ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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ウマ娘たちがメインですが、オリジナルのウマ娘として、マルゼンスキーの世代より以前に活躍した名馬たちの名が出ます。


第二百三十話「シンボリルドルフの過去の失敗、ナリタタイシンの想い」

――プリキュア5の世界に持ちこまれた兵器は多種多様であった。敵もハイザックやバーザムなどの超兵器を持ち出していたために、結果的には念には念を入れた準備が功を奏したわけだ。日本側が2021年に延期されていた五輪を開催返上できない理由は多くあるが、その内の一つに『扶桑の五輪を軍部高官の更迭や官僚の左遷人事を強行してまで開催させたので、自分たちも相応の犠牲を払わないと、扶桑側が納得しないから』というものであった。扶桑の財政援助は日本の軍事援助を引き出すための手段であったが、結果的には成功したわけだ。そんなある日――

 

 

 

 

 

 

――のび太の世界――

 

シンボリルドルフは自嘲気味に語っていた。今はトゥインクル・レースから引退した『オグリキャップ』が地方から中央に出てきた頃、まだ生徒会長になりたての自分は『日本ダービーに出たい』としたオグリの要請を一蹴しようとした。だが、オグリの秘めた実力を買っていた者の一喝で覆った。TTGの筆頭格であった『トウショウボーイ』(ルドルフの先代の生徒会長)だ。彼女にいきなり殴り込まれ、『私が協会を動かす。それで良かろう、ルドルフ?』と一喝され、何も言えなくなった。トウショウボーイは既に押しも押されもせぬ大スターであったが、当時のルドルフはまだそれ程の実績のない若造だったからだ。

 

「先代に殴り込まれた時は腰抜かしたよ。オグリの頼みを退けるつもりだったが、先代に脅されてなぁ…。何も言えなくなった」

 

『その当時』に持て囃され始めていたルドルフだが、トウショウボーイからすれば、単なる『小僧』でしかなかった。同席していたマルゼンスキーが異議を唱えようとしたが、トウショウボーイ、次いでやってきた相棒のテンポイントの眼光に怯える有様であった。ウマ娘の世界でも『先輩後輩関係』は厳しいわけだ。TTGはルドルフの子供の頃の時代が『全盛期に相当する』古い世代に属し、マルゼンスキーはその中間世代にあたる。ルドルフはオグリが新人時代に『中央の礼儀を教える』つもりで一瞥しようとしたら、自分が逆に殴り込んできた先輩たちに『しばかれる』羽目に陥った。マルゼンスキーはトウショウボーイとテンポイントに完全に萎縮、。最後は涙目になる始末であった。

 

「あんたの先代達って、TTGだよな?」

 

「そうだ。頭が上がらなくてな。私が入った時の生徒会の幹部だったからな。おまけに、その後ろ盾は先々代のハイセイコーさんだ…」

 

「すげえ豪華……」

 

ゴールドシップも唸るが、トレセン学園のここ数代の生徒会長は『怪物』か『世代最強』のウマ娘が就任しており、先々代の生徒会長はかの超大物『ハイセイコー』、その後継者で先代の生徒会長が『トウショウボーイ』である。競走馬で考えれば、ファン垂涎の的であるのは間違い無しであろうビックネームだ。なお、ハイセイコーの全盛期はルドルフの幼少期の頃であるので、ルドルフが生徒会長に君臨している時代には『教会を好きに動かせる』黒幕とさえ評判のフィクサーだという。

 

「私など、彼女たちからすれば、今でも青二才だよ、ゴールドシップ。その時はグリーングラスさんが来てくれなければ、私は土下座するつもりだったよ。オグリに中央の礼儀を叩き込むつもりが、自分がしばかれたのだから、滑稽なものだ……。」

 

 

グリーングラス。TTG最後の一人で、世代最強を謳われたトウショウボーイ、テンポイントに対抗できる実力を誇ったウマ娘だが、才能が花開いたのが選手生活が後半に入った頃と遅めである事から、後年のウマ娘界では『大器晩成型』の例として引き合いに出される。気性は三人の中でもっとも温厚で、新人時代のルドルフを『ルドルフちゃん』と可愛がった一人である。彼女がトウショウボーイとテンポイントに『ハイセイコー氏からの言付け』を伝えに来なければ、シンボリルドルフは二人の先輩にこっぴどくシバかれていただろう。

 

