ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第四百九十一話「ある日のこと 2」

――野比玉子は何故、息子に厳しかったのか?それは彼女が1999年当時に38歳(1961年生まれ)であり、受験戦争が最も激しかった時期に学齢期の年頃であった故、彼女の世代としては遅め(1988年)に儲けた唯一の子息であるのび太が義母の影響で『のんびり屋』(悪く言えば、呑気)に育ってしまい、成績が安定して下位にある事で、受験戦争を勝ち抜けるのかと危惧したためである。とはいえ、のび太の思春期の頃には少子高齢化が進んでおり、玉子の時代とは状況も違っていたので、玉子の心配ほどには、のび太は進学に困らず、むしろ、中学時代には『高望み』と言われた偏差値の大学に補欠合格。その後は四年で卒業し、環境省に入省。以後はダイアナザーデイなどの功績で『扶桑華族』に授爵されるなど、輝かしい実績を見せている。玉子が大学以降に息子の教育方針で放任主義に転じたのは、元から『大学に入れれば、自分の役目は終わる』と考えていたり、結果として、中高の六年間の大半を勉強に費やさせたことへの罪悪感もあった。野比家が海外旅行を(ドラえもんの道具無しで)できるようになったのは、のび太が青年となる頃に、のび助が所属会社で重役に昇進した事で財政的に裕福になり始めたからである。――

 

 

 

 

――のび太はメカトピア戦役の功績により、地球連邦政府より功労金などの支給を受けるようになっており、小学五年から六年に進級する頃には、ドラえもんが管理する口座にかなりの大金を預金していた。また、黒江やガランドを介して、調とことはの生活費と学費の仕送りも受けるようになったため、野比家は段々と裕福になっていった。のび助は(息子達の助けもあり)最終的に専務にまで昇進し、会社員生活を終えていく。のび太が成人し、子を儲けた後はかつての自宅近くのアパートで隠居生活を送り、静かな余生を送っている。玉子はのび太が30歳を超えた時代には、60代を迎えていた。往時のはつらつさは(加齢で)若干薄れてきたが、若い頃から続けている生花で師範になるなど、相応に余生を楽しんでいる。のび太の少年期に見られたヒステリックな面は(息子が成人後に成功したこともあって)見られなくなり、孫に甘いおばあちゃんに変貌していた。のび太夫婦は仕事の都合で留守にする事が多く、息子のノビスケと一家団欒を完遂出来たことは少ない。しずかは公安警察に配属され、2021年からは『反日本連邦組織』の調査を指令され、潜入中なので、家には戻っていない。のび太は裏の仕事を減らし、息子と過ごすように努めているが、腕の良さを買われ、政府からの依頼をこなす必要があるため、思うような生活は送れていない。しずかが仕事から解放されるのは、ノビスケが9歳になる頃。日本連邦の組織が確立され、『日本連邦でいることが長期的な平和と繁栄に繋がる』と世間的に認知され、潜入先の組織がガサ入れを受け、潜入する必要が無くなったからだ――

 

 

 

 

 

 

 

 

――未来世界。ウィンダミア王国の内部で地球連邦との戦争が否決され続けた理由は、ゲッターエンペラーの介入を王が恐れたからである。のび太はある時、そのことに触れていた――

 

 

 

 

「ウィンダミアは主戦派が今の王が寿命で死んだら、途端に実権を握る。そうすれば、地球連邦軍に喧嘩を売るわけだけど、辺境の連中はいざしらず、本国の連中はゲッター線の影響で、ヴァールシンドロームも物ともしない。彼らが波動砲持ちの艦隊で攻め込んだら、ウィンダミアは悲惨な事になる。多分、星の数個は波動砲で消し飛ばされる」

 

「見せしめ?」

 

「うん。それも主要都市のある星をね。波動砲は白色彗星帝国と同等以上の科学力がないと無力化できない。プロトカルチャーは恒星間の文明だったけど、タキオン粒子の利用まではたどり着いてないからね。アケーリアスやガンマ文明からは劣化してる」

 

「ガンマ文明?」

 

「ボクがのら犬たちを進化させて、その犬達が作った文明。1000年しか存在しなかったけど、後半の500年の間に恒星間文明に進化してた。気候変動で他の星に移住していったけど、地球に存在した文明じゃ、最古に近い」

 

