ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

340 / 787
今回の後半はゴルシちゃんメインです。


第二百二十三話「ゴールドシップ(ゴルシちゃん)御一行様の珍道中 5」

――扶桑皇国は結局はウィッチ世界全体の安全保障を担わされたわけだが、太平洋戦争中はそれどころではなかった。本土空襲の瀬戸際だったからだ。太平洋を舞台に繰り広げられる空中戦では、航続距離は2000キロ台でも足りないくらいであり、空中給油も普及しだした。空戦ウィッチは空中給油くらいでは飛べる距離は伸ばせないため、そこも軍事的価値の低下に拍車をかけた。一方、陸戦ウィッチの方は逆に価値が向上。『戦車の攻防力を持つ歩兵』として運用可能なことが高く評価され、人的資源の確保が比較的容易であるのもあり、一気に花形として躍進した。この時代から陸戦ストライカーと空戦ストライカーの統合の思想が生まれ始め、それはウィッチ世界での70年代末頃に実現を見る。また、陸戦特化型はそれそのものの進化により、次第にパワードスーツ状に変貌し、空戦ストライカーも次第にその流れに統合されていく。これはGウィッチ達が発揮した巨大な力の人工的な再現を試みる勢力がウィッチの世代交代の進展で台頭し始めたと言っていい。1949年当時はGウィッチ達の戸籍上の年齢がまだ『青年期』である事から、それほど深刻に見られていなかったが、ごく一部の聡明な高官達はGウィッチ達が定年に達する時代以後の世界を憂い、1949年が春を迎える頃、軍人の幾度かの世代交代を前提にしての超長期プロジェクトを開始した。このプロジェクトの研究が後々の第三世代宮藤理論の基礎を築く事となる。科学の発達に魔導学が追随できなくなり、ウィッチそのものが衰退する未来を憂いた高官達は極秘裏にタイムマシンで第三世代宮藤理論式ストライカーを入手し、それを年月をかけて解析する道を選ぶ。そして、第二世代理論の発達が頭打ちになる時代に完成を見るわけだ。空戦ウィッチに関する魔導学の発達が史実のジェットエンジン開発の歴史とシンクロしていることに気がついている高官はごく少数であったのも事実だが、第二世代宮藤理論は太平洋戦争中は最新の理論であったのも事実である――

 

 

 

――第二世代理論式ストライカーは舟形ユニットが武装ユニットや電子兵装収納スペースとして懸架されるようになっており、第一世代理論に慣れ親しんだ世代から『先祖返り』と揶揄されたが、歩兵サイズの光学兵器を多用できる64Fを例外として、強大化した武装の数々の大きさはウィッチの手で携行し、使用する限度を超えた代物も多く、接近戦を積極的に行う扶桑皇国系のウィッチには不評であった。一撃離脱戦法そのものが戦術として陳腐化してしまったジェット時代において、一撃離脱戦法に代わる戦術の模索期にあったため、軍に残ったウィッチ達は四苦八苦していたわけである。また、当時はリバウ経験組の権威が史実の情報を契機に低下した頃でもあり、『敵の数が多すぎて勝ち目がねぇ時はよ、目を瞑って機銃を撃ちまくりながら突っ込んだ上で離脱する時もあったぜ』と言った若本に『途中で帰る奴なんか、機銃に被弾したか、臆病風に吹かれた奴だろ?それじゃ協同撃墜じゃないか』と言い、強く反論した西沢は日本側にダイ・アナザー・デイ当時に雑誌に載った対談でのその反論を叩かれ、自暴自棄に陥ったこともあるが、現在はゲッターロボアークの力を持つロボットガールズに実質的に転じており、吹っ切れている。このように、日本側に叩かれないようにするには『有無を言わさせない力を得る』しか方法が見いだせなかった当時、64Fの隊員であれば、『個人単位で一騎当千になる』方法が取れたが、それ以外の部隊は精神的苦痛に追い込まれており、クーデター後にマスメディア対策部門が広報部に設立されるに至った。江藤はその部門の初代部長に任ぜられた。当時の扶桑軍は粛清の嵐の副作用で広報業務に疎い人間が多くなっており、江藤は喫茶店を営んでいた事から『世情に詳しい』とされ、修行を兼ねて抜擢された――

 

 

 

 

 

 

