ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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今回も前半と後半に分かれます。


第二百四十二話「ルドルフの心情、オグリの回想、日本連邦のある手段」

――ウマ娘の内、マラソン大会に参加した五人は否応なしに注目の的であった。艦娘達は基本的に海軍に属するため、顔出しの機会は戦争中は限られてくるが、ウマ娘達はそういう事情と関係がない上、世代が違う、あるいは親子である馬が『同年代』として存在している故、市井のイベントへの参加は大歓迎であった。普段はあけぼのTVの資金力で国内外の有力選手を招待枠で呼び込んでいたマラソン大会だが、疫病でそれがダメになり、無観客開催になった影響もあり、形式的なイベントになると見られていたところに舞い込んだ『かつての名馬の名と魂を受け継ぎし存在』の登場。サラブレッドの身体能力を受け継いだ存在であるので、トップスピードは人間のトップアスリートの比でないと思われるが、長期的な持久力は劣ると思われる。そのところを突こうとする者は多かった。だが、五人のウマ娘はいずれもG1レースで名を馳せた名馬の転生体。前世の事を知ったことで得た教訓は『因果に縛られるのなら、因果を超えるまで』。既に引退して久しい、年長の二人のモチベーションはこれであった――

 

『沿道を通りかかった人達の応援コールはオグリキャップ一色であります!』

 

『仕方ありませんが、ここ数十年の認知度ではオグリキャップとディープインパクト、ハルウララの三大馬ですからな。後は近年のキタサンブラックですか。競馬に詳しくない人がピンとくるのは……後は古い世代のハイセイコーやシンザンでしょうか?シンボリルドルフには同情しますよ。七冠を達成してるというのに、これでは完全にアウェーです」

 

解説者はルドルフがアウェーになっている状況に同情する。中央のエリートより、地方の星を応援したくなるのが、日本人の心情だからで、そのオグリも同情したくなったのか、気まずそうだ。

 

(まさか、ここまでとは……。だが、こういう逆境を跳ね返してこそ、『皇帝』の名に相応しい!!マラソンに勝って、『かいちょー』に報告するぞー!)

 

シンボリルドルフはテイオーにかいちょーと呼ばれているが、彼女自身にとっての『かいちょー』は彼女の先代の生徒会長だったトウショウボーイである。テイオーとよく似た独白であるが、ルドルフが競走馬としては、テイオーの『親』であった事を妙実に表している。

 

 

 

――オグリキャップは地方から打って出て成功したタイプの競走馬であり、全盛期には同世代最強クラスの実力を誇っていたことも後世に知られている。『シンデレラのような成功を収めたものの、本気の実力はタマモクロスに劣っていたのでは?』や『現役晩年期に急速に衰えたのは、病気と取材攻勢のためでは』という声もある。ウマ娘としては『中央での戦友であったタマモクロスが予想だにしない形でターフを去ったことでの精神的ショック、自身の怪我の治りが悪かった事が複合しての不振』であったという。シンボリルドルフも極度の不振ぶりに引退を薦め、オグリキャップもそれを受け入れた。だが、最後の花道となった有馬記念にタマモクロスが観客席に姿を見せたことで全盛期の闘志を取り戻し、タマモクロスに自分の走りが蘇った事を示し、引退の花道とした。現役時はチーム・スピカ(ただし、現・トレーナーの先代のトレーナーの時代)に属していたといい、前体制下での最後のエースであったとの記録がある。つまり、中央での親友にして戦友であったタマモクロスなくして、オグリキャップの栄光はなかったわけだ。ちなみに、オグリキャップ最後の走りを、オグリキャップの同期であり、先に引退済みであった『メジロアルダン』に連れられ、観戦していたウマ娘がいた。オグリキャップとそのトレーナーの引退後の新体制下での『チーム・スピカ』のエースの一角になった『メジロマックイーン』である。その関係で、オグリキャップはメジロマックイーンを知っていたのである。(アルダンの姉は桜花賞、オークスなどを制した実績を誇る『メジロラモーヌ』であったが、アルダンは怪我と病気を頻発した事、現役時代がオグリキャップ、タマモクロス、イナリワン、スーパークリークの絶頂期にバッティングしたこともあり、姉ほどの実績は残せずに終わった。対して、姉のラモーヌは気性が荒い反面、臆病者でもあったという。その全盛期には三冠を達成したものの、落ち目になった後は素行の悪さもあり、メジロ家当主の『メジロアサマ』からも酷評されたという。)その将来を嘱望され、ラモーヌもかわいがっていた末妹のメジロリベーラが、大病でレースに出れない体になってしまったことに憔悴し、次妹のアルダンと疎遠になってしまったという。そんな姉を反面教師にしたアルダンはその後、レースウマ娘としては大成出来なかったものの、嫡流の後継者として期待されていた従姉妹の『メジロマックイーン』の秘めた才能を見出し、一流のレースウマ娘に育つきっかけをもたらした。それはメジロ総帥のメジロアサマからも高く評価されたという。成長した後のメジロマックイーンが従姉のアルダンを手本にしているらしき側面があるのは、幼少期に可愛がられたためだ――

