――扶桑皇国は一気にジェット機の時代を迎えたわけだが、数多の死産に終わった機体の犠牲の果てに成し得たものである。零戦は基礎設計が1940年のものであり、早期に陳腐化してしまったため、雷電、紫電改、烈風、疾風、キ100が相次いで生産された。しかし、それらはダイ・アナザー・デイやM動乱で性能限界が明らかになり、さらなる後継機が求められていた。その世代こそが『悲運の世代』であった。扶桑はダイ・アナザー・デイ後半当時に試作・あるいは生産開始段階に到達していた航空機が多く存在した。『閃電』、『震電』、『橘花』/『火龍』と言った、史実でも試作されていた機体の他にも、He162のライセンス生産型『焔電』、Ho229のライセンス生産型『豪雷』、パルスジェット機『梅花』、ロケット戦闘機『秋水』などが開発完了、もしくは完了間近の段階にあった。橘花と火龍はテスト部隊まで編成済みであったが、日本は『機種整理』の名目で採用を取りやめ、F-86シリーズへの統一を強引に進めた。それが横須賀航空隊の反発を招き、機材の焼却事件を引き起こした。横須賀航空隊のテスト部門はこの事件の咎で解体され、人員の多くがアリューシャン諸島に左遷された。この事件の影響で、震電は『扶桑のエンジニアを満足させるための政治的な道具』として使われ、命脈をどうにか後世に繋いでいく。閃電は後に残骸が修復され、幾分かの設計変更の後にジェット化されるが、『サーブ21』と大差ない性能しか得られなかったがために制式採用の再取得は成らなかった――
――遠征中の64F基地――
「こいつらは?」
「期待されて開発が進んでたんだけど、より高性能な機体が出てきたり、扶桑の在来技術と工業力じゃ『軍用機』としての使用はできないってされた『水子』よ」
橘花と火龍の残存機を始めとした『試作機の生き残り』は64戦隊の管理下にある軍事博物館に収蔵され、展示されていた。F-86に統一される過程で犠牲になった悲運の機体たち。震電のように、ジェット化で起死回生が成った機体は別枠である。逆説的に言えば、F-86が如何に傑作機であったかの証明である。64Fは更に次の世代の機体を使用しているが、前線の大半の部隊はF-86系に慣熟する途中の段階にある。その質の差は埋めがたいものだが、レシプロ機から超音速機にいきなり機種変更は無理なのだ。
「我々から見れば、充分に高性能に思えるんだがな」
「性能水準が超音速に飛躍しちゃった以上はね。だから、事件起こした横須賀航空隊の連中は左遷食らって、アリューシャンで燻ってるわ。本土防空の尊い犠牲になれって感じで。奴らもそれで、自分のした事の意味がわかったみたいね」
「それで、お前たちは一部隊で遠征か」
「そのためもあって、許されたようなものよ。うちの陣容は。質で量を超えるために。各世代の最強を集めたって奴ね」
坂本Bからすれば信じられないが、ウィッチの世代交代速度が政治的事情で緩められたためと、ウィッチとしての仕事をするだけではいかなくなったため、戦闘機や人型ロボットでの出撃も多い。また、プリキュア達は普通に陸戦ウィッチ以上の火力と防御、空戦ウィッチの機動力を兼ね備えている。それにコンプレックスを抱くB世界のウィッチは多い。さらに言えば、扶桑の各世代最強が集った結果、カールスラント空軍を超えた質を持つに至った。というのは嬉しくもあり、カールスラントが血を流して得た『結果』を後発の扶桑が追い抜いたことに罪悪感を強く感じる。
「いいのか?カールスラントを簡単に追い抜いて」
「そんなこと言ったら、飛行機や蒸気機関車を始めて造った~云々になるわよ」
「それはそうだが……」
「カールスラントが世界一の時代は終わった。次はリベリオンだろうと言われてたけど、リベリオンは内戦に入った。それで、うちらが代わりにのし上がったわけ。基地に残ってる子供達は今、ダンスと歌のレッスン中よ」
「ダンスと歌だと?」