――江藤はダイ・アナザー・デイ以降、Gウィッチながら、後方任務に邁進していた。受難の日々であったが、大佐として『広報・メディア対策部』の部長に任ぜられてからは一転して、Gウィッチの広報を自ら指揮する立場となり、広報に力を入れている。坂本の引退セレモニーを皮切りに、黒江の実兄(長兄)が圭子の著書の映画化の話を持ち込んだ際に、話を具体化させるなど、功を挙げていた。(ちなみに、黒江が何故か競馬に詳しい理由は、彼(長兄)がすぐ下の弟とつるんで、英国で競馬を楽しんでいたのを聞いた子供時代の綾香が興味を持ち、当時に旧制中学校の卒業間近だった次兄とその悪友が教えたからである――

 

 

――江藤の執務室(統合参謀本部の一角)――

 

「そうですか、妹さんが競馬に詳しいのは…」」

 

「お恥ずかしい話ですが、私とすぐ下の弟のせいでしてな。弟が悪友とつるんで、あの子に仕込みまして。その友人が競馬の調教師になったのを期に、ある程度の楽しみ方を仕込まれたようで」

 

黒江の長兄は1950年頃には、50代に片足を突っ込んでいる壮年になる。兄弟たちと離れているのは、母親がすぐは産む気がなかったからだとの事で、複雑な家庭環境を明示していた。既婚者で、既に数人の子も抱える企業人である。(妹を可愛がってはいるが、年齢が15以上も離れているので、50近くになっても悪戦苦闘中。当の綾香からは厳格と思われているが、実際は遊び人気質を人前では見せないだけである)

 

 

「妹さんはどういう経緯で?」

 

「母が若い頃の夢を捨てきれずに産み、エゴを押し付けた可哀想な子でしてな。父も自分に負い目があるので強くは出れず、私もあの子が物心ついた頃には就職済みでして…。あの子は寂しい幼少期を過ごしたが故に、赤松大尉に懐いたのでしょう。大尉には感謝ですよ。あの子の育ての親と言っていいでしょうな」

 

黒江は母性に飢えているが、幼き頃に小学校でいくら良い成績をとっても褒められず、演劇と歌唱の猛訓練ばかりに情熱を燃やし、それを使命だと吹聴した母親の醜い姿を見てきた反動であり、赤松が黒江の母代わりになるのを決意した理由でもある。長兄にはその負い目があったのだろう。その母を反面教師としたのか、黒江は人当たりがいいと同期の間で評判の士官候補生になり、その時期に赤松と『再会』したわけだ。(ちなみに、のび太は青年期に『負い目を感じられる方が嫌なんじゃないかな?ありのままを受け入れて欲しいんだと思うよ』と智子たちにアドバイスを送り、黒江が前世で患っていた二重人格が落ち着くきっかけを与えている)

 

「妹さんは何故、あらゆる事に精通するように?」

 

「最初は母に褒められたかったのでしょう。母は……こういってはなんですが、あの子が小学校の時期までは精神を病んでおりまして。伯父の反対で病院送りにもできず…。それがいつしか、あの子に万能の才を与えたようだ」

 

タバコを吹かし、哀しげな黒江家嫡男。自分の弱さが皮肉にも、妹に祖母や曾祖母が持っていた力の発現を促したとも述べ、罪滅ぼしのために、軍入隊の手引きをしたと明確に告げた。

 

「私はじきに五十路です。妹を可愛がる年頃では無くなってしまった。入隊を助けたのは、せめての罪滅ぼしです。あの子への…ね」

 

適度に渋みのある壮年の男性らしい哀愁を醸し出す彼。生きる時代が違っていたら、いぶし銀の俳優になれていただろう男臭い風貌である。

 

「妹さんが破天荒過ぎる性格なのは?」

 

「すぐ下の弟の影響でしょう。一族きっての風来坊でしてな、奴は。最近にやっと世帯を持ちましたがね」

 

「妹さんには上官として苦労させられました。ですが、どこで上層部のコネを持ったか不思議でしたが、貴方のコネだったのですね」

 

「宮藤博士は父の盟友の教え子でしてな。山本提督や源田将軍とは私が飲み友でして…」

 

黒江のコネの一端は実兄が山本五十六の飲み友であったということで構築されたという。その流れで今村均大将や山下奉文大将とも入隊前に顔見知りになり、入隊後に可愛がられたとも言う。また、黒江の父親の盟友が大学教授を勤めていた頃の教え子が宮藤博士であり、その縁で黒江が接触できたのだということが明らかとなる。

