――安土幕府では、改易はほとんど記録がなかったという。これは織田家が外征志向であったこと、怪異に立ち向かうために戦国期の軍事力を維持する必要があったり、織田家そのものの人的基盤が極めて脆い時期が続いたからであった。そんなわけだが、史実の記録で日本側から陰口を叩かれる華族もあり、軍人として実績のある者が学者肌の嫡男を差し置いて当主になるケースが多く見られた。黒田家がその筆頭であった。昭和天皇は戦後、史実では堂上華族をかばう一方、武家家族の保全に冷淡であったことが華族らに知られ、華族に対する自身の求心力が低下するのを恐れた昭和天皇は黒田の当主就任を後押しした他、華族の地位保全に拘った。また、扶桑華族そのものも『武芸の才能が学問よりも尊ばれた時期が長い』安土時代の名残りが残っており、史実の『お飾り身分』より欧州貴族に近い身分であった。カールスラントの内乱は『国家秩序の安定』の題目を日本側に振りかざすのにいい機会として利用されたわけだ。こうして、日本側は扶桑華族解体を政治的にゴリ押しすることがドイツの稚拙な行為のせいで完全に不可能になり、扶桑軍の自衛隊組織への完全編入と扶桑の軍事力の縮小にこだわっていた政治派閥も1949年に勃発した『カールスラント紛争』の様相で手を引いた。また、他国が一様にウィッチ含めての軍事力を縮小する時代に入り、多くの有能なウィッチが路頭に迷う時代に突入したので、(国力が健在である上、戦時に突入した)『扶桑がそれらを養えよな!』と国際連合安全保障理事会で言われたためもあり、扶桑は軍事力維持の当面の大義名分を得た――
――1945年以降、各国は財政的疲弊から、ほぼ例外なく軍縮に入った。軍縮で職にあぶれた各国軍ウィッチはウィッチの数的不足に喘ぐ日本連邦の義勇兵募集にこぞって応募。多くの将校や古参下士官(曹長)が日本連邦の義勇兵に転じた。第二世代宮藤理論はそんな時期に救世主のように登場したわけだ。カールスラント軍はこの時期に多くの熟練した将兵が事実上、日本連邦に流出していった。カールスラント側は歯止めをかけようと躍起になっていたが、失脚を予期した『コンドル軍団』出身者が配下ごと日本連邦へ移籍する流れをせき止めるには至らなかった。カールスラント空軍で人望があったメルダースに失脚の噂が流れた(メルダースは史実では死後何十年も経った21世紀に名誉が剥奪されている)事が最終的なトドメになった(メルダースが信奉する編隊での強さも史実では米軍の圧倒的重装甲に屈しているため)。カールスラント軍はドイツ政府を説得し、メルダースを名誉職でもいいから、何かかしらの役職を与えておくことを押し通したが、自身の失脚を予てから予想していたメルダース(事故で昏睡状態に陥った後、戦友のガランドの手配で日本連邦に移送され、ある時に宮藤芳佳による治療を受けて回復。怪我と病気の療養と称し、同地に滞在中であった)は先手を打ち、怪我と病気の療養を理由に、予備役編入をグンドュラに申し出た。これはメルダースが史実の航空戦の戦局が自身の主張と真逆の様相を呈していき、強力な装甲を備える米軍機の前にドイツ空軍が滅ぼされた事を知り、責任を感じたからである。(なお、史実のメルダースはエルンスト・ウーデット大将の葬儀に参加するために現地に向かう途中で事故死している)また、魔弾隊を始めとする『外人部隊』の定員増強が決まり、その総指揮官に推薦され、それに応えるためでもあった。結果、カールスラント空軍はメルダースという超重要人物を引き抜かれ、その形骸化が顕著になるのである――
