ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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今回は以前に掲載した「プリキュアオールスターズNewStage みらいのともだち」をベースにした二話を一つにまとめ、新規分を加えたものです。


第二百六十二話「幕間その4 あるプリキュアオールスターズ戦のまとめ」

――プリキュア・ブレス。デザリアム戦役の時期に、かの高速戦隊ターボレンジャーの尽力により、プリキュア達用に開発されたプリキュアの変身アイテムである。デザリアム戦役を経た1947年度に生産が本格化し、その時期に起こった『プリキュアオールスターズ・ニューステージ』の戦いで本格的に投入された。歴代プリキュアの変身システムは第一期に関して言えば、本質は同一のエネルギーを用いて変身させていたためか、エネルギーを制御するのは容易な事であった。デザリアム戦役で現役時代から用いていた変身アイテムがサイコフレームの力で破損してしまったりしたため、そのバックアップ的役目を期待されて造られた。とは言え、変身アイテムの替えはそうそう効かないため、プリキュア・ブレスは元来、同一のエネルギーを存在の拠り所にしていた第一期プリキュア達に優先的に支給された。のぞみとラブ、シャーリーの三人は咲と舞共々、その戦いに参戦。史実と異なる参陣の仕方であったが、のぞみはZEROとの融合後初の実戦であることもあって、一番に目立っていた。いや、ZEROの『目立ちたがり屋』なところがパーソナリティに影響を与えたと言うべきだろう――

 

 

『プリキュア・メタモルフォーゼ!』

 

掛け声こそ普段と同一だが、超獣戦隊ライブマンのツインブレスでのそれと同一のポーズでブレスを起動させ、ワイヤーフレーム状にエネルギーが包み込み、キュアドリームへ変身する。普段と違うアイテムで変身したため、『その世界に呼ばれていた』キュアブラックを始めとする『事情を知らないプリキュア達』を大いに驚かせた。また、ZEROとの融合でパワーアップしたためか、通常のコスチュームでありながら、シャイニング形態のように『天使の翼』が備わっていた。(デザリアム戦役後にはセブンセンシズなどにも覚醒していたためだろう)

 

「ど、ドリーム……その姿は……?」

 

「特訓でパワーアップしまして」

 

その世界に呼ばれたブラックの質問をごまかすドリームだが、当たらずも遠からずではあった。オールスターズに集められるプリキュア達は戦役ごとにランダムに平行世界から呼び出されるため、現役時代中であったり、そうでない者が入り混じる場合がある。ブルームとイーグレット以外に、ドリーム、ピーチ、メロディ、ビート、ミューズの五名がこの時の戦役に参戦したのだが、五人は格段に強化されていたため、その戦いでの見せ場は特に多かった。

 

『さあて、この力の試しどころ!!アイアンカッター!!』

 

ドリームはZEROとの融合で得た力を試す。まずはZEROの使っていたアイアンカッターである。籠手を元々の穴付き手袋の上から二段重ねの形で纏い、それをアイアンカッターに変形させ、放つ。Zのアイアンカッターが前腕部に仕込まれた超合金Z製のカッターを展開させるものであったのに対し、ZEROのそれは刃を巨大化させつつ、弓状に変形させて打ち出す。威力は超合金ニューZまでの合金ならば、対象の大きさを問わずに問答無用で両断してしまうという恐るべきものだ。当然、プリキュアの力とは無関係の攻撃なので、当該戦役の主敵『フュージョン』に吸収されず、逆に両断せしめる。

 

「何あれ!?あんな技、どこで覚えたの!?」

 

「うーん。これには深いわけがあるんだ、ブラック」

 

「って、ミューズがなんで説明してんの…?」

 

「うーん。わたしは暇だからね。わけは後で説明するよ。複雑だから」

 

「どういう事?」

 

「そもそも、あれは私たち本来の力と全く別の力だからね。だから、フュージョンに吸収されないわけ。一言で言うなら、あるスーパーロボットの力かな」

 

「スーパーロボットぉ!?」

 

「見てればわかるよ」

 

フュージョンという怪物はプリキュアオールスターズが最初に戦った敵であり、この時の対戦で二度目という事になる。この戦いはキュアエコー誕生が起こるはずの戦だが、事態は史実より悪化していたため、キュアドリームは融合した事で得た『魔神パワー』を使ったのだ。ただし、使える技はZEROのものだけに限らない。それがドラえもんに頼んで、幼少期から苦手だった雷を克服する特訓を積んだ理由だ。

 

『フュージョン、オイタが過ぎるよ?お仕置きが必要だね』

 

この戦いにおける新人プリキュアチームの位置づけの『スマイルプリキュア』のプリキュア・ピースサンダーと『それ』は似て非なる攻撃であった。違うのはピースサンダーがプリキュアの力を拠り所にしている黄色をしていたのに対し、それは自然のそれと同じ『青白』の光であったことだろう。

 

『斬り裂け、サンダーブレーク!!』

 

300万ボルトの高圧電流を天空で雷とし、それを指先で受け、相手へ放つ。ZEROが恐れたグレートマジンガー由来の技である。この技は剣鉄也がやっているように、鞭の要領で相手を斬り裂くことも可能である。(後継機種のマジンエンペラーGのサンダーボルトブレーカーはこの側面の発展系である)電流の力で群体化した『フュージョン』を斬り裂き、始末する。

 

「ミューズ、どういう事なの?あれは。ドリームに……プリキュア5にあんな力はないはずよ」

 

「ムーンライト。君には説明しておくよ。ややこしい話だけど、君なら理解できそうだ」

 

ミューズはキュアムーンライトにネタバレをする。当時の現役最年長プリキュア(高校生)であったムーンライトであれば、自分達の事を理解してくれるだろうというわけで、一種の賭けであった。(ムーンライトは普段から学業優秀でもあるという点でも適任だった)

 

「……つまり、あのドリームは私たちが知るあの子自身と同位相の別個体なのね?」

 

「私たちは同位体って略してるけどね。平行世界の内、一番に強いかもね」

 

「どういう事?」

 

「ある戦いで、魂のレベルでスーパーロボットと融合したからさ。それも、軽く地球を滅ぼせそうなレベルの」

 

ミューズの言う通り、ドリームの強さは群を抜いている。アイアンカッター、サンダーブレークのいずれも『プリキュアの力』由来の攻撃ではない。プリキュアの力が由来ではないためか、フュージョンに吸収される事なく通じるのだと説明する。

 

「とは言え、のぞみの本質は変わってないよ。アホの子ぶりは以前のままだけど、戦闘に関わるところが強くなってる。その気になれば、光速で動ける。今、私たちがいる世界じゃ『プリキュア三羽烏』って呼ばれてるよ」

 

「三羽烏?」

 

「ピーチとメロディ、ドリームはその世界だとね、ひとまとめにされてんだ。第一期プリキュアのね。スマイルプリキュアとそこから数代の後輩達は第二期って感じに区分分けされてるんだ」

 

「なるほど。……?あの子、今度は何を…?」

 

「あれをやるのか。見ておくんだ、ムーンライト。あれがドリームが現役時代を超えた証で、私のプリキュアでない友達が伝授した闘技」

 

「……プリキュアでない…?」

 

「うん。オリンポス十二神を守護する闘士をやってる友達がいてね。その子が伝授した闘技なんだ」

 

「オリンポス十二神を守護……!?」

 

「うん。その黄道十二星座を司る最高位の闘士の内、獅子座と射手座の闘士に受け継がれてきた闘技。その名も……」

 

『ライトニングプラズマッ!!』

 

