ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第二百二十七話「黒江とパットン将軍の朝その二&マルゼンスキーとシンボリルドルフの過去とは?」

――パットンに黒江が語った内容はある種の哀愁も感じるものであった。世代交代で忘れ去られていった者としての。芳佳Bは図らずしも、その哀しみを突いてしまっていた。黒江がそもそも、現役に戻る事を決意したきっかけはそのことも関係していたのだ――

 

「元来、ウィッチはある程度行くと、それ以前の世代に頼るって発想がなかった。それもある種の不幸だ。向こうの宮藤君は君のことなど知らなかった。だが、言ってしまった言葉は取り消せんからな。その重大さに気づいて、禊をしたがっとると思う。君がかつての二つ分の前世でやり直しを決意したように」

 

芳佳Bは坂本Bに事の重大さを気付かされ、謝った。だが、それでは済まないレベルになってしまったため、バツの悪い思いをする事になった。

 

「向こうの芳佳は純真すぎるんだよ。だから、何度か『上には上がいる』のを思い知らせる必要があった。あいつの決まり文句は『だからなんなの!!』だからな。坂本も二人でため息だよ。一昨年(1947年)と去年までの間に何度か模擬戦で負かしたが、成長も早い。ありゃ、いずれは管野より上になるかもな」

 

「やはり。どこの世界でも、あの子には素質があるか」

 

「ああ。最も、こっちの職業軍人に染まった自分には反感を持ってるが。だが、こっちの芳佳はある意味、『宮藤芳佳』じゃないからな。説明しづらいぜ」

 

芳佳Aは角谷杏としての食えなさを持ち、職業軍人として『割り切った』思考をしている。表向きは宮藤芳佳らしい振る舞いをしているが、実際は角谷杏としての狡猾な策略家としての顔がある。姿は宮藤芳佳であっても、精神性は角谷杏の要素が強いのだ。

 

「おまけに、プリキュアでもある」

 

「それに嫉妬したのもあるんじゃないか?」

 

「あるかもな。のぞみが何故、後輩と前世で対立したか。その理由がおぼろげにわかった。世代の違いも大きいんだよ。のぞみは倒すしかない敵は絶対に殺る気質だが、後輩の野乃はな……キュアエールは優しすぎたんだ」

 

花咲つぼみ(アリシア・テスタロッサ)、愛乃めぐみの二名から聞き出した情報によれば、ドリームがスターライトフルーレでの剣戟を行うことがあった事や、『魂は救う』とはいえ、物理的には『プリキュア・スターライトソリューション』で蜂の巣にして消滅させていることにキュアエールが『やりすぎ』と反発したのが発端になってしまったという。(ドリームのいた元々の世界は『2020年にキュアグレースが生まれなかった』世界だったらしく、ドリームは純粋に戦闘向けの技しか持っていなかった)

 

「あいつの元々いた世界は『ヒーリングっど』が生まれなかった世界なんだ。初代と代の近い世代は戦闘向けの技しか持ってないからな。フレッシュが浄化技の嚆矢だと言うから、良くも悪くも『5』は戦闘集団なんだよ。そこに悲劇があったと思う。今回はグレースが現れたから、本格的な浄化技を持てそうだ」

 

ドリームが浄化技を持つには『ドリームキュアグレース』フォームの登場が必要であった。つまり、キュアグレースという、互いの思いを『繋げる』存在がドリームの心を完全に浄化するための最後の鍵であったのだ。

 

「浄化技か」

 

「あいつは割り切りが良いが、話し合いの余地があれば、歩み寄る余裕くらいはある。そりゃ、あいつの代に初めて、」ダークプリキュアを生み出されたりしたが、つぼみやマナ、めぐみも擁護したように、剣を持つ行為、あるいは剣という攻撃手段を用いるプリキュアを否定するつもりはなかったはずだしな、キュアエールも。グレースがいない世界だから、そこで話が変に拗れたんだろう。個人としては気が合うはずなんだよ、その二人」

 

