ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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第二百四十五話「別世界の調の調べ物、ウマ娘たちの達する境地」

――坂本Bは事変当時の出来事をきっかけに、上層部への復讐を考えており、『戦争屋共を始末したい』という思想を心の内に秘めていた。A世界との接触でその気持ちが蘇ったため、A世界の軍備の力でそれを達成しようとしたわけだ。A世界でも、史実冷戦時代水準の装備を持てたのは同位国が友好的であった国家のみであり、それ以外は1940年代前半相当の装備すらもろくにない国が多い。坂本Bは、64Fの力で自分の世界の火種を消そうとしたわけだ。『介錯』を頼んだのは、個人的復讐に仲間を巻き込まないようにするためだ。そうした状況を調査する圭子――

 

 

 

 

 

 

――その頃、扶桑海軍は艦隊司令部を戦艦に置かざるを得ない状況が続いたため、敷島型戦艦(二代)の敷島に連合艦隊司令部を置いている。これは日本の一般層の心情が『前線から遠く離れた日吉に引きこもるな!連合艦隊司令部は前線で散華するべき!!東郷平八郎以来の伝統だろ!』であったため、政治的理由で、司令部として工事中だった日吉の地下壕を放棄せざるを得なかった(後に、完成済みのスペースは避難用の地下シェルターに転用された)という仕方ない事情もある。敷島型の建艦の半分は大和型戦艦の時代から模索されてきた『戦える移動司令部』の役目を果たすためで、その性能の兼ね合いで、三笠型のさらなる強化型となった。自衛隊もこれには困惑している。海上自衛隊にもその種の批判が飛び火しているからで、その兼ね合いで結局、日本連邦海軍の総旗艦は戦後で当たり前の指揮専用艦でなく、日露戦争のように、最新・最強・最大の戦艦、もしくは最大規模の空母が務めることになった。(その伝統は後裔である地球連邦宇宙軍に間接的に引き継がれ、アンドロメダやブルーノア、グレートヤマトなど、その時々の最新最強の戦艦や空母が地球連邦宇宙軍の旗艦を勤めている)戦艦は日本側の意向もあり、ガンガン突っ込ませられるため、船体の疲労も早く蓄積する。そのため、大和型戦艦の予備艦建造は昨年度の決定から一転して継続。『55口径46cm砲』の開発が妥協的に始められる。大和の艦齢が9年になったのと、ここ数年で被弾しまくっているための『船体疲労の蓄積』が懸念されたためだ。戦艦部隊は12隻前後をキープする事が世界から求められているための措置でもある。――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――44年度末から検討された、『曲技飛行を専門にする航空部隊』が扶桑で『予定されていた』1946年度に発足しなかったのは『戦争中にご機嫌取りの曲芸ショーなどやる必要はない』とする保守的な意見が軍内で強かったからだが、空軍は空自との交流で、国民への自らの活動の啓蒙の重要性をよく理解していたため、曲技飛行を行える練度を持つ64Fがその任務を兼任することとされた。この決定は64Fへ過度の負担をかけるという反対意見があったが、曲技飛行に肯定的な将校の全員が同隊の所属だった事、他部隊の殆どはそのような広報活動に無理解である一方、ブルーインパルスから見て『お粗末』と断じられる程度の曲技飛行しかこなせないため、幹部にブルーインパルスへの在籍経験がある64Fが兼務するしかなかったのだ。そのため、64Fは新装備の評価試験に加え、大衆向けの曲技飛行までを担わされた。他部隊の旧組織時代から引きずる『縄張り意識』の強さも問題視されているが、Gフォースの構成部隊も兼任する64Fの肥大化が止まらなくなっていた。政治的意味で、新規人員の大規模確保が難しくなったために『開明的で、経験のある人員を片っ端から回す』という方法で64Fの戦力を維持するしかないのは、『扶桑軍の航空要員の育成方針の間違い』を間接的に証明していた。坂本Aがそれまでの『名人教育』を捨て、一般隊員に関しては米軍式の『大量養成』に舵を切ったのは、史実の日本海軍航空の『大量養成の失敗』を踏まえてのもので、固有の人員でもある幹部級にのみ、旧来の名人教育を施す。坂本Aが近代戦と折り合いをつけるために選んだ教育方針であった。坂本Aは周囲の陰口もあり、新人教育への情熱は大幅に薄れている。『未熟なままで前線に出さないように』と熱心に教育していると、マスメディアに『新人いびり』と言われるのに嫌気が差しているからであった。この傾向はエディータ・ロスマンも共通している。教育に定評のある二人が教育への情熱を失った事は大問題であったため、現場では、坂本ほどスパルタではなく、ロスマンほど見切りを早くにつけず、それでいて教職の経験者であったのぞみ、教えることに天賦の才があった菱川六花、四葉ありす(西住みほ)が教官役である事が増えた。坂本とロスマンが新人育成への関心を薄れさせた一方で、『若い』のぞみたちが二人の代役になっていることは日本側からも歓迎され、坂本とロスマンはアドバイザー的立場になり、実際の人員育成業務はこの三人を中心にして行われるようになった。――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――カールスラントは日本連邦が(史実のドイツ第三帝国は裏で日本を見下し、戦後ドイツとの関係はギブ・アンド・テイクである。)ドイツ帝国への深入りを警戒し、経済関係のレベルを下げ、軍事上の交流も以前ほどでなくなったことから、カールスラントは重要な取引相手を失ったことに気がついた。また、頼みの軍事技術も、戦後の米英の先進技術が流入することで優位性を喪失。ドイツの強権的政策で軍隊が加速度的に縮小され、外征能力を失った。内乱が終わった後に残されたのは、モラルが崩壊し、有名無実化した軍隊、大規模経済活動が困難な開発途上の新国土、無駄に広大な領海であった。地政学的に太平洋戦争に無縁でいられない位置にあるため、戦後西ドイツに倣う形での国家再建が始まる。以前ほどの軍事的優位は取り戻せず、海軍も沿岸海軍の範囲内で収まるものの、史実のドイツ第三帝国海軍よりはマシな状況に数十年をかけて脱皮していく。史実の教訓によるもので、ドイツもその裏付けのため、『領土と民族の誇りを保てる程度の軍隊は容認する』と声明を出すに至る。ヴェルサイユ条約で戦勝国がドイツを締め付けすぎたことがさらなる大戦争を招いた事は周知の事実だからだ。――