そののら犬とは、のら犬・イチ。のび太が少年期に世話をしたのら犬で、進化退化放射線源の力で知能を得、彼が共に連れてこられた犬や猫たちと共に、石炭紀の地球で築いた文明の名だという。1000年ほど存続し、数億年後の時代(のび太の時代)に遺跡が発掘された。21世紀の日本の調査では解明に至らなかったが、当事者ののび太の協力で明らかとなった。

 

「ボクがガキの頃の話さ。その文明が滅んだ後、恐竜の時代になって、爬虫人類が闊歩した。彼らはゲッター線に選ばれた種とそうでない種に分裂し、後者が竜馬さんたちと戦い、前者が恐竜戦隊ジュウレンジャーを生み出した。で、その後に現生人類が生まれた…」

 

「ややこしいね」

 

「僕たちは歴史に1ページ書き加えただけさ。人と同等の知能がある集団ができれば、その中で社会が生まれ、それが大きくなって、国になる。プロトカルチャーは滅ぶ前に、銀河各地の生物を改造したけど、それは現生人類を生むきっかけの一つにすぎない。ウィンダミアもその一つだけど、彼らは地球人が老いつつも、80年は生きる事に羨望を覚えている。だから、地球を滅ぼしたいのさ。だけど、それは神々の意志に反してる」

 

「つまり、彼らは……」

 

「そう。神々のお墨付きを得たゲッター軍団に滅ぼされる可能性が大きい。そうでなくても、アースフリートの波動砲が星団を切り裂く。はっきりいって、ワルキューレの頑張り如何だよ、あの国の未来」

 

のび太はそう断言する。ワルキューレの頑張り如何によって、ウィンダミア王国は国が宇宙の塵になる瀬戸際にあると。

 

「でも、なんで、それを彼らは認識してないの?」

 

「地球本国の重要戦力がわざわざ遠征しに来ると思ってないからさ。せいぜい、バトル級空母だと思ってる。だけど、本気になったら、惑星くらいは軽く焼き払える拡散波動砲持ちの戦艦がやってくる。彼らにとっては、アケーリアス超文明時代の伝説の遺失テクノロジーの代物がね。プロトカルチャーよりも数段上の技術を誇った文明の最高技術。それが量産されて、すでに星間戦争で使われてるってわかったら?普通は戦争しようってヤツはいない。白色彗星帝国やデザリアムの技術で『防ぐ技術』がようやく実現していたってのに」

 

波動砲は躱すか、防ぐかの二択しか方向がなく、とっさに小ワープが可能でなければ、死あるのみ。のび太はキュアフェリーチェと調にそう明言する。

 

「あの国の主戦派はプロトカルチャーの技術で地球を倒せると有頂天だけど、実際はそれも凌ぐ技術を手に入れてる上、『機械仕掛けの神』が地球を守ってるんだ。それを知ってれば、普通は戦争なんてしない。ボラー連邦やガルマン・ガミラスとも国境を接してるんだよ?」

 

銀河連邦が20世紀後半の戦乱で弱体化を余儀なくされた後の時代、天の川銀河は『地球が大国に挟まれる』形で勢力図が確立されている。バード星が21世紀頃の不祥事の連続で権威を失墜し、実質的に父祖の地である地球連邦の勢力圏に組み込まれたとはいえ、ガルマン・ガミラスとボラー連邦の双方に挟まれる形で暫定的に国境線が決まっているため、星間国家としての地球連邦は『米ソに挟まれる日本』的なポジションである。ゲッターエンペラーの存在を知覚出来ていていれば、普通は『そっとしておこう』という結論に達するのだと。

 

「それがゲッターエンペラーなの?」

 

「配下のゲッター艦隊と合わせれば、宇宙の免疫細胞と推測される『宇宙怪獣』すら、銀河ごと倒せる力を持つからね」

 

宇宙怪獣。ある学者が『知的生命体というバクテリアを駆除するための宇宙の免疫細胞』と推測したというが、実際は『対立する神々が人の進化のために用意した小道具』にすぎないとのこと。

 

「ゲッターエンペラー以外の兵器の可能性として生み出されたのが『ラグース細胞』って話もあるからね。人間の尺度で推し量れる次元じゃないね。ドラえもんの時代は『科学が最も全知全能に近づいた』頃だけど、その科学力も万能じゃあないしね」

 

