本がぼやいたそうな」

 

「近頃は大人がネットで批評するようになったからな。疫病で予定が狂ったのを修正するのに精一杯なんだろ。直にトロプリの予定が立つしな」

 

「みらいちゃんとめぐみちゃんが手を入れられる範囲で直したから、キュアエールも回想でワンシーンだけ出るって」

 

「それだけのために、エールの声優さん呼んだのか?」

 

「本人いないからね。しかたないさ」

 

のび太の言から、みらいとめぐみがかなりの労力を使い、シナリオを『大人のマニアにツッコまれないように』加筆修正した事が分かる。

 

「で、どんな映画になったんだ?」

 

「ドリームが代表で活躍する映画かな?ローズ達の出番を削るしか手がなかったらしくてね」

 

めぐみの意向でりん達は出番を削られたらしいが、その代わりにのぞみが出ずっぱりになり、ファンサービスで変身シーンも披露されるなど、のぞみの出番が多めになったという。

 

「くるみが聞いたら、ものすごく拗ねるな。こりゃ」

 

「必殺技と僅かなシーンしか出番ないしね、ミルキィローズ」

 

「うーん。それじゃ、ローズのやつ。拗ねて、絶対にクレーターパンチやらかすだろうな。やれやれ。」

 

 

と、比較的容易に予想される美々野くるみの拗ねぶりを想像し、黒江は大きくため息をつくのだった

 

 

 

 

 

 

 

――ウィッチ世界では、ダイ・アナザー・デイで戦車への要求性能が一気に飛躍してしまった後に他戦線に回す二線級兵器でさえも数が不足してしまった扶桑軍。既存の旧式兵器はもはや在庫がなく、相次ぐ次期戦車へのライン切り替えで一線から下げられた既存戦車も南洋に回され、他戦線に出回らない有様であった。しかし、他戦線にしてみれば、未だに一式中戦車すら満足に配備されてなかったので、第一線では旧式になった四式中戦車改でも喉から手が出るほど欲しかったのだ。その兼ね合いで四式改は生産が政治の思惑に反して続き、他戦線においては(他国との戦車戦の機会が無い戦線が多かった)1955年まで現役で使用される。第一線では、五式中戦車改も間に合わせであるが、105ミリ砲を載っけた最終タイプへ移行し、外国産戦車を嫌う部隊向けに細々と生産されている。実際の主力は比較的に重装甲を持つセンチュリオンやコンカラー、チーフテンなどの英国系戦後世代戦車になってきており、これに反発する者は軍需産業や国産派などに多かったが、当時の一線部隊としてはかなり切羽詰まっており、それどころではなかったのも事実である。ここ40年ほどはカールスラント信奉が強かった扶桑陸軍だが、ミーナの愚行がきっかけで一気に『熱が冷めた』結果、米英系の戦後世代戦車を積極的に使用するに至った。日本連邦特有の予算不足と人手不足の兼ね合いで自動装填装置の装備が進み、史実で積んでいない戦車にも製造段階や修理の際に新規砲塔に載せ替えるなどして積まれた。その結果、高い即応性をもたらしたものの、数の根本的不足はどうにもならないため、決定打にはならなかった。自動装填装置の装備推進は扶桑でも浸透し始めた『軍事への忌避感』への扶桑独自の対応策であった。元々、五式の時点で自動装填装置の装備を予定していたために『予定調和』であった。小馬鹿にされる扶桑だが、史実より遥かに基礎工業力が上なので、当時の体格が小さい扶桑人では手動装填に無理がある『大口径戦車砲』への自動装填装置の装備は規定路線であった。結局、機甲本部の幹部の多くは見識の不足を理由に更迭されそうになったが、クーデター事件の結果、『留学に出す』という条件で更迭を辛うじて免れた。M動乱で嫌というほどにドイツ戦車の強大さを見せつけられたからで、それに完全に対抗可能な戦車を国産で作るには、44年末時点でかなりの時間が必要であったので、外国産戦車の使用もやむなしとされたのである――

 

 

――陸軍機甲本部――

 

「M動乱で嫌というほど味わったよ、戦車の強大さは。しかし、国産の四式中戦車や五式中戦車の多少の強化だけでは、対抗は困難であるのはわかっていた。だから、貴国の74式をコピーしていたというのに」

 

「ライセンス発行の遅れと、貴国での製造工場建設の遅れについては平にご容赦を……。貴国へ用途廃止車両を輸出させるように働きかけますし、10式のライセンスの早期発行を……」

 

「遅すぎますぞ。我が方としては、ジェガンやDAM、リゼルなどのロボット兵器の増勢やむなしと判断させて頂きます」

 

「お、お待ち下さい!!」

 