 

 

「……ほう。なかなかの走りだ。アルダンがかわいがっていただけの事はある」

 

「オグリ先輩はアルダン姉さまとは?」

 

「知らんのか?私が中央に移った後、アルダンとは同期だったんでな。あいつも悪いウマ娘ではなかったんだが……運が悪かった」

 

オグリキャップは引退後は歳相応に落ち着いた口調である。アルダンの大成出来なかった事での本家からの不況、偉大な姉との不和で一時は追い出されそうになった事の当事者であり、オグリキャップ自身、メジロアサマに抗議しにいったという。

 

「お前のおばあさんだが、アルダンを一時は追い出すことも考えたそうだ。だが、私たちと現役時代がバッティングしたことの不幸、幼少の頃のお前が慕っていたことで考え直した。その罰のように、アルダンの妹のリベーラが病気にかかってな。一命は取り留めたが、レースに出れない、走れない体になった。おばあさんは『自分への罰だ』と思い悩んだそうだ。それで、嫡流の子であるお前に優しく接してるんだ」

 

 

メジロ家がウマ娘の名家といえど、その全員が大成できるわけではない。素質があっても、病気などで開花できずに終わるケースも多い。メジロリベーラがそれだ。メジロのおばあさまこと、『メジロアサマ』は分家の一つの悲劇的結末を鑑み、贖罪のために、アルダンを取り立てる一方、自分の嫡孫であるマックイーンの大成を願い、アルダンに情操教育を委託した。その結果、マックイーンはアルダンによく似た性格に育ったわけだ。メジロライアンは分家出身故に、この悲劇の経緯を知っているので、アサマを恐れている節がある。(分家を切り捨てようとしたためか)

 

「……」

 

「気を悪くさせてすまんが、お前のおばあさまは必ずしも善人ではない。当たり前だが、あれだけの名家を維持するには、ダーティーなこともしなくてはならん。分家を切り捨ててでも、な。お前の家はウマ娘界きっての名門だ。汚いこともしなくては維持できんのだ。おばあさまが若い頃にそうだったように」

 

「……」

 

マックイーンに現実を教えるオグリキャップ。彼女も落ち目になった時期の周囲の掌返しを経験した故か、大人の世界の汚さを知ってしまった一人である。メジロ家の内情に詳しいのは、アルダンを自らの力で助けようとしたからであると語る。全盛期のオグリキャップには、協会をも動かせるだけの力があったからだ。シンザン、TTG、ハイセイコーに次ぐ実力者と期待されるので、協会の仕事につけば、間違いなしに上位に君臨できる。シンザン、ハイセイコー、トウショウボーイたちがオグリキャップを協会に勧誘しているのは、直近の時代の英雄だからだ。

