ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前々回の続きです。


第二百三十九話「始まるウマ娘たちの生活」

――かくして、ススキヶ原の商店街でウマ娘一同は合流した。名だたるG1馬の転生体である彼女ら。異世界と交わったことで、競走馬としての記憶が呼び覚まされた者もいる。そのため、史実の因果を超えたいと願う願いを持った者、史実の実績を超えることを目標として見出した者、全盛期の実力を取り戻すことを義務づけられ、上位リーグを成功させることを先達から言いつけられた者。多種多様の思いが交錯する。――

 

「み、皆さん……どうしてこちらに?」

 

「すまない、マックイーン。皆、別々の理由で来たのだが……」

 

困惑中のシンボリルドルフ。メンバーが一挙に増えてしまったわけだから、当然である。しかも、世代最強を謳われたような実力を誇っていたG1ウマ娘達ばかり。ある意味ではオールスターゲームのような豪華さである。

 

「仕方あるまい。皆、ついてきてくれ。……オグリ、頼むから、大食いは控えてくれよ?」

 

「待ってくれ、ルドルフ!!そ、そ、そんな殺生な~!」

 

「……お前の胃袋は普通のウマ娘の数倍の容量を誇るんだ。普通の人間の一週間分を一回で食らい尽くすから、ウマ娘のいない世界の冷蔵庫なら、一回ですっからかんにしかねん……。この世界の業務用すら一回ですっからかんにするお前だ。家庭用などはひとたまりもあるまいよ。」

 

「おぉぉ……あぁぁぁぁぁあ…。お、鬼~!!」

 

この世の終わりと言わんばかりに絶望するオグリキャップ。シンボリルドルフは呆れ混じりに、オグリキャップに忠告する。オグリキャップの胃は歴代のウマ娘でも最強無比を誇るが、普通の家庭用冷蔵庫を一回ですっからかんにしかねない。他のメンバーも全員が頷き、オグリキャップは涙目になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

――ウマ娘達がいる商店街の電気屋に展示されているテレビに映るニュースでは、ウィッチ世界では、兵器の世代交代の速度が加速した影響で生産ラインの刷新が追いつかないと、当局の人間がインタビューで愚痴をこぼす様子が映っていた。どの兵器も更新速度が速まったため、備蓄していた弾薬が使えないとも。戦車でさえ、四式中戦車改及び五式中戦車改は旧式化を理由に減産傾向になり、74式と平行して、10式戦車の生産ラインの構築準備が下令されるなど、ワープ進化ぶりである。ダイ・アナザー・デイから困っているのは、備蓄していた弾薬の処理である。四式中戦車や五式中戦車は本来、75ミリ砲搭載であったので、それ用の砲弾が備蓄されていたのだが、日本側が独自に改良して、90ミリ砲を積んでしまったため、戦車そのものが生産できても、砲弾の生産が追いつかない事態に陥った。そして、生産体制が整う頃には旧式化する。そんな事態が続発した。旧式化した兵器は直ちに処分する日本側の方針は三式中戦車すら配備されていない他戦線の要望で覆ったが、四式中戦車改はそれまでの扶桑戦車より格段に高度化されていたため、要員教育に手間取る始末であった。最前線では『ベトロニクス』の概念が完成した時代の戦車とエリート部隊が血で血を洗う戦闘を繰り返しているので、四式改と五式改はもはや旧式扱いであるが、他戦線にとっては念願の国産高性能戦車である。同時に、戦車に求められるモノが歩兵支援から『対戦車戦闘』に移り変わった事を示す資料であるため、退役した車両は扶桑の戦車学校の教材にされたり、『貴重な旧軍式の高性能戦車』ということで日本側に買い取られ、軍事博物館に飾られたり、陸自の基地開放日の目玉にされたりした。治安の極度の悪化ぶりに、ススキヶ原では自警団結成の動きがあるが、戦車を購入しようかという話まである。それほどに治安悪化具合は深刻であり、学園都市由来の能力を悪用してのひったくりや強盗は深刻だった。折しも、その現場にウマ娘達は居合わせた――

 

 

「強盗だーーー!」

 

「なんつーベタな強盗やな……あれなら、ケーサツが……って、弱っ!?」

 

ウマ娘たちから見ても、明らかに弱いのが見え見えのパトロール中だったらしき警官が気絶させられる。

 

「こんなのんびりした郊外にいる警官なんて、弱いに決まってんしょーが!」

 