黒江も知っているが、のぞみとはなは意気投合しているのが通常の流れだ。のぞみが『前世』で対立したのは、プリキュアとしてのスタンスの違いと、浄化技がない事での妬みもあったと睨んでいる。『HUGっと』は過去のプリキュアより『戦士』としての側面が薄れている事、第一世代の頃には気にされなかった『ポリティカル・コレクトネス的な要素』があったのが『黒の騎士団のエース』であった前世で辛酸を舐めてきたシャーリー(北条響/キュアメロディ)が『いけすかねぇ』と述べた理由だろう。(のぞみよりもシャーリーのほうがはなを嫌っている節がある。はな個人は嫌っていないとも言っているので、はなの言うことが癇に障るのだろう。ましてや、シャーリーは紅月カレンとして、ブリタニア帝国にとっての被差別層に堕ちた日本人の卑屈さを見てきている。シャーリー曰く『もしも、真ゲッターを前世で入手していたのなら、首都のワシントンをストナーサンシャインで以てぶっ飛ばしていたろうよ』と述べている。結局、中からでは神聖ブリタニア帝国をすぐには壊せず、スザクと共謀した末に『内と外の同時進行』で帝国を壊した経緯を知っているからだろう)

 

「むしろ、シャーリーのほうがやばいくらいだ。あいつ、前世で被差別層に堕ちた日本とブリタニア人のハーフだった上、母親はイカレポンチになった。異母兄は死に。それでルルーシュという男の口車に乗せられて、結局、日本のためと煽られて、言われるままに戦った。そいつとその親友だった男の共謀に気づいたのは『その時』になってから。その経緯を経てるから、何ていうか、口先三寸の主張を嫌うようになってる。その男たちの内、日本最後の総理大臣だった男の倅のせいだな」

 

「主張する事は子供でもできるが、いつの世も過激なことや夢のような事を言う。それを声高らかに掲げる連中に限って、過激なことしか言わん。中から変えようとしても、実際は強大な組織のシステムに飲み込まれていく。その男もそうだったんだろう?ケイが見ていたが…」

 

「そもそも、そいつの始めの目的は組織の中で出世して、自分が占領地になった日本の総督になって、日本を間接的に解放する事だったからな。ブリタニア帝国にそんなつもりは毛頭なかったがな」

 

神聖ブリタニア帝国の傲慢と欺瞞はルルーシュとスザクの手で終止符を打たれたわけだが、シャーリーの考えに多大な影響を残し、野乃はなの言っていた事を『いけすかねぇ』と述べるなど、『大人の都合に振り回され、自身も友人に結果的に利用されていた前世の経験』がシャーリーの心に影を落としているのは否めない。『何も持てない誰かの悲しい気持ちを、例えそれが敵でも傷つけたくない!』と想うはなの優しさは皮肉な事に、周囲に蔑まれ、家族を時代と薬物に奪われ、日本人である誇りさえも奪われた経験を前世の記憶として持つ北条響(シャーリー)の反感を強く買ってしまっていたのである。

 

「その経験がシャーリーの心に暗い影を落とした。俺はあいつを怒ったよ。こんな事言いやがったからな」

 

 

――いけすかねぇんだよ、はなは!!聖人君子気取って……、勝手に自己満足してお終いか!?プリキュアを……戦いを安く見るなッ!!――

 

紅月カレン要素の強いその一言。黒江曰く、その次の瞬間には『彗星拳』でぶっ飛ばしたとのことである。

 

「何時頃に言った?」

 

「ここ数年の戦間期の頃だ。のぞみより、あいつのほうが嫌ってるんじゃないか?良くも悪くも、『HUGっと』には説教臭い要素が多分にある。シャーリーにはそれが胡散臭く見えるし、『口先三寸』にしか思えないんだろう。最も、言うことはエールへの侮辱だから、おりゃ、彗星拳でぶん殴ってやったが」

 