「エアグルーヴなど、完全に置物状態だったよ。私がかしこまるのもあって、何も言えずじまい。テンポイント先輩に『黙れ、小僧!』と言われてて、可哀想になった」

 

「あんたの先輩たち、意外に口わりぃなぁ」

 

「ハイセイコーさんが地方出だったから、余計にまずかった。その頃は私も青二才だったからな。エアグルーヴには悪いことしたよ」

 

ルドルフ曰く、この話はオグリキャップが新人であった時期の話との事。現在こそ、女帝の異名持ちのエアグルーヴだが。当時はまだ、招来有望な若手のウマ娘に過ぎず、先代の生徒会役員達の剣幕に萎縮する醜態を晒した。この事は今回が初めてのカミングアウトだという。

 

「あんたもそんな事あったんだな……」

 

「ゴールドシップ、まだ眠れんのか…?」

 

「やっと眠気が出てきやがった。わりぃが、昼飯食ったら寝させてもらうぜ…。ふぁああ…」

 

「でもさ、年功序列気味だよね、今のって」

 

「メジロ家もその傾向があるがな。おばあさんは嫡孫のマックイーンより、メジロライアンに期待していたらしいが。お前も聞いたと思う、テイオー」

 

メジロライアンは孫世代の中でも素質に恵まれているとされていたが、実際は惨敗の連続であり、本家の嫡孫のマックイーンの噛ませ犬に甘んじている。更にその従姉妹(史実の競走馬としては実子)のメジロドーベルにも負ける有様だった。なお、彼女の無念は彼女の更に下の世代のウマ娘『メジロブライト』の手で晴らされたという。

 

「ライアンだけど、最近は噛ませ犬に甘んじてるから、競技生活に嫌気が差し始めてるみたいだよ」

 

「本当か?」

 

「ライアン、自分の限界に気づいたっぽくて。自分の後継として、従姉妹のメジロブライトを送り込みたいみたい」

 

「マックイーンは?」

 

「まだ知らないと思う。ボクもじいやさんが零してるの聞いちゃっただけだしさ。ボクも三回目の時に『もう全盛期の走りには戻れない』って言われて、すごく落ち込んだからね。多分、ライアンはメジロ家のおばあさんに分家の自分が見限られるのが怖いんだと思う」

 

ライアンはその後に宝塚記念を制し、なんとかGⅠウマ娘の地位は手に入れるが、マックイーンと同様の病に侵されてしまい、そのまま引退していく。期待の割に活躍出来なかったと陰口がつきまとう事になり、それは従姉妹のメジロブライトが活躍する時代まで続いたという。ただし、話に続きがある。その無念を目の当たりにし、やる気に火がついたメジロパーマーがその後に長く活躍。間接的にだが、ライアンの無念を晴らしたという。

 

「かいちょー、どう思う?」

 

「メジロ家は代々、足の病気を発症しやすいからな。マックイーンの発症も予想外だったように、遺伝的何かがあるんだろう。もし、あの方に出会ってなければ、マックイーンもどうなっていたか…」

 

マックイーンも長く活躍したが、史実では病気の発症で引退している。脚部を酷使するため、病気を発症しやすいというのは、馬類だった頃の名残りだろうか。人間同様の構造に進化しても、馬類特有の病気から逃れられないというのは皮肉でしかないだろう。テイオーが黒江に懇願して『肉体の再構築』をしたのも頷ける。

 

「お前は体の柔軟性がありすぎた。今となってはそれが度重なる骨折を招いたとしか考えられん。だが、今のお前の体は……。」

 

「うん。わかってる。結局さ、かいちょー超えは無理だったけど……、キタちゃんにいいとこをもうちょい見せたいからね。ボクは一年を棒に振ってるから」

 

トウカイテイオーは一年を棒に振っている分、レース生活を長く続けたいようだ。テイオーは再構築された肉体を武器に、その後しばらく現役に留まる。有馬記念以来のライバルであるビワハヤヒデがそのうちに患う病でターフをあっさり去った後の時期はその実妹のナリタブライアンがビワハヤヒデに代わって、トウカイテイオーのライバルに君臨。レースの覇を競ったという。(正確には、ビワハヤヒデは有馬記念後に精神的要因でスランプに陥ってしまい、そこから抜け出すために無理を重ねた代償で脚の病を『史実通りに』強度に発症してしまい、周囲が治療後の復帰を勧めるも、『妹に後を託す』として、未練なく、レースからあっさり引退。ナリタブライアンはそれを受け、姉に代わる形でトウカイテイオーの『最後の好敵手』として君臨し、トウカイテイオーの現役最終年まで互角の戦績であったという)