「広報任務の一環なのよ。広報部が宛にならないことに怒った陛下の勅が下って、広報任務に現場の人員も直接的に関わることになったの。だから、歌と踊りは必須になっちゃって。」
智子は比較的に下手なので苦労しているが、黒江と圭子はプロ級に上手いため、その分野では下手なプリキュアよりも目立っている。問題はウィッチ世界では、『21世紀人に受ける音楽』を作ることが不可能な点だ。1940年代の音楽センスでは、ロックやホップ、ディスコミュージックは作れない。それこそ、『チンパンジーやレッサーパンダに『任○堂のSwitchを遊ばせる』くらいの難易度であると言われている。そんな中、ウマ娘達との接触は天佑とされ、黒江はのび太を窓口にする形で『ウマ娘競走協会』、『中央トレセン学園』と交渉し、楽曲の使用許可を遠征の最中に取得していた。抜け目のないことだが、ウマ娘達にも思惑があった。学園卒業とトゥインクル・レースからの引退後のセカンドキャリアの醸成が困難である事がマルゼンスキー世代の苦難で浮き彫りになったため、ウマ娘競走協会はシンザン、ハイセイコー、TTGという三世代のウマ娘たちを理事に迎え入れ、セカンドキャリア形成に尽力させていたが、ハードバージやプレストウコウの『悲劇』が尾を引いており、ウマ娘界隈へ世間的に厳しい目が向けられていた。また、シンボリルドルフを通して推進させた『オグリキャップの中央への引き抜き』への地方からの批判。それがルドルフ自身の心に影を落としていた――
――新・野比家――
「お前の後輩から報告は受けておる。オグリキャップが現役の時代、笠松から中央に引き抜いたことを今でも気に病んでいる。そうだな?」
「うん…。協会から言われてさ。私が悪いんじゃないもーん!」
シンボリルドルフは自分の新人時代に生徒会長を務めていた『トウショウボーイ』との会話では、現在におけるトウカイテイオーと同じような口調になる。エアグルーヴが見たら、恍惚の表情で卒倒しそうなほどに、普段とはかけ離れている姿だ。四字熟語を多用するわけでもなく、トウカイテイオーと同じように、幼さすら感じさせる。恐らくはこれがシンボリルドルフの素であり、『前世』での『子』であるトウカイテイオーとの不思議な縁なのだろう。
「協会はシンザンさんとハイセイコーさんに抑えてもらう。お前はそちらでトレーニングを再会しておけ。かの方に処置も依頼済みだ。」
「か、かいちょー、それって……!」
「うむ。シンザンさんからの命令だ。上位リーグを正式化する準備が整いつつある。お前はその上位リーグで現役に戻れ。オグリキャップとタマモクロス、マルゼンスキーにも通達済みだ」
トウショウボーイからの一つの命令。オグリキャップ、タマモクロス、マルゼンスキー、そして自分に声をかけた事を明らかにした思惑は『ドリーム・シリーズ』を正式なレースとして定着させ、プレストウコウやハードバージの遭遇した『悲劇』を起こさせないようにする。ハイセイコーの更に先代の生徒会長であった『シンザン』がレースのレギュラーシリーズ化を提案し、ハイセイコーが支持している。だが、年齢的にシンボリルドルフ、オグリキャップ、タマモクロス、マルゼンスキーは既に盛りを過ぎており、全盛期の走りはできない。トウカイテイオーとメジロマックイーンを救った『処置』の存在を知ったシンザンは上級職にある自らの権限でハイセイコーらを動かした。トウショウボーイは更にその使いっぱしりであった。
「私達に全盛期の力を取り戻せってことなの、かいちょー…?」
「それがシンザンさんの……いや、プレストウコウやハードバージの悲劇を鑑みての世論の選択だ、ルドルフ。……戻ってこい」
「…わかった。処置の前に、全盛期の八割くらいまでは足を『戻しておく』よ」
「頼むぞ」