ツッコミを入れるナリタタイシン。

 

「とにかく追うで、オグリ、ブライアン、タイシン!」

 

「つって、なんでアタシが入ってんの!?」

 

「先輩の言うことは聞くもんやで、タイシン。全盛期のウチの走りを間近で見せたるで」

 

ちょうど電気屋の隣の銀行を襲った強盗を捕まえるつもりのタマモクロス。全盛期には『白い稲妻』の異名を誇り、全盛期に入る頃のオグリへの勝利経験も持つ。ただし、家族の生活費と最愛の母の医療費を稼ぐために脚を酷使したのが祟り、割と早い時期に全盛期の走りを失った。オグリが全盛期を迎える頃の対決の際には『キレを失っていた』とされ、周囲に見放された経験もあり、自暴自棄になった時期がある。オグリもキャリア晩期は全盛期が終わったのを示すかのように、成績が落ち込んだ時期があるので、苦楽を共にした戦友と言える。

 

「いくで~!」

 

処置で全盛期の走りを取り戻したタマモクロスの瞬発力は現役で走っているナリタタイシン、ナリタブライアンを瞠目させるほどで、オグリが『全盛期のタマに戻った』と微笑うほどであった。いずれもG1レースの覇者になった経験持ちのウマ娘であるので、その平均速度はレースに出走するウマ娘の平均速度記録を見ても、最高レベルに速かった。そのため、強盗が逃走に使ったスクーター程度の乗り物では彼女達を振り切れるわけはなかった。

 

「嘘だろ、時速50キロだぞ!?」

 

強盗の一人がスクーターの速度計を凝視する。50キロは人類最速のアスリートの全力疾走より早い速度。普通なら振り切って然るべきであるが。

 

「コラァ!!待たんかいーーー!!」

 

タマモクロスの全盛期における速度は同世代の最速とされる。ウマ娘の平均速度は時速56~60キロ前後。オグリ、タマモ、ブライアンなどの世代最強レベルが最盛期に記録する速度はそれを更に上回る。タイシンも皐月賞の優勝経験があるが、タマモの絶頂期の走りの凄まじさに息を呑む。

 

「嘘、ついていくので精一杯……!これがあの人の本当の実力…!?」

 

「タマモ先輩は『白い稲妻』と謳われた……。オグリ先輩にも勝った経験があると聞いていたが……私達は現役だぞ……!?」

 

ナリタブライアンもこのコメントである。ナリタブライアンは史実では三冠達成後は絶頂期のキレを病気で失っていたが、ウマ娘としての肉体はちょうど全盛期にあった。そのため、絶頂期の走りを取り戻したタマモの速さに驚いている。喜んでいるのは同期かつ、戦友のオグリだけである。

 

「あれがタマの本気だ。脚をダメにしてからは見られなかったが……、久しぶりだな」

 

「久しぶりって……?」

 

「そうか、ナリタタイシン、お前は知らんか。タマは家族の生活費と、病床にあった母親の医療費を稼ぐために、脚を酷使していてな…。だが、その無茶が祟り、私が中央で全盛期を迎えた頃には……既に潰れかけていたんだ」

 

オグリはその時のタマモの自暴自棄さを見ていた。全盛期の速力を出せなくなったタイミングで最愛の母親が病没してしまったり、兄弟姉妹はまだ子供であるという事実は、タマモクロスを打ちのめし、自暴自棄に陥っていた。オグリがちょうど中央で全盛期を迎え始めるのと入れ違いであった。親友であるオグリに見せた慟哭。

 

――ウチはもう終わりなん……!?おかーちゃんもいなくなって……。妹や弟達はまだ子供やのに……ウチが稼がんとあかんのに……脚が前みたいに動かへんのや!!どうすればいいんや、オグリぃぃン~……!――

 

タマモクロスはオグリが全盛期の時期になると、脚の故障と酷使などで、既に限界に達しており、早期に引退せざるを得なかった。オグリやメジロアルダン(マックイーンの従姉妹で、マックイーンも慕っている温和な従姉)、友人のスーパークリークがタマモクロスの実家を援助していたが、家族を自分で養えないショックもあり、激しい自暴自棄に陥っていた。だが、オグリもキャリアの晩年期に成績が落ち込んでしまい、自分がオグリを励ます側に立ったことで立ち直った。現在の振る舞いは絶望を味わった後に立ち直った後の姿なのだ。

