ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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今回はキュアドリーム達の遠征の裏での出来事です。


第二百二十二話「その頃の調とスバル」

――21世紀世界の財政的悪化でウィッチ世界の同位国を金づる同然に扱った国は多い。日本も少なからず、その風潮があった。だが、当時の極東情勢は徐々に後の統合戦争への伏線が貼られていった時期であり、ロシアも復讐のために百年単位で計画を立て始める。この計画が統合戦争として形になり、中露はその枢軸国として敗戦し、中国は人民共和国の崩壊を引き起こす。ロシアも政権の崩壊に至る。両国出身者が地球連邦で要職につけるようになるには、23世紀以降の時代を待つ必要があった。が、それと逆の経緯となった国家もある。21世紀の頃は日本連邦と上手く付き合って、甘い汁を吸っていたのに、統合戦争の最終盤で裏切ったため、枢軸国扱いされたアメリカ合衆国がそれだ。アメリカ合衆国は経済的影響力は統合戦争後も保持したが、政治的には零落してしまう。さらに23世紀の頃には長い戦乱で東海岸部が荒廃してしまい、ニューヨークとニューアークが合併した『ニューヤーク』も廃墟と化していた事から、ティターンズへの入隊者を多く輩出した。だが、エゥーゴの逆転勝利により一変し、23世紀当時の北米東海岸は早期に復興した西海岸と対照的に『アメリカ東海岸の死体』と揶揄される荒廃が半ば固定化し、有数に治安と統治が機能していない『西部開拓時代をやり直したような』状態に落ちている。これはティターンズの重要拠点が多かったため、ティターンズ敗北後に更にネオ・ジオンに一時占領されたり、ティターンズ将兵がネオ・ジオンに降る際に破壊工作を行ったことも大きく、それが北米東海岸の23世紀における零落に拍車をかけた――

 

 

 

 

 

 

 

――ジオン残党の地球圏からの公の意味での消滅はネオ・ジオンの降伏と、ミネバ・ザビ(実際に呼びかけを行ったのは、メイファ・ギルフォードだが)の演説、シャア・アズナブルの解体宣言が決定打となった。一年戦争以来のエースパイロット達も多くがムーンクライシス事変でロンド・ベルに打倒、もしくは投降、またはデザリアムへの抵抗の過程で戦死。こうして、地球圏のジオン残党は組織だった抵抗力を喪失したわけだ。ロンド・ベルはジオンの根絶を以て任務の一部が変質し、次元世界の秩序の守り手(時空管理局が地球連邦に実質的に組み込まれたが、如何に地球連邦軍といえど、管理局が内乱で戦力の多くを失った穴埋めは困難であったため、プロパガンダ的思惑もあり、有事即応部隊として、戦力が温存されていたロンド・ベルを充てた)として位置づけられ、正式に13番目の外郭独立艦隊となった。――

 

 

 

 

 

 

 

――時空管理局は平行世界ごとに存在することもこの頃に明らかとされ、地球連邦が時空管理局を体制に組み込む大義名分にした。なのはとのぞみが出会った『もう一人のなのは』の存在が図らずしも、それを裏付けていた。もう一人のなのははまだ子供であったが、別世界からやってきた『大人の自分とフェイト』に大喜びであり、大人なのはは『うん。直視できんわ…』とその時にぼやいたという。当然、闇の書当時のヴォルケンリッターでは、史実より遥かに強くなっていた大人なのはとフェイトには太刀打ちできるはずがなく、その世界の流れを変えたが――

 

 

 

――黒江とのぞみが遠征に行った日のこと――

 