ルドルフはトウショウボーイとの電話を終える。デスクワークによるなまりもあり、全盛期の五割強ほどに脚力が衰えていた。それを全盛期に近い状態にまで戻すことを決意した。元の世界で話を聞いただろう、マルゼンスキーも同じ思いだろう。世間になんと言われようと、地方への贖罪の機会を得た以上は現役時代の異名に恥じない走りを取り戻す。そのためには、現状は特訓あるのみだ。テイオーとゴルシが寝ている間に、夜明けまでに間のある街へジャージ姿で繰り出した。軽いロードワークなので、旧・野比家のあった敷地を含む公園まで走る。
――ウマ娘は並の実力の者による軽い流しでの走行でも、ヒトの『二級レベルのアスリート』以上の速度が出る。ただし、種族の先祖が馬である事に由来すると思われるヒト比の長期的な『スタミナ不足』が問題であり、フルマラソン向けの体力は、あのゴールドシップであろうとも持っていない。それがウマ娘の種族的な弱点であった。ただし、瞬間的最高速とパワーは人の比ではない。(人外魔境の格闘家除き)そのため、並の人間には『スクーターが走った』ように感じるほどの風が奔る。シンボリルドルフが行った先の公園には……――
「何……!?バカな、何故、お前たちが……」
シンボリルドルフは驚きのあまりに、途中で言葉を失う。公園には先客がいたからだ。マルゼンスキー、オグリキャップ、タマモクロスの三人がいたのだ。
「ハァ~イ、ルドルフちゃん~。グリーン先輩からの命令で、この子達を連れてきたわよ~」
「何故、私達まで呼ばれたのかわからんが……」
「ウチもや。オグリンはわかるけど、ウチまで呼ぶ必要あったんかいな?」
「会長はグラス先輩とグルだったか…」
一期上の先輩である『TTG』の命令で、マルゼンスキーはオグリとタマモを連れてきたらしい。ちなみに、オグリキャップとタマモクロスの立場を継いだ形になるのが、メジロマックイーンである。オグリキャップとタマモクロスはスペシャルウィークやトウカイテイオーがトレセン学園に入る頃には、既にトゥインクル・シリーズのターフから去っている。更に言えば、タマモクロスは現役時代に無茶を重ねた結果、脚が半ば壊れてしまっているため、往時の走りを自力で再現するのは不可能である。そのため、タマモのみは先行して『処置』を受けている。(処置そのものは治療用のナノマシンの注入で済む)
「ウチは治療を一足先に受けたで。うちは元々、体が弱かったんや。オグリンとの最後のレースの時は脚が壊れかけてたから、悔いがあったんや。今回の事で全盛期の力が戻った以上は暴れてやるで~」
タマモクロスは自身に全盛期のポテンシャルが戻ったことにご満悦のようだ。背丈は一同で最も低く、小学生に間違えられるが、オグリキャップと同期なので、年齢は高校生以上である。
「体が生まれ変わったように軽くなったとタマはいうのだが、本当なのか?」
「走力が減退していたテイオーが全盛期以上にまで速度を戻した以上は信じるしかなかろう。しかし、燃え尽きたはずの我々をレースに正式に戻すとは……」
「プレストウコウやハードバージの事で協会は叩かれてるのよ。ハードバージは実家で父親に酷使された挙句に…。プレストウコウも全盛期の私と比べられるのに嫌気が差して、レースとの縁を切ったし…」
同期の多くが不幸な経緯を辿ったせいか、マルゼンスキーは世代最強の看板を下ろせぬままに過ごし、今日まで不完全燃焼の日々であった。そのため、全盛期の力を取り戻し、先輩後輩と戦える千載一遇の好機を逃したくはなかった。処置を受けていなくとも、マルゼンスキーは全盛期のルドルフに追従できる速度を維持しているが、全盛期の力であれば、時代最強の逃げ足と評されるサイレンススズカすら抜ける自信があった。
「私はね。今回のことを千載一遇の好機と見てるのよ。後輩達に全盛期の自分を見せられるし、現役時代には実現しなかった先輩たちとの対決ができる。それに…散っていった同期達の無念を晴らせるって」
「マルゼン……」
ルドルフはマルゼンスキーが現役時代後期から抱えていた本心を垣間見た。同期達の殆どがレースと縁を切っていき、同世代のウマ娘で中央に残ったのは自分のみとなれば、その思いは特別だろう。
「帰ったら、テイオーちゃんを驚かせちゃうわね」