ドラえもんのひみつ道具の技術は退行を経た23世紀には『遺失技術』となった。一部は復興出来たが、統合戦争後に謎となった技術原理も多い。(もしもボックスなど)その一方で、兵器技術は完全にドラえもんの世界を上回り、スーパーロボットを一介の民間研究機関が建造できる(マジンガー、ゲッターなど)ほどになっている。

 

「あ、オヤジから電話だ。あ、パパ?……うん。ママとの結婚記念日だから、レストランに連れて行ってくれ?わかった、スネ夫に頼むから、切るよ」

 

この日はのび助と玉子の結婚記念日であった。のび助と玉子はこの時代には老境に達しており、のび助は会社の重役に出世しつつも、定年退職する年齢を迎えていた。玉子の頼みもあり、定年退職後は隠居生活を送っている。退職金が高額であったのと、息子夫婦の仕送りもあり、満足の行く老後を送れている。

 

「スネ夫、僕だけど、うちのオヤジとおふくろの結婚記念日でさ、レストランを予約してくれるか?気取らなくてすむレベルでいい程度のでいい」

 

「気取ったところより、ファミレスのほうが気楽でいいぞ。うちの経営するチェーン店を使え。僕が貸し切りで席を確保させる」

 

「わかった」

 

この時代(2020年代)になると、疫病で国家経済にダメージを負った日本では『気取ったレストラン』に行く選択肢は避けられるようになり、(人々が贅沢をすることよりも、日々の生活を優先するようになった)ファミレスで『ちょっと楽しむ』ことが多くなっていた。収入的に富裕層に属する、成人後ののび太やスネ夫であっても、ちょっとした祝い事に『気取った店』を選ばないのは、『時代の空気』で、彼らであろうと『息苦しさを嫌う』ようになっていたのがわかる。

 

「倅はどうしよう?」

 

「親父さんの結婚記念日だが、親父さんたちが会いたがってたのなら、連れて行ったらどうだ?ファミレスだし、それに貸し切りなら、周りに気を使わせないで済む」

 

「サンキュー」

 

「夕方頃、親父さん達のアパートにハイヤーを回す。街の外れにある店につれてくから、ちょっと時間がかかるな」

 

「彼女たち(ウマ娘たち)にも声をかけておく。あ、オグリちゃん対策で、近隣一帯の店の備蓄を集めておけよ。ウマ娘達は人間より食う量が圧倒的に多いし」

 

「関東一円の備蓄を集めておこう。オグリちゃんがきたら、一晩で東京23区の備蓄を食い尽くすというからな」

 

と、オグリキャップの食欲は有名であることがわかる。彼女の胃袋は歴代ウマ娘でもトップを誇るため、引退後はフードファイター関連のバラエティ番組に引っ張りだこであった。そのため、競走者としての彼女が顧みられることはすっかり減っていたと言える。なお、オグリキャップは自身の行った歴史改変の後においては『クラシック戦線に参戦できていれば、三冠の有力候補になれていたのは確実』と評されている。史実と異なり、スーパークリークを返り討ちにしたり、終生のライバルとして、タマモクロスが君臨し続けたため、クラシック組が余計に霞んでしまったという逸話を持つ。現役時代の『怪物』の異名をナリタブライアンに継承させ、事実上の弟子のような関係にある。なお、スーパークリークは史実同様、自身の得意とした戦法を継承できるだけの後継者に恵まれておらず、イナリワンもそれは同じであった。オグリも(血統は細々と続いているが、後継者と言えるだけの実力はない史実の反映か)直接の後継者には恵まれていないが、精神的な後継をブライアンに見出し、育てた。(歴史改変に伴う彼女の選んだ変化)出自は違うが、怪物の二つ名を継いだ者同士という共通点を重視したのだ。

 

「オグリキャップか。お前、歴史改変はどの範囲でさせた?」

 

「彼女が望む範囲だ。その分、ヤエノムテキ、メジロアルダン、サクラチヨノオーの三人が余計に割を食ったらしいが」

 

「あの代のクラシック組が余計に悲惨になったわけか」

 

「引き立て役だな、有り体に言えば、オグリもホーリックスには及ばなかったのは変わらないが、タマモクロスと一緒に走りたかったという夢は叶えた」

 

タマモクロスは歴史改変により、引退時期がオグリと同時期になり、戦績は三強に伍す力を晩年まで維持していたとされる範囲内に収まっているなど、史実と微妙に違う足跡を刻んだ。その帳尻合わせがオグリ世代のクラシック組の戦績でなされた事をのび太は明言した。つまり、ヤエノムテキ、メジロアルダン、サクラチヨノオーなどはオグリとタマモクロスの歴史改変の結果、史実より戦績が悪化してしまったわけである。