 

 

 

 

 

 

 

 

――日本連邦は米英を始めとする諸国の技術援助で、ウィッチ世界最高の先進国へ成長を始める。華族制度の存続による弊害は思ったほどなく、軍隊の再編成による混乱、かつての軍閥よりも遥かに細分化された派閥抗争のほうが遥かに深刻であり、そこも日本連邦が未来世界でのジオン公国の気質的な意味での祖先である事が明確となった。64Fが軍中央から外れた編成である理由は一つ。他部隊の多くは旧来の皇道派、統制派、艦隊派、条約派の対立の残滓を引きずっている上、事変以後に台頭した『ウィッチ至上主義派』の存在があったからだ。1940年代前半は対立と妥協の繰り返しで軍内の秩序を保っていたが、44年度の接触以降の『未来技術の流入』、45年度の『Gウィッチの登場』でその均衡が崩れ、更に昭和天皇が軍閥を忌み嫌う事を大義名分にしての軍組織の再編が始まると、日本は錦の御旗と日本連邦の名の下の大鉈で軍閥を解体へ向かわせたが、お互いの『横のつながり』を強引に断った事で、お互いの連携の無さに繋がってしまうという日本的な意味での悪癖が生じ、ダイ・アナザー・デイでの64Fの孤軍奮闘に繋がった。64Fが実質的に米海兵隊のような『全てのフィールドを制覇する』部隊になったのはダイ・アナザー・デイの反省であり、『旧・軍閥に苦しめられないようにせよ』とする昭和天皇の強い要望であった。中央の参謀たちが1949年度に64Fから『手を引いた』のは『国家元首がそうするように願った』ことが判明したからで、実質的な『聖域』となった。これは皇室を頂点に頂く、日本系国家にのみ通ずる理屈だった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――1949年の夏が近づく頃、D世界の調はA世界の自分が故郷の世界を離れる事になった出来事についてのレポートを取り寄せ、それを読んでいた。――

 

 

「……他人との入れ替わり……、別世界への転移……切ちゃんの勘違い……か」

 

