ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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今回は色々と詰め込んでいます。


第三百三十九話「C.E世界の顛末と結果」

――コズミック・イラ歴への介入は、結果として、地球連邦の武力による抑止力が戦争の終結を早めた。 第ニ次大戦は最終的には、『黒色艦隊との一戦が最後にあった』とルナツーからの報告には記されていた。 その交戦と、イスカンダル救援での戦闘データをもとにデザリアム戦役で大活躍をし、扶桑でも切り札として用いられるのが、『波動カートリッジ弾』である。 その時期は銀河中心殴り込み艦隊からの先遣隊が地球圏に帰還し始めていた時期であるが、その頃はメカトピア戦役の末期。 一時的に転移していた時点のルナツー方面には、スーパーヱクセリヲン級やツインヱクセリヲン級などの大型宇宙戦艦は配備されていなかった。 だが、ドレッドノート級、改アンドロメダ級を有し、転移時にバトル13(新マクロス級)も寄港していたという陣容であり、内惑星用艦艇も、クラップ級とラー・カイラム級を配備されていた。結果としては『流れに流された』形だが、コズミック・イラ歴世界の戦争を強引にでも手打ちにしたいという、ラクス・クラインの要請に応えた結果であった。 結果的に次の争いの種になったが、ラクスは(一応は)そこは織り込み済みで、世界全体を地球連邦の『飛び地』にさせることで、強引にでも混乱を平定するしかないというのが結論であった――

 

 

 

 

 

 

―― メカトピア戦争の末期 ギアナ高地(コズミック・イラ歴でいう、第二次大戦の終結間もない時期)――

 

「クライン嬢だが、こうなることを織り込み済みだったのか、将軍?」

 

「父親と違い、政治向けの気質ではないというが、彼女なりに考えた結果だろう。父親のような手段を講じえない以上、我々の武力を用いての統一を志向したのだろう。ドーリアン嬢のように、地球圏全体へのカリスマがない者の悲哀だな」

 

レビル将軍とゴップは、ルナツー方面軍の報告書に目を通し、そう言い合った。 ラクス・クラインを父親は『後継者』とするつもりはなかったのか、国のマスコット的な仕事をさせていたし、本人も政治に興味はなかった。 それが、父親の死で陣頭に立たせられてしまい、カリスマを持つように取り繕う必要があった。 プラントの元議長の子として。ラクス本人の『器』を本来は超えていることをせねばならないことに、プラントの悲劇があった。

 

「成り行きとはいえ、先方の戦役に介入せざるを得なくなり、結果的に二度に渡っての調停が必要だった。ここまでする必要が?」

 

「先方の世界はそもそも、コーディネイターとナチュラルの憎しみ合いが争いの種だという。我々のニュータイプ論だが、ナチュラルには希望の光、過激なコーディネイターにとっては自分たちの信ずるものの否定でしかない。地球連合が我々に服従しても、プラントは二分される。それで結局は争いになり、我々が介入せざるを得なくなった。ある意味では、子供じみた憎しみ合いとも言えるがね」

 

レビル将軍は地球人という枠組みで団結し、異星人に打ち勝った世界の目線から、コズミック・イラ歴世界の争いを『子供のよう』と評した。 試しにニュータイプ論を流してみたら、コーディネイターの右派が猛烈に反発。 そのまま無理を押しての第二次大戦となったという。その第二次大戦は、プラントの主力の離反、結果的にギルバート・デュランダルが黒色艦隊と共に現れた自動惑星ゴルバを道連れに、メサイアとともに自爆し、それに伴うプラント主力部隊と地球連邦との停戦で幕を閉じたという。 如何に自動惑星ゴルバといえど、超至近距離での宇宙要塞級の構造物の自爆には耐えられなかったのである。

 

「しゅんらんだが、どうする?」

 

「64Fが欲しがっているから彼女らに回しておけ。 せっかくのアンドロメダ級だ、星間パトロール隊に引き渡すには艦齢が若すぎる」

 

「手配しよう」

 

