――空で黒江が交戦を始めたのと時を同じくして、キュアドリームは鍛えた闘技で以て、現れた怪人と戦闘員を蹴散らしていた。のび太のアシストもあるが、黒江から伝授された技能はいずれも強力であったため、遠征の時期には聖闘士候補生に選ばれている。更に、黒江、ハルトマン、ことはの三者から習う形で『飛天御剣流』を身に着けていたり、コージとの感応で『超弾動』を身に着けていた事もあって、その力はB世界の自分自身の比ではなかった――
「怪人なんて、野暮なモノ持ち出すなっての!!飛天御剣流・龍巣閃!」
怪人を細切れにして倒す。デザリアム戦争末期から使用している特注の軍刀に魔力と気を纏わせ、威力を強化させて奮っているわけだが、この時には錦の肉体がのぞみの魂に完全に馴染んだため、違和感無く、錦の持っていた技能を発揮できるようになった。剣技はその関係で得たものだ。
「君も、派手に殺るようになったね」
「まぁ、ね。ここのあたしには見せらんないな、こりゃ」
「僕が君と組めることを他の子は不思議がってるようだったけど、君自身はその力を欲してるようだよ」
「あたしは悪道に落ちかけたり、狂いかけたりしたりして、自分の弱さを自覚したから、得れたんだけどね」
奇しくも、これ以上ないほどの栄光を味わった後に、精神を病むほどの大きな挫折に直面し、事後も『自力では乗り越えられなかっただろう』という自覚を持つ点では、トウカイテイオーと共通していた。テイオーも黒江と交流を持った段階で、その後輩であるのぞみとも知己を得たため、のぞみのことは『あーやの後輩』と認識している。のぞみの辿った経緯を聞いて、のぞみを励ますために、自身がウイニングライブ(競走馬で言う、ウイニングランに相当するライブのこと)で歌った経験のある曲の内の何曲かのデータをのぞみのタブレットへ送っており、のぞみもそれを最近はよく聞いている。(具体的には、『ユメヲカケル!』、『winning the soul』、『NEXT FRONTIER』など)
「良かったじゃない、音楽のデータを送ってもらってさ」
「うん。なんか共感してさ。テイオーさん、今のあたしにすごく似てて」
「あの子も、三冠と無敗を逃して、憧れてた人(シンボリルドルフ)のようにはなれなかったからね。それで全てから逃げたくなったけど、偶然から僕たちと出会って、友達に勇気を与えるために奮闘した。君と共通するものがあるよ」
テイオーは自分の弱さを振り切るには、周囲の励まし、自らの弱さを受け入れること、友の悲運を必要とした。のぞみAも似たような経緯で立ち直ったため、シンパシーを感じている。テイオーはルドルフの『子』であった自覚を持ってからは『父を超えられなかった不肖の子』と自嘲するような口ぶりも見せており、ゴールドシップからは『なら、並び立つ事を目指せよ!』と叱咤されている。なお、テイオーはゴールドシップからそう叱咤されたことで、今後の進路を決めている。(ルドルフの後継者になる資格を『真に持つ』事を知ったため、生徒会長としての後継者になる決意を固めた)
「あたしは昔、なぎささんのように、プリキュアとして強くあり続ける事も、はなちゃんのように幸せな家庭も持てなかった。だから、『あのこと』のきっかけを作っちゃったと思う。響やなおちゃんを巻き込んじゃってさ。前世の事は会う時には言わないようにするけど、許しを請いたいって気持ちはあるよ」
「はなちゃんは許してくれるさ。たとえ、別世界の自分のことでも、ね」
「あの子の優しさに甘えてるって批判くるんだろうな……」
「君の前世の事は、他の皆も気にしているよ。だから、深刻に考えないでいいさ。シャーリーさんも『あいつがそう考えてんなら、あたしも割り切るさ。ガキみてぇに駄々こねてる歳でもねぇし』って言ってくれたしね」
「響ったら、素直じゃないんだから」
「昔からさ。君を慮っての言動だって言ってたし。はなちゃんは笑顔の仮面で自分を誤魔化そうとするから、それがシャーリーさんには我慢できないのさ」
「あの子はガサツだけど、感情をむき出しで本音をいうから。『アネモネ』だった頃からね。その頃からはずいぶん丸くなったよ」
「今は70パーくらいが紅月カレンだからね。アネゴ肌だけど、キレると前後の見境が無くなるのは麦野沈利も入ってるな」