未来世界の統治下に入ったミッドチルダ。M動乱もとりあえずは終わり、時空管理局中枢の再編も進んだある日。出世コースから外れたために自棄を起こし、素行が悪くなったなのはを実質的に見張るのも兼ねて、調はミッドチルダの高町邸でパートタイムの家政婦として働いていた。なのはが史実と違い、『任務』で留守にするのが常態になったため、ヴィヴィオを心配したフェイトの要請で時たま、ヴィヴィオの面倒を見ていたのである。ちなみに時空管理局はこの頃、本土の戦力の大量喪失で質量兵器の解禁をやむなく進めた。末端はともかくも、中枢部がズタボロにされ、更に唯でさえ少ない『強力な魔導師』が数える程度しかいなくなったためである。時空管理局そのものが次元世界全体にいくつもある事が判明し、以前の上層部が信奉していた『唯一性』が崩れた事で、魔導主体の技術体系を転換するのに障害が無くなったため、地球連邦軍の払い下げ装備を改造して使う事から始めた。

 

「ほんと、なのはさん、けっこう副収入あるんだな。一尉時代に出した自伝の印税とか……プロパガンダに使ってたんだな、管理局。だから、クビにできないんだ」

 

本職の収入が戒告処分などで減っても、副収入が結構あるため、自宅を維持しつつ、ヴィヴィオに習い事をさせられるだけの余裕はある事を確認する調。銀行の口座には年齢不相応なほどの蓄えもある。時空管理局(地球連邦軍)で窓際族になっても、不摂生な生活を続けられるわけだ。

 

「やれやれ。アレじゃ、とても子供の見本にはできなくなってるけどなぁ」

 

別世界の子供なのはにはショックだろうが、大人なのはは戦闘では隙のないオールラウンダーだが、私生活は隙だらけで、良くも悪くも『取り繕う事』をしなくなった。カラになったビール缶が三個もテーブルに置かれているなど、干物女ぶりが加速している。調とヴィヴィオが生活を正すことをしなければ、完全にアルコール中毒患者になっているだろう。戒告処分などがされたので、一佐(大佐)より上には上がれず、あまりにストレートに教導隊の教えを外部の人間に当てはめたためにデスクワーク職にも向かないと判断されて、鉄砲玉扱いである事に同情する。

 

「……そろそろ買い物に行くかな」

 

午前十時半。買い物に出かける調。首都こそ時空管理局は奪還できなかったが、第二の都市は依然として管理局の支配領域にあり、臨時首都と扱われている。首都から避難してきた人々で賑わっており、地球連邦の資本もかなり投下されているのか、地球で見かける店もかなり出店している。この時の服装はたいていの世界で着ていた私服でも、シンフォギア姿でもなく、地球連邦軍の軍服姿である(階級章は中尉になっている)。仕事からそのまま来たからだ。ある通りに出ると。

 

「あれ?調ちゃんじゃん」

 

「スバルさん?お久しぶりです」

 

スバル・ナカジマがいた。スバルはガランドの秘書になったので、動乱後は時空管理局を半引退状態だった。(体がミッドチルダより高度な技術で『改造人間』に転じていたためにメンテフリー化していたのと、改造人間化で不老化している事をM動乱当時の上層部に知られないためであったが、この時期にはその問題は解消されていたので、ガランドの秘書としての業務を優先してのことである)

 

「ウチのおばーちゃんに言われて、無限書庫に情報を追加しにいった帰りだけど、調ちゃんは?」

 

「買い物に出たところです。」

 

「んじゃ、付き合うよ」

 

「なら、買い物終わったら一緒に食事しませんか?」

 

「いいね」

 

 

スバルが時空管理局の業務を半引退状態なのは、体が地球の技術で再改造され、事実上はメンテフリーのボディに変わっている事、肉体にまともな老化が起きなくなっていた事を知られたくなかったからで、復帰は動乱後の再編が終わった後である。なお、この頃には六課の年少組だったエリオとキャロは自然保護部門に移籍済みで、戦乱には関わることは無くなっている。ティアナも、クロノとの取引で形式上の籍は復活させたが、64Fで圭子の従卒をしている。機動六課在籍経験者は皆、バラバラの道を歩んだが、スバルとティアナを含めた年長組は時空管理局の権力の中枢に登りつめた八神はやての意向で近い勤務地に集積されており、史実同様に『特務六課』として集めやすい勤務地に配置されている。