当時、扶桑軍は日本側の都合で通常兵器に保有制限が囁かれていため、その抜け穴である『人型機動兵器』に傾倒し始めていた。既に戦闘兵器としては用をなさないとされた軽戦車中心の捜索連隊を解体し、人型機動兵器装備の部隊として再編し始めており、コンバットアーマーやモビルスーツなどが機械化部隊に出回りつつあった。日本側にはそんな兵器はメカゴジラしか存在せず、しかもスーパーロボットの始祖的な位置づけであるので、少数生産でしかない。一方のそれらは地球連邦軍の廉価な大量生産機である。その意味を知っている日本側の担当者は蒼白になった。いくらでも替えが効くからだ。地球連邦軍からすれば、それらは何万機も生産するであろう内の一握りであろうが、20世紀なかばの技術の世界からすれば『無敵に等しい』それらが使われれば、扶桑はリベリオンに勝てるのでは?人型機動兵器にはそれほどの説得力があった。23世紀には旧式MSの代名詞であるジェガンでさえ、物理強度そのものは20世紀半ばの頃の巡洋艦級までの実体弾を寄せ付けないのだから。

 

「当方としては、人型機動兵器の普及を以て攻勢を開始したい所存であるとお伝え願いたい」

 

「待ってください、閣下。10式のライセンスが降りそうなのです。あと数ヶ月はお待ち下さい!それに、新兵器だからと、闇雲に使ったところで成果は出ません!64Fは主要要員が人外魔境級のエースパイロットだったからこそ、今日の地位があるのですぞ!」

 

64Fが人型機動兵器をも普通に乗りこなせる超エースパイロットの集まりである事は官僚にも周知の事実だが、ユニットを使っていたはずが、ジェット戦闘機、モビルスーツ、スーパーロボットに至るまで抜群の適性を見せる超人たちであるからこそ、どんなものに乗っても抜群の活躍ができたのだと。(実際、黒江たちがやれたからと、ロクな訓練もなしに『ミーティア』ジェットストライカーで地上空母に挑んだグローリアスウィッチーズはその黒江らに物見遊山と揶揄されたような大損害をダイ・アナザー・デイで出してしまっている。ブリタニアはこれで面子を潰された。どんな兵器も48時間の訓練でモノにできる64Fの構成員の異常な適応力の引き立て役にされたわけだが、さしもの面々もゴースト無人戦闘機との死闘は冷や汗タラタラものであり、落伍者が出なかったのは本当に奇跡だったが)

 

「確かに……」

 

「あと数ヶ月以内に事が済むのをお約束致します。我が自衛隊の面子に駆けても」

 

この時期の機甲本部長も納得し、数ヶ月の猶予期間を日本側に与えることにした。10式戦車であれば、扶桑で一定の勢力を保つ『国産兵器派』も今度こそは満足する。日本側はこの猶予期間を使い、10式のライセンスを扶桑に与え、自身はその後継車のプロジェクトを興すという方法を使う。これは日本の衰退気味な軍需産業に機会を与えるためでもあり、日本が取れるベターな選択であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――日本は多くの兵器に『頑強さ』をひたすら追い求めた。史実の大量喪失のトラウマからくるものでもあるが、日本は当代屈指のミサイル装備と魚雷装備を持っていたため、それに耐えられるものでなくては意味はないと見做していたからだ。M動乱で魚雷の怖さを嫌というほど思い知った扶桑海軍は現場の反対を押し切って、魚雷装備の再装備を進めた。大量に駆逐艦を失い、陸奥を廃棄せざるを得なくなったからだ。とは言え、魚雷を撤去して居住空間を広げていた扶桑艦艇に魚雷や爆雷などを再装備させるのは並大抵の事ではなく、高雄型重巡洋艦の乗員は反対したほどだが、ダイ・アナザー・デイ以降は必須装備と化しており、結局は再装備された。このゴタゴタで複数の造船官が自殺未遂をする事態に陥ったため、全てを備える新型艦を造る必要に迫られた。その第一弾が伊吹型なのだ。また、魚雷の研究が酸素魚雷の実用化の段階で止まっていたのを史実の資料で航空魚雷を史実の開戦時の水準に急いで上げ、M動乱とダイ・アナザー・デイで使用した。結局、扶桑はそれらの混乱が祟り、新型艦の需要が増したのに関わらず、財務当局の了承が中々得られず、1948年まで高雄型重巡洋艦を酷使せざるを得なかった。伊吹型は巡洋艦としての設計が見直され、装甲が強化されて竣工したが、当初は空母として、1945年に竣工させるはずだったのだ。史実通りに重巡としての艤装がかなりされていたところから空母にしても、当時はジェット機の登場で大戦型の軽空母が陳腐化しており、重巡洋艦級の船体の改装での『空母』としての存在意義は失われたと判断された。結局、ウィッチの軍事的な価値の大きな低下とジェット機の登場で、軽空母というカテゴリそのものが護衛空母共々に不要とされる過程で、伊吹は巡洋艦として完成させたほうが割に合うと判断されたため、伊吹型は巡洋艦となった。(護衛空母と軽空母の放棄と引き換えに80000トン級の大型正規空母を少数運用するという方針だったが、扶桑の現場が少数運用に反対したため、結局はその規模の空母を10隻前後有するのを理想としつつ、制海艦や強襲揚陸艦、航空戦艦で不足を補うとされた)怪異が脅威と見なされなくなりつつあった時代、対空・対艦・対潜・防御をバランス良く高度に備えないと欠陥品と見做されるようになり、その無茶な要求仕様が兵器の近代化を促進するのである。伊吹型はその流れに翻弄されたため、『基礎設計が完全に日本式である最後の巡洋艦』という異名を持つことになった。以後はデモイン級重巡洋艦の影響で、戦艦や超甲巡との境界が次第に曖昧になっていくからだ。――