――プリキュア5の世界に遠征が行われた時期には連合軍は形骸化が進んでいた。他国軍は連合軍から部隊をどんどん撤兵させていったため、この頃には、日米英(日本連邦・キングス・ユニオン、アメリカ合衆国/自由リベリオン)の軍隊が国際的に活動するための方便になっていた。カールスラントは人員にこれ以上の反乱を起こさせないための厄介払いに使い始め、仏は象徴的にペリーヌを形式的に派遣する(予備役になっていたが…)程度になっていた。オラーシャは脱退済み、ロマーニャはヴェネツィアと領土紛争が起こっていた。世界はスーパーロボットたちが怪異の巣を吹き飛ばした事で軍縮に向かい、戦争の当事者である国以外は軍隊の縮小に向かった。キングス・ユニオンは空軍近代化と称しての相対的な海軍縮小が始められ、予備役になっていた戦艦の『スクラップ』としての売却が進んだ。これは空軍機の近代化を進めるためであり、相対的な量の低下が起こったのも仕方なしとされた。その結果、海軍力の日本連邦への依存度が高まった。46cm砲を備えてなければ『二線級戦艦』との烙印を押される時代にあっては、キングス・ユニオンも有力な七隻を一線で維持しつつ、比較的に新しい年式の予備艦を数隻有するので精一杯であった。これは空軍と航空母艦の需要増と航空装備の高額化、日本連邦とリベリオン合衆国の果てなき建艦競争の産物であった――
――日本連邦は機械化を志向していたが、扶桑側は事変の戦訓で史実よりは機械化率は高かった。とはいえ、M動乱の戦訓でそれをドイツ軍機甲師団と渡り合える水準に強化するために誠意努力中であったところを、その数十年先の米軍の水準に強化するのは無理難題に近かった。MSやコンバットアーマーはそれを補う格好の兵器であった。だが、扶桑はあくまで、モータリゼーションの初期段階に脚を踏み入れた段階であったのを、それが完全に完了した段階の国の軍隊に数年で追いつけというのは、いくらなんでも無茶にすぎた。それを誤魔化し、抑止力を機能させたというのが、日本側が64Fという『一点豪華主義』を容認する理由であった。――
――64Fが手に入れた新鋭母艦『ベクトラ』。地球連邦軍が本来、ジオン残党掃討の切り札として建造した航空母艦で、アクシズから接収したグワダン級の設計図を基に、ラー・カイラム級のパーツなどを用いて建造されていた。だが、軍縮の時代に軌道上のプラットフォーム化(軍解体が予定されたが、必要最低限の防衛力を維持する必要から使用用途が変更された)が決定され、建造が遅延。だが、その間に本格的に宇宙戦争の時代が到来したため、三度の仕様変更がなされ、ウィッチ世界でのダイ・アナザー・デイ後期の段階で竣工し、デザリアム戦役で本格的に使用され、損傷。その損傷の修復の際に波動エンジンを積まれ、初期設計通りの運用がなされる予定であったが、基礎設計がジオン系の軍艦である『グワダン』なため、真の意味での連邦純正品での艦隊を望む一派によって艦隊から排斥され、それに憤慨したユング・フロイト大統領の指示でロンド・ベルに回された。800m級の超弩級空母であるので、普段は64Fの世界各地の展開のためのプラットホーム的運用がなされる一方、艦載機と運用要員もセットで供与されているため、ジオン残党の消滅で需要が減少した緊急展開部隊の働き口の確保の意味合いも含まれていた。ベクトラはZ系を多く有する有力な空母であるが、ジオン残党が消滅すれば維持費で疎まれる存在である。だが、タウ・リンのテロ以降、『保有しとくに越したことはない』論が優勢になり、正規の軍編成から外れるロンド・ベルに与えておこうとなったわけだ。64Fはこのベクトラの配備で正式に『航空軍』扱いとなり、支援要員含めると万単位の人間が働く現場になった。保有機種もガンダムタイプが保守派の目から逃れるかのように大量にあり、ネオガンダムの後継機『センチュリーガンダム』(ネオの発展型だが、コアファイタータイプではないので、シルエットガンダム改の改良型とも言える)の試作機も配備され、遠征軍で試験されていた――
――プリキュア5の世界――