 

 

「だから、こうして、昔のように走れるタマを見るのは久しぶりなんだ。思い出すよ、新人時代を」

 

懐かしそうなオグリキャップ。オグリキャップはルドルフの引退直後に台頭し、スペシャルウイークやトウカイテイオーが活躍する時期には、既に一線を退いている。そのため、ナリタタイシンやナリタブライアンらは全盛期以前のオグリキャップとタマモクロスを詳しくは知らない世代にあたる。

 

「行くぞ!」

 

オグリキャップも久しぶりに現役時代の感覚を取り戻し始めたらしい。ナリタタイシンとナリタブライアンの二人も驚くほどの加速である。

 

「しかし、どうやって止めるんです!?」

 

「あのスクーターを止める!!」

 

「いったいどうやって!?」

 

「タマ!!」

 

「わかっとるで!」

 

タマモクロスはスクーターに追いつくと、スクーターの後部をガッチリと掴み、強引にストップさせる。

 

「クソ!!振り払うんだ!アクセル全開で引きずり回せ!」

 

「わ、わかった!!」

 

 

強盗犯はパニック状態で正常な判断ができなくなり、スクーターのアクセルを全開にする。

 

「!?」

 

土煙が立ち、スクーターのエンジンがこれでもかと轟音を響かせ、猛烈な勢いで後輪が回転する。しかし……。

 

「おい、何してる!アクセルを吹かせ!」

 

「やってる!なのに、びくともしねぇ!?」

 

タマモクロスに捕まえられているために、まったく前に進めない。タコメーターがレッドゾーンを指すほど、強盗犯はスクーターのアクセルを吹かすが、タイヤの摩擦で土煙が立つだけで、その場で虚しく空回りするだけに終わる。そして、追いついたナリタブライアンとナリタタイシンが強盗を引きずり降ろして、制圧する。

 

「チンピラ風情にしては考えたようだが、私達の前を通ったのが運の尽きだ」

 

護身術も身につけていたナリタブライアンとナリタタイシン。ウマ娘の能力自体はヒトを大きく上回るが、格闘技に関してはヒトと条件は同じなので、個人の資質が左右する。オグリの同期であるヤエノムテキが格闘技をやっている(トレーナーの意向もある)のが知られているが、ナリタブライアンとナリタタイシンはお互いの事情の関係で心得があった。特にナリタタイシンは、彼女の体の弱さを心配した母親が小学生時代に格闘技を習わせていたので、そこらのチンピラ程度は容易に対応できるという。

 

「警察には?」

 

「会長が通報したようだ。直にくるだろう」

 

「でもさ、アタシ達、なんて名乗ればいいのよ」

 

「G1レース馬の転生ですって言えばいいだろう?どの道、耳は誤魔化し効かんし」

 

「然り」

 

「オグリ先輩、ブライアン……。あんた達って人は……。」

 

呆れるナリタタイシンだが、この後にやってきた警察の事情徴収を受けたのだが、強盗を捕まえたのが『1980年代から1990年代初期に活躍したG1馬の名と魂を受け継いだ存在』だと言うことがマスメディアに載り、ウマ娘達は一挙に注目を浴びる事になった。

 

 

 

 

 

 

――シンボリルドルフ、オグリキャップ、トウカイテイオー、メジロマックイーン、タマモクロス、マルゼンスキー、ゴールドシップ、アグネスタキオン、ナリタタイシン、ナリタブライアン。ゴールドシップとアグネスタキオン、マルゼンスキーを除くと、1980年代半ば~1990年代前半までにG1レースを制している経験を持つ馬達、それも世代の上位に君臨していたような強豪揃いである。否応なく注目を浴びたのは言うまでもない。元の世界から持ってきていた勝負服(副会長の一人であるエアグルーヴがルドルフに持っていくように具申していた)で雑誌インタビューに応じることになった。ルドルフとテイオーの『欧州の軍服風の勝負服』というのは物議を醸したが、名と力を表す手っ取り早いデザインが軍服(欧州の軍将校の正装のような)の定型だっただけである。トレセン学園が存在しない世界における正装は何か?それに困ったルドルフの場しのぎ策であったが、結果的には成功であった。特にルドルフとテイオーは競走馬としては『親子』であるので、(当人同士にそういう意識はなくとも)自然と似てしまうものだと納得された。ススキヶ原は皮肉なことに、学園都市に近いことで疫病のワクチン接種は進んでおり、イベント開催規制も緩和され、町内一周マラソンが行われることになり、ウマ娘達は特別招待枠での出場が懇願され、シンボリルドルフは引き受けた。全盛期のスタミナを失っている自覚があった故に、それを取り戻すためには体を慣らす事を始めたかったからで、マラソン大会を利用した形であった――