 

 

「それが現実なのですね」

 

「そうだ。私は栄光と挫折を味わっている。トウカイテイオーもそうだが、掌返しをするからな、日本人というのは」

 

掌返し。日本人の本質的な卑しさがそこに表れている。戦後も生き残った旧・日本軍人達や支配的地位を失った旧華族など、周囲から掌返しを受けた事例は近代でも枚挙に暇がない。スポーツでも、落ち目になると、周囲は掌返しで見放す。タマモクロスやメジロアルダンの例を見てきたせいか、オグリキャップはそういう側面に冷ややかになっているらしい。そのため、オグリキャップを勧誘しようとしているウマ娘競争協会は四苦八苦していたが、マルゼンスキーを規則の犠牲にしたことへの自業自得な面もある。マラソンをしつつ、過去を振り返り、少し哀しげな表情を見せたオグリキャップであった。

 

「マルゼンスキー先輩も現役中はダービーに出れなかった。おまけに世代最強の呼び声高かった彼女が出なかったことで、その世代の上位のウマ娘達は不幸な経緯を辿ったからな…。お前はまだ小さい頃だから、知らんだろうが…」

 

オグリはマルゼンスキー世代が現役であった頃には物心がつく年齢であり、母親もレースに出走経験のあるウマ娘だったので、マルゼンスキーが有馬記念以外の大レースに出る権利を持たないことに同情していたのを覚えている。それを反映したのか、マルゼンスキーの同世代のウマ娘の大半が不幸な経緯を辿った。ハマノパレードに至っては現役中に病死してしまったため、世間は協会を叩きに叩いた。マルゼンスキーがトウカイテイオーらの世代が活躍する頃になっても、トレセン学園に籍があるのは、協会がマルゼンスキーの扱いに困ったためで、ドリームシリーズの創設はハードバージらの不幸を経ての世間の圧力で実現したものだ。

 

「お前たちは黄金世代と言われてるが、自分を追う者がいないことの悲しさは理解できんだろう…幼馴染とも疎遠になってしまったしな……」

 

並走するシンボリルドルフも続く。彼女の代はライバルが殆どおらず、同世代のミスターシービーはルドルフの全盛期には衰えが見えていたなど、最強である故の寂しさを見せた。ルドルフはそれ故に自身を小学生時代から素直に慕うトウカイテイオーに肩入れしていたのだが、別世界では実子である事を知ったので、余計に複雑らしい。

 

「会長はテイオーの事は?」

 

「まさか……別世界では実の子とはな…。テイオーも私も戸惑っているよ…」

 

「私よりマシですわ…。よりによって、孫がゴールドシップなのですよ!?」

 

「……それは……なんとも言えんな…」

 

ゴールドシップが自分の孫だと知ってしまったためか、マックイーンは余計に縁深くなってしまったことにため息だ。喜んでいるのはゴールドシップだけである。

 

「マックイーン~。かわいい孫のゴルシちゃんにこづかいプリぃぃズ~」

 

「これですもの…」

 

ノリノリのゴールドシップ。からかい半分だが、自分が別世界でマックイーンの孫である事は素直に嬉しいらしい。とは言え、走り自体は真面目にしており、なんだかんだで一同はトップグループである。

 

「でもよ。マックイーンだって、レース馬券を一回紙くずにしちまったんだし、あたしの120億の事言えねーぞ?」

 

「あ、あなた!」

 

「お互い様ってこった。タキオンに変な薬飲まされてるナリタタイシンよりはマシだろうぜ」

 

「タイシン先輩、なぜ寝込んだのでしょうか?」

 

「タイシンは虚弱体質だって、ビワハヤヒデの奴が言ってったぞ。実はタキオンにハヤヒデとチケゾー(ウイニングチケットの渾名)の連名で要望が出てたんだ」

 