 

「何事にも何かの釣り合いは取られるが、クラシック組が犠牲に?」

 

「そういうことだな。彼女らの運命を悪化させた分の幸運がオグリとタマモに湧いた。とはいえ、致命的ではないけどな」

 

「それで、ブライアンちゃんとの出会いイベントがあったと?」

 

「そうだ。話を聞くと、史実でいう1990年の有馬記念に相当するレースの時に出会ったらしい。タマちゃんから証拠写真を預かってるよ」

 

「引退の時か」

 

「その頃、ブライアンちゃんは小学高学年。オグリちゃんは中三か高二。それなりに離れているそうだ」

 

オグリの年齢は不明だが、高等部卒業を控えていることから、18歳以上であろう。ブライアンは貫禄はあるものの、実際は入学時から名を馳せていた関係上、意外と年齢は若い。これはブライアンのレースデビューが同期より早かった故でもある。

 

「そうなると、わからんな」

 

「彼女らの年齢は不詳に近いところがあるからな。シンボリルドルフちゃんがずっと生徒会長な時点で」

 

「うーむ。レースの関係もあるんだろうが、わからんな、彼女らの進学カリキュラム」

 

と、トレセン学園のカリキュラムの謎にツッコミを入れつつ、ウマ娘達を呼ぶ算段をつける二人であった。

 

 

 

 

 

 

――一方、扶桑軍は64Fに機材を好きに使わせる事で、内部の反ジェット派を鞍替えさせることを推進した。これはジェット機を普及させ、プロペラ機の技術を自動車に転用させるためという日本の要請によるものでもあった。また、エース部隊が既存機の改修にこだわることが新式の開発に悪影響を及ぼすことを認識していた日本はエース部隊に新鋭機を使わせる事を押し進めさせた。64Fの隊員であろうとも、そこは強く釘を差された。史実で64Fの隊長を経験している者の同位体であり、64Fの中隊長の一人である宮部大佐(史実では最後の戦隊長であった)は『新型でも、稼働率の低い兵器を嫌うのは当たり前なのに、それを鬼の首を取ったように言われてしまうとなぁ。これが負け戦を経た国か…。』とぼやいており、日本が政治力で自分達を押さえつけている現状を嘆いた。実際、この頃の日本政府は国民の『暴走した正義』が扶桑に迷惑をかけまくっている事に悩んでいた。のぞみの一件は極秘裏に処理しようとしたが、『何者か』のリークで公にされてしまったために外交問題になりかけた事、官僚の軍隊への問題発言や、軍人への暴力行為の横行もあった。魔女の世界の軍人は『同位体の発言』にすら責任を取らされる事にうんざりしていたが、自分の発言一つで『今後が大きく左右されてしまう』事に恐怖する者が『分野を問わずに』多く生じた――

 

 

――その事の嚆矢がフーベルタ・フォン・ボニンであった。ダイ・アナザー・デイ参戦後に『小官は軍規を無視するわけではありません。実力を伴わない者が指揮を取るべきではないというのが本意なのであって、平和な時代を生きてきた日本の自衛官の方々の力量を軽く見るわけではございませんし、年長の方々に敬意を払わないわけでもありません』と、記者会見で延々と釈明する羽目に陥ったことが大きい。彼女は元々、潔癖と言われるほどに実力主義を公言していた。若手時代、『空では実力と撃墜数で勝る人間が指揮官である』と述べたのが、日本連邦に問題視されたわけだ。救出後の初仕事は『若手時代の発言の釈明会見』という、なんとも情けないもの。先の一言はその釈明の一部である――

 

 

 

 