 

「そういえば、綾香さんがウマ娘の世界を見つけたって?」

 

「ええ。フェイトさんから引き継いで調べたらピタリ。それでトウカイテイオーやメジロマックイーンと出会ったそうで。トウカイテイオーとメジロマックイーンの体を師匠が治療したんで、そのお礼に有馬記念のチケット送られてきてたんですけど。遠征でパーです」

 

「愚痴ってたでしょ?」

 

「ええ、えらく。当分は戻れないって連絡が来ました。それでゴールドシップとシンボリルドルフを紹介されて、メアド交換しました」

 

「うへぇ。本当?」

 

「G1馬の生まれ変わりなんて、師匠も腰抜かしてましたよ。師匠、二番目のお兄さんの友人が競馬の調教師なそうで、競馬を齧った事あるそうな」

 

「あの人の人脈、すごいね」

 

「代々、一族の半分が凝り性で遊び人だそうですから。それで知ってるそうです」

 

黒江家は一族郎党の半分が遊び人で凝り性な気質であるらしく、綾香自身もだいたいの遊びに精通しているのは、二番目の兄が当代屈指の遊び人で、顔も広かったからであることを聞いていた調。ゴールドシップとウマが合ったのは双方が破天荒過ぎるからだと推測している。黒江は面倒見もいいため、身近で接した者は心酔したり、終生の友になる。ゴールドシップともウマがあったのか、メジロマックイーンの線で知り合い、トウカイテイオーが野比家を訪れるのに『メジロマックイーンの代理』としてくっついてくるほどである。

 

「遊び人かぁ…」

 

「ああ、それと。なのはさん、最近は身なりを多少は気にし始めました。別の自分を見て、身につまされたらしくて。それとヴィヴィオの進学も近いですし」

 

「ああ、この間の報告書にあった…」

 

「子供のなのはさん、プリキュア見てたみたいですから、喜んでたそうです。それで」

 

「あー…なるほど」

 

なのはは子供の頃の自分を客観視するチャンスを得た。フェイトを通し、交流も続いているが、プリキュアを見ていたことが明らかになり、変身願望を強く抱いていた事、咲と舞の活躍をビデオに録画していたことを熱っぽく語り、大人なのははボヤく羽目になった。なのはが2005年当時に9歳前後である事も明らかになったわけだが、咲の後継ぎであるのぞみと出会えたことに興奮し、のぞみも鼻高々になった。なのはは自分たちの頃までは見ていたのが確認されたのだから。

 

「のぞみさん、来るのが間に合ってれば、闇の書事件をややこしくした提督の使い魔を草薙流古武術で焼き払ってやったとか言ってます。」

 

「うへぇ、過激」

 

苦笑いのスバルだが、デザリアム戦役でパワーアップしたのぞみ(キュアドリーム)は仮面ライダー型の改造人間と戦えるため、闇の書事件当時の敵とピンで戦える力は充分にある。なのはもシェルブリットでグラーフアイゼンを粉砕、フェイトに至っては、シグナムとザフィーラをまったく寄せ付けない強さを見せ、リインフォースアインツに優勢に立ち回ったという。そのため、クロノBからは『人間扱い』されなかったともぼやいたなのはとフェイトだが、真ゲッタードラゴンのあまりの威力のほうがインパクト大だったのは安堵している。

 

 

「まぁ、真ゲッタードラゴンの真シャインスパークのインパクトが全部ぶっ飛ばしましたよ。再生能力云々を無視して蒸発でしたし、アルカンシェルの比じゃないエネルギーを自前で制御できますからね」

 

「あれさ、ストナーサンシャインの何倍の威力?」

 

「10倍以上ですね。普通のシャインスパークのマキシマムがストナーサンシャインを僅かに上回るそうですから、ゲッター最終兵器は伊達じゃないって事です」

 