当時、反地球との政治的軋轢が増しており、どちらかが正統な地球かを争いそうであったが、ハト派の仲介で、争いのもとになったアンドロメダ級の退役で手打ちになったが、代替の旗艦は必要であった。それがブルーノア級であった。 後に、波動砲が次元波動爆縮放射器ではなく、似て非なる『タキオン波動収束砲』である事がわかったので、ガイア(反地球)は妥協し、条約に接触しない『アース基準の波動砲』に波動砲のラインを切り替える。兵器の規格統一を試みたわけだ。 アース(未来世界の地球)はブルーノア級の開発を急ぎ、また、エルトリウムの船殻製造工廠を再利用し、新型戦艦『ブリュンヒルト』の建造を開始する。ヱクセリヲンやエルトリウムなどの戦艦と同じ『火器内蔵タイプ』の設計で、ドイツ系の設計陣の手で仕上げられた。 火器内蔵タイプ宇宙戦艦作りのの老舗だからだ。 ただし、エルトリウムと違い、第五世代宇宙船ではない。(運用コストがあまりにかかりすぎるため。ただし、対宇宙怪獣用に超能力者による索敵網を持つことは継続されているが) アースはアンドロメダ級の量産は諦め、後に『宇宙戦艦ヤマト』の後継艦を時代ごとに建造していく。 ガイアは予想外の顛末に狼狽し、『次元波動爆縮放射器でないのなら、こちらの規制を強制する気はない』という声明を発表する。 波動エンジンも、波動砲も『似て非なるテクノロジーのもの』だったからだ。 ヤマトも正真正銘、戦艦大和をベースに宇宙戦艦に改造したアース、建造時に戦艦大和の残骸に偽装した関係で、船型となったガイアとでは『出自は異なる』からで、そのため、アンドロメダ級の退役内定から、その次代の旗艦『宇宙空母ブルーノア』の竣工までの繋ぎのために旗艦となったのが、ヱルトリウムなどの系譜の船体設計の『ブリュンヒルト』。 地球連邦軍で『船体添え付けの武装が無い』船体の戦艦が総旗艦を務めた『珍しいケース』となる。

 

 

 

 

 

 

――その頃、1945年を迎えつつあった扶桑は数を揃える必要のある航空戦力や機甲戦力の整備に手間取った。 レシプロ機の大戦後期水準への切り替えにも手間取ったのに、戦後水準のジェット機となれば、尚更であった。 この交替で、レシプロ機前提の飛行場の複数が閉鎖され、ジェット機前提の新設飛行場の少数が各地に点在する形になるため、空中給油も急速に普及した。ウィッチはこの流れに容易に追従できず、第二世代理論の普及、空中母艦思想がウィッチを運用するに適当とされたため、富嶽の生産数の少なからずは、その思想への適応型であった。第二世代理論のごく初期は魔力消費量が多いという欠点があり、時空管理局の技術供与で『魔導タンク』(魔力の増槽)が開発され、以後は機械を駆動させるための通常の燃料の増槽と併用される。 第三世代理論は両者の役目の統合を目指す研究から生まれていく。 その弊害で陸軍の装備は(日本側主導で軍備整備が決められたため)更新に手間取る。この結果として、各国装備の混在状態が常態化していき、機甲装備は米英独の三カ国製の戦闘車両が雑多に混在する状況が長く続く。 特に、鹵獲品の使用は前線部隊で推奨され、M24、M41は特に好まれた。これは騎兵出身者が火力や防御力よりも機動性を重視していた関係で、騎兵が最近まで現役だった時代には、重戦車然とした車両は受けが悪かったからだが、同時に、三式から五式までの流れすら瞬時に陳腐化させた『センチュリオン』、『M48』の高バランスさに羨望を感じた者も多い。 その兼ね合いで、戦時下を理由に、それらの鹵獲品の運用は許容された。 とはいえ、国内の官僚たちはこれに危機感を強く持っており、74式や10式の生産、あるいは供与を促進させる。 そんな戦場は、1945年からの四年で各地に発生。 業を煮やした扶桑軍はその間に、人型機動兵器の導入に傾倒し、地球連邦軍と取引を行う。 日本への通達は事後となる。横槍での混乱を現場が嫌がったからだった――

 

 

 

 

――それから数年後の『遠征』中のある日――

 

「何、連邦の新型戦艦?」

 

「これだそうだ」

 

「……ブリュンヒルトじゃねーか!!ぜってー、設計陣にあれのファンがいたろ!?」

 

遠征で作戦会議中の黒江が、圭子に見せられた官報に乗っていた『地球連邦軍の新鋭戦艦』。 その艦容はヱクセリヲンやヱルトリウムの系譜に属するものの、明らかに20世紀に大ヒットしたスペースオペラ『銀河英雄伝説』の主人公が最後に座乗していた戦艦にそっくりであった。 艦名も『ブリュンヒルト』と、そのまま。 明らかに『肖った』のが丸わかりである。

 