彼女はカールスラントでは新興であるが、貴族の出身であるが故に、軍人になることが義務付けられていた。世代としては、黒江の一期後、智子の一期先輩にあたるため、新米時代は七勇士の活躍に胸を躍らせた(コンドル軍団出身)事になる。その関係で、七勇士の面々を元から知っており、職務復帰後にグンドュラから、ミーナの一件を聞かされた際には『かくも、無知は恐ろしいものだな』と述べ、七勇士を与太話扱いしていたミーナに失望する旨の発言をしている。元・503副司令の地位にあったが、元の地位にこだわらず、ダイ・アナザー・デイは『一士官としての戦い』に専念した。釈明は日本向けの報道対策も兼ね、ロンメルの意向で『復帰に当たっての決意表明も含むもので、職務復帰にあたり、日本向けに記者会見が開かれたわけだ。彼女は日本の信頼を得るため、実際はルーズな面もあるが、『実直な軍人』であるように装った。アジア人は『誠実さ』を見せることを好むのを知っていたからで、ドイツ人らしいとされる『生真面目さ』をわざと見せた。そのほうが受けがいいからである。だが、彼女にはもう一つの秘密がある。彼女はマリーダ・クルスの同位体であり、前世で彼女そのものであった(つまり、最期にはリディ・マーセナスという青年の撃ったビームマグナムの閃光に消えた)ことだ――

 

 

 

――マリーダ・クルス。未来世界でも存在が確認された『プルシリーズの十二番目の個体』。エルピー・プルと同一の遺伝子配列を持つはずだが、声色に関しては、かなりの差異があった。史実では、第一次ネオ・ジオン戦争後は娼婦に身をやつし、あるジオン軍人に拾われるまでは『男たちの慰めモノ』にされていた。皮肉なことだが、それはシャア・アズナブルが唯一、真に愛し、アムロにとっても、倒してしまったことが最大のトラウマとなっている女性『ララァ・スン』の前歴とも共通していた。フーベルタはそのマリーダ・クルスを前世に持っていた。とはいえ、ジオン軍へ郷愁は持っておらず、地球連邦のMSに躊躇なく乗っていたりする。前世の関係か、ニュータイプ能力を得た他、『未来世界で交戦する事があるだろう』と、クシャトリヤというMSの情報を漏らしていた。そんなわけで、彼女は(前世がマリーダ・クルスだった事を含めて)『ぶっちゃけている』ので、釈明会見はかなり渋っていたが、日本の信頼を得るために仕方がなく、行ったのである――

 

 

 

 

 

――1949年の南洋島――

 

「映像は見たけれど、あなた、内心は面倒くさがってたでしょ?」

 

「わかるか?同盟国向けのポーズとはいえ、わざわざ、公の会見で頭を下げるんだぞ?若い頃の発言の責任を今更、本当に取らされるとは思わんかった」

 

「大佐は?」

 

「ウォーモンガーだからな、あの人は。そちらでは引退なされたそうだが、こちらでは片足を持っていかれたこともあってか、万年大佐だ」

 

ミーナBは調べ物の帰りに、A世界のカールスラント組と会い、公園で会話をしていた。A世界のカールスラント組は多くが『本国で疎んじられ、軍にいられなさそうなので、日本連邦の誘いに乗る』という経緯で本国の予備役になっていた。カールスラント空軍はドイツ連邦共和国の強硬な介入でズタボロの有様であり、せっかくの有能な中堅~古参の軍人を『コンドル軍団にいたから』という理由でリストラをされそうになった。日本連邦はそれを『人材補充の手っ取り早い手段』と見込み、ヘッドハンティングで引き抜いた。カールスラントがあまりに哀れであったため、NATOもドイツの行き過ぎな介入を咎め、事実上、手を引かせた。日本連邦はその議論をドイツとNATOがしている内に、まんまと有能な軍人を労せずに、多く手に入れたのだ。

 

「そちらでは何があったの?」

 

「日本と違って、こちらは相手方が『皇室が1918年に解体された上、1950年代に完全に共和国になった』経緯を持っていた上、1933年からの12年は独裁政権だった』歴史を持っていてな。相手方がその先入観から、我々を弾圧した。だから、公職追放の烙印を押される前に日本連邦に移ったんだ。奴さんの誘いでな」

 

フーベルタは年齢が20代半ばを超えているため、タバコを吸う。マルセイユも禁煙したので、今では珍しい習慣持ちだ。

 

「今ではタバコは体に良くないとわかったが、こうでもせんと、仲間内で子供扱いされるしな。カールスラントの戦友でも、吸うのは減ったが……」

 

「あなたは何を?」

 

「日本連邦に飯を食わせてもらっとる身だからな。64Fの中隊にいる。大佐にはなったが、使いっぱしりだよ」

 

64Fが批判される理由の一つは『貴重な佐官級の魔女を独占している』ことだが、日本連邦の記録で『分散配置していたら、圧倒的物量に潰された』、『新人が古参の足を引っ張った挙句に、部隊が全滅した』記録が山のようにあるので、批判者はもれなく打ちのめされ、参謀本部から帰っていく。501の史実が皮肉にも、少数精鋭化の大義名分に使われたわけだ。