シャインスパークはゲッター最終兵器であるが、原理そのものは簡単なため、Gウィッチ達の極め技としても多用されている。エネルギーのキャパシティ容量に威力が左右されるが、基本的に全エネルギーを叩きつけるため、破壊力はゲッタードラゴンの時点で『ゲッター線防御防壁』を高レベルで備えた無敵戦艦ダイを消し飛ばすほどの威力を誇るが、真ゲッター以降は更に跳ね上がっていく。真ゲッタードラゴンに至っては平常運転での真シャインスパークで『闇の書の闇』を一撃で消し飛ばすほどの超絶パワーに達している。ゲッターエネルギーの強大さは地球連邦軍が時空管理局と対等に話し合うための外交上の切り札としても用いられたたが、別世界の時空管理局に強く印象づけることにも成功している。

 

「なんかピンとこないなぁ」

 

「そういうもんですよ。私の世界で師匠が使った時も、インパクトがありすぎて、まともな感想来なかったそうです」

 

「そうだろうねぇ。近頃は大変だね。綾香さんの従卒したり、家政婦したり」

 

「元々、家事には慣れてましたから。それに、のび太の家にタダで住めるわけじゃなかったんで、のび太が高校に行ってからは、はーちゃんと交代で弁当も作ってました」

 

「それはクロから聞いた。当時は話題になったんでしょ?」

 

「ええ。はーちゃんがプリキュアだって認知され始めた時期でしたから。もっとも、私達のアニメが放送された頃には、私も大変でしたけどね。こちらも玉子さんに色々教わってたから、お手当てもらって勉強させてもらった様なものだし」

 

「でも、ネットで言われなかった?ギアの色」

 

「適合率がアニメと違うからってごまかしました。私がシュルシャガナをまた使うようになった時には、今の明るいトーンのカラーリングになってましたし、抱く心象も違いますからね。それよりも大変だったのは、エクスカリバー持ってることですけどね」

 

「ちょっと強引な気が…」

 

「はーちゃんの方が大変でしたよ。アニメで出てからは特に。ほら、今は現役時代の技より、マジンガーとかの技を使うから」

 

歩きながら会話を楽しむ二人。調は20年に及ぶ同居生活の事を話題にした。ことはもその間に精神的に成長し、やがて、マジンカイザーSKLの技も用いるようになった。全知全能の神では無くなった反動で『神を超え、悪魔を倒す』事を目指したはずが、この時点では『神が恐れ、悪魔すら慄く』方向になっていたりする。

 

 

「ギャップすごくない?」

 

「あの柔和な外見で、トールハンマーブレーカーやインフェルノギガブラスター撃ちますから、シャーリーさんの輻射波動が可愛く見えますね」

 

「他のプリキュア、ビビるっしょ?」

 

「師匠もドリームの姿で色々したらしいんで、そっちのほうがインパクトあったそうですよ。のぞみさんもB世界の自分自身救う時に双炎斬撃ってるらしいですから、原作無視上等な事に」

 

「うーん」

 

「ま、師匠も偶然でかめはめ波撃てたから、原作無視どころか崩壊させてますよ。私だって、本当は物語の脇役ですからね」

 