「これがネオの後継機か。シルエット改の機構の方が参考にされたな、こりゃ」
センチュリーガンダムはアナハイムが予てより試作していたシルエットフォーミュラの第二弾のフラッグシップである。ネオの発展型として計画されたというが、確認すると、実際はネオガンダムとシルエット改の間の子というほうが正しく、設計に問題があったGバードをオプション化しつつ、新型ヴェスバーを標準装備化しているので『アナハイムがF91とネオガンダムとシルエット改をウルトラミキサーで合体させたような新型』と揶揄されている。外観もシルエット改とF91とネオを足して二で割ったような印象を受ける。
「アナハイムはこのレベルなんですね、まだ」
「ミノフスキードライブは量産機向けじゃないし、過剰性能って声も大きいから、ザンスカールのハイスペック機用の融合炉を改良したそうだ。外観は流出したF92の設計図とシルエット、ネオを混ぜた結果だとよ」
「F92?」
「サナリィが軍縮の頃にプランを立ててたF91の正統な後継機種らしい。ほれ、日本だって、バブル期の頃に『HOPE』なんていう『スペースシャトルの類似品』を計画してたろ?それみたいに、あっさりとポシャった機種だ」
F9シリーズ。フォーミュラ計画でフラッグシップとして構想されていた小型機の開発計画である。途中で軍縮の時期を迎え、計画が頓挫。構想されていたはずの多くの機種は日の目を見なかった。既存のF91も当初予定のデチューンでなく、エース専用のフルチューン状態での生産に切り替えられたため、サナリィとしては採算が取れず、割に合わない状態だった。その打開に、F91と別のスタッフの作である『クロスボーン・ガンダム』を公には後継機種として売り出す羽目となった。また、小型機そのものが斜陽となった理由に、小型機に多く用いられている『マイクロハニカム構造』の装甲はゲリラ戦向けでないとされ(市井の流通品の流用で回路の修理ができないとされ、特務部隊に不評であった)、次第にMS開発の主流から外れる時代を迎えると、アナハイム・エレクトロニクスが中興を迎えた。さらなる新規格のミドルサイズMSが軍部に受けたからである。
「その設計図とF92に使用予定の技術がアナハイム・エレクトロニクスに流出し、シルエットフォーミュラの洗練に使われたわけだよ。軍縮の時代にサナリィが閉鎖になるのを恐れたスタッフがアナハイム・エレクトロニクスに設計図と技術ごと持ち込んだんだろうね」
「普通なら問題だよ、それ」
「普通ならね。その時代は宥和政策でジオン残党を懐柔して、穏便に武装解除させようって考えだったし、近いうちの軍部の解体も視野に入れていたから、黙認されたんだ」
のび太もいうが、軍縮政策は結果的には民間軍事会社の台頭を招き、ロンド・ベルとアースフリートのみが最新装備を持つという批判を受けているが、その方が政府の財政的にはいい効果になっている事、一点豪華主義が移民星と移民船団への分離独立に対しての圧力として機能しているという評価もあるからだ。また、民間軍事会社の急激な肥大化については、連邦政府のハト派が問題視したため、各会社のエース部隊を軍に編入する事で折り合いをつけている。そうした政治的事情で、ロンド・ベルはこうした一癖ある者らの者達の身元引き受け先になっている。
「ウチの部隊はそうしたダーティーな背景を持つ機体の引き受け先でもあるからね」
「ダーティーすぎない?」
「僕が裏で暗殺や狙撃をしてるのに比べれば、まだマシさ」