切歌Aは史実以上の大罪を犯した都合上、死刑判決は政治取引で免れたものの、表向きは『刑務所に収監されている』。聖闘士に転向したのは、犯した罪を償うためである。切歌Dも自分の早合点がきっかけで、事が拗れに拗れたことに気まずく感じている。そして、調Aは感応で体質が完全に変わり、シンフォギアを日常的に纏っていても問題がなくなっている事、その姿がおなじみになっていることが追記されている。

 

「……すごいデス……。シンフォギアを普通に日常生活で使ってるデス…」

 

「向こうの私は元の世界の法律には縛られないらしいから。関係は断ってないけれど、普段は別の世界で暮らしてるんだって。……羨ましい」

 

シンフォギアを普通に日常で使っている一方、それとは別の力を備え、シンフォギアと併用することで、基礎的戦闘能力を引き上げているAが羨ましいD。更に、響Aにあった『二つの因子』が覚醒め、片方の人格(沖田総司)の『コピーロボット』を素体にするボディへの移植が行われ、響当人は別名義で『プリキュア戦士』を兼務するようになった事が記されている形で〆られている。

 

「響さん、そこそこひどい目に遭ってるのに、別の力を使うことを選んだんデスカ?」

 

「前世の記憶が覚醒めて、一つのやり方に固執しなくても、別のやり方がある事を知ったから、プリキュア戦士としての名義を使い始めたみたい。私とは、そうなる過程で和解したみたい」

 

立花響は事態をうまく把握できず、なおかつ、その場の感情で事態をややこしくした事への後悔の念があり、そこが沖田総司の人格を覚醒めさせた理由だが、彼女個人は『花寺のどか』の転生体でもあった。キュアドリーム/夢原のぞみの背中に憧れたことで因子が覚醒め始め、数年でキュアグレースとしての力を得ている。だが、現役時代と違い、ヒーリングステッキを必要とせず、単独変身も可能、キュアピーチ/桃園ラブに匹敵する攻撃力を得ている他、本来の必須アイテムであるヒーリングステッキを使わずに浄化できるようになっている(現役後期のアイテムである『ヒーリングっどアロー』のみは浄化の際に補助的に使用するが)など、能力そのものが他のプリキュアに近づいている。これは立花響の深層心理がプリキュアの力を大きく変質させたものとされる他、能力バランスに優れ、基礎能力が後輩らの多くより戦闘向けのドリームとピーチに憧れたためだろうと推測されている。

 

「そうか、向こうの響さんはフロンティア事変と魔法少女事変の二つの戦いで翻弄されたんデスカ」

 

「うん。特にフロンティア事変の後、私と入れ代わってた人に、『切ちゃんのために』とか言って、演技してもらったんだって。その人は断るつもりだったらしいんだけど、その前にマリアが懇願してたり、響さんの剣幕に押されて、引き受けちゃったのが不味かったみたい。向こうの私は帰って来れた後にそれで揉めて、『誰かに与えられたものでない居場所』を得るために、未来さんの手引きで出奔したし、その前の魔法少女事変の時にキャロルを食った『別の世界の神』との決着を自分たちの手でつけられなかったことが精神不安定を決定付けたみたい」

 

調Dたちが見ている資料は、立花響Aが悔いていた出来事にも触れている。魔法少女事変の折、キャロルの内に潜み、魂を食らう形で現れた『邪神エリス』。元々、聖闘士世界で射手座の黄金聖衣を纏った星矢に討たれたはずだが、討たれる直前に別世界に魂を飛ばす形で生き永らえ、シンフォギアA世界のキャロル・マールス・ディーンハイムを器にする形で回復に務め、魔法少女事変の時にキャロル・マールス・ディーンハイムの魂を喰らい、肉体を乗っ取る形で蘇ったわけだ。だが、最終的には神聖衣を纏った黄金聖闘士の二人がかりと、一体の魔神皇帝の援護で今度こそ倒された。星矢がかつて、射手座の黄金聖衣を纏って『単独で倒した敵』であると言うので、聖闘士を知る者からは、黒江達は侮られがちだが、エリスは曲がりなりにも神格であり、ゼウス曰く『アレスの血縁』だというほどの神格であるので、アテナとゼウスに『真なる勇者』、『神殺しの天馬』と認められている星矢が『異常な強さ』なだけで、二人で上位の神格と渡り合えた黒江と智子も、(純粋な戦闘力では)歴代黄金聖闘士の中でも上位の実力者に数えられるのは間違いない。黄金聖闘士であっても、自らの高い基礎能力に頼っていたため、実際の戦闘では紫龍に逆転されて敗死したデスマスク(世界線によっては2回もボコボコにされている)、瞬に逆転されて、あっさりと倒されたアフロディーテの例があるように、実際には黄金の地位に胡座をかいた『井の中の蛙』であった者もいるため、二人は黄金聖闘士の看板に恥じないだけの強さを持つと言えよう。