調も言うように、本来は脇役であるはずの者たちが本来の主役を食う存在感を放つ事は批判を買う。調とて、史実をなぞれば、物語を賑わすためのサブヒロイン止まりの存在に過ぎなかったのだ。かの海賊戦隊ゴーカイジャーや仮面ライダーディケイドは過去のライダーや戦隊の力を好きに行使できるというが、それと違う形にしろ、通常と違う力の行使と会得は認められるべきである。のび太も空気砲や電光丸、ひらりマントを用いて戦うことは大人になっても、普通にやっているし、時には禁断の『ジャンボガン』と『熱線銃』も持ち出している。また、のび太が最も禁断の手としている内の一つに『自分をソノウソホントで自己強化して不死身になる』ことがあるという。また、子供の頃からの不幸体質も健在であるので、ゴツゴーシュンギク(自分にご都合主義をもたらす薬品)も依然として有効である。のび太はゴルゴと違い、ギャグ補正は強いものの、身体能力そのものは常人であるので、裏では相当に努力を重ねていた。大学では射撃部に籍を置いており、そこのエースだったように。一応、身体能力そのものは年相応になっているが、射撃と運転以外は生来のドジが残っているため、スネ夫からは『現代のムーア・ボ○ド』と揶揄されている。これはロ○ャー・ムーアがジェームズ・ボンドに扮したはいいが、アクションシーンはてんでダメだった事に由来し、愛嬌もあり、エレガントでユーモラスな雰囲気も漂う独特のダンディズムを垣間見せるが、ことさら殴り合いに関しては苦労するなどのユーモラスさを持つからだ。(逆に、彼の末裔のノビタダは運動神経抜群であるので、タフでワイルドの路線一本槍なので、転生体ながらも別路線であるという)

 

「のび太も大人になっても、ステゴロは苦手だって言ってます。大人になると、子供の頃みたいな事はできなくなるとかで」

 

「良くも悪くも理性が強くなるからね」

 

のび太は子供の頃の爆発力は失ったが、その代わりに安定して、大冒険時の基本ポテンシャルは出せるようになっている。成長し、大人になるというのはそういうことだ。

 

「あたしもメタ的に言えば、メインヒロインからは降格したようなものだしね」

 

「そういえばそうですね……」

 

スバルも自分がメタ的にメインヒロインとして造形されたキャラでありながら、実際はなのはの人気に勝てずに実際はサブヒロインになった事をドラえもんの存在で自覚したのか、複雑な心境である。以前に共闘経験のある錦が夢原のぞみに転じ、今やプリキュアの代表格として振る舞っているのも大きい。

 

「のぞみなんて、今じゃ、ウィッチからプリキュアにジョブチェンジしてるようなもんだしねぇ。いいよねぇ」

 

「中島錦には戻りにくくなったから、夢原のぞみとして生きていくって意思表示ですよ。あの世界の中島家は代々、ウィッチを輩出してきた名家なんで、いくら次女でも、嫡流の娘がプリキュア活動なんて許されませんよ。それで師匠たちがあれこれ動いて、新規に軍籍を用意したんです。まぁ、世間向けには錦さんが新規に覚醒したことにしてますけど、実際は自我も夢原のぞみのそれになってますからね」

 

「当主は知ってるの?」

 

「錦さんの実のお姉さんなんで、その人は理解あったんですけど、周りの親類が壁だったんだそうです。それで居心地悪いんで、婚約した時に基本をのび太の家住まいにしたんですよ、のぞみさん」

 

のぞみは中島家の親類縁者から自分が歓迎されていない事を自覚していたので、コージと婚約したダイ・アナザー・デイ直後の時期からは野比家に厄介になっている。マンションのワンフロア丸ごとを保有しているため、いくらでも部屋は余っているのだ。ちなみに、のび太の両親は2021年時には50代後半から60代ほど。マンション暮らしを『落ち着かない』という事で、孫が生まれた老後は旧野比家のあった場所を含む公園近くの安普請のアパートに住み、穏やかな老後を過ごしている。なお、医療技術の進歩のおかげで、のび太が老境に足を踏み入れ、ノビスケが結婚する頃にものび太の両親は健在であるという。のび太がまだ青年である2021年からは更に後の時代のことだ。

 

「なるほど」

 

「私は連邦軍でZ系やVFの定期訓練飛行を終えてから来ましたから、軍服着てるんです。ハッタリにもなりますから」

 

「確かに、今のミッドチルダ、時空管理局の権威が地に落ちたから、あたしもおばーちゃんの現役時代の軍服借りてるんだよね」

 