 

「かいちょーもゴルシも、タキオンも見たでしょう?ビワハヤヒデは……」

 

「ここ半年以内に病気を発症してしまう……か。彼女は妹の才能に努力で並んだ。だが……」

 

「あと一回、レースで全力が出せればいいほうか。半年はすぐだからな…」

 

「……ビワハヤヒデにいうか?」

 

「言っても信じないだろ?それにマックイーンもだが、怪我と病気の発症は突然だからな」

 

「マックイーンもまさか、自分が病気になるとは思ってもみなかっただろうからな。ビワハヤヒデは……たぶんよ…」

 

「ボクに勝とうとして、無理するんだろうね。でも、今のボクはブライアンでもないと……」

 

ビワハヤヒデは有馬記念後に脚部に不安が生じ始めていた。だが、検査では異常がない。しかし、繋靭帯炎は少しづつビワハヤヒデの脚を冒し始めていた。ウマ娘の世界は実力主義主体であるが、伝統的な先輩後輩関係がそのまま適応される場合もある。シンボリルドルフとトウショウボーイなどがそれである。相手が先輩でも、実力で勝っていた場合は呼び捨てする場合があるが、トウショウボーイはルドルフの先代の生徒会長であると同時に、自分の先代のスターウマ娘である上、自分を見出してくれた恩師の一人であるため、彼女の引退後も敬語を使っている。また、若き日の癖で『かいちょー』とも呼んでいる。このことはウィッチ世界でも言える。日本から『年長者に敬意を払えないクソ』と人格否定級に糾弾された結果、アジア文化圏向けに申し開きをする羽目に陥って、人事的にも減給処分を受けたフーベルタ・フォン・ボニンが代表的な『文化圏の違いに翻弄されたウィッチ』であろう。

 

「まともに追えない、か?」

 

「うん。ボクは肉体が普通のウマ娘を超えちゃったからね。カイチョーが全盛期のままなら追えたかもね」

 

「失礼な、まだ衰えているつもりはないぞ」

 

ルドルフはまだ高校生ほどの年齢であり、肉体的にはバリバリに最盛期である。そのため、テイオーの期待通りの能力はまだ発揮できると膨れる。親しい者の前では『生徒会長としてのシンボリルドルフ』を演ずる必要がないためか、『テイオーが成長するとこうなる』感じだと思われるような茶目っ気がある雰囲気になっている。

 

「あんたの持つ魂の記憶のせいかな、その物言い?」

 

「そうとってくれても構わんよ、ゴールドシップ」

 

ゴールドシップに微笑うルドルフ。先輩達の在籍時は現在のテイオーのような立ち位置にいたのは間違いないだろう。だが、ルドルフは直に学園を去る時が来る年齢になりつつある。テイオーを次期会長に選出したい願望がある。かつて、トウショウボーイが自分を後継者に指名したように。だが、テイオーの前後の世代は豊作で、メジロマックイーンやビワハヤヒデなど、戦績がテイオーと互角を誇るウマ娘が多い。また、凱旋門賞でエルコンドルパサーを下した仏のウマ娘を更に倒したスペシャルウィークもいる。自分の代は後継者候補が多いのである。

 

 

「私は直前の世代がマルゼンスキー以外、世の中に『不作』と言われたから、トウショウボーイ先輩は伸びしろがあり、自分の後を継げると見込んだ私を後継者に指名した。私の世代では、私が飛び抜けて優秀だったが、そこそこ優秀な平均に戻ったからな。だから、お前たちは恵まれているんだ。多くが自分の背中を追ってくる事の喜びを知っているからな……。私にはいなかったからな…。」

 

 

ルドルフは皇帝とさえ謳われ、常に絶対的存在である事を要求されてきたが、そのために真の意味で『切磋琢磨できる』相手があまりおらず、幼馴染のシリウスシンボリとも実力差が生じ、いつしか疎遠になってしまった感があった。故に、かつての自分の生き写しと思えたトウカイテイオーを妹のように感じ、目をかけ、事実上は自分の妹のように扱った。(別世界で『息子』だった事を知ったため、これ以後は擬似親子のような関係に発展していく)。どこか寂しそうなのは、トウショウボーイらに代わる絶対的存在となる事を義務付けられてきた故の寂しさによるものであろう。