ZEROと融合する事で、セブンセンシズ以降の『感覚』に目覚めたキュアドリームに黒江が伝授した『黄金聖闘士の闘技』の一つ。要は光速の雷を纏う拳の乱打である。(漢字表記では『雷光放電』との事である)傍から見れば『光の軌跡が奔る』ようであるが、一秒に億単位の光速拳を周りに連打しているため、原理そのものは単純明快である。プリキュア達から見れば『拳を突き出しただけなのに、雷と光の軌跡が奔って、群体化したフュージョンを蹴散らしていく』ようにしか見えないだろう。

 

「どこかで見たような攻撃ね…」

 

「たぶん。漫画とかで覚えがあるんじゃない?ムーンライトもそういう文化に縁がないわけじゃないじゃん?」

 

「それもそうね」

 

「あ、そうだ。こいつに乗るかい?」

 

「あ、あなた、その獣……」

 

「この世ならざる幻馬。私、シャルルマーニュ十二勇士のアストルフォの生まれ変わりみたいでね。召喚できるようになったんだ」

 

「なんですって!?あ、貴方が!?」

 

「そそ。英霊の転生だとさ、色々大変なんだよー?」

 

ムーンライトには『多少は嘘を混ぜたが、八割方は本当の事』を話したキュアミューズ。実際に『アストルフォが転生したのがキュアミューズである』ので、そこは嘘ではない。キュアムーンライトを後ろに乗せ、この世ならざる幻馬で空を飛び、戦場を俯瞰するキュアミューズ。

 

「アストルフォの転生なら、貴方……」

 

「剣は名手には勝てない程度の腕だよ。十二勇士だけど、武勇で鳴らしてないしね、私」

 

そこは本音である。剣はあるが、英霊では弱い方である自覚があるため、使う機会はさほどないからだ。

 

「メロディは何を持ってるの?十手?」

 

「あれ?あれはメーザーヴァイブレーションソード。略してMVS。あの子のは十手を模した形のものだけど、刀身は長めだよ。純粋科学の武器だから、フュージョンに効くよ」

 

キュアメロディ(シャーリー)はこの時の戦闘では外聞をかなぐり捨てており、ナイトメアフレームの武器やら『原子崩し』を使っている。その分、大決戦での黒江が受けたのと同じような誤解を『この戦いにいたキュアハッピー』にされてしまう事態に陥っていたりする。

 

「ただね、メロディさ。新しい能力覚えたはいいんだけどさ。それ使うと、口が悪くなるんだよ、不思議と」

 

原子崩しを使うと、キュアメロディの口調はものすごく粗暴になる。要は麦野沈利のそれになるわけで、どう贔屓目にみても、昭和のスケバンじみた『イッてる』セリフの連発なので、この世界におけるスマイルプリキュアチームに引かれているのは言うまでもない。

 

「……何なの、あれ」

 

「あー…。気にしなくていいよ。能力の副作用みたいなもんだし」

 

 

『ライトニング・ボルト!!』

 

ドリームはドリームで、ライトニングボルトを放ち、ZEROとの融合の恩恵を確かめるかのようである。この時点で既に現役時代の自分が問題外の戦闘能力であり、雷光を操る様は雷神を思わせた。

 

「ミューズ、ムーンライトを連れてきたの?」

 

「ムーンライトには種明かししたよ。ムーンライトが言ってくれれば、皆は引き下がるしね」

 

「ピーチ、貴方もドリームやミューズと同じ世界から?」

 

「そうなんですよ。ミューズからそのへんは聞いてください。ファァイブシューター!」

 

キュアピーチは大決戦で智子が入れ代わっていた影響で闘将ダイモス系の技や武器を使うようになっており、ファイブシューターを投げて牽制した後にファイヤーブリザードを放つ。

 

「ファイヤーブリザァァド!!」

 

名称的に『どうよ?』と言いたくなるような技だが、フリーザーストームという冷凍技を併せて使用。その二つで生ずる温度差を利用して相手の防御を弱らせ、直上正拳突きを食らわす。

 

『必殺!!烈風ぅぅ!!せいぃぃけぇぇんづきぃぃぃぃッ!!』

 

フュージョン群体の一体をこの攻撃で倒すキュアピーチ。智子がダイモスの兄弟機『烈将フォボス』のパイロット経験を持つ流れで会得に至った。ダイモスのパイロットである竜崎一矢から智子へ、そこから更にキュアピーチ(桃園ラブ)へと伝授された技である。こちらも通常形態のコスチュームだが、キュアエンジェル時にしか生えないはずの翼が生えている。

 

「貴方……その技をいったいどこで……?」

 

「終わったら話します。つぼみちゃんのことも含めて」

 

「つぼみの…?まさか」

 

「ええ、その通りです」

 

微笑むキュアピーチ。とはいうものの、デザリアム戦役ではヌーベルエゥーゴの非道と外道に激昂したキュアドリームを制止するのにかなり苦労していたりする。それを思い出し、苦笑するのをムーンライトに疑問に思われたので、理由を話す。

 

「どうしたの?」

 

「実はあたしたち、ここに呼ばれる前に、ある世界で戦ってたんですけど、その時に――」

 

 

――『てめーらってやつぁ…てめえらってやつぁ……人間じゃねえぇぇ――ッ!』――

 

デザリアム戦役の際、ヌーベルエゥーゴの構成員達は月面都市の住民を平然と虐殺し、凄惨な私刑を笑いながら住民へ加えた。歴戦の勇士たちでさえも言葉を失うほどの凄惨な殺戮と理不尽な私刑。キュアドリームはそのあまりの凄惨さに激昂。虐殺を指揮していた幹部を殴打し、散々に打ちのめした。

 

『立て、立てよ!!このキュアドリームがアンタにここで死んだ人たちの痛みを教えてやるってんだぁぁッ!』

 

その時のキュアドリームの発する怒気はキュアアクアやキュアミントも気圧されるほどであり、ピーチが『やめて、ドリーム!こんな奴、殴る価値なんてないよ!!』と制止しなければ、その男を間違いなく殴り殺していただろう。その事を教える。

 

「あの子がそんな事を……」

 

「口で言い表せないくらいの惨状に本気で怒ったんです。アクアとミントが何もできないくらいに気圧されるくらいに怒髪天を突いてました。あたしが止めてなきゃ、殴り殺してたでしょうね」

 

「あの子に激情性があるとは、ココとナッツから聞いていたけれど、まさか……そこまでとは」

 

「だけど、あそこまで怒ったのは初めてだって、アクアとミントも言ってます」

 

「それで友達が修行させたんだよ。怒りは武器にもなるけれど、冷静さを失ったら、単なる鬼に堕ちるからね」

 

「過去に私がそうだったもの……。貴方達は知ってるでしょうね」

 

「ブロッサムとサンシャインから聞いてます。スマイルプリキュアの後輩にもいますからね」

 

「いるの?」

 

「ハピネスチャージプリキュア。スマイルプリキュアの二代後のチームで、その中のキュアフォーチュン。その子も最初はお姉さんの仇討ちのために戦ってましたけど、最後はちゃんと……」

 

「……未来のことを教えられるのは、いいことなのか、悪い事なのかしらね」

 

「私達が言ったこの事は、一つの選択の結果でしかないよ、ムーンライト。この場にいるみんながその道に至るとは限らないわけ」

 

「ミューズのいう通りですよ、ムーンライト。未来は決まってるわけじゃない。あたしやドリームが選んだ道がこの場にいるみんなの知るあたしたちの未来とは限らない。それが平行世界で、多元宇宙論ってやつですよ」