 

「その教え子に宮藤一郎氏がいたのです。まさか、彼がたいそれた発明をする人物になるとは」

 

「と、いうと、妹さんはそのコネで?」

 

「おそらく。私がまだ若い頃、その方が教え子を連れてきて、宴会をしたことがありまして。宮藤博士もその場に。その方には、私もお世話になっていたので、挨拶はしましたが」

 

黒江は幼少期、その宴会でお盆を運ぶ役を母親にさせられた。長兄の助けで母親に当たり散らされずに済んだので、黒江は1949年になっても覚えていた。長兄にとっては母親の傲慢さを強く意識する出来事だが、綾香にとっては数少ない長兄との思い出になったのだ。

 

「軍に入ってからの妹さんのご活躍はご存知で?」

 

「山本閣下が嬉しそうに語っておいででしたから。ただ、貴方が戦果を調整して上申したことには不満を漏らしておいででした」

 

「……お恥ずかしい話ですが、当時は私も世情を知らない青二才でして…。」

 

江藤はお茶を濁した。当時は本当に事情を知らず、黒江を『やたらと軍のお偉方のコネがある若造』と認識していたからで、本人も天皇に漏らしたように、『事情を知っていれば、相応に便宜を図った』と釈明している。後世の記録には『国内事情と国際的慣習の齟齬が原因』だとされている。当時の国内では『撃墜王の奨励を進める陸軍』と『細かい記録がないから、正式には撃墜王の称号は与えない』とする海軍の対立が強かったが、七勇士の存在を宣伝した方が外交に有利と判断した政府の意向で対外的には七勇士を強く宣伝した。バルクホルンとハルトマンらはその時期にちょうど幼年学校在籍中であったから知っていたのだ。

 

「世情を知っていれば、あの子らの公式戦果はもっと多くしました。ですが、あの時代はカールスラントの全盛期でしたし、未確認戦果もかなり多く…。しかし、まさか……。ミーナ中佐が書類を見ないという阿呆な真似をやらかすとは…」

 

ミーナへの愚痴である。実際にミーナが書類を見たのは、圭子がシャインスパークを撃った戦闘の後であり、まさに『時、既に遅し』であった。ハルトマンとシャーリー、坂本も『助けられない』状況にあった。更に圭子からの指令も出ており、傍観するしかなかったのである。(本当はパットンも日本側に叩かれるのを承知の上で悪役に徹する事は流石に気が引けたのか、かなり渋ったが、圭子の説得で従った)

 

「あの査問内容には、わざとらしさを感じましたが…?」

 

「連合軍内でのご沙汰とお考えください。ああしなければ、我が軍の面子にも関わりますし、参謀たちの不満の沈静化も図れず…」

 

江藤はここでコーヒーを一服する。パットンも流石に『本気で謝ってくる者に罵声を浴びせる』役目はかなり嫌がったが、各国の不満を代弁する役がいないと『なあなあで済ませた』と誹りを受けるため、圭子が便宜を図る事を約束することで引き受けた。357マグナムを振りかざして怒鳴り散らすのも、圭子が出した『わざとらしい怒鳴り散らし』の指示によるものだ。

 

「パットン将軍には悪役に徹してもらいました。ああしなければ、本音が引き出せなかったのです。彼女も反省し、謝罪の声明と謝罪文も発表していますので、どうか責めないでやってください」

 

謝罪の扶桑向けの声明と正式な謝罪文はダイ・アナザー・デイが終結し、ミーナも覚醒した後の発表であったが、謝罪文については、まほが校正した『硬めの文章』になっている。謝罪文は自分の無知と浅はかさを真摯に詫びるもので、501司令の座を退く事を謝罪の一環としたいと綴られている。ミーナは書類上の司令の座も放棄。魔弾隊の一士官として戦う事を禊とした。黒江の長兄はその経緯をわざとらしいと感じたが、扶桑の国内事情と国際認識の齟齬が招いた悲劇であると明言されたことには安心したようだ。

 

「あの子がやらかしたわけではないのですね?」

 

「ええ。カールスラントのほうが泣きたいくらいでしょうな。今や、空軍のエースの過半数はこちらの手にありますから」

 