野乃はなは『イケてている大人のお姉さんなら、血の繋がっている相手でなくても本当に必要な相手に手を差し伸べてあげるはず』とする博愛主義的考えが『キュアエール』としての根底にあるため、それと対極の人生をたどり、信じていた友人にも『利用されていた』(最も、ルルーシュもカレンに対しての仲間意識を持っていないわけではなかったが、結果的に決別している。そのショックも大きい。ルルーシュとスザクの共謀の蚊帳の外に置かれたことも関係している)形であった経験のトラウマがキュアエールの物言いへの強い疑心暗鬼の理由であった。このため、黒江は『言えるもんなら、ルルーシュ、スザクとシーツーに小一時間、文句言いてぇぜ』とボヤく羽目になった。その一方で、プリキュアとしての同世代の戦友であるのぞみへは篤い友情を見せるなど、『紅月カレンの記憶の覚醒で気難しくなってしまった』と考えるしかないところが生まれている。のぞみ当人は『プリキュアとしてのスタンスの違いで対立したのであって、個人としては、むしろ好いている』のが明確になり、『周りが事を大きくしてしまったのでは?』と黒江たちが推測するに至った。それを肯定する旨の発言を愛乃めぐみや相田マナがしたこともあり、『プリキュアの対立の謎』は徐々に明らかになりつつあった。

 

「どうなると思う?」

 

「はなも不倶戴天の敵が世の中にいることくらいはわかってるはずだし、倒すしかそいつを救う方法がない状況もな。言うなら、お互いのボタンの掛け違いと、『言葉の呪縛』がのぞみの人生を結果として狂わせた。それが単に言いがかりだろうと、シャーリーは許せないんだろうさ。ましてや、あいつは更に別の人生で『友人と思ってた男に利用されていた』からな」

 

野乃はなが聞いたら愕然とするだろうが、結果として、のぞみよりも北条響に反感を持たれたわけだ。シャーリーはその対立を強く引きずっている。紅月カレンとしての辛酸を嘗めてきた経験もあるだろうが、それなら、プリキュアとしての自分の行いはなんだ?と黒江たちは叱責し、問いかけた。そのおかげもあり、最近は大人しくなった。

 

「俺のお袋がそうだったが、俺を自分が捨てるしかなかった『若い頃の夢』を間接的に叶えるための道具としてしか扱わなかった。その反動で、俺はバリバリに軍人してるわけだが、シャーリーの場合はルルーシュとの決別と、スザクと相容れなかったことがよっぽど効いたんだろう。自分が愛したことがあるルルーシュに未練があるみたいな事漏らしたって、のび太から聞いたことがある。多分、スザクが綺麗事言って、ブリタニアのシステムの一員になった割に初志貫徹せず、ルルーシュの騎士として振る舞った果てに、その『世界』を壊したことへの反発もあるんだろう。その一方で、昭和ライダーの生き様に惹かれてるから、あいつらは自分の言葉を有言実行した事を認めてほしかったっていう側面があるんだろう。あいつらは何かかしらの不幸もあって、人様に誇れるような生き様は送れなかったみたいだしな」

 

 

「なるほどな」

 

枢木スザクは公には黒の騎士団残党との戦闘で戦死したとされるが、実際は生存し、『ゼロ』として生きる道を促され、結果としては親友の作った世界を守る道を選んだ。それが自分を実質的に蚊帳の外に置いた二人へのわだかまりとなってしまったままであった世界における紅月カレンがシャーリーの前世なのだろう。また、のぞみもシャーリーも、高潔な心で『人類の自由のため』に未来永劫を戦い続ける道を選んだ昭和ライダーの生き様に強く惹かれているのは、お互いにヒロインかしらぬ人生をその後に辿ったからだろう。昭和のヒーロー達の高潔さと潔さは後世の人間には理解されていないが、昭和ライダー達は多くが『復讐』を最初の行動原理にしていたが、それを『人々を守るため』のものに転化している。BLACK(RX)に至っては『闇の世界の支配者候補』であったのだ。昭和ライダーの精神性に憧れを強く持つのは、一人の人間としての人生としては『人に誇れるものではなかった』事の裏返しであるとも言え、そこにのぞみとシャーリーの仮面ライダー達への強いコンプレックスと彼女たちの前世における悲劇があったと言える。

 

 

 

 