ナリタタイシンはツンデレキャラのテンプレのような性格だが、レースに負け続けていたことで精神的に追い込まれていた。更に競走馬としての記憶が宿ったため、極度に『走れなくなること』を恐れている。

 

「ナリタブライアンがいなかったら、抑えきれなかったかもしれんな」

 

「言えてるな…。」

 

「タイシンは話が来た時に泣き顔で懇願してたが、あの高熱ではな…」

 

ルドルフもいうように、ナリタタイシンはレースの話が舞い込んだ日に高熱で寝込んでしまった。うわ言で「走らせて!あたしは走れるんだ…!」というほどうなされ、直前までマラソンに出たがったが、高熱で動ける状態ではないため、ルドルフとナリタブライアンが止めている。ゴールドシップもなんだかんだで直前まで看病をし、アグネスタキオンに薬を調合させた。

 

「タキオンに薬を作らせた。体質改善の実験も兼ねるそうで、わけわからねぇ漢方薬と西洋医学を組み合わせたそうだけど…」

 

「あなた、よくそんな得体のしれないモノを!」

 

「落ちつくんだ、マックイーン。漢方薬は効くかもしれん」

 

西洋の滋養強壮薬と漢方薬を手当り次第に調合すると言っていたが、朝鮮人参などの有名な薬を使っているかは定かでない。アグネスタキオンは生まれつきの脆弱な足をどうにかしたい一心で研究にのめり込んでいったが、それがいつしか、『ウマ娘一のマッドサイエンティスト』との異名を誇るようになった。現役世代きっての理論派であるビワハヤヒデがなぜ、リスクの高いマッドサイエンティストであるアグネスタキオンに依頼をしたのか?その事が気になるメジロマックイーン。

 

「どういうことですの、会長」

 

「私もよく知らんのだが、漢方薬と西洋医学を上手くかけ合わせれば、ウマ娘に最良の効果が見込めるというのを、新人時代に前会長(トウショウボーイ)から聞いた覚えがある。ずいぶん昔の事で、その頃は今のテイオーより若くて、興味もなかったからな…その時は。聞いておけばよかったよ」

 

ルドルフは若かりし頃、現在のテイオーの立ち位置にあり、トウショウボーイも可愛がっていた。その辺りは『似た者親子』と言うべきか。ルドルフは自分が学園を治める立場になったことで、トウショウボーイが在籍中に模索していたことの概容を知ることになった。

 

「前会長が学園の面倒を見るそうだけど、エアグルーヴが心労で寝込むぞ?」

 

「エアグルーヴには修行になるさ。私が去った後、数年は会長職にあるだろうからな。私は前会長の推薦で早くからなったから、おそらく、在職期間は歴代で最長になるぞ」

 

シンボリルドルフはオグリキャップのデビュー当時にトウショウボーイから会長職を引き継いでいたため、在職期間は歴代で最長である。そのため、この頃には『カンが衰えた』とマスコミ関係者には揶揄されている。そのことに、強く反発しているルドルフは往年の皇帝と謳われし力が健在であると周囲に示したかったのである。

 

 

 

 

 

 

――扶桑皇国は戦況が膠着状態にあるのを利用し、機甲戦力の刷新を急いでいた。そのため、重装甲的傾向があった英の戦後第二世代戦車『チーフテン』が生産され、前線部隊に配備されていった。チーフテンは55トンほどの重量であるため、日本側は配備に反対であったが、ダイ・アナザー・デイの後遺症で機甲装備の不足に悩んでいた扶桑皇国にはそれどころではなかった。戦後世代型戦車の需要があるのは最前線部隊のみであるが、元々、通常機甲装備の比率が低かった扶桑皇国陸軍はダイ・アナザー・デイでチヌ以前の車両を取り上げられたことで重篤な機甲装備の不足に陥っており、太平洋戦線にいる二つの戦車師団のみが定数を満たしているという大問題が起こっていた。M41軽戦車が採用されたのは、当時の本土の整備途上のインフラレベルでは、74式戦車の運用にすら四苦八苦する有様であったからだ。(M41は史実の四式中戦車とほぼ同程度の重量である)――