シャーリーはこの時は出撃メンバーではない。ゲッターノワールの調整のためである。機動兵器のパイロットとしても一流であるため、細かい調整をする上では欠かせない。
「今日は非番?」
「ゲッターノワールの調整作業だよ。 あれは単機でもゲッターとして使えるしね。でもさ、あたしたち、ついにほぼ70人かぁ…」
「世代がいよいよ、2000年代後半生まれになったから、この時代の赤子がプリキュアになってる計算だよ」
「うぅ。それ堪えるなぁ」
「それ言ったら、オグリキャップやトウカイテイオーは君が産まれて間もない時代に活躍してるしねぇ」
初期のプリキュア達はプリキュア5でも、2020年代には30代になる計算である。のび太が産まれる頃にシンボリルドルフが活躍していた事を考えると、ルドルフやオグリキャップが競走馬としては、のび太の親世代が若い頃の競走馬であるように、2000年代後半生まれが中高生になる時代にあっては、のぞみは遥か前のプリキュアなのだ。
「でもさ、70人じゃ、某光の巨人の総数より多くない?」
「M78星雲出身でないのもいるけど、それを入れても多いかもね。スーパー戦隊よりはまだ少ないけど。君たちは本当なら、2020年代にはアラサーになってるはずだしね」
「うぅ。それ堪えるなぁ」
「敵も第二次世界大戦型の戦車を使ってると思いきや、航空機は旧東独時代のものを隠し持ってるんだし、なんでもありだと思いな」
「でもさ、こっちの戦車をよく、パットンやウォーカーブルドッグに統一できたね」
「将軍の後押しだよ。将軍はM1エイブラムズを欲しがったけど、時代的に不可能だし、燃費悪いしね」
パットンはM1戦車(米軍の主力戦車)を欲しがったが、流石にそれは色々と不可能な上、燃費が歴代最悪レベルであることがネックになったため、早急な供給は見送られ、M48、折を見て、M60に更新する事とされた。戦闘車両の性能レベルは一気に冷戦時代後期の水準へ飛躍したわけだが、この飛躍についていけるウィッチ世界の国は限られた。更に、インフラ整備のレベルが第二次世界大戦レベルであった当時は戦後世代のMBTの運用はままならない地が多く、扶桑本土でも、軽戦車の需要がまだ存在する。自由リベリオン軍は日本連邦軍の一部であると同時に、アメリカ合衆国の援助を受けられるが、アメリカ合衆国系の国の常套手段である『物量戦術』が使えない都合上、質を妥協できなくなった。その産物がM48パットンの早期装備なのである。
「M4、あの時にどのくらいぶっ壊した?」
「数万両かな?敵味方合わせて。途中からは、パーシングやジャクソン駆逐車の登場で味方もかなり壊されたからね」
M4中戦車は当初、敵味方が装備し、多くが使用されたが、より次世代の戦車の投入、大口径榴弾砲の飽和射撃、対地攻撃機の攻撃、肉弾戦術などの要素でダイ・アナザー・デイ途中からは第一線級と見做されなくなり、この頃には後方に回されている。敵味方合わせれば、万単位のM4が欧州で屍を晒し、怪異の土壌となるのを恐れた各国の要請で回収が行われているが、まだ完了していない。ダイ・アナザー・デイ最大の戦車戦で数万の車両が使われた関係だ。M4は機動戦闘車にも簡単に撃ち抜かれる程度のものだが、多くの国にとっては『高性能で扱いやすい』ものであったことから、多くの残存車両が他国に供与された。その一方で、MBT(主力戦車)が配備される状況は、ウィッチ世界のある意味で加速される戦車開発競争の様相を示していた。扶桑陸軍機甲本部はM動乱以降、組織との戦争を想定するようになっており、従来の『大口径化すると、装填速度が悪化して、即急の対応が難しくなる』とする方針が技術革新で時代遅れのものとなった事は認識しており、ダイ・アナザー・デイで大口径砲を自動装填装置で撃ちまくるという方針に変わり、74式の扶桑製造の個体はその関係で自動装填装置が取り付けられている。これは1940年代当時の扶桑人の体躯と体力では、105ミリ砲弾の継続的な人力装填は困難である事も関係している。
「先輩は今頃、空中戦かぁ」
「敵はミグを持ち出してきたらしいからね。MSもあるから、驚かないけどね。MSはこっちもMSで対処するよ。さて、この集積倉庫は燃やすよ」