 

「佐官をなぜ使いっぱしりに?」

 

「日本にはな、過去の戦争で『分散配置よりも集中配置のほうが戦果を挙げた』実例があるんだ。501も『本来の世界では、宮藤芳佳のおかげで、すべてがうまくいった』ことが三回もある。だから、精鋭部隊だけにリソースを費やすというのがまかり通るのさ」

 

「そんな!」

 

「日本は古参が分散配置で『櫛の歯が欠けるように死んでいく』実例を嫌というほど経験していた。だから、精鋭のみの部隊が政治的に好まれる。サムライの頃の名残りかもしれんな。おっと、宮藤芳佳のことは口外するな。タブーになってるんだ。彼女の持つ因果は……」

 

「宮藤さんがいなければ……どうなるというの?」

 

「501は普通に機能不全になるか、内輪もめで崩壊する。創立メンバーの半分がいなくなってる時点でお察しくださいな有様なんだからな、普通」

 

日本は太平洋戦争で古参の死亡率が増えたために、航空戦で負け戦を続けた。戦闘システムなどの差もあるが、練度の低下が一番の要因とされた。高練度のパイロットに新型機が回らず、古参のパイロットたちも『扱いなれた既存機で戦うことを好んだ』せいもある。そのため、『エース部隊はその時々の最高の機材を扱うこと』と定められた。当初は明文化に各部隊の反発もあったが、1947年以降、文字通りにエース部隊と言える部隊は64F以外にはいなかったため、64F用の規則と化していた。さらに、芳佳の史実の主人公力は魔女間の混乱を起こすという事情でタブーになっていることが語られた。ある時、日本側から評議会で『宮藤という豆たぬきさえいれば良くない?あいつさえいれば、万事うまくいくんだから』と発言がなされ、魔女出身議員と口論になるほど問題になったからでもある。

 

「だから、一つの部隊で?」

 

「我々の元いた統合戦闘航空団もエース部隊だったが、扶桑は各世代の最強を集めた。摂理もクソも超えた次元でな。隊長は愚痴っていたが、任務の成功率は絶対だ」

 

「何故?」

 

「隊長は育成に定評があった人でな。だから、全員が完成された人員の部隊は面白みがないと言っていたんだ。とはいえ、友人の頼みで引き受けたからには、きちんと指揮してるよ。産休に入ったが」

 

「さ、産休!?」

 

「妊娠・出産で純潔が失われるから……っていうのは迷信というのがわかってな。今では子供を産んで、育てながら勤務ってスタイルが定着しつつある」

 

この頃になると、産休という概念が定着し始めており、坂本Aも産休に入った。A世界では管理局の協力で研究が進んだためで、皮肉な事に、人々の信仰が薄れたほうが『客観的な研究がし易かった』のである。

 

「……そう」

 

「お前、そちらでもあったようだな」

 

「こっちでも?」

 

「不祥事の一因がそれなんだよ。それもあって、お前は精神病という事にされたんだ」

 

「……」

 

「私からは……坂本にあまり入れ込むな、としか言えんよ」

 

フーベルタはそう忠告する。A世界では、坂本に好意を持っていたことで『歯車が狂った』のだから。

 

「わかってるわ。ここでは一線を超えたのね…?」

 

「ああ。話を聞くと、錯乱して、坂本に銃口を向けたからな。それもあって、お前は表向き、『降格の上で病院送り』にされている。坂本がかつての姉貴分であり、上官でもあった彼女たちを頼るのは当然だろう?だが、お前は明らかに嫉妬していた」

 

「別の自分の失敗を聞かされるというのは……いいものではないわね」

 

「お前が元の世界に戻った時に、運営で失敗しないためだ。こちらでは、失敗を重ねた挙句の果てに、組織そのものが扶桑の部隊に取り込まれたからな」

 

ミーナが若手時代に統合戦闘航空団の枠組みを設けるのに尽力したのを知る身として、日本連邦が徹底的にミスを糾弾し、実質的に64Fに枠組みを乗っ取らせたことは快く思っていないフーベルタ。彼女は『確かに、ミーナはミスを多く犯したが、話せば分かる人物だ。鬼の首を取ったように、徹底的に叩きのめすのはないだろう』と考えていた。だが、日本連邦としても、『アジア人を見下しているカールスラントを平伏させるべし』という大義名分がある。フーベルタも危うく失脚するところであったので、銃後が強くなりすぎた現状は快く思っていない。

