――ナチスの影響力は大きく、実際にバダンという残党が暗躍していることもあり、ドイツ連邦共和国は未然に『防止する』ことに躍起になりすぎた。結果、カールスラントにNATO軍による軍政が引かれるに至った。日本はこの結果を鑑み、扶桑への干渉を控えるようになるが、政治的一体化を押し進めていく。扶桑は日本の持っている戦後世界の技術情報を得るため、日本と協議を重ね、連邦を運営していく。扶桑はこの力を背景に、リベリオン合衆国との戦争準備を進めたが、そううまくはいかなかった。そこも太平洋戦争の長期化の要因であった。軍部はある程度は想定内であったものの、1949年になっても予定した数に達しないことは予定外であった。そこが人型兵器の急速な普及に繋がったと言える。人型兵器は空軍が率先して導入する都合上、TMS(可変MS)が好まれ、ダイ・アナザー・デイを戦い抜いた後に研修を受けた部隊がリゼルやZプラスを導入するケースが続出した。当時に新鋭であったアンクシャが避けられたのは、性能面の問題ではなく、その出自がティターンズも使用するアッシマーにあったからで、そこも政治的事情が強く絡んでいた――
――かくして、ナリタブライアンとナリタタイシンは地下格納庫の存在を確認した。そこはのび太としずかが委託される形で管理している兵器の集積地でもあり、アナハイム・エレクトロニクスが研究用に管理しているジオン系兵器もかなり貯蔵されていた――
「お前、インドア派だとは知っていたが……こういうのに興味あるとはな」
「うっさい!あんただって、絵心ないっしょうが!」
「……親父のせいだ、それは。おふくろは絵画コンクールで金賞取ったそうだから」
ビワハヤヒデとナリタブライアンの母である『パシフィカス』は英国生まれで、現役時代中に日本へ渡った。学生時代に絵画コンクールで金賞の経験があるという。トレセン学園を卒業後、二人の父親と結婚した後にビワハヤヒデ、ナリタブライアン、そのまた妹のビワタケヒデら、多くの子を生んでいる。しかし、二人の妹達は長姉と次姉ほどの才能はない『凡庸』なウマ娘たちであったため、ブライアンとハヤヒデはこの後、妹達とのギクシャクする関係に悩むことになる。だが、ブライアン自身にも、ついに史実の因果が襲いかかる。それは突然であった。ブライアンは前に進もうとするが……。
「……!?」
股に突然の激痛が走り、その場に崩れ落ち、うずくまるブライアン。実は三冠を達成したあたりから、肉体が悲鳴を挙げ始めており、この時に破局に至った。タイシンは突然の事態に狼狽する。
「ブライアン!?」
「あ、足が……」
「あ、足!?……折れてない……。まさか、筋肉のほう……!?……立てる?」
「な、なんとかな……」
タイシンはブライアンに肩を貸し、部屋に戻ると、事の次第を伝える。マルゼンスキーは顔面蒼白になり、すぐに医者を呼んだ。野比家のホットラインに繋がっており、すぐに来れる医者である『佐渡酒造』が往診した。
「先生、ブライアンちゃんの容態は……」
心配そうなマルゼンスキー。
「……股間接炎を発症しとる。レースにはしばらくは出られんじゃろう」
「ば、馬鹿な……!?」
「おそらく、お前さんの走りそのものにお前さんの肉体そのものが耐えられなくなったんじゃろう。このままじゃと、お前さんがそれまで発揮していたポテンシャルは永久に失われてしまうぞ」
「そんな…!?どういうこと!?」
佐渡酒造の診断に取り乱すブライアンとタイシン。佐渡は続ける。
「お前さんらには酷じゃろうが、前世からの因果が起こした結果じゃ。ナリタブライアンはこちらの世界では、股間接炎をきっかけに全盛期のポテンシャルを失っとる。この子も痛みが走る一瞬に『幻視』したはずじゃよ」
「ああ……」
頷くブライアン。ちょっと前から、下半身の動きに違和感が生じていたからだろう。そして、痛みが走った一瞬、幻視が起こった事も肯定する。
「股間接が原因なら、治るでしょ!?」