 

 

「聖闘士……。アタシ達とは違う力を根源にして、人によっては、神様と拳一つで渡り合い、更に倒せるような戦士達……。向こうのアタシ達はその一員なんて」

 

A世界での『大人に成長した自分たち』の写真も載っている。それぞれ『馭者座』、『仔山羊座』の聖衣を身に纏った姿である。(その内の仔山羊座は『現代は存在しない』。ムー大陸の現存時に使われていた古星座と思われる)馭者座の聖衣の修復の際に、本来の姿に戻される過程で判明し、元の独立した聖衣に戻されたのが『仔山羊座の聖衣』である。切歌Aは元の世界での罪を自覚した後、聖闘士候補生になった後、この聖衣に認められて、正式に同星座の聖闘士に任ぜられた。その間に星矢世界では数年が経っていたので、切歌も成長し、17歳相当以上の容姿になっている。元の世界では、フロンティア事変の時に一般人を大勢巻き込んでしまったため、表向きは刑務所に収監されている身で、シンフォギア装者だったからこそ死刑を免れた。元の世界では、そうした事情でシンフォギアを表立って纏えなくなったのもあり、聖闘士に転向したわけである。(シンフォギアの保有は認められたが、調のように使えないことも大きい)

 

「向こうの切ちゃんは本来、死刑にされるはずだったのが、首の皮一枚で繋がったようなもの。それで響さんが私が戻ってきた時の『居場所』を作ることにこだわっちゃったんだって。だけど、実際はそう甘くない。飛ばされた先で遭った出来事での心境の変化、別の誰かが作ったものに乗っかる事への気まずさ……。私はそれを嫌って、また別の世界に行った。その後に聖闘士になったんだって。響さんの善意が裏目に出たんだね。結果オーライにはなったけど、私を元鞘に戻せなかったどころか、出奔させたことにしばらく悩んだみたい」

 

 

調Dは第三者としての視点から分析する。響Aは切歌を慮るばかりに、調を元鞘に戻すことにこだわったが、調Aは『他人が作った居場所を突然に与えられる』という事を騎士道の観点から強く嫌った。そのすれ違いが出奔を引き起こしたわけだ。

 

「で、魔法少女事変を決着させたのが、シンフォギアでなく、聖闘士とスーパーロボットの力だったから、それが響さんには堪えたみたい」

 

「アタシ達はシンフォギアが唯一絶対の力みたいな所ありましたから。聖衣はともかく、スーパーロボットは現代科学の延長線上の産物デスから。それが物理法則を超えるのは……」

 

エリスは討ったものの、A世界のキャロルの魂は既に食われていた。ただし、この頃にゼウスに確認されたことだが、せめてもの『救い』はあった。『エリスの食べ残し』というべき、魂の残滓が肉体を離れ、世界へ拡散していたのだ。いつしかそれが一つに集まり、遺伝子学的に同一の肉体を持つエルフナインに宿っていた。魂が時間をかけて自己再生をしていった結果、本格的な第二人格という形で『再生』する。史実で擬似的な第二人格として再生したことの帳尻合わせが起こるのである。

 

「うん。現代科学の延長線上の兵器が、錬金術やシンフォギアを構成する異端技術をも超えるポテンシャルを引き出した事は信じられないような事だからね。」

 

 

切歌Dは『グレートマジンカイザーが現代科学の延長線上の存在(動力と装甲に世界特有の物質と金属が使われているが)』であることに着目し、調Dも響Aが抱いた恐怖を見抜いたようだ。つまり、シンフォギア以外の力が自分達の常識を覆し、自分の居場所を侵すことに強く怯えたわけだ。実際にはワンオフの超兵器であること、超人的に鍛えた人間が乗ってこそ真価を発揮するという事実に安堵し、『どのような力であれ、扱う者次第で善にも悪にもなる』とアテナ/城戸沙織に諭され、更にその後のダイ・アナザー・デイでキュアドリームと出会った事で、心のつっかかりが取れたわけだ。更に彼女への憧れが彼女の前世の記憶を呼び覚まし、キュアグレースへ覚醒させた事は急転直下であったのだ。