 

 

 

 

 

 

 

 

――1949年。この年になると、各国は21世紀世界に金づるにされたこともあり、軍縮に舵が切られていく。扶桑は例外的に国力が温存されていたものの、日本の意向もあり、戦時体制への完全な移行は困難になった。ウィッチの確保もクーデター事件の断固たる処理が結果的に恐怖を煽った形になったため、新規志願の回復のために啓発映画を用意する必要に迫られた扶桑は事変当時の軍に批判的な文章で知られる圭子の著書の映画化に踏み切る。それほどにウィッチ組織は風前の灯火だったからだ。民間軍事会社に規制が1950年代に入る見込みであった事から、日本に不満を持つ中堅層がこぞって民間軍事会社に移籍し、社会的に今後のウィッチの公職への雇用が危うくなったからである。義勇兵の募集はその対策のためにあらゆる方法で行われ、これに職にあぶれたカールスラント空軍将校や下士官が部隊単位で応じ、こぞって扶桑軍へ実質的な移籍を行った。結果、カールスラント軍はウィッチ組織の再建に長い年月を費やす羽目に陥り、反対に扶桑は生え抜きが増加傾向に完全に戻るまでの期間を義勇兵で乗り切っていく。この時期には、1940年代前半以前の実戦経験を持つ者はGウィッチを含めたとしても『少数派』に属するし、ジェットストライカーの普及率は依然として40%以下。怪異の脅威が薄れ、軍保有の機材を移籍したウィッチが退職金代わりに多くを持っていったせいである。64Fも予備部品の枯渇でレシプロストライカーの運用を諦めたが、その一因はそれであった――

 

 

 

 

 

 

――野比家では、平行世界を知った事で、俗に言うBNWの三人が自分たちの世代の先輩である世界線の存在を知ったトウカイテイオー。また、ライスシャワーの今後に待ち受けている運命も……。――

 

「嘘……」

 

ライスシャワーは史実の競走馬としては、サイレンススズカ並の悲劇に直面してしまう。その事を知ってしまったテイオー。顔色が青ざめ、あまりのショックで気を失い、椅子から転げ落ちてしまう。ゴールドシップは物音に気づき、倒れているテイオーに駆け寄る。

 

「おい、テイオー!!クソ、何があった!?」

 

「ゴールドシップ、見てみろ!」

 

「なにィ!?」

 

PCのモニターに表示されているのは、ライスシャワーが史実で辿る道。ゴールドシップ、シンボリルドルフの二人はそれを見ることで何があったかを察した。

 

「おい、これ……」

 

「ライスシャワーに訪れる未来の因果……まさか、テイオーは!?」

 

「間違いねぇ。テイオーはそのショックで…。見てみろ、完全に気絶しちまってるからな……相当にショックだったんだろうよ」

 

テイオーはうわ言で『嘘だよね……ライス…』と呟いており、ライスシャワーが競走馬として直面した悲劇はかなりのショックだったようだ。

 

「テイオーは何かショックな事があると、レースにも身が入らなくなっちまうからな…。皮肉なもんだが、三冠を逃して、マックイーンが怪我したことで強くなったけど……。自分の身近なダチが別の世界で悲劇的結末を迎えちまうとわかれば……」

 