「どうやって?」
「この熱線銃を使う。火が出るのを通り越して、煙にできるからね。下がってて。超合金Zくらいまでだったら、一瞬で蒸発するから」
のび太は熱線銃を取り出し、倉庫を燃やす。超合金Zくらいは一瞬で蒸発させる、ドラえもんの誇る最強のひみつ道具の一つである。
「数秒も照射すりゃ、跡形もない。ある意味、クリーンさ」
「ひょえー…。おっそろしい」
「仮面ライダー以外の怪人なら、幹部級でもなきゃ蒸発してるよ。仮面ライダーでも、極初期の体なら溶けてるだろう」
旧一号と旧二号の体であれば、死んでいるだろうと目星をつけるのび太。仮面ライダーV3以降は飛躍的に熱耐性が増している事、ストロンガーに至っては、自分の体を電気分解してのテレポートする荒業もできるらしいので、RXの不滅性が際立つだけで、他のライダーも凄まじいのである。
「極初期の……って?」
「一号と二号は再改造とパワーアップを繰り返して、今のパワーを手に入れた。改造当初は今ほどの耐久性はなかったんだ。熱線銃はロストテクノロジーの産物だからね。そのパワーも、統合戦争で日本が集中攻撃された理由さ。ジオンはその時代にあった反テクノロジー派の流れを汲むって聞いたが……」
「その割に、テクノロジーの塊を作ってない?」
「戦争を選んだ国特有の矛盾だろうね。だから、地球連邦の保守派に失笑されるんだ」
統合戦争後、多数の技術を失った教訓から、技術封印は地球連邦ではタブー視されている。ネオ・ジオン穏健派が和平交渉で主導権を握れずに終わった理由である。強硬派が穏健派を潰すため、ネオ・ジオングを投入したものの、自己意思を持つマシンであるマジンカイザーや真ゲッタードラゴンの前にはサイコシャードも通用せず、逆に封じ込まれる有様。更にガンダムダブルエックスが最終手段である『フォン・ブラウンへのコロニーレーザー照射』を止めたこと、二大プリキュアの大喧嘩でグワンバン級が撃沈されたことでジオン派のテロ活動は終止符を打たれた。穏健派は完全に強硬派によって『顔に泥を塗られた』と言えるわけだが、内輪揉めで戦力を消耗してきた彼らには、デザリアム帝国とも戦うほどの力はなく、精神的にも、サテライトキャノンという強大な力の前に屈した形である。また、統合戦争で反テクノロジー派だった者たちの子孫がテクノロジーの結晶であるモビルスーツを開発し、戦争の様相を変えた点は歴史の皮肉であろう。そして、彼らの行った蛮行を止めるため、サテライトキャノンが生み出されたのも皮肉な話である。結果、宇宙戦争の形態が地球人同士の内輪揉めから、星間国家同士の星間戦争に移行したために、ジオニズムそのものが『前時代の遺物』と見なされたわけだ。そこにジオン残党の『悲劇と悲哀』があった。
「純粋に進化する生命は宇宙を食らうと、ケイさんは言うよ。進化の本質は他を淘汰する。時天空を倒すための武器になることが地球人類の生まれた目的なら、ジオンが生まれることも必然だった。組織はそれと別の目的で動いている。だから、奴らは敵なのさ。ナチス・ドイツはそれそのものが『アドルフ・ヒトラーを使って、合法的に作り上げた尖兵』なんだ」
のび太の言う通り、ナチス・ドイツはドイツ帝国亡き後の混乱を利用した大首領が作り上げた尖兵。それ故に、元・同盟国の日本はその存在を早くから危険視していたのだ。
「アドルフ・ヒトラーは傀儡だったの?」
「大首領の地上代行者。健康を害する前はね。大首領は早くから戦後を見据えていた。だから、生き残ってるのさ。思想自体は後年のギレン・ザビとジャミトフ・ハイマンに強い影響をもたらした。貴族のある国家体制はクロスボーン・バンガードも真似したしね」