 

 

 

 

 

 

 

 

――二日後、マラソン大会は地域のローカルTV局『あけぼのTV』の主催で開催され、同局による実況中継も行われた。疫病の最中での開催なので、観戦の自粛などのマイナス要素も大きかったが、ウマ娘達の参戦はある種の目玉として扱われた。G1レースを制した経歴を誇る馬の生まれ変わりである少女達(但し、ゴールドシップは競走馬が存命である)が特別招待で参戦するのはある種の注目を集めた――

 

 

『今年は無観客での開催になりました『ススキヶ原町内一周マラソン大会』。今年は有力選手の出場も無く、市民ランナーのみでの開催になることになりましたが、今年の特別招待枠の選手はある意味、面白いことになりました!』

 

あけぼのTVのアナウンサーは普段は競馬中継の担当なのか、やけに興奮気味に語る。特別招待枠が丸ごと空いていたのをウマ娘達に充てがったわけだが、競走馬として歴史に名を残した名馬達の転生した姿(ゴールドシップは存命だが)ということはスタミナ以外の能力はトップアスリート級かそれ以上であることでもある。

 

「カイチョー、マラソンやれるのー?」

 

「見くびるなよ、テイオー。私は七冠ウマ娘だ。お前に見せてやるとしよう。『皇帝』は健在だと」

 

とは言うものの、実はデスクワークで往年のスタミナは失っているシンボリルドルフ。現役時代に最強無比を誇り、『皇帝』の異名を誇ったはいいが、既に現役を退いて久しいため、往年の能力を出せる自信はない。つまり、可愛い後輩への見栄が実際のところ。また、自分の更に先輩の三羽烏である『TTG』から、テイオーに『オグリキャップの新人時代における失敗』と自分の新人時代における振る舞い方が伝えられたので、テイオーへの威厳が無くなるのを懸念していたからである。また、競走馬としての自身を超える成績を残した『後代の競走馬』である『アーモンドアイ』(牝馬だが)などの存在を知った故に、内心では自信が揺らいでいた。また、オグリキャップが引退する年に『ヤツの全盛期は終わった』と見なされていたはずの引退レースで往年の俊足が蘇ったとしか思えない走りを見せた事もあり、ルドルフは色々な意味で自信が揺らいでいた。自身の衰えを自覚していたことも大きい。だが、テイオーから聞かされた『皇帝の名を持つスーパーロボットの揺るぎない強さ』に憧れを抱くようになっていた。テイオーにハッタリじみたことを言ったのは、マジンカイザーとマジンエンペラーGの二機に肖った験担ぎのようなものだった。また、往年のオグリフィーバーを経た後の時代なため、周りの注目はオグリキャップに集まっていた。中央のエリートであるシンボリルドルフよりも、地方から現れた経歴で『ハイセイコーの再来』と謳われ、競馬界そのものを牽引した実績を誇るオグリキャップのほうが後世の認知度は圧倒的に上であったからだ。

 

「か、カイチョー?」

 

「オグリめ~!!見ていろ!まだまだ、お前には負けんということを教えてやる~!!」

 

テイオーが呆然とするほど、普段の威風堂々とした態度とはかけ離れた、ある意味で『血は争えない』振る舞いと口調を見せるシンボリルドルフ。彼女本来の性格はテイオーと同じく『負けず嫌い』であるのがわかる。

 

「でもさ、これはマラソンだよ?」

 

「最後の数百mが勝負だぞ、テイオー」

 

「う、うん」(珍しー。カイチョーがノリノリだ~)

 

「フッフッフッ、会長さんよ。アタシらも忘れないでくれよ」

 

「君たちも出場するのか?」

 

「会長だけに良い格好はさせませんわ。現役ウマ娘代表で出場することに致しました」

 

ゴールドシップとメジロマックイーンは長距離を走れるスタミナを誇るため、マラソンに出場するようである。こちらも競走馬としては『祖父と孫』(メジロマックイーンの孫がゴールドシップである)にあたる。

 