 

「まさか……貴方の口から、そんな高尚な理論の関連用語が出るなんてね」

 

ピーチとミューズの言葉を聞き、自分なりに納得したらしいキュアムーンライト。学業優秀の秀才なためだろう。しかし、何気にピーチ(ラブ)にはドキツいツッコミを入れるあたり、その方面の才能もあるらしい。

 

「ムーンライトぉ~……」

 

「お喋りはここまでよ。どうするの?フュージョンは群体に分かれてきてるわ」

 

「本当なら、キュアエコーがそろそろ現れるはずなんですけど……そうは問屋が卸さないみたいですね」

 

「キュアエコー?」

 

「本当なら、この戦いを終わらせられる『対話のためのプリキュア』です。だけど、その気配が感じられない」

 

「ハッピー達、しくじった?」

 

「それはないと思うけど……。どうする?」

 

「対話の選択肢が潰れたのなら、奴を倒すしかないよ。君とドリームの得た『神を超え、悪魔を倒せる』力で」

 

「覚悟はしてたよ。やるしかないか……!」

 

「神を超え、悪魔を倒すって……どういう事…!?」

 

「あたしとドリームは与えられたんです。神を超え、悪魔も倒せる偉大なスーパーロボットの力を」

 

「スーパーロボット……?」

 

「とある世界で造り出された機械仕掛けの神みたいな代物さ。ドリームとピーチはその力を受け継いだんだよ」

 

「ええ。フュージョンの本体にその力をぶち込んで倒すしかないです。こうなった以上……」

 

「キュアエコーは宛にできないって事だよ、ムーンライト」

 

「ブルーム……!」

 

「あたしとイーグレットも、ドリーム達と同じ世界にいるとこを呼ばれてね。未来を知ってるあたしたちがいることで、出来事にずれが出てきてるんだろうね。ピーチ、ドリームに伝えて」

 

「今、テレパシーで伝えました」

 

「ご苦労さま。あたしもブライトになるとするよ」

 

咲は現役時代を終えた後の時間軸であれば、ブルームとブライトのフォームチェンジを任意で行えるため、その場でフォームチェンジをする。なお、咲にのぞみやラブ達が敬語を使うのは、転生を経ているためのもので、咲と舞ものぞみ達の事情を鑑みて、了承している。(自身がウィッチ世界にやってきた時点で、プリキュア最古参になるため、咲も振る舞いを多少は考え、後輩たちにリーダーシップを取ることが増えている。自身が二代目プリキュアであるためだ)

 

「ブライト、貴方は知ってるの?ドリームとピーチの新しい力を」

 

「あたしなんかじゃ説明できないよ。ウィンディも無理だと思う。見れば分かるよ。身震いするくらいの力さ」

 

キュアブライトがそう断言するため、キュアムーンライトも黙るしかなかった。

 

「ハッピーと坂上あゆみちゃん(本来なら、キュアエコーになる少女のこと)には悪いけれど、もう対話をしてる余裕はないよ。ピーチ、アレの態勢に入って」

 

「わかった!」

 

「ドリームもいいね?」

 

「分かりました!」

 

ドリームもブライトの指示に返事を返す。ムーンライトはミューズに促され、敵を惹き付けるため、ヒポグリフに同乗する。

 

「ダメーーーー!!お願い!あゆみちゃんがたどり着くまで待ってよーーー!!」

 

不意に、ハッピーの声が響いた。重大な事を相談するところを聞いたためだろう。一同の動きを制止しようと必死であった。だが、ハッピーの制止も虚しく、フュージョンは散っていた群体を一つに集め始め、街を飲み込もうとする。ブライト、ドリームがもう遅いのだと暗に示すために首を横に振ると、ハッピーは泣きそうになりつつも、自分達が守る少女に一縷の望みを託すと主張する。

 

「お願い!!今は……あたしたちを信じてください!あゆみちゃんはあたしたちが絶対に守るから……守るもん!!」

 

泣きそうになりつつ、自分の気持ちをありのままに伝えるハッピー。その一途さに、ウィッチ世界にいる彼女が宮藤芳佳に転生した理由を悟る一同。

 

 

「……わかった。その子が説得するまでの援護、引き受けるよ」

 

「皆さん……!」

 

「その気持ち、大切にするんだよ?」

 

「ありがとうございます!!」

 

ハッピーの主張を受け入れ、彼女の思う通りにさせるブライトとドリーム。ハッピーの一途さに、かつての自分達を見たからだろう。だが、群体に散っていたフュージョンは自身の善性を司る存在が自身を浄化する事を恐れ、一斉にキュアハッピーを襲う。ハッピーさえ倒せば、スマイルプリキュアは烏合の衆になる事を知っているからだろう。

 

「……やられちゃう……!?」

 

自分達の技が一切合切通用しない敵が襲いかかる。その恐怖心から、思わず目を瞑ってしまうが……。

 

「ハッピーはやらせないよ?」

 

「ドリーム……?」

 

「先輩、アルトリアさん、イリヤ、クロ!!ちょっとばかし、あなた達の力を借りますよ!!」

 

ドリームはハッピーを庇うように降り立ち、フュージョン(群体)を、右腕に持つ何かを振るい、風で吹き飛ばす。ハッピーも、上空でヒポグリフに同乗するムーンライトも、他の場所で戦う他の多くのプリキュア達も、それに目を疑った。

 

「今、この時にこの剣を奮うことに……躊躇いはないよ!」

 

高らかに宣言するキュアドリームの両腕に握られている『それ』の全容が明らかになる。風が止み、黄金の輝きを発する剣こそは――……。

 

「何、あの剣!?」

 

その様子を目撃し、驚くキュアブラック。それが何であるか知るキュアウィンディが解説してやる。

 

「アレは……この星の人々の願いが集約されて生み出された聖なる剣だよ、ブラック」

 

「へ……?」

 

「その剣は……まさか!?でも、あれは伝説上の存在でしょ、ウェンディ!?」

 

キュアホワイトがなんとなく悟り、驚きに満ちた一言を言う。ウェンディは頷き、続ける。

 

「言い伝えられてる伝説だと、こう例えられてるの。束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流。そう謂れのある剣の名は………。」

 

ウェンディが言い終えるのと、ドリームがそれを叫びながら両手で構えて振りぬくのは、ほぼ同時であった。戦況を覆すために放たれる一筋の閃光。それが何であるかを知る、ある者は諸手を挙げて歓喜、事情を知らぬ別の者は瞠目した。

 

『エクス!!カリバァァァァ――!!』

 

インクルードした『約束された勝利の剣』。これがキュアドリームの『切り札』の一つ。闇を祓い、光をもたらす聖なる剣。大決戦に参加していない世界のプリキュア達のほうが多数派であるこの戦いにおいては、この剣の存在の発露はまさしく衝撃的展開。キュアハッピーはそのかっこよさに見惚れてしまっていたし、キュアブラック(大決戦には参加していない世界線の存在である)はあまりの光景に固まり、事情を知らぬ他のプリキュア達も一応に茫然自失の状態だった。それが『約束された勝利の剣』というものの威力であり、あまりにも有名な『聖剣』としての強力なるネームバリューであった。こうして、インクルードしたエクスカリバーで後輩達の道を切り開いたキュアドリーム。状況の悪化は予想通りだが、ここで一つの予定外が発生する。

 

「何ぃ!?」

 