 

「こっちの響さんが見たら驚くよ、これ」

 

「言えてるデスネ」

 

キュアグレースとなった立花響Aはプリキュア・コミュニティの末席となった他、同名の北条響に配慮し、自身は『花寺のどか』の名義をプリキュア活動の際は用いている事はDには衝撃であろう。

 

「翼さんやマリアは折衝役が多いみたいで、あまり戦場に出なくなってるみたいだね」

 

「年長デスからね」

 

「それとシンフォギア装者としての活動は一部、未来さんが代行する日もあるみたい」

 

「え、あのギア、向こうでは消滅していないのデスか?」

 

「そうみたい」

 

響Aはシンフォギア装者としての活動をしつつ、プリキュア戦士にもなった。その都合で多忙を極めるようになり、シンフォギア装者としての活動の一部は小日向未来が代行している事も記されている。また、聖闘士の本格介入でシンフォギアA世界に存在した火種が無くなり、組織の存在意義も半ば消滅したSONGは『シンフォギア装者を管理する場』として政治的に存続しているにすぎず、それをよく認識済みの風鳴弦十郎も躊躇なく、戦力を他世界に提供している。

 

「向こうの調の正式な職業は?」

 

「うーん。航空自衛官みたい。階級は二尉になってる」

 

21世紀の世界向けには航空自衛官とされている調Aの職業。それは本当で、日本連邦軍の中尉は航空自衛隊での二尉に該当する。黒江から戦闘機の操縦技能と固有魔法の一つを引き継いだので、64Fでは、装備の評価試験班に配属されている。最近は単座仕様のF-14の試験に関わっている。(史実のトムキャットと違い、双発のエンジンは当初より強力なものだったり、当初よりグラスコクピット化されている独自仕様)これは扶桑が『キティ・ホーク級空母』をタイプシップにしている『瑞龍型正規空母』への搭載を前提にしたためである。日本連邦軍上層部は戦前以来の『質で量を覆す』ドクトリンを継続しており、20世紀後半における第一線機の装備による、リベリオン軍への圧倒的優位を狙っていた。この加速度的進歩に現場の追従が困難であるとする意見も多かったが、海軍航空の汚名返上を願う多くの搭乗員や整備員の志願もあり、無事に1949年度に空軍での評価試験を終え、空母航空団への配備が1950年代に入る頃に開始される。日本連邦軍が早期に20世紀後半の第一線機を配備した事は連合軍構成国を驚愕させた。特に、カールスラント科学陣は自軍が研究段階にあった『可変翼』をコンピュータによる飛行中の自動制御付きで艦上機に実装したことに驚愕したという。ウルスラが45年当時に嫌がっていた『技術チート』を散々にしても、戦争に勝てる保証が見いだせないのが1940年代のアメリカ合衆国系国家の国力であるので、反応弾、もしくは波動砲を使えという話になるのだ(ちなみに、カールスラントの試作中の可変翼は原始的なもので、地上駐機中に手動で変えるものであった)。

 

「パイロットなんデス?」

 

「そう……みたい。背丈も10cm以上高くなってるし」

 

「見かけは変わらないのに……異世界にいると、そうなるのデスカ?」

 

 

調は本来、14歳時点で153cm。幼少から戦闘訓練を受けていたのと、食事事情が必ずしも良くなかった関係で、21世紀の基準では小柄であった。それがA世界では成長し直しになったのと、黒江の『長身』の因子を持ったおかげで、元より12cmほど背丈が高くなっている。精神的に年月を経ている関係で、以前の『あどけない印象』は薄れ、言動もD比でだが、かなりサバサバしている。

 

「でも、アメリカ相手に戦争してるのに、軍隊に冷たいような?」

 

「また別の世界の戦後日本が軍隊嫌いの風潮を持ち込んだからね。だから、なんでもできないと、警察にもバカにされるんだって」

 

「戦争だと、警察の出る幕はないような?」

 

「派閥抗争なんだよ。戦後日本だと、軍隊は穀潰し同然の扱いだから」

 