黒江の英雄ぶりは昭和天皇が忠臣と惚れ込むほどだが、長兄は『軍の都合で持ち上げられている』事を心配していたが、実際は『黒江らが強すぎたため、現役世代の士気を考えないとならない』状況であり、彼女に憧れて、日本連邦の義勇兵になる外国ウィッチも多くなってきたという状況だ。

 

「妹が他の皆さまの道標になっているのは喜ばしいことですが、子供時代は大人しかったはずなのですが…どうして、あのような破天荒過ぎる振る舞いに…」

 

「それは軍の教官らのせいでしょうな」

 

江藤は彼にそう零した。黒江が現在の性格になる大本の要因は自分の教官でもあった若松の指導、私生活で彼も恩義がある赤松のせいであるのは周知の事実だからだ。とは言え、彼女らの有無を言わさずを地で行く求道的姿勢は国際協調の時代になって初めて評価されたもので、『沈黙は金』を信奉していた海軍からは『カールスラントびいき』と攻撃されていた。

 

「江藤さん、この方が」

 

「ああ。黒江の兄君だ。挨拶したまえ、坂本くん」

 

「失礼いたします」

 

当時、長女を妊娠したばかりの坂本が現れた。直に産休に入るが、この日はプリキュア達の広報業務の手続きで来ていた。その書類を提出するために来たのだろう。

 

「貴方が黒江中将の兄君で?自分は坂本美緒大佐であります。閣下には子供の頃からお世話になっております」

 

内心は白々しいと思っているが、黒江も接し方が固くなる長兄相手であるので、大仰に行った。

 

「こちらこそ、妹がお世話になっています」

 

黒江の長兄はこの機会を逃すまいと、妹の事を聞きまくる。坂本と江藤は不器用ながらも、歳の離れた妹を愛する彼の意を汲み、しばらく付き合うのだった。後日、黒江は坂本からこのことを知らされ、『兄貴、俺と話してぇのか?』と素で?マークが浮かぶ返しをし、坂本の頭の上にアホウドリが飛んだとか。

 

 

 

 

 

 

――こちらは野比家を訪れていたゴールドシップ(ゴルシ)ご一行様。トウカイテイオーのもとに警察から表彰状が送られてきた他、ひったくられた老人の子息が警官に連れられ、お礼をしにやって来た。トウカイテイオーはその応対をすることになった――

 

「ボクは当然の事をしたまでですから――」

 

その様子を見守るゴルシとルドルフだが。

 

「テイオーも応対が上手くなったものだな」

 

「あいつも苦労の連続だったろ?その時に自分を見つめ直したんだと。入学したての頃に言ってた自信過剰なセリフは言わなくなったしな」

 

「そういえば、入学したての頃は招来を嘱望されて有頂天だったからか、自分のことをワガハイって言ってた時期もあったな…」

 

テイオーはシンボリルドルフとの約束を果たせなかった喪失感とメジロマックイーンに追いつけなかった事で『ライバル』の存在を意識した。そのマックイーンすら、ウマ娘の不治の病を発症した際に自暴自棄を起こし、テイオーに罵声を浴びせてしまう醜態を晒したが、テイオーは自分の骨折とメジロマックイーンの存在は『有頂天になってた自分を戒めるために遣わした』と意識するようになったのか、入学当時の奔放さは収まり、『ライバルに追いつけなくなる恐怖に負けそうになったウマ娘』と卑下するかのような振る舞いも見せていた。良くも悪くも『現実を突きつけられた』ためか、『三冠ウマ娘』、『不敗の王者』に代わるアイデンティティを求めているようにも感じるテイオーの振る舞い。『カイチョーを超えたい』という心と『キタサンブラックという有望な後輩を自分が育てるべきだろうか』という挑戦をしたい心とで揺れていた彼女に考える時間を与えたかったシンボリルドルフ。競走馬としては自らの子である事もあり、いつの間にか『親心』を抱く。一方、そんな二人の関係の変化を楽しむゴールドシップ。ルドルフにとって、元々、現役時代の自分の会見中に乗り込んできて、『自分も強いウマ娘になる』といい、本当に有言実行してきたテイオーが可愛くないはずはなく、『テイオーに甘い』と、エアグルーヴに苦言を呈されるほどに気にかけていた。この事に不思議さを感じていたゴールドシップだが、自分を含めたウマ娘(サラブレッド種)は競走馬としての血縁関係やライバル関係が何かかしらの因縁としても作用することを悟っていた。

 

「あいつも何回も骨を折る内に、心が折れた事があるからな。それで謙虚になったんだろうな」

 