キュアエコーがフュージョンの善性を説得し、これで一件落着……とはならず、フュージョンの元々の属性である邪が善を飲み込み、キュアエコーの変身が解けた少女『坂上あゆみ』を再度飲み込もうとし、キュアハッピーがそれをかばって飲み込まれ、更に近くにいた歴代プリキュアチームのそれぞれ数人づつが逃げ切れずに取り込まれてしまう。

 

「不味い、フュージョンの奴、僕たちをエネルギー源にして、この星を飲み込むつもりだ!」

 

「そ、そんな!どうにかできないの!?」

 

「僕たちの攻撃が効かない以上、たとえパワーアップしても結果は同じだよ、ブラック」

 

「ミューズ、黙って見てろってこと!?」

 

「違うさ。『僕たちの攻撃が無効化される』のなら、それ以外の手段を講じるしかないってことさ。短期決戦でカタをつけるしかない」

 

「それ以外の手段……?」

 

「み、見て!」

 

キュアホワイトが驚きに満ちた表情で上空を指さす。その先には。

 

「あれはシャイニングドリーム!?そんな、ミラクルライトも無しに……!?」

 

「どういうこと!!?」

 

シャイニングドリームになったキュアドリームがいた。だが、彼女はそこから更に変身してみせた。黄金のオーラが迸り、天へと登っていくようなオーラが彼女を包む。そして、オーラが黄金色から白金色に変わった瞬間、コスチュームが白金色になり、背中の翼も滑らかで神々しい形状へと変わる。

 

『思いを抱きしめて、闇を永遠の太極の光で受け止める!!エターニティドリームッ!!』

 

とっさに思いついた名乗りをする。自分にとっても久方ぶりの新形態だったからで、属性と経緯を考えた上で前口上を考えるのも一苦労であったりする。

 

 

「え!?シャイニングドリームから……もっとパワーアップした!?」

 

「嘘……あれより上のパワーアップがあったの……?」

 

「あれはドリームのたどり着いた一つの可能性よ」

 

「知ってるの、ビート」

 

「ええ。あれは私達がたどり着ける究極最後の形態とでも言うべきよ」

 

「究極最後の形態……?」

 

「プリキュアも代を経るとフォームチェンジが増えていくけれど、あの子達の後輩達には究極フォームがあるのよ。それに相当するパワーアップよ。ドリームの場合は三段階目のパワーアップになるわね。スーパープリキュアをも超えてるから、ハイパーかウルトラとでもつけるべきかもしれない」

 

「へ、へ、へ!?」

 

「つまり、キュアレインボーをも超えたってこと?」

 

「アレを超えた形態の一つの回答よ、ホワイト。プリキュアとしての形態を維持したままで『神を超え、悪魔も倒す』ためにたどり着いたもの。いうなれば『エターニティドリーム』とでもいうべきものよ、あれは」

 

エターニティドリーム。その力はそれまでのシャイニングドリームを更に超え、後輩であるキュアハートのパルテノンモードの全力と同等以上のポテンシャルを誇るほどの強化形態だ。デザインの神々しさでは勝っているとはドリーム自身の談。

 

 

――ドリームが天空に指を掲げると、雷雲が起き、彼女を包み込む。その中で雷が迸る轟音が響く。やがて雲が晴れると、雷のエネルギーを極限まで圧縮した光芒がドリームの腕を包みこんでいた――

 

『サンダーボルト!!ブレェェェカァァ!!』

 

元来、雷が苦手であったドリームだが、のび太とドラえもんがミニ雷雲を貸し与え、特訓させることで雷を克服し、ZEROとの融合で得た力を初披露した。キュアピースのピースサンダーが児戯に見えるほどの電撃光線である。

 

『援護するよ!!斬!魔!こぉぉぉ!!』

 

キュアブライトは数年の鍛錬でゲッター線の制御を可能にし、『斬魔光』を放つことが可能になっている。圧縮したゲッターエネルギーを放つため、光の色は緑色である。単独で放つことのできる唯一の技で、この時点の最大技だ。完全にヤル気な攻撃だ。これにスマイルチームは青くなるが、フュージョンはプリキュアを取り込んだことで耐久力を増したか、それに耐え、再度の群体化を行いつつ、かつてのように知性を見せ、流暢な喋り方を見せた。

 

「フフフ……私は貴様らの仲間を取り込んだ。つまり、彼女達の思いを利用し、力を引き出せる事だ」

 

「どういうこと!?」

 

「これを見ろ!」

 

フュージョンは取り込んだ数人のプリキュアの姿を見せる。なんとも悪趣味だが、人質としては良い手段である。無理矢理に力を奪い取っているためか、皆が苦悶の表情である。

 

「この……ゲス野郎がッ!!」

 

ドリームとビート、メロディの三人が同時に同じ台詞と共に怒る。

 

「あなた、どうするつもり!?」

 

「フフフ、キュアウィンディ。知れた事、私はこれからこの地を消滅させるのだ」

 

フュージョンは群体になり、それぞれが歴代プリキュアに襲いかかる。技が効かず、ミラクルライトさえも吸い込まれてしまい、スーパー化するための手段を奪われた彼女達は瞬く間に劣勢に追い込まれる。対等に戦える七人あまりがどうにか守るが、それでもキュアベリー、キュアパイン、キュアアクア、ミルキィローズ、キュアマリン、シャイニールミナスが新たに取り込まれてしまう。

 

「さぁ、どうする?」

 

「ふざけないで!!あたし達は諦めない!!たとえ、どんなに追い詰められたって、絶対に諦めないんだからぁ!!」

 

「では、思い知らせてやろう」

 

キュアブラックは啖呵を切るが、群体が多少集まり、30m級の大きさになったフュージョンにわしづかみにされてしまい、力を奪われ始める。

 

「あ、あ……あ……」

 

キュアブラックは瞬く間に力を奪われ、コスチュームも色褪せていった。

 

「力が……抜け……」

 

意識が遠のく。ホワイト(ほのか)の泣き叫ぶ声もだんだんと聞こえなくなる。ドリーム達は他の群体に足止めされてしまい、助けにいけない。ブラックさえ倒せば、他は烏合の衆になる。この点を高い知性を得たフュージョンは突いたのだ。

 

――ごめ……ほ…の……、ひか……――

 

遠のく意識で仲間に謝罪するキュアブラック(美墨なぎさ)。まさにプリキュアチームは敗北の危機にあったが。

 

「何、この光は!?」

 

フュージョンが辺りを包み込んだことで発生した闇は突如として、発生した光によって祓われた。その光を起こした存在が上空に現れた。

 

『遅くなっちまったかな?』

 

『後は俺達に任せろ!』

 

その存在を確認したドリーム達は破顔して大喜びする。その援軍は。

 

『マジンカイザー!!』

 

『マジンエンペラーG!!』

 

『みんなの思いが俺たちをこの場に呼んだ!思い知らせてやるぜ、魔神皇帝の力を!!』

 

兜甲児の小気味いい啖呵とともに、その勇姿を見せた二つの魔神皇帝。21世紀には『ありえない』巨大ロボットの出現に、多くのプリキュアは固まってしまうが、それだけでは終わらない。地面からライガーモードになり、腕をドリルアームに、背中のマッハウイングをブースターに変形させた真ゲッタードラゴンが現れ、フュージョンをドリルで串刺しにし、ドリルテンペストとドリルハリケーンの複合技で吹き飛ばす。最後はスペイザー合体形態で飛来したグレンダイザーのスピンソーサーがフュージョンの四肢を斬り裂く。

 

『今だ!!』

 

デューク・フリードに促され、ドリーム達は腕の付近に取り込まれた仲間たちを救出する。そして。

 

『シュュゥゥト・イン!!ダイザーゴー!!』

 