スバル・ナカジマは亡くなったと思われた母親のクイントが幼女化して、ウィッチ世界に飛ばされており、孤児院からガランドが引き取った結果、なし崩し的にガランドの孫という扱いになり、公には『スバル・N・ガランド』を名乗るようになっている。そのため、服装はガランドが現役時代に着用していた軍服である。

 

「時空管理局、結局は地球連邦の事実上の傘下になりましたからね」

 

「うん。信じてた唯一性が否定されたのが契機になって、地球連邦の管理下に入ったからね。末端の世界は健在だけど、組織の中枢がやられちゃ、権威は保てないよ。管理世界の連中は自分たちの安全が守られていれば、中央の権力がいくら入れ替わっても、どうでもいいみたいだしね」

 

時空管理局の旧上層部はベルカ時代の再来を防ぐという名目で、管理世界には独自武力を禁じていた。しかし、自らを上回る世界の侵略者相手に無力を露呈し、更に時空管理局と古代ベルカの双方が地球にルーツがある事実の判明もあり、ミッドチルダの優生意識は脆くも崩壊。地球連邦の一行政地域化する道を辿った。そのため、法律その他は主に地球連邦の物が適応されるようになった他、なのはとフェイト、はやての子供時代のように『子供の頃に局員としてスカウトすること』も無くなった。(M動乱後、自然保護部門は戦闘部門と完全に分離したため、エリオとキャロはM動乱後はフェイトの意向もあり、戦闘に関わらぬ道を辿ったという)就業可能年齢が16歳以上に引き上げられたのは、なのはの失敗が間接的に関わっているので、なのはの内部での評判は実のところ、以前からはガタ落ちであるが、戦闘では強い点は変わりない。ロイ・フォッカーから空戦機動を教わった経験もあるので、機動の鋭さでは時空管理局の中ではピカイチ。その空戦技能が惜しまれたため、懲戒免職処分と自主退職の促しを辛うじて免れた。非ミッドチルダ人でありながら、実戦部隊の要員で三佐以上にまで出世していた貴重な人材であるためだ。時空管理局そのものが急速に地球連邦の体制に組み込まれていく時期において、なのはは時空管理局の人事姿勢が『リベラル』であった事を示すための格好の材料とされたわけだ。

 

「で、なのはさんは地球に自分たちがリベラルだって示すための?」

 

「うん。それまで派生が多い管理外世界の一つとしてしか認識してなかったのが、その内の一つが自分たちのルーツだもの。そりゃ青ざめるよ。戒告処分食らったとはいえ、正規の士官学校を出てる将校だから、クビにはできないって」

 

 

時空管理局内でも、なのはの免職処分、あるいは自主退職を促すことが一時は検討されたが、なのはが地球人である事で、地球連邦に媚びを売るための材料に使ったわけだ。なのはは指揮官適正が低いか、ほぼ無しと判定されたため、今後は『リーダー適正の高い誰かの配下として使うしかない』という結論に達している。

 

「政治的だけど、クビにできないから、窓際族にするしかないって奴ですね」

 

「うん。失態犯したけれど、法は犯してないからね。それに今までの功績があるから、時空管理局も処分に困ったんだよ。教導隊の教え通りだったから、余計にね。だから、除名処分にもならなかったんだよ」

 

「すごく大人の事情ですね」

 

「教導隊もあの時、ずいぶん揉めてね。それで、なのはさんは一夜で英雄から厄介者扱いさ。それで自暴自棄起こしたんだろうね」

 

 

スバルは史実ほどはなのはを尊敬していない。干物女なところを知ったのと、近頃の自暴自棄ぶりが目に余るからだ。

 

「やれやれ」

 

「あ、重大な情報だけど、戦車道世界にあと数人は因子持ちがいそうっていったじゃん?」

 

「ええ」

 

「知波単学園にいたよ……。しかも最新のプリキュアが」

 

 

「えーーー!?」

 

「マークはしてた『西絹代』。彼女はキュアフラミンゴだったよ」

 