いつになく取り乱し、語尾も震えるナリタタイシン。涙目になっているため、ツンデレで強気な言動と裏腹に、意外と打たれ弱いのがわかる。
「それは治る。じゃが、この子には屈腱炎の因子が潜んどる。お姉さんのビワハヤヒデと同じように。それが顕現すれば……」
「そ、そんな……」
ビワハヤヒデとナリタブライアンの肉体に潜んでいる病魔の存在を知らされ、愕然となり、ショックでその場にへたり込んでしまうナリタタイシン。ビワハヤヒデはそう遠くない未来、レースに出走するどころか、日常生活すら危うくなるという宣告に打ちのめされる。
「どうにかできないの……!?ハヤヒデもブライアンも……あれを発病したら、もう……!?」
「ダイワスカーレットやアグネスタキオンにも発病する因子がある病気じゃ。じゃが、この子やビワハヤヒデは当代屈指の実力を持っとったからこそ、『悲劇』なのじゃ」
ビワハヤヒデ、アグネスタキオン、ダイワスカーレット、ナリタブライアンは屈腱炎を発病しやすい遺伝子を持っており、実際に発病して引退を余儀なくされている。それはウマ娘に転生しても同じである。タキオンはそれを何故か知っていたからこそ、マッドサイエンティストなのだ。
「私と姉貴は発病しやすいと……!?」
「そうじゃ。君のお姉さんに残された時間はあまりない。カウントダウンは始まっておると言っていいのじゃ。有馬が終わったのなら…せいぜいあと数回じゃろう」
「なんだと!?」
メジロマックイーンは繋靭帯炎であるように、ウマ娘は馬で発生する故障を人形になっても発生させてしまう。21世紀の医療技術レベルでは望みの薄い外科手術などに賭けるしかない上、再発の危険が避けられないため、現役引退しか選択肢がない。
「メジロマックイーンは繋靭帯炎じゃった。21世紀の医療技術ではお手上げの病気じゃ」
「で、でも、マックイーンは治ったって……」
「儂らの時代には、戦争で医療技術に技術後退が起こってしもうての。ドラえもんの持つような『拒絶反応無しで、どんながん細胞も治癒できるナノマシン』はまだ作れんのじゃ。儂らの時代のものでは寛解に持ってゆくのが精一杯。しかも、効力が確認できるのに半年は要する」
統合戦争後、ナノマシン技術は火星のテラ・フォーミングの迅速化のために必要とされたこともあり、急速に技術復興が進んだが、ミノフスキー粒子でコントロール精度が落ちるため、その精度は2070年代後半の『実用初期』のものと同等でしかない。デラーズ・フリートがM粒子対応型の北米の研究プラントを穀倉地帯ごと吹き飛ばしたため、ここ数十年分の努力が水の泡にされ、更にサイド3の者たちが『統合戦争以前への回帰は単なる怠惰にすぎない!!連邦討つべし!』とロストテクノロジー復興に強く反対し、大戦争を起こしまくったため、研究は2080年代の半ばの段階に時計の針を戻したところで『息をつく』有様である。そのため、技術的に成熟し、副作用で肉体構造を強化する作用がある『ドラえもんの道具』はとんでもない代物なのだ。
「ドラえもんくんに問い合わせて、治療薬を融通してもらえるように計らってもらう。君も半年は走れんのは嫌じゃろう?」
「当たり前だ。レースの感覚がおかしくなってしまう。せっかく三冠を取れたというのに…」
「それでも、ナノマシンの定着にある一定の時間がいるから、ジャパンカップや天皇賞は回避するのが望ましいぞい」
「クソぉぉぉぉ!!会長以来の三冠になって、会長超えも夢でない……はずだったんだぞ!?」
ブライアンは荒れる。三冠を達成し、ルドルフを超えられるとまで持て囃されたからだろう。だが、ブライアンは史実では、病魔がその可能性を摘んでしまった。万全でありさえすれば、楽に勝てるはずの相手にも勝てなくなり、最後は自分の後継ぎを出せぬまま、種牡馬時代に内臓破裂を起こし、三冠馬にしてはあまりに無残な死に方で死んでしまう。ウマ娘のブライアンも三冠達成の栄光から奈落に落とされた感覚なのか、八大競走制覇の夢を捨てることに悔しさを顕にする。