グレンダイザーが颯爽登場し、降り立つ。ダイナミック・スーパーロボット軍団の援軍である。

 

「皆さん、どうしてこの世界に…!?」

 

『なーに、のび太君から話を聞いたってわけよ。真ドラゴンでワームホールを開いて、転移してきたのさ』

 

真ゲッタードラゴンほどのゲッターであれば、容易に平行世界へ転移ができる。真ドラゴンの後身であるだろうゲッターエンペラーの持っていた能力を考えれば、当然だろう。

 

『いくぞ、みんな、総攻撃開始だ!スペースサンダー!!』

 

『光子力ビーム!!』

 

『ゲッタァァビィィム!!』

 

『グレェェトブラスタァァ!!』

 

デューク・フリードの号令のもと、スーパーロボット軍団は攻撃を開始する。いずれも破壊力満点の武器ばかりだが、フュージョンは四体のスーパーロボットの攻撃をプリキュアから奪い取った力で耐え、格闘戦に移行した。スーパーロボット達と対等の体躯になっていたため、取り込んだプリキュア達のうちの何人かは体の中心部に人質とした上でだ。

 

『カイザーナックル!!』

 

甲児がいの一番に仕掛ける。カイザーナックルでぶん殴り、そのままジャイアントスイングを敢行する。その衝撃は凄まじく、フュージョンが体内に取り込んだキュアブラックが目覚めるほどだった。

 

 

「ここはあいつの『中』なの!?……力が入らない……外の様子は……え!?」

 

フュージョンがプリキュア達を絶望させるために用意していた『外の様子を確認できる仕組み』だが、フュージョンが四体の巨大ロボとがっぷりと戦う様子だった。フュージョンのダメージはフィードバックされないようだが、完全に取り込まれてしまってるせいか、体を動かせない。

 

「だめ、動けない!どうしたらいいの、どうしたら……」

 

ブラックは自力脱出が不可能な事を嘆く。と、そんな間にも、スーパーロボット達の攻撃は続く。

 

『ギガントミサイル!!』

 

『ハンドビーム!!』

 

『ダブルトマホォォク・ブゥゥメラン!』

 

『ルストタイフーン!!』

 

人質を取られているので、威力が弱めの武装で攻撃するスーパーロボット軍団。とは言え、下手なMSが霞む威力なのはお愛嬌だ。そのダメージでフュージョンが人質にしていたプリキュアの内、キュアマリンが表面に露出する。

 

「甲児さん!!」

 

『分かってらい!ターボスマッシャーパーーンチ!!』

 

キュアウィンディの言葉に甲児は応え、ターボスマッシャーパンチでキュアマリンを助ける。こういう器用な芸当もできるのがマジンガーの器用なところだ。ターボスマッシャーパンチからキュアマリンを受け取ったキュアウィンディはすぐに皆のところに送り届ける。

 

「ウィンディ、マリンは…?」

 

「力を吸い取られただけよ。命に別条はないわ。…だけど、問題は……」

 

「ええ。ブラックがどこに捕らわれてるのか……。それさえわかれば」

 

安堵する『その世界にいたキュアブロッサム』をよそに、エターニティドリームはブラックを人質に取られている状況に歯がゆさを感じる。

 

「強いダメージを与えるのがキーらしいけれど、下手すれば……」

 

「MSなら一発で木っ端微塵になってるダメージですからね、あの四体の武器は」

 

ウィンディとドリームの深刻な表情。そして、状況証拠で援軍と判断するしかない巨大ロボットの登場。状況が変わりすぎて、質問しようにも頭が追いつかないその他のプリキュアたち。ドリームがブライトとウィンディに『敬語』で接している事も衝撃だが、7人ほどは状況を知っているような素振りであるが、状況が質問を許さない。

 

『おーい、そっちに十体ほど、ちっこく分離したのが行ったぞー!』

 

「はーい。さて、先輩からもらったコイツの試し斬りでもするかな」

 

ドリームが空中の粒子から実体化させたそれは一見すると、ただの日本刀であった。だが、鍔が展開され、液体金属で変形し、大剣へと変わる様子は他のプリキュアの多くの度肝を抜いた。黒江が連邦軍の工廠に発注し、造らせた三つ目の『斬艦刀』。黒江、一時は黒田が持っていたプロトタイプから数えて四つ目の型式なために『参式斬艦刀』である。(一応だが)量産品も存在するが、この場合は特注品である。

 

「ちょっと、ドリーム!あなた、剣の心得あった!?」

 

「ちょっとややこしいんだけど、『今は』あるんですよ、ムーンライト」

 

質問するムーンライトへドリームはそう答えると、錦から引き継ぎ、黒江と黒田によって鍛えられた『示現流』の構えを取り、飛び立った。その構えをキュアムーンライトは知っていた。

 

「あれは薩摩に伝わる示現流……!」

 

「知ってるんですか、ムーンライト」

 

キュアブロッサムの質問にムーンライトは答える。

 

「九州の大名だった島津家などが用いていた剣術よ…。いくらプリキュアになったとしても、あの構えはそうそう身につかない。かなり鍛錬を積まないと……」

 

「それは私が説明する」

 

「どういう事、ビート」

 

「ミューズから話は聞いたろ?つまるところ、『そういうわけ』だ」

 

「あなたもなのね、ビート」

 

「私はのぞみと響に巻き込まれたから、私としては不本意だがな」

 

と、かなり愚痴るキュアビート。ここで彼女は自分を含めた七人余りは『ある世界で共に戦っている』こと、あの四体のスーパーロボットは仲間である事を明確にする。そして、7人余りはその世界の日本の軍隊に便宜的に属し、士官となっている事を。

 

「えーと、つまり?」

 

「つまり、自衛隊でいう幹部自衛官よ、レモネード。そこじゃジェット機のパイロットの資格取ってるわ」

 

『えー!?』

 

一発で事情が飲み込めた者は驚き、そうでないものは呆然とする。

 

「これが証拠よ」

 

ダイ・アナザー・デイ中に撮られた一枚の写真を見せるキュアビート。それは訓練でのある光景だが、ジェット機のパイロットをやっている証拠としては必要十分であった。そして、上空では。

 

『斬艦刀・一文字切りぃぃぃ!!』

 

殺意満々な斬艦刀での一閃。扶桑海事変で黒江はエクスカリバーと斬艦刀を併用することで名を挙げ、同時に疎まれた。あまりに突出した強さが個人戦から集団戦に移行しようとしていた扶桑航空隊の多数派から『邪魔者』と見做されたからだ。だが、ダイ・アナザー・デイで『卓越した個人技』が見直されると、扶桑ウィッチは誰も彼も自己保身のために、刀剣に手を出した。当然ながら、一朝一夕で剣は扱えるほど甘くはない。斬艦刀は黒江が用い、後に黒田も用い、そして、ダイ・アナザー・デイ後期にはのぞみにも与えられた。これは調が『実力不足』と『体力不足』を理由にダイ・アナザー・デイ当時は辞退したためのものでもあったが、のぞみの魂が錦の肉体をモノにしつつあることもあり、与えられた。使用する機会はダイ・アナザー・デイではなく、デザリアム戦役からであった。1948年頃にはだいぶ手慣れており、剣技も様になっていた。

 

『斬艦刀・雷光斬りッ!』

 