ゴールドシップは『子供っぽい』と言われるテイオーの精神的成長を感じ取ったようだ(この頃、ドラえもん世界の21世紀は世界的な疫病が長引くことで世情不安が煽られており、それを少しでも鎮めるためには、扶桑の戦争を利用して雇用を創出するしかなかった。そこに日本の21世紀における悲劇があり、この時の雇用への不安が後々の時代における自衛隊の実質的な国防軍化や戦前期の苛烈な気質の復活に繋がり、日本を地球連邦の支配者へ押し上げていく。戦前日本の気質の部分的でも復活を危惧したアメリカ合衆国はやがて、21世紀にはカビの生えた思想であった『黄禍論』を拠り所にし、統合戦争の最終盤で日本と手切れをするが、それが却って日本の激昂を招き、アメリカ合衆国は統合戦争に敗北してしまい、23世紀時代の東海岸の零落ぶりの遠因となった)

 

「思い出したが、あたしたちは凱旋門賞だけは勝ててないだろ?日本の名だたる連中が挑んでは消えていった…。試しに聞いてきたけど、あいつ(黒江)の世界じゃ、凱旋門賞どころじゃないらしいから、そこは拍子抜けしたけどな」

 

「その方の世界だと、戦争中と言っていたな」

 

「ああ。フランスはかなりボコボコにされてて、レースどころじゃないそうだ。それも、なんかなぁ」

 

競馬界で最高峰の国際レースの一つと評判の凱旋門賞だが、ウィッチ世界ではそれどころでないので、6年以上も開かれていない。国土回復後もペリーヌが私財の全てを擲つ行動で国土復興を掲げ、支持されているために娯楽が自主規制されており、競馬も例外なく開催が見送られていた。ペリーヌは娯楽さえも自主規制の風潮に巻き込んだ形になったのだが、それが不幸を呼び込んだ。現役時代に僚機を務めた『アメリー・プランシャール』中尉が轢き逃げされて重傷を負う、自分の執事が暴漢に撃たれて生死の境を彷徨うなど、不可解な事件が続けざまに起きた。落ち込むペリーヌを気遣った芳佳の要請で、宇宙刑事ギャバン/一条寺烈が事件を捜査。その結果、国土復興のために私事すら犠牲にするペリーヌの姿勢が国民の反発を招いていることが原因であると判明、ペリーヌは一時的に狂乱状態に陥ってしまう。1946年のことであった。ペリーヌは以後、迂闊な政治発言を控え、普段は慈善活動にのめりこんでいったとされる。だが、それは表向きで、裏では紅城トワとして日本連邦に在住中である。ペリーヌが静養と称してガリアを離れた後、人々は堰を切ったように、娯楽を相次いで再開させたが、競馬は疎開の過程で競走馬を放棄せざるを得なかった牧場が多く、再開など遠い夢であった。ペリーヌの暗殺未遂事件が頻発した原因はペリーヌの『他の全てを犠牲にして、一刻も早く国土の復興をする』姿勢であるので、あまりに崇高すぎたために敵を作ったのは皮肉であった。ガリアはこうした政治政争で却って他国との差が広まり、アルジェリア戦争を行う頃には『MSやコンバットアーマー相手に戦前型戦車で戦う』怪獣映画じみた事態になっていた。また、頼みの海軍もその当時には各部が老朽化し始めていたリシュリュー級で『小島のような』超大和型戦艦に対峙する羽目に陥る。その化け物と戦って、すぐに沈没はしなかったのだけは救いであった。(逆説的にはガリアの造船技術の高さの証明であったが、宇宙戦艦として利用可能な化け物相手には流石に分が悪かった)

 

「そもそも、原種がいるかわかんないと聞いたけどな。おまけにその世界、中国すら忘れ去られた世界らしいから」

 

「本当か?」

 

「ああ。それでその世界のドイツ軍がバカにされたらしいからな」

 

ウィッチ世界は中国が滅んだ世界であるので、カールスラント軍は孫子の兵法を知らず、自衛隊の一部幹部からあからさまにバカにされ、揉め事に発展する事態も起こっていた。501でも、素で孫子の兵法を知らないミーナへの批判が外部から起こり、更迭論もドイツ連邦から出る始末であったので、転生者であるので、孫子の兵法を知っている武子に白羽の矢が立ったわけだ。そんなドイツ軍主体の編成に疑義が外部から強く寄せられたので、外野からの批判に困った連合軍は日本連邦に運営権などを丸投げしたに等しい。ゴルシもその経緯には同情するほど、カールスラント軍の政治的な冷遇は激しかったのだ。1949年にはすっかり没落した感が強く、日本連邦が連合軍の主戦力と扱われているので、それは急激に起こり、日本連邦の財力と軍事力を必要としたので、黒江が多忙を極めているのがわかる。