 

「あんた……」

 

「この気持ちは何度も勝利した経験がある者にしかわかるまいよ、ゴールドシップ」

 

「なんか……しみったれた話になっちまったな」

 

「私にも、テイオーのような頃はあった……。求められた役目を演ずるというのは疲れるものだ」

 

ルドルフはトウショウボーイらがトレセン学園に在籍していた時期の新人時代においては、現在のテイオーのような振る舞いであった事を明かす。今の皇帝と讃えられるまでの堂々たる振る舞いになったのは、生徒会長の座とスターの座を受け継いだ頃からで、素の振る舞いではない事も明かす。

 

「テイオー…。そんな目で見てやるなよ。会長が恥ずかしさで悶死しちまうだろ」

 

「言えてるね♪」

 

「だって、だってぇ~!!」

 

ゴールドシップとアグネスタキオンは予想外の場面を楽しんでいるようであり、テイオーは尊敬するルドルフも新人時代は自分と似たような事をしていた(その当時の年齢を考えれば当然だが…)事に大興奮なようだった。

 

 

 

 

 

――それから半日後。

 

「いいかい、イベントの打ち上げライブの時はね……」

 

ルドルフが気恥ずかしさの知恵熱でまたも寝込み、ゴールドシップが秘孔の効果が切れて、その場で眠ってしまい、タキオンは実験でこもっているため、黒江からの定時連絡はテイオーが単独で応対していた。ウマ娘達はウイニングライブも行うため、一定水準以上のダンスのキレと歌唱力も求められる。黒江の連絡の『目的』はそれも含まれていた。64Fは部隊の予算を得るため、広報業務にも精を出している。扶桑軍は訓練一辺倒であった古風な航空部隊の少なからずをクーデター後の解散で失っており、クーデター後は『広報業務』も部隊の重要な仕事に位置づけられるに至った。しかし、広報部に一任してきたものを前線部隊にいきなり一部でも担わせるのは酷であり、心労で倒れる士官が続出し、日本連邦で問題になっていた。64Fといえども、それは同じ。偶然に圭子が広報業務の高度なノウハウを有していたために可能だったが、全員がダンスや歌唱などの芸能技能を持つわけでもない(黒江がダンスと歌唱でプロ級だったのは例外中の例外である)ので、黒江は相談を持ちかけた。テイオーはルドルフを超えることを目指していた経緯があるため、持ち前の柔軟性を生かして(ただし、柔軟性がありすぎたために無理な態勢から加速をしてしまう癖があったため、骨格に負荷がかかりすぎ、骨折を繰り返す羽目に陥ったが)のダンス『テイオーステップ』を得意とする。

 

「ボクに任せてよ~!あーや達が帰ってきたらさ、このトウカイテイオーがばっちり仕込んであげるよ!」

 

「そりゃ助かる!それと友人からの打診なんだが」

 

「何?」

 

「お前、プリキュアの主題歌をレコーディングしてみないか?」

 

「……へ?」

 

さすがのテイオーもこの一言に一瞬固まる。とは言え、元々、トゥインクル・シリーズなどに出場するウマ娘は他の世界におけるアイドル歌手のような役割も担っていたため、その場の返事は保留にしたものの、『ウマ娘という存在を知ってもらいたい』というルドルフの後押しもあり、トウカイテイオーは後日、『トロピカ~ジュ!プリキュア』の主題歌歌唱を担当する(スネ夫の手引き)こととなる。ちょうどその頃、出立のために執事が用意したハイヤーに乗ろうとしたメジロマックイーンのもとに、どこからか話を聞いたか、あるウマ娘が姿を見せていた。

 

 

 

――メジロ家――

 

「マックイーン!!」

 

ハイヤーに乗ろうとしたメジロマックイーンだが、思いも寄らない訪問者に目を丸くする。

 

 

「た……タイシン先輩!?」

 

ナリタタイシンであった。『BNW』の一角とされる強豪ウマ娘とされるが、ここのところは怪我と病気で不本意なレースが続き、成績面で精彩を欠くため、大衆からの人気が下降気味という。

 

「アタシを……連れて行ってくれ!頼む!」

 

「えぇ!?」

 

「あんたとテイオーの体の事……聞いたんだ……!アタシ……アタシの体が生まれつき弱いのは知ってるだろ!?」

 