のび太は表向きは『人畜無害な環境省の若手官僚。出世はあまり見込めないが、プライベートではカーレースやシューティング競技に傾倒している所帯持ち』という経歴だが、裏ではボディガード以外のダーティーな仕事を20代前半からこなしてきてきている裏世界の手練である。30代頃には野比財団という資産運用管理財団を立ち上げている。この財団が時代とともに発展し、のび太の玄孫の野比セワシが壮年期から老年期にかけて、政治的発言力を強化したことで『ビスト財団に代わるアナハイム・エレクトロニクスの支配者』となるのである。ビスト財団はデザリアム戦役での騒乱で主要人物と存在意義を失って衰退し、アナハイム・エレクトロニクスへの影響力も喪失し、財団そのものの自然消滅へ向かった。政治的庇護を失ったアナハイム・エレクトロニクスは野比財団にすがりつく形で鞍替え。遠征が始まる頃に相当する未来世界側の時間軸では、野比財団の庇護下でかつての地位の再建に邁進していた。
「ノビタダが言ってたが、アナハイム・エレクトロニクスはうちの財団に鞍替えしたよ。現金なことだ」
「企業体質的にどうなの、それ?」
呆れるキュアドリーム・。V2のテストから戻ってきたばかりで、スポーツドリンクを飲んでいる。
「ま、地球連邦政府の政治家にも太いパイプがあるから、ビスト財団に責任押し付けたんだろう。あの財団は10年もすれば、自然消滅するよ。ラプラスの箱もパンドラの箱扱いされてたけど、実際は単なる連邦政府設立の時の条文のオリジナルだったから、連邦政府がコケるような魔法の言葉じゃなかったしね」
「それで連邦政府は?」
「将来的には太陽系連邦にしたいらしいけど、当面は地球星間連邦政府で通すそうな。ま、実際は手続きとかが煩雑だし、ガイアと揉めてるからね。先延ばしになったのさ。それに、ジオンが無くなったわけじゃないし、木星の衛星の連中もキナ臭いからね。当分は火種に事欠かないよ。プロフェッサー・ランドウがも宣戦布告してるし」
のび太は23世紀の地球圏は火種に事欠かないと教える。百鬼帝国亡き後はプロフェッサー・ランドウがメタルビースト軍団を興し、宣戦布告してくる、恐竜帝国残党が動き出すなど、地下勢力の再編も進んでいる。」
「あのトチ狂ってる『マッドサイエンティスト』ね……。元はどういう男だったの?」
「ドイツのゲッター線研究者だった。マッドサイエンティストすぎて、ある時に学会を追放されたところを百鬼帝国に拾われて、兵器開発とゲッター線開発に従事していた。帝国が真ゲッタードラゴンに滅ぼされた後に独自の軍団を立ち上げたのさ。恐竜帝国の支援でね。隼人さんが基地の一つを叩き潰したと聞いてたが……生き延びてたようだ。今後は連中が君等の敵に加わるよ」
ヒーローユニオンにもプロフェッサー・ランドウは宣戦布告をしており、必然的にプリキュアオールスターズとも敵対する事になる。彼を支援する恐竜帝国はこの時期、幹部の代替わりが発生しており、長も先帝の妹であった『ジャテーゴ』になっていた。(別世界での竜馬の子である拓馬の戦友かつ、敵であるカムイ・ショウのおばにあたるという)彼らは最終兵器『デビラ・ムウ』と『無敵戦艦ダイ』の設計をランドウへ提供しており、ランドウは回収していたウザーラの残骸とその二つを組み合わせて『悪のゲッター』として新生させる作業を終えつつあった。
「それと、ランドウはゲッターデーモンを造りだしているらしい」
「ゲッターデーモン……?」
「ウザーラ、ムウ、ダイ。いくつかの世界でゲッターに敵対したメカを悪のゲッターに仕立て上げたものだ。多分、八割方は完成してるだろうさ。俺がお前と入れ替わってた時にウザーラと戦ったが、その時にブラックとブライトが怯えちまったくらいの破壊力だった。そんなクラスのがゲッターになるんだ。破壊力は押して知るべきだ」
「だから、こんな火力重視のガンダムが採用されるんですね?」」
「そうだ。元はザンネックを落とすために計画が再開されたらしいぜ。強化型のGバードなんざ、ジオンのどんなモビルアーマーに使っても『オーバーキル』だぜ。バスターランチャーを解析して強化したんだから」