 

 

 

 

 

――1949年。日本の財務当局は、軍備の近代化の名目で装備の数を純減しようとしており、他戦線を切り捨てさせようとしていた。だが、政治的都合がそれを許さなかったため、旧式化していた四式改と五式改を他戦線に回した。これは74式戦車の生産が遅れに遅れたせいで、前線部隊が英系戦車を好むようになってしまう事を危惧してのことで、国内軍需産業の振興を図る勢力の焦りを招いた。とは言え、日本戦車は90式以降でなければ、正面切っての機動戦を戦える防御力を持てないため、仕方ないところもあった。また、戦車乗りの数が確保できない事もあり、軍部は人型兵器に傾倒していく。Ξガンダムも正統なガンダムフェイスのデザインで使用されている事は話題を呼んだが、地球連邦軍が『RX-105』として採用した世界なのだから、正統なガンダムフェイスを持つのは当然とされた。(アニメ版のデザインも提案されていたが、『どっかの八卦ロボじゃあるまいし……』と呆れられ、不採用に終わっている)――

 

 

 

 

 

――64Fはガンダムタイプも多数を擁する。アニメでは採用年代の異なる機体も同じ格納庫に存在している。日本から予算を引き出すため、見栄えのいいZ系やF系、Ξは『魅せ道具』の側面もあった――

 

 

「ふむ。これが一部だと?」

 

「あなた方に公開できる範囲でお見せしているのですよ」

 

Zガンダムの系列機、ZZガンダムの系列機、Ξガンダム(大まかなデザインはゲーム版)、F9系のガンダムが一堂に会するのは壮観である。まさか人型兵器を別世界から本当に購入しているとは思いもしなかったらしい日本の財務当局の役人。

 

 

「今次戦線の状況は質で量を超えられるとは限りません。別の土俵を造るのです。『別世界』のジオン軍がやったように」

 

「だから、こんなロボットを使うと?」

 

「人型兵器は扱いに慣れていなくては、運用にすら苦労しますから」

 

連邦軍が誇ったガンダムタイプの中でも強力な機体の数々。ダイ・アナザー・デイの後に増強を繰り返された結果、地球連邦軍全体でも特に強力な部類の機体を有するに至った。特に本来は城塞攻略用重MSである、ZZの派生系の『ジークフリート』(ジオン残党が名付けた渾名が公式化したとも)が特別に回されたあたり、64Fの担う重責がわかる。これでも戦況の打破には繋がらないあたり、太平洋戦線の状況がわかる。それでいて、一部を次元世界の平和維持活動のために出兵しなくてはならない状況があるので、武子はやりくりに苦労している。64Fは確かに最強だが、その他の部隊の質的向上が遅々として進まないため、負担低減にならないどころか、通常兵器の保有制限の是非の議論で激増する有様であった。日本側の誤算は国家総力戦が当たり前の世界に『非対称戦争』が当たり前の時代の思考を当てはめようとした事そのものであった。

 

「これを使わなくては戦線を支えるのもおぼつかないのですが?」

 

「……分かりました。あなた方がどのような兵器を持とうが、私どもは規制致しません。ですが、それ相応の働きはしてもらいます。休暇は取って構いませんが…。法律の関係上…」

 

「ローテーションを組んで構いませんね?」

 

「ええ…」

 