ゴールドシップは意外にも、仲間思いであるところが存在し、トウカイテイオーにも良き友人として接していた。面倒見が良いところはシンボリルドルフにも信頼されており、そこが今後のトウカイテイオーの運命を左右していく事になる。また、テイオーのチームメイトのスペシャルウィークは実績が評価され、既に上位リーグのウマ娘に転じており、テイオーが在籍中の『トゥインクル・シリーズ』からは去っているため、その事への寂しさもあるのだろう。また、自身が実力を認める者たちの別世界での結末はサイレンススズカやライスシャワーのように『悲劇的結末』であることもあるため、テイオーにはショックが大きすぎたのだろう。本質的にルドルフへの単純な憧れ、マックイーンへの友情などを拠り所にしてきたため、拠り所が揺るがされると脆さを見せてしまう。キタサンブラックはテイオーに『自分は誰かに夢を見せる立場にある』事を自覚させた功労者である。ちなみにその後、キタサンブラックは見事に大成。テイオー同様、およそ数年後の有馬記念を制するまでの大物となったという。

 

「テイオーは確かに脆い面があるが……まさか……」

 

「もし、あんたやマックイーンに何かが起これば、こいつはレースも放りだすだろうさ」

 

「どうにかできんか?」

 

「依存しちまってるからな。ほら、キタサンブラックとかゆー娘っ子いたろ?こいつを慕ってる」

 

「ああ」

 

「あの子のおかげで、こいつは自分が誰かの夢を背負った事を自覚したが、こいつは精神的に脆いところがある。あんたから独り立ちさせたいのなら、策を本格的に実行するしかないぞ」

 

「ああ…。ゴールドシップ、頼んだぞ」

 

「トレーナーへの連絡はあんたに任す。アタシがやれば、マックイーンやスカーレット、ウォッカ達に何か言われるしな」

 

「わかった」

 

二人はテイオーの精神的自立を促すため、チーム『スピカ』のトレーナーも巻き込むことにした。テイオーの脆さの原因が自分への依存にあることを自覚していたシンボリルドルフはゴールドシップの提案を本格的に受け入れ、腹心のエアグルーヴにまずは連絡。彼女も巻き込む事になった。更に困惑するエアグルーヴの電話を偶然に聞いたオグリキャップとタマモクロスも(口止めのために)何故か、エアグルーヴによって巻き込まれた結果、どういうわけか、トレセン学園の上位陣(冷静になって考えれば、錚々たる面々である)によるシンジケート(?)が結成された。翌日、エアグルーヴからの報告で電話をオグリキャップとタマモクロスに聞かれ、更に偶々、その場にいたアグネスタキオン、ミホノブルボンも巻き込むしかなかったと報告してきたエアグルーヴに、シンボリルドルフは言葉に詰まった。だが、比較的に口の固い面子であるのはせめての救いであった。(もっとも、アグネスタキオンはマッド・サイエンティスト的側面を持っていたので、テイオーの生まれ変わった肉体を調べたかったために話に乗った面があるが)

 

 

――翌日――

 

 

「エアグルーヴ……どういうことだ?」

 

「申し訳ありません……。ですが、比較的に口が堅い者たちが集まったと思うので……」

 

「図らずも有力者、有望株の少なからずを抱き込んだわけか……うーむ……」

 

とは言え、有馬記念の前後当時に台頭してきた「BNW」の三人は含まれていない。その一方で、シンボリルドルフ、エアグルーヴの生徒会での部下であるナリタブライアン(ビワハヤヒデの妹)はなし崩し的に巻き込んだという。史実の競走馬で言えば、それでも充分にスター馬の集まりと言えるシンジケートとなった。トウカイテイオーは知らぬ間にゴールドシップとシンボリルドルフの策謀の中心に立たされたわけだ。

 

「仕方ありません。トレーナーには私とブライアンから話を通しておきましたから……」

 

「マックイーンは?」

 

「彼女から申し出る形になりました。問題は…」

 

「これからか……かなりの大事になったな」

 

「ええ……」

 

エアグルーヴもため息をついたが、トレセン学園の上位陣、有望株の半数以上がこの問題の当事者となったのである。トウカイテイオーの自立を促すためとは言え、予想以上に大人数を巻き込んだのは、シンボリルドルフとしても心苦しいことになった。スペシャルウィークのように、実質は蚊帳の外に置かれた面々も少なからず存在するからだ。

 

 

――この日、シンボリルドルフ、ゴールドシップを中心にしたシンジケート『T』がトレセン学園内で産声をあげた。エアグルーヴの迂闊さも関係しているが、構成員はトウカイテイオーの大復活の理由を探っていた面々であったり、偶然にエアグルーヴの電話を聞いていた面々である。トウカイテイオーが精神的に挫折しかけていた事は周知の事実であるが、シンボリルドルフの抱いた『一つの願い』が大きな形として結実したのである――

 

 

 

 

 

 

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