――一言でいうなら、『世界は残酷である』。ウマ娘たちにしても、トウカイテイオーはシンボリルドルフからも『自身の後継者』と期待され、その素質を充分に備えていながら、結果として『シンボリルドルフ』超えは成らなかった。メジロマックイーンの実家『メジロ家』もマックイーン世代の引退後は後継者不足でいずれ没落するだろうという予測がある。(実際、史実でメジロの名を持つ者で名馬といえるのは、メジロドーベルの更に後の世代では、メジロライアンの子であるメジロブライトのみであった)トウカイテイオーが卒倒したように、競走馬としてのサイレンススズカとライスシャワーは悲劇的結末を迎え、ビワハヤヒデも屈腱炎、ないしは繋靭帯炎を発症し、引退を余儀なくされている。その因果が起こるのなら、ビワハヤヒデの輝きは一瞬の光芒に終わるし、妹のナリタブライアンも世代最強を謳われた時期に姉と同じ病気を発症してしまうはずであるし、ライスシャワーはかなり重度の骨折を引き起こすはずである。トウカイテイオーが肉体を作り変える選択を選んだのは、その因果を超えるためである。ビワハヤヒデはその速さが皮肉にも、脚に負担を相当に強いており、そのツケをそう遠くないうちに支払わされる。ナリタブライアンが同じ病気を発症するとするなら、姉が病気で引退を余儀なくされたショックで自暴自棄になり、レースを鬱憤を晴らす機会として考え、出走しすぎる事での負担が原因であろう。ウマ娘といえど、馬類につきものの病気は罹患するという特徴がある。人と同じように二足歩行化したことで日常生活は送れるが、競技生活からは身を退くしかない。繋靭帯炎と屈腱炎は全ウマ娘の間で『悪性腫瘍』(ガン)並に恐れられている。(史実のマックイーンやビワハヤヒデ、ナリタブライアンはそのいずれかを発症し、競走馬としてのキャリアに終止符を打つしかなかった)黒江は自分の次兄とその友人の影響で競馬に関して、ある程度の知識があった。プリキュア5の世界への遠征に行く時には、下宿先である野比家にある程度の量の資料を自室に置いてきており、野比家にやってきたウマ娘達はそれを読み耽っていた。

 

 

 

 

「なるほど……。こいつが2000年代以降の日本を制した奴か」

 

「サンデーサイレンス。登場後の日本の競馬界でこの馬の血を継いでない者はいないと言っていい。スズカも、スペシャルウィークもその馬の血縁だね」

 

「マジかよ」

 

野比家で調べ物をしているウマ娘たち。ゴールドシップは経絡秘孔の効果で眠れていないので、ものすごく悲惨な状態に陥っている。今にも倒れそうだ。

 

「ご、ゴールドシップ…。だ、大丈夫か…?」

 

「これが大丈夫に見えっか…?あ、あはは…」

 

シンボリルドルフが心配するほどに憔悴しているゴールドシップ。秘孔を突いた張本人であるアグネスタキオンは平然としている。

 

「でもさ、その子供が2000年代最強を謳われてる馬なんでしょ?どんな感じだったんだろう?」

 

「会長(シンボリルドルフ)以来の『傑出した競走馬』と謳われたそうだ。2000年代前半世代では、まちがいなくトップクラスだろうよ」

 

「ふうん……」

 

一同が惹かれた馬こそ、サンデーサイレンスの子供達の中でも最高傑作とされている『ディープインパクト』。90年代初頭に活躍したテイオー、80年代のバブル期に活躍したルドルフにとっては遥か後の世代に当たる(ルドルフにとっては、ひ孫、それ以上は離れているだろう)馬である。ディープインパクトの往年の実力は当代最強を謳われ、輝かしい実績を誇っている。(ディープインパクトの両親は日本産ではないのだが、ちゃんと名馬として調教した点では褒められるべきだろう)彼を以てしても、凱旋門賞は制覇できなかったものの、日本競馬界にとってはオグリキャップ以来の大スターにして救世主であった。(一般層にも浸透した知名度的意味で)

 