こうして、役人から休暇に関する大義名分と、機材調達について口を挟まないとする約束を録音した上での覚書をさせた武子はローテーションを組んで、部下達に休暇を取得させるのと並行して、Gフォース用に供給する名目で自衛隊が完成させた『ウルトラホーク一号』を量産させる。(合体機構は積んでいない原案の通りに完成したもの)航空兵器の部類に入るが、全てが21世紀の技術では作られていないので、23世紀の第一線機と同水準の高性能を誇る他、合体しない代わりに機動力は特撮でのそれより優れている。旧軍時代に秘匿されていた超技術が戦後数十年の苦労を一気に帳消しにするほどの代物であったことは議論を呼ぶ。吉田茂は旧軍の超技術の存在を知っていて封印したのかという議論も呼んだが、既に故人である以上、ウィッチ世界の同位体がその考えを一番に理解していたと言える。神宮寺八郎大佐の遺品の日誌によれば、昭和天皇も超技術で蹂躙することへの懸念を表明していたら、より非道な手段である核兵器を使われたというのはショックだったようだ。それが轟天計画に公的なストップをかけなかった理由でもある。吉田茂もラ號の建造を極秘裏に容認し、ラ號はオリジナルの状態でイナズマンの第二の敵であった『デスパー軍団』と戦ったのが20世紀中唯一の出撃であった。

 

「吉田公は我々の世界で何を思って、超技術を封じたのでしょうね」

 

「それは吉田翁ご自身でもなければわからないでしょう。ですが、翁ご自身は日本が復興した暁には再軍備を志向しておられた。それは確かでしょう。」

 

吉田茂自身、まさか経済が世界二位にまで復興したのに、正式な国軍にしないまま、自衛隊が時代とともに肥大化していくとは思わなかっただろう。だが、国民感情が正式な国軍化を許さないため、日本連邦軍という憲法に縛られない枠組みが考えられた。それへの部隊の供出さえ渋るのは頂けないと漏らしている。21世紀日本は疫病で国力が減退しており、扶桑の関心は薄れていたが、次元ゲートを通り、敵艦隊の急襲もまま起こるため、自衛艦隊のみでは対応が困難であった。モンタナ級戦艦が近代化された姿で現れるのもざらにあり、革新政権時代の交戦規定が改定されていない事もあり、撃破を扶桑艦隊に頼る有様である。徹底的に近代化され、省力化された戦艦は肥大化した空母より費用対効果がいい。大艦巨砲主義への回帰と揶揄されているが、戦後の超大型空母は撃破されると、色々な意味で国家の威信に傷がつくが、時代遅れと見做されていた戦艦であれば、問題はない。日本連邦軍が戦艦を前線に突っ込ませる一方、空母を後方に置く運用をしているのはそんな理由である。(最も、そのことへの空母閥の反発が後年の宇宙戦艦時代に双方を兼ねる『機動戦艦』というカテゴリを生むことになるが)

 

「これからどうなるのでしょうね」

 

「さあ。この戦争は読めませんね。第三者の介入も顕著ですから。組織や地下勢力、宇宙人……、後年の宇宙移民の国家の残党…。枚挙に暇がありません。敵に水爆があることは確実でしょう。もし、敵が水爆を使えば、報復で主要都市のどこかに反応弾を撃ち込む事は計画にありますが、それは政治的に不味いでしょう?」

 

当然だが、敵が何らかの手段で都市に核兵器を使用した場合、扶桑は未来世界から入手済みの反応弾頭を撃ち込む報復手段を考案していた。史実の冷戦時代のような膨大な数ではないが、お互いにそれがあるであろうことは予測済みである。かの波動砲では星を貫いてしまうが、核兵器の後継である反応弾なら、都市を消し飛ばす程度で済む。扶桑はそのプランを極秘にしているが、日本連邦の当局の人間にとっては暗黙の了解であった。

 

「ええ。我々にとっては特に」

 

「ですが、敵はどこかで水爆でなくとも、原爆を落とす計画を立てるでしょう。リトルボーイ、ファットマンのどちらかをね」

 

武子はそれを読んでいた。日本側には心情的に受け入れられないだろうが、それがあり得るのが戦争であった。

 

 

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