調Dも故郷の世界で見てきているが、戦後の自衛隊は戦前日本軍の暴走の反動で枷を強くはめられ、災害の時に『政府に都合のいい酷使できる土木作業員』扱いされている。『戦後世界の理屈を大戦期に持ち込み、その理屈で大戦期の人間を一方的に断罪する』事の高慢さ、警察官僚が自衛隊を見下していることを呆れている。特に、この世界では『21世紀の人間たちの少なからずが扶桑軍隊をノータリン/戦バカと公然とバカにし、戦争遂行を予算面から妨害する』事も多い。扶桑軍隊は『多数派である無能な働き者』こそ排除できたものの、『一部の優秀な人員を酷使する』現状になっている。連合軍も初期から支えていたカールスラントが殆ど撤兵し、主力が日本連邦に入れ替わることなど、想像だにもしなかったし、『後の時代の理屈で一方的に断罪し、当事者に弁明もさせずに、鬼の首を取ったように、精神的に再起不能にするまで叩く』という日本独特の風潮に苦言を呈している。更に、日本連邦では『徴用』が人的・物的にも事実上のタブーになったため、軍の予算で『補助艦艇』を一通り揃えないといけなくなったため、戦闘艦の新造に必要な予算は地球連邦の財政援助で賄っているなど、戦争の長期化は必至である。いくら超兵器を揃えようと、それを支える体制ができていなければ、まともに使えない。そのくせ、『少数で多数を倒せ』というのがまかり通るため、精鋭でない一般部隊は不貞腐れるケースが多い。この戦争が長期化している要因の一つは『日本の政治家が自分達の理屈で徴兵の停止、全ての物品の徴用を禁止し、食料品の供給優先権を廃し、軍隊に自給自足を強制したから』である。(食料品などの自給自足については、軍と契約していた商社の抗議で、議決前の段階で緩和され、食料品と嗜好品については、外部からの供給が認められた)軍の装備や弾薬は工廠の拡充で対応がある程度は可能だが、食料品や嗜好品はそうはいかない。日本側がそれに気づいたのはダイ・アナザー・デイ中の段階。更に、64Fがほぼ単独で欧州の制空権を維持せざるを得なかった状況に追い込んだ『サボタージュ』を主導したウィッチらを問答無用で銃殺刑に処したため、今度は現場のウィッチらの恐慌を招き、クーデターや民間軍事会社への部隊ごとの流出など、悪循環が続いている。64Fの規模がもはや単独で戦線を張れる規模になっていた理由も、それをごまかす為であるのが半分である。退役軍人による民間軍事会社の乱立を防ぐために、民間軍事会社の設立などに規制をかける事になるなど、後手後手である。また、ダイ・アナザー・デイの際に、尉官級と佐官級の参謀を史実の罪で断罪し、大量に役職から罷免し、僻地へ左遷したために『参謀』職が有名無実化し、近代戦を熟知し、現代戦の専門教育を受けた自衛隊の幕僚を緊急動員する羽目になるなど、政治家の感情任せの方策が現場を混乱させる事が常態化していた。64Fが一騎当千を求められた理由の多くは政治家の尻拭いでもあった。そこに軍事を重視しない国家故の物哀しい事情があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――マラソンに参戦した五人のウマ娘。いずれもかつて、G1レースで名を馳せた名馬達の転生体。(ゴールドシップは『将来の姿』だが)馬の耳と尻尾がある以外は『美少女』と言って差し支えない。ただし、馬の走行能力をそのまま引き継いだため、走行速度はヒトのトップアスリートをも軽く凌駕する。そのため、マラソンでも、五人でトップグループを形成していた。

 

「時代を担うウマ娘にのみ許された、ある種の境地というのがある。知っているか?」

 

「うん。マルゼンスキーから聞いたことある」

 

「代々のトップ5級のウマ娘たちのみが達するとされていたが、私達の代以降は数がグンと増えている」

 

「本当?」

 

シンボリルドルフは自分の先代の生徒会長及び、その代の生徒会役員であった『TTG』らの話していた『境地』に達する者達が増えたことを実感していた。自分達の代で達した者は少なかったと回想する。一期先輩のミスターシービーは境地に達していたことで四冠は得たものの、その頃には全盛期を既に終えつつあり、入れ違いに絶頂期に向かいつつあったルドルフが彼女の更に上を行く才を持っていたことで評価は逆転した。ミスターシービーはトウショウボーイの縁戚にあたる(競走馬としては実子である)ため、実はルドルフが台頭する以前の時期は生徒会長経験者のトウショウボーイの七光りもあり、ミスターシービーこそが最強の名を欲しいままにしていた。