「君等が来たらな。周りは我々がまさか、『歴代の名競走馬』の生まれ変わりとは思うまい」
「言えてるわね。サンデーサイレンスって言ったわね?オグリちゃんやマックイーンちゃんがターフを去った後に、日本を支配したという血統を持ち込んだ存在は」
「ああ。ゴールドシップやスペシャルウィーク、サイレンススズカもその子孫だと聞いている」
彼女らもサンデーサイレンスの名声は聞いていたり、調べたようである。自分たち亡き後に日本競馬界を支配している血統であり、21世紀も20年を数える頃には『一流馬なら、どこかでその血統を継いでいる』とまで讃えられていると。それ以前の時代の名馬の血統の多くが何かかしらの要因で絶えてしまった時代、サンデーサイレンスの血統を継ぐ馬こそが一流馬になるに必須条件とまで言われている。
「あの子達が…。これから戦える機会があるのかしら」
「トゥインクル・シリーズは三年おきに世代交代が起こる。直に戦えるさ。テイオーもあと一年半ほどで引退する時期を迎える。サンデーサイレンスか……。名馬だというが……」
テイオーもトゥインクル・シリーズから引退するまでに、それほどの時間は残されていない。テイオーとその前後の世代は『黄金世代』とされるまでに人材豊富だが、その世代がターフを去る日もそう遠くはない。それを実感しているルドルフの目はどこか寂しそうであった。同時に、スペシャルウィークやサイレンススズカ、ゴールドシップが1990年代以降の日本競馬を完全に支配しているとさえ言われるほどの血統の持ち主である事には、シンボリルドルフはものすごく複雑な想いを抱くのだった。
――こちらは遠征軍。航空戦力を蹴散らすべく、黒江は部下たちを率いて、F-20改(ダイ・アナザー・デイで使用したレプリカ機が制式採用されたもの)を駆って出撃していた。F-20は扶桑が独自に採用した機種の一つである。史実では失敗作同然に扱われていたが、黒江やシャーリーら『激戦を生き抜いたエースパイロット』が激戦を戦い抜いてみせたことで評価は一変した。F-16系が素材技術取速度の都合もあり、1940年代中は製造に至っていないこと、大戦前期からのエースパイロットの多くがF-20を愛好しだしたこともあり、同機は本格生産された。21世紀の最新兵器は第二次世界大戦型の戦場では、搭載弾薬量の少なさで不評を被るものが航空兵器では顕著で、冷戦末期までの航空機のほうが前線で好評という現象が起こっていた――
「統括官、自ら出撃なされなくとも」
「うちの部隊の性質上、撃墜数を稼がんと、政治屋に冷や飯食いされんのよ。それに、伝統だしな、指揮官先頭は」
黒江は空将なので、本来は後方で指揮に専念していていいはずだが、後方に退いたら、『エリート』ということで、いじめられた過去があるためか、前線で戦うことを自然にするようになっている。(黒江の一件の後は若手にテストをさせていたが、1949年には、64Fにその役目も負わせていた)
「うちに背負わせすぎだよ、上は。テスト部隊の役目までさせるとはな。この戦争の間だけという約束だが、俺を航空審査部が追い出した事が今更ながら問題にされて、お上の手で組織が引導を渡されるとは思わんだ」
「あれは予想外だったので?」
「ああ。前線部隊でテストをするなんざ、ガンダムの時代でも滅多にないぜ。マルセイユの一件もあるから、ケイは嫌がってたが、お上が動いた結果じゃ、つべこべと文句は言えんよ」
「それでどうなったのです?」
「空自の組織の傘下としての組織を戦後に起ち上げることで決議された。前線部隊に何もかも背負わせるのは問題だし、これからはエレクトロニクスの時代を迎えるからな。うちでしか出来ないからと、負担をかけるのはやめてもらいたいぜ…。整備班を殺す気かよ」
1940年代の終りになると、64Fはありとあらゆる面倒事を押し付けられるに至っていた。新装備のテストまでも押し付けられるため、整備班が明らかに過労であり、パイロット自らが整備を行うことで負担を軽くする方策が取られるに至った。