「ここまで浸透してるとは。ガレージキットじみてるなぁ。連邦の軍事予算を注ぎ込んで、ヱルトリウムの船殻製造技術を再利用してまで…」

 

黒江はその艦の建造を『ガレージキット』と評したが、意外にも(ドイツ系の設計陣の腕もあり)性能は確かであり、コズミック・イラへのレビル将軍の視察に使用され、アンドロメダ級に代わる連邦軍の総旗艦と扱われた。 艦の大きさは小説よりは大きく、おおよそ新マクロス級と同等の1.5Km程度だが、コズミック・イラ世界の『ゴンドワナ級超大型空母』よりも大きいため、現地世界への力の誇示に充分な効果を発揮した。 官報には『動く統合参謀本部』(これは大本営という表現が嫌われているためでもある)という謳い文句が書かれており、波動エンジン搭載ながらも、波動砲は積んでいないとも書かれていた。

 

「構成技術は波動テクノロジーで、内蔵武装もショックカノンの派生型。コズミック・イラの連中を統べるには、こういう力が必要かもな」

 

「統括官。敵モビルスーツです」

 

「ドムか、ハイザックか、マラサイか?」

 

「それが……ゼク・アインです」

 

「何、ゼク・アイン?バカをいえ。たしか、ペズンの反乱で工廠が消し飛んだから、現存数もわずかだと聞いたぞ」

 

「ですが、明らかに新規製造されたとしか」

 

「どれ…。偵察機、映像を回せ」

 

地球連邦軍はグリプス戦役後も、早期警戒機として『アイザック』を使用している。 これは旧来型の早期警戒機が陳腐化したためで、グリプス戦役後にモノアイカメラ構造機が排除される中でも生き残った。64F(Gフォース)も保有している。 その内の一機からの映像だ。

 

「ゼク・アインだ。こいつは驚いたな」

 

「先輩、どうします?」

 

「こいつはかなりの機体だ。黒田、センチュリーとガンブラスターの二個小隊で威力偵察を行え。」

 

「了解」

 

「君は他の連合軍に警戒情報を出せ。ゼク・アインは年式が新しい分、侮れんからな」

 

「ハッ」

 

遠征軍の前にも現れた『ゼク・アイン』。 第一次ネオ・ジオン戦争の時期の設計である第二世代MSの一種。 かつてのジオンの工廠の一つであった『ペズン』で設計され、ザクのコンセプトのリファインを狙ったという。 第二世代MSとしては、かなりの出来であるため、侮れない敵である。威力偵察に出す機体に高性能機を出すあたり、同機種のポテンシャルが窺えた。

 

 

 

 

 

 

 

――こちらはウィッチ世界の南洋島南部――

 

 任務の地。 集団疎開で無人になったとある都市。 煉瓦造りの建物が多く点在し、明治か大正期に開かれた街であることを伺わせる。 キュアミラクルはドダイを着陸させ、機体で街を歩き回る、すると。

 

「ん!」

 

RX-78系のガンダムは偵察用途へ供する事が可能なように、カメラの使用可能用途がジムよりも多い。 その名残りか、七号機も(近代化改修後においても)、ジェガンより索敵可能範囲は広い。 センサーが反応し、メインカメラを向けると。

 

「狙撃装備か。データベースだと……第二種装備だな?」

 

ゼク・アインが数機ほど、狙撃態勢で陣取っている。(ちなみに、コズミック・イラ歴世界の機体(特にナチュラル用)に対しての優位性があったのが、OSの完成度の差である。 未来世界では、人型兵器の研究は完成され、そこからの発展と第二世代、第三世代の管制OSの研究へと移っている。 コズミック・イラ歴の機体と違い、陣営ごとのMSの動きに差はそれほどなく、パイロットの腕が物を言う)

 

「さーて。あれの裏をかくにはっと。フルアーマー部の変更された武装『ヴェスバー』でも試してみるかな」

 

キュアミラクルは七号機のフルアーマー部分にあった背部ビーム・キャノンに代えて、新たに装備された『ヴェスバー』(F91のものの改良型)を使う。 機体がF91よりだいぶ大型である上、安全性と高出力を両立した『第三世代の核融合炉』を積んだ関係で、F91(試作機のロールアウト時)よりも出力に余裕がある。 コズミック・イラの高効率のエネルギー変換技術の導入で、大型機でも、『小型機で実用化された武装』を使用可能になったのと、ガンキャノン的な機能をガンダムタイプに持たせないで良くなったためだ。 そのため、一年戦争直後に『残党狩り』に使われていた時の七号機とは『別物に近い性能となった』わけである。配置のレイアウトはF91と同じなので、F系の扱いに慣れていれば、同じ感覚で撃てる。