「お姉さんはレース中に発症してしまう。それに比べればマシじゃぞ」
「わかっている!……なんでだ、なんで!!そういうところまで……あ……ぁ…」
泣き崩れるブライアン。競走馬としての自分の馬生を走馬灯という形で幻視したためか、ルドルフ超えができなくなった事が悔しくてたまらないのだ。
「三冠がなんじゃ。三冠なんぞ、時代が下れば、一国の中での箔付け、一ブランド、称号でしかないのじゃ。三冠でなくても、最強と謳われた馬はいくらでもおるぞい」
古くはマルゼンスキーがそうであったし、三冠馬同士でも、ミスターシービーはシンボリルドルフに全く太刀打ちできずじまいであった記録がある。佐渡酒造は趣味で競馬をしているため、持論があるらしい。軍役につく前は獣医が専門だったため、若かりし頃には競馬場の獣医であった時期もあるらしい。
「三冠より、ワシャ古馬最強の方が魅力的じゃと思うんじゃが、因縁断ち切って目指してみんか?」
「古馬戦線だと……?」
「そうじゃ。既にトウカイテイオーとメジロマックイーンは照準をそちらに切り替えておるぞ。身体が大事なら、五冠もすっぱり諦めるんじゃ」
「……」
ナリタブライアンは佐渡の提言を受け入れるには迷いがあったが、姉と自分の史実での無念を晴らすために、『明日のために、今日の屈辱に耐える』ことを選ぶ。今後、生徒会長となることを選んだテイオーの最大のライバルとして、ナリタブライアンは立ち塞がっていく。ビワハヤヒデの史実での無念を背負って。そして、ルドルフの次代の三冠ウマ娘として……。
――佐渡酒造の言う通り、ビワハヤヒデはウマ娘世界でレースに出場していた。前会長であったトウショウボーイが臨時で代理という形で復帰し、現役生のレースの視察を初めて行った日のことだった。現役で最高レベルのウマ娘の一人として、トウショウボーイに挨拶代わりの走りを披露するつもりであった。だが……。
『あぁーーーと!?どうしたビワハヤヒデ!?』
ビワハヤヒデは『脚が思うように動かない』ことに気がついた。加速しようとするが、脚が思うように動かず、加速するどころか、却って減速してしまう。同じく出場しつつも、この日は万全であったウイニングチケットにまるで追いつけない有様であった。
(何故だ、何故、脚が動かん!?)
想定外の事態に狼狽するハヤヒデ。
(動け、動け、動け!どうしたことだ!?)
その後、意地で五位には食い込んだものの、心配して駆け寄って来たウイニングチケットの目の前でその場で崩れ落ち、そのまま倒れ込んでしまう。
「は、ハヤヒデ……!?ハヤヒデーーーぇぇ!」
突然の光景。ウイニングチケットの悲痛な叫びが木霊する。ウイニングチケットはハヤヒデをお姫様抱っこで医務室に運び込んだが、残酷すぎる宣告が待っていた。
「残念ですが、ビワハヤヒデさんは左脚に屈腱炎を発症しています。それもかなりの重度のものです。残念ですが……」
沈痛の表情の医師。普段は能天気なウイニングチケット(チケゾー)も顔面蒼白であった。ずっと一緒に走る事を誓いあったはずの親友が、理不尽にも、二度と走れなくなったからだ。
「うそ……だよね……そんな……ハヤヒデが屈腱炎なんて……」
「残念ですが…。治療が済んだとしても、レースは不可能であるとしか…」
「……昨日も何事もなかったんだ……最高のコンディションだって言ってたんだ……なのに…どうしてぇぇぇ!?」
その場で泣き崩れるウイニングチケット。そこに一人の有名俳優に激似の医師がトウショウボーイに連れられてやってきた。
「ビワハヤヒデ君は協会の意向で、当方が治療を行うことになりました。書類のご確認を」
その医師は有名俳優に激似であったが、白衣を着込むれっきとした医者であった。身分証にはフランス生まれ、アメリカ籍の医師『ドゥルア・エモ』と書かれていた。
「しかし、現在の医療技術では屈腱炎は……」
「アメリカで実験中の方法があります。私はアメリカでその技術を取得しております」