 

「それであいつが多忙なんだと。階級的には部下に任せっきりでいいはずなんだけどな。将官なんだし」

 

「何かしてないと不安なんだよあの人。だからリセットする為に釣りしてるんだって」

 

「テイオー。いいのか?」

 

「終わったとこ。あーやも仕事大変みたいだし、ガンダムの実物に乗ってるって言ってた」

 

「横浜に立ってるあれか?」

 

「あれは元祖だよ、カイチョー」

 

シンボリルドルフもガンダムは知っているらしいが、黒江の愛機はRX系のガンダムではなく、Z系のガンダムである。RX系は消耗も激しく、元祖のRX-78、その生産機の中で無傷で現存しているのはG3ガンダムを含めて数機のみとされる。そのG3ガンダムは地球連邦軍の厚意で、横浜のレプリカの立像の隣に展示されている。G3は一年戦争後も無傷で存在する唯一のファーストロットのRX-78であるので、地球連邦軍の厚意の程が分かる。なお、実際にはブランリヴァルに配備されたが、肩のエンブレムその他は式典用に一年戦争当時のホワイトベース隊のものに塗り替えられている。世界線によっては、アムロの棺桶にもなったというが、未来世界において、現役引退後は数度のレストア後は地球連邦軍の式典の目玉に使われている。なお、マグネットコーティングがされた際に関節部のアクチュエータなどが二号機より新型になったので、アムロ曰く『昔のガンダムよりは早い』という実際はアムロ機も同仕様にされていると言うが、G3のほうが使用部材が新しく、アレックスのテストのために更に内部が改修されていたという情報もある。そのためか、二号機とはランドセルなどの形状に微妙な差異があるとか。(G3は横浜で時たま、立像の宣伝のために稼働のデモンストレーションが行われているが、元祖より仕様が新しいので、滑らかな動きを見せている。セミモノコック機なので、マークⅡ以後と比較すればぎこちなさがあるという。それでも可動範囲がゲルググより広いのもあり、一年戦争当時に使用されていれば、無敵を誇っただろうと言われる)

 

「あーやが乗ってるのは、変形できるタイプだよ。Zガンダムが元祖のトランスフォームタイプ。乗り手選ぶから、エースしか乗れないんだってさ」

 

「変形するのって、実際に動かしてみると、使いどころ難しいんだろ?エースパイロットじゃないと、変形中に撃たれてオジャンにされそうだしよ」

 

「車で言うレーシングカーに近いそうだよ。おまけに変形すると飛行機感覚で動かすから、ロボットと飛行機の両方に慣れないと、乗る資格取れないみたいな事言ってたよ」

 

TMSはMSの中では最高峰の難度とされる。エースパイロットに優先配備がされたり、空挺部隊にジム・ナイトシーカーの代替機として使われたりしているので、必然的に性能重視の設計となる。ただし、変形機構との兼ね合いで軽装甲である事も多く、Zプルトニウスはその改善のために生産され、黒江がダイ・アナザー・デイから愛機にしている。

 

「ほら、そこの机に模型あるじゃん」

 

それは未来世界ではアナハイムグループの玩具事業部から販売されているZプルトニウスの模型であった。実際に配備された仕様なので、携行火器はビーム・スマートガンである。黒江の場合は特注の20m級用のGバードを用いるので、Gバードの威力そのものは用兵側に高く評価されているのが分かる。

 

「ホー。カラーリングもZガンダムやZZにちけーけど、体格ごついな。Zガンダムの系統って細めだろ?」

 

ゴルシの感想はこれである。プルトニウスはZ系の難点を解消するため、新規にフレームから設計されたため、MS形態でもマッシブな体躯を持つ。玩具でもそれは再現されており、ZZよりはスマートだが、Sガンダム級の太さはある。ウェーブライダー形態はかつてのスペースシャトルを思わせるフォルムであるのもあり、Z系の当初の運用構想と不評の一因である軽装甲を解消するため、ZZと違うアプローチで臨んだのが分かる。