 

「ヴェスバー!」

 

MS乗りたちも時たま、自機に特徴的な武装がある場合は、スーパーロボット乗りに肖る形でで、その名を叫ぶ慣習がある。 ファンネル系統に始まり、ハイメガキャノン、ハイパーメガランチャー、ヴェスバーなどがそれにあたる。 一年戦争と戦後の数年で『狙撃用MS』が廃れたため、狙撃任務は汎用機に任務用装備を与える方向にシフトしたが、ジム・スナイパーⅡが近代化改修で未だ現役を張っているのは、『実体弾を使い、無駄な破壊を起こさない』事ができるからで、ジェガンを素体に、その機能と外観を移植してまで、強引に用いる部隊も多いという。それを改善するために生まれた武器の一つが、ヴェスバーである。 貫通力の高い高初速モードで放ったため、不意を突かれたゼク・アインの一機は防御の間なく、一撃で大破に追い込まれた。

 

「お、来たね。護衛機か。なら、リ・ガズィ・カスタム用の…」

 

意外なことに、武装は近代化改修の際に、ありあわせの部材が使われたのか、ビーム・サーベルは『ハイパービームサーベル』に換装されていた。 これはリ・ガズィ・カスタム用の部材の改造型であり、量産品のビーム・サーベルでは、要求仕様を満たせないからでもあった。 そして、キュアミラクルは出撃前、ドラえもんの道具である『技術手袋』でビーム・サーベルに更に改良を施した。 ビームの粒子を加速させ、擬似的にビームザンバーと同等の切れ味を実現させるというもの。 アナハイム製のMSのビーム・サーベルは似たりよったりの切れ味なため、サナリィの粒子加速技術を現地で加える事は球連邦軍では割にポピュラーな改造だが、量産機用のデバイスでは限度があった。 だが、ガンダムタイプ用の高級品であれば、部材の耐久度が違うので、ビーム・ザンバーと同等の能力を与えられるのだ。

 

「はぁっ!!」

 

ビーム・サーベル同士がぶつかり合う。七号機のビーム・サーベルはゼク・アインのサーベルを断ち切り、サーベルごと一刀両断してみせる。 単に、サーベルに粒子加速を加えただけなのだが、通常のMSには圧倒的優位である。

 

「次の狙撃が来た!」

 

ゼク・アインの正確な装備データは喪失していたため、本来は第二種装備である『狙撃仕様』が第三種装備とされていたり、運用側の都合で、本来の狙撃用装備『ビームスマートガン』は好まれず、ジムスナイパーⅡの用いた実弾式狙撃銃が好まれていた。(保守性の都合か)

 

「おっと!」

 

その場を離れ、弾道を予測し、軽くアポジモーターを吹かし、横滑りする形で回避する。関節や排気ダクトを狙っていたのは明らかで、照準も正確である。

 

「敵のスナイパー……腕、いいな。ティターンズ崩れの割には……」

 

その表現は正しくはない。 ティターンズは元々、ジオン残党狩りが表向きの存在理由であったため、熟練者が積極的に採用されていた(極初期)。 戦中にジムスナイパーで鳴らした者がいても不思議ではない。

 

「建物とかを遮蔽物にして、近づくっきゃないな……」

 

キュアミラクルはこの時、魔法を回避や防御の補助に用い、攻撃はMS戦のセオリーに則るという、律儀な戦闘を繰り広げた。 MS戦では、自分の攻撃魔法を組み込むのは困難であるからで、そこは同じ『魔導師』でも、なのはやフェイトとの違いと言えた。

 

 

 

 