「トロプリじゃないですか!?」

 

「最新と言ったでしょ?多分、あと一人くらいだろうね、残ってるの」

 

知波単学園の隊長『西絹代』。彼女が戦車道世界にいるプリキュア因子持ちの内の残っている数人の一人。キュアフラミンゴ/滝沢あすかの転生体。覚醒が遅れた再後発組だ。

 

「これで一応、全シリーズから一人はいることになるよ」

 

「ええ……驚きました。あの旧日本軍をデフォルメしたような人がトロプリ……」

 

「全シリーズから一人はいる事になったけど、元の世界での仕事が済んでない子も多いよ」

 

「タイムマシンでどうにかしましょう。それに、響さんがグレースだったからって、手のひら返したって批判もきてます」

 

「なのはさんのあれ、情報が流れたからなぁ」

 

なのははどのような形であれ、ティアナに史実でした制裁に似た形の出来事を起こしてしまう因果があるが、軍隊でのブートキャンプ的な教育は21世紀の日本では批判の的となるが、元・魔法少女のなのはがその場の責任者としてしたのが不味かったと言える。なのはは子供時代の天真爛漫な姿が有名である分、余計に批判が強かったのは否めず、やさぐれる要因の一つとなった。

 

「一般人から見れば、私達のしたことはいじめでしょうね。だけど、時空管理局の教導隊は『細かい事で叱ったり怒鳴り付けてる暇があったら、 模擬戦で徹底的にきっちり打ちのめしてあげる方が、教えられる側も学ぶことが多い』って考えだったって聞きました」

 

「そう。教導隊の隊長、それで本部に呼び出されて、上に理不尽に叱責されたとか」

 

時空管理局・戦技教導隊はその時に解散の危機に陥った。なのはをスケープゴートにできない理由がその代々引き継がれてきたドクトリンにあった。はやてもSONGへの説明に四苦八苦する羽目となり、21世紀日本(ドラえもん世界)からは『部下の監理ができてない』と嫌味を言われたと、はやてはぼやいている。教導隊は山本五十六の名言に近い思考からのものだったが、『もはや私刑だから、即刻クビにしろ』というのは素人の暴論に近い。時空管理局としても、現場の士気に関わる問題なので、なのはには法規の範囲で処せられる範囲の厳罰が課せられている。地球連邦軍の人事記録にも『戒告処分あり』とされるので、現役中に将官になる道は閉ざされている。

 

「でも、逆にその時の無力感がプリキュアとしての覚醒に繋がったんじゃ?」

 

「ええ。その無力感が花寺のどかとしての記憶を呼び覚ますキーになったのも事実です。それに、私とガイちゃんもあの時、処分は受けてるんですよ?」

 

「一般人はなんとでも言えるから。なのはさんに海軍精神注入棒でバッターでもしたいのかな、連中…」

 

スバルはなのはが大佐まで出世はできることに批判がある事に同情する。近代以降、士官学校卒の将校を下士官以下に下げる事はまずない。フランス革命以前のフランス軍であったというが、それは近世以前のことだ。

 

「それに、士官学校卒の人を下士官に下げるなんて、最近はまずないよ。第二次世界大戦が最後だよ、そんなの。士官学校出の人材って貴重なんだから。普通に人事考査のところにバツがつけば、普通は出世できないけど、なのはさんは現場では普通に優秀だから、お情けなんだよ?しかも給与は普通の七割出りゃ御の字だし」

 