センチュリーガンダムのオプション装備のGバードは改良型で、コア・ファイター機能を省き、純粋に手持ち火器にした次期モデル。手持ち火器に徹したため、ネオガンダムで指摘された問題が解決されている他、バスターランチャーを解析して得られたエネルギー制御技術を組み込んでの強化がなされ、仮想敵であったザンネック・キャノンを上回り、サテライトキャノンにも匹敵する攻撃力と射程を得ている。
「わーお……」
「だから、F91とネオのいいとこ取りを狙った、シルエット改の発展型って言うべきだろうな」
シルエットフォーミュラ計画の第二弾として計画されつつも、公には『ニューセンチュリーシリーズ』の嚆矢として発表された『センチュリーガンダム』。シルエット改を基本に、アナハイム・エレクトロニクスに流出したF92の設計と技術を取り入れて、機体各部をブラッシュアップし、ネオガンダムの技術もぶっこんだ『ごった煮』という実情が明らかになったので、現場では『シルエット改の後継機』と認識された。F91に近くもあり、クラスターガンダムのような箇所もあるが、機体の大まかな形状はシルエットガンダム改寄りだからで、サナリィが目指していた『F92』のコンセプトは『クラスターガンダムとF91の統合型』であったことが判別可能ながらも、シルエットガンダム改の基礎設計が優秀であることも分かる。
「シルエットフォーミュラの忘れ形見って言うべき代物だよ、このガンダムは。君のV2には及ばないが、第一線級の機体性能は確保してる。ザンスカールの高性能機に勝るだろう」
V2が小型機としては極限の性能を持つのはミノフスキードライブのおかげだが、同エンジンは高コストであり、センチュリーガンダムにはザンスカール帝国のハイスペック用に用意されつつも、搭載されなかった次世代型を改良して搭載されており、エンジンは旧来技術ながら、かなりのエネルギー容量の余裕が確保されている。
「うへぇ…。先輩、これ使うんですか?」
「俺は元々がテストパイロットだからな。やり直す前は航空審査部で定年を迎えた。今回は追い出されたが、神保先輩とは連絡取り合ってるよ。その意味では適任だろ?」
黒江は元々、航空審査部でテストパイロットであった経歴がある。今回の歴史においては厄介払いで追い出されたが、その時の同僚であり、47F時代の先輩でもあった神保大佐とは連絡を取り合っている間柄である。航空審査部はその後、クーデター時の不祥事で横須賀航空隊のテスト部門共々に解体となったが、元々、扶桑全体の航空部隊におけるトップクラスの人材たる空中勤務者・地上勤務者の集まりであったため、思想に問題がない者は64Fの実働部隊の主力という形で活用された。危険思想者はアリューシャン諸島の防空という形で島流しに遭い、同地が猛攻撃を加えられる過程で消耗してきている。とは言え、元がトップクラスであるため、意外に生存率はあるという。
「確かに。でも、航空審査部の人材をうちが八割方?」
「史実の64Fと343空のいいとこ取りを日本が狙ったんだよ。いい人材はいいとこで集中運用するっていう。分散配置で有能な人材が酷使されて、あっさり死んだ例が多かったから、トップクラスの連中の内、思想的に問題がない連中は空中・地上の区別無く、64Fに集中させる。多分、その思想がキマイラやロンド・ベルのもとになったんだろうね」