――コズミック・イラ世界の記録によれば、連合との第二次大戦は史実と違い、連邦艦隊を追ってきた黒色艦隊との艦隊決戦が最後に起こってしまい、その結果として、その場の全勢力の艦隊はこれに巻き込まれ、少なからずの損害を被り、結果的には連合・プラントの双方の宇宙艦隊は大損害を負い、戦争継続は不可能と判断されるに至ったという。 偶発的ながらも、恒星間航行可能な宇宙艦隊同士の艦隊戦に巻き込まれたプラント艦隊は、宇宙艦隊の四割を喪失、三割が大破。艦載機は半数以上という『宇宙戦闘としては、未曾有の被害』を被った。 元々、第一次大戦で起こった損害から回復の間なく、二次大戦になっていたため、この損害は『致命傷間近』と嘆かれるほどであった。一方の連合も、艦艇の過半数が航行不能に陥ったが、指揮序列がはっきりしていたために総崩れは免れ、地球連邦艦隊に助力し、存在感を示した。 大西洋連邦政府首脳の死で混乱に陥っていたため、地球連邦艦隊への加勢は不問とされ、コズミック・イラ世界そのものが事実上の『地球連邦の飛び地』となる一助となった。 これは世界的な『ロゴスへの魔女狩り』で経済が崩壊寸前に陥り、地球連合の体制が綻んでしまったことが理由で、オーブは地球連邦の出先機関を置くこととしたこともあり、戦後の地位を確立した。 大西洋連邦は没落し、オーブ連合首長国が事実上の地球連合の主導的立場となったが、世界的な経済の落ち込み、連合の軍事力の激しい消耗を補える力は同国にはなかった。 地球連合も内部分裂を起こしており、このままの状態で『異星の侵略者』の攻撃を受ければ、人類全体で為す術はない。これは国家首脳のみならず、ジャンク屋組合に至るまでの認識となり、地球連邦の庇護を受けることになり、連邦側の使節団を乗せて、オーブ連合首長国の軍港近くの沖合に着水していく『ブリュンヒルト』の威容は、地球連邦の恒星間航行文明としての技術力の象徴と現地の住民らに取られた。『SFチックな外観なのに、単艦で複数を相手取る上、頑丈過ぎる船殻を持つ』事は戦場で証明されているが、恒星間航行は『100m台の船体でも、居住設備が整っていれば可能である』、『既存の科学の常識を超えなければ、恒星間航行は難しいまま』という技術面の現実も突きつける事となった――

 

 

 

 

 

――その流れで得られたコズミック・イラの一連の技術は、地球連邦の開発中の兵器に技術的ブレークスルーをもたらし、フラッシュシステムとサテライトキャノンの実用化という結果として表れる。 それ以外にも、核融合炉の世代交代による安全性向上に貢献するなど、原子力技術の安全性向上に一役買い、それ以外の動力にも恩恵が生じ、高効率のエネルギー変換により、波動砲の連射性の改善を成し、ゲッター炉の高効率化で、ゲッターアークのレストアに目処が立つなど、各所に貢献した。 その逆に、地球連邦の高度な医療技術が『エクステンデッド』/『ブーステッドマン』と呼ばれる『生体CPU』の助命に役立てられたり、地球連邦のもたらしたニュータイプ論がナチュラルに希望を与える一方で、コーディネイターの少なからずはアイデンティティの危機を感じ、地球連邦に反抗を試みたが、熟練のコーディネイター(エース級)の複数を単騎で圧倒せしめる力(相手がV2アサルトバスターという不幸もあったが)で以て、世に示した。本来は『SEED』同様に、コーディネイターもナチュラルも関係ない境地の一つであるものの、過激派のコーディネイターの試みた騒乱を鎮めるための『デモンストレーションは必要であった』とはいえ、人智を超えた領域を見せることもある『サイコフレーム搭載機』ではない分、地球連邦には慈悲がまだあったといえる――

 

 

 

 

 

――ウィッチ世界が太平洋戦争に入る頃までに起こった、一連の出来事は、M動乱と並び、地球連邦が次元世界に乗り出す一因となった。 事故で転移していた。同系列の世界の元住民の一部は軍・民問わず、地球連邦へ移民した者も多く、元・ミネルバ隊の隊員の内、少なからずが地球連邦の戸籍を取得し、別の職に就いたが、シン・アスカ、ルナマリア・ホーク、(彼らと別の世界出身だが)ステラ・ルーシェなどは地球連邦軍に入隊した。 そのうち、ルナマリア・ホークはジャンヌ・ダルクの黄泉がえりの素体になり、ステラ・ルーシェは明堂院いつき/キュアサンシャインの素体となったので、そのままであったのは、シン・アスカだけであった。シンは転移前の出来事の反動で過保護気味であり、ステラ・ルーシェの転じた明堂院いつきも辟易してしまうほどであった。仕方ないが、シンの世界では『ステラ・ルーシェは死んでしまった』ので、過保護になるのも仕方ないところだが――

 

 

 

――ウィッチ世界の1949年――

 

「こっちは大丈夫だって。プリキュアになってるんだから。ジャンヌさんへのプレゼント、考えたの?…しょうがないなぁ…」

 