ドイツ第三帝国そのものがバダンの母体であり、23世紀であっても、世界を動かす力を持つのはSFか仮想戦記ものにありがちなネタだが、本当にそうなった上、仮面ライダーという存在の『生みの親』。バダンの強大さはジオン残党の比ではない。なぜ、ドラえもん世界の東条英機がオーバーテクノロジーの使用の決断があ号作戦で連合艦隊が破局を迎えた後だったのか?その理由も一つの解答が、後にドラえもんとのび太の調査で判明した。ナチス提供のテクノロジーのバックドアの危険性を警戒したのと、大量殺戮になりかねない事を懸念してのものだったが、あ号作戦の破綻で、豊田副武と険悪になった後、国土を守るため、東条英機は失脚前に轟天計画を承認したわけだ。圧倒的な戦力差を痛感した後に使用を決断した事の判明は東条英機の決断の遅さへの批判を呼び込んだが、東条英機とて、ミッドウェーの敗北後は戦力差を痛感しており、オーバーテクノロジーの使用を考えていたのだが、昭和天皇の『大量殺戮への懸念』もあり、使用を躊躇していたが、あ号作戦で連合艦隊が大敗し、絶対国防圏が瓦解するに至り、オーバーテクノロジーの解禁を進めたが、連合艦隊が健全でなくなった日本に米軍の攻勢を止める力はなかった。昭和天皇は東京大空襲後、『東条にもっと早く、超技術の使用を命じておけば、今日の帝国の破局はなかったかもしれぬ…』と宮内省に漏らしたという。トラップも懸念されたが、敗戦が近い時間軸の際に提供されたものにブービートラップはなく、ナチス・ドイツも日本に跡を託すしかなかったのがわかる。その際に提供された『自動工場技術』で作り上げられた『最後の帝国海軍戦艦』こそが『超時空戦艦まほろば』(正確にはその前身)なのだ。こうして、近代以降の歴史の中で暗躍し、別世界のプリキュアオールスターズを実質的に解散へ追いやった。その事は意識せずにはいられないキュアドリームA。
「仮面ライダー達を生み出して、別世界のあたしらから力を実質的に奪ったも同然の連中…か。りんちゃんのいた世界の事は?」
「コージが伝えたよ。ここの君、トサカにきて、瞬間湯沸かし器みたいになったって」
「くるみが死んで、自分も片腕を無くしたんじゃ、当然だろうね。だけど、ここのあたしは……」
「踏んだ場数が少なすぎる。みんながオールスターズになって、場数踏んだ状態でも、殆ど力を引き換えにしないと撃退出来なかったからね。だけど、ああいう感情をむき出しにするのは若さの特権さ」
年寄りじみているが、のび太はそれが言える。青年時代以降は精神的には実年齢プラス10年分は加算していいくらいに落ち着いたからだ。
「のび太君、そういうの、キャラに合わないよ?」
「君も夢原のぞみとしては、そうだろう?お互いさまさ」
のび太は苦笑交じりに言いつつ、燃やした倉庫から車を走らせる。二人は巷に知られる性格や特徴からは年齢的意味でも、生活的意味でも、『成長』などの要因でかけ離れた状態になっている。のぞみも、前世での不幸をバネに正式に教師へ転身しようとしたが、横槍でそれはは叶わなかった。その代わりに、正規軍人としての栄達は約束されたのぞみ。二人はそれぞれ、元々は落ちこぼれと揶揄されるような無気力、自堕落と言われても仕方ない生活を送っていたが、『特殊な要因』で人生がガラリと変わった。のぞみは転生した後において、軍人として生きることを受け入れた。教えることそのものは『軍隊にいてもできる』。そのために軍学校という部署はあるのだ。
――成人し、子供時代の主人公補正は薄れたが、代わりに『誰かを支えること』に覚醒め、一途な愛妻家となり、エリート官僚に登りつめたのび太。前世の仕事である教師にはなれなかったが、正規軍人としての仕事に骨を埋める事になったのぞみ。二人は義理の親子(のぞみの夫である、のび太の養子の野比コージは小々田コージの転生体なので、彼を通して親と子の関係にある)であるが、お互いに年齢が近いため、ほぼタメ口であった――
「言えてる。まさか、自分が殺しのテクを覚えるなんてさ、思ってもみなかった。昔は途中からは浄化するようになったから、敵を倒す事を考えたのは、いつ頃が最後だったか……」
「君たちの代は敵を倒すことが定着してた最後の世代だからね」
「うん。響の頃からは本格的に浄化メインになったかな?倒すこともするけどね。だから、和解が完全に眼中にない前提での敵との戦いは響のオールスターズのデビュー戦が最後だったかもしれないな」
後輩達も『敵を完全に倒す』経験がないわけではないが、代が新しくなっていくに従い、考えの基本が『和解』にシフトしていくため、完全に敵を消滅させるという意味でのオールスターズ戦における決着は無くなった。キュアドリームAはかつての戦いを振り返り、それに気づいた。