示現流剣術は、黒江以来の系譜を図らずしも継いでいた中島錦の『遺産』だ。エターニティドリーム(夢原のぞみ)はダイ・アナザー・デイからデザリアム戦役にかけて、黒江達から教えを受ける事で改めてモノにした。かかった時間は年単位。斬艦刀の剣技はフォームに関係なく放つ技だが、今回はフュージョンの吸収に耐性がある究極形態で放たれた。横薙ぎから斬り上げに繋げる高等テクニックの剣技であり、剣筋はプリキュア達の目にも留まらぬほどの速さとなっていた。

 

「す、すごいわ……。あんな大きい刀をブンブン振り回して…」

 

キュアホワイトもこのコメントだ。

 

「いや、案外に軽いものよ。それに、道具が良くても、使い手がヘボじゃ意味はないわ。意外だと思うけれど、年単位で特訓したのよ?あの子」

 

「待って、ビート。年単位で特訓したって、どういう事?」

 

「ややこしいのよ、そこも」

 

『その世界にいたキュアルージュ』の質問にため息のキュアビート。説明がこれ以上ないほどにややこしいからだ。それと。

 

「あれも相当よ?」

 

「えーーー!?」

 

キュアビートが指差した先には、どこから呼び出したのか、ハルバードを振り回して戦うキュアピーチの姿があった。

 

「ややこしいのよ。ピーチは『トルネードハルバード』って呼んでたみたいだけど、正式にはストームハルバードって言うみたいで」

 

「そんなのどーでもいいから!なんで、なんで!!ドリームとピーチがプリキュアと関係ゼロな武器を呼び出して、しかも慣れた手つきで使えるのよぉ!!説明しなさいよ、ビート!!」

 

「いや、私達だって、新アイテムの使い方を体が勝手に覚えるじゃない」

 

「それとこれは話が違うわよーーー!」

 

と、ツッコミどころが多すぎて処理が追いつかずにオーバーフロー気味のキュアルージュ。ツッコミ担当はどこでも変わらないらしい。とは言え、未知の武器、それもプリキュアかしらぬ『殺意満々』なものを手に持ち、その分野のプロのような動きで扱い、戦っている。

 

「ココたちが見たらひっくり返るわよ、あんな真似」

 

ルージュのコメントは最もだった。あまりにプリキュアかしらぬ行為だからだ。

 

「まぁ、私も人のことは言えないけれどね。援護するわ、ドリーム」

 

キュアビートはドリームの援護のため、VF-11がアーマードパックで用いる長砲身型ガンポッドを模した人サイズのガンポッドを実体化し、それを掃射した。元になったものが対艦用の6連重ガンポッドなので、人サイズになっても相応の大きさがある(キュアビートの身長に匹敵するほど)。それを難なく扱えるのは、キュアビート(黒川エレン)の転生先がメルトランディのクラン・クランである事に由来する。

 

 

 

 

――ガンポッドの甲高い作動音と独特の発砲音が響く。その姿は80年代から90年代に大ヒット洋画シリーズに出てきた戦闘用サイボーグを思わせる。キュアレモネードはそれを知っていたので、思わずつぶやく。『ター○ネーターみたい……』と。プリキュア由来の攻撃を吸収する特性のあるフュージョンを実体弾で攻撃するのは一見して愚を犯しているようが、プリキュアの攻撃エネルギーを吸収する、あるいは触れた物質を任意で取り込む事に特化してしまったフュージョンへは『プリキュア由来でない攻撃をする』ことは大変に有効であった――

 

「サンキュー、ビート。……甲児さん、技、借りますよ!」

 

「おう!」

 

『原子一つ残さずに燃えつきろぉ!!ファイヤーブラスターッ!!』

 

ドリームの胸の蝶形リボンから放たれる高熱熱線パートツー。甲児に断りを入れてから放つ。その名の通りにマジンカイザーのファイヤーブラスターである。群体になって向かってきたフュージョンを焼き尽くす『皇帝の焔』。余波で辺りに紫電が散り、放たれし熱線のエネルギーが渦を巻いて呑み込むというとんでもない光景を出現させた。まさにマジンガーと融合した事の面目躍如だが、その様子を目撃したプリキュアのほぼ全員があまりのショックの強さでフリーズを引き起こした。

 

 

「ぬううううう……貴様、いったい…!?」

 

「神をも超え、悪魔も倒す。そのために、あたしはプリキュアを二段くらい超えてみせたんだよ、フュージョン!」

 

群体のフュージョンが思わず毒づくほどの威力を見せたドリームのファイヤーブラスター。そして。ここからが黒江から伝授されし技。

 

「我が拳よ、光の矢となり、邪を討て!!アトミック・サンダァァァボルトォォォ!!」

 

その瞬間、フュージョンにも理解出来なかったが、光速をも超える億単位の拳による乱打。その軌跡が光弾のように見える勢いでプリキュア達に視認された。

 

「何……今の…」

 

プリキュア達も圧倒されるアトミックサンダーボルトの衝撃。まさか、射手座のアイオロスも『聖域に多少の縁がある程度の少女』にまで自分の星座の闘技が伝授されるとは思うまい。

 

「吹っ飛べぇ!!ケイロンズライトインパルス!!」

 

追い打ちのケイロンズライトインパルス。一見して強烈なアッパーカットのようだが、そこから黄金の暴風を起こすという、射手座では珍しい風属性の闘技。アイオロスの先代で伝授が途絶えていたが、黒江が復活させ、射手座の正統後継とされる天馬座の星矢にも伝授したという。この連撃は否応なしにエターニティドリームの持つポテンシャルの高さを思い知らせると同時に、キュアビートの話に真実味を持たせている。また、翼の形状がどことなく、天馬座と射手座の両星座の神聖衣を思わせるヒロイックなものである事から、神聖衣を纏った聖闘士と同等以上のポテンシャルに達しているのでは?ともされる。エターニティドリームの白金色のコスチュームもそれを思わせることから、キュアビートはそう推測していた。こうして、四大スーパーロボットの援軍もあり、戦局は一気に有利になるが、何人かのプリキュアがその戦いにおける敵『フュージョン』に取り込まれてしまった。史実と違い、フュージョンの邪性が善性を上回っていたための出来事であった。

 

「みんなを一気に助けるには、あれしかないよ、みんな」

 

『あれか。真ドラゴンのパワーじゃ、地球ごとふっ飛ばしかねぇからな。お前に任す』

 

「なら、真ゲッターでくりゃ良かったんじゃ?」

 

『あいにく、號達が使ってるからな』

 

とは言うものの、真ゲッタードラゴンと真ゲッターロボになると、地球を壊すどころではないので、ドリームは苦笑する。

 

『雑魚は俺たちが散らす。初めてくれ』

 

「わかりました、大介さん」

 

デューク・フリード/宇門大介の了承を得たドリームはピーチへアイコンタクトで合図し、最強フォームの姿で統一した二人で技の態勢に入る。だが、それはプリキュアとしての技ではない。

 

『神を超え、悪魔をも倒せる力を……今、ここに!!』

 

二人はその言葉を合図に、別々の技の態勢に入る。ピーチはカイザーノヴァ、ドリームはストナーサンシャインで、通常と逆であった。

 

「な、なに……?ピーチとドリームに……凄いエネルギーが迸ってる……!?」

 

「待って!!二人をやめさせて!!」

 

ここで『その世界のキュアハッピー』が悲鳴をあげる。どこからどう見ても、『殺る気満々な』態勢だからだが、フュージョンも怯むほどのエネルギーを二人は発していた。

 

『光子力エネルギー、フルチャージ!!』

 

『あたしの……あたし達の思いが……力を引き出す!』

 

ピーチは眩い光に包まれ、ドリームは両腕にゲッターエネルギーを集めて圧縮、それを前に包むように構えた両手の中で集束させ、太陽の如き輝きを発する光球を生成している。

 