ステラ・ルーシェとしての自我は統合されているが、シンへの親愛は変わらないキュアサンシャイン(明堂院いつき)。 シン・アスカが法的後見人となっているため、定期的に連絡を取り合っている。 また、ダイ・アナザー・デイの終了後にルナマリア・ホーク(ジャンヌ・ダルク)とシンは結婚しており、惚気け気味のシンだが、デザリアム戦役後は軍に正式に入隊している。 プラントのトップエースとしての経歴は評価されたものの、新規志願の体を取った都合もあり、少尉からスタートである。

 

「ルナには頭上がんなくてね…。元の撃墜数は俺のほうが上なんだけどなぁ。デスティニーもレストアされたし」

 

「仕方ないさ。プラントと別の国に奉職するんだし、士官学校卒と同列に扱われて、少尉からスタートなのは、運のいい証拠だって」

 

「プラントのアカデミーじゃ、トップ10以内だったんだけどなぁ」

 

「ペーパーテストが良くてもねぇ。私は大尉になって数ヶ月だよ」

 

「待て、おかしくないか?」

 

「プリキュアだから、そこは大目に見てよ。戦友なんて、佐官続出さ」

 

「ザフトで言えば、ネビュラ勲章の叙勲みたいに、ポンポン出世するなぁ」

 

「階級のない軍隊のほうが異端だよ。それに、プラントも二度の大戦で『正規軍人』の必要性に気づいて、階級制になったそうだよ」

 

「……マジ?」

 

「うん。ジャンヌさんが見てたニュースで報じられてた。人的資源がものすごく減ったらしいから」

 

ザフトは二次大戦最終盤で大量の人的被害を被ったため、組織の国防軍への昇格と同時に『共同作戦の際の便宜を図るため』という名目で、階級制を導入した。脱走したり、第一次大戦後半での大量虐殺の横行など、二度の大戦で、コーディネイターの個人主義の強さでの弊害が生じたため、結局は折を見ての階級制導入となった。 絶対的エースの不在、熟練者の離反の続出などのザフトの脆さも理由となった。シンは自分の抜けた後に階級制の導入がなされたというザフトに、複雑な気持ちのようだ。

 

「シンは目上に頭下げるの覚えなって。パルチザンで言われたでしょ?」

 

「うぅ、それを言われると」

 

シンも、妹分のキュアサンシャインに言われれば、素直になるようだ。 元々、家族が存命だった頃は物静かな性格だったが、戦禍でタガが外れてしまったという経歴を持ち、『根が素直だった上、元の性格の名残りで、自分に甘言を言ってくれる者に依存していた』、『周囲の大人が彼を操り人形にしたかった』などの不幸もあり、歴代のガンダムパイロットと同列で語れるほどの精神的成長がなかった。 その成長はデザリアム戦役でできたが、史実でのアスラン・ザラに言われたような『自分の欲しかったものはなにか』はまだ完全には答えを出せていない。そこも差して、タウ・リンからは『小僧』と見下されたのだ。

 

 

「…時間がかかっても、見つけるさ、答えは。それが俺に与えられた贖罪の機会ならね」

 

シンはかつての故郷に銃を向けたことなどを、転移後に『後悔している』と述べるなど、転移直前に比べれば、精神状態も安定してきている。 ただ、守りたい誰かを尽く失ってきた経験から、自分の身の回りに危険が及ぶと、体が過剰反応してしまうという精神的ショックを患っている(仕事に支障は無いが、彼が元々ナイーブな少年だった証左でもある)

 

「当分は顔を見せられそうにないよ。戦友(つぼみのこと)が懐妊して、産休取ったから、忙しくなっちゃって」

 

バツの悪そうなキュアサンシャイン。ここ半年は帰っていないからだろう。

 

「そうか。あの子によろしくな」

 

「ありがとう。それじゃ」

 

 

定時連絡を終えたキュアサンシャインは、その足で新操縦システムの定期アップデートの終わったガイアガンダムに乗り込み、南洋島の東部沿岸に出現した敵艦隊の撃退のために出撃していった。 僚機は同様のシステムを持つ『ガンダムスローネドライ』。 パイロットはキュアエース。中規模の揚陸部隊の撃滅と、艦隊撃退ならば(通常のサイズでなく、等身大サイズだが)ガンダム二機で事足りる。 連合艦隊の空母機動部隊が再建途上にあり、64F主力が遠征中の状況では、この二機は貴重な遊撃戦力であった。

 


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