「アタシはマックイーンの孫にあたるから、2010年代前半が活動時期。本来なら、お互いに面識はない。そう考えると、不思議なもんだぜ」

 

競走馬としてはお互いにバラバラ(タキオンとゴルシは平成後期、ルドルフは昭和末期、テイオーは平成初期に活躍した競走馬であり、お互いに出会ってはいない)の時期に活躍した事を認識し、自分が競走馬としてはマックイーンの孫にあたる事も知っている。そのため、ちょっとしたいたずらをマックイーンにしかけてきたと言うゴールドシップ。

 

「そんで、マックイーンにゴルシちゃんからのちょっとしたサプライズをしかけてきた。あいつ、今頃、面白いことになってると思うぜ?」

 

「ゴルシ、君ねぇ…」

 

「かわいい孫からのプレゼントだよ。おばあちゃんへの…な」

 

ほくそ笑むゴールドシップ。テイオーはそれで何をしたか察しがついたようだ。

 

「マックイーンの顔が目に浮かぶよ」

 

呆れるルドルフ。その通りにマックイーンはゴルシからの『サプライズ』に怒り心頭。顔を真赤にして、『旅行』の準備を進めていたのだ。

 

「そうだ。あんたのダチのマルゼンスキー先輩だけど、どういう世代なんだ?」

 

「そうそう。ボクも気になってたんだ」

 

「奴は正確に言えば、悲運の世代と言われた世代のウマ娘だ。学園が私と同期の扱いにしているのは、その方が彼女には都合が良かった」

 

「どういう事だ?」

 

「マルゼンスキーの入学した時代はレース環境がそれほど整ってなくてな。あいつは両親が外国にいた時に受胎した子供だったんだが、当時は国内のウマ娘の保護のために、あいつのようなウマ娘は国内の重要レースに出られないという規定があった。彼女の正真正銘に同期だったウマ娘達を見てきた身だから言うが……、マルゼンスキーはその世代で飛び抜けていた。今でいうところのスズカのような立場にあった」

 

マルゼンスキーは実はルドルフの先輩であることがここで語られた。どれほどの先輩かは明らかにしなかったが、当時の規制に引っかかり、若かりし頃は重要レースへ参戦が叶わず、当時のトレーナーが『大外でいい、賞金もいらない、他のウマ娘の邪魔もしない。だから、彼女にダービーを走らせてくれ~!』と、ウマ娘競走協会に縋り付き、本気で泣いたという逸話もある。当時の彼女は国内のウマ娘にとって最大の脅威であり、テイオーらの時代のメディア関係者曰く、他のスポーツで言うなら、アマチュア時代の日本サッカーに21世紀の海外リーグで活躍できる実力を持つ選手が現れた』とか、『黎明期の日本野球に21世紀の技術と野球理論を兼ね備える一流選手が現れた』のと同義であるとされる。それほどに実力は飛び抜けていた。実際にマルゼンスキーが頭角を現し始めた頃の映像を見ると、他のウマ娘達は全く無力であった。『プロアスリートが小学生の徒競走に混ざるようなもの』とさえ謳われていたとも語る。

 

 

「そんなに速かったの!?」

 

「何度か怪我しても、あのポテンシャルだぞ。全盛期はまさしく最強。同期のウマ娘たちの心をへし折ることが多々あったと聞かされたよ」

 

「何人いるんだ?」

 

「その世代全体が不遇の世代と言われたからな……。レースの道を諦め、故郷に帰った者も多いから、名前は明かせん。彼女に次ぐ実力を備えていたはずの連中でさえ、ウマ娘競走協会への就職に難儀したと一般に伝わるのみだ」

 