その医師はそうとだけいい、スタッフにビワハヤヒデを運ばせる。ウイニングチケットはトウショウボーイに促され、『付き添い』という形で彼についていく。ウイニングチケットはナリタタイシンの関係者であったのもあってか、リムジンに乗せられ、レース場から15キロほど行った先の開発中の住宅街のタワーマンションに連れて行かれた。
「ここって、建設中のタワマン?」
「ええ。ナリタタイシンさんのお知り合いで?」
「あたしの大親友です。でも、ハヤヒデに何を…?」
「まだ日本では認可されていない、新しい治療法です。本来は軍事用なので、自衛隊も存在を知りません」
「えーと、それって、非合法的な…?」
「協会も、怪我で引退していくウマ娘が毎年誰かどうか出ていることに悩んでいましてな。彼女のトレーナーにはトウショウボーイさんからご連絡がいくでしょう」
彼はタワマンの一室に開いたばかりの診療所にウイニングチケットを案内した。トレセン学園も真っ青なほどに設備が最新鋭である。
「すっごーい……」
「ビワハヤヒデさんは治療用のベットに寝かせてあります。治療はこれを使います」
「薬のびん?」
「ええ。この小さい瓶が新薬なのです。市販すると、供給が需要に追い付きませんので、軍隊や警察などの一部の公務用にしか使えないのを量産化するかどうかのテストケースで、ウマ娘に限定的に適用する許可が降りましてね。動物実験も人体試験も一通り終わってますから、人以外にも効果が確認されています」
彼は薬を注射に注入し、手際よく薬を患部に接種する。チクッとする一瞬、ビワハヤヒデが顔を顰めるが、すぐに元の表情に戻る。
「これでよし。効果はすぐには表れませんから、数日は入院措置を取ります。それと念の為、貴方も検査をお受けになられたらいかがですか?」
「ハヤヒデがこんなことになったし……お願いします。あ、でもトレーナーさんには」
「私からご連絡しましょう。」
ウイニングチケットも念の為の検査を受けた。結果は屈腱炎を未病状態であるが、抱えている事が確認され、ウイニングチケットも注射されることになった。
――その日の夜――
「ハヤヒデはまだ起きないんですか?」
「だいぶ疲労も溜まっていましたし、副作用もあるので。貴方は軽いほうですよ、チケットさん」
「病院食は美味しくないですよぉ」
「薄味に作ってありますので。それと、内臓の状態の確認が入るので」
入院着に着替えたウイニングチケット。彼女は副作用は殆どないので、数時間で覚醒め、病院食を食べている。ビワハヤヒデは疲労もあったので、点滴を受けている。
「内臓かぁ。ウマ娘は普通のヒトより頑丈なんだけどなぁ。前にハヤヒデがそんな事言ってたし」
「万一という事もありますし、全員がオグリキャップさんのような鋼鉄の胃袋は持ってませんでしょう?」
「言えてます。オグリ先輩は学園最大の胃袋の持ち主なんですけど」
ウマ娘とヒトとの間に内蔵的な差はあまりないが、オグリキャップは学園の食料庫を食いつくせるため、ウマ娘最強無比の胃袋と呼び声が高い。ウイニングチケットは常人より容量がある程度だが、タイキシャトル、スペシャルウィーク、オグリキャップの三人は『学園最高のフードファイター』と渾名されている。
「スペちゃん、オグリ先輩は学園のフードファイター企画の常連なんですよ~。学園の周りのレストランの六割に出禁食らったとか、ゴルシが言ってったっけか」
「スペシャルウィークさんとは、どういうご関係で?」
「後輩なんですよ。以前、レースで一緒に走った事があって。ゴルシがかわいがってましたし」
そのことから、ゴールドシップとは気心の知れた仲であり、少なくとも『同期』らしい事がわかるウイニングチケット。
「チームメイトなので、ゴールドシップさんとは?」
「ええ。結局、新人時代のトレーナーさんが事故に遭ってやめちゃったところだったのを、スピカに引き取ってもらったんですよ。ゴルシに誘われて」