「だから、この世界の君に、第二次世界大戦の延長戦のような『血で血を洗う』戦闘はさせたくなかったんだ。だけど、あの子はそれを望んでしまった」
「仕方ないよ。別の自分が宇宙どころか、平行世界全体を股にかけた戦いをしてて、自分の仲間がそれに加勢するなんての、普通じゃありえないよ。だけど、あたし自身、友達が必死に戦ってるのを知ってて、見て見ぬ振りをするなんてのは出来ない。やっぱり、戦いに加勢するのを選ぶと思うよ。相手が何であれ。とは言え、妬まれ気味に見られるのは困るなぁ」
「君の力に嫉妬してるのさ。映画限定のパワーアップをミラクルライト無しで、自己意思で自由に行える上、その更に上まで開眼したんだ。否応なしに嫉妬するよ。しかも、初期の技と現在の技を使い分けできるようになってる上、新規技もある」
映画限定というところは、のび太一流のメタ発言である。とは言え、初期よりはパワーアップしたものの、個々では幹部級の敵に決め手を欠く状態であるのが、プリキュア5の現役後半期の状態であるので、たとえ、エターナルの館長相手であろうと、サシで戦える力を誇るキュアドリームAに、のぞみBが嫉妬してしまうのも無理からぬ事であった。
「ヒーローのみんなの見様見真似も多いんだけどね。チート級に能力上がってるからできたんだし。ま、今なら、館長相手でもサシでやれるって自覚あるけどね。おまけに、先輩達からは三振り目の斬艦刀もらったし」
「現役時代は後半の幹部級には決め手欠いてたしね、君」
「おまけに何の因果だが、波紋を身につけちゃったし。その気になりゃ、波紋疾走流せるからなぁ」
ドリームAは助手席で苦笑いである。単純な戦闘力では、Bの比ではない。特殊能力でも波紋、オーラパワー、小宇宙の三つが少なくとも備わるなど、戦闘に関しては完全にBを超越していると言っていい。
「地頭はいいわけだし、あたし自身、地力自体に差はないと思うけどね」
「君自体は『夢原のぞみ』の一つの結果でしかないからね。もちろん、この僕自身も『野比のび太』の一つの結果だしね」
のび太はそう肯定し、AとBは『同じ人物の分岐した結果』である事を明確に述べたのだった。
「……のび太君、このアルファ・ロメオ、高いんでしょ?」
「レプリカさ。親類からよく『道楽者』と言われるんだよね。某怪盗の三代目の使ってるのを乗り回すとさ。…思ったより路上が多いな、ツェンダップ(軍用バイク)でも持ってくりゃ良かったよ」
「あ、敵が前からくるよ!」
「軍のワーゲンか。あんなのよく残ってたもんだ。よし、振り切るよ!」
アルファ・ロメオのチューン済みのエンジンが唸りを上げる。敵は軍用のキューベルワーゲンを使って追ってきたが、のび太の『アルファ・ロメオ・グランスポルト・クアトロルオーテ』(そのレプリカ)は猛然と加速する。のび太が道楽でチューンを施しただけの事はあり、ワーゲンとのカーチェイスに応える。
「西洋風の街でナチスとカーチェイスとはね。どこかの映画みたいだ」
「なんか武器ある?」
「ワルサーPPKを使う?」
「PPKかぁ。ルガーじゃないの?ワルサーでもさ、P38ないの?」
「ルガーは取り回しがね。」
カーチェイスでの撃ち合いになり、のび太はワルサーPPKを渡すが、PPKに不満そうなキュアドリーム。
「P38はあいにく、持ち合わせがね。だけど、ワルサーPPKも悪くはないよ。それに僕はドジだから、落としたら壊れるような繊細な銃は仕事に持つのはちょっと、ね。それでS&Wやコルトよりも、ラフに扱えるスタームルガー社のを好きになったわけ」
「一定の速度は保って。こういう状況で銃の照準を合わせるのは初めてなんだよー!あたし」
「なーに、守りに入りすぎない事がチェイスのコツさ。それに空中戦でドッグファイトをしてるんだし、それと比べりゃ、車のカーチェイスなんてのは、一種のクレー射撃みたいなもんさ」
のび太は状況を楽しんでいた。チェイス戦の経験も豊富である事がわかる。彼の運転はスネ夫ほどでないが、レースに出るくらいの腕はある。のぞみも錦の記憶やこれまでの経験で、ワルサーPPKの扱いには慣れている。ナチス側も色々な銃を車から身を乗り出すようにして撃ってくるので、何かのアクション映画さながらの状況。キュアドリームAは本格的なカーチェイス戦をこの時に初めて味わうのだった。