ルドルフはその世代の後に入学した世代だが、現在の生徒会長である分、その当時の事情は知っていた。その世代は日本のウマ娘史上有数の『不遇世代』とされ、マルゼンスキーが強すぎたため、他のウマ娘たちの活躍が埋もれてしまった。マルゼンスキーに次ぐ実力を備えていた者達でさえ、マルゼンスキーの更に前世代で、黄金世代と言われた世代のエース格(その三人の名前の頭文字を取って、『TTG』と呼ばれたという)たちの華々しさの直後の時代であり、マルゼンスキーがまさに全盛期に向かって『バクシン』する時期であった事により、彼女達は前世代のエース達とマルゼンスキーの『噛ませ犬』としての評価が定着。世代トップ級すら『ウマ娘競走協会への就職』にすら難儀し、マルゼンスキー世代は大半が『夢破れて、故郷に帰った』。その事から、マルゼンスキーの年齢は本来なら『大学生以上の年齢層』かもしれないのだと悟った三人。

 

「黄金世代と謳われたTTGの直後、更に、マルゼンスキー先輩の全盛期と来れば……ね。それで?」

 

「マルゼンスキーの強さに感銘を受けたTTGの先輩方が教会のお偉方に働きかけ、マルゼンスキーをレースに出れるようにしてくださった。彼女たちはマルゼンスキーの恩人だよ。その頃に私が中等部に入学したんだ。それと、先代の理事長が書類を弄って、マルゼンスキーが重要レースに出れる根拠を造っていったのも大きい。当時に有望株と見なされていた私と同期という事にしたんだよ」

 

「すげえ手…」

 

ゴールドシップも感心する先代のトレセン学園理事長の手腕。シンボリルドルフは入学当初から、その当時には引退間近であったTTGから(そのうちの一人がルドルフの先代の生徒会長であるという)『トレセン学園とトゥインクル・シリーズの次代を担う者』として目をかけられており、その期待に応え、彼女らの後を継ぐ者として活躍したシンボリルドルフ。こうした計らいで、マルゼンスキーはルドルフと共に規定改定後のレース生活を楽しみ、テイオーらの在学する頃には『トレセン学園のご意見番』と評判のウマ娘となった。テイオーはそのルドルフの全盛期に小学生であり、ルドルフに憧れて、レースの世界に入った。そのテイオーの背中に憧れて、入学してくるであろう次世代のウマ娘が『キタサンブラック』なのだ。

 

「私もTTGの先輩方やマルゼンスキーの全盛期を見て、トレセン学園に入ろうと思った。私の背中を見て……テイオー。お前が現れ、お前の背中をキタサンブラックが……」

 

「知ってたの、キタちゃんのこと…?」

 

「お前が悩んでた時期に、スペシャルウィークに相談されてな。その時に存在を知ったんだ」

 

ルドルフもテイオーと同じように、小学生時代に親に連れられて見に行った『とあるレース』で、当時のウマ娘界での三強であった『TTG』と会話を交わす機会に恵まれ、小学生時代のテイオーと同じような事をやったのを赤裸々に語った。やる事は同じだったのだ。

 

「私も…その……お前と同じような事を先輩方にやってな…」

 

「わ……わぁ~~い!!かいちょーもボクと同じだったんだ~!」

 

テイオーはこの時、ルドルフとの新たな共通項を見つけ、目を輝かせた。テイオーが小学生時代にルドルフと出会った時と同じような事をルドルフも先輩達にやっていたのだ。この事はマルゼンスキー以外には知られておらず、腹心のエアグルーヴにも言っていないと注釈を入れる。

 

――私も……貴方方みたいな最強のウマ娘になります!――

 

『TTG』は全員が子供好きかつ、気さくな性格のウマ娘であったため、記者会見場に乱入してきた子供を咎めず、三人は頭をポンと撫で、『そうなりたいのなら、トレセン学園に入学してくるんだよ、お嬢ちゃん?』とやさしく声をかけてくれた。それと同じことをルドルフは後年、テイオーにしたのである。その点でも『似た者同士』であったことが分かり、面白そうな顔をするアグネスタキオン、ゴールドシップ。そして、自分と同じことをルドルフもした事を知り、テイオーのテンションはMAX。しっぽをブンブン、目がキラキラ輝き、鼻息荒くなっていた。

 

「て、テイオー…。わかったから、お、お、お、落ち着いてくれ。こちらのほうが恥ずかしい…」

 

顔を真っ赤にし、湯気が出る勢いで赤面するシンボリルドルフ。珍しい場面であった。

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