ウイニングチケットの言から、ウイニングチケットとゴールドシップは同期で、割に古い付き合いであること、チーム・スピカに加入したのはゴールドシップの手引で、日が浅いことが判明した。そのことから、アニメとは人間関係が違う世界線である事も判明した。テイオーとマックイーン、スペシャルウィークとサイレンススズカなど、同じ箇所もあるが、ウイニングチケットがゴルシの友人で、ツッコミ役である。また、ジャスタウェイがゴールドシップの大親友であり、トーセンジョーダンとは睨み合う仲であるなど、史実よりのところもある。ジャスタウェイはゴールドシップ最大の理解者で、彼女が病気になると、ゴールドシップが取り乱すため、スピカのトレーナーから『寝込まないでおくれ』と懇願されている。ウイニングチケットはゴルシとの付き合いは長く、家族構成等も知っているようだが、誰にも漏らしていない。
「ゴルシは黙ってりゃ美人なんですけど、あれな性格ですから。ジャスタウェイがお目付け役で」
「ジャスタウェイさんとは?」
「小学校のクラスメイトだったんです。再会したのはトレセン学園ですけどね」
ゴールドシップは小学校時代からハジケている事、親友ジャスタウェイがウイニングチケットにゴールドシップの事を度々、愚痴ったために、ゴールドシップと知己を得た事が判明していく。その後、トレセン学園でBNWになったウイニングチケット、変人・奇人の最たる例となったゴールドシップ。そして、ゴールドシップのお目付け役であり、ストッパーのジャスタウェイ。ゴールドシップがスピカに入った最大の理由であり、以後、変人・奇人枠の行き場扱いされているスピカだが、有力ウマ娘を多く抱えるようになり、今ではチーム・リギルの最大の好敵手である。チーム・リギルが世代交代期に入り、ルドルフ、シービーがターフを去ったために弱体化した感があるが、エルコンドルパサー、グラスワンダーの入部で持ち治りつつある。ちなみに、オグリキャップ、ハイセイコー、カツラノハイセイコの三人はスピカのエースであった経歴があるので、チーム・スピカは全くの無名ではないのがわかる。
「うちのチーム、奇人変人枠だとか言われてるんですけど、ハイセイコーさんもスピカ出身だったんだそうです。随分昔だから、あたしもよく知らなくて」
ハイセイコー、その妹の『カツラノハイセイコ』はチームスピカの黎明期を『エース』として支えたとされる。そのことから『はぐれものの行き場』というのが実際のところだが、トレーナーはこれまでに数人代わっており、今のトレーナーは三人目かつ、三代目で、オグリのトレーナーの後輩だという。
「貴方に妹さんは?」
「いませんけど?」
「そうですか。貴方の親戚の方からお手紙が来ていまして」
その手紙の主の名はレイパパレ。史実ではウイニングチケットの『ひ孫』に当たる馬で、ウマ娘世界では親戚らしい。
「あー!!あの子かー!でも、一度か二度しかあってないんだけどなぁ」
困惑中のウイニングチケット。『一、二度しか会っていない遠い親戚』からトレセン学園に入るという事が伝えられたからだが、史実では実はレイパパレはウイニングチケットの曾孫なのだ。ウイニングチケット自身、マルゼンスキーの孫であるので、そこも含めて複雑な関係なのだ。
「そういえば、マルゼンスキーさんと会った時、不思議な感覚になったっけ。どうしてだろう?」
「知りたいですか?」
「え?」
彼はウイニングチケットに一つの表を見せる。それはウイニングチケットの競走馬としての血統表で、人間でいうところの家系図である。ウイニングチケットの母父(祖父)のところにマルゼンスキーの名があり、チケット自身の『曾孫』のところに『レイパパレ』の名がある。また、マルゼンスキーを通し、スペシャルウィーク、ライスシャワーと遠縁だが、一応の縁戚関係にある事も記されており……。
「え……、えぇえぇぇ――ッ!?」
ウイニングチケットの史上最大の素っ頓狂な叫びが辺りに木霊したのだった。