「待ってください!フュージョンの中には……まだ取り込まれたみなさんが!!」

 

『その世界にいたキュアブロッサム』も続く。完全に取り乱しているが、ドリームとピーチは『せめてもの慈悲』と言わんばかりに、技を放つ。

 

「『皇帝』の怒りを思い知れぇ!!」

 

「あんたにも味あわせてあげる、プリキュアの恐ろしさをな~~!」

 

その瞬間、とっさに鉄也、大介が他のプリキュアへ叫ぶ。

 

『お前(君)たち、伏せろ!!』

 

効果半径の外である上空へ退避する者、事情を知らぬ者達を地面に伏せさせてから、自分も伏せる者……他のプリキュア達は千差万別の対応であった。そして。

 

『カイザァァァ・ノヴァ!!』

 

『ストナァァァァァァ・サァァァァンシャァァァァイン!!』

 

光子力とゲッター線の光が辺りを包み込む。一応は海上で炸裂させたとはいえ、原子爆弾炸裂時の衝撃波をも凌ぐ勢いの衝撃波が辺りに広がる。

 

「なにが起こったの、ミューズ!?」

 

「二人が大技を使ったのさ。一応は浄化作用のある、ね。原爆もかくやのキノコ雲なんて作っちゃって、まぁ……」

 

呆れ半分のキュアミューズ。この世ならざる幻馬で上空に逃れたが、歴史の授業で見た『原爆のキノコ雲』を連想させるキノコ雲が海上から横浜市のみなとみらい地区全体までを覆い尽くす規模で発生している。米軍が観測していれば『ロシア軍、もしくは中国軍の核攻撃か?』と騒ぐだろう。

 

「大技って……原爆や水爆並の威力じゃない!?」

 

「元になったのが、あのスーパーロボット達の最強の技。それに比べれば可愛いものさ。あのロボットたちが本気で撃ったら、東京二十三区くらいは軽く吹き飛ぶよ」

 

キュアムーンライトにそう教えるキュアミューズ。あくまで、アストルフォが変身しているためか、現役当時と異なり、飄々とした雰囲気であり、背丈もアストルフォのそれである。

 

「原爆くらいのキノコ雲はまだ優しいってことさ。おーい。ブライト、ウィンディ~。みんなは助けた~?」

 

「スーパーロボット達の掌に寝かせてあるよ。いやあ、爆発の瞬間にとっさに飛び上がって、正解だったよ」

 

「反応が数秒遅れてたら、爆風で吹っ飛んでたわ。すごい威力ね……。」

 

「まあ、この世界のハッピーとブロッサムとかを驚かせちゃったからね。真ドラゴンが真シャインスパークを撃ったら、これで済まなかったよ」

 

「言えてる。これで、フュージョンは消し飛んだと思うよ」

 

「むしろ、これで生き延びられるのは、ギャグ補正が強い奴だけだよ。局地的破壊力は並の核兵器より上だしね」

 

「スマイルの子達の見せ場を盗ったようなものだけど、しょうがないね」

 

「だね。あの子達とキュアエコーの力じゃ、邪性が強まってたあいつは浄化できなかった。それに、あたし達の敵が来たようだね」

 

「そのようだね。漁夫の利…ってか?プロフェッサー・ランドウ?」

 

「な、何あれ!?」

 

「ドラゴンタートル…か。わざわざ、あれを出してくるとはね」

 

フュージョンを倒して、一件落着……ではなく、プロフェッサー・ランドウの軍団と一戦を交えていたわけだ。

 

『御名答。キュアミューズ。いや、仏の英霊・アストルフォと呼んだ方がいいかね?』

 

六十後半から七十代のしわがれた老人の声が聞こえてくる。未来世界での百鬼帝国滅亡後に台頭している『メタルビースト軍団』の長『プロフェッサー・ランドウ』だ。彼の本名はアルヒ・ズゥ・ランドウと言い、元は旧・ドイツは東ベルリン出身の科学者であった。早乙女博士とゲッター線研究で共に並び評されたほどの天才であったが、若き日にバダンと接触しており、彼らと復活を目論む『恐竜帝国』の支援で、百鬼帝国亡き後に百鬼帝国から独立する形で軍団を旗揚げした男。Dr.ヘルの再来とも評される。

 

「呼びやすいほうで構わないさ。…で、わざわざボクたちを追ってきたわけ?」

 

『ふふふ、君らへいいものを見せてあげようと思ってな。これを見たまえ』

 

プロフェッサーランドウがパチンと指を鳴らすと、地響きが響く。地割れからマグマが吹き出し、それがまるで、砲撃のような指向性を持って、爆煙の晴れた横浜の郊外へ降り注ぐ。

 

「マグマ砲……!?」

 

キュアブライトが驚く。その光景は初代ゲッターロボの戦闘記録にある『恐竜帝国』の秘密兵器『マグマ砲』と同じだったからである。

 

「どうして、テメェがそれを!!」

 

「来たな、キュアドリーム。地下に引きこもった恐竜帝国が地上に残した遺産だよ」

 

「何だと!?」

 

一同は驚く。海上に現れたのは、かつての恐竜帝国がマグマへ逃げる際に置き去りにしたメカ・ザウルス製造プラントマシーンランドから百鬼帝国が発見し、意志を引き継いだブライ大帝の命で建造していた恐竜帝国の秘密兵器。別の世界では巴武蔵の命を奪ったという『無敵戦艦ダイ』であった。

 

「無敵戦艦ダイだと!?馬鹿な、未来世界だと、完成がゲッター1の自爆までに間に合わずにお蔵入りしたって……」

 

「百鬼帝国から更に儂が引き継ぎ、完成させたのだ。ゲッターロボを倒すためにな」

 

無敵戦艦ダイ。恐竜帝国が地上への最後の大攻勢用に建造していた陸上戦艦で、地上征服用の世界侵攻のために造られているため、マグマ層に戻るための装備は備えられていない。未来世界では『帝王ゴールの肝いり』で建造されていたが、ゲッターロボの自爆とゴールの戦死などでお蔵入りとなった。製造プラントも百鬼帝国に制圧され、以後は百鬼帝国が建造していたが、最終的にランドウが完成させたわけだ。

 

『やはりな。ランドウ、テメェの野望はどこでも同じというわけか?』

 

『そうだ、流竜馬。お前と対峙するのは希少だな』

 

プロフェッサー・ランドウは基本的に、一文字號ら二代チームの主敵であるため、流竜馬・神隼人・車弁慶の初代チームと対峙するケースは、多くの平行世界でも希少なことである。また、自身の研究で平行世界を観測したのか、竜馬の言葉に同意する。真ドラゴンはプリキュア達を守るように陣取る。

 

『ランドウ!用があるのは俺だろう?わざわざ、異世界まで来て、子供たちを巻き込むのか?』

 

『貴様にはいつも阻まれるからだ、神隼人よ。偶には精神的優位に経ちたくてな』

 

『俺のパイロット生命を奪っただけでは飽きたらんようだな?』

 

『そのものいいだよ、神隼人。貴様にはいつも、煮え湯を飲ませられる…』

 

初代ゲッターチームとランドウはお互いに、ゲッター線の効果で別世界でのお互いの行く末を垣間見たのか、メタ的な物言いをし合う。そして、プロフェッサー・ランドウと対峙する……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――1948年の晩冬――

 

ちょうど、ザンスカール帝国残党が南洋へ攻め込んでくる数ヶ月前。圭子はドラえもんとのび太から記録を渡された、キュアドリーム達が遭遇した幾度かの戦いの記録をまとめていた。ちょうど、フェイト・T・ハラオウンがウマ娘世界を発見した時期と同じ頃にあたる。