 

「この世界は銃後の理解がなければ、まともに予算も貰えん。おまけに、人種差別的な発言を言えば、即座に査問にかけられてしまう。昔は実力を図るために許されていたんだがなぁ……息苦しいよ、我々にとっては」

 

カールスラント軍の慣習の多くがはっきりと否定され、自身も捕虜収容所からの救出直後に釈明会見に追われた事、人類四大エースとされてきたルーデルも(ウォーモンガーぶりを表に出さなければ)軍を追放される寸前であった(同位体と違い、完全な戦闘狂であり、個人の政治思想が無いことがわかると、好きにさせるとなった)事から、フーベルタは日本連邦の論理で世界が動くようになったことは好いていないようである。

 

「昔気質と言われない?」

 

「言われまくってるさ。貴族の出であるからと、世間知らずの箱入り娘と馬鹿にされたこともあるからな。ただの新興貴族なんだぞ、私の家は」

 

フーベルタは『フォン』がつくので、比較的に新しい年代に貴族となった家柄の出である。その事から、貴族という地位に執着はない。

 

「箱入り娘なら、実力主義にならんだろうに、まったく」

 

軍服姿でうろつくことが常態であるなど、身なりに無頓着であるフーベルタ。前世がジオン軍人(ネオ・ジオン期)であった割には、かなりルーズだ。

 

「あなた、その気になれば、ドレスコードをいくらでも着こなせるでしょうに」

 

「軍服でいたほうがトラブルを避けられるからな。こういう時に重宝するんだ」

 

フーベルタは前世の記憶もあり、一軍人として生きる事を望んでおり、社交界云々には興味もない。だが、実家の者たちを食わせるためには、社交界に顔を出さねばならない。欧州貴族はこういうところが面倒なのだ。

 

「カールスラントが没落した世界を見て、自分の振る舞いを見直せ。そうしないと、同じ轍を踏むぞ」

 

「ええ。栄華は続かないとはいえ……」

 

「愚痴につきあわせてすまんが、個人的に、日本のゴシップ紙にえらい目に遭わせられてな。それ以来、ゴシップ紙が嫌いになったよ」

 

思いっきり愚痴っているフーベルタ。グンドュラ・ラルよりは気楽な立場とはいえ、紆余曲折の末に、日本の地を踏まざるを得なかったためだろうか。それとも、ドイツに媚びるあまりに、自分らを守ることを放棄した祖国への恨み節か。

 

「恨み節ととっても構わん。だが、カールスラントのここ数年の弱腰外交は見るに耐えん」

 

「グンドュラと違って、あなた、愚痴っぽくなったわね」

 

「奴がおかしいんだ。対外的には空軍総監になり、ガランド閣下の後継者だぞ?その立場を悪用しだしたからな。まぁ、ハルトマンに病院送りにされた時は笑ってやったが」

 

「あなた、日本でどう生きていくつもり?」

 

「さあな。家の者を食わせるためだ、戦後になったら、軍学校の教諭にでもなるよ」

 

と、笑い飛ばすフーベルタ。

 

「では、またな。今日はこれから、チェスの大会に出るんでな」

 

「下手の横好きでしょ?」

 

と、痛いところを突かれる。フーベルタはチェスが趣味だが、実力は下手の横好き。のび太といいとこ勝負だったりする。

 

「お前、人が気にしてるところをだな……」

 

と、指摘されるのは嫌らしく、声が震えてくる。

 

「大佐にまで出世した割に、チェスは下手の横好きなのね。昔と変わらないわね」

 

「クソォ~!!若い頃よりは持つようになったぞ」

 

「はいはい」

 

B世界でも長年の戦友であるためか、ミーナはフーベルタをからかう。フーベルタも若い頃より年相応な面が出るようになったらしく、B世界での彼女より気楽な感じの雰囲気である。

 

「でも、あなた、ご飯はどうするのよ」

 

「え?出先のデパートの大食堂で済まそうと思ったんだが……だめか?」

 

「あなたって子は……若い頃と変わってないんだから」

 

ミーナBは呆れる。フーベルタは身なりや食事に無頓着であるというのが評判だが、出先のデパートの大食堂で安易に済ませようとするのは良くないと、自分たちのいるホテルへ連れこむミーナBであった。

 

 

 

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