 

「ミスターシービーには悪い事をしたよ。前会長の縁戚にあたるウマ娘であり、生まれた時代が違えば、彼女が生徒会長に任ぜられただろう」

 

ルドルフもそう断言しているように、ミスターシービーは全盛期、同世代最強の名を欲しいままにしていた。トウショウボーイも卒業前のある時期までは彼女を自分の後継に考えていたが、自分のファンであり、それが高じて入学してきたシンボリルドルフの才覚を見抜き、『才能の伸びしろが無くなった』ミスターシービーに見切りをつけ、シービーの一世代下のウマ娘であるシンボリルドルフを自身の後継に添えた。それを不服としたシービーは実力差を示そうとしたが、ルドルフの圧倒的才覚が『世代最強』であるはずの自分を超えていることを突きつけられ、結果的にはルドルフの伝説に華を添えてしまった。そのことにルドルフは罪悪感があるようだった。そのルドルフのようになろうとしたのが、ルドルフが可愛がっているトウカイテイオーだが、テイオーは『ルドルフを凌駕し得た』ものの、体の柔軟性がありすぎるための故障の多発が災いし、遂には全盛期の能力を失い、一時は引退まで考えていた。これは脚の酷使で全盛期の速力を早期に失ったタマモクロスと似た道であるが、テイオーは『処置』で回復している。

 

「シービーか…。前会長の親戚だったんだね」

 

「シービーには、前会長の七光りという評がつきまとっているからな。テイオー。お前がウマ娘としては、私の縁戚でない事は幸運だったのかもしれん」

 

「たぶんね」

 

「さて……そろそろ『本気』を出していくか』

 

「オグリ……お前…!?……全盛期の輝きを完全に取り戻したのか!?」

 

「カンが戻った……というべきだな、会長」

 

オグリはいつの間にか、黄金色のオーラを纏っていた。全盛時代に見られた『境地に達した』姿である。だが、今回はオグリキャップの現役時代の一部始終を知るルドルフでさえも見たことがないものであった。

 

「何ぃッ!?」

 

オグリキャップのオーラが現役時代のそれよりも鋭さを増し、更に稲妻のような電気も迸る。ルドルフも我が目を疑う。そして、全盛時代のルドルフをも超える『急加速』を見せる。加速の足場にした場所のアスファルトを盛大に陥没させて。

 

「あ~~!そんなのズルい~!こうなったら、ボクだって~!」

 

トウカイテイオーは処置を受けた後に達した境地を見せる。こちらは一時期の勝負服のような赤いオーラの上に赤い稲妻を纏っていた。

 

「テイオー、お前も…!?」

 

「ゴメンね、会長。あーや達に処置をしてもらった時、ボク、ちょっと鍛えてもらったんだ」

 

「鍛えてもらっただけで、そんなバトル漫画のような芸当ができてたまるかぁ~!」

 

涙目と涙声になるルドルフ。大パニックになっているため、すっかり平静を失っている。

 

 

――『キィィィン』という擬音が似合うほどの速さでオグリキャップを追うトウカイテイオー。これに開いた口が塞がらないシンボリルドルフだが、自らのプライドにかけ、自身も全盛時代の心境を必死に取り戻そうとする――そして。生徒会長としての外聞をかなぐり捨て――

 

 

「うおあぁぁ――――ッ!!」

 

叫びと共に青白いオーラが包み込み、外聞を捨てた一言を言い放つ。

 

「皇帝でも……生徒会長でもない!私は……シンボリルドルフだぁぁ――ッ!」

 

普段の落ち着いた声色からは想像もつかない、感情をむき出しにした叫び。ゴールドシップとマックイーンが驚くほどの光景だった。

 

「思い出したぞ……原初の欲望を……そして、私が……学園を目指した理由を!!」

 

ルドルフは稲妻を全身に纏ったかのような鋭いオーラを纏い、テイオーとオグリのような急加速を見せた。たとえ、全盛期を終えていたとしても、心的要因でその潜在能力が全解放される。既に全盛を過ぎていたはずのルドルフが現役のウマ娘達に遜色ない加速が出来た事がその証明だった。ルドルフはこの時、ミスターシービーを『前時代のウマ娘』としてしまったとされる『往年に見せていた俊足』を取り戻していた…。

 

 

 

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