なのはは士官学校を出ていたために将校でいられたが、問題児扱いが固定化されたため、人事考査にバツがついて、危険手当が減額されたので、手取りの給与はそれまでの6割強ほどに減少している。だが、本の印税があるので、暮らしは維持できる。フェイトが逆に執務官として成功し、これ迄通りの仕事を続ける権利を得た上、名誉ある黄金聖闘士として、城戸沙織の『グラード財団』からの生活費支給もあるので、相対的にはバランスは崩れていない。(活動例としては、雁淵孝美の得た『アクイラの聖衣』は過去の聖戦で失われたと思われた聖衣の一つであり、グラード財団が牡羊座のシオンの承諾を得て復元し、与えたものである)黒江、智子、黒田、赤松、フェイトなどの64F関係者が裕福である理由の一つはグラード財団からの支給金の存在で、64fの主要人物の多くが黄金/白銀聖闘士なので、グラード財団はかなりの金額を支給していることがわかる。

 

「フェイトさんと私がグラード財団から生活費を支給されてるから、ヴィヴィオには不自由させないんで、良かったですよ」

 

「でもさ、ヴィヴィオが武闘派になったのって…」

 

「原因はフェイトさんと私ですね…」

 

身近な二人が格闘技の経験者であることで、格闘家の道を歩むヴィヴィオ。フェイトはインターミドルの優勝経験があるし、調も古代ベルカ滞在中にそこそこの域に達したと自負する経験者であった。ヴィヴィオは調が『自分のオリジナルの護衛を勤めていた張本人』である事を知った時、なのはもビックリなほどに興奮し、調に嗜められている。素手での格闘も『前に古代ベルカで取った杵柄』と謙遜しているが、歴代のピンクプリキュアとまともに戦えるくらいの腕を持つまでに研鑽していた。

 

「それと、マナ(キュアハート)、アインハルトちゃんを返り討ちにしたんでしょ?」

 

「ええ。その次に六花(キュアダイヤモンド)さんが、のぞみ(キュアドリーム)さんにも、で、最後にヴィヴィオ本人にも。あの子、立て続けに負けたのか信じられないみたいでしたね」

 

アインハルト・ストラトスはヴィヴィオと出会う前、およそ三人のプリキュアに手もなくひねられるという事態に遭遇した。更にその三人から仕込まれ、応用が効く状態に成長していたヴィヴィオにノックアウトされるという経緯を辿った。アインハルト・ストラトスの不幸の一つは歴代プリキュア達はその時には既に地球圏でも屈指の達人達に鍛えられていた状態であったこと、キュアドリームに至っては草薙流古武術の免許皆伝に至っていたことだろう。

 

「でも、良かったんじゃない?あの子。あたしもストライクアーツ一本だけじゃ、まるで無理だってわかったの、仮面ライダーの皆さんに手ほどき受けた時だもの」

 

「覇王流は古代ベルカの時代からアップデートされてないカビの生えた古い流派です。そんなのが1000年以上もアップデートを重ねてきた地球の武術に勝てると思います?古代ベルカの時代には強かったのは事実ですけどね。顔合わせた事ありますよ?彼とは」

 

調は護衛騎士時代、アインハルト・ストラトスの先祖『クラウス・G・S・イングヴァルト』とは面識があった。面識があると言っても、会う度に世間話をする程度のモノであったが。彼がオリヴィエの死後に一騎当千の強者となった事は帰還後に知ったとの事なので、調が合った頃には王位継承前であり、まだ修行中の頃だったと思われる。

 

「それ、聖王教会垂涎の情報だよ」

 

「ですよねぇ。だから、ヴィヴィオに『行ってた』時期のことを話すのせがまれちゃって。でも、アインハルトが最初に会ったのが、のぞみさんたちで良かった。師匠なら、どんなに加減しても骨の数本はへし折って、『病院送り』は確実ですから」

 

苦笑する調。本来の容姿ではクラウス(アインハルトの先祖)と会っていなかったので、一歩間違えれば、アインハルト・ストラトスは(記憶の中の護衛騎士と同じ容姿である黒江と出くわし、襲っていた可能性はかなり濃厚で、黒江の手で間違いなしに病院送りにされていただろうと考えていたからだ。目的地のスーパーが見えてくるまでは、ここまで10分ほどであったが、かなり濃厚な内容の会話であった。

 

 

 

 

 

 

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