マックイーンに詰め寄るナリタタイシン。自分の体が元々は病弱であった事、ビワハヤヒデ、ナリタブライアン姉妹の圧倒的な力を知る身であったため、コンプレックスを強く抱いていた。ひょんな事から、テイオーとマックイーンの肉体の治癒の秘密とその秘密を死守するためのシンジケートの存在を『BNW』の三人で最初に知ってしまったらしい。ナリタタイシンはジャケットにジーンズ。かいつまんで言えばラフな服装で、勝負服でないにしろ、それにかなり近いイメージの『80年代から2000年代初め頃までの時期にいた』ストリートファッションにかぶれている若者的な雰囲気が出でおり、それが良く似合っていた。自身が病弱であることで『自分の走りがファンを裏切る』事に強く恐怖を抱いているようで、縁もゆかりもない後輩であるメジロマックイーンに頭を下げるなど、かなり必死であった。

 

「話は中で聞きます。乗ってください」

 

「……恩に着るよ…!」

 

パァッと表情が明るくなるタイシン。マックイーンはその心中を察したようだ。こうして、メジロマックイーンは黒江とのび太から地図と連絡先を受け取っていた場所(時空管理局の現地調査部が借りているマンション)にハイヤーを向かわせた。ナリタタイシンは自身の病弱さが今後の自分自身の運命を暗転させるであろう事を悟ってしまい、友人のウイニングチケットやビワハヤヒデにも相談できぬ日々を過ごしていた。(実際、ナリタタイシンは史実でも精彩を欠く展開が続いた後、骨折と下痢を繰り返した挙句に屈腱炎で競技生活にとどめを刺された)その最悪の未来を変える唯一無二の機会かもしれないとし、マックイーンの出立を聞きつけ、駆けつけたわけだ。マックイーンも、タイシンのただ事ではない真剣な表情に何かを察したのか、ハイヤーに同乗させた。

 

「すまない……アタシの勝手な……。これはハヤヒデやチケットにも言えないことなんだ……」

 

マックイーンに侘びるタイシン。ツンデレウマ娘の代表格の一人の彼女だが、この時はマックイーンに弱さを見せていた。その理由を車内で語る。

 

「夢……っていうには、鮮明過ぎるんだ。レース中にどんどん抜かれていって……足も言うことを聞かなくなって……ハヤヒデやチケットがどんどん遠くなって……。置いていないでって叫ぶところで目が覚めるんだ……!そんなのがここのところ毎日……!アタシは思ったんだ。アタシの足はここ二年以内に使い物にならなくなるんじゃ……って。そんな気がして……」

 

「タイシン先輩……」

 

「そんなの嫌だ!アタシはあいつらともっと走りたい!!なのに……夢がどんどん鮮明に……。どうすればいいんだよぉ……。教えてくれぇ……マックイーン……!」

 

ナリタタイシンの証言から、競走馬としての悔しい記憶が何らかのきっかけで目覚めてしまい、その記憶と感情が『悪夢』という形で表れているのでは?とメジロマックイーンは推測した。タイシンは悪夢に苛まれ、その悪夢にひどく怯えてしまっていた。縁もゆかりもないはずの自分にすがるほどに。マックイーン自身が遭遇した『選手生命に関わる重大な故障』が近いうちにタイシンの身にも起こるという暗示なのだと、マックイーンは悟る。

 

「……大丈夫ですわ、先輩。その悪夢は振り払えます。微力ながら、このメジロマックイーンが協力させて頂きますわ」

 

「すまない……」

 

ひどく怯え、意気消沈するナリタタイシン。フードをかぶって、窓の外から顔が見えないようにしていたが……。

 

「あれは……メジロ家のハイヤー……。どこかへ出かけるのか……ん?後部座席に乗ってる奴のあの服装……?」

 

これまた、メジロ家の前を偶然に通りがかった『トレセン学園生徒会書記』の役職にあり、自身もトレセン学園屈指の実力者であるナリタブライアンは持ち前の高い視力で、おぼろげながらもハイヤーの後部座席に乗っている内の一人がナリタタイシンらしいことに気づいた。服装だけでそれと気づくあたり、長年の付き合いなのが分かる。

 

「まさか、タイシン…!?あいつ、いったいどこへ…!……クソッ!!」

 

ナリタブライアンは朝練を放棄し、ハイヤーをこっそりと追うことにした。偶然が重なり、事態がかなりややこしくなる事が確定した瞬間であった。

 

 

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