『特別招待枠選手ですが、シンボリルドルフ、トウカイテイオー、オグリキャップの三名に加え、メジロマックイーンとゴールドシップが出場する模様です!!日本競馬史に燦然と輝く名馬たちの生まれ変わりという彼女達の実力や如何にぃぃぃ!』

 

実況アナウンサーの盛り上がる実況音声が響き渡る。(ただし、ゴールドシップは2021年でも健在である)若干恥ずかしそうな五名のウマ娘。その様子を野比家からネット中継で観戦するマルゼンスキー、アグネスタキオン、タマモクロス、ナリタブライアン、ナリタタイシン。やがて、スタートの号砲が鳴り、出場選手が一斉に走り出す。普段のレースよりかなりの長距離を走るので、ペース配分を考えなくてはならない。シンボリルドルフはかわいいテイオーの前では見栄を張ったものの、実は衰えの自覚がある分、内心はハラハラドキドキものであった。

 

 

 

 

 

 

 

――新・野比家――

 

「私達ウマ娘は基本能力値はヒトを遥かに超えるけど、トップスピードは長時間維持できないってのが種族の宿命なのよ。その点ではヒトのほうが有利ね」

 

「それは言えてるで。オグリンがどこで足を使って、皆を抜くか。見ものやな」

 

「……体が本調子なら、アタシも出たのに」

 

ナリタタイシンは環境の違いにすぐには適応出来なかったのか、大捕物の後に体調を崩していた。その関係で、マラソンには出れなかったわけだ。

 

「昔から体が強い方ではないからな、タイシンは。タキオンに薬を調合させているから、ソファに横になっていろ」

 

「わかったよ……って、タキオンに薬を!?」

 

「早く治したいんだろ?」

 

「ぐぬぬ……」

 

ナリタブライアンは生徒会関連の仕事では猫を被っているが、普段は粗野の一言であるので、タイシンにもぶっきらぼうな態度である。

 

「姉貴が聞いたら、どうせ頭でっかちな事をいうんだろうが、私は肉でどうにかする質だから、どーこーはいわん」

 

「あんた……昔から変わってないわね」

 

「肉は正義だぞ、タイシン」

 

肉好きなので、肉好きなことで鳴らすタイキシャトルと気が合いそうなナリタブライアン。ぶっきらぼうなようだが、公の場ではビワハヤヒデを『姉さん』と呼ぶなどの分別を弁えている。

 

「そう言えば、ブライアンちゃんって……そういうキャラだったかしら?」

 

「素はこんなもん。生徒会じゃ猫を被ってんの。子供の頃はハヤヒデ大好きでさ」

 

「た、タイシン!」

 

「昔のお返し」

 

タイシンはブライアンと縁戚関係らしいのか、元から面識がある様子だが、その姉のビワハヤヒデとの関係はトレセン学園入学後からである。ブライアンは孤高を装う一方、生徒会の仕事はこなし、副会長に任じられる、タイシンを奮起させるのに一役買うなど、姉に似ているところも持っている。タイシン曰く「猫を被っている」とのことだが、本当は姉に甘えたくとも、早期に『自分の素質が姉を含めた周囲を上回る』ことに気づいてしまった故に子供時代は人見知り、成長した現在でも、周囲の好意にどう応えたらいいのかわからない。それがナリタブライアンのぶっきらぼうで、一匹狼な態度の裏に隠された本当の姿である。

 

 

「こいつ、子供時代はビワハヤヒデの後ろにくっついてたって、ハヤヒデが~」

 

「わ~わ~!!た、タイシン!!お前ぇ!」」

 

「ハヤヒデがあんたの子供時代の写真をさ…」

 

「姉貴ぃぃぃぃ~!!」

 

「うふっ。かわいいじゃないの、ブライアンちゃーん」

 

「おもろいで~!もっとやるんや、ナリタタイシン~!」

 

「ふ、二人して!からかわないでくださいよ、マルゼンスキーさん、タマモクロスさん!!」

 

 

 

顔から湯気が出る勢いで赤面し、激しく狼狽するナリタブライアン。それをからかうマルゼンスキー、ナリタタイシン。ナリタタイシンがここまで楽しそうに他人をからかうのも珍しいので、もし、親友のウイニングチケットがいたら、『ダァァイジィィィィィン!!』と感涙に咽ぶだろう。ナリタタイシンの変化を年長者として察し、微笑むマルゼンスキーとタマモクロスであった。

 

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