 

「世代交代で問題点を直したら、ゴツくなったんだってさ。Zガンダムの親戚も古くなってきてたから、これを量産するんだって」

 

「ホー。連邦軍にしては大盤振る舞いじゃね」

 

「二人共、何がなんだかわからんのだが…」

 

困惑のシンボリルドルフ。選手としてTVなどへの顔出しも多かった(彼女は無敗の三冠ウマ娘であるので、実はこの中で格は一番上である)ので、世事にもある程度は通じていたが、流石にTVに登場していない機体まではわからないようだ。

 

「あんたはストイックそうに見えるから、こういうサブカル系に疎そうだもんな」

 

「失礼な!こう見えても……」

 

「ゼントラーディの自動工廠を幾つか確保した関係で機動兵器の単価が高級乗用車並になってるから大盤振る舞い出来るようになったそうな」

 

「その声……もしかして…タキオンか!?」

 

「やぁ。君たちが向かったって聞いたからね。今しがただよ、来たのは」

 

「いや…なんで、おめーがいるんだよ!?実験がどーたら…」

 

なんと、ウマ娘きってのマッドサイエンティストであるアグネスタキオンが来ていた。競走馬としては『招来を嘱望されながらも、早期に引退せざるを得なかった』経緯を持ち、ダイワスカーレットを子に持つ。なお、2000年代を担う種牡馬として活躍していたが、種牡馬生活四年目で夭折しているため、悲運の名馬とも言われている。ウマ娘としてはマッドサイエンティストそのもので、彼女が調合した薬品はおかしな効果を起こすと言われ、黒江からは『キュアコスモ声の敷島博士』というありがたくない渾名を頂戴している。

 

「フフフ、ゴルシ君、君がどこかへ行くのを小耳に挟んでね。それで知己を得てねぇ…」

 

「お前なぁ……。お前の作る薬、おかしなもんばっかなんだよ、タキオン!」

 

「オペラオー君も誘ったんだが、あいにく予定が合わなくてね」

 

「ねー、ゴールドシップ。なんでタキオンが来てるのさ」

 

「アタシが知るかよぉ!」

 

八つ当たりするゴールドシップ。アグネスタキオンはレースに興味をさほど持たないものの、素質は本物。さほどの訓練無しで重賞ウマ娘になれると目されており、最低限度の義務である出場を果たしたレースではぶっちぎりで勝っている。

 

「君たちもどうかね?このスープ」

 

「変な色じゃねーか!テメー、何入れやがった……って会ちょ……!?」

 

「なんだこれは……目の前がグルグル回る……」

 

シンボリルドルフはスープを口にした途端、白目を抜いて倒れてしまう。

 

「カイチョー!!タキオン、何を入れたぁ!」

 

ルドルフが白目を抜いて倒れてしまったため、激昂したテイオーだったが……。

 

「!!あ、あべごふぉほgtb……」

 

スープをねじ込まれた。途中で呂律が回らなくなり、同じく白目を抜いてひっくり返ったと思えば、リンボーダンスを数秒して倒れる。

 

 

「ヒィィィ……」

 

怯えるゴールドシップ。さしもの彼女もこの異様な光景には恐怖しかなかった。

 

「ま、待ってくれタキオ……」

 

「ゴルシ君、君には特別なものを用意したよ」

 

「ひぃぃぃ……」

 

ゴールドシップの口にスープがねじ込まれる。スープの色はどういう化学変化の賜物か、白金色をしていた。更に…。

 

「君にはモルモットになってもらうよ、ゴルシ君♪」

 

アグネスタキオンはどこから知識を得たのか、秘孔を突いた。秘孔の効果でゴールドシップの肉体が変化を起こし……。

 

「あぼぐぉええええ~!!」

 

ゴールドシップの肉体に何が起こったのか、アグネスタキオンが何故いるのか、そして、どこから経絡秘孔の知識を得たのか。ゴールドシップの虚しい悲鳴がススキヶ原に響き渡った…。

 

「誰か、誰でもいいから、このマッドサイエンティスト野郎を止めてくれ~!」

 

経絡秘孔の実験材料にされ、悲鳴をあげるゴールドシップ。ルドルフとテイオーが白目を抜いて倒れ、意識を保っているのは彼女だけ。正にゴールドシップにとっては『永遠の孤独』にも思える時間であった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。