 

 

 

 

 

 

 

――キュアドリームはマジンガーZEROと融合し、更にゲッター線に見いだされた。それに加えての修行も加味した場合、現役時代とは比較にならないほどの強さを得ている。また、サーニャ・V・リトヴャクが転じた『イリヤスフィール・フォン・アインツベルン』からクラスカードを借り受けていた事も多く、宝具を召喚する触媒として使い、それで幾度か戦局を打開している。特筆すべき事項としては、ある世界の『スマイルプリキュア』のオールスターズ戦の初陣に呼ばれた際の出来事であった。黒江達同様、ゲッターとマジンガーの導きを得たキュアドリーム/夢原のぞみはプリキュアスターズの代表格として扱われている。ダイ・アナザー・デイ中期以降の64Fを支え、ダイ・アナザー・デイ終了時には幹部として扱われていた。その後にのび太の40代以降の時代における養子であり、かつての想い人『小々田コージ』の転生である『野比コージ』と結婚。野比家の一員となった。その関係上、デザリアム戦役以降は既婚者であるが、披露宴は仲間と合同で行った。前世の反省で、コージとの間に三人は儲けたいと述べているなど、まさに幸せの最中にいるようだが、予備役入りしての教職への転職については、『高をくくった』文部科学省の妨害で失敗している。(この出来事は、扶桑の予備士官制度の根幹を揺るがした関係もあり、その後の時代の文部科学省ではタブー同然に扱われたという)そんな彼女は歴代のプリキュアでも古豪とされる世代なため、同様の境遇となった何人かと共に、オールスターズ戦が行われている平行世界へ、何度かミラクルライトの効果で召喚され、その世界のオールスターズ戦を鎮めてきた。その記録を圭子は休暇を使い、本にまとめるため、記録を編纂していた――

 

 

 

「そうか、そういうわけか」

 

「はい、先輩。タイムテレビまで使って、書いてるんですか?」

 

「正確を期すためだ。お前が転職に失敗した一件からというものの、日本側はお前らについての記録の提出を求めているんでな」

 

「あれは、文部科学省のせいじゃないですか」

 

「予備士官制度の根幹を揺るがされたんで、軍は大混乱。教職志望だった連中を軍学校に配置せにゃならん、軍事教練の廃止で職を失った将校達に次の任務を与えないといかんなどの弊害をもたらした。それで日本側の判断は『面倒くさい連中は最前線で使い潰せ』だぜ?呆れちまうよ」

 

 

圭子が呆れるように、キュアドリームが遭遇した騒動の余波で、予備士官になり、一般職に転職し損ねた士官は数多い。その混乱の責任を根本的に取りたくない日本の防衛省の役人や文部科学省の役人達は『報告をちゃんとしない扶桑の国防省(陸海軍省を統合・再編)が悪い!!』と決めつけ、だんまりを決め込もうとしたが、転職を潰された者たちへの補償問題もあるためにそうはいかなくなった。厚かましく、現場へ『ほうれんそうをしないお前等が悪い』と喚き散らすため、圭子は防衛省への嫌味も兼ねて、日本に送る『電話帳のような分厚さ』の報告書を作成しつつ、自身の著書の新作を執筆していた。

 

「お前についての報告だが、500ページくらいにしてやる予定だ。現場を馬鹿にしやがった報いを受けさせてやる」

 

「ダイ・アナザー・デイからデザリアム戦役の?」

 

「そうだ。いくらでも書くことはあるからな。お前ほどの大物を知らんとは、日本の官僚連中はアニメを見んらしいな?」

 

「あたしも、それは憤慨しましたよ。普通、アニメくらい……」

 

「少数に受ける小難しいヤツより、万人に受ける物語の方がいいと思うんだがな。娯楽を全面に出したものはどの分野でも、軽んじられてるからな、気位の高い文化人とやらには」

 

「ですね」

 

「例えば、6、70年代にメッセージ性を込めたフォーク・ソングが流行ったけど、70年代の終わりには廃れていったろ?代わりに、万人に受けるディスコグラフィやアイドルソング、ポップ・ミュージックが台頭した。そういうもんだ。一部の気位のたけえ人間たちは大衆を軽んじるのは、いつの時代にもある」

 

圭子もウィッチ世界で本を出版する度に、その手の論評に出くわしてきたため、大衆娯楽を重んずるようになっている。転生後においては、娯楽小説にも手を伸ばしており、軍務の合間に作品を書いている。元々、戦場カメラマンになっていた時期もあるため、軍を舞台にした推理小説も執筆中である。

 

「お前、今日は付き合え。晩飯は新京でおごってやる」

 

「お金、あります?」

 

「兄貴から、ヤマト・ホテルのクーポンが送られてきたんだよ」

 

「なるほど」

 

圭子にも二人の兄がいる。その内の一人が観光業界の俊英であるという。(次兄が後継者『澪』の祖父に当たる)

 

「先輩にも、兄弟いるんですね」

 

「上に二人な。澪は二番目の兄貴の子の忘れ形見だ」

 

扶桑は南洋横断鉄道を抱える。その直営のホテルが『ヤマト・ホテル』であり、史実の満鉄が運営していた同名のホテルチェーンに相当する。史実と違うのは、温暖な南洋で運営されているため、雰囲気は史実と全く異なり、トロピカルな雰囲気である。圭子の兄の一人はその経営にタッチしている実業家らしい。

 

「あ、武子か?新京にでかけてくる。実家の兄貴から、ホテルのクーポンが送られてきてな…。明日から、あたしは休暇だから、のぞみを連れて行く。土産を買っていくから、安心しろ」

 

武子に断りの隊内電話を入れ、圭子は私服に着替えた後、キュアドリームをつれて、基地の地下にある新京行きの列車が停車するプラットホームに行く。

 

 

――基地の地下プラットホーム部――

 

 

「あー!あじあ号だ!」

 

「引退が決まったが、戦時中だから、遊ばせるわけにもいかないから、何編成かが乗り入れるようになったんだ。休暇の時も高速鉄道でいくんじゃ、味気ねぇだろ?」

 

パシナ形蒸気機関車『あじあ号』。ウィッチ世界では南洋を走る鉄道を走る形で存在していた。電化や新幹線への置き換えで引退が決まっていたが、史実より製造された編成数が多めであった都合、日本への売却も数編成が決まっていたが、なおも数編成が余るため、1948年度に予備分も含めた三編成が64Fの連絡用路線に回されていたというのが実情である。これがあじあ号の晩年の活躍である。軍に徴用されたわけではないため、サービスは従来通りに行われているし、基地の軍人・軍属も通勤用に乗る。金曜日や祝日にのみ乗り入れる特別列車的な位置づけだが、21世紀型高速鉄道を好まない者には『旅情を感じられる』と好評である。(蒸気機関車であるので、通るルートも違うが)

 

「あじあ号も高速でしたよ」

 

「日本基準での話だ。A4形蒸気機関車が世界的には高速だよ。さ、乗るぞ」

 

1930年代。時代の要請で、蒸気機関車の高速化が進んだ時代に生み出された『流線型蒸気機関車』。その代表格の一つ『あじあ』。高速鉄道としての後継者といえる『新幹線』にタスキをつなぐまでの期間、64F基地から新京までの区間を走る姿が見られるわけで、扶桑に公務で来ている日本人の中の鉄道ファンはその光景を撮影し、溜飲を下げていたのだ…。

 

 

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