「財務省は経費削減を錦の御旗にしてますからね。統括官のことや、エースパイロットを遊ばせている事を大義名分にしたんでしょう。それと、役目が似た部門が空・海であるのも気に触ったんでしょう」
「やれやれ。海軍機まで面倒見なくきゃならんのだぞ?F-14の単座型までも使うことになるとはな。ノースロップ・グラマンも腰抜かしとるだろう」
F-14を単座型として運用し、しかも制空戦闘機として用いることを選ぶ扶桑海軍。技術的には可能であるが、邀撃機として設計された同機を制空戦闘機として運用する事は、ノースロップ・グラマンとしても未知数の分野である。一応は配備はされたものの、まだ使用に踏み切っていないのは、『本来と逆の手順で生み出された派生モデル』だからだ。
「漫画のように、座席取り外して単座にする真似はできんしな。だから、単座型に再設計したんだが…。今度、使ってみるしかあるまい」
「統括官御自ら?」
「元はテストパイロットだからな。米軍にいる知り合いから、向こうでトム猫が退役する前に聞いといた事が役に立ちそうだ」
黒江はトムキャットの造形そのものは好きだが(後年の可変戦闘機のデザインの元になったのもあり)、単座での運用は例がないこともあって、慎重になっていた。ノースロップ・グラマンも『技術的には可能であるが、やってみないとわからない』と解答したからだろう。
「その前に、こいつでロシア機を蹴散らしてやろう。東ドイツから流れた機体があるなら、ミグ23か29辺りが出てくるだろうさ。この世界の連中にどう言い訳するんだが」
「しかし、ミグ21という可能性も」
「それもあるな。だが、あんな骨董品でこのF-20に立ち向かう連中がいるなら、見上げた度胸だと褒めたいぜ」
黒江達はF-20を更に改修したタイプだが、敵方は戦中のレシプロ機を使いつつも、ジェット機を持ち出してくるだろう。戦後のドイツの歴史を考えれば、旧東独機というのが濃厚である。黒江は敵機種の見当がつかないためか、部下を鼓舞するような物言いをしている。
「我々も似たようなものですな」
「言えてら」
黒江達もF-20という『米軍が正式採用しなかった冷戦期の試作機』のレプリカを動かしているので、他人のことは言えない。とは言え、性能は充分に第一線級だ。
「直にレーダーが捕捉するだろうが、目視での索敵も怠るな。ダイ・アナザー・デイ…いや、M動乱からのセオリーだ」
「了解」
この頃になると、航空自衛隊にも『ウィッチ世界で実戦を積んだパイロット』が多く存在するようになり、レーダー索敵だけでなく、目視での索敵も怠らないというのが通例になりつつあった。敵味方ともにミノフスキー粒子で索敵妨害をしあうのがお約束になったからで、M動乱ではそれが自衛官が戦場の空で生き残るコツになった。(M動乱にも、黒江の僚機という形で、少数の航空自衛官が参加した)そして、目標の座標に到達したその時。
「統括官、敵は4機。機種は……ミグ21ですね」
「フィッシュベッドか…。君の予測が当たったな」
「ありがとうございます」
「さて、ミスティ1より各機へ。フィッシュベッドが相手だ。揉んでやれ」
「了解」
『交戦開始(エンゲージ)!』
眼下に市街地があるのもあり、先制のミサイル攻撃はせず、古式ゆかしいドッグファイトを行い始める両者。双方が街の外の世界への方便である『映画撮影』を装う必要があるからだが、M粒子でミサイルの命中率は下がるという事情も大きい。
――こうして、量産されずじまいの第四世代機と第二世代機のベストセラー機の対決が始まる。映画撮影を装うための工作を敵味方ともに行っているのも変な話だが、組織も変に『自分たちが時代錯誤の存在だと認識している』故か、そこだけは一致して協力する。デストロン時代に、結城丈二に律儀に宛名と住所明記の年賀状を送りつける(しかも妙に達筆)という行為を働いた事があるように、妙に世俗じみた面もあるのがショッカーからの伝統なのだろう――