日本連邦が確立させた『人材の集中運用』理論は軍事予算に余裕がない日本独特の事情が絡んでいた。『烏合の衆の部隊が壊滅しまくるよりは、最高の精鋭部隊を造り、敵への抑止力兼戦場での切り札とする』思想は343空、台南空、64Fの成功体験が拠り所である。とは言え、343空は『よく見積もっても、開戦時のペーペー程度の練度である。しかし、あの状況下では最良である』という証言も残されているのだが、政治家は『ベテラン搭乗員やエースパイロットをかき集めて編成されていた』という一般的な343空のイメージを信じており、プロパガンダ的意味合いもあり、政治方面で豪腕が振るわれて『文字通りに強者を根こそぎ動員した』陣容が実現した。このように、当初は軍の予算確保のための『見世物部隊』の意味合いが強かった64F。だが、ダイ・アナザー・デイでの孤立無援の際に人材の集中が良い方向に働いたり、その後の戦乱でロンド・ベルの一部という扱いで活躍したことで、実働部隊として認知されていった。1949年度には、かつての統合戦闘航空団に代わる『国際色豊かな精鋭部隊』としての地位にあり、魔弾隊、魔眼隊といった外人部隊すら内に抱える身となるなど、もはや部隊という単位の範疇を超えている陣容であった。
「ウチはキマイラやホワイトベース隊の影響で編成が決まったが、歴史的にはその逆になるってんだから、それもまた一興だな」
「あ、みらいちゃんから連絡だ。日本で疫病の第四波が来る前に映画の公開が間に合ったそうです!」
「良かったな!スネ夫にDVDかBRのサンプルを貰えるように頼んどけ。今日はガキ共に講義がある。時間があまりないと思うから、大急ぎで仕込むぞ。ドラえもんにも頼んである」
「それと、ドラえもん。王ドラとキッドを呼び寄せるそうな。あいつもオツムはよろしくないしね」
「王ドラ、女の子に弱いんじゃなかったか?」
「普通に接する分には問題ないんだ、あいつ。惚れちまうとダメでね。そこがドラえもんに似てるよ」
王ドラは女性に弱いが、普通に接する分には問題はない。ドラえもん曰く『あがり症』らしい。頭脳ではピカイチで、ドラえもんが在籍していたロボット学校の同期で秀才の名を欲しいままにしていた。最も、ネジが数本抜けたドラえもんと比べるのも酷だが。
「キッドはなんでだ?」
「エル・マタドーラはすぐ寝ちまうし、ドラメッドは水ダメでしょ。ドラリーニョは論外、ドラニコフは喋れないだろ」
「あー…」
猫型ロボットは子守り用ロボットなので、覚えた物事を誰かに教えられるようにプログラミングされているが、ドラえもんはその技能が他の個体より何故か低い。本来の製造用途である子守りも実は苦手であるなど、子供時代ののび太とよく似た面がある。とは言え、その分、量産されていた他の同型よりも自我が明確であり、統合戦争の真の遠因であった。ドラえもんズはドラえもんが生まれた工場で生み出された『特別な個体』であり、兜甲児の物言いを借りるなら、『ドラえもんズはドラえもんを支えるために、ドラえもんの魂から生まれた』とも言うべき兄弟に近い関係である。とは言え、普段は各時代の各地に散らばっている。王ドラも普段は西太后が君臨していた時期の清朝期の中国に滞在し、ドラ・ザ・キッドは西部開拓時代のアメリカで保安官である。プリキュア達ともっとも顔を合わせる事が多いのはドラ・ザ・キッドだが、これはドラミとキッドが恋愛関係にある関係で会う機会が多いからである。
「でも、ドラえもん君ってさ。時々、キッドくんと喧嘩にならない?」
「ドラミっているだろ?ドラえもんの妹」
「ええ。知ってますけど…?」
「ドラミちゃん、キッドと付き合ってんだ」
「あーそっ……えーーーー!?」
そこで事実に気が付き、素っ頓狂な声をあげるキュアドリーム。ドラえもんが時々、キッドに不機嫌に接する理由は『妹が付き合ってるから』で、兄としての心配性なのだと。
「ドラえもんとマジで義兄弟になる可能性があるんだよ、あいつ」
ドラえもんはそれを指摘されると不機嫌になる事があるが、『かわいい妹が学校の同期に誑かれている!』と見てしまうからで、ドラえもんと腐れ縁になりつつある。ドリームは事実に気が付き、ドラえもんの心配性に理解を見せた。のぞみ自身は一人っ子であったが、りんの兄弟姉妹への心配性を見てきたので、わからないわけではないからだ。